トンネル工事見学会報告
2014年11月12日、渥美国際交流財団の今西常務理事、石井さん、太田さん、角田さん、嶋津さんと2014年度奨学生10名が首都高速道路中央環状品川線シールドトンネル(北行)の工事現場を見学しました。
当日の13時20分にりんかい線品川シーサイド駅改札口で集合し、その後現場のマイクロバスで現場事務所に移動しました。事務所で所長さんや他の工事担当者から工事概要を説明していただきました。説明によると、首都高速道路中央環状品川線は、中央環状線(全線約47km)の南側部分を形成する長さ約9.4kmの自動車専用道路です。起点の大井ジャンクションで高速湾岸線から分岐した後、目黒川および環状第6号線(山手通り)の地下をトンネルで北上して、終点の大橋ジャンクションで現在供用中の中央環状線山手トンネル及び高速3号渋谷線に接続します。中央環状品川線の完成により、中央環状線は全線開通となります。それにより、首都高速道路全体のネットワークが効率よく機能します。新宿から羽田空港までは、現在都心環状線を経由して40分かかっていますが、中央環状品川線の開通により20分に短縮されます。都心環状線等の渋滞が緩和され、車の排出ガス量が減少し、環境改善の効果も期待できます。説明により、中央環状品川線の建設が非常に重要な意義を持つことが分かりました。また、施工者は鹿島建設だけではなく、熊谷組・五洋建設も加えられた、特定建設工事共同企業体となっていることが分りました。次に、トンネル工事で採用している周辺環境に優しいシールド工法を紹介していただきました。
その後事務所から用意されたヘルメットを全員がかぶり、安全ベストを着用し、トンネルに入る準備が整いました。初めてヘルメットをかぶった奨学生も少なくありませんでしたが、とても新鮮に感じられ、事務所の前で私たちがヘルメットをかぶった格好のまま集合写真を撮りました。
いよいよバスでトンネルに入りました。工事担当者たちも随行して下さりトンネルの建設についていろいろ説明していただきました。トンネルの中はほぼ完成した状態で、ライトがつけられ、地面が舗装され、トンネル壁面の一部にすでに白い板のようなものが設置されている状態です。十数分後、作業中の一か所に着いた後に、バスから降りて、詳しい説明をうかがうことができました。作業しているのはトンネル中の空気を入れ替える換気ファン扇の設置です。トンネル中の照明ライトはすべてLEDです。トンネル壁面に張り付けたものは高熱に耐えられる耐火パネルです。私たちは説明をうかがいながら、頷いたり、写真を撮ったりしていました。その後、トンネルの五反田の出入口まで見学し、入り口でも集合写真を撮りました。五反田出入口の建設はやや難題でした。というのも、その周辺にほかの交通機関や地下埋設物が多く存在し、それらへの影響を考慮し、地上からの作業を大幅に少なくすることができるパイプルーフアーチ工法を採用していたからです。最後にトンネルのなかの火災時の避難通路も歩きました。見学中、私たちは好奇心に溢れてわくわくしていました。
トンネルから出て事務所に戻り、見学後の感想の交流、質疑応答などが行われました。私たちが自分の関心から感想を述べ、様々な質問もしました。柳さんは地震が多発する国として、日本でのトンネルの建設にはどんな耐震策が考えられていたかどうかと質問しました。答えからは、地震が発生した時、地下の揺れがあると、シールドも同時に揺れて対応できるので、トンネルの中は地上より安全だと分りました。李さんは大工の道具についての研究を行っており、トンネルの掘進に使うシールドマシンのカッターの使用や交換について質問しました。最初の紹介により今回工事で使ったシールドマシンは外径12.55m、世界最大級のものと分りましたが、私たちを驚かせたのは、今回使用したシールドマシンは今回の工事のためだけに使うということです。シールドマシンはトンネルの径幅に合わせて作る必要があるので、毎回工事のプランに沿って新しく作り変えるようです。今回のシールドマシンを作るために、何十億円もかかったということです。ムラットさんは教育基礎学専門ですが、このような地下での長時間労働を行うため、いかに従業員たちに常に仕事を頑張るモチベーションを持たせたのかと質問ました。私も自分の生活経験からある疑問を聞きました。私は普段車を運転し、トンネルを走ったことがありますが、目で見えるトンネルの形は円の半分ですので、当然トンネルの断面の形も半分の円だと想像していました。しかし、説明によると、シールドマシンは円形にトンネルを掘進していました。従って、地下のトンネルの断面は円形になっており、円の直径が道路です。そして道路の上の空間は私たちが普段見るトンネルの中の空間であり、道路の下の空間にはいろんなパイプが通って、点検通路にもなっています。その答えを聞いて本当に不思議だと思いました。
私たちは専門がそれぞれですが、このようなトンネル工事現場を見学するのは人生初めてでした。今回の見学を通して、一見私たちの生活から離れているように見えますが、実際に関わっているトンネルの建設技術をよく実感、理解することができ、非常に勉強になりました。私たちは様々な感想がありましたが、共通しているのは、鹿島建設を代表とする日本の建設技術の素晴らしさに感動したことだと思います。このようなとても意義がある見学活動を催した渥美財団及び鹿島建設に心よりお礼を申し上げたいと思います。
(文責:胡艶紅)