SGRAメールマガジン バックナンバー

  • [SGRA_Kawaraban] Xie Zhihai “Economics learnt from Thomas Piketty and our everyday life”

    *********************************************** SGRAかわらばん561号(2015年3月25日) *********************************************** SGRAエッセイ#453 ■ 謝 志海「トマ・ピケティに学ぶ経済学と我々の生活」 フランスの経済学者、トマ・ピケティ氏の著書「21世紀の資本」が世界的ベストセ ラーになっている。日本語版も昨年末に発売され売れ行きも好調。各誌がこぞってピ ケティ特集を組んでいる。日本の経済学者だけでなく、会社経営者たちもこの本、そ してピケティ本人に随分と影響を受けているようだ。新聞や雑誌のインタビューで彼 の本と発言の引用をよく目にする。私も実はそれらの記事からピケティ氏を知った。 そして今、本屋では「30分で理解する」などといった「21世紀の資本」の解読本のよ うなものがたくさん並んでいる。先日の衆院予算委員会でもピケティの名前が出てき た。 これまで話題性のあるカリスマ的経済学者というと、おきまりのようにアメリカ人も しくはアメリカの名門校の教授だった。彗星のごとくフランスから世界へ躍り出たト マ・ピケティ、話題の本の内容はというと「富というのは富があるところに集中す る、よって格差が生じる。手を打たないとこの格差は今後どんどん広がるだろう」と いうものだ。すなわち、資産を持っている人は、その資産を運用することで、さらに 富を増やすことができる。こういった資産の収入を不労所得という。資産がある人は 自分が働いて収入を得ている間も、その人の資産も自分で働きお金を稼いでいる。で は資産の無い人が資産を得ようとすると、自身が労働し報酬を得るしかない。不労収 入が無ければ、その人の労働時間は長くなるばかり。この資産ある人、無い人の差を ピケティ氏は指摘する。さらに現代の資本主義では、この格差は拡大の一途をたどる という。格差社会の先陣を切っているアメリカではあまり話題にしたくない題材かも しれない。 しかしこの本の英語版は昨年のアマゾンの売り上げランキング1位になった。賛否両 論あるそうだが、アメリカの経済学者も肯定的な評価をしている人が多い。この本が 経済学の内輪の世界にとどまらず、民間企業の経営者や一般市民までに知れ渡り、惹 きつけられるのにはいくつか理由がありそうだ。まず世界中の経済学者がこの本に注 目するのは、ピケティ氏が歴史を遡り、かつ過去の莫大なデータを集めて分析し実証 的に示したからであろう。つまり、机上の空論では無いということだ。次に、経済学 者だけにとどまらず、広く一般にこの本が読まれることとなった背景に、格差社会が どの国でも顕著な、極めて身近な課題だからではないだろうか。例えば、この本の日 本語版が出版された昨年は、日本では4月の消費税の増額にとどまらず、さらに増税 する時期について大いに盛り上がった1年だった。それだけではない、アベノミクス の下、日銀が掲げる「2%のインフレ達成」、どちらも日本人の日々の生活に直接影響 する。なんと絶妙なタイミングで現れた本だろうという感じがする。 「21世紀の資本」をただの一過性の話題本で終わらせてしまうのか、それとも、我々 一般市民が経済について一考するチャンスととらえるのか?私は後者を選ぼうと思 う。 ピケティ氏の「21世紀の資本」の中で結論とされる「r > g」という不等式、今では 本の題名と同じぐらいよく目にする数式になったが、簡単にいうと、債券や株、不動 産といった投資による資本収益率「r」は、経済成長率 「g」をつねに上回ってい る。しかもこの状態はいつの時代においても起こっていて、このまま続くと富の不平 等が固定化されてしまうという。この一見シンプルな不等式により表現されている現 実には、我々がどの国に住んでいようが、資本主義社会に生きていることを痛感させ られる。資本主義社会の基本的な仕組みである経済、その仕組みを知らずに生きてい くのはあまりに無防備だ。今こそ経済というフィルターを通して、自分の立ち位置を 知り、格差社会とどう向き合い、今後の世の中の動きを自分の考えで推測して将来に 備える、いい機会かもしれない。日本のこのピケティ・ブームはそう教えてくれてい る気がする。 まず自分の立ち位置についてだが、ピケティ氏は現代の社会における不平等の現状と して、所得に応じて、上位層(10%)、中間層(40%)、下位層(50%)と3つのグループに分 けている。上位層は資本所得が多く労働所得を上回っている。グループの半分を占め る下位層の資本所得は無いに等しく労働所得が収入だ。この分類だけで、経済学など 知らなくても、格差と機会の不平等が浮き彫りになっていることがわかる。自分はこ の3つのどの層にいるのかは、だいたいわかるだろう。なにしろ、90%の人が上位層で はないのだから。ピケティ氏と共同研究者によると、アメリカの上位層(10%)の富裕 層が総所得に占めるシェアは50%近く、さらにこの10%の中の上位1%の所得シェアは約 20%という結果だ。こんなショッキングな数字が出ればアメリカでこの本が売れるの は当然だ。日本のメディアもこぞって彼を追いかけるのは、動向があやぶまれるアベ ノミクスについてピケティ氏に聞きたいことがたくさんあるからだろう。 では、日本の格差はいかがなものであろう?今年の1月にピケティ特集を組んだ東洋 経済誌によると、日本の所得上位層の上位0.01%に該当する人の年収(税引き前、各種 控除前)は8057万円。アメリカだとこの階層はなんと8億円を超えている。さらに、注 目すべき点として、上位1%の年収が1279万円であること。これはおよそ上場大企業の 管理職クラスが該当するそうだ。「年収1千万プレーヤー」なんて言葉を日本ではよ く耳にする。この年収1000万円のラインに何歳で乗れるか否かがよく話題になる。そ れに上場大企業といえども、管理職クラスの人々もおそらく皆と同じ電車通勤してい るだろう。ということはこの上位1%の人の暮らしは、富裕層ではない人々にとって想 像の範囲内であり、日本はアメリカほど格差が拡大していないと言える。一見安心な 結果のようだが、日本では世代間格差や新卒の就職難、増える非正規雇用者など、雇 用機会そのものが問題だ。しかし迫り来る消費税10%、物価上昇は全ての人にふりか かる。今後日本は所得格差が縮まるということはなさそうだ。今のうちに自分がどの 階層に位置するかを知り、格差社会に負けない人生を構築しておきたい。 さしあたって、アベノミクスは今後どうなるだろう?と日々の日本の政治経済の動向 を観察して、自分なりに日本の未来を占うのもいい。今は盛り上がっているアベノミ クス、いずれ崩壊すると読むのなら、それが自分の生活にどう影響するのかも考えて おく必要がある。もちろんこのような危機管理を以前からしている人もいるだろう、 そういう人は意識的もしくは無意識に経済を気にかける生活を送っていると再確認出 来る。またこのピケティ氏が警笛を鳴らす今後の格差の広がりと、アベノミクスを考 慮して、なけなしの貯金で株を買いはじめる人もいるだろう。自分の身近なところか ら経済に対し自分の考えを持ち、出来ることはやってみること。ピケティ・ブームは 我々と経済学をこれまでになく身近な存在に近づけてくれた気がしてならない。 ----------------------------------- <謝 志海(しゃ しかい)Xie Zhihai> 共愛学園前橋国際大学専任講師。北京大学と早稲田大学のダブル・ディグリープログ ラムで2007年10月来日。2010年9月に早稲田大学大学院アジア太平洋研究科博士後期 課程単位取得退学、2011年7月に北京大学の博士号(国際関係論)取得。日本国際交 流基金研究フェロー、アジア開発銀行研究所リサーチ・アソシエイトを経て、2013年 4月より現職。ジャパンタイムズ、朝日新聞AJWフォーラムにも論説が掲載されてい る。 ************************************************** ● SGRAカレンダー ○第5回日台アジア未来フォーラム 「日本研究から見た日台交流120年」 (2015年5月8日台北)<ご予定ください> ○第4回SGRAワークショップin蓼科 (2015年7月3日〜5日蓼科) ○第49回SGRAフォーラム 「日本研究の新しいパラダイム」 (2015年7月18日東京)<ご予定ください> ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員 のエッセイを、毎週水曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読 いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。下記URLより自動登録していた だくこともできますし、事務局までご連絡いただいても結構です。 http://www.aisf.or.jp/sgra/entry/registration_form/ ● アドレス変更、配信解除をご希望の方は、お手数ですがSGRA事務局までご連絡く ださい。 ● エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務 局より著者へ転送いたします。 ● 皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ● SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただ けます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2014/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3−5−8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03−3943−7612 FAX:03−3943−1512 Email: [email protected] Homepage: http://www.aisf.or.jp/sgra/ **************************************************
  • [SGRA_Kawaraban] Li Kotetsu “Chinas Dream of Going West, and the Future of Asia (Part 2)”

    ********************************************************************** SGRAかわらばん559号(2015年3月18日) 【1】エッセイ:李 鋼哲「西に向かう『中国の夢』と未来のアジア(その2)」 【2】新刊紹介:今西淳子編「アジアの未来へ—私の提案 Vol.2」 【3】催事紹介:中日韓朝言語文化比較研究国際シンポジウム        (2015年8月18日〜21日 中国・延辺大学) ********************************************************************** 【1】SGRAエッセイ#452 ■李 鋼哲「西に向かう『中国の夢』と未来のアジア(その2)」 そうしたなか、アジアでは中国とインドの台頭が世界的に注目されている。IMFは昨 年(2014年)10月7日に発表した報告書『世界経済の見通し』のなかで、購買力平価 (PPP)ベースでみた中国のGDPは2014年末に17兆6,000億ドルに達し、アメリカの17 兆4,000億ドルを上回り、世界一の経済大国になると予測した。同じくPPPベースで、 新興経済国G7(BRICs4カ国、インドネシア、メキシコ、トルコ)のGDP合計(37兆 8,000億ドル)が、先進G7(米英仏独伊日加)のGDP合計(34兆5,000億ドル)を上回 るという見通しである。 その中国は、潤沢な外貨準備高を利用し、BRICS開発銀行(資本金500億ドル、2016年 発足)、BRICS外貨準備基金(資本金1,000億ドル、2015年発足)、アジア・インフラ 投資銀行(AIIB、資本金500億ドル、26か国参加、今年6月発足)などの構想を打ち出 し、既存のアメリカ主導のIMF、世界銀行のドル体制を脅かしている。 その中でも注目されるのが中国とインドの急接近である。かつて「犬猿の仲」であっ た両国は、今では手を携えてアジアの未来を共同で構築するという方向で動いてい る。習近平主席は「中国の夢」を実現すべく、「シルクロード経済帯」と「21世紀海 上シルクロード」という「一帯一路」構想を周辺外交の方針とし、昨年9月14日から9 日間にわたってタジキスタン、モルジブ、スリランカ、インドの4ヵ国を歴訪した が、その訪問を「一帯一路構想を実現する旅」と位置づけていた。 特に、インド訪問は中国の対インド政策の180度転換を印象づけた。9月17日、習主席 はインドのグジャラート州のアーメダバード空港に降り立ち、そこでモディ首相と首 脳会談を行い、以後2泊3日の全行程にモディ首相が同行した。モディ首相は、「イン ドの第一歩を、私の故郷に降り立ってくれて嬉しい。今年の7月にブラジルで初めて お目にかかった時、私はインドと中国は『二つの身体、一つの精神』であると述べ た。INDIAとCHINAの頭文字を取れば、INCHではないか。われわれはインチの距離にあ る関係であり、マイルの距離まで関係を発展させるのだ」と述べた。 習近平主席の回答は、次の通りだ。「グジャラート州は、唐代の高僧・玄奨が立ち 寄った場所で、中印交流の記念の地だ。両国は共に古代からの文明国であり、発展途 上にある大国だ。今回の私の訪問は、友誼の旅であり、提携の旅だ…。『世界の工 場』と『世界のオフィス』が組めば、怖いものはない。アジアの両大国が、『中国の 能力』と『インドの知恵』によって牽引していくのだ。両国は手を携えて、バングラ デシュ・中国・インド・ミャンマーの経済回廊の建設、シルクロード経済ベルト、21 世紀の海上シルクロードを進めていこうではないか。モディ首相が唱える『二つの身 体、一つの精神』に賛同する。『中国龍』と『インド象』が組めば、国際社会に大き く貢献できる」と述べた。 つまり、中国は「アジア未来の夢」を実現する最有力パートナーとしてインドを選ん だのである。言い換えれば、今まで東アジアで言われていた、日中両国(または日中 韓3国)が協力して「アジア共同体」をリードするという考え方からすると、大きな 方針転換である。 これにより私がSGRAフォーラムで発表した「アジア・ハイウェイ」構想は西に向けて 一歩前進するだろうが、東の日本と朝鮮半島の位置づけが変わることは間違いない。 *筆者は「アジア・ハイウェイ」の旅を夢見ており、その第一歩を今年5月2日に東京 からスタートし、博多で対馬海峡をフェリーで渡り、プサンからソウル、そして板門 店、中国経由でベトナム、カンボジア、ラオスまで走破する計画。SGRAからの参加者 を募集中! 「西に向かう『中国の夢』と未来のアジア(その1)」は下記リンクからお読みいた だけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2014/post_527.php --------------------------------- <李 鋼哲(り・こうてつ)Li Kotetsu> 1985年中央民族学院(中国)哲学科卒業。91年来日、立教大学経済学部博士課程修 了。東北アジア地域経済を専門に政策研究に従事し、東京財団、名古屋大学などで研 究、総合研究開発機構(NIRA)主任研究員を経て、現在、北陸大学教授。日中韓3カ 国を舞台に国際的な研究交流活動の架け橋の役割を果たしている。SGRA研究員。著書 に『東アジア共同体に向けて——新しいアジア人意識の確立』(2005日本講演)、そ の他論文やコラム多数。 --------------------------------- 【2】新刊紹介: 沸騰するアジアの声を世界へ! ■「アジアの未来へ——私の提案 Vol.2」   Toward the Future of Asia: My Proposal   第2回アジア未来会議優秀論文集 驚異的な発展を遂げながらも、さまざまな問題と直面するアジアの国々。渥美国際交 流財団関口グローバル研究会(SGRA)は、このような問題を語り会う場を提供するた めに「アジア未来会議」を開催しています。第2回目の会場となったのは、2014年8 月のバリ島(インドネシア)。本書はこの会議において発表された優秀論文18本と記 念講演3本を集めたものです。 編者:今西淳子(渥美国際交流財団) 判型:A4変形 定価:本体3500円+税 ISBN978-4-902928-13-6 出版:ジャパンブック 購入ご希望の方は、amazon.co.jp あるいはお近くの書店でご注文いただくか、アジ ア未来会議事務局へご連絡ください。 ジャパンブック  http://www.japanbook.co.jp ちらし  http://www.aisf.or.jp/sgra/info/AFC3Book_Chirashi.pdf 【3】催事紹介 エッセイ執筆者の李鋼哲さんから、下記国際シンポジウムのご案内をいただきました ので、ご紹介します。 ■ 第四回中日韓朝言語文化比較研究国際シンポジウム 昨今、中日間で領土問題をめぐって不愉快なイシュが多発し、不協和音が続いていま すが、だからこそ、国家的・民族的・政治的な障壁を乗り越え、東アジア諸国を視野 に入れた、このような国際的・学際的シンポジウムを開催する必要があるのではない か、と思慮されます。したがって、今回も2009年度、2011年度、2013年度のシンポジ ウムに劣らず、ぜひ国内外の大勢の方々にご参加いただき、シンポジウムの主題をめ ぐる活発なご発表がありますことを、心より期待しております。 1.参加資格 日本研究を中心とした東アジア人文社会系の研究、特に比較・対照研究に興味のある 方ならどなたでも参加できます。 2.大会日程と会場 ◆会場:中国・延辺大学 8月18日(火) 受付 8月19日(水)〜20日(木) 開会式・基調報告・分野別の特別セッション・分科会 発表・閉会式 ◆8月21日(木)〜国内・国外旅行(長白山(日帰り)、防川・図門(日帰り)、ロ シア・ウラジヴォストーク(2泊)、北朝鮮・羅先市(2泊)予定。自由参加(諸費用 は自己負担)、但し、中国人以外は北朝鮮旅行は不可。なお、中国人以外の方がロシ ア旅行希望の際は、自国内においてビザを取得すること。 3.シンポジウムの主題 ■東アジアにおける日本学研究の新しい視点(暫定)(言語、文化、文学、教育、社 会、経済、法律等) (1)日本研究を中心とした中・日・韓・朝人文系の比較・対照研究と一般研究 (2)東アジアにおける日本研究の現状と展望 (3)多言語の共存と言語教育 (4)異文化の対話と価値観の多様性 (5)中国少数民族地域における教育 (6)偽満州国(旧満州国)をめぐる日本研究 4.お申し込み 参加希望者は申込書に必要事項をご記入後、日本語の要旨(800−1000字、必ず規定 を守ること)とともに、2015年5月30日まで下記のシンポジウム準備委員会に送って ください。 詳細は下記リンクよりご覧ください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/info/Symposium_Announcement.pdf ************************************************** ● SGRAカレンダー ○第5回日台アジア未来フォーラム 「日本研究から見た日台交流120年」 (2015年5月8日台北)<ご予定ください> ○第4回SGRAワークショップin蓼科 (2015年7月3日〜5日蓼科) ○第49回SGRAフォーラム 「日本研究の新しいパラダイム」 (2015年7月18日東京)<ご予定ください> ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員 のエッセイを、毎週水曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読 いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。下記URLより自動登録していた だくこともできますし、事務局までご連絡いただいても結構です。 http://www.aisf.or.jp/sgra/entry/registration_form/ ● アドレス変更、配信解除をご希望の方は、お手数ですがSGRA事務局までご連絡く ださい。 ● エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務 局より著者へ転送いたします。 ● 皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ● SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただ けます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2014/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3−5−8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03−3943−7612 FAX:03−3943−1512 Email: [email protected] Homepage: http://www.aisf.or.jp/sgra/ **************************************************
  • [SGRA_Kawaraban] Li Kotetsu “Chinas Dream of Going West, and the Future of Asia”

    ******************************************** SGRAかわらばん559号(2015年3月11日) ******************************************** SGRAエッセイ#451 ■ 李 鋼哲「西に向かう『中国の夢』と未来のアジア(その1)」 去る2月7日、第48回SGRAフォーラム(第14回日韓アジア未来フォーラム)が東京代々 木の国立オリンピック記念青少年総合センターで開催された。このフォーラムはSGRA 構想アジア研究チームと日韓アジア未来フォーラムが共催したもので、アジアの急速 な経済成長のダイナミズムを物流システム構築の側面から、その現状と課題について 議論した。 筆者は「アジア・ハイウェイと地域統合−その現状と課題−」をテーマに、アジアの 未来に向けた夢と現実について報告した。10年前、筆者は日本の国策シンクタンク NIRA(総合研究開発機構)で日中韓3カ国の国策シンクタンク(韓国のKRIHS(国土研 究院)、中国のDNRC(国土研究所))による共同プロジェクト「北東アジア・グラン ド・デザイン」の研究と政策提言に携わり、そこで北東アジア地域の物流統合の未来 ビジョンと現状や課題について数年間研究した。その中で、「アジア・ハイウェイ構 想」、「日韓海底トンネル構想」、「北東アジア物流ネットワーク構築」などについ て検討した。 アジアを一つに結びつける「アジア・ハイウェイ構想」は国連ESCAPが1950年代に提 唱し推進している。2004年の時点でアジアやヨーロッパ32カ国が参加し、政府間協定 に署名した。東は東京日本橋(AH1)が出発点で西はイスタンブールまで道路を繋ぎ、 アジア諸国が協力して共に発展し、平和・繁栄の夢を実現しようとするものである。 「アジア・ハイウェイ構想」の総延長141,714㎞のなか、中国本土だけで26,699㎞が 指定され、中国大陸を経由して東南アジア、西アジア、中央アジア、北アジアやロシ アまでその交通網が広がる構図である。 この「アジア・ハイウェイ構想」の実現に大きなインパクトを与える重要な構想が中 国から提案されている。習近平主席の「一帯一路」構想である。中国は「一帯一路」 構想をアジア諸国と進めることにより、新しい成長ベルトとして開発し、それを「新 常態」に突入した中国経済の新しい成長軸とすることを目論んでいる。 中国では、2014年春より経済成長が鈍化へ向っている現状を「新常態」という言葉で 表し、新しい中国経済の状態を認識し、受容するように習指導部が呼びかけ、それに 基づいた経済戦略や改革ビジョンを打ち出した。そして、対外経済関係・外交におい ては、「一帯一路」という「新しいアジア・グランド・デザイン構想」(筆者造語) を発表し、実行に移しつつある。いずれも、習近平政権の新しい経済戦略と外交戦略 構想である。もし、この構想通りに進むのであれば、アジアの勢力構図は大きく変わ るだろう。 「新常態」は、中国の経済成長の鈍化を前提としたソフト・ランディングを目指す新 しい成長パターンを示す用語として提起されたが、昨年後半の経済外交や政治外交を 観察すると、それは単純な経済の新常態を表す言葉の領域を遙かに超え、新しい外交 戦略の構想を示す国際関係の用語としても使われるようになった。それと共に、習近 平主席は「一帯一路」構想を提案し、9月には中央アジアや南アジアの諸国を訪問 し、その実現を訴えている。 「一帯一路」構想は、新しいアジア秩序において、今までの「ルック・イースト」戦 略から、「ルック・ウェスト」(西に向かう)の戦略的な転換を意味するものと見ら れている。分かりやすく言えば、今まで中国が重視していた日本、韓国などアジアの 先進国との関係や戦略的な価値は低下し、インドや東南アジア、中央アジアがこれか らの中国の戦略的開発方向だという意味である。経済開発のみではなく、政治的・外 交的にもインドと中国はアジアの二つの「象と龍」であり、「象と龍」が未来の世界 の中枢になるという考え方である。 このような中国の外交政策や世界戦略とアジア戦略の転換は、東北アジアの国際関係 や経済協力に大きなネガティブ・インパクトをもたらすと私は考えている。「東北ア ジア人」の私にとっては「夢と希望」に陰が落とされた重大な変化である。 日本の国際関係学者久保孝雄氏は「同時進行する南北逆転・東西逆転への胎動—加速 する世界の地殻変動—」(メールマガジン「オルタ」第133号、2015.1.20)という論 考で、「アメリカの覇権衰退が加速し、・・・世界経済における南北(先進国対新興 国)逆転と、世界政治における東西(アジア対欧米)逆転への動きが複合しつつ進展 している」と指摘する。(つづく) --------------------------------- <李 鋼哲(り・こうてつ)Li Kotetsu> 1985年中央民族学院(中国)哲学科卒業。91年来日、立教大学経済学部博士課程修 了。東北アジア地域経済を専門に政策研究に従事し、東京財団、名古屋大学などで研 究、総合研究開発機構(NIRA)主任研究員を経て、現在、北陸大学教授。日中韓3カ 国を舞台に国際的な研究交流活動の架け橋の役割を果たしている。SGRA研究員。著書 に『東アジア共同体に向けて——新しいアジア人意識の確立』(2005日本講演)、そ の他論文やコラム多数。 ************************************************** ● SGRAカレンダー ○第5回日台アジア未来フォーラム 「日本研究から見た日台交流120年」 (2015年5月8日台北)<ご予定ください> ○第4回SGRAワークショップin蓼科 (2015年7月3日〜5日蓼科) ○第49回SGRAフォーラム 「日本研究の新しいパラダイム」 (2015年7月18日東京)<ご予定ください> ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員 のエッセイを、毎週水曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読 いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。下記URLより自動登録していた だくこともできますし、事務局までご連絡いただいても結構です。 http://www.aisf.or.jp/sgra/entry/registration_form/ ● アドレス変更、配信解除をご希望の方は、お手数ですがSGRA事務局までご連絡く ださい。 ● エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務 局より著者へ転送いたします。 ● 皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ● SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただ けます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2014/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3−5−8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03−3943−7612 FAX:03−3943−1512 Email: [email protected] Homepage: http://www.aisf.or.jp/sgra/ **************************************************
  • [SGRA_Kawaraban] Kim Woonghee “Nikkan Asia Future Forum #14 Report”

    ********************************************************* SGRAかわらばん558号(2015年3月04日) 【1】金 雄熙「フォーラム『アジア経済のダイナミズム』報告」 【2】情報提供:2014年留学生数(日本学生支援機構) ********************************************************* 【1】SGRA催事報告 ■ 金 雄熙「第14回日韓アジア未来フォーラム『アジア経済のダイナミズム』報告」 2015年2月7日(土)、国立オリンピック記念青少年総合センターで第14回日韓アジア 未来フォーラム(第48回SGRAフォーラム)が開催された。今回は「アジア経済のダイ ナミズム−物流を中心に」というテーマだったが、2013年度から5年間のプロジェク トの第2年目として、日韓の交通・物流システムにおける先駆的な経験が、アジアの 持続可能な成長と域内協力にどのように貢献できるのかという問題意識に立ち、アジ ア地域で物流ネットワークが形成されつつある実態を探り出し、その意味合いを社会 的にアピールすることを目的とした。 フォーラムでは、未来人力研究院理事長の李鎮奎(リ・ジンギュ)教授による開会の 挨拶に続き、基調講演と2人の研究者による発表が行われた。基調講演では、「ミス ター円」と呼ばれた榊原英資(さかきばら・えいすけ)さんが、中国やインドが19世 紀初めまでは世界の2大経済大国であったことを考えると、昨今の高い経済成長は 「リオリエント」現象とも呼ばれるべきものであると力説した。また、インドネシア など東南アジア諸国も高い成長を続けており、次第に成長センターは西に移っている とした。おそらく20年後にはインドの成長率が中国のそれを越え、2050年のGDPでは 中国がアメリカを抜いてナンバーワン、インドはナンバーツーに近いナンバースリー になると予測されているとした。ちょうど15年前(渥美国際交流財団設立5周年)に 榊原さんがこの同じ場所で中国の浮上を熱く語ったことがあったのだが、いまや「G 2」論が話題になるようになった。これから15年後インドがグローバル経済という大 舞台でどういう役を演じるようになるのか、またどの国・地域が新しく浮上し、東ア ジア共同体の成功への期待を膨らませるか興味はつきない。 安秉民(アン・ビョンミン)韓国交通研究院ユーラシア・北朝鮮インフラセンター所 長は、北東アジアにおいて活発に行われている国境を越えた多国間開発事業、特に北 朝鮮、中国、ロシア、モンゴルなどの国々による交通・物流インフラなどをめぐる新 しい協力方式を中心に、北東アジアの交通・物流協力の実状と今後の展望について発 表した。 ド・マン・ホーン桜美林大学経済経営学系准教授は、GMS(大メコン圏)経済協力プ ログラムの中で、最も積極的に進められてきたプロジェクトである輸送インフラ整備 を中心に、同地域での物流ネットワークの現状を分析し、ソフト(制度など)とハー ド(インフラシステム)の両面に関わる課題について発表した。 休憩を挟んで、ラウンドテーブルでは、まず第48回SGRAフォーラムの仕掛け人でもあ る北陸大学未来創造学部の李鋼哲(り・こうてつ)教授が「アジアハイウェイの現状 と課題について」報告を行った。討論のたたき台としてのミニ報告を予定していた が、「アジア人」として長年にかけての「ロマンチックな」夢が熱く語られ、会場を 大いに盛り上げた。その後、畑村洋太郎(はたむら・ようたろう)東京大学名誉教 授、沼田貞昭(ぬまた・さだあき)鹿島建設顧問、韓国未来人力研究院の徐載鎭 (ソ・ジェジン)院長、滋賀県立大学のブレンサインさん、SMBC日興証券のナポ レオンさんらによるコメントが続いた。著しく成長しつつある物流ネットワークの域 内協力をキーとし、アジア経済のダイナミズムについてそれぞれの立場や専門領域を 踏まえた、そして夢が込められた素晴らしい議論であった。 今回は渥美財団20周年祝賀会と日韓アジア未来フォーラムが立て続けに開催され、準 備が本当に大変だったに違いないが、スタッフの皆さんは勿論のこと、家族的なラ クーン・ネットワークに支えられ、成功裏に終えることができ、改めて顔の見える ネットワークのパワーを実感した。交通の便が悪かったにもかかわらず、100名を超 える参加者が集まるというすごい反響は、これからのフォーラム運営により一層の活 力とやりがいを与えてくれた。なお、第2回アジア未来会議に続き、大学や研究機関 の研究者のみならず若い学生たちにも参加いただき、次世代への期待をフォーラム運 営の在り方につなげるものとなった。慌ただしい日程のなか、高麗大学の学生たちを 青少年総合センターまで案内してくれた今西勇人さん夫妻にこの場を借りて感謝した い。残念ながら、公式乾杯酒の「春鹿」、そして入り混じったラブショットはみられ なかったものの、日本ならではの節度ある良いフォーラムであったと思う。 前回のフォーラム報告でも言及したが、これから「ポスト成長時代における日韓の課 題と東アジア地域協力」について、実りのある日韓アジア未来フォーラムを進めてい くためには、総論的な検討にとどまらず、今回のように各論において掘り下げた検討 を重ねていかなければならない。次回のフォーラムの開催に当たっても、このような 点に重点を置きつつ、着実に進めていきたい。最後に第14回のフォーラムが成功裏に 終わるようご支援を惜しまなかった今西代表と李先生、そしてスタッフの皆さんに感 謝の意を表したい。李先生、今西さん、そしてラクーンのみなさん、日韓アジア未来 フォーラムも20周年祝賀会やりましょう! フォーラムの写真は下記リンクからご覧いただけます。 http://goo.gl/E3gsBQ フィードバック集計は下記リンクよりご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/info/nikkan14feedback.pdf -------------------------------- <金雄煕(キム・ウンヒ)☆ Kim Woonghee> 89年ソウル大学外交学科卒業。94年筑波大学大学院国際政治経済学研究科修士、98年 博士。博士論文「同意調達の浸透性ネットワークとしての政府諮問機関に関する研 究」。99年より韓国電子通信研究員専任研究員。00年より韓国仁荷大学国際通商学部 専任講師、06年より副教授、11年より教授。SGRA研究員。代表著作に、『東アジアに おける政策の移転と拡散』共著、社会評論、2012;『現代日本政治の理解』共著、韓 国放送通信大学出版部、2013;「新しい東アジア物流ルート開発のための日本の国家 戦略」『日本研究論叢』第34号、2011。最近は国際開発協力に興味をもっており、東 アジアにおいて日韓が協力していかに国際公共財を提供するかについて研究を進めて いる。 -------------------------------- 【2】情報提供 日本学生支援機構(JASSO)では、例年、留学生施策に関する基礎資料を得ることを 目的として、留学生に関する各種調査を実施していますが、2014年度の調査結果が公 表されましたのでお知らせします。 ●平成26年度外国人留学生在籍状況調査等について(留学生受入れの概況) http://www.jasso.go.jp/statistics/intl_student/data14_g.html 各調査の結果ページは以下になります。 ●平成26年度外国人留学生在籍状況調査結果 http://www.jasso.go.jp/statistics/intl_student/data14.html ●平成25年度外国人留学生年間短期受入れ状況調査結果 http://www.jasso.go.jp/statistics/intl_student/data14_c.html ●平成25年度短期教育プログラムによる外国人学生受入れ状況調査結果 http://www.jasso.go.jp/statistics/intl_student/data14_p.html ●平成25年度協定等に基づく日本人学生留学状況調査結果 http://www.jasso.go.jp/statistics/intl_student/data14_s.html ************************************************** ● SGRAカレンダー ○第5回日台アジア未来フォーラム 「日本研究から見た日台交流120年」 (2015年5月8日台北)<ご予定ください> ○第4回SGRAワークショップin蓼科 (2015年7月3日〜5日蓼科) ○第49回SGRAフォーラム 「日本研究の新しいパラダイム」 (2015年7月18日東京)<ご予定ください> ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員 のエッセイを、毎週水曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読 いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。下記URLより自動登録していた だくこともできますし、事務局までご連絡いただいても結構です。 http://www.aisf.or.jp/sgra/entry/registration_form/ ● アドレス変更、配信解除をご希望の方は、お手数ですがSGRA事務局までご連絡く ださい。 ● エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務 局より著者へ転送いたします。 ● 皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ● SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただ けます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2014/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3−5−8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03−3943−7612 FAX:03−3943−1512 Email: [email protected] Homepage: http://www.aisf.or.jp/sgra/ **************************************************
  • [SGRA_Kawaraban] Borjigin Husel “New Start — 20th Anniversary of Atsumi International Foundation”

    ******************************************** SGRAかわらばん557号(2015年2月25日) ******************************************** SGRAエッセイ#450 ■ボルジギン・フスレ「新しい道を——渥美国際交流財団20周年記念祝賀会に参加し て」 2月6日、待ちにまった渥美国際交流財団20周年記念祝賀会が霞山会館で開催された。 その日、私が虎の門駅でおりた時には、すでにひぐれの時間であった。エスカレー ターを上がったところでまず目にしたのは、会場案内の看板を持って、来客を誘導し ている先輩の葉文昌さんであった。そして、霞山会館のビルの入口では、同じく道案 内の看板をもっている先輩の李恩民さんが待っていた。二人はともに大学の教授であ るにもかかわらず、寒いなか、熱心にみなさんの道案内をしている。先輩諸氏の姿を みて、まず、感動した。 あわてて、会場にかけこんで、財団の常務理事今西淳子さんに「なにかやることはあ りますか」と聞いたところ、「今日は落ち着いて、楽しんでください」といわれた。 中曽根康弘元総理大臣をはじめ、各国、各分野の200名を超す方々が参加し、祝賀会 が大盛会であったことはいうまでもない。 馴染みとの再会、新しい仲間との出会いの喜びはもとより、知見の豊かな意見交換、 そしてやや横道に逸れる話も、祝賀会に必要なものだと思われる。ことなる文化のぶ つかりあいによって智慧の火花が生まれるからであろう。 「故きを温ねて新しきを知る」。渥美伊都子理事長のご挨拶は、渥美財団の20年の歩 みをふりかえながら、新年会などでの留学生とのふれあいのエピソードをとりあげ、 国際交流における日本文化の位置づけも試みており、東洋の心に思いを馳せた。 長い間、渥美財団の人材育成、国際交流事業をあたたかく応援してくださっている明 石康先生のご挨拶は重みがあった。「人間でも、国でもどのように友達を選ぶのかは 非常に重要だ」というご指摘に非常に感銘した。 桐蔭横浜大学教授のペマ・ギャルポ先生に会って、モンゴル語で挨拶した。先生はか つてモンゴル国大統領の顧問を担当されたことがある。来日してすぐに先生のことを 知ったのだが、お目にかかったのは今回が初めてであった。 名古屋大学名誉教授平川均先生からは、東アジアの枠組みのなかの日本とモンゴルの 友好関係とその意義などについて聞かれて、うれしかった。バリ島でおこなわれた第 2回アジア未来会議では、平川先生からいろいろとご教示をいただいた。モンゴルは かつて日本の「生命線」と呼ばれる地域であったが、長い間わすれさられた。新しい アジアの秩序の構築において、日モ関係の強化は、ある意味では何をもっても代える ことのできないほどの重要性があると思う。 渥美財団のアドバイザー高橋甫氏は、寡黙でありながら、いつも物事を鋭く洞察して いる。モンゴルでおこなわれた7回のSGRAの国際シンポジウムの内、2回も参加してく ださった。その際、また、アジア未来会議においても、モンゴルの鉱山開発と環境保 護について、貴重な助言と情報をくださった。 公益財団法人かめのり財団の常務理事西川雅雄氏にお会いして、若い世代を中心とす る相互理解の国際交流等について話し合った。実は、かめのり財団は2012年に私が実 行委員長をつとめた第1回日本モンゴル青年フォーラムに助成してくださったことが あり、この恩は忘れられない。 設立以来長い間事務局にいらした谷原正さんは人気者で、たぬき(渥美財団の奨学 生)たちにかこまれて、いろいろと聞かれていた。慈愛にみちた美しさが感じられ る。 著名な、日本を代表する国際的ヴァイオリニスト前橋汀子氏のすばらしい演奏は、人 びとの心をうち、祝賀会をいやが上にも盛り上げた。日本に来る前に、ふるさとの芸 術大学で9年間教鞭をとったこともあったのだが、昔のさまざまなことが思い出され た。 先輩の李鋼哲さんは東アジアの秩序について、熱心にかたった。李さんはかつて『朝 日新聞』にモンゴルに関するユニークなコラムを書いたことがあり、たいへん注目さ れた。 再会した友人のなか、2003年度同期の奨学生林少陽氏、臧俐氏、張桂娥氏はそれぞれ 大学の教授になっている。4人で乾杯し、教育のことが話題になった。 祝賀会は、旧知の情を呼び覚ますだけではなく、また新しい仲間と知り合うことだけ でもなく、新しいスタートである。 子日く、「三十而立、四十不惑(三十にして立つ、四十にして惑わず)」。この意味 で、渥美財団はまだ基礎を固める段階にあるが、すでに目覚ましい成果を成し遂げて いる。国際理解や平和構築、人材育成に、渥美財団が寄与すべき責任(仕事)は多々 ある。財団の20年の歩みを誇り高く思うが、栄光は過去のものであり、新しい道を開 いていくことは、私達の使命である。 祝賀会の公式報告と写真、当日上映した動画は、下記リンクよりご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/jp/news.php?id=54eac4eb31a46 ------------------------------------------ <ボルジギン・フスレ Borjigin Husel> 昭和女子大学人間文化学部国際学科准教授。北京大学哲学部卒。1998年来日。2006年 東京外国語大学大学院地域文化研究科博士後期課程修了、博士(学術)。昭和女子大学 非常勤講師、東京大学大学院総合文化研究科・日本学術振興会外国人特別研究員をへ て、現職。主な著書に『中国共産党・国民党の対内モンゴル政策(1945〜49年)——民 族主義運動と国家建設との相克』(風響社、2011年)、共編『ノモンハン事件(ハルハ 河会戦)70周年——2009年ウランバートル国際シンポジウム報告論文集』(風響社、 2010年)、『内モンゴル西部地域民間土地・寺院関係資料集』(風響社、2011年)、 『20世紀におけるモンゴル諸族の歴史と文化——2011年ウランバートル国際シンポジ ウム報告論文集』(風響社、2012年)、『ハルハ河・ノモンハン戦争と国際関係』(三 元社、2013年)他。 ************************************************** ● SGRAカレンダー ○第5回日台アジア未来フォーラム 「日本研究から見た日台交流120年」 (2015年5月8日台北)<ご予定ください> ○第4回SGRAワークショップin蓼科 (2015年7月3日〜5日蓼科) ○第49回SGRAフォーラム 「日本研究の新しいパラダイム」 (2015年7月18日東京)<ご予定ください> ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員 のエッセイを、毎週水曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読 いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。下記URLより自動登録していた だくこともできますし、事務局までご連絡いただいても結構です。 http://www.aisf.or.jp/sgra/entry/registration_form/ ● アドレス変更、配信解除をご希望の方は、お手数ですがSGRA事務局までご連絡く ださい。 ● エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務 局より著者へ転送いたします。 ● 皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ● SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただ けます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2014/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3−5−8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03−3943−7612 FAX:03−3943−1512 Email: [email protected] Homepage: http://www.aisf.or.jp/sgra/ **************************************************
  • [SGRA_Kawaraban] Xie Zhihai “Blind Spots in Japan: Cold Residences in Winter”

    ***************************************************** SGRAかわらばん556号(2015年2月18日) 【1】エッセイ:謝志海「日本の盲点:冬の寒い住居」 【2】催事案内:「東アジアにおける漢字漢語の創出と共有」 ***************************************************** 【1】SGRAエッセイ#449 ■ 謝 志海「日本の盲点: 冬の寒い住居」 冬に日本へ一時帰国する海外在住の日本人の友人たちは、皆口を揃えて言う。「日本 の冬は寒くて、過ごしにくい」と。彼らはみんな日本より寒い国や地域に住んでいる というのに、日本の家(主に彼らの実家)が寒いというのだ。私が勝手に抱いていたイ メージは、日本の冬の「こたつでみかん」を楽しみにと思っていたのに、現実は違っ ていた。彼らが暮らしている国々は日本より冬が厳しいが、家中が暖かく保たれてい るそうで、日本の住居のように、暖房をつけた暖かい部屋を一歩出たら寒い廊下、そ して寒いトイレに行くということが無いそうだ。思えば私が長年暮らしていた北京の 冬は、日本より寒いが室内はどこも暑い程だった。家電製品は日々進化し、便利な生 活を整えるため次から次へと新しい技術が産み出される日本で、何故日本の家は寒い ままなのだろう。 ニューヨークから一時帰国してきた日本人の友人が教えてくれたのだが、ニューヨー ク州の法律では、冬季(10月から5月)に外気温が10度を下回ったら、アパートの大家 は室温を20度にしなければならないと定められているそうだ。しかもこの暖房費は家 賃に含まれているとのこと。セントラルヒーティングで家中に暖房がいきわたり、家 に帰れば家の中がすでに暖かいのはいいよと絶賛していた。このようなことが法律で 定められていることに驚き、ニューヨークの近隣の寒い地域についても調べたら、米 国東海岸の他の州はもちろん、カナダのトロントや、英国も同様に、住宅の最低室温 に関して規制があった。そしてこれは健康への配慮からなる法規制であった。日本に は住宅に対してこのような規制は無い。 インフラが整い、全てが完璧のような日本に落とし穴を見つけた気がした。日本のテ レビでは毎日のように健康についての番組が放映され、現に国民の一人ひとりが健康 への関心が高い。しかし日本の家の中は寒いままだ。そして冬のニュースでよく耳に するのが、高齢者のお風呂場、脱衣所で心臓発作による死。熱い湯船に浸かり、外気 と同じくらい寒い脱衣所に出る。この急激な温度変化で体調が急変することを「ヒー トショック」と言うそうだ。厚生労働省の報告書によると、入浴時の事故死だけで、 年間1万9千人以上と推計されるそうだ。 このような事故死を防ぐため、日本の冬の住居環境を見直すべきだろう。欧米のよう に住宅の法規制として、断熱化を進めるべきではないだろうか。光熱費が高い日本で は、家そのものの工夫が必要だろう。察するに、高齢の日本人は我慢強く、少しくら い寒くても我慢してしまうことが多い。暖房器具があっても使われなければ意味がな いし、何よりも住居内での温度差が危険なのだ。家中の室温を一定に保つことが重要 だ。北海道の家は冬も暖かいので、ヒートショックも少ないそうだ。身近な所から冬 を過ごし易い住環境を取り込み、改善すべきだ。それは日本の高齢者を守り、人口減 を緩やかにする。健康への関心が高い、先進国の日本人が、このように未然に防げそ うな事故で毎冬あっけなく命を失うのは大変惜しい。 ---------------------------------------- <謝 志海(しゃ しかい)Xie Zhihai> 共愛学園前橋国際大学専任講師。北京大学と早稲田大学のダブル・ディグリープログ ラムで2007年10月来日。2010年9月に早稲田大学大学院アジア太平洋研究科博士後期 課程単位取得退学、2011年7月に北京大学の博士号(国際関係論)取得。日本国際交 流基金研究フェロー、アジア開発銀行研究所リサーチ・アソシエイトを経て、2013年 4月より現職。ジャパンタイムズ、朝日新聞AJWフォーラムにも論説が掲載されてい る。 ---------------------------------------- 【2】催事案内 SGRA会員の孫建軍さんからシンポジウムのご案内をいただきましたのでご紹介しま す。 ■ 国際シンポジウム「東アジアにおける漢字漢語の創出と共有」 共催:漢字文化圏近代語研究会、早稲田大学孔子学院 日時:2015年3月21日〜22日(土・日) 場所:早稲田大学11号館901教室 (入場無料、一般来聴歓迎) プログラムは下記リンクよりご覧ください。 http://www2.ipcku.kansai-u.ac.jp/~shkky/2015_03_21program.pdf ************************************************** ● SGRAカレンダー ○第5回日台アジア未来フォーラム 「日本研究から見た日台交流120年」 (2015年5月8日台北)<ご予定ください> ○第4回SGRAワークショップin蓼科 (2015年7月3日〜5日蓼科) ○第49回SGRAフォーラム 「日本研究の新しいパラダイム」 (2015年7月18日東京)<ご予定ください> ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員 のエッセイを、毎週水曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読 いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。下記URLより自動登録していた だくこともできますし、事務局までご連絡いただいても結構です。 http://www.aisf.or.jp/sgra/entry/registration_form/ ● アドレス変更、配信解除をご希望の方は、お手数ですがSGRA事務局までご連絡く ださい。 ● エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務 局より著者へ転送いたします。 ● 皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ● SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただ けます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2014/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3−5−8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03−3943−7612 FAX:03−3943−1512 Email: [email protected] Homepage: http://www.aisf.or.jp/sgra/ **************************************************
  • [SGRA_Kawaraban] Aingeru Aroz-Rafael “Nation and Identity”

    ******************************************** SGRAかわらばん555号(2015年2月11日) ******************************************** SGRAエッセイ#448 ■アロツ=ラファエル アインゲル「国とアイデンティティ:自分の居場所はどこ か」 多くの人は、自分が何人であるかについて話す時、つまり「私は日本人です」、「私 はスペイン人です」と言う時、おそらく何の違和感、疑問を感じないだろう。ただ し、私たちが「私は日本人です」、「私はスペイン人です」と言う時、自らの客観 的、正式的、パスポートに書いてある国籍を指しているだけではなく、自分がある 国、あるコミュニティーへの帰属意識、いわば自分のアイデンティティの一側面を表 現してもいると言えよう。 私は留学がきっかけで、自らの国・国籍とアイデンティティについてしばしば考える ようになった。そして、この課題についての私の考え方は留学によって大きく変わっ た。本稿では、私の考え方がどう変わったかを説明するために、まず私の背景につい て、次に10年以上前に初めて留学することによって私の観点がどう展開したかを、そ して最後に国とアイデンティティについての現在の私がどのような立場であるかを述 べたい。 私はスペイン北部にあるバスク地方で生まれ育ち、22歳までバスク地方の最大の都 市、ビルバオに住んでいた。バスク地方ではスペイン語と違う言語が話されており、 また、その歴史・社会構造・経済構造の面からも他のスペインの地方との相違点が多 く、バスク人の一部はスペインからの独立を願っている。このような複雑な地域で は、「あなたは自分をバスク人と考えていますか、スペイン人と考えていますか」と いうような質問を問いかけられることがよくある。しかも、バスク地方では、自分を スペイン人かバスク人かと認識することは、自分の家系や母語とは直接関係なく、む しろ自身の政治的立場や感情と深くかかわっている。例えば、自分の家族がスペイン の他の地方の出身であって、自分の母語がスペイン語であっても、自らをスペイン人 でなくバスク人と考える人もいれば、家族がバスク地方出身であり、バスク語を母語 とする人で自らをスペイン人と考える人もいる。 私自身は、バスク地方に住んでいた時、自信をもって「私はスペイン人ではなく、バ スク人である」と言うことができた。それは、バスク地方以外の地域に対して何らか の抵抗を感じていたからではなくて、むしろバスク地方の独自性、いわばユニークさ に一種の愛着を持っていたからであり、また、私の周りの人々、つまり家族や友だち が同様な観点を持っていたからであった。 しかし、私は22歳の時にイタリアのボローニャ大学に留学することになり、初めてバ スク地方ではない国で生活し、また、バスク地方以外のスペインの各地方やヨーロッ パの各国から来た友だちができることによって、私が、自分自身が、バスク人である ということの意味を深く考え直すことになった。バスク地方に住んでいた時の私はバ スク地方の特殊性、スペインの他の地域との相違点などを重視していたのに対して、 イタリアで生活を始めた当時の私にとっては、相違点というより、むしろスペインの 他の地域やヨーロッパ各国との共通点の重要性がわかるようになった。したがって、 私はイタリアで国籍を聞かれた時、だんだん違和感を持たずに「スペイン人です」と 答えるようになり、かつ、自分をバスク人だけと考えていた以前の私の立場を排他的 で度量の狭い立場のように見るようになった。そうして私は、「バスク人」「スペイ ン人」というような名称が自分の背景をある程度説明していることを理解すると同時 に、自分にとって実際それらの言葉にたいした意味がなくて、自分のアイデンティ ティとしてはむしろヨーロッパ人としてのアイデンティティがもっと重要なのではな いかと考えるようになった。なぜなら、ヨーロッパという概念からは、国境を超えた 豊富な歴史を背景としながら、多様で充実した社会を目的とする民主主義的プロジェ クトを構築していくことができると考えたからであった。 しかしながら、私は2007年に、ヨーロッパから離れて日本に留学することになり、自 分の立場をあらためて考えることになった。イタリアに留学することによって私の視 野が広くなったと同じく、はじめてヨーロッパ以外の国で生活し、日本およびアジア 各国から来た友だちができ、実際に人間同士をつなげるものは共通の文化的背景など ではなく、むしろ価値観、世界観であることがはっきり分った。 こうして、日本に留学することによって、私のバスク人、スペイン人、ヨーロッパ人 としてのアイデンティティが、いったいいかなるものであるかをふたたび反省するこ とになり、国とアイデンティティについて、より明確に考えるようになった。つま り、国とアイデンティティの間の関係において二つの側面を区別することができると 思う。一方では、「私はスペイン人です」、「私は日本人です」などの表現によっ て、私たちがどこから来ているか、どこで育ったかを説明しているのであって、例え ば私の個人的な場合に、やはり私がバスク人であること、スペイン人であること、 ヨーロッパ人であることのそれぞれが、私の背景、いわば私の個人的な歴史を語って いると言えると思う。他方では、「私はスペイン人です」「私は日本人です」などの 表現が、ある国、あるコミュニティーへの帰属意識を表しており、すなわち自らがど こから来たかだけを表すというより、むしろ自らがどこに帰属したいか、どこを自分 の居場所にしたいかということを表していると思う。この二つ目の側面は、一つ目の 側面より自由であり、個人が各々の人生において、様々な経験を重ねるにつれて、変 わっていくことが可能であろう。 留学生として日本で7年間生活してきた私は、自分がバスク人、スペイン人、ヨー ロッパ人であるということが、上述したように私のある重要な側面を捉えていると思 う。なお、上記の二つ目の側面については、つまり私がどこに帰属したいか、どこを 私の居場所にしたいか、「何人でありたいか」と聞かれるとしたら、バスク地方はも ちろん、スペインやヨーロッパももはや狭すぎて、ありふれたひびきのある言い方で あろうが、おそらく私の居場所が世界、地球であり、私が帰属したいコミュニティー は各国の狭い国境を超えた世界の市民のコミュニティーであると答えるしかないであ ろう。 ------------------------------- <アロツ=ラファエル アインゲル Aingeru Aroz-Rafael> 2005年Deusto大学文学部歴史学科卒業(ビルバオ、スペイン)。2008年マドリード自 治大学学部東アジア学科卒業。2008年同大学マドリード自治大学大学院哲学研究科比 較文学専攻修士課程修了。2003年ボローニャ大学留学(イタリア)。2007年上智大学 留学。2007年平和中島財団奨学生。2008年?2012年国費留学生。2013年渥美財団奨学 生。研究関心は近代日本哲学史、近代日本言語学史・国語学史・人文科学史、言語哲 学。現在、東京大学大学院学際情報学府博士後期課程。 ************************************************** ● SGRAカレンダー ○第14回日韓アジア未来フォーラム・第48回SGRAフォーラム 「ダイナミックなアジア経済—物流を中心に」(2015年2月7日東京) <ご参加いただきありがとうございました> http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/14_2.php ○第19回日比共有型成長セミナー(2015年2月10日マニラ) 「都会・地方の格差と持続可能共有型成長」 <ご参加いただきありがとうございました> http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/19.php ○第5回日台アジア未来フォーラム 「日本研究から見た日台交流120年」 (2015年5月8日台北)<ご予定ください> ○第4回SGRAワークショップin蓼科 (2015年7月3日〜5日蓼科) ○第49回SGRAフォーラム 「日本研究の新しいパラダイム」 (2015年7月18日東京)<ご予定ください> ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員 のエッセイを、毎週水曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読 いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。下記URLより自動登録していた だくこともできますし、事務局までご連絡いただいても結構です。 http://www.aisf.or.jp/sgra/entry/registration_form/ ● アドレス変更、配信解除をご希望の方は、お手数ですがSGRA事務局までご連絡く ださい。 ● エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務 局より著者へ転送いたします。 ● 皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ● SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただ けます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2014/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3−5−8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03−3943−7612 FAX:03−3943−1512 Email: [email protected] Homepage: http://www.aisf.or.jp/sgra/ **************************************************
  • [SGRA_Kawaraban] Xie Zhihai “The Problem of Japans Declining Population”

    ************************************************************* SGRAかわらばん554号(2015年2月4日) 【1】エッセイ:謝 志海「日本の人口減少問題」 【2】催事紹介:ランジャナ・ムコバディヤーヤ(2月10日京都)    講演「仏教と平和主義:日本仏教の挑戦」 【3】SGRAフォーラムへのお誘い(2月7日 東京)[再送]   「アジア経済のダイナミズム---物流を中心に」    〜当日参加も歓迎です〜 【4】日比共有型成長セミナーへのお誘い(2月10日マニラ)[再送]   「都会・地方の格差と持続可能共有型成長」 ************************************************************* 【1】SGRAエッセイ#447 ■ 謝 志海「日本の人口減少問題」 昨年末の日本経済新聞で、厚生労働省による2014年の人口動態統計の推計が発表され ていた。それによると、死亡数は、戦後最多の126万9千人、出生数は100万1千人で出 生数が死亡数を下回る人口の自然減は26万8千人で過去最大となった。2011年以降こ の自然減は毎年20万人を超えているという。出生数が増えないことには人口の自然減 は食い止められないということだ。今は元気な団塊の世代が減りはじめたら、日本は どうなってしまうのだろう。政府として何か策は練っているのか? 政府の中位人口推計では、このままだと2020年代初めには、60万人減、40年代は年に 100万人と減少速度が加速、2050年を前に総人口が1億人を割る見通しだそうだ。私の 母国である中国の人口13億人を思うと、国際社会において政治、経済のいずれの面か らも見ても大国である日本は人口が1億人を下回る国になるのは想像し難い。このま ま人口が減って行くと、日本の国力と国際発信力にも大きな影響を及ぼすのだろう。 日本政府はどうにか人口1億人を維持したいようだが、実現性は不透明という気がす る。内閣府に設置された、「選択する未来」委員会が2014年に中間報告として示した 「人口減少数の将来推計」によると、2030年に出生率2.07となれば、2060年以降も1 億人程度の人口を維持できるとの推計を示した。しかし2013年の出生率(合計特殊出 生率)は1.43人であり、1975年以来ずっと出生率2人を割っている。この現状を見る と、内閣府の将来推計は現実味に欠ける。 減りゆく人口に嘆いてもしょうがないので、始まったばかりの2015年が人口減少問題 の解決に大きく1歩踏み出す年になると良いなあと思う。幸い日本は民間企業が社会 問題に向き合い、福祉を考慮しながら従業員を守っているので、改善の余地はあるは ずだ。そして、日本が官民一体で立ち向かう人口減少問題は、今後追随するであろう アジア全体の高齢化の手本になるはずだと期待している。例えば、ソフトバンクは社 員に子どもが産まれる度に出産祝い金なるものを支給していて、第二子、第三子と増 えるにつれて、祝い金の額が上がる。たくさん産めばたくさんもらえる仕組みだ。ま た、大和ハウス工業では、子供1人の出生につき100万円を支給する制度(次世代育成 一時金)がある。このように、日本では政府の対策を待たずに、企業が知恵を絞り、 国の問題解決に積極的に関わる様はとても美しいし、大きな意味がある。 しかしながら、民間企業にばかり頼っていても、日本の人口減少は歯止めが利かない であろう。何しろ毎年20万人以上もの自然減が起きている国だ。地方自治体も自分の 街から人が減るのを食い止め、かつ積極的に呼び込むことに早急に対処した方がい い。地方創生に関しては、頑張っている自治体とそうでないところの差がとても大き い。東京から遠い市町村の方が、移住者の呼び込みや、地元の活性化が盛んで、実は 東京へのアクセスが良い市町村から若者がどんどん減っていたりする。切れ目の無い 地方創生が実現すれば、日本全体が活気づいて、人口減少によりさびれる街も減り、 人口の底上げにもつながるのではないだろうか?客観的な意見だが、日本は面積の狭 い国ではあるが、砂漠のような住めない場所というのはそれほど無いのだから、人口 減少と地方創生を一緒に解決出来るポテンシャルがあると思う。事実、日本のどんな に小さな町でも意外と外国人が住んでいたりするものなのだ。その辺りをヒントに住 みやすい日本で人口維持に向けて全国的に取組んだ方が良い。 --------------------------------------------------------- <謝 志海(しゃ しかい)Xie Zhihai> 共愛学園前橋国際大学専任講師。北京大学と早稲田大学のダブル・ディグリープログ ラムで2007年10月来日。2010年9月に早稲田大学大学院アジア太平洋研究科博士後期 課程単位取得退学、2011年7月に北京大学の博士号(国際関係論)取得。日本国際交 流基金研究フェロー、アジア開発銀行研究所リサーチ・アソシエイトを経て、2013年 4月より現職。ジャパンタイムズ、朝日新聞AJWフォーラムにも論説が掲載されてい る。 --------------------------------------------------------- 【2】イベント紹介 SGRA会員のランジャナ・ムコバディヤーヤさんから、講演会のお知らせをいただきま したのでご紹介します。 第286回日文研フォーラム ■ R.ムコバディヤーヤ「仏教と平和主義:日本仏教の挑戦」 仏教は平和主義を唱える宗教であると考えられています。しかし、日本をはじめ、ア ジア諸国における仏教の歴史を通観すれば、仏教徒の思想や行動が必ずしも平和主義 的であったとは言えません。仏教の平和思想とは、仏教者の時代認識及び社会観、そ してそれにもとづく仏典の解釈をあらわすものです。本講演では日本仏教の事例を取 り上げ、仏教と平和の問題について考えてみたいと思います。 開催日:平成27年2月10日(火) 時 間:14:00〜16:00 (開場 13:40) 会 場:ハートピア京都大会議室(3階)     http://heartpia-kyoto.jp/access/access.html 入場料:無料 定 員:先着 180名 申込み:不要 *詳細は、下記リンクをご覧ください http://events.nichibun.ac.jp/ja/archives/cal/2015/02/10/index.html 【3】SGRAフォーラムへのお誘い(再送)〜当日参加も歓迎です〜 ■「アジア経済のダイナミズム---物流を中心に」 下記の通り第14回日韓アジア未来フォーラム/第48回SGRAフォーラムを開催します。 参加ご希望の方は、事前にお名前・ご所属・緊急連絡先をSGRA事務局宛ご連絡くださ い。 日時:2015年2月7日(土)午後1時30分〜午後4時30分 会場:国立オリンピック記念青少年総合センター国際交流棟 国際会議室 http://nyc.niye.go.jp/category/access/ 申込み・問合せ:SGRA事務局 電話:03-3943-7612 Email:[email protected] <プログラム> 【基調講演】「アジア経済のダイナミズム」 榊原英資(さかきばら えいすけ:インド経済研究所理事長・青山学院大学教授) 【報 告 1】「北東アジアの多国間地域開発と物流協力」 安 秉民(アン・ビョンミン:韓国交通研究院北韓・東北亜交通研究室長) 【報 告 2】「GMS(グレーター・メコン・サブリージョン)における物流ネットワー クの現状と課題」 ド・マン・ホーン (桜美林大学経済・経営学系准教授) 【休  憩】  【自由討論】 進行及び総括:金雄煕(キム・ウンヒ、仁荷大学国際通商学部教授) 討論者:上記発表者、指定討論者(渥美財団SGRA及び未来人力研究院の関連研究 者)、一般参加者 ミニ報告:「アジア・ハイウェイの現状と課題について」   李鋼哲(リ・コウテツ、北陸大学未来創造学部教授) *詳細は、下記リンクをご覧ください。 ちらし http://www.aisf.or.jp/sgra/schedule/nikkan14chirashi.pdf プログラム http://www.aisf.or.jp/sgra/schedule/nikkan14programJ.pdf 【4】第19 回日比共有型成長セミナーへのお誘い(再送) ■「都会・地方の格差と持続可能共有型成長」 "The Urban-Rural Gap and Sustainable Shared Growth " 下記の通り第19回日比共有型成長セミナーをマニラ市で開催します。 参加ご希望の方は、事前にお名前・ご所属・緊急連絡先をSGRA事務局宛ご連絡くださ い。 日時:2015年2月10日(火)午前8時30分〜午後5時30分 会場: マニラ市フィリピン大学都市・地方計画研究科     http://surp.ph/ 言語:英語 申込み・問合せ:SGRAフィリピン Ms. Lenie M. Miro         Email:[email protected] *詳細は、下記リンクをご覧ください。 プログラム(英文) http://www.aisf.or.jp/sgra/info/ManilaSeminar19Program.pdf インフォグラフィック(英文) http://www.aisf.or.jp/sgra/info/ManilaSeminar19Infographic.pdf 申込用紙(英文) http://www.aisf.or.jp/sgra/info/ManilaSeminar19ApplicationForm.doc ポスター(英文) http://www.aisf.or.jp/sgra/info/ManilaSeminar19Poster.pdf ************************************************** ● SGRAカレンダー ○第14回日韓アジア未来フォーラム・第48回SGRAフォーラム 「ダイナミックなアジア経済—物流を中心に」 (2015年2月7日東京)<参加者募集中> http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/14_2.php ○第19回日比共有型成長セミナー 「都会・地方の格差と持続可能共有型成長」 (2015年2月10日マニラ)<参加者募集中> http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/19.php ○第5回日台アジア未来フォーラム 「日本研究から見た日台交流120年」 (2015年5月8日台北)<ご予定ください> ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員 のエッセイを、毎週水曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読 いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。下記URLより自動登録していた だくこともできますし、事務局までご連絡いただいても結構です。 http://www.aisf.or.jp/sgra/entry/registration_form/ ● アドレス変更、配信解除をご希望の方は、お手数ですがSGRA事務局までご連絡く ださい。 ● エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務 局より著者へ転送いたします。 ● 皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ● SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただ けます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2014/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3−5−8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03−3943−7612 FAX:03−3943−1512 Email: [email protected] Homepage: http://www.aisf.or.jp/sgra/ **************************************************
  • [SGRA_Kawaraban] Yeh Wenchang “Xenophobic Expulsion”

    ****************************************************** SGRAかわらばん553号(2015年1月28日) 【1】エッセイ:葉 文昌「遂客令」 【2】SGRAフォーラムへのお誘い(2月7日 東京)再送   「アジア経済のダイナミズム---物流を中心に」 【3】日比共有型成長セミナーへのお誘い(2月10日マニラ)   「都会・地方の格差と持続可能共有型成長」 ****************************************************** 【1】SGRAエッセイ#446 ■ 葉 文昌「遂客令」 歴史は繰り返すとよく言われます。なかにはスケール等を変えて繰り返されることも あります。グローバル化は、同質(なかま)の中に異質(よそ者)を取り込んで、より進 化して多様化された新たな同質を作る過程だと思いますが、それはつい最近始まった ものではなく、どの国でも内部で多くの邦に分れていた時期に幾度か経験しているは ずです。 これから紹介するのは、2250年前の中国で、秦がまだ中国を統一していなかった戦国 時代の出来事です。当時の中国は多くの国がひしめき合っていました。一部の国では 技術や政治戦略の専門家を外国から招へいしていました。ある人材が持つ技術が高度 であるほど、代替性はなくなり、一部の人材は国境を跨いで仕事していたことは想像 に難しくありません。 ある日、灌漑工事の技術指導で秦に招へいされていた韓国人の鄭氏が、秦の財政を疲 弊させるような工事をしている疑いをかけられました。それから秦の政界で「外国人 を追い出そう (逐客令)」という運動が始まりました。現代のネオナチ又はヘイトス ピーチのようなものでしょう。そこへ出てきたのが、李斯でした。彼も外国人で、こ のまま「外国人出て行け」運動が発展すれば自分も追い出されることになります。そ こで彼は「諌逐客書」という有名な諌言書を秦王に出しました。内容は今見てもとて も斬新なもので、これが2250年前に書かれたことには驚かされます。今回はこの書を 翻訳して皆さんに紹介することにします。 * * * * 「外国人を駆逐すると聞いておりますが、私が思うにそれは過ちであります。 その昔、秦の穆公(ぼくこう)は人材を得るために、西からは戎国の由余を求め、東か らは宛国から百里奚を求め、宋国から蹇叔(けんしゅく)を迎え、ヒ豹(ひひょう)や公 孫支を招き入れました。この5名は秦の出身ではないものの、穆公は重用し、それで 二十の国を併合し、西戎を支配しました。 また孝公は外国の商鞅(しょうおう)の法制を取り入れたことにより、社会気風と習わ しを変え、国民は栄え、国は豊かになり、民は自ら進んで国に仕え、諸侯は感服し、 楚と魏の兵を下して千里の領土を得て現在に至っております。 惠王は張儀の謀略を使って三川を攻略し、西に巴と蜀(しょく)を併合し、北に上郡を 収め、南に漢中を取りました。更に九夷(きゅうい)の地を併合し、焉(えん)、郢(い ん)を取り、東に成皋(せいこう)の要塞を占拠し、肥沃な土地を収め、六国連合を瓦 解させ、秦国に臣服させて利益は今日まで続いています。 秦昭王は范ショ(はんしょ)を得て、穣侯(じょうこう)を罷免して華陽君を駆逐し、中 央統治者の権力を増強させ、その他即得権益者や彊土を蚕食する諸侯を途絶させ、秦 の帝業を成就させました。 この4名の君主の成功は、外来人材の貢献に依る所が大きかったのです。従って外来 人材は秦に対して負い目はありません。もしこの4名の君主が外来人材を排除してい たならば、秦はここまで豊かな実益も強大な威名もなかったはずです。 今日陛下は昆山の玉石、隨侯(ずいこう)の明珠、卞和(べんか)の宝玉を得て、差すの は太阿(たいあ)の名剣、乗るのは繊離の駿馬、掲げるのは翠鳳(すいほう)の旗、使う のは鰐(わに)の太鼓です。これらの中で秦に産するものは一つもありませんが、なぜ に陛下はこれらを好むのでしょうか?秦のものしか使わないとするならば、夜光の玉 壁は朝廷には飾らず、犀角(さいかく)象牙の器は使わず、鄭や衛の美女は後宮にせ ず、駿馬は馬屋におかず、江南の金錫は使わず、西蜀の顔料は使わずとなりましょ う。 後宮の妾からすべての装飾や楽しませてくれるものは秦のものでないと駄目ならば、 宛珠(わんしゅ)の簪(かんざし)、傅キ(ふき)の耳飾り、阿縞(あこう)の衣、錦繍の飾 り等は陛下には献上できません。今風で雅、艶めかしく窈窕な趙の女も傍にはいない でしょう。甕缶を叩き、竹箏を弾き、太ももを敲いてリズムを取ってわいわい騒いで 楽しむ、それこそが秦の本来の音楽であります。鄭・衛・桑間や、韶虞(しょうぐ)・ 武象などは、異国の音楽です。甕缶叩きをやめて鄭衛の音楽にし、竹箏弾きをやめて 韶虞にしたのはなぜでしょう?それが面白いからです。 しかし陛下の任官はそうではなく、能力を問わず、実直かも問わず、秦出身でなけれ ば追い出す。これは即ち重んじる所は色気音楽珠玉、軽んじる所は人民になります。 これは海内を跨いで諸侯を制する術ではありません。 土地が広がれば育つ粟(あわ)は多くなり、国が大きければ人も多くなり、軍が強けれ ば兵士も勇ましくなると聞きます。太山はあらゆる土壌を受け入れたからこそ、いま ある大きさになり得ました。海はあらゆる細流を選ばないからこそ、その深さになり 得ました。王たるものは衆人を退けないからこそ、仁徳は広まります。土地は東南西 北を隔てない、人民は本国他国を区別しない、そうすれば一年四季は充実し、鬼神も 降臨して福をもたらすでしょう。これこそが五帝三王が無敵である所以であります。 今日陛下は庶民を棄てて敵国に資させ、賓客を駆逐して他国に尽くさせており、その 為天下の人材の秦への入国を憚らせております。これは糧食を強盗に与えて武器を敵 に貸し出すことと同じではないでしょうか。物は秦の産出ではないが宝となるものは 多いです。人材も秦の産出ではないが秦に忠心を尽くす者も多いです。外国人を駆逐 して敵国に資し、人口を減らして敵国の実力を増長し、この結果自国は弱体化される 上に外国人の恨みを買って敵国に尽くす人を増やす、これで国が危険にさらされない 訳がないでしょう。」 これを以って秦王は外国人駆逐命令を廃除し、李斯の官位を回復させました。 ----------------------------------------- <葉 文昌(よう・ぶんしょう) ☆ Yeh Wenchang> SGRA「環境とエネルギー」研究チーム研究員。2001年に東京工業大学を卒業後、台湾 へ帰国。2001年、国立雲林科技大学助理教授、2002年、台湾科技大学助理教授、副教 授。2010年4月より島根大学総合理工学研究科機械電気電子領域准教授。 ----------------------------------------- 【2】SGRAフォーラムへのお誘い(再送) ■「アジア経済のダイナミズム---物流を中心に」 下記の通り第14回日韓アジア未来フォーラム/第48回SGRAフォーラムを開催します。 参加ご希望の方は、事前にお名前・ご所属・緊急連絡先をSGRA事務局宛ご連絡くださ い。 日時:2015年2月7日(土)午後1時30分〜午後4時30分 会場:国立オリンピック記念青少年総合センター国際交流棟 国際会議室 http://nyc.niye.go.jp/category/access/ 申込み・問合せ:SGRA事務局 電話:03-3943-7612 Email:[email protected] <プログラム> 【基調講演】「アジア経済のダイナミズム」 榊原英資(さかきばら えいすけ:インド経済研究所理事長・青山学院大学教授) 【報 告 1】「北東アジアの多国間地域開発と物流協力」 安 秉民(アン・ビョンミン:韓国交通研究院北韓・東北亜交通研究室長) 【報 告 2】「GMS(グレーター・メコン・サブリージョン)における物流ネットワー クの現状と課題」 ド・マン・ホーン (桜美林大学経済・経営学系准教授) 【休  憩】  【自由討論】 進行及び総括:金雄煕(キム・ウンヒ、仁荷大学国際通商学部教授) 討論者:上記発表者、指定討論者(渥美財団SGRA及び未来人力研究院の関連研究 者)、一般参加者 ミニ報告:「アジア・ハイウェイの現状と課題について」   李鋼哲(リ・コウテツ、北陸大学未来創造学部教授) *詳細は、下記リンクをご覧ください。 ちらし http://www.aisf.or.jp/sgra/schedule/nikkan14chirashi.pdf プログラム http://www.aisf.or.jp/sgra/schedule/nikkan14programJ.pdf 【2】第19 回日比共有型成長セミナーへのお誘い ■「都会・地方の格差と持続可能共有型成長」 "The Urban-Rural Gap and Sustainable Shared Growth " 下記の通り第19回日比共有型成長セミナーをマニラ市で開催します。 参加ご希望の方は、事前にお名前・ご所属・緊急連絡先をSGRA事務局宛ご連絡くださ い。 日時:2015年2月10日(火)午前8時30分〜午後5時30分 会場: マニラ市フィリピン大学都市・地方計画研究科     http://surp.ph/ 言語:英語 申込み・問合せ:SGRAフィリピン Ms. Lenie M. Miro         Email:[email protected] ○セミナーの概要 フィリピンマニラ市で「持続可能な共有型成長」をテーマに開催される19回目のセミ ナー。本セミナーの基本的な狙いは、いわゆるKKK(効率、公平、環境)の調和ある 発展である。これはあらゆる学問、社会部門、そして国境を跨いで実施している活動 である。   今回はフィリピンの3つの大学が会場を提供してくれたが、準備の都合や企画委員会 での圧倒的な存在を占めることから、フィリピン大学で再度開催することが決定さし た。次回は、このセミナーをさらに広げるために、別の大学で開催する予定である。 今回のセッションで座長を務める先生たちは、昨年8月にバリ島で開催した第2回アジ ア未来会議に参加し、引き続きSGRAフィリピンの活動にご協力いただいている。 ○プログラム 本セミナーは6つのセッションに分かれているが、学祭的な交流を促すために、平行 セッションを意図的に避けられている。 第1セッション「開会の趣旨と問題提起」 座長:F. マキト(SGRAフィリピンの代表/テンプル大学) 第2セッション「持続可能農業について」 座長:J. トリビオ(フィリピン土地改革省) 第3セッション「農業と製造業に関して」 座長:J. ダナカイ(フィリピン アジア太平洋大学) 第4セッション「再生可能エネルギーに関して」 座長:G. サプアイ(フィリピン 廃棄物管理協会) 第5・6セッション「被災地における計画や設計の構想」 座長:S. ギッレス、M. トメルダン(フィリピン大学建築学部) 総合司会:A. ラセリス(フィリピン大学経営学部) *詳細は、下記リンクをご覧ください。 プログラム(英文) http://www.aisf.or.jp/sgra/info/ManilaSeminar19Program.pdf インフォグラフィック(英文) http://www.aisf.or.jp/sgra/info/ManilaSeminar19Infographic.pdf 申込用紙(英文) http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/19.php ポスター(英文) http://www.aisf.or.jp/sgra/info/ManilaSeminar19Poster.pdf ************************************************** ● SGRAカレンダー ○第14回日韓アジア未来フォーラム・第48回SGRAフォーラム 「ダイナミックなアジア経済—物流を中心に」 (2015年2月7日東京)<参加者募集中> http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/14_2.php ○第19回日比共有型成長セミナー 「都会・地方の格差と持続可能共有型成長」 (2015年2月10日マニラ)<参加者募集中> http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/19.php ○第5回日台アジア未来フォーラム 「日本研究から見た日台交流120年」 (2015年5月8日台北)<ご予定ください> ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員 のエッセイを、毎週水曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読 いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。下記URLより自動登録していた だくこともできますし、事務局までご連絡いただいても結構です。 http://www.aisf.or.jp/sgra/entry/registration_form/ ● アドレス変更、配信解除をご希望の方は、お手数ですがSGRA事務局までご連絡く ださい。 ● エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務 局より著者へ転送いたします。 ● 皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ● SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただ けます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2014/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3−5−8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03−3943−7612 FAX:03−3943−1512 Email: [email protected] Homepage: http://www.aisf.or.jp/sgra/ **************************************************
  • [SGRA_Kawaraban] SGRA Cafe #6 “Let us learn more about Islam” Report

    ************************************************** SGRAかわらばん552号(2015年1月21日) 【1】第8回SGRAカフェ報告   「アラブ・イスラムをもっと知ろう」 【2】SGRAフォーラムへのお誘い(2月7日 東京)   「アジア経済のダイナミズム---物流を中心に」 ************************************************** 【1】SGRA催事報告 ■ M. ジャクファル・イドルス「第6回SGRAカフェ報告」  『アラブ・イスラムをもっと知ろう:シリア、スーダンそしてイスラム国』 近年、イスラムを中心とした中東やアラブ世界で進行した「アラブの春」という民主 化運動をきっかけに、不安定な政治的社会的な状況が生み出されたのと同時に、イス ラムを名乗った暴力的な行為によって、イスラムに対する不当な偏見が強まり、拡大 している。その根底には、イスラム過激派の暴力的なニュースばかりが報道される一 方で、特に日本では、イスラム教やイスラム諸国に対する根本的な知識や情報や理解 をうながす「場」が乏しく、人々に多くの誤解を与えているという状況がある。 そのような背景の中で「アラブ・イスラムをもっと知ろう:シリア、スーダンそして イスラム国を中心として」というテーマの下で、メディアには現れないイスラム教や イスラム諸国の実情について学ぶことを目的に第6回SGRAカフェが開催された。 今回、シリア出身のダルウィッシュ・ホサム氏(Housam Darwisheh:アジア経済研究 所中東研究グループ研究員)と、スーダン出身のアブディン・モハメド・オマル氏 (Mohamed Omer Abdin:東京外国語大学特任助教)に講演をお願いした。両名とも SGRAの会員である。 ホサム氏は「変貌するシリア危機と翻弄される人々」というタイトルの講演を行っ た。2011年に中東地域で拡大してきた民主化要求運動をきっかけに、シリアは現在、 未曾有の危機に直面している。アサド体制と反体制派の多様なグループによる戦闘が 各地で続くなか、シリア北部で誕生した「イスラム国」が侵攻し、3年におよぶ戦闘 により、死者は20万人を超え、難民は400万人、国内避難民は1,100万人にのぼり、近 隣諸国はシリア難民の受け入れに対応できない状況にある。アメリカを中心とする有 志連合の干渉もあって、シリア危機はますます複雑な様相を呈し、日ごとに悪化する 状況から脱する道は見出せないままである。このようにシリア危機の経過と現状を紹 介した上で、壊滅的な内戦に陥った原因を、歴史的、宗教的、民族的、地政学的など 多様な側面から解説し、シリア及び近隣アラブ諸国における内戦の今後の厳しい見通 しについて語った。 アブディン氏は「なぜハルツームに春がこないか?:バシール政権の政治戦略分析を 通して」というタイトルで、異なるアプローチからスーダンにおける「アラブの春」 の影響について講演した。民主化を求めるアラブの春の運動は、長い間続いてきた独 裁体制を崩壊させる一方で、内戦を勃発させ、中央政権の弱体化など様々な結果をも たらした。国によって、この運動がなぜこのように個別の結果をもたらしたかは、近 年の国際政治学者の大きな関心事となっている。一方では、アラブの春の影響をほぼ 受けなかった地域も存在する。アブディン氏は、中東の周辺地域に位置するスーダン 共和国を事例に、現政権が、アラブの春の同国への波及を防止するためにどのような 戦略をとってきたかを、スーダンを取り巻く内部的、外部的情勢をもとに講演した。 特に印象的だったのは、「スーダンは過去に民主化とその挫折の経験を持っているた め、民主化に対する幻想を持っていない」との指摘だった。 2時間程の講演に続き、座談会と質疑応答が行われ、30人を超える参加者のなかから たくさんの質問があった。「イスラム国における法の思考とその正当性はどのような ものなのか?」「イスラム国の裁判はだれに対しての裁判であり、非イスラム教徒は どのように扱われるのか?」「イスラム国はいったい何を目指し、今後どのように展 開すると予測されるのか?」などイスラム国に対する質問が多く、関心の高さを感じ させられた。その他、「なぜ一般の人が巻き込まれるのか?」「どのような教えに基 づいてその行動が取られるのか?」などとイスラムの本質に迫る質問も多数あった。 限られた時間のなかで、これらの質問に対して問題を掘り下げた議論を展開すること はできなかったが、この3時間に亘った講演と座談会で共通認識として共有すること ができたのは「現代世界で起きているイスラム世界あるいはイスラムと関連する様々 な問題は単なる宗教的な問題ではなく、政治、経済、国際関係など様々な要素の絡み 合いの中から生じた複雑な問題」というものである。 今後とも、特に日本では、より正しく妥当な理解を得るために、SGRAカフェのような 客観的な情報発信の場が必要とされている。 当日の写真は下記リンクよりご覧ください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/photos/ ------------------------------------- <M. ジャクファル・イドルス  M. Jakfar Idrus> 2014年度渥美国際交流財団奨学生。インドネシア出身。ガジャマダ大学文学部日本語 学科卒業。国士舘大学大学院政治学研究科アジア地域研究専攻博士課程後期に在学 中。研究領域はインドネシアを中心にアジア地域の政治と文化。「国民国家形成にお ける博覧会とその役割-西欧、日本、およびインドネシアを中心として?」をテーマに 博士論文執筆中。 ------------------------------------- 【2】SGRAフォーラムへのお誘い(再送) ■「アジア経済のダイナミズム---物流を中心に」 下記の通り第14回日韓アジア未来フォーラム/第48回SGRAフォーラムを開催します。 参加ご希望の方は、事前にお名前・ご所属・緊急連絡先をSGRA事務局宛ご連絡くださ い。 日時:2015年2月7日(土)午後1時30分〜午後4時30分 会場:国立オリンピック記念青少年総合センター国際交流棟 国際会議室 http://nyc.niye.go.jp/category/access/ 申込み・問合せ:SGRA事務局 電話:03-3943-7612 Email:[email protected] <プログラム> 【基調講演】「アジア経済のダイナミズム」 榊原英資(さかきばら えいすけ:インド経済研究所理事長・青山学院大学教授) 【報 告 1】「北東アジアの多国間地域開発と物流協力」 安 秉民(アン・ビョンミン:韓国交通研究院北韓・東北亜交通研究室長) 【報 告 2】「GMS(グレーター・メコン・サブリージョン)における物流ネットワー クの現状と課題」 ド・マン・ホーン (桜美林大学経済・経営学系准教授) 【休  憩】  【自由討論】 進行及び総括:金雄煕(キム・ウンヒ、仁荷大学国際通商学部教授) 討論者:上記発表者、指定討論者(渥美財団SGRA及び未来人力研究院の関連研究 者)、一般参加者 ミニ報告:「アジア・ハイウェイの現状と課題について」   李鋼哲(リ・コウテツ、北陸大学未来創造学部教授) *詳細は、下記リンクをご覧ください。 ちらし http://www.aisf.or.jp/sgra/schedule/nikkan14chirashi.pdf プログラム http://www.aisf.or.jp/sgra/schedule/nikkan14programJ.pdf ************************************************** ● SGRAカレンダー ○第14回日韓アジア未来フォーラム・第48回SGRAフォーラム 「ダイナミックなアジア経済—物流を中心に」 (2015年2月7日東京)<参加者募集中> http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/14_2.php ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員 のエッセイを、毎週水曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読 いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。下記URLより自動登録していた だくこともできますし、事務局までご連絡いただいても結構です。 http://www.aisf.or.jp/sgra/entry/registration_form/ ● アドレス変更、配信解除をご希望の方は、お手数ですがSGRA事務局までご連絡く ださい。 ● エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務 局より著者へ転送いたします。 ● 皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ● SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただ けます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2014/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3−5−8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03−3943−7612 FAX:03−3943−1512 Email: [email protected] Homepage: http://www.aisf.or.jp/sgra/ **************************************************