SGRAメールマガジン バックナンバー
-
[SGRA_Kawaraban] Kobayashi “The Sea of Living”
2014年2月12日 16:18:33
******************************************************************** SGRAかわらばん506号(2014年2月12日) 【1】エッセイ:小林聡明「尖閣海域を再び『生活の海』にするために」 【2】新刊紹介:オリガ・ホメンコ「ウクライナから愛をこめて」 〜SGRAかわらばんのエッセイが本になりました〜 【3】第13回日韓アジア未来フォーラムへのお誘い(最終案内) 「ポスト成長時代における日韓の課題と東アジア協力」(2月15日ソウル) ******************************************************************** ☆★☆日中韓の政治状況、最近は社会状況まで、とても厳しく、時には暴力的でさえ あります。ここで語り合う<場>を作るのが、良き地球市民の実現をめざすSGRAの役 割りであると考え、SGRAかわらばんでは読者の皆様のエッセイを募集します。皆様の 自由闊達なご意見をお待ちしています。 ・2000字程度(短くてもかまいません) ・匿名希望の方はその旨お書きください。 ・送付先:[email protected] 【1】SGRAエッセイ#398 ■小林聡明「尖閣海域を再び「生活の海」にするために−沖縄と向きあう」 今、東アジアがきな臭い。その一つが、尖閣諸島をめぐる領有権問題であることには 言を俟たない。2012年9月、野田政権は尖閣諸島を構成する魚釣島、南小島、北小島 の国有化方針を固めた。これら3島は、1932年まで日本政府が所有し、その後、民間 人に払い下げられた。「尖閣国有化」は、ふたたび民間から政府へと所有権を移転さ せるものであった。だが、中国は、現状変更を目的とする「領土化」とみなし、激し く反発した。以後、日中関係は急速に冷却化し、日中国交正常化以来、最悪の状態に 陥っている。現在、日中双方は、尖閣の領有権をめぐって、激しい神経戦/宣伝戦を 繰り広げると同時に、海上では、日中のにらみ合いが続いている。尖閣海域は、物理 的な衝突可能性も孕んだ緊張の海となっている。 元来、尖閣の海は、海洋資源の豊かな平和な海であった。1960年代まで、尖閣海域で は、沖縄・八重山の漁民や台湾・宜蘭県蘇澳の漁民たちによるマグロやカツオ漁など が行われ、両漁民の交流も盛んに行われていた。また、彼らは魚釣島などで、アホウ ドリの卵や羽毛を採取していた。尖閣海域は、緊張の海とはほど遠い沖縄・台湾漁民 たちにとって生活の海となっていたのである。 1960年代末、ECAFE(アジア極東経済委員会)が尖閣周辺海域における石油埋蔵の可 能性を明らかにするや、尖閣の海は、にわかに波立つことになる。1970年12月、中国 は、新華社通信を通じて、尖閣諸島に対する領有権を対外的に初めて主張した。これ に続いて1971年6月、台湾外交部も尖閣諸島の領有権を公式に主張した。それまで地 元の人々だけが関心をむけていた「生活の海」は、一転して、国家がせめぎ合う「対 立の海」へと変化した。重要なことは、ECAFEの報告が、尖閣諸島に対して、中国や 台湾だけでなく、日本の関心も呼び起こしたことである。折しも沖縄の本土復帰が確 実となり、尖閣諸島に対する日本本土の関心は益々高まっていった。そこには、沖縄 と日本本土との経済一体化を基本的前提とする「沖縄開発計画」の推進が目標として たたみ込まれていた。1950年から沖縄の研究者らを中心として、尖閣諸島の生物学・ 植物学的調査がたびたび実施されていた。沖縄の研究者らによる尖閣調査に、本土側 が参加するようになったことは、尖閣諸島に対する本土の関心の高まりを如実に示し ていた。 ECAFE報告に加え、沖縄と日本本土との「合同」の尖閣調査が実施された1969年から 70年にかけて、沖縄では、「尖閣列島の石油資源は沖縄のもの」「県民の資源を守ろ う」という声が日増しに強まっていった。そこには領有権を主張する中国や台湾だけ でなく、本土側に対する警戒感も含まれていた。「沖縄開発計画」の名の下に、尖閣 海域の石油資源が、沖縄には利益をもたらさず、本土側の利益にされてしまうのでは ないかという不安と懸念が、沖縄で広がっていた。尖閣問題の登場は、日本・中国・ 台湾の間での緊張関係だけでなく、沖縄から日本本土への不信感も呼び起こした。 こうした不信感は、いまや完全に一掃されたと言えるだろうか。2013年4月に締結さ れた日台漁業協定は、尖閣問題を打開する一つの方法であった。だが、それは事実 上、沖縄漁民に大幅な譲歩を迫るものであった。にもかかわらず、沖縄の頭越しに東 京と台北で交渉がまとめらたことに、沖縄市民の間では不満が渦巻いている。本土へ の不信感は、普天間移設や辺野古移転などの基地問題などにおいても、しばしば姿を あらわす。尖閣問題が浮上したときに見られた沖縄から本土への不信感は、形を変え ながら、重奏低音のように、現在も継続しているように思われる。 こうした点を念頭に置くならば、「尖閣問題」を克服するためには、日中関係、日台 関係だけでなく、本土と沖縄との関係も考えていかなければならない。尖閣の海は、 いまはもう地元の人々が、近づくことすらできない世界でも有数の「危険な海」と なってしまった。私は、本土の人間の一人として、尖閣を再び「生活の海」の海にす るために、中国や台湾との対話をすすめるだけでなく、沖縄と向き合い、これまでの 数百年にわたる本土と沖縄との関係を考えることが、何よりも重要であると思ってい る。 <小林聡明(こばやし・そうめい)☆ Somei Kobayashi> 一橋大学社会学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。博士(社会 学)。ソウル大学や米シンクタンクなどで研究を行ったのち、現在、慶煕大学哲学科 International Scholar. 専攻は、東アジア冷戦史/メディア史、朝鮮半島地域研 究。単著に『在日朝鮮人のメディア空間』、主な共著に『原子力と冷戦』『日米同盟 論』などがある。日本マス・コミュニケーション学会優秀論文賞(2010年)。 ---------------------------------------------------- 【2】新刊紹介 オリガ・ホメンコさんがSGRAかわらばんに投稿したエッセイを中心に纏めた本をご寄 贈いただきましたのでご紹介します。挿絵も自作のかわいい本です。 http://gunzosha.com/books/ISBN4-903619-44-6.html ウクライナの首都キエフに生まれ、 チェルノブイリ原発事故の記憶が 深く心に刻まれた子供時代をすごし、 日本の大学で学んだ女性がいま、 忘れられない人々の思い出と故郷の街の魅力を 日本語でつづったエッセイ。 ひまわりの国と桜の国を結ぶ言葉の架け橋。 著者: オリガ・ホメンコ ISBN978-4-903619-44-6 C0098 出版年:2014年1月 発行:群像社 定価:1200円 ---------------------------------------------------- 【3】第13回日韓アジア未来フォーラムinソウルへのお誘い(最終案内) 下記の通り第13回日韓アジア未来フォーラムをソウルで開催します。参加ご希望の方 は、事前にお名前・ご所属・緊急連絡先をSGRA事務局宛ご連絡ください。SGRAフォー ラムはどなたにでも参加していただけますので、関心のある方にお知らせください。 ■テーマ「ポスト成長時代における日韓の課題と東アジア地域協力」 日時:2014年2月15日(土)午後2 時00分〜5時00分 会場: 高麗大学現代自動車経営館301号 申込み・問合せ:SGRA事務局 ● フォーラムの趣旨 「課題先進国」日本、そして「葛藤の先進国」とも言われる韓国が今までに経験して きた課題と対策のノウハウを東アジア地域に展開しようとするとき、どのような分野 が考えられるだろうか。日本は、地震をはじめ自然災害への対策、鉄道システム、経 済発展と環境負荷軽減及び省ネルギーの両立、少子高齢化への対処など、多くの分野 において関連する経験や技術の蓄積、優位性を有している。さらに、日本以上の課題 先進国となった韓国の経験や後遺症も、東アジア地域におけるこれからの発展や地域 協力の在り方に貴重な手掛かりを提供している。本フォーラムでは、日本と韓国の経 験やノウハウを生かした社会インフラシステムを、東アジア地域及び他国へ展開する 場合、何をどのように展開できるか、そして、それが東アジアにおける地域協力、平 和と繁栄においてもつ意義は何なのかについて考えてみたい。 ● プログラム 詳細は下記リンクをご覧ください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/13.php 【基調講演】染野憲治(東京財団研究員) 「北東アジアの気候変動対策と大気汚染防止に向けて」 【報告1】朴 栄濬(韓国国防大学校安全保障大学院教授) 「北極海の開放と韓日中の海洋協力展望」 【報告2】李 鋼哲(北陸大学未来創造学部教授) 「北東アジアの多国間地域開発と物流拠点としての図們江地域開発」 【報告3】李 元徳(国民大学国際学部教授) 「ポスト成長時代における日韓の課題と日韓協力の新しいパラダイム」 【討論】 報告者+討論者 木宮正史(東京大学大学院総合文化研究科教授) 安秉民(韓国交通研究院北韓・東北亜交通研究室長) 内山清行(日本経済新聞ソウル支局長) 李奇泰(延世大学研究教授) 李恩民(桜美林大学リベラルアーツ学群教授) 他数名 ************************************************** ● SGRAカレンダー 【1】第13回日韓アジア未来フォーラム(2014年2月15日ソウル) 「ポスト成長時代における日韓の課題と東アジア地域協力」<参加者募集中> http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/13.php 【2】第47回SGRAフォーラム(2014年5月31日東京)<ご予定ください> 「科学技術とリスク社会:福島原発事故から考える(仮)」 【3】第4回日台アジア未来フォーラム(2014年6月13日台北)<論文募集中> 「トランスナショナルな文化の伝播・交流:思想・文学・言語」 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/4_1.php 【4】第2回アジア未来会議<論文・ポスター・展示作品募集> 「多様性と調和」(2014年8月22日インドネシアバリ島) http://www.aisf.or.jp/AFC/2014/ ★発表要旨追加募集中(締切:2014年2月28日)★ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員 のエッセイを、毎週水曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読 いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。下記URLより自動登録していた だくこともできますし、事務局までご連絡いただいても結構です。 http://www.aisf.or.jp/sgra/entry/registration_form/ ● アドレス変更、配信解除をご希望の方は、お手数ですがSGRA事務局までご連絡く ださい。 ● エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務 局より著者へ転送いたします。 ● 皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ● SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただ けます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2013/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3−5−8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03−3943−7612 FAX:03−3943−1512 Email: [email protected] Homepage: http://www.aisf.or.jp/sgra/ ************************************************** -
[SGRA_Kawaraban] The Second Asia Future Conference – Last Call for Papers (until Feb. 28)
2014年2月5日 18:07:02
*********************************************************************** SGRAかわらばん505号(2014年2月5日) 【1】第2回アジア未来会議「多様性と調和」へのお誘い(8月22日-24日バリ島) 〜論文発表・ポスター発表・展示作品追加募集中/参加登録早期割引受付中〜 【2】第17回日比共有型成長セミナーへのお誘い〜参加者募集中〜 「ものづくりと持続可能な共有型成長」(2月11日マニラ) 【3】第13回日韓アジア未来フォーラムへのお誘い〜参加者募集中〜 「ポスト成長時代における日韓の課題と東アジア協力」(2月15日ソウル) *********************************************************************** 【1】第2回アジア未来会議「多様性と調和」へのお誘い ★論文発表・ポスター発表・展示作品追加募集中(2月28日まで)<最終案内> ☆参加登録早期20%割引受付中(4月30日まで) 日時: 2014年8月22〜24日 開催地:インドネシア、バリ島 アジア未来会議は下記の要領にしたがって論文発表・ポスター発表の要旨(abstract) および展示作品の企画案を追加募集しています。2月28日が締め切りとなりますの で、奮ってご応募ください。また、オブザーバー参加の方も含めた、参加費早期20% 割引による参加登録も受け付けております。詳しくは下記リンクをご覧ください。参 加登録も同サイトよりオンラインでお願いします。 http://www.aisf.or.jp/AFC/2014/ ●テーマ 論文・ポスター・展示作品は、第2回アジア未来会議において、国際的かつ学際的に 議論していただくために、全体テーマとサブテーマのいくつかに関連していることが 望ましいです。 ○本会議全体のテーマ:多様性と調和 Diversity and Harmony ○サブテーマ 1. 平和 Peace 2. グローバル化 Globalization 3. 持続性 Sustainability 4. 成長 Growth 5. 公平 Equity 6. 人権 Human Rights 7. 幸福 Happiness 8. 文化 Culture 9. コミュニケーションCommunication 10. その他 ●学術分野 下記の分野を受け付けます。 A 自然科学:物理学、化学、生物学、数学、医学、農学、工学、その他 B 社会科学:法学、政治学、経済学、経営学、社会学、教育学、その他 C 人文科学:哲学、宗教学、心理学、歴史学、芸術学、文学、言語学、その他 ●下記の要領で投稿してください 1.第2回アジア未来会議のホームページ( www.aisf.or.jp/AFC/2014/registration/ )からユーザー登録をしてください。一度 登録するとIDとパスワードにより何度でもアクセス、改訂することができます。 2.参加登録のみの方は「Register as Participant」へ進んでください。 3.発表する方は、要旨(abstract)・計画をアジア未来会議ウェブ上のご自分の ページに投稿してください。 4.要旨締切: 2014年2月28日 5.要旨言語:英語(250語)。ただし、論文・ポスター・展示発表が日本語の場合 は、英語(250語)と日本語(600字)の両方を投稿してください。英語と日本語以外 の言語はご遠慮ください。 6.既発表の論文も投稿可能です。発表要旨の中にその旨明記してください。 ○参加費補助の申請受付、優秀論文賞対象となる論文の受付は終了しました。 ○お問い合わせ:アジア未来会議実行委員会事務局 [email protected] 皆様の積極的な参加をお待ちしています! 【2】第11回日比共有型成長セミナーinマニラへのお誘い 下記の通り、フィリピンのマニラ市でSGRA主催のセミナーを開催いたします。参加ご 希望の方は、下記連絡先、またはSGRA事務局へご連絡ください。 第17回日比共有型成長セミナー ■「ものづくりと持続可能な共有型成長」 "Manufacturing and Sustainable Shared Growth" 日時:2014年2月11日(火)8:30-17:30 会場:フィリピン大学大学工学部エンジニアリング・シアター Engineering Theater, College of Engineering (Melchor Hall), University of the Philippines, Diliman Campus 言語:英語 ○開催の趣旨: 3K(効率・公平・環境)の調和ある発展を目指す、日比共有型成長セミナーの2本 の柱となるテーマは「都会・地方の格差」と「製造業」です。今回は後者に注目し、 8月頃に前者のテーマのセミナーを開催予定です。しかしながら、今回のセミナーで も、2本の柱のつながりがより具体的に示されるようになっています。また、本セミ ナーにおいては、ふくしま再生の会の田尾陽一代表に飯館村における活動を通して福 島の報告をしていただきます。 詳細は下記リンク(英文のみ)をご覧ください。 http://www.aisf.or.jp/sgra-in-english/2013/11/seminar_17.html 参加申し込み・お問い合わせ:SGRAフィリピン Ms. Lenie M. Miro ( [email protected] ) 【3】第13回日韓アジア未来フォーラムinソウルへのお誘い 下記の通り第13回日韓アジア未来フォーラムをソウルで開催します。参加ご希望の方 は、事前にお名前・ご所属・緊急連絡先をSGRA事務局宛ご連絡ください。SGRAフォー ラムはどなたにでも参加していただけますので、関心のある方にお知らせください。 ■テーマ「ポスト成長時代における日韓の課題と東アジア地域協力」 日時:2014年2月15日(土)午後2 時00分〜5時00分 会場: 高麗大学現代自動車経営館301号 申込み・問合せ:SGRA事務局 ● フォーラムの趣旨 「課題先進国」日本、そして「葛藤の先進国」とも言われる韓国が今までに経験して きた課題と対策のノウハウを東アジア地域に展開しようとするとき、どのような分野 が考えられるだろうか。日本は、地震をはじめ自然災害への対策、鉄道システム、経 済発展と環境負荷軽減及び省ネルギーの両立、少子高齢化への対処など、多くの分野 において関連する経験や技術の蓄積、優位性を有している。さらに、日本以上の課題 先進国となった韓国の経験や後遺症も、東アジア地域におけるこれからの発展や地域 協力の在り方に貴重な手掛かりを提供している。本フォーラムでは、日本と韓国の経 験やノウハウを生かした社会インフラシステムを、東アジア地域及び他国へ展開する 場合、何をどのように展開できるか、そして、それが東アジアにおける地域協力、平 和と繁栄においてもつ意義は何なのかについて考えてみたい。 ● プログラム 詳細は下記リンクをご覧ください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/13.php 【基調講演】外岡 豊(埼玉大学経済学部/環境科学研究センター教授) 「北東アジアの気候変動対策と大気汚染防止に向けて」 【報告1】朴 栄濬(韓国国防大学校安全保障大学院教授) 「北極海の開放と韓日中の海洋協力展望」 【報告2】李 鋼哲(北陸大学未来創造学部教授) 「北東アジアの多国間地域開発と物流拠点としての図們江地域開発」 【報告3】李 元徳(国民大学国際学部教授) 「ポスト成長時代における日韓の課題と日韓協力の新しいパラダイム」 【討論】 報告者+討論者 木宮正史(東京大学大学院総合文化研究科教授) 安秉民(韓国交通研究院北韓・東北亜交通研究室長) 内山清行(日本経済新聞ソウル支局長)(交渉中) 李奇泰(延世大学研究教授) 李恩民(桜美林大学リベラルアーツ学群教授) 他数名 ************************************************** ● SGRAカレンダー 【1】第17回日比共有型成長セミナー(2014年2月11日マニラ) 「ものづくりと持続可能な共有型成長」<参加者募集中> http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/17.php 【2】第13回日韓アジア未来フォーラム(2014年2月15日ソウル) 「ポスト成長時代における日韓の課題と東アジア地域協力」<参加者募集中> http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/13.php 【3】第47回SGRAフォーラム(2014年5月31日東京)<ご予定ください> 「科学技術とリスク社会:福島原発事故から考える(仮)」 【4】第4回日台アジア未来フォーラム(2014年6月13日台北)<論文募集中> 「トランスナショナルな文化の伝播・交流:思想・文学・言語」 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/4_1.php 【5】第2回アジア未来会議<論文・ポスター・展示作品募集> 「多様性と調和」(2014年8月22日インドネシアバリ島) http://www.aisf.or.jp/AFC/2014/ ★発表要旨追加募集中(締切:2014年2月28日)★ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員 のエッセイを、毎週水曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読 いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。下記URLより自動登録していた だくこともできますし、事務局までご連絡いただいても結構です。 http://www.aisf.or.jp/sgra/entry/registration_form/ ● アドレス変更、配信解除をご希望の方は、お手数ですがSGRA事務局までご連絡く ださい。 ● エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務 局より著者へ転送いたします。 ● 皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ● SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただ けます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2013/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3−5−8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03−3943−7612 FAX:03−3943−1512 Email: [email protected] Homepage: http://www.aisf.or.jp/sgra/ ************************************************** -
[SGRA_Kawaraban] Sadaaki Numata “Lessons from the Enactment of the State Secrets Protection Bill”
2014年1月29日 20:12:29
**************************************************************** SGRAかわらばん504号(2014年1月29日) 【1】エッセイ:沼田貞昭「特定秘密保護法制定の教訓」 【2】フォーラム案内:第13回日韓アジア未来フォーラムへのお誘い 「ポスト成長時代における日韓の課題と東アジア協力」(2月15日ソウル) 【3】論文紹介:平川 均「成長の東アジアと相克の日・中韓関係」 **************************************************************** 【1】SGRAエッセイ#397 ■ 沼田 貞昭「特定秘密保護法制定の教訓」 最近の北朝鮮、尖閣諸島をめぐる緊張の高まり、あるいはアルジェリア人質事件な ど、日本の安全保障環境が厳しさを増している中で、2012年に民主党政権下で秘密保 全のための法制の在り方に関する有識者会議において検討されていた機密保全法制 が、自民党安倍政権の下で昨年12月特定秘密保護法として成立に至った。 筆者は、わが国の安全に対する様々な脅威が存在する中での日米同盟の運用の実務に かかわっていた経験を通じて、国家公務員法の守秘義務や1954年の日米相互防衛援助 協定に伴う特別防衛秘密、2010年の改正自衛隊法による防衛秘密などのわが国の機密 保護法制は、他の先進国に比べて十分に整備されておらず、同盟国であるアメリカを 始めとする関係国が重要な機密情報(インテリジェンス)を日本に流すことを躊躇す る原因となっていると感じて来た。この背景には、インテリジェンスについてのアレ ルギーと言うか、戦前の日本を連想して諜報、スパイと言った暗いイメージを伴うも のとして忌み嫌う国民感情があり、インテリジェンスは国家安全保障のために存在す るいわば「必要悪」であるとの意識がなかなか浸透してこなかったとの事情がある。 今回の法案について、「基本的人権である表現の自由を侵し、言論を封鎖し、日本を 軍国主義国に持って行く危険性がある。治安維持法の悪夢を再現させないためにも、 この法案は廃案とすべきである。」と言った非現実的な極論があった一方、「国ひい ては国民の利益、安全を守るためには必要。特に敵性外国に国の秘密情報が漏れてし まうようでは、ひいては国民全体が不利益を被ることになる」と言った声もあった。 世論の反応について、マスコミの調査とネットの調査の間には大きな乖離が見られ た。たとえば、朝日新聞社が2013年11月30日〜12月1日に実施した全国緊急世論調査 (電話)では、法案に賛成が25%で、反対の50%が上回ったが、12月6日〜12月16日 にYahooが行った調査では、法案が成立して良かった45.7%、成立して良かったが手 続きは良くなかった12.3%、そそもこの法案に反対38.5%と賛成が反対を上回ってお り、この背景にはマスコミ不信があると見られる。法案提出以来採択に至るまでの国 内論議を振り返ってみると、取材の自由・国民の知る権利の侵害、不当な処罰・逮捕 勾留のおそれと言った点についての一部マスコミの誇張された報道もあり、全体とし てバランスの取れた議論が不足していた。 この問題は一般国民には馴染みが薄く、筆者自身、法案の条文、概要、自民党のQ&A などを読んでみて、しばらく目にしていなかった法律用語などが沢山並んでいて、素 直に頭に入ってこない点がいくつかあった。以下、筆者なりに本件法案のポイントを 整理してみると次のようなことかと思う。 1.本法によって保全される特定秘密の範囲は、わが国の安全保障(国の存立に関わ る外部からの侵略などに対して国家および国民の安全を保障すること)にとって重要 な情報に限定されている。たとえば、防衛に関するものでは、自衛隊が収集した画像 情報、誘導弾の対処目標性能、外交に関しては北朝鮮による核・ミサイル・拉致問題 に関するやり取り、公電に用いる暗号、スパイなどの特定有害活動に関しては、外国 の情報機関から秘密の保全を前提に提供を受けた大量破壊兵器関連物質の不正取引に 関する情報、情報収集活動の情報源、テロ防止に関しては、外国の情報機関から秘密 の保全を前提に提供を受けた国際テロ組織関係者の動向、情報収集活動の情報源など が法律の別表に具体的に列挙されている。いずれも、これが漏洩された場合には、わ が国の安全保障に著しい支障を与える秘密であることは明らかである。 2.そもそも秘密を漏らす恐れがないと「適正評価」によって認められた者(行政機 関の職員および委託を受ける民間の職員)のみが特定秘密を取り扱う業務を行うこと が認められる。「適正評価」と言うとやや耳慣れないが、秘密漏洩の程度を総合的に 評価し、取り扱う適性を判断するセキュリティ・クリアランスを意味し、これは欧米 諸国などでは既に導入されている。また、民間企業においても企業秘密を守る観点か ら同様の判断が必要とされよう。 3.さらに、処罰範囲は最小限に抑えられている。罰則の対象となるのは、上記の適 正評価を経て特定秘密を取り扱う業務を行う者が知るに至った特定秘密を洩らした場 合であり、最長10年までの懲役ないし罰金刑が課される。特定秘密を取り扱う立場に ない者が特定秘密を取得する行為に対する処罰は、人を欺く、暴行、脅迫、施設への 侵入、不正アクセスなどの犯罪行為や犯罪に至らないまでも社会通念上是認できない 行為を取得の手段とするものに限られている。例えば、外国情報機関等に協力し、特 定秘密を敢えて入手したような例外的な場合を除き、特定秘密を取り扱う公務員等以 外の人が本法律により処罰対象となることはない。「オスプレイが飛んでいるのを 撮って友達に送ったら懲役5年」と言った報道があったが、これは明らかに処罰の対 象にはならない。 4.本法は、国民の知る権利や取材の自由との関係で種々の問題を提起しているが、 政府当局の立場は次の2点に要約されよう。 (1)情報公開法により具体化されている国民の知る権利を害するものではない。 (本法の特別秘密は、国の安全、外交等の分野の秘密情報の中で特に秘匿性が高いも のであることから、そもそも情報公開法の下で開示されない情報と解される。) (2)正当な取材活動は処罰対象とならない。 (取材の手段・方法が刑罰法令に触れる場合や社会観念上是認できない態様のもので ある場合には刑罰の対象となる反面、正当な取材活動は処罰対象とならないことは最 高裁の判例上確立している。) 他方、政府当局とマスコミ、市民団体等との間で国民の知る権利や取材の自由との関 係で緊張関係が存在することは事実であり、本法に基本的には賛成している一部のマ スコミも、公務員が懲役10年と言う厳罰を恐れて報道機関の取材に対して萎縮するの ではないかと言った懸念を表明している。 5.本法立法の経緯から、次の教訓を学ぶことが必要である。 (1)安全保障ないし機密保持のプロの世界では当然の常識になっていることであっ ても、一般国民の理解を得るためには、丁寧に意を尽くした説明が必要である。民主 党政権下のねじれ国会における「決められない政治」から脱却して、「決める政治」 を示そうとした安倍政権の本法国会審議に臨んだ姿勢は、性急さが目立ち、結果とし て本法の内容についてはいささか消化不良のまま審議が終わってしまったとの感は否 めない。 (2)本法成立の後、安倍内閣への支持率が10%程下がったことは、政府の「奢り」 ないし「強引さ」に対する国民の反発を示しており、今後の国会運営等について注意 を促す黄信号とも考えられる。 (3)本法の運用を一たび誤れば、国民の重要な権利利益を侵害する恐れがあるの で、政府としては十分に注意して運用して行く必要がある。特に、秘密指定が恣意的 に拡大されるのではないかとの懸念に応えるべく、特定秘密指定等の運用基準につい て、有識者会議で十分論議を尽くし、特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価を 国民の納得の行くように進めて行く努力が求められている。 -------------------------- <沼田 貞昭(ぬまた さだあき)☆ NUMATA Sadaaki> 東京大学法学部卒業。オックスフォード大学修士(哲学・政治・経済)。 1966年外務省入省。1978-82年在米大使館。1984-85年北米局安全保障課長。 1994?1998年、在英国日本大使館特命全権公使。1998?2000年外務報道官。2000?2002 年パキスタン大使。2005?2007年カナダ大使。2007?2009年国際交流基金日米センター 所長。鹿島建設株式会社顧問。日本英語交流連盟会長。 -------------------------- 【2】第13回日韓アジア未来フォーラムinソウルへのお誘い 下記の通り第13回日韓アジア未来フォーラムをソウルで開催します。参加ご希望の方 は、事前にお名前・ご所属・緊急連絡先をSGRA事務局宛ご連絡ください。SGRAフォー ラムはどなたにでも参加していただけますので、関心のある方にお知らせください。 ■テーマ「ポスト成長時代における日韓の課題と東アジア地域協力」 日時:2014年2月15日(土)午後2 時00分〜5時00分 会場: 高麗大学現代自動車経営館301号 申込み・問合せ:SGRA事務局 ● フォーラムの趣旨 「課題先進国」日本、そして「葛藤の先進国」とも言われる韓国が今までに経験して きた課題と対策のノウハウを東アジア地域に展開しようとするとき、どのような分野 が考えられるだろうか。日本は、地震をはじめ自然災害への対策、鉄道システム、経 済発展と環境負荷軽減及び省エネルギーの両立、少子高齢化への対処など、多くの分 野において関連する経験や技術の蓄積、優位性を有している。さらに、日本以上の課 題先進国となった韓国の経験や後遺症も、東アジア地域におけるこれからの発展や地 域協力の在り方に貴重な手掛かりを提供している。本フォーラムでは、日本と韓国の 経験やノウハウを生かした社会インフラシステムを、東アジア地域及び他国へ展開す る場合、何をどのように展開できるか、そして、それが東アジアにおける地域協力、 平和と繁栄においてもつ意義は何なのかについて考えてみたい。 ● プログラム 詳細は下記リンクをご覧ください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/13.php 【基調講演】外岡 豊(埼玉大学経済学部/環境科学研究センター教授) 「北東アジアの気候変動対策と大気汚染防止に向けて」 【報告1】朴 栄濬(韓国国防大学校安全保障大学院教授) 「北極海の開放と韓日中の海洋協力展望」 【報告2】李 鋼哲(北陸大学未来創造学部教授) 「北東アジアの多国間地域開発と物流拠点としての図們江地域開発」 【報告3】李 元徳(国民大学国際学部教授) 「ポスト成長時代における日韓の課題と日韓協力の新しいパラダイム」 【討論】 報告者+討論者 木宮正史(東京大学大学院総合文化研究科教授) 安秉民(韓国交通研究院北韓・東北亜交通研究室長) 内山清行(日本経済新聞ソウル支局長)(交渉中) 李奇泰(延世大学研究教授) 李恩民(桜美林大学リベラルアーツ学群教授) 他数名 【3】論文紹介:平川均 「成長の東アジアと相克の日・中韓関係─重層化する課題の 超克に向けて─」 SGRA特別会員で渥美財団理事、国士舘大学教授の平川均様からのメッセージをご紹介 します。 ------------------ 日・中韓の関係悪化に関する私の考えを書いた論文をネット上に載せました。本の1 章として出すことになっていますが、昨年末の安倍首相の靖国参拝で心が揺れ、ネッ ト上に載せました。私の問題意識としては、何故、経済交流が盛んになる中で、逆に 対立が深まるのかを日本の戦後処理問題との関連で書いたものです。同時に、大きな 東アジアの中の構造転換によって、その矛盾は一層、激化しているというのが私の解 釈です。わかりやすく書いたつもりでしたが、難し過ぎるモノになってしまったと反 省しています。同じアジアに住む人間として、SGRAかわらばんの読者の皆さんからコ メントをいただければ、本当に嬉しいです。 以下のURLにありますので、お知らせします。 http://ear-review.doorblog.jp/archives/cat_1184417.html ************************************************** ● SGRAカレンダー 【1】第13回日韓アジア未来フォーラム(2014年2月15日ソウル)<参加者募集中> 「ポスト成長時代における日韓の課題と東アジア協力」 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/13.php 【2】第47回SGRAフォーラム(2014年5月31日東京)<ご予定ください> 「科学技術とリスク社会:福島原発事故から考える(仮)」 【3】第4回日台アジア未来フォーラム(2014年6月13日台北)<論文募集中> 「トランスナショナルな文化の伝播・交流:思想・文学・言語」 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/4_1.php 【4】第2回アジア未来会議<論文・ポスター・展示作品募集> 「多様性と調和」(2014年8月22日インドネシアバリ島) http://www.aisf.or.jp/AFC/2014/ ★発表要旨追加募集中(締切:2014年2月28日)★ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員 のエッセイを、毎週水曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読 いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。下記URLより自動登録していた だくこともできますし、事務局までご連絡いただいても結構です。 http://www.aisf.or.jp/sgra/entry/registration_form/ ● アドレス変更、配信解除をご希望の方は、お手数ですがSGRA事務局までご連絡く ださい。 ● エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務 局より著者へ転送いたします。 ● 皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ● SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただ けます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2013/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3−5−8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03−3943−7612 FAX:03−3943−1512 Email: [email protected] Homepage: http://www.aisf.or.jp/sgra/ ************************************************** -
[SGRA_Kawaraban] Max Maquito “Manila Report 2013-4 Winter”
2014年1月22日 21:37:08
**************************************************************** SGRAかわらばん503号(2014年1月22日) 【1】エッセイ:マキト「フィリピンで戦いを繰り広げる日本」 【2】フォーラム案内:第46回SGRAフォーラムin有楽町<土曜日です!> 「インクルーシブ教育:こどもの多様なニーズにどう応えるか」 【3】論文募集:第4回日台アジア未来フォーラム(6月13日台北) 「東アジアにおけるトランスナショナルな文化の伝播・交流」 **************************************************************** 【1】SGRAエッセイ#396 ■M.マキト「マニラ・レポート2013年冬:フィリピンで戦いを繰り広げる日本」 3.11の直後、SGRAかわらばんにエッセイを書く機会があった。日本が今まで経験した ことがない震災の中で必死に戦う日本の国民、そして、応援にやってきた地球市民た ちの姿に、僕はとても感動したので、この危機は、今までに日本が世界へ提示した独 自の理念を改めて見直す良い機会でもあると書いた。この「見直し」は、失われた数 十年のように、日本の良いところまで批判的に扱う「抜本的改革」ではない。むし ろ、あのとき僕の心に響いたのは、日本は守るべきところを見直して、それを更に活 かしていくことができるということであった。日本が守るべきところとは、平和憲 法、非核三原則、そして僕の研究対象でもある共有型成長である。これらを更に活か せば、震災に素早く、かつ効果的に対応できる自衛隊、原発ゼロを含む非核三原則、 そして、海外にも展開する共有型成長という見直しができると思ったのである。 しかしながら、今、上記3つの見直しについて、日本国内では、まるで紛争勃発の様 相である。そして、この戦いは海外にも展開しようとしていて、フィリピンにおいて も、戦いが繰り広げてられている。 2013年11月7日にフィリピンを襲った世界最大と言われるスーパー台風30号は、甚大 な被害を及ぼし、今も復興に向けて努力中である。多くの国の支援をいただいて感謝 で一杯だ。日本からも、史上最大規模の自衛隊を被災地に派遣していただいた。この 台風で一番被害を蒙ったレイテ島は、第二次世界大戦で日本軍に侵略された時に、 マッカーサー将軍が、フィリピンに「私は必ず戻ってくる」と約束し、その約束を果 たすために、大規模な連合国軍が上陸した島でもある。その島に、日本の国民を守る 自衛隊が、フィリピン人を助けるために、こんなに大勢やってくることは、以前は誰 も想像しなかったであろう。海外援助の透明さを確保するために、フィリピン政府が この台風をきっかけに作成したウェブサイト(Foreign Aid Transparency Hub、2013 年12月20日アクセス)によると、現在、この台風による被災地の支援に対して、日本 は最大援助国の3カ国の内に入っている。イギリスが最大援助国で9600万米ドルを、 日本は2番目で7400万米ドルを、米国が3番目で6200万米ドルを公約している。3.11か らまだまだ復興中の日本からの寛大な援助は特に有り難い。東日本大震災の時のフィ リピンからの支援に対する「お返し」ということもあるらしい。 フィリピンには、およそ30年前に国民の反対運動によって建設中止になった原子力発 電所がある。中止になったのだから、その建物は劣化して殆ど売却されたか、或いは 売却できなかったので設備は錆びついて敷地は草がボウボウだろうと、僕は想像して いた。しかし、昨年10月にSGRAの福島スタディツアーに行った後に、フィリピンにお ける原発をめぐる最近の議論を調べてみたら、驚いたことに、その原発は新築並みの 状態に維持するために、フィリピン政府がメンテナンス予算を数十年にわたって組み 続けていたことがわかった。理論的には、核燃料を投入するだけで、稼働可能のよう である。福島スタディツアーの最後の日、ふくしま再生の会の皆さんに、「せっかく このような体験をさせていただいたので、皆さんの力を借りて、フィリピンが永遠に 原発ゼロの国になるように、微力ながらもSGRAフィリピンは頑張りたい」と申し上げ た。その後、更に調べたところ、福島の高校生達が、一昨年、稼働中止中のフィリピ ンの原発を訪問したことがわかった。高校生達は、「こんなに綺麗な自然に恵まれた フィリピンで原発を稼働させるべきではない」というコメントを発表していた。日本 の失われた数十年間の影響で、様々な問題を抱えている、そして、これから原発とい う「遺産」の担い手になる日本の若者が、このようにしっかりとした意見を述べたの は、あっぱれである。 僕の専門の共有型成長の面においても、日系企業の進出のおかげで、フィリピンにも 共有型成長のDNAが伝えられている。SGRAかわらばんの読者の皆さんは既にご存知の 方が多いと思うが、日本は高度成長期に、GDPは増加しながらも貧富の格差が縮まる という「東アジアの奇跡」を実現した。残念ながら、フィリピンはこの奇跡を経験で きなかったが、僕の調査では、日系企業が進出しているフィリピンの経済特区やそこ に立地する企業群、そして、それぞれの企業、というあらゆるレベルで、共有型成長 が根付いていることが確認できた。 フィリピンにとって、共有型成長は夢のようなものである。東南アジア諸国と比べて も、フィリピンの一人当たりのGDPは低く、貧困の格差は依然として大きな問題であ る。日本が実現可能と示したこの共有型成長についての私の研究は、SGRA設立時から 継続して行い、たくさんの方から支持をいただいている。当初は、「グローバル化の 中の日本の独自性」チームにおいてこの研究を進めさせていただいた。僕は、この共 有型成長は(グローバル資本主義経済とは違う)日本の独自性に支えられていたと信 じている。僕は日本から学んだことを伝えるべく、2004年から平均年2回、フィリピ ンでSGRAマニラセミナーを実施している。第17回日比共有型成長セミナーを2月11日 (火)にフィリピン大学で開催するので、ご興味がある方は下記リンクをご参照くだ さい。 http://www.aisf.or.jp/sgra-in-english/2013/11/seminar_17.html しかし、これで3つの戦いが終わったと考えたら大間違い。 温暖化により、気候変動がこれからも続き、益々大きな被害が想定外のところで起き る可能性がある。自衛隊のような、体系的な、しかも命がけの任務に対応できる組織 がこれからも必要になる。ただ、東アジアでは政治外交の緊迫状況が高まり、自衛隊 結成の基本理念である日本国憲法を改正する可能性までが浮上してきた。フィリピン もこの緊迫状況のど真ん中にいる。 福島で原発の問題が発生したあとでも、世界のいくつかの国々で原発建設が止まらな い。フィリピンでも大物達が、再び原発を立ち上げようとしている。建設中止に至る まで、あれだけ膨大な借金や長引いた停電時代のコストを、フィリピン国民が払った にもかかわらず、である。 そして、フィリピンにおける共有型成長は依然としてラマンチャの男の夢である。格 差がなかなか改善できない。それに、いわゆる「中所得の罠」に陥っている。他の東 南アジア諸国と比べて、日本の投資家にとってそれほど人気のない国である。国内に おいても、海外においても、成長が実現されても、それが全国民に共有されていない 現状である。 この3つの戦いは結びついている。共有型成長が実現できていない国では、自然災害 の被害が深刻で、そこからの立ち直りが遅い。国民の大半は構造が貧弱な住宅に住 み、社会的インフラは乏しい。立ち直るための設備や貯金なども殆どない。共有型成 長が実現できない国であるがゆえに、甘い誘惑でパッケージされた原発に弱い。いく ら国民がNOと思っていても決断をする連中が便益をもらえば、原発が建設されたとい うケースがよく見られる。2月11日のセミナーでは、これらの課題を議論する。その 上で、行動が起こればと思う。 英語版は下記のリンクをご参照ください。 www.aisf.or.jp/sgra-in-english/2014/01/manila_report_winter_2013_1.html -------------------------- <マックス・マキト ☆ Max Maquito> SGRA日比共有型成長セミナー担当研究員。SGRAフィリピン代表、フィリピン大学機械 工学部学士、Center for Research and Communication(CRC:現アジア太平洋大学) 産業経済学修士、東京大学経済学研究科博士、アジア太平洋大学にあるCRCの研究顧 問。テンプル大学ジャパン講師。 -------------------------- 【2】第46回SGRAフォーラムへのお誘い(最終案内)〜飛び込みも歓迎です!〜 下記の通りSGRAフォーラムを開催します。参加ご希望の方は、事前にお名前・ご所 属・緊急連絡先をSGRA事務局宛ご連絡ください。SGRAフォーラムはどなたにでも参加 していただけますので、関心のある方にお知らせください。 ■テーマ:「インクルーシブ教育:子どもの多様なニーズにどう応えるか」 日時:2014年1月25日(土)午後1時30分〜4時30分、その後懇親会 会場:東京国際フォーラム ガラス棟 G610号室 http://www.t-i-forum.co.jp/general/access/ 参加費:フォーラムは無料 懇親会は正会員1000円、メール会員・一般2000円 参加申込み・お問い合わせ:SGRA事務局([email protected], 03-3943-7612) ◇フォーラムの趣旨 インクルーシブ教育(inclusive education)は、障碍児教育に関する施策のひとつで あるが、同時に、社会的・経済的格差、民族・人種・文化・宗教等の差異がもたらす 差別の軽減・解消をめざし、不利益な立場にある人々の自立および社会への完全参加 を、教育・学校の改革によって実現しようとする教育・社会理念とも捉えられる。 日本では、障碍のある子どもに特別支援学校だけではなく多様な学びの場を提供する 施策が試みられてきた。その他の特別なニーズを持つ子ども、例えば当初は数年しか 日本に滞在しない予定だった外国籍労働者の子どもたち、家庭や経済的事情により学 業に困難を伴う子どもたち等は、対応されなかったわけではないが、教育のメインス トリームの周辺課題とされてきた。グローバル化によりますます増加する子どもの多 様なニーズに応えるためには、教育全般の課題として捉えない限り、この問題は根本 的に解決しないのではないか。 教育が新自由主義や市場原理の波に巻き込まれ、競争的学力向上を目指す傾向にある 中、果たしてインクルーシブ教育は実現できるのだろうか。さらに言えば、社会が障 碍や人種・文化的差異をどのように構成し対応していくかという国の文化が変わらな い限り、実現は難しいのではないか。実際、日本のみならず、ほとんどの国がインク ルーシブ教育の実現に当たってさまざまな困難に直面している。 本フォーラムでは、インクルーシブ教育の実現に向けて、障碍のある子どもや外国籍 の子どもへの支援の実情を踏まえながら、日本の教育がこれから子どもの差異と多様 性をどう捉え、権利の保障、多様性の尊重、学習活動への参加の保障にどのように向 き合うべきかについて考えたい。 ◇プログラム 詳細は下記リンクをご覧ください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/schedule/SGRAForum46Program.pdf 【基調講演】荒川 智(茨城大学教育学部教授) 「インクルーシブ教育の実現に向けて」 【報告1】上原芳枝(特定非営利活動法人リソースセンターone代表理事) 「障碍のある子どもへの支援」 【報告2】中村ノーマン(多文化活動連絡協議会) 「学校教育からはみ出た外国につながりを持つ子ども達に寄り添って」 【オープンフォーラム】 進行:権明愛(十文字学園女子大学人間生活学部講師) 討論者:上記報告者 【3】第4回日台アジア未来フォーラム〜発表論文募集〜 ■第4回日台アジア未来フォーラム 「東アジアにおけるトランスナショナルな文化の伝播・交流:思想・文学・言語」 SGRAでは、下記の通り第4回日台アジア未来フォーラムを台北にて開催します。 発表論文を募集しておりますので、奮って申込みください。 論文募集要項: http://www.aisf.or.jp/sgra/schedule/TaiwanForum4_ApplicationGide.pdf 論文発表申請書: http://www.aisf.or.jp/sgra/schedule/TaiwanForum4_ApplicationForm.docx 日時:2014 ?6月13 日(金) 午前9時〜午後5時 場所:台湾大学文学院講演ホール(台?市大安区羅斯福路四段1号) 開催趣旨: グローバル化が急速に進む今日、世界の文化、文学、言語、法学、政治思想などをつ ないでいるのは、多様なメディアである。とりわけインターネット等の電子デジタル メディアが生活の中に根を下ろしたこの「メディア革命」の時代のなかで、アジア諸 国が相互に無関係ではありえない。 メディアは、情報伝達、思想形成、文学表現、言語の発展に深く関わっており、文化 (思想・文学・言語)の交流はメディアを抜きに語ることはできない。メディアは英 語media の訳語であり、新聞・雑誌・テレビ・ラジオなどの近現代以降できあがった 媒体とし捉えられることが多いが、ここではより広義的な意味を取りたい。 もとよりメディアは、時代によって異なり、メディアの相違が文化のあり方に関わっ てくる。たとえば、商業出版がなかった中世には、『太平記』や『平家物語』などの 軍談類は講釈によって語り伝えられていた。講釈はすなわち肉声のメディアと言える であろう。この時代は、文学や思想はごくわずかな人が享受するのみであった。商業 出版の出現で、中世までの声で伝達された作品類がいち早く印刷メディアに変換され て大量に流通したため、庶民も文学を親しむことができるようになった。 文字出版は近現代までの長い間、主流のメディアとなっているが、現代のインター ネットメディアの出現により、世界のどこででも、誰でもウィキペディアによって知 識伝達の受益者となり、他方で誰でもブログなどで小説を発表したりする、また、多 様なデータベースで文学作品をいとも容易に読むことができる。もちろん、2チャン ネルのような談話室もサブカルチャーを考えるためには、無視できない。正に、多様 なメディアの出現と蓄積により新しいトランスナショナルな文化・知識が生成しよう としている。 映画も重要なメディアである。映像の出現は、文学の映画化を促進し、文学との垣根 を低くした。もとより映画は、映像、音楽、役者、ストーリーなど、さまざまな要素 を含む総合的な芸術である。その意味で、文学性と娯楽性を合わせもつ。さらに映画 は、商業ベースで普及するから、文学以上に民衆に浸透しやすい。また、毎年国際映 画祭が開催されていることからも明らかなように、映画は外国人に理解されるように 製作されることが多い。文学は映画という媒体を得ることで、表現の仕方や伝え方及 びその効果も新たな展開を見せている。 メディアが進化、発展することにより、文化の国境は消えつつあるといえよう。今回 のフォーラムでは、台湾・日本を含めた東アジアにおける文化交流・伝播の様態に迫 り、異文化がどのようにメディアを通じて、どのように影響し合い、そしてどのよう な新しい文化が形成されるかを考えてみたい。なお、フォーラムでは、それぞれ思 想、文学、言語の3分野のセッションにわけて、会議を行う予定である。 申し込み・問合せ:台湾大学日本語文学科 E メール:[email protected]; 電話:+886-2-3366-2789 ************************************************** ● SGRAカレンダー 【1】第46回SGRAフォーラム(2014年1月25日東京) 「インクルーシブ教育の実現に向けて: 子どもの多様なニーズにどう向き合うか」 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/46sgra.php 【2】第13回日韓アジア未来フォーラム(2014年2月15日ソウル)<ご予定ください> 「ポスト成長時代における日韓の課題と東アジア協力」 【3】第47回SGRAフォーラム(2014年5月31日東京)<ご予定ください> 「科学技術とリスク社会:福島原発事故から考える(仮)」 【4】第4回日台アジア未来フォーラム(2014年6月13日台北)<論文募集中> 「トランスナショナルな文化の伝播・交流:思想・文学・言語」 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/4_1.php 【5】第2回アジア未来会議<論文・ポスター・展示作品募集> 「多様性と調和」(2014年8月22日インドネシアバリ島) http://www.aisf.or.jp/AFC/2014/ ★発表要旨追加募集中(締切:2014年2月28日)★ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員 のエッセイを、毎週水曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読 いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。下記URLより自動登録していた だくこともできますし、事務局までご連絡いただいても結構です。 http://www.aisf.or.jp/sgra/entry/registration_form/ ● アドレス変更、配信解除をご希望の方は、お手数ですがSGRA事務局までご連絡く ださい。 ● エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務 局より著者へ転送いたします。 ● 皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ● SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただ けます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2013/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3−5−8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03−3943−7612 FAX:03−3943−1512 Email: [email protected] Homepage: http://www.aisf.or.jp/sgra/ ************************************************** -
[SGRA_Kawaraban] Invitation to SGRA Forum #46 (resend)
2014年1月17日 13:35:37
********************************************* SGRAかわらばん502号(2014年1月15日) ********************************************* 本年最初のSGRAかわらばんをお届けします。 本号より配信システムを改良しました。 重複配信など不具合が生じましたら、[email protected] へご連絡ください。 ----------------------- ■第46回SGRAフォーラムへのお誘い(再送) 下記の通りSGRAフォーラムを開催します。参加ご希望の方は、事前にお名前・ご所 属・緊急連絡先をSGRA事務局宛ご連絡ください。SGRAフォーラムはどなたにもご参加 いただけますので、関心をお持ちの方をお誘いいただきますようお願いいたします。 また、皆様が所属されるメーリングリストなどで広報していただけますと幸いです。 テーマ:「インクルーシブ教育:子どもの多様なニーズにどう応えるか」 日時:2014年1月25日(土)午後1時30分〜4時30分、その後懇親会 会場:東京国際フォーラム ガラス棟 G610号室 http://www.t-i-forum.co.jp/general/access/ 参加費:フォーラムは無料 懇親会は正会員1000円、メール会員・一般2000円 参加申込み・お問い合わせ:SGRA事務局([email protected], 03-3943-7612) ◇フォーラムの趣旨 インクルーシブ教育(inclusive education)は、障碍児教育に関する施策のひとつで あるが、同時に、社会的・経済的格差、民族・人種・文化・宗教等の差異がもたらす 差別の軽減・解消をめざし、不利益な立場にある人々の自立および社会への完全参加 を、教育・学校の改革によって実現しようとする教育・社会理念とも捉えられる。 日本では、障碍のある子どもに特別支援学校だけではなく多様な学びの場を提供する 施策が試みられてきた。その他の特別なニーズを持つ子ども、例えば当初は数年しか 日本に滞在しない予定だった外国籍労働者の子どもたち、家庭や経済的事情により学 業に困難を伴う子どもたち等は、対応されなかったわけではないが、教育のメインス トリームの周辺課題とされてきた。グローバル化によりますます増加する子どもの多 様なニーズに応えるためには、教育全般の課題として捉えない限り、この問題は根本 的に解決しないのではないか。 教育が新自由主義や市場原理の波に巻き込まれ、競争的学力向上を目指す傾向にある 中、果たしてインクルーシブ教育は実現できるのだろうか。さらに言えば、社会が障 碍や人種・文化的差異をどのように構成し対応していくかという国の文化が変わらな い限り、実現は難しいのではないか。実際、日本のみならず、ほとんどの国がインク ルーシブ教育の実現に当たってさまざまな困難に直面している。 本フォーラムでは、インクルーシブ教育の実現に向けて、障碍のある子どもや外国籍 の子どもへの支援の実情を踏まえながら、日本の教育がこれから子どもの差異と多様 性をどう捉え、権利の保障、多様性の尊重、学習活動への参加の保障にどのように向 き合うべきかについて考えたい。 ◇プログラム 詳細は下記リンクをご覧ください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/schedule/SGRAForum46Program.pdf 【基調講演】荒川 智(茨城大学教育学部教授) 「インクルーシブ教育の実現に向けて」 インクルーシブ教育とは、教育における排除をなくし、学習活動への参加を平等に保 障するための改革プロセスである。それは障害のある人だけを念頭に置くものでも、 また単純に特別学校をなくすことでもない。文化・言語・民族的マイノリティやジェ ンダー、貧困などの問題も踏まえて、すべての学習者の多様なニーズに応えられるよ うに、何よりも、通常の教育のカリキュラムや指導法、学校組織のあり方を問い直す ものである。そのためには、障害者教育や多文化教育などで蓄積された専門性も不可 欠である。 今日の世界的な動向を見ると、障害生徒の就学をめぐるイデオロギー的な論争から、 インクルーシブな授業づくり、学校づくり、地域づくりに向けた取り組みへと、着実 にシフトしている。しかし他方で、競争的学力向上政策や財政難による人的物的リ ソース不足が、インクルーシブ教育の理念や施策との間で矛盾を深めており、前途は 楽観できない。 インクルーシブ教育はすべての人の全面的な発達を目指している。発達とは単に個々 人の能力や技能が向上するという狭い意味ではなく、社会の持続的発展に参加し、貢 献し、その成果を享受することによって、価値ある生き方を選択する力を獲得するこ とでもある。いわゆるケイパビリティ・アプローチの視点から発達と教育を捉え直す ことが、インクルーシブ教育を実現する上で重要な鍵となると考える。 【報告1】上原芳枝(特定非営利活動法人リソースセンターone 代表理事) 「障碍のある子どもへの支援」 平成20年度より特別支援教育が本格実施となり、通常級に在籍する発達障碍のある子 どもや集団適応や学習に困難を示す子など、サポート対象が広がることとなった。し かし、一斉授業が中心の通常級において、他の子と違う状態を示す子どもの支援は容 易ではなく、特に集団適応に困難を示す子が複数在籍するクラスでは学級崩壊に至る ことも少なくない。また、支援の充実度においては地域差、学校差は極めて大きい。 これらの子どもたちは基本的に知的障害はないが、発達に偏りがあり、他児に比べ2 〜4年程度遅れて育つ部分があり、適切な対応があれば小学4年生位までには個性の範 疇となる子も多い。従って、他児との違いが目立つ幼児期から小学4年生位までを1ス パンと考え、4年生位までに他児と同じような状態にゆるやかに軟着陸させる“軟着 陸プラン”は無理なく子どもを伸ばすために有効である。“軟着陸プラン”は、子ど もの不適切な言動について脳機能の視点による「要因」を考え、その「要因」をふま えたハードル設定や対応を提供するものであり、個別指導計画立案のもとに実施する ことで効果的に展開できる。 本報告では、発達支援アドバイザーとして幼稚園、小学校と一貫して担当している地 域において、本人、他児、教師、保護者が大きな負担を負うことなく学校生活を送る ことをめざし、“軟着陸プラン”の実施で該当児を概ね4年生までに特別支援の対象 から外していこうとする支援体制を紹介する。 【報告2】中村ノーマン(多文化活動連絡協議会) 「学校教育からはみ出た外国につながりを持つ子ども達に寄り添って」 日本語で学習する場である学校にある教室で、学習できずに悶々とした日々を過ごし ている子どもたちがいます。学校教育からはみ出た外国につながりを持つ子ども達で す。日本語で学習ができないという障がいを抱えながらも、学校に通います。子ども 達の来日時期はさまざまですし、日本で生まれても教室の中で日本語による学習を重 ねられません。 外国につながりを持つ子どもの家庭は、日本人の家庭と異なります。学校教育が想定 している教育の対象には、日本語で会話をし「日本の文化」を持っている家庭環境の 子どもたちが前提となっています。学校はそのような背景を持っていない子どもに対 する日本語教育のシステムが整っていない状況です。教師養成の課程で日本語を教え る技量を教員が有さない。日本語で学習できない、日本人と異なる文化の子どもの対 応するすべがわからない。しかし、この問題と社会への影響を理解している人は非常 に少ないので、解決に向かっていない。子どもは、道具としての日本語会話が身につ いても、その能力は日本語で学習するほどの力ではない。良く話せる子どもが、学習 できないのは学習言語を身につける家庭内の訓練が不足しています。日本人の中の多 様性を受容する文化が育てば、外国につながりを持つ人が尊重されやすくなるが、均 質な社会を維持する力の方が強いです。 私は、地域からの提案をしています。学習する中で、多様性を尊重、学習する権利を 保障することは、多くの個別な対応を認めることです。また、多様性を受容するに は、環境を構築できる人材を積極的に学校に入れる勇気が必要です。外国にルーツを 持ち、多様性を高めることができる教員を増員し、創造的な職員会議、多様な意見を 引き出せる学級会の実現を目指したい。しかし、これが上手くいくために、社会問題 としての認知は必須です。 【オープンフォーラム】 進行:権明愛(十文字学園女子大学人間生活学部講師) 討論者:上記報告者 ************************************************** ● SGRAカレンダー 【1】第46回SGRAフォーラム(2014年1月25日東京) 「インクルーシブ教育の実現に向けて: 子どもの多様なニーズにどう向き合うか」 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/46sgra.php 【2】第13回日韓アジア未来フォーラム(2014年2月15日ソウル)<ご予定ください> 「ポスト成長時代における日韓の課題と東アジア協力」 【3】第47回SGRAフォーラム(2014年5月31日東京)<ご予定ください> 「科学技術とリスク社会:福島原発事故から考える(仮)」 【4】第4回日台アジア未来フォーラム(2014年6月13日台北)<ご予定ください> 「トランスナショナルな文化の伝播・交流:思想・文学・言語」 【5】第2回アジア未来会議<論文・ポスター・展示作品募集> 「多様性と調和」(2014年8月22日インドネシアバリ島) http://www.aisf.or.jp/AFC/2014/ ★発表要旨追加募集中(締切:2014年2月28日)★ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員 のエッセイを、毎週水曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読 いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。下記URLより自動登録していた だくこともできますし、事務局までご連絡いただいても結構です。 http://www.aisf.or.jp/sgra/entry/registration_form/ ● アドレス変更、配信解除をご希望の方は、お手数ですがSGRA事務局までご連絡く ださい。 ● エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務 局より著者へ転送いたします。 ● 皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ● SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただ けます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2013/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3−5−8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03−3943−7612 FAX:03−3943−1512 Email: [email protected] Homepage: http://www.aisf.or.jp/sgra/ ************************************************** -
[SGRA_Kawaraban] Invitation to SGRA Forum #46 (resend)
2014年1月15日 13:22:40
********************************************* SGRAかわらばん502号(2014年1月15日) ********************************************* 本年最初のSGRAかわらばんをお届けします。 本号より配信システムを改善しました。 重複配信など不具合が生じましたら、[email protected] へご連絡ください。 ----------------------- ■第46回SGRAフォーラムへのお誘い(再送) 下記の通りSGRAフォーラムを開催します。参加ご希望の方は、事前にお名前・ご所 属・緊急連絡先をSGRA事務局宛ご連絡ください。SGRAフォーラムはどなたにもご参加 いただけますので、関心をお持ちの方をお誘いいただきますようお願いいたします。 また、皆様が所属されるメーリングリストなどで広報していただけますと幸いです。 テーマ:「インクルーシブ教育:子どもの多様なニーズにどう応えるか」 日時:2014年1月25日(土)午後1時30分〜4時30分、その後懇親会 会場:東京国際フォーラム ガラス棟 G610号室 http://www.t-i-forum.co.jp/general/access/ 参加費:フォーラムは無料 懇親会は正会員1000円、メール会員・一般2000円 参加申込み・お問い合わせ:SGRA事務局([email protected], 03-3943-7612) ◇フォーラムの趣旨 インクルーシブ教育(inclusive education)は、障碍児教育に関する施策のひとつで あるが、同時に、社会的・経済的格差、民族・人種・文化・宗教等の差異がもたらす 差別の軽減・解消をめざし、不利益な立場にある人々の自立および社会への完全参加 を、教育・学校の改革によって実現しようとする教育・社会理念とも捉えられる。 日本では、障碍のある子どもに特別支援学校だけではなく多様な学びの場を提供する 施策が試みられてきた。その他の特別なニーズを持つ子ども、例えば当初は数年しか 日本に滞在しない予定だった外国籍労働者の子どもたち、家庭や経済的事情により学 業に困難を伴う子どもたち等は、対応されなかったわけではないが、教育のメインス トリームの周辺課題とされてきた。グローバル化によりますます増加する子どもの多 様なニーズに応えるためには、教育全般の課題として捉えない限り、この問題は根本 的に解決しないのではないか。 教育が新自由主義や市場原理の波に巻き込まれ、競争的学力向上を目指す傾向にある 中、果たしてインクルーシブ教育は実現できるのだろうか。さらに言えば、社会が障 碍や人種・文化的差異をどのように構成し対応していくかという国の文化が変わらな い限り、実現は難しいのではないか。実際、日本のみならず、ほとんどの国がインク ルーシブ教育の実現に当たってさまざまな困難に直面している。 本フォーラムでは、インクルーシブ教育の実現に向けて、障碍のある子どもや外国籍 の子どもへの支援の実情を踏まえながら、日本の教育がこれから子どもの差異と多様 性をどう捉え、権利の保障、多様性の尊重、学習活動への参加の保障にどのように向 き合うべきかについて考えたい。 ◇プログラム 詳細は下記リンクをご覧ください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/schedule/SGRAForum46Program.pdf 【基調講演】荒川 智(茨城大学教育学部教授) 「インクルーシブ教育の実現に向けて」 インクルーシブ教育とは、教育における排除をなくし、学習活動への参加を平等に保 障するための改革プロセスである。それは障害のある人だけを念頭に置くものでも、 また単純に特別学校をなくすことでもない。文化・言語・民族的マイノリティやジェ ンダー、貧困などの問題も踏まえて、すべての学習者の多様なニーズに応えられるよ うに、何よりも、通常の教育のカリキュラムや指導法、学校組織のあり方を問い直す ものである。そのためには、障害者教育や多文化教育などで蓄積された専門性も不可 欠である。 今日の世界的な動向を見ると、障害生徒の就学をめぐるイデオロギー的な論争から、 インクルーシブな授業づくり、学校づくり、地域づくりに向けた取り組みへと、着実 にシフトしている。しかし他方で、競争的学力向上政策や財政難による人的物的リ ソース不足が、インクルーシブ教育の理念や施策との間で矛盾を深めており、前途は 楽観できない。 インクルーシブ教育はすべての人の全面的な発達を目指している。発達とは単に個々 人の能力や技能が向上するという狭い意味ではなく、社会の持続的発展に参加し、貢 献し、その成果を享受することによって、価値ある生き方を選択する力を獲得するこ とでもある。いわゆるケイパビリティ・アプローチの視点から発達と教育を捉え直す ことが、インクルーシブ教育を実現する上で重要な鍵となると考える。 【報告1】上原芳枝(特定非営利活動法人リソースセンターone 代表理事) 「障碍のある子どもへの支援」 平成20年度より特別支援教育が本格実施となり、通常級に在籍する発達障碍のある子 どもや集団適応や学習に困難を示す子など、サポート対象が広がることとなった。し かし、一斉授業が中心の通常級において、他の子と違う状態を示す子どもの支援は容 易ではなく、特に集団適応に困難を示す子が複数在籍するクラスでは学級崩壊に至る ことも少なくない。また、支援の充実度においては地域差、学校差は極めて大きい。 これらの子どもたちは基本的に知的障害はないが、発達に偏りがあり、他児に比べ2 〜4年程度遅れて育つ部分があり、適切な対応があれば小学4年生位までには個性の範 疇となる子も多い。従って、他児との違いが目立つ幼児期から小学4年生位までを1ス パンと考え、4年生位までに他児と同じような状態にゆるやかに軟着陸させる“軟着 陸プラン”は無理なく子どもを伸ばすために有効である。“軟着陸プラン”は、子ど もの不適切な言動について脳機能の視点による「要因」を考え、その「要因」をふま えたハードル設定や対応を提供するものであり、個別指導計画立案のもとに実施する ことで効果的に展開できる。 本報告では、発達支援アドバイザーとして幼稚園、小学校と一貫して担当している地 域において、本人、他児、教師、保護者が大きな負担を負うことなく学校生活を送る ことをめざし、“軟着陸プラン”の実施で該当児を概ね4年生までに特別支援の対象 から外していこうとする支援体制を紹介する。 【報告2】中村ノーマン(多文化活動連絡協議会) 「学校教育からはみ出た外国につながりを持つ子ども達に寄り添って」 日本語で学習する場である学校にある教室で、学習できずに悶々とした日々を過ごし ている子どもたちがいます。学校教育からはみ出た外国につながりを持つ子ども達で す。日本語で学習ができないという障がいを抱えながらも、学校に通います。子ども 達の来日時期はさまざまですし、日本で生まれても教室の中で日本語による学習を重 ねられません。 外国につながりを持つ子どもの家庭は、日本人の家庭と異なります。学校教育が想定 している教育の対象には、日本語で会話をし「日本の文化」を持っている家庭環境の 子どもたちが前提となっています。学校はそのような背景を持っていない子どもに対 する日本語教育のシステムが整っていない状況です。教師養成の課程で日本語を教え る技量を教員が有さない。日本語で学習できない、日本人と異なる文化の子どもの対 応するすべがわからない。しかし、この問題と社会への影響を理解している人は非常 に少ないので、解決に向かっていない。子どもは、道具としての日本語会話が身につ いても、その能力は日本語で学習するほどの力ではない。良く話せる子どもが、学習 できないのは学習言語を身につける家庭内の訓練が不足しています。日本人の中の多 様性を受容する文化が育てば、外国につながりを持つ人が尊重されやすくなるが、均 質な社会を維持する力の方が強いです。 私は、地域からの提案をしています。学習する中で、多様性を尊重、学習する権利を 保障することは、多くの個別な対応を認めることです。また、多様性を受容するに は、環境を構築できる人材を積極的に学校に入れる勇気が必要です。外国にルーツを 持ち、多様性を高めることができる教員を増員し、創造的な職員会議、多様な意見を 引き出せる学級会の実現を目指したい。しかし、これが上手くいくために、社会問題 としての認知は必須です。 【オープンフォーラム】 進行:権明愛(十文字学園女子大学人間生活学部講師) 討論者:上記報告者 ************************************************** ● SGRAカレンダー 【1】第46回SGRAフォーラム(2014年1月25日東京) 「インクルーシブ教育の実現に向けて: 子どもの多様なニーズにどう向き合うか」 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/46sgra.php 【2】第13回日韓アジア未来フォーラム(2014年2月15日ソウル)<ご予定ください> 「ポスト成長時代における日韓の課題と東アジア協力」 【3】第47回SGRAフォーラム(2014年5月31日東京)<ご予定ください> 「科学技術とリスク社会:福島原発事故から考える(仮)」 【4】第4回日台アジア未来フォーラム(2014年6月13日台北)<ご予定ください> 「トランスナショナルな文化の伝播・交流:思想・文学・言語」 【5】第2回アジア未来会議<論文・ポスター・展示作品募集> 「多様性と調和」(2014年8月22日インドネシアバリ島) http://www.aisf.or.jp/AFC/2014/ ★発表要旨追加募集中(締切:2014年2月28日)★ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員 のエッセイを、毎週水曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読 いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。下記URLより自動登録していた だくこともできますし、事務局までご連絡いただいても結構です。 http://www.aisf.or.jp/sgra/entry/registration_form/ ● アドレス変更、配信解除をご希望の方は、お手数ですがSGRA事務局までご連絡く ださい。 ● エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務 局より著者へ転送いたします。 ● 皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ● SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただ けます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2013/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3−5−8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03−3943−7612 FAX:03−3943−1512 Email: [email protected] Homepage: http://www.aisf.or.jp/sgra/ ************************************************** -
[SGRA_Kawaraban] テスト08
2014年1月10日 17:32:38
渥美財団 今西様 お世話になっております白石でございます。 8つ目のテストです。 Tomohiro Shiraishi([email protected]) / agusenet co., ltd. −−− サイト調査 http://www.aguse.jp/ ゲートウェイ http://gw.aguse.jp/ 開発者ブログ http://www.aguse.jp/blog/ 会社概要 http://www.aguse.jp/company/ フィッシング対策協議会 http://www.antiphishing.jp/about_ap/member.html −−− -
CSV Import Test
2013年9月13日 00:00:00
This is a post for csv import. Lorem ipsum dolor sit amet, consectetur adipisicing elit, sed do eiusmod tempor incididunt ut labore et dolore magna aliqua. Ut enim ad minim veniam, quis nostrud exercitation ullamco laboris nisi ut aliquip ex ea commodo consequat. Duis aute irure dolor in reprehenderit in voluptate velit esse cillum dolore eu fugiat nulla pariatur. Excepteur sint occaecat cupidatat non proident, sunt in culpa qui officia deserunt mollit anim id est laborum.