SGRAメールマガジン バックナンバー

  • KATO Kenta “Rethinking ‘International Exchange Concerns'”

    ********************************************** SGRAかわらばん987号(2023年10月19日) 【1】エッセイ:加藤健太「『国際交流への関心』再考」 【2】催事紹介:第18回INAF研究会(10月29日、オンライン) 「アメリカの政治情勢と対東北アジア戦略」 【3】第10回日台アジア未来フォーラムへのお誘い(最終案内) 「日台の酒造りと文化:日本酒と紹興酒」(10月21日、島根県松江市) ********************************************** 【1】SGRAエッセイ#749 ◆加藤健太「『国際交流への関心』再考」 2022年度渥美奨学金に応募する際に自己紹介文として「国際交流への関心」について書くように言われ、私は以下のようなことを述べた。少し長くなるが、部分的に抜粋し、引用しよう。 国際交流は、私にとって、青年期からの憧れであると同時に、それが故に批判の対象でもありました。[…]留学を二度経験し異文化交流の楽しさを享受してきた一方で、国際的な環境の内部に存在する力関係を感じ取るようになりました。特に大学院に進学し学問と真剣に向き合うようになってから、学術的な言説空間における英語中心主義を実感しています。[…]英語を身につけ、映画学の文献を英語の原書で読み、海外の学会において英語で発表することに奮闘していた修士課程時代の私は、すぐにアカデミアに存在する不均等な関係性に気付かされることとなります。国際的に活躍できる学者になりたいと夢見ていたものの、まさにその「国際」という言葉を疑問視することがなかったがために、自分もアメリカを中心とした知の秩序を無批判に受け入れていたのです。[…]国際的な学術活動に積極的に参加することで、常にその「国際性」を疑問視できるような研究者になりたいと考えています。 1年以上前の文章ではあるが、今読むとなんて生意気なことを応募書類に書いたのだろうかと思う。ただ当時の気持ちとしては「国際交流は他国の社会・文化の理解促進につながりとても有意義である」というお行儀のよい薄っぺらな文章は書きたくなかったのだ。仮にこれで奨学金をもらえなくても自分の意見をしっかりと表明したい、という妙な意地もあったかもしれない。いずれにせよ、こんな生意気な自分を快く迎え入れてくれた渥美財団の懐の広さには今でも驚いている。 渥美財団で1年間過ごして、私の「国際交流への関心」に何か変化はあっただろうか。奨学生としての期間を終えた今、簡単に振り返ってみたい。 正直に言えば、そこまでの変化はなかったように思う。2022年度は16人が奨学生として採用され、内11人が留学生、5人が日本人である。十分に「国際的」と言える環境ではあるが、他の奨学生と接する際は、留学生ではなく、同じく研究者を志す学生として、研究や大学の話をしていた印象が強い。また、2022年度は初めて日本人を奨学生として迎えた年でもあり、何かある度に「初めての日本人奨学生として…」というフレーズが頻繁に使われていた。しかし、これも一種の枕詞と化しており、留学生が多くいることで逆に自分が日本人であることを認識させられるような体験とは異なるものであった。もちろん、「国際性」を意識せずに済んだのは、自分が日本人であり、使われている言語も日本語であったからで、留学生は違う体験をしたかもしれない。それでも、最初の集いの自己紹介テーマが「あなたは犬派?猫派?それとも何派?」であったように、あまり国際交流という側面は強調されていないように感じた(このテーマは今でも強く印象に残っている)。 しかし、現在の社会では国内利益のための「国際化」がより強くなっているように感じられる。外国人技能実習生の過酷な労働環境や、外国人が日本の素晴らしさを褒めちぎるテレビ番組の氾濫などは、その最たる例であろう。また、「反日・親日」といった、特定の個人・国家を「日本のことが好きか嫌いか」という単一な尺度で判断する国家主義的な言説も多くみられるようになった。もちろん、「国際化」(inter-nationalization)という言葉の通り、それは国家間の交流であり、そこでは国の存在が前提として置かれている。したがって、「国際化」が「日本」という想像された共同体を構築することは自明のことである。しかし、「国際化」が相互理解ではなく、自国の利益のために促進される傾向が顕著になっているのではないか。 この1年で、自己紹介文に書いたような、「国際」という言葉の実践からその「国際性」を疑っていきたい、という気持ちは更に深まったように感じる。しかし、渥美財団の集いでは驚くほどにそういったことを考えなかったのも事実である。基本的に悲観的な性格ではあるが、奨学生として1年間過ごしたことで、一時的にでも楽観的にさせてもらえたかもしれない。 <加藤健太(かとう・けんた)KATO, Kenta> 2022年度渥美国際交流財団奨学生。2023年9月早稲田大学国際コミュニケーション研究科博士後期課程修了。博士(国際コミュニケーション学)。2023年4月より早稲田大学国際教養学部助手。専門は映画研究で、主に日本映画をクィア理論、男性学の観点から分析している。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】催事紹介 SGRA会員で東北亜未来構想研究所(INAF)所長の李鋼哲先生から研究会のお知らせをいただきましたのでご紹介します。希望者は主催者へ参加申込をお願いします。 ◆第18回INAF研究会「アメリカの政治情勢と対東北アジア戦略」 講師:イマニュエル・パストリッチ(アジア・インスティチュート所長・理事長) 日時:2023年10月29日(日)17:00~18:30 方法:オンライン パストリッチさんはアメリカ出身のユダヤ人で、中国語・韓国語・日本語が流暢で東アジアの文化に造詣が深い、ユニークな方です。現在のアメリカ政治に厳しい見解を持っており、前回のアメリカ大統領選挙にも出馬宣言されました。東アジア3国の協力を主張し、日中韓三カ国語で数多くの書籍を出版。 詳細は下記リンクよりご覧ください。 http://inaf.or.jp/ -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【3】第10回日台アジア未来フォーラム@島根へのお誘い(最終案内) 日台アジア未来フォーラムは、台湾出身のSGRAメンバーが中心となって企画し、2011年より毎年1回台湾の大学と共同で実施しています。コロナ禍で3年の空白期間がありましたが、今年は例外的に日本の島根県で開催することになりました。皆さんのご参加をお待ちしています。諸準備のため参加ご希望の方は早めにお申し込みいただけますと幸いです。 テーマ:「日台の酒造りと文化:日本酒と紹興酒」 日 時:2023年10月21日(土)14時~17時10分 会 場:JR松江駅前ビル・テルサ4階大会議室(島根県松江市朝日町478-18) https://goo.gl/maps/2GB6p1bUwVAAkaiG8 言 語:日本語・中国語(同時通訳) ※参加申込(クリックして登録してください) http://bit.ly/JTAFF10 お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ◆開催趣旨 東アジアの主食である米を発酵させた醸造酒は、各地でそれぞれ歴史を経て洗練されたが、原料が同じなだけに共通点も多い。代表的な醸造酒に日本では清酒(日本酒)、中国では黄酒(紹興酒)がある。島根は日本酒発祥の地とされ、日本最古の歴史書『古事記』にも登場する。一方、台湾では第二次世界大戦後に中国から来た紹興酒職人が、それまで清酒が作られていた埔里酒廠で紹興酒を開発し量産に成功した。台湾で酒の輸入が自由化されるまでは、国内でもっとも飲まれる醸造酒であった。中国の諺に「異中求同」(異なるものに共通点を見出す)があるが、今回は醸造酒をテーマに相互理解を深めたい。フォーラムでは島根の酒にまつわる漢詩を紹介していただいた後、日本と台湾の専門家からそれぞれの醸造技術と酒文化について、分かりやすく解説していただく。日中同時通訳付き。 ◆プログラム 講演1:「近代山陰の酒と漢詩」要木純一(島根大学法文学部教授) 講演2:「島根県の日本酒について」土佐典照(島根県産業技術センター) 講演3:「台湾紹興酒のお話」江銘峻(台湾煙酒株式会社) 全体質疑応答 ※詳細は下記リンクをご参照ください。 https://www.aisf.or.jp/sgra/active/taiwan/2023/18448/ ※ポスターは下記リンクからご覧いただけます。 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2023/06/JTAFF10PosterJ_Lite.png ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************  
  • Chieko HIROTA “Me as a Part of the Universe”

    ********************************************** SGRAかわらばん986号(2023年10月12日) 【1】エッセイ:廣田千恵子「宇宙の一部としての私」 【2】寄贈書紹介:奥本素子編『サイエンスコミュニケーションとアートを融合する』 【3】第19回SGRAカフェへのお誘い(最終案内) 「国境を超える『遠距離ケア』」(10月14日、東京+オンライン) 【4】第10回日台アジア未来フォーラムへのお誘い(再送) 「日台の酒造りと文化:日本酒と紹興酒」(10月21日、島根県松江市) ********************************************** 【1】SGRAエッセイ#748 ◆廣田千恵子「宇宙の一部としての私―これまでの研究と財団での経験を振り返りつつ―」 先日、ご縁があってインド占星術というものを体験した。日本では日常的にテレビや雑誌で「占い」を目にするが、あれらはいわゆるライターによって書かれていると聞いてから、私は占いを「人生に対する上手なアドバイス」程度に捉えていた。そんな私がどうしてわざわざ自分を見てもらおうと思ったのか。それには2つの理由がある。 ひとつは、インド占星術そのものに関心を抱いたからだ。インド占星術とは、日本で一般的な西洋占星術よりも遥か以前に誕生していた星を読む方法である。インド占星術師は見る相手の生まれた時間の分数と場所を正確に知ることによって、その人が誕生したときにその人を中心とした空にあった星を調べ、この宇宙におけるその人の位置や人生の巡り方を示してくれる。それはまるで、私という人間がこの世に誕生した瞬間を覗くことのように思えた。 そして、もうひとつの理由は、ここ十数年程で目まぐるしく変化した私の人生が、自分の意思というよりはまるで何かに導かれているように感じていたことによる。 私の研究テーマは、モンゴル国にて少数民族として暮らすカザフ人の装飾・手芸文化の動態の解明である。具体的には、カザフ人が天幕型住居の内部を主な装飾の対象としている点に着目し、人々がなぜ住居内部を熱心に飾ろうとするのか、どのように装飾技法を継承してきたか、あるいはどのように変化してきたのかといったことを明らかにしてきた。 しかし、私は元々モンゴル好きだったから大学でモンゴル語専攻を選択したわけでもないし、ましてやモンゴルに行くまでカザフという人々の存在を全く知らなかった。とくに手芸に詳しかったわけでも、長けているわけでもない。つまり、この研究テーマを選んだのは、言ってしまえば不思議な偶然が重なった結果である。それでも、偶然の出会いは、今の私の人生を大きく動かしている。 振り返ってみると、私はある時期を境に、何かに導かれていると感じることが多々あった。今の研究テーマに出会うまでは、自分が研究者を志すとは夢にも思っていなかった。そうして調査や研究を進めていく中で、うまくいくときもあれば、困難に直面することもあった。しかし、その都度ぼんやりと、それぞれの出来事には何か理由があるように感じていた。 たとえば、渥美国際交流財団に採用されたことも、そう感じる出来事の一つだった。修業年限を超過していた私ははなから奨学金を受給することは無理だと思っていた。しかし、友人から渥美国際交流財団の募集要項を紹介され、まるで導かれるように面接を受けた。そして、この財団の奨学生として採用されたとき、「神様」が私に今が博士論文を終わらせる時期であることを教えてくれたように感じた。 神様からのメッセージは財団で出逢った人たちとのかかわりの中にも隠れていた。渥美財団で出逢った人たちは、所属も研究テーマもバラバラで、何一つ共通点はないようにみえる。でも「何かを深く探求する」という点において、私たちは皆同じだ。だからこそ、渥美財団で同期や他の奨学生に会って、それぞれの話を聞く時間は私にとっては楽しく、刺激的で、多くの学びを得た。良い同期に恵まれたことは偶然であり、しかし必然だったのかもしれない。 こうした中、博士論文の執筆が落ち着いて次の進路を意識し始めた頃から、公私共に明確に新しい変化が起こりだした。まるで何か大きな目にみえないものの動きの中で自分が流されているような感覚を覚えた。これがいわゆる「転機」というものなのだろう。そんな中で出逢ったのが、インド占星術だった。 占星術師から渡されたのは、私が生まれた時間に生まれた場所の空にあった星の位置を記号で示した紙数枚と、私が生まれてから120歳を迎えるまでの年月日が星の巡りごとに細かく分けられ示されたカレンダーだった。そして、その年月日の羅列こそが、私を最も驚かせた。カレンダーで示された私が生まれた時からの星の巡りの中で、「転換期」として示されていた時期は、いずれも私が初めて調査地を訪れた年、博士課程に進学した年、そして博士論文を提出した時期と一致していたのだ。私は人よりも時間をかけて得た博士号だったけれど、もしかしたらこれが私の星の巡りに合った時間の使い方だったのではと思うと、ふと笑いがこぼれた。私という人間の人生も、実は大きな宇宙の動きの一部に位置づけられているかもしれないと思えたからだ。 インド占星術ではその後の自分の行動に対して何か具体的な指針が示されることはない。けれども、私には十分すぎる体験だった。博士論文の執筆を終えた今、私は遂に一人の「研究者」としての道を歩いていくことになる。それは決して楽な道ではないかもしれない。しかし、自分の存在にこの宇宙の中で何かの使命が存在しているとするならば、私はただ恐れることなく、自分ができることにひたすら邁進して歩み続けるしかないのだ。 <廣田千恵子(ひろた・ちえこ)HIROTA_Chieko> 2022年度渥美国際交流財団奨学生。2023年3月千葉大学博士後期課程修了。博士(学術)。2023年4月より日本学術振興会特別研究員PD(北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター)。専門は文化人類学、民族学、地域研究。主な調査対象は中央ユーラシアにおけるカザフの装飾文化動態および牧畜研究。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】寄贈書紹介 SGRA会員で北海道大学特任講師の朴炫貞さんから共著書をご寄贈いただきましたのでご紹介します。 ◆奥本素子編『サイエンスコミュニケーションとアートを融合する』 先端的な科学技術が社会に実装される際に、その間をつなぐものがサイエンスコミュニケーションである。そこにアートを取り入れたとき、どのようなコミュニケーションが生まれるのか。本書ではアートとサイエンスコミュニケーションの交差の歴史を紹介しながら、アートを活用した活動のデザインについても触れていく。 執筆者:奥本素子、仲居怜美、朴炫貞、室井宏仁〈日本学術振興会助成刊行物〉 発行 ひつじ書房 定価5000円+税 A5 判上製カバー装 272頁 ISBN978-4-8234-1175-5 ブックデザイン 三好誠(ジャンボスペシャル) 詳細は下記リンクをご覧ください。 https://www.hituzi.co.jp/hituzibooks/ISBN978-4-8234-1175-5.htm -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【3】第19回SGRAカフェ「国境を超える『遠距離ケア』」へのお誘い(最終案内) 仕事や子育てなど日々の暮らしを支えている要素は様々ですが、自分を育ててくれた家族の存在も年齢を重ねるごとに実感します。コロナのように渡航ができなくなればなおのこと、そばにいないでどこまで家族をケアできるのかが問題になります。今回のカフェでは、進学やキャリアで母国から遠く離れて暮らす世代が、親や家族をどうケアできるかを出発点として、グローバル化、ITの力、そして、家族の寄り添い方など多様な観点からいろいろな体験談を交えて議論します。 参加をご希望の方は、会場、オンラインの参加方法に関わらず事前に参加登録をお願いします。 テーマ:「国境を超える『遠距離ケア』」 日 時:2023年10月14日(土)14:00~16:00 方 法:会場(渥美財団ホール)およびオンライン(Zoomミーティング) 言 語:日本語 主 催:(公財)渥美国際交流財団関口グローバル研究会[SGRA] ※参加申込:下記リンクより参加登録をお願いします。 https://us02web.zoom.us/meeting/register/tZEldeGvqDIoHtGhPStPxtyAE8hKB4YAyGdw#/registration お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ■フォーラムの趣旨 社会がグローバル化する中で世界を移動する人々の数も急激に増加している。国連の2013年の調査によると世界人口の約3.2%が移動人口に当たると言われている。日本に目を向けると、外国人移住者数も年々増加しており、滞在の長期化も進んでいる。出入国在留管理庁のデータによると、2022年6月末の在留外国人数は296万人で、前年末に比べ20万人(7.3%)も増加したことが分かった。 こうした変化の中、在日外国人移住者もまた新たな課題に直面している。在日外国人移住者は日本での生活基盤を自ら構築することはもちろん、母国に残る家族の健康、介護問題も考えざるをえない。こういった外国人ならではのライフワークバランスはキャリアにも影響する。またコロナ禍では、日本における外国人の(再)入国制限のため自由に日本と母国の間に行き来できず、帰国したくてもできなかった事例や、家族のために日本での生活を諦めて帰国を選択した者も見られる。 今回のカフェでは ・日本における国境を超える遠距離介護の実態と背景 ・海外における事例と取組み ・課題の改善策 の3点について参加者と一緒に考え、ディスカッションを通して継続的に成長するグローバル社会に有意な示唆を得る事を目的とする。 ■プログラム 14:00 開会挨拶 14:05 ケア状況や遠距離ケア問題について紹介 14:55 質疑応答 15:10 ディスカッションの準備(グループ分けと課題の提起) 15:15 グループディスカッション 15:35 ディスカッション内容の報告 15:55 閉会挨拶 ※プログラムの詳細は、下記リンクをご参照ください。 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2023/09/Cafe19_Program.pdf ※ポスターは下記リンクからご覧いただけます。 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2023/09/cage19_poster.jpg -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【4】第10回日台アジア未来フォーラム@島根へのお誘い(再送) 日台アジア未来フォーラムは、台湾出身のSGRAメンバーが中心となって企画し、2011年より毎年1回台湾の大学と共同で実施しています。コロナ禍で3年の空白期間がありましたが、今年は例外的に日本の島根県で開催することになりました。皆さんのご参加をお待ちしています。諸準備のため参加ご希望の方は早めにお申し込みいただけますと幸いです。 テーマ:「日台の酒造りと文化:日本酒と紹興酒」 日 時:2023年10月21日(土)14時~17時10分 会 場:JR松江駅前ビル・テルサ4階大会議室(島根県松江市朝日町478-18) https://goo.gl/maps/2GB6p1bUwVAAkaiG8 言 語:日本語・中国語(同時通訳) ※参加申込(クリックして登録してください) http://bit.ly/JTAFF10 お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ◆開催趣旨 東アジアの主食である米を発酵させた醸造酒は、各地でそれぞれ歴史を経て洗練されたが、原料が同じなだけに共通点も多い。代表的な醸造酒に日本では清酒(日本酒)、中国では黄酒(紹興酒)がある。島根は日本酒発祥の地とされ、日本最古の歴史書『古事記』にも登場する。一方、台湾では第二次世界大戦後に中国から来た紹興酒職人が、それまで清酒が作られていた埔里酒廠で紹興酒を開発し量産に成功した。台湾で酒の輸入が自由化されるまでは、国内でもっとも飲まれる醸造酒であった。中国の諺に「異中求同」(異なるものに共通点を見出す)があるが、今回は醸造酒をテーマに相互理解を深めたい。フォーラムでは島根の酒にまつわる漢詩を紹介していただいた後、日本と台湾の専門家からそれぞれの醸造技術と酒文化について、分かりやすく解説していただく。日中同時通訳付き。 ◆プログラム 講演1:「近代山陰の酒と漢詩」要木純一(島根大学法文学部教授) 講演2:「島根県の日本酒について」土佐典照(島根県産業技術センター) 講演3:「台湾紹興酒のお話」江銘峻(台湾煙酒株式会社) 全体質疑応答 ※詳細は下記リンクをご参照ください。 https://www.aisf.or.jp/sgra/active/taiwan/2023/18448/ ※ポスターは下記リンクからご覧いただけます。 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2023/06/JTAFF10PosterJ_Lite.png ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************  
  • Nora WEINEK “Grimm’s Fairytales and Archetypes”

    ********************************************** SGRAかわらばん984号(2023年10月5日) 【1】エッセイ:ノーラ・ワイネク「グリム童話とアーキタイプ」 【2】寄贈書紹介:林少陽『戦後思想と日本ポストモダン』 【3】第19回SGRAカフェへのお誘い(再送) 「国境を超える『遠距離ケア』」(10月14日、東京+オンライン) 【4】第10回日台アジア未来フォーラムへのお誘い(再送) 「日台の酒造りと文化:日本酒と紹興酒」(10月21日、島根県松江市) ********************************************** 【1】SGRAエッセイ#746 ◆ノーラ・ワイネク「グリム童話とアーキタイプ」 グリム童話はヨーロッパの文化的遺産であり、世界中で愛されている童話の一つでもある。グリム兄弟が編集した童話には、豊かな人間の内面に対する洞察が含まれている。しかし、昔の人の単なる物語ではなく、無意識に常識を共有し、感情やトラウマを昇華する重要なツールでもあった。 グリム童話は人間の共通の心の構造であるアーキタイプ(心理的原型)を体現する物語を多く含んでいる。アーキタイプは人間に生まれ持ってそなわる集合的無意識で働く「人類に共通する心の動き方のパターン」である。ユング心理学の中核的な概念で人間の共通の心の構造でもあり、無意識に作用する力を持つ。人間の不可解な部分を理解し、何を望んでいるか、そして何を恐れているかを理解するための重要な要素だ。 名作『シンデレラ』を分析してみよう。アーキタイプを象徴する要素がたくさん含まれている。主人公は母親を失った孤独な少女であり、悪意ある義母と義姉たちに虐待されている。家庭の状況に対して自分自身を犠牲にしているように見えるが、彼女の真の力は内面にある。彼女は偽りのない心、博愛、そして自己犠牲精神を象徴するアーキタイプを体現している。 シンデレラは魔法使いである「フェアリーゴッドマザー」というアーキタイプともつながっている。フェアリーゴッドマザーは無限の可能性を象徴し、新しい始まりと成長をもたらす力を代表する。シンデレラに魔法をかけ、魔法のカボチャの馬車と美しい衣装を与える。これらのシンボルは新しい可能性と、自己変革を象徴する。また、シンデレラに「真実を言いなさい」という言葉を残すが、これは自分自身を認識し、自分自身を表現するための重要性を強調するアドバイスでもある。 そして王子との出会いを通じて、シンデレラは愛のアーキタイプを体現する。王子はシンデレラの魂の深い部分を理解し、彼女を愛することができる。この愛の関係は自己認識と成長を促し、シンデレラを真の幸福へ導く。ユング心理学的な観点から見ると、私たちが内面に持つアーキタイプを通じて、潜在意識の深い部分を認識することが可能となる。 『白雪姫』は美と嫉妬というアーキタイプを体現する物語である。白雪姫の美しさは彼女を破滅に追いやり、王妃の嫉妬心を引き起こす。王妃は魔法の鏡に自分の美しさを問い、鏡が白雪姫を美しいと答えたことで、白雪姫を殺すために彼女を追い詰める。この物語は美と嫉妬のアーキタイプが、人間の深層心理にどのように作用するかを示している。 『ラプンツェル』は自由、成長、そして愛のアーキタイプを体現する。主人公は塔に閉じ込められ自由を奪われている。しかし、自分自身を表現する方法を見つけ、自分自身を解放する。王子との出会いを通じて愛を見つけ、自分自身の成長につながる新しい始まりを迎える。この物語は人間が自由を手に入れ、自己表現を追求するプロセスが、成長と愛につながることを示している。 このように、グリム童話は人間の深層心理に影響を与えるアーキタイプを体現する物語を多く含んでいる。ユング心理学的な分析を通じて隠された意味を理解することができ、私たちは自分自身をより深く理解し、自己受容と成長を促すことができる。グリム童話は人間の心の深い部分を探求するための貴重な資源であり、人生の新しい始まりを迎えるためのヒントを提供している。私たちの人生において何か障壁に直面した時、グリム童話を読むことをお勧めする。きっと様々な問題に対して、より深い理解を与え、何らかの解決策もしくはヒントを提示してくれるだろう。 <ノーラ・ワイネク Nora_Beryll_WEINEK> オーストリアのウィーン出身。2011年日本文化研修留学生として琉球大学に1年留学。2013年オーストリアのウィーン大学日本学学部卒業。2017年一橋大学大学院社会学研究科の修士課程卒業し、博士課程に進学。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】寄贈書紹介 SGRA会員で澳門大学教授の林少陽さんから新刊書をご寄贈いただきましたのでご紹介します。 ◆林少陽『戦後思想と日本ポストモダン:その連続と断絶』 70年代末からおよそ40年にわたるポストモダンの流行は日本の思想界に何をもたらしたのか。丸山眞男「悔恨の共同体」から柄谷行人「世界史の構造」へと至る戦後思想の連続と断絶を、東アジアの視点から描く現代日本思想史。 発行 白澤社、発売 現代書館 定価 3,300円(本体3,000円) 体裁 四六判上製、264頁 ISBNコード 978-4-7684-7998-8 発売日 2023年8月 詳細は下記リンクをご覧ください。 https://hakutakusha.co.jp/book/9784768479988/ -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【3】第19回SGRAカフェ「国境を超える『遠距離ケア』」へのお誘い(再送) 仕事や子育てなど日々の暮らしを支えている要素は様々ですが、自分を育ててくれた家族の存在も年齢を重ねるごとに実感します。コロナのように渡航ができなくなればなおのこと、そばにいないでどこまで家族をケアできるのかが問題になります。 今回のカフェでは、進学やキャリアで母国から遠く離れて暮らす世代が、親や家族をどうケアできるかを出発点として、グローバル化、ITの力、そして、家族の寄り添い方など多様な観点からいろいろな体験談を交えて議論します。 参加をご希望の方は、会場、オンラインの参加方法に関わらず事前に参加登録をお願いします。 テーマ:「国境を超える『遠距離ケア』」 日 時:2023年10月14日(土)14:00~16:00 方 法:会場(渥美財団ホール)およびオンライン(Zoomミーティング) 言 語:日本語 主 催:(公財)渥美国際交流財団関口グローバル研究会[SGRA] ※参加申込:下記リンクより参加登録をお願いします。 https://us02web.zoom.us/meeting/register/tZEldeGvqDIoHtGhPStPxtyAE8hKB4YAyGdw#/registration お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ■フォーラムの趣旨 社会がグローバル化する中で世界を移動する人々の数も急激に増加している。国連の2013年の調査によると世界人口の約3.2%が移動人口に当たると言われている。日本に目を向けると、外国人移住者数も年々増加しており、滞在の長期化も進んでいる。出入国在留管理庁のデータによると、2022年6月末の在留外国人数は296万人で、前年末に比べ20万人(7.3%)も増加したことが分かった。 こうした変化の中、在日外国人移住者もまた新たな課題に直面している。在日外国人移住者は日本での生活基盤を自ら構築することはもちろん、母国に残る家族の健康、介護問題も考えざるをえない。こういった外国人ならではのライフワークバランスはキャリアにも影響する。またコロナ禍では、日本における外国人の(再)入国制限のため自由に日本と母国の間に行き来できず、帰国したくてもできなかった事例や、家族のために日本での生活を諦めて帰国を選択した者も見られる。 今回のカフェでは ・日本における国境を超える遠距離介護の実態と背景 ・海外における事例と取組み ・課題の改善策 の3点について参加者と一緒に考え、ディスカッションを通して継続的に成長するグローバル社会に有意な示唆を得る事を目的とする。 ■プログラム 14:00 開会挨拶 14:05 ケア状況や遠距離ケア問題について紹介 14:55 質疑応答 15:10 ディスカッションの準備(グループ分けと課題の提起) 15:15 グループディスカッション 15:35 ディスカッション内容の報告 15:55 閉会挨拶 ※プログラムの詳細は、下記リンクをご参照ください。 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2023/09/Cafe19_Program.pdf ※ポスターは下記リンクからご覧いただけます。 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2023/09/cage19_poster.jpg -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【4】第10回日台アジア未来フォーラム@島根へのお誘い(再送) 日台アジア未来フォーラムは、台湾出身のSGRAメンバーが中心となって企画し、2011年より毎年1回台湾の大学と共同で実施しています。コロナ禍で3年の空白期間がありましたが、今年は例外的に日本の島根県で開催することになりました。皆さんのご参加をお待ちしています。諸準備のため参加ご希望の方は早めにお申し込みいただけますと幸いです。 テーマ:「日台の酒造りと文化:日本酒と紹興酒」 日 時:2023年10月21日(土)14時~17時10分 会 場:JR松江駅前ビル・テルサ4階大会議室(島根県松江市朝日町478-18) https://goo.gl/maps/2GB6p1bUwVAAkaiG8 言 語:日本語・中国語(同時通訳) ※参加申込(クリックして登録してください) http://bit.ly/JTAFF10 お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ◆開催趣旨 東アジアの主食である米を発酵させた醸造酒は、各地でそれぞれ歴史を経て洗練されたが、原料が同じなだけに共通点も多い。代表的な醸造酒に日本では清酒(日本酒)、中国では黄酒(紹興酒)がある。島根は日本酒発祥の地とされ、日本最古の歴史書『古事記』にも登場する。一方、台湾では第二次世界大戦後に中国から来た紹興酒職人が、それまで清酒が作られていた埔里酒廠で紹興酒を開発し量産に成功した。台湾で酒の輸入が自由化されるまでは、国内でもっとも飲まれる醸造酒であった。中国の諺に「異中求同」(異なるものに共通点を見出す)があるが、今回は醸造酒をテーマに相互理解を深めたい。フォーラムでは島根の酒にまつわる漢詩を紹介していただいた後、日本と台湾の専門家からそれぞれの醸造技術と酒文化について、分かりやすく解説していただく。日中同時通訳付き。 ◆プログラム 講演1:「近代山陰の酒と漢詩」要木純一(島根大学法文学部教授) 講演2:「島根県の日本酒について」土佐典照(島根県産業技術センター) 講演3:「台湾紹興酒のお話」江銘峻(台湾煙酒株式会社) 全体質疑応答 ※詳細は下記リンクをご参照ください。 https://www.aisf.or.jp/sgra/active/taiwan/2023/18448/ ※ポスターは下記リンクからご覧いただけます。 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2023/06/JTAFF10PosterJ_Lite.png ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************  
  • KIM Kyongtae “Kokushi Dialogue#8 Report”

    ********************************************** SGRAかわらばん983号(2023年9月21日) 【1】金キョンテ「第8回国史たちの対話レポート」 「20世紀の戦争・植民地支配と和解はどのように語られてきたのか―教育・メディア・研究」 【2】第19回SGRAカフェへのお誘い(再送) 「国境を超える『遠距離ケア』」(10月14日、東京+オンライン) 【3】第10回日台アジア未来フォーラムへのお誘い(再送) 「日台の酒造りと文化:日本酒と紹興酒」(10月21日、島根県松江市) ********************************************** 【1】 金キョンテ「第8回国史たちの対話レポート」 8月8日、やや曇った空の下で第8回韓国・日本・中国における国史たちの対話の可能性「20世紀の戦争・植民地支配と和解はどのように語られてきたのか―教育・メディア・研究」が対面とオンラインで始まった。 早稲田大学に設けられた会場では一般参加者も席を埋め尽くした。初日は4つのセッションで構成され最初のセッションは村和明先生(東京大学)の司会で行われた。本格的な報告に先立ち、劉傑先生(早稲田大学)の開会挨拶と三谷博先生(東京大学名誉教授)の趣旨説明、発表討論及び参加者の自己紹介があった。劉傑先生は20世紀の戦争と植民地支配、和解が各国でこれまでどのように語られていたかについて過去に開催された「国史たちの対話」に基づき「冷静かつ落ち着いた議論を続けることができると期待している」とし、相手国の歴史認識に耳を傾ける機会になると強調した。 三谷先生は「未来のために」というキーワードをまず提示。国史たちの対話に関する企画が出た時から今回のテーマをどうしても試みたいと思っていたが、今になってようやく話せるようになったことを嬉しく思うと話された。続いて、このような大きな学術的な集いを立ち上げたきっかけについて説明してくださった。日本だけでなく、様々な国が歴史に関する対話を積み重ねていく中で、政府の対決政策により逆風が吹いたこともあったが、それでも歴史対話が再開されたということに意味があると話された。 第2から第4セッションは、それぞれ教育、メディア、研究をテーマにした3つの発表と相互討論で構成。2番目の「教育」セッションは南基正先生(ソウル大学)の司会で進行された。最初は金泰雄先生(ソウル大学)の「解放後における韓国人知識人層の脱植民地への議論と歴史叙述の構成の変化」だった。この発表では、韓国における解放(1945年8月15日の独立)後の歴史教科書の記述の変遷過程を説明しながら、韓国の国内外の政治と歴史教科書の内容との関係を緻密に追跡した。唐小兵先生(華東師範大学)は「歴史をめぐる記憶の戦争と著述の倫理―20世紀半ばの中国に関する『歴史の戦い』」と題して長春包囲戦に対する相反する記憶及び評価を紹介し、歴史と啓蒙との緊張関係という問題を提示した。 塩出浩之先生(京都大学)は「日本の歴史教育は戦争と植民地支配をどう伝えてきたか―教科書と教育現場から考える」と題して日本が戦後において教科書を制作する過程で経験した変化と変化のきっかけについて説明したが、特に教科書が教育現場でどのように認識され使用されたかについての部分や、現在進行形の課題(加害者と被害者としての両面性等)はこれまで聞くことができなかった内容であり、韓国と中国の研究者にとって大いに参考になった。 続く討論では、日本の教育現場で働いている教師の方々の課題を聞くことができた。新しい歴史総合科目をどのように教えるか、歴史教育において史料の重要性が非常に大きいにもかかわらず現場で集中的に扱うことが難しいという(受験等による)現状等が挙げられた。韓国と中国も似たような経験や課題があるという事実を共有することができた。記憶が啓蒙や共感のために(厳密な歴史的事実と異なるかもしれない方向で)使われる事例があり、個人の多様な記録のような(やはり歴史的事実とは異なる可能性があり得る)資料が注目されている問題も議論されたが、必ずしもそれを否定的に捉える必要はないとの意見が少なくなかった。これは今回の「対話」の主要な論点の一つだった。 第3セッションは「メディア」をテーマに李恩民先生(桜美林大学)が司会を担当した。江沛先生(南開大学)は「保身、愛国と屈服:ある偽満州国の『協力者』の心理状態に対する考察」で、中国における日中戦争は国家対国家の戦争として明確に記録されているが、果たして当時中国に住んでいた人々もそうだったのかという点について、ある人物の日記を通して考察した。当時の人々には生存が重要であり、様々な顔(反国と愛国)を持った人も存在していたということであった。歴史学者は弱者である民衆に目を向け、人間の尊厳を尊重すべきだと指摘した。 福間良明先生(立命館大学)は「戦後日本のメディア文化と『戦争の語り』の変容」で映画を中心にメディアが戦争を語る手法の変化の流れと時代的背景を同時に説明した。被害と加害、その両方の立場があり得るということへの葛藤を詳しく紹介し、このような葛藤が薄れている現在、そしてその中間の市民社会の間で歴史研究者がどのような役割を果たすべきかを考えなければならないという課題を投げかけた。 李基勳先生(延世大学)は「現代韓国メディアの植民地、戦争経験の形象化とその影響―映画、ドラマを中心に」というテーマで韓国の戦争映画を分析した。韓国において植民地と戦争は異なる経験であった。しかし、韓国が国民国家を形成する過程でそれらが一緒に語られることもあり、その過程で善と悪が二項対立する典型的なイメージが作られる様相、そして21世紀に近づき変化が発生する様相を映画を通じて示した。 第4セッションのテーマは「研究」。宋志勇先生(南開大学)の司会でこの日の最後のセッションが行われた。安岡健一先生(大阪大学)は「『わたし』の歴史、『わたしたち』の歴史―色川大吉の『自分史』論を手がかりに」で伝統的な歴史認識の「外部」にいる一般市民の歴史認識、そしてそれに関する歴史学の認識をテーマとした。「私の歴史」を書くことでステレオタイプの歴史に飲み込まれなかった物語が残ることもある。これをどのように生かすかを考えなければならず、これこそ歴史学が市民社会に貢献できる部分だという意見を提示した。 梁知恵先生(東北亜歴史財団)は「『発展』を越える、新しい歴史叙述の可能性:韓国における植民地期経済史研究の行方」と題して、まず韓国における植民地時代の経済史研究のいくつかの方向性(植民地収奪論、植民地近代化論、そして植民地近代性論)について説明した。21世紀に入り、既存の研究動向の速度が下がり、学術的な議論を越えた強烈な政治的攻撃が登場し危機に直面しているが、環境と生態のような批判的な代案が登場しているという事実に希望を示す研究だった。 陳紅民先生(浙江大学)は「民国期の中国人は『日本軍閥』という概念をどのように認識したか」で、用語に付与される歴史性について問題提起をしながら、「日本軍閥」という用語に注目した。我々が知っている歴史用語の意味と当時の意味は異なることもあり、時代、発言の主体、陣営によって異なる文脈で使われたりしたという事実を想起しなければならないと述べた。データベースの構築と活用、ビッグデータの活用等が活発化している現在の学界で、このような問題意識に基づいた研究が積極的に試みられるものと期待される。 最後のセッションの討論では主に(歴史学者ではなく)個人の歴史叙述に関する問題(歴史と個人史の衝突可能性)、個人の歴史叙述に対する歴史学者の介入の仕方等をめぐる3カ国の研究者たちの課題について議論が交わされた。意見が一致したわけではなかったが、個人の歴史、自分史の歴史叙述に対する肯定的な意見は興味深かった。 最後に劉傑先生が初日の論点をまとめてくださった。3カ国が現代に経験してきた歴史的文脈が異なるため、各国で戦後の歴史像を作る際に異なる部分が現れたということ、この異なる文脈に基づいた様々な模索が(肯定的な方向にも)進んでいるということ、しかしこの異なる歴史観の間の距離をどう縮めるかという問題が残っているということだった。そして歴史教育において、いわゆる東アジアの新しい歴史像をどのように作るかについて、かなり共通した部分(日本の歴史総合、韓国の東アジア史、中国上海での試み)が見られるという点も取り上げた。このような状況において歴史家はどのような役割を果たすべきか、今回の発表では政治と歴史、歴史と道徳、史料の問題が論点として登場したが、そのような問題意識に基づいた努力が維持できれば、歴史和解は可能だという展望が提示された。 8月9日は総合討論が行われた。議論を始める前に三谷先生のコメントがあった。「パブリック」をどのように歴史につなげるかについての課題を個人的な研究経験に照らして丁寧に聞かせてくださった。すなわち、研究テーマによっては史料が存在しないこともあり得るが、史料に限界がある状況で物語を作って良いかというジレンマに注意してほしいという要望だった。 討論は2つのセッションに分けて行われた。第5セッションは鄭淳一先生(高麗大学)が司会を務めた。このセッションでは「3カ国のそれぞれ異なる文脈の被害者の敍事について」「日本の50~70年代のメディア文化は現代の代案になり得るのか」「満州の『協力者』に対する解釈の平面性」(金憲柱先生(国立ハンバット大学))、「満州国で作った映画はどの国の映画として見るべきか」(袁慶豊先生(中国伝媒大学))、「個人の目で見た歴史に関する事例(イギリスの鉱山経営者ネイサン)と戦争と植民地支配の多元的理解の可能性」「韓国と日本が政治的に対立していた時期に開かれた日韓共同展示から見られた可能性」(吉井文美先生(国立歴史民俗博物館))、「抗日ドラマの生成ロジックと伝播方式、そして一般人への影響」(史博公先生(中国伝媒大学))等の指定討論者からの質疑があった。 新しい教科書に対する議論も活発に行われ、歴史総合の場合誰が教えるか等現場で直面する様々な課題が残っており、内容に対する批判もあるが、以前の問題を乗り越えながらも学生たちが日本の歴史を好きになるよう努力してきたという事例が紹介された。三谷先生は世界史と日本史を融合することによってグローバル化と隣国との関係を重視するという要素がカットされる等の限界があったため、今後はきちんとした指導要領を作るために努力しなければならないという点を補足説明した。 フロアからも有意義なコメントがあった。川崎剛氏(元朝日新聞)がマスコミに掲載される歴史的記事が若い記者によって作成されるため問題もあり得るとの事例を紹介した後、それが事実とはいえ、大手マスコミの記者こそ大学で教育を受けているので教育界の責任がないとは言い切れないこと、若い記者たちは近現代史の主要な事件を経験することができなかったため限界がないわけではない点等に言及した。そして若い記者たちは困難を経験しながら記事を作成するしかないが、今後「関東大震災100周年」等多様な記事が配信されるので、学界も共に努力してほしいという要請で発言を結んだ。これは今回の対話の論点とも合致するコメントだった。歴史研究者はプロフェッショナルとしての自らの素養を守りつつも、新しい時代において求められる役割も担うべきであり、そのため様々な「集団」と意思疎通できなければならないということだ。 第6セッションは彭浩先生(大阪公立大学)の司会で行われた。「石明楼日記の真実性について」(張暁剛先生(長春師範大学))、「生態史が国民国家単位の歴史を越えられるのか」「共同体内の悪の陳腐さに対する省察と残された宿題」「歴史教育は『なぜ』、『どのように』を越え『どこへ』という方向も提示しなければならない」「歴史学の未来に関する議論が必要であり、それは人間への尊重を込めたものでなければならない」(金ホ先生(ソウル大学))、「国家の歴史と地方(地域)の歴史との関係」「地方でプロフェッショナルな歴史学者を育成する基盤に関する問題」「修学旅行を例に挙げた地方の歴史(教育)と観光のジレンマ」(平山昇先生(神奈川大学))等の指定討論者による発言以外にも、「中国の学生たちの近代化に対する認識問題の原因」(市川智生先生(沖縄国際大学))と史料批判を教材化する必要性に対する現場の教師の方々からの要請もあった。 最後に、趙珖先生(高麗大学名誉教授)の閉会挨拶と今西淳子渥美国際交流財団常務理事の振り返りの時間が設けられた。趙珖先生は久しぶりに開催された対面会議で比較的十分な討論時間が確保されただけに、最近では最も満足できる会議になったと評価し、2025年の「第2次世界大戦終戦80周年」を控え、3カ国でそれぞれ「光復」、「勝戦」、「終戦」という異なる用語と概念で理解されているこの事件に対し、それぞれ歴史的評価が行われるだろうが、「国史たちの対話」が役割を果たすことを期待すると述べられた。今西常務理事はこれまでの「国史たちの対話」を振り返りながら、来年のタイでの再会を約束した。 3カ国の研究者たちは各国が直面している現状とその背景からもたらされる各国の課題を聞かせてくれた。3カ国は20世紀の激動する国際情勢の中で東アジアという同じ地域に存在しつつも異なる困難を経験した。研究者はそれをどのように評価し記録するかについて葛藤し、それも歴史の研究対象になってきた。自国の歴史に対する評価と解釈をめぐる議論は今なお続いており、「解決」されていない部分も多いことが今回分かった。しかし、希望も見出せた。葛藤と課題の中には共通するものもあれば、他国との関係の中で発生したものもあった。自国史での議論と悩みを共有することから3カ国の歴史対話を合理的かつ肯定的な方向へ導く糸口を見出すこともできるという期待が生まれた。 筆者は中学・高校の歴史教師を養成する歴史教育科に在職している。今回の対話は筆者本人にも大いに勉強になった。この経験を生かして生徒、教師と共に努力していきたい。今回の対話では日本の教育現場の方々と話を交わす機会もあった。研究者たちと同様、日本の教師の方々もやはり韓国の教師と似た悩みを抱えていた。研究者だけでなく韓国と日本、そして中国の教師と研究者たちが共に意思疎通する場がより多く用意されるよう努力しなければならない。 最も多く取り上げられた論点は、個人の歴史と歴史教育現場に対するものだった。これは急変する時代、来たる未来に歴史学が担うべき役割への課題が込められたものだった。反知性主義の蔓延、AIの発展、出生率の低下等、急変する時代に「もはや歴史学の役割は終わった」と嘆く歴史学者たちもいる。歴史学はどのような役割を果たすべきで、何ができるのだろうか。歴史学は従来の研究手法も維持しつつ、新しい時代の要求にも答えていかなければならない。 個人的には金ホ先生の提言が記憶に残る。「未来の歴史学は相互の侮辱を止め、『人間に対する尊重』を抱え込むべき」「仁義の持つ排他性を警戒し、不仁と不義に対する感覚を鍛え、過度な義と偏狭な仁を制御しよう」。私は最近見た映画と本を思い出した。有名な「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」は互いを慰め合い、他人に親切に接しようというメッセージを伝え共感を呼んだ。『なぜ魚は存在しないのか』という本で、ルルー・ミラーは「価値のない生命はない。我々の人生は全て大切だ」と叫んでいる。時代が望んでいるのはひょっとしてこのような考え方ではないか。そしてそれは、歴史学の新しい役割の一つになり得るものではないか。 歴史学が長年築いてきた学問としての基本原則を守りながらも、多様な可能性、方法論に門戸を開くならば、対決して誰かに(歴史的対象であれ、現在の隣人であれ)勝たなければならないという義務感を振り払うことができれば、そして学問の親切さを広めれば、歴史学は新しい生命力を持つことができるのではないか。今回の対話を通じてこのような期待が膨らんだ。 当日の写真 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2023/09/Kokushi8_photos.pdf アンケート集計結果 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2023/09/kokushi8_feedback.pdf   ■ 金キョンテ(キム・キョンテ)KIM Kyongtae 韓国浦項市生まれ。韓国史専攻。高麗大学韓国史学科博士課程中の2010年~2011年、東京大学大学院日本文化研究専攻(日本史学)外国人研究生。2014年高麗大学韓国史学科で博士号取得。韓国学中央研究院研究員、高麗大学人文力量強化事業団研究教授を経て、全南大学歴史敎育科助教授。戦争の破壊的な本性と戦争が荒らした土地にも必ず生まれ育つ平和の歴史に関心を持っている。主な著作:壬辰戦争期講和交渉研究(博士論文)、虚勢と妥協 ¥-壬辰倭乱をめぐる三国の協商-(東北亜歴史財団、2019) -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】第19回SGRAカフェ「国境を超える『遠距離ケア』」へのお誘い(再送) 仕事や子育てなど日々の暮らしを支えている要素は様々ですが、自分を育ててくれた家族の存在も年齢を重ねるごとに実感します。コロナのように渡航ができなくなればなおのこと、そばにいないでどこまで家族をケアできるのかが問題になります。 今回のカフェでは、進学やキャリアで母国から遠く離れて暮らす世代が、親や家族をどうケアできるかを出発点として、グローバル化、ITの力、そして、家族の寄り添い方など多様な観点からいろいろな体験談を交えて議論します。 参加をご希望の方は、会場、オンラインの参加方法に関わらず事前に参加登録をお願いします。 テーマ:「国境を超える『遠距離ケア』」 日 時:2023年10月14日(土)14:00~16:00 方 法:会場(渥美財団ホール)およびオンライン(Zoomミーティング) 言 語:日本語 主 催:(公財)渥美国際交流財団関口グローバル研究会[SGRA] ※参加申込:下記リンクより参加登録をお願いします。 https://us02web.zoom.us/meeting/register/tZEldeGvqDIoHtGhPStPxtyAE8hKB4YAyGdw#/registration お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ■フォーラムの趣旨 社会がグローバル化する中で世界を移動する人々の数も急激に増加している。国連の2013年の調査によると世界人口の約3.2%が移動人口に当たると言われている。日本に目を向けると、外国人移住者数も年々増加しており、滞在の長期化も進んでいる。出入国在留管理庁のデータによると、2022年6月末の在留外国人数は296万人で、前年末に比べ20万人(7.3%)も増加したことが分かった。 こうした変化の中、在日外国人移住者もまた新たな課題に直面している。在日外国人移住者は日本での生活基盤を自ら構築することはもちろん、母国に残る家族の健康、介護問題も考えざるをえない。こういった外国人ならではのライフワークバランスはキャリアにも影響する。またコロナ禍では、日本における外国人の(再)入国制限のため自由に日本と母国の間に行き来できず、帰国したくてもできなかった事例や、家族のために日本での生活を諦めて帰国を選択した者も見られる。 今回のカフェでは ・日本における国境を超える遠距離介護の実態と背景 ・海外における事例と取組み ・課題の改善策 の3点について参加者と一緒に考え、ディスカッションを通して継続的に成長するグローバル社会に有意な示唆を得る事を目的とする。 ■プログラム 14:00 開会挨拶 14:05 ケア状況や遠距離ケア問題について紹介 14:55 質疑応答 15:10 ディスカッションの準備(グループ分けと課題の提起) 15:15 グループディスカッション 15:35 ディスカッション内容の報告 15:55 閉会挨拶 ※プログラムの詳細は、下記リンクをご参照ください。 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2023/09/Cafe19_Program.pdf ※ポスターは下記リンクからご覧いただけます。 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2023/09/cage19_poster.jpg -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【3】第10回日台アジア未来フォーラム@島根へのお誘い(再送) 日台アジア未来フォーラムは、台湾出身のSGRAメンバーが中心となって企画し、2011年より毎年1回台湾の大学と共同で実施しています。コロナ禍で3年の空白期間がありましたが、今年は例外的に日本の島根県で開催することになりました。皆さんのご参加をお待ちしています。諸準備のため参加ご希望の方は早めにお申し込みいただけますと幸いです。 テーマ:「日台の酒造りと文化:日本酒と紹興酒」 日 時:2023年10月21日(土)14時~17時10分 会 場:JR松江駅前ビル・テルサ4階大会議室(島根県松江市朝日町478-18) https://goo.gl/maps/2GB6p1bUwVAAkaiG8 言 語:日本語・中国語(同時通訳) ※参加申込(クリックして登録してください) http://bit.ly/JTAFF10 お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ◆開催趣旨 東アジアの主食である米を発酵させた醸造酒は、各地でそれぞれ歴史を経て洗練されたが、原料が同じなだけに共通点も多い。代表的な醸造酒に日本では清酒(日本酒)、中国では黄酒(紹興酒)がある。島根は日本酒発祥の地とされ、日本最古の歴史書『古事記』にも登場する。一方、台湾では第二次世界大戦後に中国から来た紹興酒職人が、それまで清酒が作られていた埔里酒廠で紹興酒を開発し量産に成功した。台湾で酒の輸入が自由化されるまでは、国内でもっとも飲まれる醸造酒であった。中国の諺に「異中求同」(異なるものに共通点を見出す)があるが、今回は醸造酒をテーマに相互理解を深めたい。フォーラムでは島根の酒にまつわる漢詩を紹介していただいた後、日本と台湾の専門家からそれぞれの醸造技術と酒文化について、分かりやすく解説していただく。日中同時通訳付き。 ◆プログラム 講演1:「近代山陰の酒と漢詩」要木純一(島根大学法文学部教授) 講演2:「島根県の日本酒について」土佐典照(島根県産業技術センター) 講演3:「台湾紹興酒のお話」江銘峻(台湾煙酒株式会社) 全体質疑応答 ※詳細は下記リンクをご参照ください。 https://www.aisf.or.jp/sgra/active/taiwan/2023/18448/ ※ポスターは下記リンクからご覧いただけます。 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2023/06/JTAFF10PosterJ_Lite.png ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************  
  • QIAN Haiying “Embarking on a New Life”

    ********************************************** SGRAかわらばん983号(2023年9月21日) 【1】SGRAエッセイ:銭海英「新たな人生の船出」 【2】第19回SGRAカフェへのお誘い(再送) 「国境を超える『遠距離ケア』」(10月14日、東京+オンライン) 【3】第10回日台アジア未来フォーラムへのお誘い(再送) 「日台の酒造りと文化:日本酒と紹興酒」(10月21日、島根県松江市) ********************************************** 【1】 SGRAエッセイ#746 ◆銭海英「新たな人生の船出」 桜が舞う時期に、新たな人生へ船出する決意をした。でも、そもそも「新たな人生」とは一体何を指すのか、これまで生きてきた自分自身と一体何が違うのか、このエッセイを通じて発信したい。 2022年度の渥美国際交流財団の奨学生として、本来であれば、3月末に博士学位を取得するはずだった。同期の奨学生たちの多くが4月から新しい進路でそれぞれの道を頑張っていく。ポストドクターに進んでいく方もいるし、助教職、常任教員職を得た方もいる。しかし、私は引き続き博論の完成に向けて頑張っていくのであり、何も変わらないようにみえる。「新たな人生の船出」とはよく使われる新年度のフレーズでしかないと思われるかもしれない。 普段の私は、勉強以外では運動が好きで、常に体力をつけることを意識している。コロナ禍ではクロスバイクを買い、サイクリングを始め、今では電車を使うこともほとんどなくなった。体力をつけることを意識するようになった理由は、研究者にとって最後の踏ん張り時には体力が大事だと教わったからである。しかし、昨年2月のある日突然、アウトドア派の私にとって、予想外の病気が発覚した。 東京医科大学病院で乳がんのステージ2Bと診断された。乳腺科の主治医から「やっぱりがん(悪性)です」と腫瘍の病理診断(良性悪性を識別)を伝えられた際に、私は非常に冷静、そして理性的だった。冷静に主治医と治療方針について検討していくことができたのは、病理検査結果を待っている2週間に乳がんに関する医学知識を増やしたからだ。東京医科大学病院乳腺科の先生たちが書いた医療記事や論文を確認したのはもちろん、国立がん研究センター、北京大学腫瘍医院、アメリカがん研究センターにもアクセスして乳がんの最新治療および臨床データも確認した。確認すればするほど、乳がんに対する恐怖も次第に減少した。「恐れとは無知からくるのだ」と、改めて確認できたことは意外な収穫だったかもしれない。 とはいえ、腫瘍の病理診断を待っている間が心理的に最も辛かった。乳がんについて調べれば調べるほど、「私は、ほぼ間違いなくがんなのだ」と確信を深めるのは苦痛でしかなかった。しかし同時に「乳房の腫瘍は実は9割以上が良性だよ」という、気休めの声が自分に語りかけてくるのである。人生で最も長く感じた2週間は、「やっぱりがんです」という診断結果で終わりを告げた。悪性ではない可能性が現実に覆された時、目が醒めた。がんに直面して、これからは主治医が提案する治療方針に納得した上で取り組むほかない。そうしてこそ、患者として合格に値する。 乳がんと診断されて以降の1年間で、私は「未受精卵の凍結」、「抗がん剤治療」、「手術」、「放射線治療」といった一連の標準治療を受けてきた。その間一度も主治医に「私はあと何年ぐらい生きることができますか」と質問しなかった。なぜなら個人差があることを知っていたからだ。そのかわり、「先生、私のステージ及びサブタイプ分類から見れば、現在の臨床データから10年生存率はどのぐらいですか」と確認した。「90%ですよ」と告げられた際、嬉しかった。この90%は、あくまでも平均値で、自分は絶対にこの平均値以上だと思っている。 確かに、がんは厳密に言えば、治癒できない病気である。だから、医学では治癒に近い「寛解」を持ち出した。例えば、5年生存率、もしくは10年生存率。10年生存率とは10年しか生きられないという意味ではなく、10年以内にがんで死亡しなかったことを意味する。また、10年間で再発していないことも意味する。がんが10年たっても再発しない場合、その後再発する可能性は極めて低いということであり、ほぼ治癒に近いと理解してもいい。 がんの説明ばかりになってしまったが、知識を皆さんに伝えたかったのではない。30代前半で自分の死を意識した衝撃は本当に大きかった。「新たな人生の船出」とは、文字通り私にとってこれまでの人生とは違う人生を始めることだ。時間をより大切に使うようになり、そして、何を一番やりたいのかがより明確になった。怖がらず、侮らず、乳がんとともに生きる。これからは、さらに大望を抱いて残りの人生を積極的に生き、自分のために尽力したい。 <銭海英(せん・かいえい)QIAN_Haiying> 2022年度渥美奨学生。中国江蘇省出身。明治大学大学院教養デザイン研究科博士後期課程に在学中。近代中国政治思想史・教育思想史を専攻。現在、成城大学非常勤講師、有間学堂東洋史学専属講師。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】第19回SGRAカフェ「国境を超える『遠距離ケア』」へのお誘い(再送) 下記の通り第19回SGRAカフェを会場及びオンラインのハイブリット方式開催いたします。参加をご希望の方は、会場、オンラインの参加方法に関わらず事前に参加登録をお願いします。 テーマ:「国境を超える『遠距離ケア』」 日 時:2023年10月14日(土)14:00~16:00 方 法:会場(渥美財団ホール)およびオンライン(Zoomミーティング) 言 語:日本語 主 催:(公財)渥美国際交流財団関口グローバル研究会[SGRA] ※参加申込:下記リンクより参加登録をお願いします。 https://us02web.zoom.us/meeting/register/tZEldeGvqDIoHtGhPStPxtyAE8hKB4YAyGdw#/registration お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ■フォーラムの趣旨 社会がグローバル化する中で世界を移動する人々の数も急激に増加している。国連の2013年の調査によると世界人口の約3.2%が移動人口に当たると言われている。日本に目を向けると、外国人移住者数も年々増加しており、滞在の長期化も進んでいる。出入国在留管理庁のデータによると、2022年6月末の在留外国人数は296万人で、前年末に比べ20万人(7.3%)も増加したことが分かった。 こうした変化の中、在日外国人移住者もまた新たな課題に直面している。在日外国人移住者は日本での生活基盤を自ら構築することはもちろん、母国に残る家族の健康、介護問題も考えざるをえない。こういった外国人ならではのライフワークバランスはキャリアにも影響する。またコロナ禍では、日本における外国人の(再)入国制限のため自由に日本と母国の間に行き来できず、帰国したくてもできなかった事例や、家族のために日本での生活を諦めて帰国を選択した者も見られる。 今回のカフェでは ・日本における国境を超える遠距離介護の実態と背景 ・海外における事例と取組み ・課題の改善策 の3点について参加者と一緒に考え、ディスカッションを通して継続的に成長するグローバル社会に有意な示唆を得る事を目的とする。 ■プログラム 14:00 開会挨拶 14:05 ケア状況や遠距離ケア問題について紹介 14:55 質疑応答 15:10 ディスカッションの準備(グループ分けと課題の提起) 15:15 グループディスカッション 15:35 ディスカッション内容の報告 15:55 閉会挨拶 ※プログラムの詳細は、下記リンクをご参照ください。 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2023/09/Cafe19_Program.pdf ※ポスターは下記リンクからご覧いただけます。 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2023/09/cage19_poster.jpg -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【3】第10回日台アジア未来フォーラム@島根へのお誘い(再送) 日台アジア未来フォーラムは、台湾出身のSGRAメンバーが中心となって企画し、2011年より毎年1回台湾の大学と共同で実施しています。コロナ禍で3年の空白期間がありましたが、今年は例外的に日本の島根県で開催することになりました。皆さんのご参加をお待ちしています。諸準備のため参加ご希望の方は早めにお申し込みいただけますと幸いです。 テーマ:「日台の酒造りと文化:日本酒と紹興酒」 日 時:2023年10月21日(土)14時~17時10分 会 場:JR松江駅前ビル・テルサ4階大会議室(島根県松江市朝日町478-18) https://goo.gl/maps/2GB6p1bUwVAAkaiG8 言 語:日本語・中国語(同時通訳) ※参加申込(クリックして登録してください) http://bit.ly/JTAFF10 お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ◆開催趣旨 東アジアの主食である米を発酵させた醸造酒は、各地でそれぞれ歴史を経て洗練されたが、原料が同じなだけに共通点も多い。代表的な醸造酒に日本では清酒(日本酒)、中国では黄酒(紹興酒)がある。島根は日本酒発祥の地とされ、日本最古の歴史書『古事記』にも登場する。一方、台湾では第二次世界大戦後に中国から来た紹興酒職人が、それまで清酒が作られていた埔里酒廠で紹興酒を開発し量産に成功した。台湾で酒の輸入が自由化されるまでは、国内でもっとも飲まれる醸造酒であった。中国の諺に「異中求同」(異なるものに共通点を見出す)があるが、今回は醸造酒をテーマに相互理解を深めたい。フォーラムでは島根の酒にまつわる漢詩を紹介していただいた後、日本と台湾の専門家からそれぞれの醸造技術と酒文化について、分かりやすく解説していただく。日中同時通訳付き。 ◆プログラム 講演1:「近代山陰の酒と漢詩」要木純一(島根大学法文学部教授) 講演2:「島根県の日本酒について」土佐典照(島根県産業技術センター) 講演3:「台湾紹興酒のお話」江銘峻(台湾煙酒株式会社) 全体質疑応答 ※詳細は下記リンクをご参照ください。 https://www.aisf.or.jp/sgra/active/taiwan/2023/18448/ ※ポスターは下記リンクからご覧いただけます。 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2023/06/JTAFF10PosterJ_Lite.png ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************  
  • Invitation to the 19th SGRA Cafe “Transcending Borders ‘Long Distance Care'”

    ********************************************** SGRAかわらばん982号(2023年9月15日) 【1】第19回SGRAカフェへのお誘い 「国境を超える『遠距離ケア』」(10月14日、東京+オンライン) 【2】モロッコより―地震救援のお願い 【3】第10回日台アジア未来フォーラムへのお誘い(再送) 「日台の酒造りと文化:日本酒と紹興酒」(10月21日、島根県松江市) ********************************************** 【1】第19回SGRAカフェ「国境を超える『遠距離ケア』」へのお誘い 下記の通り第19回SGRAカフェを会場及びオンラインのハイブリット方式開催いたします。参加をご希望の方は、会場、オンラインの参加方法に関わらず事前に参加登録をお願いします。 テーマ:「国境を超える『遠距離ケア』」 日 時:2023年10月14日(土)14:00~16:00 方 法:会場(渥美財団ホール)およびオンライン(Zoomミーティング) 言 語:日本語 主 催:(公財)渥美国際交流財団関口グローバル研究会[SGRA] ※参加申込:下記リンクより参加登録をお願いします。 https://us02web.zoom.us/meeting/register/tZEldeGvqDIoHtGhPStPxtyAE8hKB4YAyGdw#/registration お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ■フォーラムの趣旨 社会がグローバル化する中で世界を移動する人々の数も急激に増加している。国連の2013年の調査によると世界人口の約3.2%が移動人口に当たると言われている。日本に目を向けると、外国人移住者数も年々増加しており、滞在の長期化も進んでいる。出入国在留管理庁のデータによると、2022年6月末の在留外国人数は296万人で、前年末に比べ20万人(7.3%)も増加したことが分かった。 こうした変化の中、在日外国人移住者もまた新たな課題に直面している。在日外国人移住者は日本での生活基盤を自ら構築することはもちろん、母国に残る家族の健康、介護問題も考えざるをえない。こういった外国人ならではのライフワークバランスはキャリアにも影響する。またコロナ禍では、日本における外国人の(再)入国制限のため自由に日本と母国の間に行き来できず、帰国したくてもできなかった事例や、家族のために日本での生活を諦めて帰国を選択した者も見られる。 今回のカフェでは ・日本における国境を超える遠距離介護の実態と背景 ・海外における事例と取組み ・課題の改善策 の3点について参加者と一緒に考え、ディスカッションを通して継続的に成長するグローバル社会に有意な示唆を得る事を目的とする。 ■プログラム 14:00 開会挨拶 14:05 ケア状況や遠距離ケア問題について紹介 14:55 質疑応答 15:10 ディスカッションの準備(グループ分けと課題の提起) 15:15 グループディスカッション 15:35 ディスカッション内容の報告 15:55 閉会挨拶 ※プログラムの詳細は、下記リンクをご参照ください。 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2023/09/Cafe19_Program.pdf ※ポスターは下記リンクからご覧いただけます。 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2023/09/cage19_poster.jpg -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】モロッコより―地震救援のお願い SGRAの皆様、2022年度渥美奨学生のアキルと申します。 9月9日のモロッコの地震で被災された方々に心からお見舞い申し上げます。私は家族と一緒に首都ラバトにいますが、おかげさまでみんな無事です。マラケシュ地方から400kmで離れたラバトでも地震を感じましたが、被害はありませんでした。 しかし、マラケシュ地方のアル=ハウズ県では壊滅的な被害が発生しました。現在、死者数は約3千人になりましたが、被害状況は非常に悪いです。被災地域の面積は非常に広く、ベルギーの2倍です。山岳地帯の数百の村が非常にアクセスしにくく、一部の村はまだ救援を受けていません。多くの方が家や財産を失いました。特に山岳地帯の村々では、貧しい人々が多く住んでいます。彼らは冬の寒さから身を守るシェルターもなく、食料や水も不足しています。市民社会は被災者を支援するために協力しています。 被災者は私たちの助けを必要としています。そこで、多数の市民社会が被災者支援のための募金活動を始めました。この募金はモロッコ赤新月社や現地のNGOなどの信頼できる団体に寄付されます。被災者の方々に少しでも早く平穏な日々が戻ることを願っています。 もし可能でしたら、以下のリンクから募金にご協力いただけると幸いです。どんなに小さな金額でも大きな力になります。ご支援、心より感謝申し上げます。 日本赤十字 2023年モロッコ地震救援金 https://www.jrc.or.jp/contribute/help/2023morocco/ クレジット、銀行振り込みが利用可能。 GoFundMe:SOS_Village_d'Enfants_&_CARE_Maroc https://www.gofundme.com/f/soutien-aux-victimes-du-seisme-au-maroc 米クラウドファンディングのプラットフォームを通じた、アル=ハウズ県のローカルNGOへの寄付です。ApplePay、GooglePay、クレジットカードが利用可能。 Yahoo!ネット募金:ピースウィンズ・ジャパン https://donation.yahoo.co.jp/detail/925067/ 日本からの支援チーム派遣への援助。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【3】第10回日台アジア未来フォーラム@島根へのお誘い(再送) 日台アジア未来フォーラムは、台湾出身のSGRAメンバーが中心となって企画し、2011年より毎年1回台湾の大学と共同で実施しています。コロナ禍で3年の空白期間がありましたが、今年は例外的に日本の島根県で開催することになりました。皆さんのご参加をお待ちしています。諸準備のため参加ご希望の方は早めにお申し込みいただけますと幸いです。 テーマ:「日台の酒造りと文化:日本酒と紹興酒」 日 時:2023年10月21日(土)14時~17時10分 会 場:JR松江駅前ビル・テルサ4階大会議室(島根県松江市朝日町478-18) https://goo.gl/maps/2GB6p1bUwVAAkaiG8 言 語:日本語・中国語(同時通訳) ※参加申込(クリックして登録してください) http://bit.ly/JTAFF10 お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ◆開催趣旨 東アジアの主食である米を発酵させた醸造酒は、各地でそれぞれ歴史を経て洗練されたが、原料が同じなだけに共通点も多い。代表的な醸造酒に日本では清酒(日本酒)、中国では黄酒(紹興酒)がある。島根は日本酒発祥の地とされ、日本最古の歴史書『古事記』にも登場する。一方、台湾では第二次世界大戦後に中国から来た紹興酒職人が、それまで清酒が作られていた埔里酒廠で紹興酒を開発し量産に成功した。台湾で酒の輸入が自由化されるまでは、国内でもっとも飲まれる醸造酒であった。中国の諺に「異中求同」(異なるものに共通点を見出す)があるが、今回は醸造酒をテーマに相互理解を深めたい。フォーラムでは島根の酒にまつわる漢詩を紹介していただいた後、日本と台湾の専門家からそれぞれの醸造技術と酒文化について、分かりやすく解説していただく。日中同時通訳付き。 ◆プログラム 講演1:「近代山陰の酒と漢詩」要木純一(島根大学法文学部教授) 講演2:「島根県の日本酒について」土佐典照(島根県産業技術センター) 講演3:「台湾紹興酒のお話」江銘峻(台湾煙酒株式会社) 全体質疑応答 ※詳細は下記リンクをご参照ください。 https://www.aisf.or.jp/sgra/active/taiwan/2023/18448/ ※ポスターは下記リンクからご覧いただけます。 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2023/06/JTAFF10PosterJ_Lite.png ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************  
  • Maria PROKHOROVA “The Way You look at Your Own Country”

    ********************************************** SGRAかわらばん980号(2023年9月7日) 【1】エッセイ:マリア・プロホロワ「母国を見る目」 【2】寄贈本紹介:オリガ・ホメンコ『キーウの遠い空:戦争の中のウクライナ人』 【3】第10回日台アジア未来フォーラムへのお誘い(再送) 「日台の酒造りと文化:日本酒と紹興酒」(10月21日、島根県松江市) ********************************************** 【1】SGRAエッセイ#745 ◆マリア・プロホロワ「母国を見る目」 私はロシアで生まれ育ち、大学もモスクワで卒業した。日本語教育専攻で、大学生のうちから2回日本(秋田と福岡)に留学することができたし、卒業してからは勉強の続きとして本格的に日本に住むようになった(横浜と東京)。日本での留学期間は8年以上になる。この8年で私には様々な変化が起きた。何が一番大きく変わったかというと、「母国を見る目」だと思う。 高校生や大学生の頃、自分の生まれ育った国にはそれほど興味がなかった。高校生の頃、あるいはもう少し前から日本に夢中になっていた。常に日本のドラマを見たり、日本の曲を聞いたりして、頭の中が日本で出来ているような状態だった。高校の卒業式では着物を着た(着付けは問題ありだったが…)。大学入ると日本に興味を持ち、日本語を学ぶ仲間が増えて、さらに日本に集中することになった。自分の関心を共有してくれる人たち、それをさらに伸ばしてくれる環境があるのは幸せだ。その幸せを糧にして、今も役立っているスキルを取得していったし、人生で一番温かい思い出かもしれない。でも、今思うと、とても未熟で視野が狭かったようにも感じる。 日本に来てから、ロシアのことを色々と聞かれるようになった。ロシアにも「方言があるのか」、「食文化はどうなのか」、などなど。自分がロシア人であることを初めて認識したのはその時だったのかもしれない。成人するまでロシアで暮らしていても、ロシアのことをほぼ何も知らなかったこと、ロシアは思っていたより謎が多く、言ってみれば「知りにくい」ということに気づいた。どの国にも何か不思議な特性があるが、ロシアの場合、地理的な大きさが重要である。例えばモスクワに住んでいると、6千キロ以上離れているウラジオストクのことはよく分からない。自分から行ったり調べたり、そこの人たちと交流したりしないとずっと分からないままだ。 国内からロシアのことを考えると、実際には「内」として、すなわち「自分の中のロシア」として考えているのは、ロシアのごく一部に過ぎない。自分の周りの環境と、親戚や親友の暮らす環境くらいである。外から見たロシアは、もっともっと大きくて、複雑で、面白い。ロシア語を専門とする日本の学生たちの話を聞いて彼らの質問に答えていると、私の中のロシアはモスクワ近郊などに限らない、より立体的な存在になっていった。一時帰国のとき、国内旅行や街の探索に出かけることも多くなった。母国のことは、最初から自動的に知っているのではなく、自分から知る努力をして関係を深めていくものだということに気づいた。 最近は特に、「母国」という概念が疑問視されることが多くなってきた。「母国」への感情、いわゆる「愛国心」などは非常に悪用されやすいので、私もこの言葉を聞くたびに少し警戒する。しかし、「私には母国はない」と主張する友人たちにも賛成できない。母国が複数だったり、「義母国」や「父国」と言った方が正確だったり、国というよりも地域だったりして、形がそれぞれ異なるだけだと思う。「愛国心」も、国家にとって都合の良い発想だから頻繁に取り上げられるだけで、「母国」の定義では決してない。 自分の育った家族に対して皆それぞれ異なる気持ちを抱いているように、「母国」に対する見方や考え方、感じ方は無限にある。愛せないと感じていても、その行動や性格に反感を覚えていても全く問題ない。でも、どこで生まれて、どこで育ったのか――それは大切な縁だ。自分のルーツをたどってみることで案外心が満たされることがあるし、人間関係と同じように自分と「母国」の間の関係性を認識することで、ここまでの背景を考慮した自分だけの道が見えてくる。自分とロシアの関係に目をつむった方が断然楽である今の状況でも、母国に本格的な関心を持ったこと、そして自分にとっての大切な存在として「受け入れた」ことを全く後悔していない。どこで生まれるかは選べないし、それで人を評価する意味も評価される意味もない。しかし、「母国を見る目」は自分で選べる。見ないという選択より、見るという選択をして、ピンと来る見方を模索してみようと本気で思えば、きっと何かしらかけがえのない発見に恵まれる。 日本に一途な青春を過ごした私は、今では、日本とロシアの現代文学をめぐる比較研究に取り組んでいる。また、2023年度からは東京外国語大学で教鞭をとり、日本の大学生たちにロシア語を教えている。私と同じように遠いところにばかり目を輝かせている学生がたくさんいるのではないか。彼らに伝えたいことがいっぱいある。たとえば、こう伝えたい。「遠いところへの憧れを存分にかみしめながらも、自分の住んでいる国、自分の生まれた国もよく見ておこう」。 <マリア・プロホロワ Maria_PROKHOROVA> 2022年度渥美奨学生。モスクワ市立教育大学の日本語学科を卒業した後、東京外国語大学で修士号(文学)ならびに博士号(学術)を取得し、現在は同じ東京外国語大学で特定外国語教員としてロシア語を教えている。主な研究対象は日本とロシアの現代文学における動物表象だが、ほかにも、翻訳論やロシア語圏のお笑い文化など、言語・文化に関連するテーマを幅広く扱っている。文芸翻訳家としても活躍中で、川上弘美、多和田葉子やまどみちおの作品をロシア語に翻訳した実績がある。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】寄贈本紹介 昨年度1年間SGRAかわらばんで配信したオリガ・ホメンコさんのエッセイが1冊の本に纏まりました。オリガさんから「渥美財団の皆さんへの深い感謝の気持ちでいっぱいです。エッセイのおかげで本が成り立っただけではなく、書くことによって少し心も安らぎました。いろいろどうもありがとうございました」というメッセージを添えてご寄贈いただきました。 ◆オリガ・ホメンコ『キーウの遠い空:戦争の中のウクライナ人』 2022年2月24日。ロシアの侵攻が始まったあの日から私たちの生活は一変した。キーウに生まれ育ち、日本で博士号を取得したウクライナ人の著者が、戦争下で見たこと、考えたことを綴る。 発行:中央公論新社 初版刊行:2023/7/24 判型四六判 ページ数192ページ 定価1980円(10%税込) ISBNコードISBN978-4-12-005675-8 詳細は下記リンクからご覧ください。 https://www.chuko.co.jp/tanko/2023/07/005675.html -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【3】第10回日台アジア未来フォーラム@島根へのお誘い(再送) 日台アジア未来フォーラムは、台湾出身のSGRAメンバーが中心となって企画し、2011年より毎年1回台湾の大学と共同で実施しています。コロナ禍で3年の空白期間がありましたが、今年は例外的に日本の島根県で開催することになりました。皆さんのご参加をお待ちしています。諸準備のため参加ご希望の方は早めにお申し込みいただけますと幸いです。 テーマ:「日台の酒造りと文化:日本酒と紹興酒」 日 時:2023年10月21日(土)14時~17時10分 会 場:JR松江駅前ビル・テルサ4階大会議室(島根県松江市朝日町478―18) https://goo.gl/maps/2GB6p1bUwVAAkaiG8 言 語:日本語・中国語(同時通訳) ※参加申込(クリックして登録してください) http://bit.ly/JTAFF10 お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ◆開催趣旨 東アジアの主食である米を発酵させた醸造酒は、各地でそれぞれ歴史を経て洗練されたが、原料が同じなだけに共通点も多い。代表的な醸造酒に日本では清酒(日本酒)、中国では黄酒(紹興酒)がある。島根は日本酒発祥の地とされ、日本最古の歴史書『古事記』にも登場する。一方、台湾では第二次世界大戦後に中国から来た紹興酒職人が、それまで清酒が作られていた埔里酒廠で紹興酒を開発し量産に成功した。台湾で酒の輸入が自由化されるまでは、国内でもっとも飲まれる醸造酒であった。中国の諺に「異中求同」(異なるものに共通点を見出す)があるが、今回は醸造酒をテーマに相互理解を深めたい。フォーラムでは島根の酒にまつわる漢詩を紹介していただいた後、日本と台湾の専門家からそれぞれの醸造技術と酒文化について、分かりやすく解説していただく。日中同時通訳付き。 ◆プログラム 講演1:「近代山陰の酒と漢詩」要木純一(島根大学法文学部教授) 講演2:「島根県の日本酒について」土佐典照(島根県産業技術センター) 講演3:「台湾紹興酒のお話」江銘峻(台湾煙酒株式会社) 全体質疑応答 ※詳細は下記リンクをご覧ください。 https://www.aisf.or.jp/sgra/active/taiwan/2023/18448/ ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************  
  • LI Kotetsu “Career and Calling”

    ********************************************** SGRAかわらばん980号(2023年8月3日) 【1】エッセイ:李鋼哲「キャリアと天職」 【2】第8回国史たちの対話へのお誘い(8月8~9日、東京・ハイブリッド)(最終案内) 「20世紀の戦争・植民地支配と和解はどのように語られてきたのか――教育・メディア・研究」 【3】第10回日台アジア未来フォーラムへのお誘い(再送) 「日台の酒造りと文化:日本酒と紹興酒」(10月21日、島根県松江市) ********************************************** 【1】SGRAエッセイ#744 ◆李鋼哲「キャリアと天職」 大学のゼミに「キャリア・デザイン」という科目が設置された。その意味すら分からなかったので、担当することになった時に『大学生のためのキャリア・デザイン入門』を購入し、勉強した。「働き方、社会活動と生き方に繋がりをつけ、自分の人生の中でどう働き、どう社会活動をしていくかを考え、計画し実行するのがキャリア・デザイン」とある。職業人生に焦点を当てているので、学生たちに「将来就きたい仕事について」レポートを書かせた。以前、「人生100歳時代をどう生きるか」のテーマを出し、各自パワーポイントを作って発表させたこともある。今回も学生たちはいろいろな資料を調べて、それについて自分の考え方を発表した。 しかし、私は日本の学校教育において何か欠けているのではないか、といつも考えている。日本の小中高校教育に携わったことがないので、どのように教育を受けたのかは個人面談などを通じて推測するしかない。何が欠けているだろう?30数年間日本に住み観察しているが、日本の教育は「サラリーマン」を育てるのが主な役割のようだ。もちろん、社会が成り立つためには大勢のサラリーマンが必要であろう。それを進めているのが「キャリア・デザイン」かな、と思う。しかし、それでは物足りないのではないか。 その答えを韓国人の友人のエッセイに見つけた。昨年12月、「世界平和フォーラム」からフィリピンに招待された時、私の講演の姿をイラストに描いて私に見せてくれたので一緒に写真を撮り、その後も日本と韓国で2回お会いした方である。建設現場で日雇いの仕事をしていると聞いてびっくりした。現場で働く労働者を直に観察しながら、人間や社会の深層を探求し、イラストで表現して社会に訴えている。それ自体が素晴らしい生き方だと私は感心するばかり。 友人が送ってくれた韓国の新聞に掲載されたというエッセイを読んでひらめいた。人間の職は3種類あるという。1つ目はジョブ(Job)で、生存するための仕事。2つ目はキャリアで、会社や社会で自分の才能や技能を十分に発揮できる仕事。そして、3つ目のコーリング(Calling)が「天職」である。日本に来てから「学校の教師は職業なのか、それとも天職なのか」という議論を聞いたことがあったが、「天職」についてそれ以上のことは知らなかった。ましてや「コーリング」とは何か、辞書で調べた。「呼ぶこと、叫び、点呼、召集、天職、(神の)お召し、職業、強い衝動、欲求、性向」。 さらに、チャットGPTに「天職またはコーリングについてどう解釈しますか?」と聞くと、「天職またはコーリングは、個人が自身の生き方や仕事において本質的な目的や使命感を感じることを指します。それは単なる職業や仕事以上のものであり、個人の価値観や情熱と深く結びついています・・・」。この答えに大変満足した。中国の聖人孔子の言葉「五十にして天命を知る」に通じる。私も50歳で「天命」を知ることになったと考えている。 先週、大学の講義の前に、学生たちに「3つの職業」について話した。まず「キャリアとは何ですか」と質問を投げかけて学生の答えを聞いた後に、説明した。学生たちは目を丸くしていたので、全員の学生が初めて聞く話であることが分かった。 世間でよく言われる「日本の教育は学生に夢を抱くように教えない」、「日本の教育には哲学がない」、などの議論を考えると、学生には「職業」や「キャリア」だけではなく、「天職」についても教えるべきではないか。崇高な理想や夢をもって「Job」をこなし、「キャリア」を磨くような教育が必要ではないか? 自分の人生を振り返ると、小学生の時には「全世界に共産主義を実現し」、「世界の無産階級(プロレタリアート)の解放のために」勉強し、人生を頑張るという教育を受けていた。幼いころは、まじめにそれを受け止めていた。もちろん、今考えるとそれは「共産主義のイデオロギー教育」となって否定的に捉えることが多い。しかし、全人類の幸せのために頑張る人生観を身に着けるという意味では、今の「持続可能な開発目標(SDGs)」と通ずるところがあるのではないか。昨年、渥美財団関口グローバル研究会(SGRA)のフォーラムでも取り上げたように「誰一人残さない」というスローガンと、「良き地球市民」とは一致するのではないか?渥美財団との出会いは、私にとってはもう一つの「コーリング」に目覚めた機会だったと思っている。 その目標を、共産主義を通じて実現するのか、資本主義を通じて実現するのか、あるいは「第三の道」で実現するのかについて人々はそれぞれの考え方を持ってはいるだろうが、「誰一人残さない」というスローガンは立派なものであり、それをもって自分の人生観を育んでいたら、人類社会はどんなに素晴らしい社会になるだろう。 学校での教えで立派な夢を見て育ったが、いざ社会人になった私は、貧しい農村で如何に生存するかが重要な課題になってしまい、その貧しさから脱却するために4年間も農業労働をしながら受験し、「死ぬほど」勉強して、8億中国人民が憧れる首都北京の大学生になり、人生が180度転換した。大学では共産主義の教育を受け、率先して共産党員になり「全世界で共産主義を実現するために終生奮闘する」と党旗の前で宣誓した。 その後、北京で大学院に入り大学の先生になった。1989年の天安門広場での学生デモに参加して、政治改革を呼びかける学生を声援したが、それが武力により無慈悲に鎮圧されるのを見て、共産党や共産主義の理想に幻滅し、職を放棄し、資本主義で自由な国日本への留学を決意した。 目標や夢のないまま、そしてお金もなく裸一貫で日本に来て、10年間も「就学生」や「留学生」という在留資格を持ってアルバイトで生計を立てながら放浪していた。大学院まで卒業し大学の先生にまでなっていた私は、日本で学ぶ目標もなかった。何かのきっかけを見つけたかったかも知れないが、そんなに簡単には行かないのが現実だった。 日本語学校を経て、ビザを延期するためには日本の大学院に行かざるを得ない。大学院では国際経済学を学んだが、たまたま「図們江地域の国際開発構想」(「とまんこう」と呼ぶが、朝鮮半島では「豆満江」:どぅまんかんと呼ぶ)という研究テーマ(国連UNDPが関わる開発プロジェクトで、中国、北朝鮮とロシア参加国国境地帯を共同で開発する構想)に出会った。この地域の中国側は私の故郷であり、私はたまたま中国語と韓国語(朝鮮語)をマスターし、中国の大学院ではロシア語を独学していたので「この研究はライフワーク」と確信した。その時、天職(calling)という言葉は知らなかった。 東京の大学などでこの研究をする人はほとんどおらず、修士の指導先生からは「李君、そのようなテーマを研究しても日本では飯を食えないよ」と言われた。それでも私は諦めず、この研究に突き進んでいた。その後、素晴らしい出会いがあり、人生の転機を迎え、東京財団で「東北アジア開発銀行設立構想」について研究する研究プロジェクトの一員になり、当時の小泉純一郎首相へ政策提言した。「キャリア」としての人生が始まった。内閣府の国策シンクタンク総合研究開発機構(NIRA)の研究員にもなり、「東北アジアの未来を構想する」様々なプロジェクトに携わった。そして、大学の教員として「東北アジア経済」などを教えることになる。 3年前に一般社団法人・東北アジア未来構想研究所(INAF)を有志たちと設立し、将来はシンクタンクとして、この地域に平和と繁栄が実現することを目指して、生涯をかけて頑張ろうと決意している。結局、この研究と活動が私の「天職」なのかもしれない。 <李鋼哲(り・こうてつ)LI Kotetsu> 1985年北京の中央民族大学業後、大学院を経て北京の大学で教鞭を執る。91年来日、立教大学大学院経済学研究科博士課程単位修得済み中退後、2001年より東京財団、名古屋大学国際経済動態研究所、内閣府傘下総合研究開発機構(NIRA)を経て、06年11月より北陸大学で教鞭を執る。2020年10月1日に一般社団法人・東北亜未来構想研究所(INAF)を有志たちと共に創設し所長を務め、日中韓+朝露蒙など多言語能力を生かして、東北アジア地域に関する研究・交流活動に情熱を燃やしている。SGRA研究員および「構想アジア」チームの代表。近著に『アジア共同体の創成プロセス』、その他書籍・論文や新聞コラム・エッセイ多数。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】第8回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性へのお誘い(最終案内) 下記の通り第8回国史たちの対話を会場参加とオンライン参加のハイブリッド方式で開催します。参加ご希望の方は必ず事前に参加登録をお願いします。 テーマ:「20世紀の戦争・植民地支配と和解はどのように語られてきたのか――教育・メディア・研究」 日 時:2023年8月8日(火)9:00~17:50、9日(水)9:00~12:50(日本時間) 会 場:早稲田大学14号館8階及びオンライン(Zoomウェビナー) 言 語:日中韓3言語同時通訳付き 主 催:日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性実行委員会 共 催:渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA) 共 催:早稲田大学先端社会科学研究所・東アジア国際関係研究所 助 成:高橋産業経済研究財団 ※参加申込(参加費:無料) https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_Mc7ctZdQTRG2eCGPU7PFbA#/registration お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ◆開催趣旨 2016年から始まった「国史たちの対話」の目的は、日中韓「国史」研究者の交流を深めることによって、知のプラットフォームを構築し、三国間に横たわっている歴史認識問題の克服に知恵を提供することである。 戦後の東アジアは冷戦、和解、日本主導の経済協力、中国の台頭など複数の局面と複雑な変動を経験した。各国は各自の政治、社会的環境のなかで、自国史のコンテクストに基づいて歴史観を形成し、国民に広げてきた。戦後各国の歴史観はなかば閉鎖的な歴史環境のなかで形成されたものである。各国の歴史認識の形成過程、内在する論理、政治との関係、国民に広がるプロセスなどについての情報は、東アジアの歴史家に共有されていない。歴史認識をめぐる対立は、このような情報の欠如と深く関わっているのである。 歴史認識をめぐる国家間の対立が発生すると、相手の歴史解釈と歴史認識の問題点を指摘することが多い。しかし、自国内に発生した政治、社会変動に誘発される歴史認識の対立の方がむしろ多い。相手の歴史認識を認識する過程は、自分の歴史認識を問い直す機会でもあろう。このような観点から、第8回の国史対話は、今までの対話をさらに深めることが期待される。 ◆プログラム 8月8日(火) 【第1セッション 司会:村和明】 ・開会挨拶:劉傑(早稲田大学) ・趣旨説明:三谷博(東京大学名誉教授) 【第2セッション サブテーマ:教育 司会:南基正】 ・金泰雄(ソウル大学)「解放後における韓国人知識人層の脱植民地への議論と歴史叙述の構成の変化」 ・唐小兵(華東師範大学)「歴史をめぐる記憶の戦争と著述の倫理―20世紀半ばの中国に関する『歴史の戦い』」 ・塩出浩之(京都大学)「日本の歴史教育は戦争と植民地支配をどう伝えてきたか―教科書と教育現場から考える??」 【第3セッション サブテーマ:メディア 司会:李恩民】 ・江沛(南開大学)「保身、愛国と屈服:ある偽満州国の『協力者』の心理状態に対する考察」 ・福間良明(立命館大学)「戦後日本のメディア文化と『戦争の語り』の変容」 ・李基勳(延世大学)「現代韓国メディアの植民地、戦争経験の形象化とその影響-映画、ドラマを中心に」 【第4セッションン サブテーマ:研究 司会:宋志勇】 ・安岡健一(大阪大学)「『わたし』の歴史、『わたしたち』の歴史―色川大吉の『自分史』論を手がかりに」 ・梁知恵(東北亜歴史財団)「『発展』を越える、新しい歴史叙述の可能性:韓国における植民地期経済史研究の行方」 ・陳紅民(浙江大学)「民国期の中国人は『日本軍閥』という概念をどのように認識したか」 ・論点整理:劉傑(早稲田大学) 8月9日(水) 【第5、6セッション:全体討議(指定討論)司会:彭浩、鄭淳一】 ・議論を始めるに当たって:三谷博(東京大学名誉教授) ・全体討議:指定討論者(アルファベット順) 平山昇(神奈川大学、日本)、金ホ(ソウル大学、韓国)、金憲柱(国立ハンバット大学、韓国)、史博公(中国伝媒大学、中国)、吉井文美(国立歴史民俗博物館、日本)、袁慶豊(中国伝媒大学、中国)、張暁剛(長春師範大学、中国) ・閉会挨拶:趙珖(高麗大学名誉教授) ※詳細は下記リンクをご覧ください。 日本語ホームページ https://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/2023/18402/ 中国語ホームページ https://www.aisf.or.jp/sgra/chinese/2023/06/15/kokushi8/ 韓国語ホームページ https://www.aisf.or.jp/sgra/korean/2023/06/15/kokushi8/ -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【3】第10回日台アジア未来フォーラム@島根へのお誘い(再送) 日台アジア未来フォーラムは、台湾出身のSGRAメンバーが中心となって企画し、2011年より毎年1回台湾の大学と共同で実施しています。コロナ禍で3年の空白期間がありましたが、今年は例外的に日本の島根県で開催することになりました。皆さんのご参加をお待ちしています。諸準備のため参加ご希望の方は早めにお申し込みいただけますと幸いです。 テーマ:「日台の酒造りと文化:日本酒と紹興酒」 日 時:2023年10月21日(土)14時~17時10分 会 場:JR松江駅前ビル・テルサ4階大会議室(島根県松江市朝日町478―18) https://goo.gl/maps/2GB6p1bUwVAAkaiG8 言 語:日本語・中国語(同時通訳) ※参加申込(クリックして登録してください) http://bit.ly/JTAFF10 お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ◆開催趣旨 東アジアの主食である米を発酵させた醸造酒は、各地でそれぞれ歴史を経て洗練されたが、原料が同じなだけに共通点も多い。代表的な醸造酒に日本では清酒(日本酒)、中国では黄酒(紹興酒)がある。島根は日本酒発祥の地とされ、日本最古の歴史書『古事記』にも登場する。一方、台湾では第二次世界大戦後に中国から来た紹興酒職人が、それまで清酒が作られていた埔里酒廠で紹興酒を開発し量産に成功した。台湾で酒の輸入が自由化されるまでは、国内でもっとも飲まれる醸造酒であった。中国の諺に「異中求同」(異なるものに共通点を見出す)があるが、今回は醸造酒をテーマに相互理解を深めたい。フォーラムでは島根の酒にまつわる漢詩を紹介していただいた後、日本と台湾の専門家からそれぞれの醸造技術と酒文化について、分かりやすく解説していただく。日中同時通訳付き。 ◆プログラム 講演1:「近代山陰の酒と漢詩」要木純一(島根大学法文学部教授) 講演2:「島根県の日本酒について」土佐典照(島根県産業技術センター) 講演3:「台湾紹興酒のお話」江銘峻(台湾煙酒株式会社) 全体質疑応答 ※詳細は下記リンクをご覧ください。 https://www.aisf.or.jp/sgra/active/taiwan/2023/18448/ ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************  
  • YEH Wenchang “About Sake and Shaoxingjiu”

    ********************************************** SGRAかわらばん979号(2023年7月27日) 【1】エッセイ:葉文昌「日本酒と紹興酒について」 【2】第10回日台アジア未来フォーラムへのお誘い(再送) 「日台の酒造りと文化:日本酒と紹興酒」(10月21日、島根県松江市) 【3】第8回国史たちの対話へのお誘い(8月8~9日、東京・ハイブリッド)(再送) 「20世紀の戦争・植民地支配と和解はどのように語られてきたのか――教育・メディア・研究」 ********************************************** 【1】SGRAエッセイ#743 ◆葉文昌「日本酒と紹興酒について」 2018年ごろだろうか、渥美財団関口グローバル研究会からこれまで台湾でやっていた日台フォーラムを島根でやってくれないかという打診が来た。自分の分野ならフォーラムをやっても良いかと思ったが、文系メンバーが圧倒的に多い関口グローバル研究会(SGRA)である。「文系にも分かるテーマで」という難題を突き付けられた。「文理融合」「文理相互理解」の印籠だ。でも思うのだが、理系人間は教養という名のもとに文系の言葉を理解することが求められるのに対して、多くの文系人間は理系の言葉を理解しようとしないし、しなくても許されているのはおかしくないか? 愚痴っても仕方がないので、どういうテーマなら私も参加者も楽しめるかを考えた。キーワードは「島根」と「台湾」、そしてSGRAからの注文として「文理融合」、さらに私も楽しめるテーマということで「ものづくり」とした。古代からのものづくりで島根県が誇るものとして「たたら製鉄」と「日本酒」がある。着任早々に地元のものづくりに敬意を表して司馬遼太郎の「砂鉄の道」を読んだことがあった。「日本酒」も親身に理解しようとしていた。この中で「酒」ならそれだけで文理融合できそうというわけで「酒」にした。では「台湾」の要素はどうするか?実は日本酒の近年の風潮に古酒がある。本来は鮮度が特徴の日本酒を数年間熟成させるのである。飲んでみたら紹興酒に似た要素があった。紹興酒を調べたら、紹興酒ももち米を主原料としていることがわかった。これでテーマを「日本酒と台湾紹興酒」とした。 かつて中国の文豪である李白や杜甫も、酒によって知的創造が盛んになったらしい。そして松江も江戸時代から漢詩創作が盛んだった。酒を多次元に捉えるため、さらに皆様の知的創造が盛んになることも願って、江戸時代から明治時代にかけての松江での漢詩創作についてお話できる講師もお招きした。 酒の成分はアルコールである。アルコールを作り出すには糖分を酵母で発酵させる必要がある。ワインの場合は、葡萄の糖分が酵母によってアルコールに変換される。一方で米は澱粉であって糖分は含まないので、酵母でアルコールを作り出すことはできない。そこで澱粉を糖分に変える方法が必要になる。唾液の酵素で糖化するのが昔から世界各地にあった口噛み酒である。もう一つの方法として麹菌で糖化する方式である。この方式が今の日本酒や紹興酒で使われている。澱粉と麹と酵母を混ぜて、糖化と発酵を平行に進行させるので、平行複発酵という。なぜ「複発酵」なのか?糖化も微生物の力を借りているので広義の発酵だからであろう。要するに日本酒も紹興酒も、米を平行複発酵で酒にしているのである。 日本酒の酒蔵はいくつか見学したことがあった。酒蔵のかなめは麹室である。それは檜部屋だった。なぜステンレスではなく木造なのか?木に生える常在菌をうまく生かして麹を作るそうだ。台湾の滷肉飯や日本の鰻屋の秘伝のたれと同じ思想だ。100年間洗ったことがない鍋。私は30歳までに「百年洗わない鍋はすごい、きっと美味しい」から目覚めた。一流のシェフが、神のサイコロに味をゆだねて良いはずがない。最先端の半導体工場でも、神が宿っているからと成膜室を洗わずに使い続けて良い半導体が作れるものか。これを酒飲みに披露すると大抵非難される。私は檜部屋や秘伝のたれを批判している訳ではない。伝統は大事だし、それで美味しいものを採算合って作れていれば変える必要はない。でもものづくりなら、神のサイコロにゆだねずに、1+2=3という風に、この菌とこの菌を混ぜてこう作ればこういう味になる、と神に頼らないで作ることを目指すのがロマンだろう。実は日本酒も、何人かの伝説的な先人によって、江戸時代の「きもと」から明治時代の「速醸」へ、それと戦後から泡なし酵母など幾度の革新があり、まさに合理化効率化の道を辿っていたのである。 一方で紹興酒はどうだろうか?フォーラム準備にあたって、台湾紹興酒を作っている台湾煙酒公司(元台湾煙酒公売局)の埔里酒廠で打ち合わせと見学をしてきた。日本酒の工程と非常に似ていた。同じ平行複発酵だから無理もない。しかし現代工場の麹室も檜部屋だったのは意外だった。「きもと」「酒母」「もろみ」、使う言葉は違うかもしれないが、説明すれば通じるものは多くあった。では日本酒と紹興酒の違いは何か?そして台湾紹興酒と中国紹興酒の違いは何か?特に台湾紹興酒は日本統治時代の日本酒を作っていた酒蔵を、戦後に中国から渡ってきた紹興酒職人によって紹興酒酒蔵に転換されたが、中国紹興酒との違いは何か?ここでは種明かしはせず、ぜひ会場に足を運んでいただき、味の違いを五感で感じながら、講師のお話を聞いて解き明かしていただきたい。 <葉文昌(よう・ぶんしょう)YEH_Wenchang> SGRA「環境とエネルギー」研究チーム研究員。2001年に東京工業大学を卒業後、台湾へ帰国。2001年、国立雲林科技大学助理教授、2002年、台湾科技大学助理教授、2008年同副教授。2010年4月より島根大学総合理工学研究科物理工学科准教授、2022年より教授。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】第10回日台アジア未来フォーラム@島根へのお誘い(再送) 日台アジア未来フォーラムは、台湾出身のSGRAメンバーが中心となって企画し、2011年より毎年1回台湾の大学と共同で実施しています。コロナ禍で3年の空白期間がありましたが、今年は例外的に日本の島根県で開催することになりました。皆さんのご参加をお待ちしています。諸準備のため参加ご希望の方は早めにお申し込みいただけますと幸いです。 テーマ:「日台の酒造りと文化:日本酒と紹興酒」 日 時:2023年10月21日(土)14時~17時10分 会 場:JR松江駅前ビル・テルサ4階大会議室(島根県松江市朝日町478―18) https://goo.gl/maps/2GB6p1bUwVAAkaiG8 言 語:日本語・中国語(同時通訳) ※参加申込(クリックして登録してください) http://bit.ly/JTAFF10 お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ◆開催趣旨 東アジアの主食である米を発酵させた醸造酒は、各地でそれぞれ歴史を経て洗練されたが、原料が同じなだけに共通点も多い。代表的な醸造酒に日本では清酒(日本酒)、中国では黄酒(紹興酒)がある。島根は日本酒発祥の地とされ、日本最古の歴史書『古事記』にも登場する。一方、台湾では第二次世界大戦後に中国から来た紹興酒職人が、それまで清酒が作られていた埔里酒廠で紹興酒を開発し量産に成功した。台湾で酒の輸入が自由化されるまでは、国内でもっとも飲まれる醸造酒であった。中国の諺に「異中求同」(異なるものに共通点を見出す)があるが、今回は醸造酒をテーマに相互理解を深めたい。フォーラムでは島根の酒にまつわる漢詩を紹介していただいた後、日本と台湾の専門家からそれぞれの醸造技術と酒文化について、分かりやすく解説していただく。日中同時通訳付き。 ◆プログラム 講演1:「近代山陰の酒と漢詩」要木純一(島根大学法文学部教授) 講演2:「島根県の日本酒について」土佐典照(島根県産業技術センター) 講演3:「台湾紹興酒のお話」江銘峻(台湾煙酒株式会社) 全体質疑応答 ※詳細は下記リンクをご覧ください。 https://www.aisf.or.jp/sgra/active/taiwan/2023/18448/ -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【3】第8回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性へのお誘い(再送) 下記の通り第8回国史たちの対話を会場参加とオンライン参加のハイブリッド方式で開催します。参加ご希望の方は必ず事前に参加登録をお願いします。 テーマ:「20世紀の戦争・植民地支配と和解はどのように語られてきたのか――教育・メディア・研究」 日 時:2023年8月8日(火)9:00~17:50、9日(水)9:00~12:50(日本時間) 会 場:早稲田大学14号館8階及びオンライン(Zoomウェビナー) 言 語:日中韓3言語同時通訳付き 主 催:日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性実行委員会 共 催:渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA) 共 催:早稲田大学先端社会科学研究所・東アジア国際関係研究所 助 成:高橋産業経済研究財団 ※参加申込(参加費:無料) https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_Mc7ctZdQTRG2eCGPU7PFbA#/registration お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ◆開催趣旨 2016年から始まった「国史たちの対話」の目的は、日中韓「国史」研究者の交流を深めることによって、知のプラットフォームを構築し、三国間に横たわっている歴史認識問題の克服に知恵を提供することである。 戦後の東アジアは冷戦、和解、日本主導の経済協力、中国の台頭など複数の局面と複雑な変動を経験した。各国は各自の政治、社会的環境のなかで、自国史のコンテクストに基づいて歴史観を形成し、国民に広げてきた。戦後各国の歴史観はなかば閉鎖的な歴史環境のなかで形成されたものである。各国の歴史認識の形成過程、内在する論理、政治との関係、国民に広がるプロセスなどについての情報は、東アジアの歴史家に共有されていない。歴史認識をめぐる対立は、このような情報の欠如と深く関わっているのである。 歴史認識をめぐる国家間の対立が発生すると、相手の歴史解釈と歴史認識の問題点を指摘することが多い。しかし、自国内に発生した政治、社会変動に誘発される歴史認識の対立の方がむしろ多い。相手の歴史認識を認識する過程は、自分の歴史認識を問い直す機会でもあろう。このような観点から、第8回の国史対話は、今までの対話をさらに深めることが期待される。 ◆プログラム 8月8日(火) 【第1セッション 司会:村和明】 ・開会挨拶:劉傑(早稲田大学) ・趣旨説明:三谷博(東京大学名誉教授) 【第2セッション サブテーマ:教育 司会:南基正】 ・金泰雄(ソウル大学)「解放後における韓国人知識人層の脱植民地への議論と歴史叙述の構成の変化」 ・唐小兵(華東師範大学)「歴史をめぐる記憶の戦争と著述の倫理―20世紀半ばの中国に関する『歴史の戦い』」 ・塩出浩之(京都大学)「日本の歴史教育は戦争と植民地支配をどう伝えてきたか―教科書と教育現場から考える??」 【第3セッション サブテーマ:メディア 司会:李恩民】 ・江沛(南開大学)「保身、愛国と屈服:ある偽満州国の『協力者』の心理状態に対する考察」 ・福間良明(立命館大学)「戦後日本のメディア文化と『戦争の語り』の変容」 ・李基勳(延世大学)「現代韓国メディアの植民地、戦争経験の形象化とその影響-映画、ドラマを中心に」 【第4セッションン サブテーマ:研究 司会:宋志勇】 ・安岡健一(大阪大学)「『わたし』の歴史、『わたしたち』の歴史―色川大吉の『自分史』論を手がかりに」 ・梁知恵(東北亜歴史財団)「『発展』を越える、新しい歴史叙述の可能性:韓国における植民地期経済史研究の行方」 ・陳紅民(浙江大学)「民国期の中国人は『日本軍閥』という概念をどのように認識したか」 ・論点整理:劉傑(早稲田大学) 8月9日(水) 【第5、6セッション:全体討議(指定討論)司会:彭浩、鄭淳一】 ・議論を始めるに当たって:三谷博(東京大学名誉教授) ・全体討議:指定討論者(アルファベット順) 平山昇(神奈川大学、日本)、金ホ(ソウル大学、韓国)、金憲柱(国立ハンバット大学、韓国)、史博公(中国伝媒大学、中国)、吉井文美(国立歴史民俗博物館、日本)、袁慶豊(中国伝媒大学、中国)、張暁剛(長春師範大学、中国) ・閉会挨拶:趙珖(高麗大学名誉教授) ※詳細は下記リンクをご覧ください。 日本語ホームページ https://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/2023/18402/ 中国語ホームページ https://www.aisf.or.jp/sgra/chinese/2023/06/15/kokushi8/ 韓国語ホームページ https://www.aisf.or.jp/sgra/korean/2023/06/15/kokushi8/ ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************  
  • Naheya “The 71st SGRA Forum Report: A special Space called GREEN UKRAINE”

    ********************************************** SGRAかわらばん978号(2023年7月20日) 【1】娜荷芽「第71回SGRAフォーラム報告」 「20世紀前半、北東アジアに現れた『緑のウクライナ』という特別な空間」 【2】第8回国史たちの対話へのお誘い(8月8~9日、東京・ハイブリッド)(再送) 「20世紀の戦争・植民地支配と和解はどのように語られてきたのか――教育・メディア・研究」 【3】第10回日台アジア未来フォーラムへのお誘い(再送) 「日台の酒造りと文化:日本酒と紹興酒」(10月21日、島根県松江市) ********************************************** 【1】第71回SGRAフォーラム報告 ◆娜荷芽「第71回SGRAフォーラム報告:20世紀前半、北東アジアに現れた『緑のウクライナ』という特別な空間」 2023年6月10日(土)日本時間午後2時より第71回SGRAフォーラム「20世紀前半、北東アジアに現れた『緑のウクライナ』という特別な空間」が開催された。コロナ禍以降初めて、登壇者全員が会場の渥美財団ホールに対面で参加。また、長野大学の塚瀬進先生以外、全員が元渥美奨学生という特筆すべきプログラムとなった。 開催にあたり司会のマグダレナ・コウオジェイ先生(東洋英和女学院大学)より、様々な民族や文化を内包して20世紀前半の北東アジアに出現した「緑のウクライナ」と呼ばれた特別な空間をテーマに取り上げた趣旨説明があった。その後、講演と話題提供が行われた。 最初はオリガ・ホメンコ先生(オックスフォード大学日産研究所)の講演「『緑のウクライナ』という特別な空間」。ロシア帝国は中国とのネルチンスク条約、アイグン条約、北京条約により極東の大きな領土を手に入れ、1861年の農奴解放令発布後、当時ロシア帝国に付属していたウクライナの「過剰」人口問題に対する方策として「極東に家族ごと移住すれば、巨大な農地がもらえる」と宣伝した。その結果、1870年からロシア革命までの間に大勢のウクライナ人が土地と自由な生活を求めて移り住んだ。1918年1月にキーウで独立共和国の宣言が行われた時、極東のウクライナ人は「緑のウクライナ」という国を作ろうとしていた。1920年代になるとソ連から逃れた100万人のウクライナ人がハルビンなどに移り住み、1945年まで留まっていた。講演ではウクライナ人がコミュニティを築き、協力しあって多様な活動を展開していた歴史を紹介した。 次は塚瀬進先生(長野大学)による「マンチュリアにおける民族の交錯」。「マンチュリア」はどのように形成され、変容したのか。そこに暮らした人々はどのように近代を迎え、現在に至ったのかを各時代の地図を用いて15世紀~17世紀半ばを萌芽期、17世紀~19世紀半ばを形成期、19世紀半ば以降を変容期と捉え、1949年の中華人民共和国建国までの歴史を考察し、国史と地域史の両方のまなざしによる歴史理解を追究した。 続いて娜荷芽(内蒙古大学)が「中国東北地域における近代的な空間の形成:東北蒙旗師範学校を事例に」を報告した。20世紀前半の瀋陽に創設された東北蒙旗師範学校を事例に、中華民国成立後の1912~1930年代の軍閥混戦期に、内モンゴルの有識者たちが各地方政権と取引を行わざるを得なかったこと、モンゴル人を主体とする文化及び教育団体は相互に連携し活発な活動を行なっていたこと、さらに漢語の著作や雑誌を通して漢族の有識者たちに自分の立場を訴えていたことなどについて考察した。 最後のグロリア・ヤンユー先生(九州大学)の報告「『マンチュリア』に行こう!」は視覚資料、小説、紀行文などを用いて20世紀前半の「マンチュリア」の生活空間の多様性を描き出し、この多様性に富む「越境する現場」空間の視覚表象は、日本帝国の拡張によって取捨され、単一化されつつあったことを説明した。講演と話題提供の90分間はあっという間に終わった。 自由討論は司会者が進行役となり、発表者4名が相互にコメントしあったり、会場からの質問に答えたりする形で進行した。会場の劉傑先生(早稲田大学)からの近代空間及び鉄道についての問題提起は、特に深く考えさせられた。松島芳彦様(共同通信社)、松谷基和先生(東北学院大学)、大野正美様(ネムロニュース)からも発表者へのコメントや質問があり活発な議論が展開した。総括で語られた塚瀬先生の「こうした議論の方向性は地域の歴史的要因の認識につながる」という話は興味深かった。会場とオンラインで参加してくださった皆様にもあらためて感謝を申し上げたい。 私にとってはコロナ後4年ぶりの日本で、雨中の東京を楽しんだ。十数年前の留学時代にお世話になった東京大学教務課国際交流支援チームの坪山様にもお会いでき、週末で賑わう人々の明るい笑顔に元気づけられた。世界中の人々が平和の中で安心して暮らしていけますように! 当日の写真 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2023/07/SGRAForum71PhotosLITE.pdf アンケート集計 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2023/07/SGRAForum71Feedback.pdf <娜荷芽 ナヒヤ Naheya> 2012年東京大学大学院地域文化研究科にて博士号取得。2011年度渥美奨学生。中国内蒙古大学蒙古学学院歴史系教授、研究分野は中国近現代史、近現代モンゴル史、日中関係史。著書『二十世紀三四十年代内蒙古東部地区文教発展史』内蒙古人民出版社、2018年。訳著『民俗学上所見之蒙古』(鳥居きみこ著)きなん大学出版社、2018年など。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】第8回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性へのお誘い(再送) 下記の通り第8回国史たちの対話を会場参加とオンライン参加のハイブリッド方式で開催します。参加ご希望の方は必ず事前に参加登録をお願いします。 テーマ:「20世紀の戦争・植民地支配と和解はどのように語られてきたのか――教育・メディア・研究」 日 時:2023年8月8日(火)9:00~17:50、9日(水)9:00~12:50(日本時間) 会 場:早稲田大学14号館8階及びオンライン(Zoomウェビナー) 言 語:日中韓3言語同時通訳付き 主 催:日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性実行委員会 共 催:渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA) 共 催:早稲田大学先端社会科学研究所・東アジア国際関係研究所 助 成:高橋産業経済研究財団 ※参加申込(参加費:無料) https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_Mc7ctZdQTRG2eCGPU7PFbA#/registration お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ◆開催趣旨 2016年から始まった「国史たちの対話」の目的は、日中韓「国史」研究者の交流を深めることによって、知のプラットフォームを構築し、三国間に横たわっている歴史認識問題の克服に知恵を提供することである。 戦後の東アジアは冷戦、和解、日本主導の経済協力、中国の台頭など複数の局面と複雑な変動を経験した。各国は各自の政治、社会的環境のなかで、自国史のコンテクストに基づいて歴史観を形成し、国民に広げてきた。戦後各国の歴史観はなかば閉鎖的な歴史環境のなかで形成されたものである。各国の歴史認識の形成過程、内在する論理、政治との関係、国民に広がるプロセスなどについての情報は、東アジアの歴史家に共有されていない。歴史認識をめぐる対立は、このような情報の欠如と深く関わっているのである。 歴史認識をめぐる国家間の対立が発生すると、相手の歴史解釈と歴史認識の問題点を指摘することが多い。しかし、自国内に発生した政治、社会変動に誘発される歴史認識の対立の方がむしろ多い。相手の歴史認識を認識する過程は、自分の歴史認識を問い直す機会でもあろう。このような観点から、第8回の国史対話は、今までの対話をさらに深めることが期待される。 ◆プログラム 8月8日(火) 【第1セッション 司会:村和明】 ・開会挨拶:劉傑(早稲田大学) ・趣旨説明:三谷博(東京大学名誉教授) 【第2セッション サブテーマ:教育 司会:南基正】 ・金泰雄(ソウル大学)「解放後における韓国人知識人層の脱植民地への議論と歴史叙述の構成の変化」 ・唐小兵(華東師範大学)「歴史をめぐる記憶の戦争と著述の倫理―20世紀半ばの中国に関する『歴史の戦い』」 ・塩出浩之(京都大学)「日本の歴史教育は戦争と植民地支配をどう伝えてきたか―教科書と教育現場から考える??」 【第3セッション サブテーマ:メディア 司会:李恩民】 ・江沛(南開大学)「保身、愛国と屈服:ある偽満州国の『協力者』の心理状態に対する考察」 ・福間良明(立命館大学)「戦後日本のメディア文化と『戦争の語り』の変容」 ・李基勳(延世大学)「現代韓国メディアの植民地、戦争経験の形象化とその影響-映画、ドラマを中心に」 【第4セッションン サブテーマ:研究 司会:宋志勇】 ・安岡健一(大阪大学)「『わたし』の歴史、『わたしたち』の歴史―色川大吉の『自分史』論を手がかりに」 ・梁知恵(東北亜歴史財団)「『発展』を越える、新しい歴史叙述の可能性:韓国における植民地期経済史研究の行方」 ・陳紅民(浙江大学)「民国期の中国人は『日本軍閥』という概念をどのように認識したか」 ・論点整理:劉傑(早稲田大学) 8月9日(水) 【第5、6セッション:全体討議(指定討論)司会:彭浩、鄭淳一】 ・議論を始めるに当たって:三谷博(東京大学名誉教授) ・全体討議:指定討論者(アルファベット順) 平山昇(神奈川大学、日本)、金ホ(ソウル大学、韓国)、金憲柱(国立ハンバット大学、韓国)、史博公(中国伝媒大学、中国)、吉井文美(国立歴史民俗博物館、日本)、袁慶豊(中国伝媒大学、中国)、張暁剛(長春師範大学、中国) ・閉会挨拶:趙珖(高麗大学名誉教授) ※詳細は下記リンクをご覧ください。 日本語ホームページ https://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/2023/18402/ 中国語ホームページ https://www.aisf.or.jp/sgra/chinese/2023/06/15/kokushi8/ 韓国語ホームページ https://www.aisf.or.jp/sgra/korean/2023/06/15/kokushi8/ -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【3】第10回日台アジア未来フォーラム@島根へのお誘い(再送) 日台アジア未来フォーラムは、台湾出身のSGRAメンバーが中心となって企画し、2011年より毎年1回台湾の大学と共同で実施しています。コロナ禍で3年の空白期間がありましたが、今年は例外的に日本の島根県で開催することになりました。皆さんのご参加をお待ちしています。諸準備のため参加ご希望の方は早めにお申し込みいただけますと幸いです。 テーマ:「日台の酒造りと文化:日本酒と紹興酒」 日 時:2023年10月21日(土)14時~17時10分 会 場:JR松江駅前ビル・テルサ4階大会議室(島根県松江市朝日町478―18) https://goo.gl/maps/2GB6p1bUwVAAkaiG8 言 語:日本語・中国語(同時通訳) ※参加申込(クリックして登録してください) http://bit.ly/JTAFF10 お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ◆開催趣旨 東アジアの主食である米を発酵させた醸造酒は、各地でそれぞれ歴史を経て洗練されたが、原料が同じなだけに共通点も多い。代表的な醸造酒に日本では清酒(日本酒)、中国では黄酒(紹興酒)がある。島根は日本酒発祥の地とされ、日本最古の歴史書『古事記』にも登場する。一方、台湾では第二次世界大戦後に中国から来た紹興酒職人が、それまで清酒が作られていた埔里酒廠で紹興酒を開発し量産に成功した。台湾で酒の輸入が自由化されるまでは、国内でもっとも飲まれる醸造酒であった。中国の諺に「異中求同」(異なるものに共通点を見出す)があるが、今回は醸造酒をテーマに相互理解を深めたい。フォーラムでは島根の酒にまつわる漢詩を紹介していただいた後、日本と台湾の専門家からそれぞれの醸造技術と酒文化について、分かりやすく解説していただく。日中同時通訳付き。 ◆プログラム 講演1:「近代山陰の酒と漢詩」要木純一(島根大学法文学部教授) 講演2:「島根県の日本酒について」土佐典照(島根県産業技術センター) 講演3:「台湾紹興酒のお話」江銘峻(台湾煙酒株式会社) 全体質疑応答 ※詳細は下記リンクをご覧ください。 https://www.aisf.or.jp/sgra/active/taiwan/2023/18448/ ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************