蓼科2010旅行記
7月2日(金)
ほとんどの時間を研究室や図書館で過ごしている私にとって、緑いっぱいの自然に触れる今回の蓼科旅行は密かな楽しみであった。わくわくしながら荷造りをしていたら、トランクがすぐにいっぱいになってしまった。旅行先で論文など書けるわけがないと分かっていながら専門書やパソコンを入れてしまうのを、私達は「博論病」と呼んでいる。
朝8時半頃、新宿センタービル前は見慣れた人々が集まっていた。私達は、イヴゲニさんのフェースブックの内容に盛り上がり、美人のフィアンセを連れてきたマティアスさんの登場に大騒ぎしながら、まだ来ていない人を待っていた。
「SUWAガラスの里」で昼食を済ましてから向かった諏訪大社上社本宮。諏訪大社では、ちょうど今年の5月、7年に1度に行われる御柱祭(注:八ヶ岳の山中から伐りだされた樅の神木を運び、社殿の周囲に4つの柱を建てる)が行われたという。噂の御柱は、想像以上に大きくて、妙な威厳を感じさせられた。文化財に詳しい崔さんの面白い説明を聞きながら神社を回り、神社に行くたびにおみくじを買うという王さんにつられて私もおみくじを買った。真っ先に学業運を読んで今年の博論の運命について考えていたら、隣でも「学業運が・・・」、「博論が・・・」と騒いでいる。みんな考えることは同じなようだ。
宿泊するチェルトの森は、まさに森の中に囲まれている快適なところで、東京では考えられない気持ち良い涼しさと鳥の鳴き声が聞こえる静けさで心が癒された。しかも、噂どおり携帯電話が繋がらない!文明の利器が使えないことでホッと安心感を抱くのはなぜだろう。夕食の後に研修室で行われたオリエンテーションでは、チェルトの森や八ヶ岳について説明をしてもらったのち、互いに自己紹介を行なった。ルーティン化した日常生活の中では、自分の周りが世界のすべてだと思いがちだが、世の中には本当に様々な人々が、様々なライフスタイルの中で、多様な研究を行なっている。しかし、人々の心を愉快にさせる笑いは世界を貫く共通点であろう。リビングに集まった人々はビールを飲みながら旅の疲れを癒し、部屋に戻ってからは、これもまた世界共通である恋愛をめぐるガールズ・トークが深夜まで続いたのであった。
7月3日(土)
朝食の時間、ミヤさんの夫ジャクさんは、手慣れた感じで子どもの食事の世話をしていた。夫婦とも研究者であるミヤさんの場合、午前はパパが、午後はママが子どもの世話をするという。学業と子育てを上手に両立しているミヤさんの姿を見て、勉強だけで悲鳴を上げている自分が恥ずかしくなった。通訳の準備のため、ギップさんとミヤさんは早めに蓼科フォーラムに向かい、残りのメンバーは森の中を散策しながら自由時間を楽しんだ。湿気を含んだ美味しい空気を吸いながら、緑の中から時々現われる小屋のような別荘を見つけるのが楽しかった。李さんは、専門の漢字を使って色んなダジャレを披露してくれて、私達は腹を抱えて笑った。
第38回SGRAフォーラムでは、東アジアの7カ国の現状についての報告が行われた。自分の研究領域ではなかなか接することができない貴重な経験だった。パネルディスカッションでは、人間の幸福を数値化することが可能なのか、そして、先進国と途上国が同じ指標で幸福を論じることが妥当なのか、をめぐって激しい議論が行われた。理系の分野でも哲学的な議論が行われていることに少し驚き、自分の研究に置き換えて考えさせられた時間であった。
懇親会では、美味しい料理をいただきながら、フォーラムの際に話しきれなかった議論を続ける人々、八ヶ岳について説明を聞いている人々、みんなが楽しそうにしゃべっていた。特に私のツボだったのは、午後はお食事が禁じられているチャッポンさんの代わりだと言いながら、何と20皿以上を食べ尽くしたイヴゲニさん!雨のため花火は中止になってしまったが、集合写真を撮ることでまたみんなが楽しく盛り上がることができた。
7月4日(日)
今日はバーベキューパーティの日。朝食を済ませた後、国の自慢料理を披露する人々は少し早めにロッヂに向かった。大勢の人数が同時に料理を始めたので調理道具が足りなくなり、まな板や包丁を探し回ったり、材料が見つからず戸惑ったり、慌ただしい雰囲気の中で調理が始まった。しかし、少し時間が経ったら、包丁を譲ってあげたり、調味料を借りたり、貸したりしながら、お互いを気遣い合いながら楽しく料理を進めていたのである。
バーベキューパーティは、蘆さんの子どもの誕生日祝いから始まった。そして、料理を作った各国のシェフさんが料理について紹介をしてくれた。中国チームの水餃子、タイチームのグリーンカレー、インドネシアチームのサテ、そして、韓国チームのチャプチェとチヂミ、そして、焼き肉とキムチ盛りだくさん。台湾のお茶を入れた漢方スープのゆで卵、日本のおでん。しかも「おでん」と書いたのぼりまであって本格的だった。私は全部が美味しそうで、どれを先に食べるかを悩んでしまった。お腹いっぱいになるまで食べてしまい、最後の焼きそばはどうしても手が出なかった。そして、皆さんの声援のおかげで、韓国チームのチャプチェとチヂミはあっという間に完売!イェ〜イ!
みんなで片付けをしてから、最後にスイカ割りをした。私はスイカ割りを見るのが初めてだったので、何が起こるかトキドキしながら応援した。李さんと子どもが目隠しをして、棒を持って、チョコチョコ歩く姿はとてもかわいくて、Supredee先生の怪力のスイングでスイカを粉々にしたのと非常に対照的で面白かった。
このように忘れられない楽しい3日間はあっという間に過ぎてしまったのである。
(文責:尹ジンヒ)
蓼科旅行の写真は下記よりご覧いただけます。
谷原撮影
BBQパーティー 森本撮影