付録 ―――――――――――――――――――――――――――
近年の交通・通信手段の発達により、海外旅行者の数はめざましく増加し、また、世界中の出来事が即座に伝えられるようになりました。このような時代に生きる私たちは、もはや国家という単位ではなく、国際社会の一員として物事をとらえていかなければならないのではないでしょうか。しかし、現在経済大国となった日本は、国際的な活動をもっと積極的に押し進め、世界に対してより大きな役割を果たすことができるのではないかと指摘されています。
渥美国際交流奨学財団は、1993年10月14日に物故いたしました渥美健夫鹿島建設名誉会長の遺志により、このような状況にあります日本の国際化の推進に、ささやかながらもお役に立ちたいという願いをこめて設立されました。当財団は諸外国から日本の大学院に留学している優秀な学生に対し、奨学支援をいたします。日本にやって来た留学生が、学問を成就するだけでなく、豊かな文化や社会に触れ、より大きな収穫を得ることができますようお手伝いさせていただきたいと思います。
渥美氏は、アジア・西太平洋建設業協会国際連盟(IFAWPCA)会長、世界建設業連盟(CICA)会長、および社団法人CISV日本協会会長を長年にわたって勤め、国際交流に尽くしてまいりました。CISV(国際夏期子供村)とは、「世界の平和を築くためには子供の時から機会を与え、国籍・人種・言語を越えて同じ人間であることを肌で実感させることがなにより大切」という理想のもとに1951年にアメリカで始められた平和運動で、毎年世界各地で子供たちを集めてキャンプを行なっています。また、渥美健夫・伊都子夫妻は、ニュ−ヨ−クのコロンビア大学に日本美術史の冠講座を寄附いたしました。これによりコロンビア大学では、日本美術史の教授職が常置されることになりました。
渥美国際交流奨学財団は、渥美氏の国際交流の信念を引き継ぎ、一層の発展をめざして、活動してまいりたいと思います。若者たちがより大きな世界を知るよう支援させていただくことによって、人々の心の中に国際理解と親善の芽が生まれ、やがては世界平和への道がひらかれてゆくことを願っております。