豊島プロジェクト工事現場見学会報告
2018年11月13日、2018年度渥美財団奨学生は「豊島プロジェクト(新築工事)」の工事現場を見学しました。
集合場所は池袋駅近くの宝くじ売り場でしたが、駅があまりにも大きかったため、探すのが大変でした。工事現場は池袋駅の近くにあり、歩いて10分くらいの距離でした。池袋がこんなに賑やかな場所だったとは驚きました。
今回見学する「豊島プロジェクト」はA、B、Cの三つのビルディングからなる建築群です。そのうち、A棟とB棟の中に実際に入って見学しましたが、C棟は見学できませんでした。工事現場を見学する前に、鹿島建設のご担当者から建設や工事に関する解説が30分ほど行われました。その解説のおかげで、建築に対して全く素人であった私も、建築に関して興味が湧くようになったのです。例えば、私は「容積率」と言う言葉を今まで全く聞いたことがありませんでしたが、今回の説明でその重要さを実感できました。「容積率」とは予め政府が決めたものであり、建築物の内部空間はこの数値を超えてはいけません。今回の「豊島プロジェクト」を例にすると、池袋駅付近の容積率は800%と決められ、与えられた面積の上で建築できる空間は限られています。しかし、鹿島建設はこの決められた容積率から利益を最大化するために、B棟の空間を極力抑えて、その分の空間をA棟の上に移動しました。こうした設計をするのは、A棟の方が繁華街に接触しているために、その空間的価値はB棟より高いからです。A棟とB棟の両方にテナントを立てるよりも、B棟の空間をすべてA棟に移動することによって、プロジェクト全体の価値を最大化できるのです。私は鹿島建設の計画に感服しました。
解説の後、私たちは実際に工事現場を見学しました。最初に見学したのがA棟です。私たちが見学した時は、すでに地下の部分がすべて完成しており、現段階では地上部分の工事に力を入れています。A棟ではテナントの他に、映画館(の建設)が予定されています。私たちが見学したところは、まだ内装がされておらず、ほぼ(むきだしの)コンクリートの塊に近い状態でした。奨学生みんなで映画館がオープンしてから一緒に映画を見に行こうとその場で約束しました。
次に私が感心したのは、工事現場に掲げたスローガンでした。そこには「近所迷惑しないように工事しよう」と書いてあります。A棟のビルと隣接しているマンションとは10メートルしか離れておらず、こんな近い距離で工事をしたら迷惑にならないはずがありません。しかし、実際に工事現場のコンクリートの上に立つと、地面から伝わってくる音は本当に小さく、この現場全体から出る騒音は、「ここで本当にビルが建設されているのか」という(疑問を生じさせる)ほど静かでした。これは技術面の工夫もさることながら、日本社会全体における他人に迷惑を掛けたくない「思いやり」の文化が基底になっているからだと思われます。
その後、私たちは隣のB棟を見学しました。B棟全体は大きな劇場であり、内装もほぼ完成している状態でした。私たちはドキドキしながら舞台に上がり、舞台上で鹿島建設のスタッフから地震対策について教えていただきました。この劇場の最初の観客となった我々は、近々オープンするこの劇場でいつか劇を見ようと誓いました。
今回の見学で素晴らしい体験ができて、鹿島建設や渥美財団の皆様に対して心から感謝しております。
(文責:解 放)