これからの日本が歩まなければならない道

リ  ジュホ
李 周浩

東京大学 博士(電子情報工学)
東京大学生産技術研究所機関研究員

 

 20世紀を代表する発明品といえば電気を使う有・無線通信、電子計算機などであろう。これらの発明によって世界は一つになり、世界の何処かで生じる出来事が早速に世界中の人々に伝えられる。いま流行っているインターネットは情報世界では国境が無いことを良く見せてくれる。しかし、電話、インターネットなどの通信技術がいくら発達していても人間が物理的に移動しなくてはならない必要性は多少減少したものの根本的には変わらないのが現状である。人間の移動手段の発展は情報処理・伝達の発展に比べるてわりと小さなものである。その理由は主に人間そのものが持っている制限によるもので、例えば特別な訓練を受けてない人が超高速飛行機に載れないのと同じである。こういった理由で世界が一つになり、国境が無くなったといっても地域区別による世界の分類は無くならないと予測できる。

 今後の世界を導く主役になるグループはヨーロッパグループ、北アメリカグループ、それからアジアグループであろう。日本は今までは国々間の競争で勝ちつづけてきたが、今までとは異なり日本も単独で世界と戦うことは不可能に近いものである。世界の競争が小さな国の単位から同じ地域にある国のグループ単位に変わった。日本が属しているアジアは他のグループに比べ少々団結が遅れている。日本、韓国、中国などの国が含まれている東アジアの場合もその中なら何処へ行っても4時間以内だし、制度次第で一つの国のように有機的に結合して動くことも可能であろう。現在、日本はアジアの中で技術的に、経済的に一番先頭を走っている国である。したがって、日本は偏狭な国粋主義を棄て、アジア団結の先駆者にならなければならない。そのためには日本が今よりもっと制度、政策面においてこのような事項を考慮して決めるべきである。

 しかし、現在の日本はまだそんなに成熟していない。アジアのリーダとしての自分の立場を認識していないのである。私が最近経験した簡単な実例を一つあげてみる。私は今年3月東京大学を卒業して東京大学の付属研究所の一つに就職した。当然私も外国人が日本に滞在するために必要な在留資格を学生の身分であったごろ持っていた留学資格から就労資格に変えなければならなかった。しかし、私はここであるジレンマに陥ってしまった。資格を変更するためには辞令あるいは在職証明書が必要だったが私が辞令をもらったのは4月8日。研究所側は東大から新年度の予算が来ない限り予算案をたてることができないため研究員を採用することができなかったためであった。仕方なく遅れた辞令を持って入局管理所へ資格変更のためにいったら申請を受けて審査し、新しい資格がおりるのに3週間かかるといわれた。驚くべき事実がわかったのは申請を済ませ、研究所に戻ってからだった。新しい在留資格がおりた日から給料を清算するとの話だった。もちろん私の契約期限は4月1日からであった。私は一生懸命不当性を抗議したが、私の異議は受け入れてもらえなかった。日本人の場合は辞令が遅れてもさかのぼって4月1日から給料が支給されるが、外人の場合は今まで就労資格がおりた日から給料を計算したので、みんな4月の給料はもらえなかったというのが私には納得できない研究所側の理屈であった。結局私の新しい資格がおりたのは四月の下旬、学生でもなかった私は一ヶ月近く不法滞留者だったのか?このような不合理性の改善は努力さえすればちっとも難しいことではない。

 日本がアジアの先頭に立って指揮するためには小さなことから変えなければならない。莫大な経済力だけでその場で立とうとすると日本帝国主義の復活にすぎない。進んでいる経済・技術基盤の上、相手を理解して行動する成熟した姿勢で強力なアジアを構築する日本の未来を期待している。