2021年度奨学生10月例会報告
10月23日午後、2021年10月例会は「『心と身体のウェルビーイング』について考えてませんか?」をテーマに、ワークショップ形式により渥美財団ホールで開かれた。ラクーンの先輩で、CBT(認知行動療法)と心身医学専門の金外淑先生がゲストスピーカーを務め、ウェルビーイング(well-being)の観点から心と身体のメンテナンスについて語った。
金先生がデザインしたワークショップでは「自己」に疑問を投げ、心理学でよく使うエゴグラムやチェックリスト、脳番地図、だまし絵を用いて参加者を自己発見への道にみちびいた。金先生のガイドにしたがい、参加者は手元の資料を見ながら、CBTの専門知識が濃縮したクイズとリスト、図表、課題シートを通じて、自身の意識と行動パータンに対する認知という世界にひたっていた。
CBTの観点からウェルビーイングは認知と行動のつながりと深く関連していると考えられる。日々の物事や出来事、問題をどう受け止めるかという課題には脳神経と内分泌のメカニズムによって決められる面があり、心理のメカニズムとかかわる面もある。意識と行動パータンに応じて、金先生はセルフコンパッション、行動リズム、ソーシャルサポート、マインドフルネスといったキーワードを提示し、具体的な対策から認知を変える仕方をも参加者に体験させた。
その後、オンライン参加の奨学生を含め、参加者全員は三つのグループに分かれて、「老人ホームのボランティア選び」をテーマにグループディスカッションをした。事前に配布された資料に基づき、応募者の人物像と職業、年齢、性別、パーソナリィティをめぐるボランティア選出の議論はグループごとに進められた。自分の意見をはっきりと伝えると同時に、グループのメンバー同士の見解をきちんと考えたうえで、三つのグループは選出理由と議論にともなって生じた意識と見解の変化を発表した。
わずか二時間のあいだに、金先生が紹介したCBTとウェルビーイングの視野はグラムとリストからグループディスカッションへ、個人の課題から社会的課題へ、自己認識から集団意識へと広がっていった。例会の最後に、事務局長の角田さんがレバレッジ(leverage)の話で論文執筆中の奨学生たちを励ました。情報爆発の時代、メデイアとデータ、行動の断片化にともない、心に余裕がなくなってしまう問題はますます重視されるようになっている。コロナ禍以来自粛生活とソーシャルディスタンスが長期化するなか、身体の健康のほか、心のケアも関心を集めている。今回のワークショップは実に論文執筆のストレス解消だけでなく、今を生きること自体が難しくなっている時代のリアルタイムな対策でもあっただろう。
(文責:セン 亜訓)
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