2008年度奨学生、東京国際空港D滑走路建設外工事を見学
2008年7月2日(水)、7月の例会とあわせて、財団の役員と2008年度渥美奨学生一同が羽田空港の滑走路拡張工事現場を見学した。工事の正式名称は「東京国際空港D滑走路建設外工事」と呼ばれるようである。理事長を始め、今西常務理事ら財団から4人、留学生10人が参加した。東京テレポート駅での集合は少し時間かかり、予定より20分遅れて羽田総合事務所に到着した。事務所に到着してから、早速阿部 洋管理部長から工事に関する説明会が開かれた。
羽田空港は、日本国内航空旅客の60%が利用する空港で、航空需要の増大により能力は限界に達している。現在A,B,C三つの滑走路があり、建設中のD滑走路は4番目の滑走路となる。D滑走路の完成によって羽田空港の発着能力は現在の約30万回から40万回に増強される。D滑走路の建設は沖合における桟橋と埋立てからなる工事で、鹿島建設を筆頭に15社が建設に関わっている。2010年までに完成する予定で、総工事費は5700億円に上るという。環境へ十分配慮した設計で、多摩川の流れをせき止めないように、滑走路の3分の1が桟橋になっている。最初から桟橋と埋立てを混合した滑走路としては世界で初めてという。
説明を受けてから、ヘルメット、ライフジャケット、軍手を着用し、船に乗って工事現場に向かった。好天気にもめぐまれ、長い間研究室に閉じ込められていた留学生の皆さんは大興奮した。皆、船の屋上に登って風に吹かれ開放感を楽しんだ。1人がヘルメットを海に落す小さなエピソードがあったが、みんな無事だった。工事は急ピッチで進んでおり、桟橋部分の工事はかなり進捗していて、埋立て用の土を山積んだ船も見えた。約1時間かけて工事現場を回り、事務所に戻ってきた。
戻ってから質問の時間が設けられ、私はあえて最初に挙手して質問した。多摩川の流れをせき止めないために工夫した設計によって、工事コストがどれぐらい上昇したかを知りたがった。担当者によると、この設計は単なる事業者と建設業者からの配慮だけではなく、法律による詳しい基準にしたがったものであるという。日本の環境関連法律は充実していることを実感した。はっきりした答えがなかったけど、コストのことはどうしても気になってならないので、帰ってから自分で計算してみた。計算は以下の通りである。
埋立て部分の長さは全体の約3分の2、桟橋部分の長さは約3分の1。コストは半々。5700÷2=2850だから、埋立てと桟橋それぞれ約2850億円かかる。全部桟橋にした場合:2850×3=8550億円。全部埋立てにした場合:2850÷2×3=4275円かかる。したがって、多摩川の流れを妨げないように工夫して5700−4275=1425億円を投入していることになる。莫大な金額である。それに比べて、環境への関心が世界的に高まっている今日でも、乱開発によって環境が破壊されている国がたくさんあるのは残念なことである。
そのほかにも、杭やジャケットの耐久性などに関する質問があり、工事担当の坂本好謙工事長が丁寧に答えてくれた。今回の見学会の段取りをすべて用意してくださった、鹿島建設の皆さんに感謝したい。
見学が終了してから、みんなでお台場を散策し、一緒に食事をした。美味しいビールを楽しみながら、いろんな話題に花を咲かせた。参加の皆様お疲れ様でした。
(文責:ネメフジャルガル)
フローニさんが撮った写真はここからご覧いただけます。