二十一世紀の地球環境に向けての日本
キョ ショウゲン
許 暁原
東京大学 博士(農学生命科学)
日本学術振興会外国人特別研究員
東京大学農学生命科学研究科在籍
私は環境ストレスに対して興味を持っているので、先日、日本文部省の「東アジアにおける地域の環境に調和した持続的生物生産技術開発のための基盤研究」年度大会を聞きに行きました。とても驚かされました。
このプロジェクトは1990年から始まり、五年ずつで合計10年間続けています。今年は最後の年です。参加者は約千人で、日本の大学で関連する分野の専門家と、研究が行われている外国の協力者です。
この研究では、東アジアの環境を維持しつつ生物生産の持続性を確保するために、合理的土地利用や生物資源の有効利用のための新たな方法論、および投入エネルギーの少ない生物生産のための新たな技術の開発が必要であります。
このため、タイ南部の湿地林、マレーシア、インドネシアの熱帯雨林の丘陵林、三河平原の塩類土壌、中国の内陸乾燥地域はそれぞれ特有の環境問題を抱えており、持続的な生物生産を達成するためには重要な実験場と選ばれました。
今まで約10年間の研究範囲が広く、研究内容が深く、細かくデータを集めて分析していること、さらにその研究結果が有用なものであることに対して、私はとても感心しました。そして、日本人がなぜこういう研究を行ったのだろうかと思いました。
20世紀に入って人類の急激な人口の増加がみられてます。60億近くに達しようとしていると思われます。いわゆる人口爆発という現象です。このうち我々の関係するアジアの人口は34億人であり、45億のいわゆる開発途上国の実に4分の3を占めています。しかしながら、食糧の増産が人口増に追いつくという保証は現在全くありません。
アジアにおける日本とは何か、あるいは日本にとってアジアとは何か、といったような問いに対してすべての面で応えるために大きく役に立つのではないかと考えています。
21世紀はすでにアジアの時代と言われていますが、最近の新聞の報道によりますと、ややそれにもかげりが見えてきたのではないか、という見方もあります。しかしながら我々はアジアの持つ資源と、アジアの人間の英知を考えるならば、21世紀に向けてのごくわずかなこのようなかげりも微動にすぎないと確信しています。大きな未来があると信じて疑いません。このようなアジアに関する研究は、アジアの一員である日本にとっても極めて重要な意味をもっていると考えられます。なぜなら、アジアの生物資源や環境の研究は、日本のこの分野の研究に重大な影響を与えるだろう。さらに同時に行われるアジアの文化・政治経済に関する研究は当然日本にも大きな影響を与えるだろう。