SGRAメールマガジン バックナンバー
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DING Yi “Researchers in Today’s Society”
2024年6月6日 15:16:18
********************************************** SGRAかわらばん1019号(2024年6月6日) 【1】エッセイ:丁乙「現代社会における研究者のあり方」 【2】催事紹介:国際学術大会「東アジアの禅宗寺院と楊州檜巌寺址」(6月14日オンライン) 【3】第73回SGRAフォーラムへのお誘い(再送) 「パレスチナの壁:『わたし』との関係は?」(6月25日東京+オンライン) ********************************************** 【1】SGRAエッセイ#766 ◆丁乙「現代社会における研究者のあり方」 2022年11月から2023年8月まで東京大学東洋文化研究所にある東アジア藝文書院(EAA)という組織で特任研究員を務めた。数多くのイベントに参加し、自らもプロジェクトを立ち上げたことで、社会連携・研究・教育を総合する組織での学問の可能性に関して広く考える機会に恵まれた。 私が担当したのは「東洋美学の生成と進行」というシリーズ講演・討論で、計6回実施した。初回は小田部胤久先生(東京大学)、第2回は陳望衡先生(武漢大学)、第3回は王品先生(上海交通大学)、第4回はKevin_M._Smith先生(UCバークレー)、第5回は青木孝夫先生(広島大学)、第6回は塚本麿充先生(東京大学)。グローバルな視点から見ると、西洋に発端した美学という学問領域を参照して近代に作られた東洋美学は、未だ十分適切に位置付けられてきたとは言えない。そこで、EAAという場において、東洋美学と称されうる領域の射程やあり方について検討を試みた。本イベントを通して目指すのは、「東洋美学」をすでに定まった領域と見なしてそれに該当する最新の研究を紹介するのではなく、むしろ「生成中の領域」としてそれがいかなる形で進行しているのか、哲学・美学のほか、文学や芸術批評、美術史などの分野にも注目し探求することである。日本だけでなく、交流のあった中国やアメリカの研究者からも、それぞれの立場から東洋の美学に対する理解や視点を得ることは重要である。 このプロジェクトのほか、EAAでの活動を通じて、研究や学問のあるべき姿やその意義について考えさせられた。まず、研究のスピードについて。私が以前より慣れ親しんだ人文社会系という伝統的な学問分野や学的環境では、基本的に文献研究が行われており、その性質のゆえか研究成果の産出スピードは速くはなかったし、おそらく速くなりえないだろう。対照的に、EAAで目にしたのは新たな学問を開拓するために、必然的に量的にも範囲的にも膨大かつ多様な研究と向き合わねばならず、社会連携からの要求もあるため、素早く発信している姿であった。初めは自分がそのスピードに合わせることができるのか心配していたが、一定の蓄積を持つ研究者ならば、必ず物事に対する独自の視点があり、そこから何らかの感想やコメントを述べられることに気づいた。しかし、それは本当にその発表や研究に対する理解に基づく適切なものであるのか、という別の不信が生じてきた。着任当初の自己の能力への不安から、次第に、学問のあり方についての別の問いが生まれてきた。 また痛感したのは、いわゆる研究のパフォーマンス性である。学生の時に有名な研究者の講演を聴講しに行き、失望した経験が時々あった。著作と比べ、なぜ面白くなかったのかと考えていた。だが現在の自分は、もはや一つ二つの講演で研究者の研究を評価しない。同じ分野内の学者向けの発表と、分野外の学者向けのもの、さらに一般向けのものがあるからである。これらの発表に求められるものは必ずしも一致しておらず、互いに相反する部分も少なくない。人文系の研究の価値は広く発信していかなければ、一種の傲慢なエリート主義に陥りうる。しかしそればかり行えば、現在の社会ではあるいはそれだけで名声や地位を獲得することも考えられ、学者より数的に圧倒的な公衆に認められ、必要性があると判断されることに偏重してしまう、というアポリア(論理的難点)が存在するように感じ取れる。 この一年間、学問の可能性に興奮した瞬間は多かったが、他方で虚しさもしばしば感じた。そして、自分がいかなる研究者になりたいのか、また現実的になれるのか、という課題が頭に浮上してきた。これは今後、研究者として現代社会を生きていく上で重要な課題となるであろう。 <丁乙(てい・おつ)DING_Yi> 東京大学人文社会系研究科修士・博士課程、東京大学東洋文化研究所の特任研究員を経て、現日本学術振興会外国人特別研究員(京都大学)。カリフォルニア大学バークレー校やHerzog_August_Bibliothek_Wolfenbuttel(ドイツ)など客員研究員。研究分野は中国美学、比較美学。博士論文『『ラオコオン』論争からみる二〇世紀中国美学』は第14回東京大学南原繁記念出版賞を受賞し、2024年度中に東京大学出版会より刊行予定。 ---------------------------------------------------------------- 【2】催事紹介 SGRA会員で京都大学防災研究所研究員の金ミンスクさんから文化財に関するフォーラムの案内をいただきましたので紹介します。参加ご希望の方は直接お申込みください。 ◆国際学術大会「東アジアの禅宗寺院と楊州檜巌寺址」へのお誘い 平素より大変お世話になっており、心より感謝申し上げます。 この度、韓国の楊州檜巌寺址の文化遺産としての位置づけを検討するに当たり、文化交流史の視点から東アジアの禅宗寺院について日中韓の研究者が議論する場を設けました。 お忙しいことと存じますが、皆様のご参加を心よりお待ち申し上げております。 https://blog.naver.com/ggcp2018/223456145375 (遺跡写真あり) ○日時:2024年6月14日(金)13:30-18:00 ○主催:京畿道、楊州市 ○主管:建築文献考古スタジオ ○後援:韓国建築歴史学会、韓国中世考古学会 ○同時通訳付きでウェビナーで送信、発表資料集オンライン提供 ○参加申し込み: (日本語)https://form.naver.com/response/FGNLLfOE_zp0qVLtRhqA2w (中国語)https://form.naver.com/response/5EtpQatiwzzTp2FzwFGUeQ ○開催趣旨 楊州檜巌寺址は14世紀に東アジアで流行った禅宗における修行と生活のための規範である「清規」に基づいた空間構成を具体的に示す考古遺跡である。同寺は14世紀末に再興され、17世紀中葉には廃寺となった。しかし、建物址と高僧らの記念碑の配置を通して高麗時代の禅宗が朝鮮時代にも引き継がれていたことを確認することができ、約250年間にわたって禅宗文化の伝承と発展を窺うことができる。同遺跡は前記した価値が認められ、2022年7月に世界遺産の暫定リストに記載された。世界遺産登録のための推薦状作成においては、楊州檜巌寺址の遺跡としての価値を「文化交流」の側面から考察する必要がある。そこで、同時期(13~14世紀)における東アジアの禅宗寺院建築の様子とその後の変化を調べた上で、檜巌寺址の遺跡としての位置づけについて日中韓の研究者を招聘して議論する。 ---------------------------------------------------------------- 【3】第73回SGRAフォーラム「パレスチナの壁:『わたし』との関係は?」へのお誘い(再送) 下記の通り第73回SGRAフォーラムを昭和女子大学の会場及びオンラインのハイブリット方式開催いたします。参加をご希望の方は、会場、オンラインの参加方法に関わらず事前に参加登録をお願いします。 テーマ:「パレスチナの壁:『わたし』との関係は?」 日 時:2024年6月25日(火)17:30~19:00(終了後に懇親会*) 方 法:会場及びZoomウェビナー 会 場:昭和女子大学学園本部館3F中会議室 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/05/SGRAForum73Map.pdf アクセス https://office.swu.ac.jp/other/campusmap.html 言 語:日本語・英語(同時通訳**) 申 込:下記リンクからお申し込みください https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_UH6bfz9cTO6OsLWIzMi8Hw#/registration *フォーラム終了後、パレスチナ料理の懇親会にもぜひご参加ください!(参加費無料) **同時通訳はZoomで行うため、会場にて同時通訳を利用する方は、端末(スマートフォン、ノートパソコン等)およびイヤホンをご持参ください。 お問い合わせ:SGRA事務局([email protected]) ■ フォーラムの趣旨 パレスチナ問題は「複雑すぎる」と言われます。しかし、客観的な事実や人道的な観点から考えると、この問題はすべての人に関わっています。フォーラムでは専門家、パレスチナ出身者、パレスチナ支持の活動を行っている学生の声を取り上げ、なぜこの問題が全ての人にとって重要なのか、そしてその問題を取り上げようとするときに直面する壁について話し合います。 「壁」という言葉には複数の意味が込められています。一つは、パレスチナ問題について公然と話すことを阻む見えない壁であり、タブーと言論の自由への抑圧を象徴しています。もう一つは、パレスチナ領土での継続的なアパルトヘイト(人種隔離)と植民地化の結果として存在する物理的な分離の壁です。世界中での学生の抗議活動は、これらの見えない壁を取り壊す試みであり、パレスチナ問題に対する公開討論を促進する力となっています。これはパレスチナ問題に対する新たな視点を提供すると同時に、世代間の意識の違いとその変化を示唆しています。 フォーラムを通じて、参加者がパレスチナ問題に対する多面的な理解を深め、グローバルおよびローカル、マクロとミクロな視点からのアプローチを考察する機会になると期待しています。 ■プログラム 17:30開始 司会(シェッダーディ・アキル、慶応大学訪問講師) 挨拶(今西淳子、渥美財団SGRA代表) 17:35発表1 ハディ ハーニ(明治大学特任講師) 「パレスチナ問題の基礎知識:改めて、歴史と政治的構図の要点を抑える」(日本語) 18:05発表2 ウィアム・ヌマン(東京工業大学大学院生) 「建築の支配:植民地主義の武器としての建築環境」(英語) 18:20発表3 溝川貴己(早稲田大学学部生) 「立ち上がる学生、クィア、環境活動家たち:2023年10月以降の東京のパレスチナ解放運動」(日本語) 18:35質疑応答・ディスカッション(日本語・英語) モデレーター:徳永佳晃(日本学術振興会特別研究員PD 日本大学) オンラインQ&A担当:郭立夫(筑波大学助教) 19:00閉会・懇親会開始 【発表概要】 発表1「パレスチナ問題の基礎知識:改めて、歴史と政治的構図の要点を抑える」 (ハディ ハーニ、明治大学特任講師) 現在、世界中でパレスチナ人と連帯する運動が巻き起こっており、日本社会にも多くの参加者がいます。ただし「停戦」のみならず、その先に正義を実現するためには、構造的かつ本質的な変化へとつながる長期的な視野を持つことも重要です。そのために第一に重要なことは、シンパシーだけではなく、知識と論理に裏打ちされた正しさに則って行動することだと考えられます。このため今回のイベントでは、最新情勢や新事実の解説というよりは、パレスチナ問題の長く複雑な歴史や、現状の政治的構図を理解するうえで重要かつ基本的なポイントを解説し、全ての人が共有すべき基礎を確認することを目的としています。 発表2「建築の支配:植民地主義の武器としての建造環境」 (ウィアム・ヌマン、東京工業大学大学院生) 建築は政治を具現している。設計者の世界観を表すものであると同時に、政治的コントロールのための装置として使われることもある。このことは、ヨルダン川西岸やガザの植民地建築にはっきりと表れているが、東京や世界中のパレスチナ支持デモの場所として選ばれている公共空間にも、目に見えない形で表れている。本発表では、パレスチナ人に対する日常的な抑圧と統制に寄与している建築装置と、世界中の公共空間におけるそれに匹敵する、しかし控えめな建築的統制装置との類似性を描き出そうと試みる。 発表3「立ち上がる学生、クィア、環境活動家たち:2023年10月以降の東京のパレスチナ解放運動」 (溝川貴己、早稲田大学学部生) 2023年10月以降、在日パレスチナ人だけでなく、学生、クィアコミュニティ、環境活動家といった様々な人々のコミュニティが、即時停戦とパレスチナ解放を訴えて、デモやイベントを行っていた。ここでは、この人々がパレスチナ/イスラエルにどのように向き合い、この7か月間どのような試みを行ってきたか、東京での事例を紹介する。 ※プログラムの詳細は、下記リンクからご参照ください。 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/05/SGRAForum73Program.pdf ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方はSGRA事務局にご連絡ください。 https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ ********************************************* -
HARADA Ken “The 22nd Nikkan Asia Future Forum Report: Japan-Korea Relations on a Roller Coaster”
2024年5月30日 21:21:06
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第1部「日韓関係の復元、その一年の評価と課題」では、まず、西野純也・慶應義塾大学教授が政治・安保分野の成果として、尹大統領と岸田首相による両国が協力パートナーであることの再確認、指導者間の信頼関係の構築、政府間の対話・協議チャンネルの復元と新設、政治家同士のネットワーク活性化などを挙げ、課題として、協力パートナーとしての国民的理解やコンセンサスの醸成、それに資する制度的措置の実施として欧州連合(EU)の歴史経験、国内政治からの悪影響の管理・低減、相互の政策・戦略への理解などを挙げ、残りの任期3年に尹政権が国民の支持をどう得ることができるかが重要であると述べた。 次に李昌ミン(イ・チャンミン)韓国外国語大学教授が、日本が方針表明後4カ月という短期間で韓国を安全保障上問題がない国として輸出手続きを簡略化する「グループA(旧ホワイト国)」へ再指定したことは、これまでの日本の行政手続きではなかったことと評価。2023年を起点に日韓関係は新たなステージに入った。経済安保は「大きな政府の時代」の到来を意味するが、日韓ともに企業のモチベーションやインセンティブを考慮しないと政策的連帯が滞る可能性があり、総選挙後の韓国の「与小野大」の状況、日本のリーダーシップの状況、米大統領選でのトランプ氏の帰還の可能性などを総合的に考慮した協力のシナリオが必要と展望した。 最後に小針進・静岡県立大学教授が、この5年間の音楽動向をまとめた「オリコンランキング」で韓国のBTSが日本で一番売れたこと、日本の輸入化粧品第1位は韓国であり、日本の女性がファッションの参考にしている国も韓国が1位であると指摘した上で、社会・文化の全ての動向がこの1年間で「復元」した訳ではないが、政治・外交関係の「復元」が日韓間の人の往来を増幅し、人的交流や文化交流にプラスに作用したことは間違いないと評価。良好な関係維持に新しい日韓共同宣言は必要なのか、新しいビジョン(ジェンダー、少子高齢化、環境、災害、国際協力、対北朝鮮・・・)とは何か、そもそも宣言を発出できる政治環境なのかと問いかけた。 3人の発表に対して3人の討論者からのコメントがあった。金崇培(キム・スンべ)釜慶大学准教授は、西野教授の報告(関係修復に向けた動き、1年の成果、課題)に対してひとつひとつ丁寧に論評した。安倍誠・アジア経済研究所上席主任調査研究員は、李教授の「2023年に日韓関係が新たなステージに入る中で、新たに協力と競争の重層的関係を構築する空間が広がるだろうが、日韓協力のあり方を議論する際には政治状況を考慮する必要がある」という主張に同意し、補足的なコメントを行った。鄭美愛(ジョン・ミエ)ソウル大学日本研究所客員研究員は、小針教授の観点については全面的に共感するが、討論を引き受けた立場でと前置きした上、「宣言を発出できる政治環境」について質問した。 休憩の後の第2部「日韓協力の未来ビジョンと協力方向」ではパネル討論が行われた。国民大学の崔喜植(チェ・ヒシク)先生、ソウル大学の李政桓(イ・ジョンファン)先生、ソウル大学日本研究所の鄭知喜(チョン・チヒ)先生、東北アジア歴史財団の趙胤修(チョ・ユンス)先生、西野教授、小針教授、安倍研究員の7名が順次発言した。小針教授の「日韓それぞれが相手国をどう見ているのかという面で不安になった。今後、政権が変わったらどうなるのか?2019年当時、韓国に対する日本の見方は慰安婦、徴用工などを蒸し返す国という認識があった。一方、韓国側の持っている不安も理解できる。日本に対する不満もあると思う。不安と不満はあっても不信を招かないようにするにはどうするかが大事である。メディアには正確な報道をお願いしたい。糾弾する報道は『不信』を招く」とのコメントが印象的だった。 閉会にあたり、渥美国際交流財団の今西淳子常務理事が「今回のフォーラムは未来人力研究院だけでなく、韓国の現代日本学会、ソウル大学日本研究所との共同主催ということで、韓国で開催した日韓アジア未来フォーラムでは最大規模となった。渥美財団は日本の大学院で博士論文を執筆中の若手研究者を支援する奨学財団で、現代日本学会の金雄熙会長、ソウル大学日本研究所の南基正所長は1996年度に支援させていただいたご縁で、その後30年間途切れることなく交流を続けている。こういうことは滅多になく、本日は本当に奨学財団冥利に尽きると感じている」と感謝を述べた。 最後に日韓アジア未来フォーラム存続の立役者の金雄熙仁荷大学教授が「日韓関係は激しく上へ行ったり下へ行ったりジェットコースターのようだ。一定の動力があればジェットコースターは軌道から脱線しない。日韓関係にはその動力が働くだけに『山あり谷あり』を楽しめるようになりたい」と挨拶した。 フォーラム終了後、参加者はソウル大学の近くの学生街でサムギョプサルと「爆弾酒」を楽しんだ。 当日の写真 https://www.aisf.or.jp/sgra/plan/photo-gallery/2024/19386/ <原田健(はらだ・けん)HARADA Ken> 渥美国際交流財団事務局長。鹿島建設(株)、(一社)日本建設業連合会を経て、2023年より渥美財団で勤務。 ---------------------------------------------------------------- 【2】第73回SGRAフォーラム「パレスチナの壁:『わたし』との関係は?」へのお誘い(再送) 下記の通り第73回SGRAフォーラムを昭和女子大学の会場及びオンラインのハイブリット方式開催いたします。参加をご希望の方は、会場、オンラインの参加方法に関わらず事前に参加登録をお願いします。 テーマ:「パレスチナの壁:『わたし』との関係は?」 日 時:2024年6月25日(火)17:30~19:00(終了後に懇親会*) 方 法:会場及びZoomウェビナー 会 場:昭和女子大学学園本部館3F大会議室 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/05/SGRAForum73Map.pdf アクセス https://office.swu.ac.jp/other/campusmap.html 言 語:日本語・英語(同時通訳**) 申 込:下記リンクからお申し込みください https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_UH6bfz9cTO6OsLWIzMi8Hw#/registration *フォーラム終了後、パレスチナ料理の懇親会にもぜひご参加ください!(参加費無料) **同時通訳はZoomで行うため、会場にて同時通訳を利用する方は、端末(スマートフォン、ノートパソコン等)およびイヤホンをご持参ください。 お問い合わせ:SGRA事務局([email protected]) ■ フォーラムの趣旨 パレスチナ問題は「複雑すぎる」と言われます。しかし、客観的な事実や人道的な観点から考えると、この問題はすべての人に関わっています。フォーラムでは専門家、パレスチナ出身者、パレスチナ支持の活動を行っている学生の声を取り上げ、なぜこの問題が全ての人にとって重要なのか、そしてその問題を取り上げようとするときに直面する壁について話し合います。 「壁」という言葉には複数の意味が込められています。一つは、パレスチナ問題について公然と話すことを阻む見えない壁であり、タブーと言論の自由への抑圧を象徴しています。もう一つは、パレスチナ領土での継続的なアパルトヘイト(人種隔離)と植民地化の結果として存在する物理的な分離の壁です。世界中での学生の抗議活動は、これらの見えない壁を取り壊す試みであり、パレスチナ問題に対する公開討論を促進する力となっています。これはパレスチナ問題に対する新たな視点を提供すると同時に、世代間の意識の違いとその変化を示唆しています。 フォーラムを通じて、参加者がパレスチナ問題に対する多面的な理解を深め、グローバルおよびローカル、マクロとミクロな視点からのアプローチを考察する機会になると期待しています。 ■プログラム 17:30開始 司会(シェッダーディ・アキル、慶応大学訪問講師) 挨拶(今西淳子、渥美財団SGRA代表) 17:35発表1 ハディ ハーニ(明治大学特任講師) 「パレスチナ問題の基礎知識:改めて、歴史と政治的構図の要点を抑える」(日本語) 18:05発表2 ウィアム・ヌマン(東京工業大学大学院生) 「建築の支配:植民地主義の武器としての建築環境」(英語) 18:20発表3 溝川貴己(早稲田大学学部生) 「立ち上がる学生、クィア、環境活動家たち:2023年10月以降の東京のパレスチナ解放運動」(日本語) 18:35質疑応答・ディスカッション(日本語・英語) モデレーター:徳永佳晃(日本学術振興会特別研究員PD 日本大学) オンラインQ&A担当:郭立夫(筑波大学助教) 19:00閉会・懇親会開始 【発表概要】 発表1「パレスチナ問題の基礎知識:改めて、歴史と政治的構図の要点を抑える」 (ハディ ハーニ、明治大学特任講師) 現在、世界中でパレスチナ人と連帯する運動が巻き起こっており、日本社会にも多くの参加者がいます。ただし「停戦」のみならず、その先に正義を実現するためには、構造的かつ本質的な変化へとつながる長期的な視野を持つことも重要です。そのために第一に重要なことは、シンパシーだけではなく、知識と論理に裏打ちされた正しさに則って行動することだと考えられます。このため今回のイベントでは、最新情勢や新事実の解説というよりは、パレスチナ問題の長く複雑な歴史や、現状の政治的構図を理解するうえで重要かつ基本的なポイントを解説し、全ての人が共有すべき基礎を確認することを目的としています。 発表2「建築の支配:植民地主義の武器としての建造環境」 (ウィアム・ヌマン、東京工業大学大学院生) 建築は政治を具現している。設計者の世界観を表すものであると同時に、政治的コントロールのための装置として使われることもある。このことは、ヨルダン川西岸やガザの植民地建築にはっきりと表れているが、東京や世界中のパレスチナ支持デモの場所として選ばれている公共空間にも、目に見えない形で表れている。本発表では、パレスチナ人に対する日常的な抑圧と統制に寄与している建築装置と、世界中の公共空間におけるそれに匹敵する、しかし控えめな建築的統制装置との類似性を描き出そうと試みる。 発表3「立ち上がる学生、クィア、環境活動家たち:2023年10月以降の東京のパレスチナ解放運動」 (溝川貴己、早稲田大学学部生) 2023年10月以降、在日パレスチナ人だけでなく、学生、クィアコミュニティ、環境活動家といった様々な人々のコミュニティが、即時停戦とパレスチナ解放を訴えて、デモやイベントを行っていた。ここでは、この人々がパレスチナ/イスラエルにどのように向き合い、この7か月間どのような試みを行ってきたか、東京での事例を紹介する。 ※プログラムの詳細は、下記リンクからご参照ください。 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/05/SGRAForum73Program.pdf ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方はSGRA事務局にご連絡ください。 https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ ********************************************* -
Invitation to the 73rd SGRA Forum “The Palestinian Wall: What’s the Relationship with ‘Me’?”
2024年5月23日 15:34:20
********************************************** SGRAかわらばん1017号(2024年5月23日) ********************************************** ◆第73回SGRAフォーラム「パレスチナの壁:『わたし』との関係は?」へのお誘い 下記の通り第73回SGRAフォーラムを昭和女子大学の会場及びオンラインのハイブリット方式開催いたします。参加をご希望の方は、会場、オンラインの参加方法に関わらず事前に参加登録をお願いします。 テーマ:「パレスチナの壁:『わたし』との関係は?」 日 時:2024年6月25日(火)17:30~19:00(終了後に懇親会*) 方 法:会場及びZoomウェビナー 会 場:昭和女子大学学園本部館3F大会議室 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/05/SGRAForum73Map.pdf アクセス https://office.swu.ac.jp/other/campusmap.html 言 語:日本語・英語(同時通訳**) 申 込:下記リンクからお申し込みください https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_UH6bfz9cTO6OsLWIzMi8Hw#/registration *フォーラム終了後、パレスチナ料理の懇親会にもぜひご参加ください!(参加費無料) **同時通訳はZoomで行うため、会場にて同時通訳を利用する方は、端末(スマートフォン、ノートパソコン等)およびイヤホンをご持参ください。 お問い合わせ:SGRA事務局([email protected]) ■ フォーラムの趣旨 パレスチナ問題は「複雑すぎる」と言われます。しかし、客観的な事実や人道的な観点から考えると、この問題はすべての人に関わっています。フォーラムでは専門家、パレスチナ出身者、パレスチナ支持の活動を行っている学生の声を取り上げ、なぜこの問題が全ての人にとって重要なのか、そしてその問題を取り上げようとするときに直面する壁について話し合います。 「壁」という言葉には複数の意味が込められています。一つは、パレスチナ問題について公然と話すことを阻む見えない壁であり、タブーと言論の自由への抑圧を象徴しています。もう一つは、パレスチナ領土での継続的なアパルトヘイト(人種隔離)と植民地化の結果として存在する物理的な分離の壁です。世界中での学生の抗議活動は、これらの見えない壁を取り壊す試みであり、パレスチナ問題に対する公開討論を促進する力となっています。これはパレスチナ問題に対する新たな視点を提供すると同時に、世代間の意識の違いとその変化を示唆しています。 フォーラムを通じて、参加者がパレスチナ問題に対する多面的な理解を深め、グローバルおよびローカル、マクロとミクロな視点からのアプローチを考察する機会になると期待しています。 ■プログラム 17:30開始 司会(シェッダーディ・アキル、慶応大学訪問講師) 挨拶(今西淳子、渥美財団SGRA代表) 17:35発表1 ハディ ハーニ(明治大学特任講師) 「パレスチナ問題の基礎知識:改めて、歴史と政治的構図の要点を抑える」(日本語) 18:05発表2 ウィアム・ヌマン(東京工業大学大学院生) 「建築の支配:植民地主義の武器としての建築環境」(英語) 18:20発表3 溝川貴己(早稲田大学学部生) 「立ち上がる学生、クィア、環境活動家たち:2023年10月以降の東京のパレスチナ解放運動」(日本語) 18:35質疑応答・ディスカッション(日本語・英語) モデレーター:徳永佳晃(日本学術振興会特別研究員PD 日本大学) オンラインQ&A担当:郭立夫(筑波大学助教) 19:00閉会・懇親会開始 【発表概要】 発表1「パレスチナ問題の基礎知識:改めて、歴史と政治的構図の要点を抑える」 (ハディ ハーニ、明治大学特任講師) 現在、世界中でパレスチナ人と連帯する運動が巻き起こっており、日本社会にも多くの参加者がいます。ただし「停戦」のみならず、その先に正義を実現するためには、構造的かつ本質的な変化へとつながる長期的な視野を持つことも重要です。そのために第一に重要なことは、シンパシーだけではなく、知識と論理に裏打ちされた正しさに則って行動することだと考えられます。このため今回のイベントでは、最新情勢や新事実の解説というよりは、パレスチナ問題の長く複雑な歴史や、現状の政治的構図を理解するうえで重要かつ基本的なポイントを解説し、全ての人が共有すべき基礎を確認することを目的としています。 発表2「建築の支配:植民地主義の武器としての建造環境」 (ウィアム・ヌマン、東京工業大学大学院生) 建築は政治を具現している。設計者の世界観を表すものであると同時に、政治的コントロールのための装置として使われることもある。このことは、ヨルダン川西岸やガザの植民地建築にはっきりと表れているが、東京や世界中のパレスチナ支持デモの場所として選ばれている公共空間にも、目に見えない形で表れている。本発表では、パレスチナ人に対する日常的な抑圧と統制に寄与している建築装置と、世界中の公共空間におけるそれに匹敵する、しかし控えめな建築的統制装置との類似性を描き出そうと試みる。 発表3「立ち上がる学生、クィア、環境活動家たち:2023年10月以降の東京のパレスチナ解放運動」 (溝川貴己、早稲田大学学部生) 2023年10月以降、在日パレスチナ人だけでなく、学生、クィアコミュニティ、環境活動家といった様々な人々のコミュニティが、即時停戦とパレスチナ解放を訴えて、デモやイベントを行っていた。ここでは、この人々がパレスチナ/イスラエルにどのように向き合い、この7か月間どのような試みを行ってきたか、東京での事例を紹介する。 ※プログラムの詳細は、下記リンクからご参照ください。 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/05/SGRAForum73Program.pdf ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方はSGRA事務局にご連絡ください。 https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ ********************************************* -
TODAY! Invitation to the 22nd Japan-Korea Asia Future Forum “Japan-Korea Relations on a Roller Coaster: What is Normal and What is a Mirage?”
2024年5月18日 05:28:50
********************************************** SGRAかわらばん特別号(2024年5月18日) ********************************************** ※本日午後2時です! Zoomリンクが変更になりましたのでご注意ください。 ◆第22回日韓アジア未来フォーラム「ジェットコースターの日韓関係-何が正常で何が蜃気楼なのか」へのお誘い 下記の通り第22回日韓アジア未来フォーラムをソウル大学国際大学院会議室とZoomのハイブリッド形式で開催しますので奮ってご参加ください。 テーマ:「ジェットコースターの日韓関係-何が正常で何が蜃気楼なのか」 日 時:2024年5月18日(土)14:00~17:40 共同主催:(財)未来人力研究院(韓国)、ソウル大学日本研究所、(社)韓国現代日本学会、(公財)渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA) 方 法:ソウル大学国際大学院140-2棟4階国際会議室およびZoom 言 語:日本語・韓国語(同時通訳) 参加費:無料 お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) 参加方法: ◇会場参加ご希望の方は、直接会場へお越しください。 ◇オンライン参加ご希望の方は、下記リンクより聴講していただけます。 -ZOOMリンク: https://snu-ac-kr.zoom.us/j/89129031030 -ZOOM_ID: 89129031030 ※以前掲載していたものとZoom ID、リンクが変更になりましたのでご注意ください。 ◆フォーラムの趣旨 21世紀の新しい日韓パートナーシップ共同宣言後、雪解け期を迎えた日韓関係は、その後浮き沈みを繰り返しながら最悪の日韓関係と言われる「失われた10年」を経験した。徴用工問題に対する第三者支援解決法を契機に、2023年の7回にわたる首脳会談を経て日韓関係は一挙に正常化軌道に乗った。一体、日韓関係において何が正常で、何が蜃気楼なのか?徴用工問題解決の1年後の成果と課題、そして日韓協力の望ましい方向について考える。日韓同時通訳付き。 ◆プログラム 《開会》午後2時 司会:嚴泰奉(オム・テボン:現代日本学会総務理事) 【開会の辞】 李鎮奎(イ・ジンギュ:未来人力研究院理事長) 南基正(ナム・キジョン:ソウル大学日本研究所長) ◇第1部 報告と指定討論:日韓関係の復元、その一年の評価と課題100分 司会:李元徳(イ・ウォンドク:国民大学教授) 【報告1】西野純也(にしの・じゅんや:慶応大学教授) 「日韓関係の復元、その一年の評価と課題:政治安保」15分 【報告2】李昌ミン(イ・チャンミン:韓国外国語大学教授) 「日韓関係の復元、その一年の評価と課題:経済通商」15分 【報告3】小針進(こはり・すすむ:静岡県立大学教授) 「日韓関係の復元、その一年の評価と課題:社会文化」15分 【討論1】金崇培(キム・スンベ:釜慶大学日語日文学部准教授)7分 【討論2】安部誠(あべ・まこと:アジア経済研究所上席主任調査研究員)7分 【討論3】鄭美愛(ジョン・ミエ:ソウル大学日本研究所客員研究員)7分 ◇第2部 パネル討論:日韓協力の未来ビジョンと協力方向80分 司会:南基正(ナム・キジョン:ソウル大学日本研究所長) 【パネリスト】 西野純也(にしの・じゅんや:慶応大学) 小針進(こはり・すすむ:静岡県立大学) 安部誠(あべ・まこと:アジア経済研究所) 崔喜植(チェ・ヒシク:国民大学) 李政桓(イ・ジョンファン:ソウル大学) 鄭知喜(チョン・チヒ:ソウル大学日本研究所)A 趙胤修(チョ・ユンス:東北アジア歴史財団) 【閉会の辞】 今西淳子(いまにし・じゅんこ:渥美国際交流財団常務理事・SGRA代表) 金雄煕(キム・ウンヒ:韓国現代日本学会長) 《閉会》午後5時40分 プログラム(日本語) https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/04/J_JKAFF22_Program.pdf ポスター(日本語) https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/04/Poster_20240412_J1-scaled.jpg ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方はSGRA事務局にご連絡ください。 https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ ********************************************* -
LEE Chung-sun “Time Flows Gracefully in World Heritage Sites”
2024年5月16日 21:37:26
********************************************** SGRAかわらばん1016号(2024年5月16日) 【1】エッセイ:李貞善「世界遺産の時間は悠々と流れる」 【2】第22回日韓アジア未来フォーラムへのお誘い(最終案内) 「ジェットコースターの日韓関係-何が正常で何が蜃気楼なのか」 ********************************************** 【1】SGRAエッセイ#765 ◆李貞善「世界遺産の時間は悠々と流れる」 「皆さん、この中で世界遺産はどれでしょう。当ててみてください。」 2024年4月13日(土)、世界遺産検定マイスターを対象にした公式認定研修に参加した。日本のNPO法人世界遺産アカデミーが主催する検定試験である。 東京大学大学院の研究生として入学試験の準備をしていた2015年夏、研究と関連があると思い、真剣な気持ち半分、好奇心半分で世界遺産検定2級と3級資格を取得したのが発端であった。2017年には1級に合格。その勢いで、翌年は博士課程に進学するとともにマイスター試験にも挑戦した。それまで習得した理論的知識を土台に、世界遺産に関する時事的なニュースや最新の争点を中心に確認していく構成にした。大学院入試以降の久しぶりに受けた2時間の論文試験で、準備不足であった私は少し心配したが、幸いに合格できた。 研修を受けたのは、2019年以来博士論文執筆に取り組み始めたことに加え、2020年からの長いコロナ禍による中断があったからである。世界中の人々が類のない危機で苦しんでいる中、世界遺産へのアクセス自体が困難な時期もあった。文化遺産も、自然遺産も、複合遺産も人間とほとんど接触できない「アンタクト」(韓国の造語=UN+CONTACT)の時間を過ごした。立ち止まっているように感じられたあの4年間は、実は自然に順応しながらも危機と真正面から向き合う時間であった。 研修プログラムの内容は、プレゼンテーションスキルについての講義とグループワークだった。最初に講師がプレゼン方法や話すスキル、分かりやすく説明する方法などの講義を行った。その後、グループに分かれてプレゼン練習を繰り返した。4人が1つのグループになり、自己紹介の後、リーダーを選ぶように言われた。私のグループは男性3人と女性の私。リーダーを希望する者はなく、じゃんけんで勝った人がリーダーになることにした。今までじゃんけんで勝ったことはないので安心していたが、なぜかその日は優勝を勝ち取ったのは私で、リーダーになってしまった。 各グループは世界遺産検定の3級ガイダンスを聞いた後、講義の練習をした。秘密の封筒が配布され、中には世界遺産に関する知識のテーマが入っていた。3分程度でプレゼンができる分量のスライドも同封されていた。最後に各グループの代表が前に出て、3分にまとめた模擬講義を担当した。メンバー全員の指名により私が発表をすることになった。その後、講師によるフィードバックと意見交換が行われた。最後に参加者たちに公式認定証が交付され、ひとりずつ写真撮影して認定研修は終了した。これを以て、私は外国人としては初めての日本の世界遺産検定マイスターとともに認定講師になった。 研修を受けながら、これまで身につけてきた世界遺産に関する想念が頭をよぎった。それまでしばらくの間立ち止まっていたような私の世界遺産の時間が、この研修を機に再び流れ始めた。世界遺産とは、人類にとって「顕著な普遍的価値」を有する文化遺産や自然遺産、複合遺産などの不動産であり、1972年に成立した世界遺産条約に基づいて世界遺産リストに登録された物件である。「ル・コルビュジエの建築作品―近代建築運動への顕著な貢献―」の構成資産として世界遺産として登録されている上野の国立西洋美術館のように、国境を超える「トランスバウンダリー・サイト」も少なくない。世界遺産は、登録前もその後も、国や自治体レベルの持続的な管理と保全、また必要に応じて適切な修復を要する。時間の経過による劣化や破壊などの変化への対応、つまり「時間とどう向き合っていくのか」が肝心なのである。 世界遺産公式講師になった私は、4月付けで東京大学大学院人文社会系研究科附属次世代人文学開発センターに特任助教として赴任した。9年前から私の日本留学生活を共にしてきた世界遺産は、研究者として成長させるとともにコロナ禍を乗り越えるためのレジリエンスを鍛えてくれた。ウィズコロナ禍であろうが、ポストコロナ禍であろうが、平和の時代であろうが、戦争中であろうが、どのご時世であっても変化へ対応していく世界遺産のように、自然に順応しながらも危機と真正面から向き合うことが重要であろう。これからも世界遺産と関わりながら研究を続けていきたい。世界遺産の時間も、私の時間も、そしてこの世の時間も悠々と流れている。 世界遺産アカデミーのインタビュー記事 https://www.sekaken.jp/about/recognition/interview106/ <李貞善(イ・ジョンソン)LEE Chung-sun> 東京大学大学院人文社会系研究科附属次世代人文学開発センターの特任助教。2021年度渥美奨学生として2023年2月に東京大学で博士号取得。高麗大学卒業後、韓国電力公社在職中に労使協力増進優秀社員の社長賞1等級を受賞。2015年来日以来、2022年国際軍史事学会・新進研究者賞等、様々な研究賞受賞。大韓民国国防部・軍史編纂研究所が発刊する『軍史』を始め、国連教育科学文化機関(ユネスコ)関連の国際学術会議で研究成果を発表。2018年日本の世界遺産検定で最高レベルであるマイスター取得後、公式講師としても活動。 ---------------------------------------------------------------- 【2】第22回日韓アジア未来フォーラムへのお誘い(最終案内) 下記の通り第22回日韓アジア未来フォーラムをソウル大学国際大学院会議室とZoomのハイブリッド形式で開催しますので奮ってご参加ください。 テーマ:「ジェットコースターの日韓関係-何が正常で何が蜃気楼なのか」 日 時:2024年5月18日(土)14:00~17:40 共同主催:(財)未来人力研究院(韓国)、ソウル大学日本研究所、(社)韓国現代日本学会、(公財)渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA) 方 法:ソウル大学国際大学院140-2棟4階国際会議室およびZoom 言 語:日本語・韓国語(同時通訳) 参加費:無料 お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) 参加方法: ◇会場参加ご希望の方は、直接会場へお越しください。 ◇オンライン参加ご希望の方は、下記リンクより聴講していただけます。 -ZOOM_ID:583_289_8745 -ZOOMリンク:https://snu-ac-kr.zoom.us/j/5832898745 ◆フォーラムの趣旨 21世紀の新しい日韓パートナーシップ共同宣言後、雪解け期を迎えた日韓関係は、その後浮き沈みを繰り返しながら最悪の日韓関係と言われる「失われた10年」を経験した。徴用工問題に対する第三者支援解決法を契機に、2023年の7回にわたる首脳会談を経て日韓関係は一挙に正常化軌道に乗った。一体、日韓関係において何が正常で、何が蜃気楼なのか?徴用工問題解決の1年後の成果と課題、そして日韓協力の望ましい方向について考える。日韓同時通訳付き。 ◆プログラム 《開会》午後2時 司会:嚴泰奉(オム・テボン:現代日本学会総務理事) 【開会の辞】 李鎮奎(イ・ジンギュ:未来人力研究院理事長) 南基正(ナム・キジョン:ソウル大学日本研究所長) ◇第1部 報告と指定討論:日韓関係の復元、その一年の評価と課題100分 司会:李元徳(イ・ウォンドク:国民大学教授) 【報告1】西野純也(にしの・じゅんや:慶応大学教授) 「日韓関係の復元、その一年の評価と課題:政治安保」15分 【報告2】李昌ミン(イ・チャンミン:韓国外国語大学教授) 「日韓関係の復元、その一年の評価と課題:経済通商」15分 【報告3】小針進(こはり・すすむ:静岡県立大学教授) 「日韓関係の復元、その一年の評価と課題:社会文化」15分 【討論1】金崇培(キム・スンベ:釜慶大学日語日文学部准教授)7分 【討論2】安部誠(あべ・まこと:アジア経済研究所上席主任調査研究員)7分 【討論3】鄭美愛(ジョン・ミエ:ソウル大学日本研究所客員研究員)7分 ◇第2部 パネル討論:日韓協力の未来ビジョンと協力方向80分 司会:南基正(ナム・キジョン:ソウル大学日本研究所長) 【パネリスト】 西野純也(にしの・じゅんや:慶応大学) 小針進(こはり・すすむ:静岡県立大学) 安部誠(あべ・まこと:アジア経済研究所) 崔喜植(チェ・ヒシク:国民大学) 李政桓(イ・ジョンファン:ソウル大学) 鄭知喜(チョン・チヒ:ソウル大学日本研究所)A 趙胤修(チョ・ユンス:東北アジア歴史財団) 【閉会の辞】 今西淳子(いまにし・じゅんこ:渥美国際交流財団常務理事・SGRA代表) 金雄煕(キム・ウンヒ:韓国現代日本学会長) 《閉会》午後5時40分 プログラム(日本語) https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/04/J_JKAFF22_Program.pdf ポスター(日本語) https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/04/Poster_20240412_J1-scaled.jpg ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方はSGRA事務局にご連絡ください。 https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ ********************************************* -
Mohammed Aqil CHEDDADI “The Right of Suffrage for Foreign Residents in Japan”
2024年5月9日 14:05:31
********************************************** SGRAかわらばん1015号(2024年5月9日) 【1】モハッメド アキル シェッダーディ「外国人住民の参政権について」 【2】第22回日韓アジア未来フォーラムへのお誘い(再送) 「ジェットコースターの日韓関係-何が正常で何が蜃気楼なのか」 ********************************************** 【1】SGRAエッセイ#764 ◆モハッメド アキル シェッダーディ「外国人住民の参政権について」 7年以上日本に住んでいる外国人として、私はこの国でいつも歓迎され、尊重されてきました。大学院で研究するために来日、その後大学で講師として働くようになりました。大人の人生の半分以上を日本で過ごし、日本国民と同じように税金や年金保険料、健康保険料を支払い、さまざまな形で社会に貢献しています。日本とその文化が大好きで、日本を第二の故郷と考えています。 しかし、一つだけ気になることがあります。それは、どの選挙にも投票する権利がないことです。自分の生活や地域に影響を与える政策や決定について、何の発言権も持っていないということです。コロナ禍で日本が半年間、外国人居住者を含めて国境を閉鎖したとき、外国人は政策決定において考慮されなかったと実感しました。日本国民と同じ程度に社会に貢献しているにもかかわらず、まだ二等市民と見なされているのだと感じました。投票権がないということは、自分のような外国人居住者にとって重要な問題を解決することができないし、私の利益を代表する指導者を選ぶことができないということです。 これは不公平であり、民主的ではないと思います。外国人住民は単なる訪問者や客ではありません、永続的または長期的にここに住む社会の一員です。外国人住民は権利と責任を持ち、コミュニティーにおいても代表となり、未来を形づくる政治プロセスに参加することができるべきです。 この意見は私だけのものではありません。多くの外国人住民が同じように投票権を求めています。多くの日本国民もこの考えを支持しており、多様性と包摂のメリットを認識しています。一部の地方自治体は外国人住民に地方選挙や住民投票での投票権を与えようと試みましたが、法的・政治的な障害に直面しました。現在、地方住民投票で一部の投票権を認めている自治体は1,718市町村(東京都区部を除く)のうち42しかありません。 例えば、東京の武蔵野市は2021年、外国人住民に地方選での投票権を認める条例案を提案しました。しかし、市議会は、「外国人に国家安全保障問題に関する発言権を与えると、日本の主権を損なう恐れがある」と主張する一部の保守派の反対により、この提案を否決しました。日本は労働力不足に対処するために今後ますます外国人労働者が必要な状況であるのに、このような反対は「同質的な国家」のイメージを強め、社会の多様性と活性化の議論をすること自体を抑圧してしまいます。 先日、統一地方選挙の運動期間中に、郵便箱に「外国人参政権に反対」ということを中心的なスローガンとして掲げた候補者の選挙チラシが届きました。候補者は、「外国人住民に投票権を与えることは、国益に反する可能性」があり、「日本の安全が危ぶまれる」と主張していました。しかし、この主張は根拠のない誤りです。まず、地方選挙や住民投票は、国家安全保障や外交政策ではなく、教育、医療、環境、交通、公共サービスなどの地域の問題に関するものです。これらは、国籍に関係なく、その地域に住むすべての人に影響する問題です。 外国人住民に地方選挙での投票権を認めることは、彼らに市民権や二重国籍を与えることを意味しません。外国人住民は引き続き日本の法律に従い、日本の価値観を尊重しなければなりません。彼らが元の国籍やアイデンティティーを失うことではありません。単に所属感や参加感という新しい次元を得るだけです。 また、外国人参政権を認めることは、日本国民よりも不公平な優位性や特権を与えることを意味しません。外国人住民は引き続き一定の基準や条件を満たさなければなりません。有効な在留資格を持ち、一定期間地域に居住し、有権者として登録すると、日本人有権者と同じ規則や手続きに従わなければなりません。 したがって、外国人住民に地方選挙での投票権を与えることは可能であり、望ましいことです。それは日本の民主主義と多様性を高めるとともに、社会的な結束と統合を促進し、相互理解と尊重を育み、市民的な参加と責任を奨励し、すべての人々の生活の質を向上させるでしょう。日本は今のところ外国人住民に参政権を与えず、二重国籍も認めない数少ない先進国ですが、外国人住民の地方政治への参加の価値を認めた他の国々のように、状況を変えるべき時が来ていると思います。 日本を愛し、その発展に貢献したいと思う外国人住民として、いつか自分の票を投じて自分の声を届けたいと願っています。この社会の真の一員として自分の投票権を行使できるようになることを望んでいます。 <モハッメド アキル シェッダーディ Mohammed Aqil CHEDDADI> モロッコ出身。モロッコ国立建築学校卒業。慶應義塾大学政策・メディア研究科環境デザイン・ガバナンス専攻修士号取得・博士課程在学中。同大学総合政策学部訪問講師。2022年渥美奨学生。 ---------------------------------------------------------------- 【2】第22回日韓アジア未来フォーラムへのお誘い(再送) 下記の通り第22回日韓アジア未来フォーラムをソウル大学国際大学院会議室とZoomのハイブリッド形式で開催しますので奮ってご参加ください。 テーマ:「ジェットコースターの日韓関係-何が正常で何が蜃気楼なのか」 日 時:2024年5月18日(土)14:00~17:40 共同主催:(財)未来人力研究院(韓国)、ソウル大学日本研究所、(社)韓国現代日本学会、(公財)渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA) 方 法:ソウル大学国際大学院140-2棟4階国際会議室およびZoom 言 語:日本語・韓国語(同時通訳) 参加費:無料 お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) 参加方法: ◇会場参加ご希望の方は、直接会場へお越しください。 ◇オンライン参加ご希望の方は、下記リンクより聴講していただけます。 -ZOOM_ID:583_289_8745 -ZOOMリンク:https://snu-ac-kr.zoom.us/j/5832898745 ◆フォーラムの趣旨 21世紀の新しい日韓パートナーシップ共同宣言後、雪解け期を迎えた日韓関係は、その後浮き沈みを繰り返しながら最悪の日韓関係と言われる「失われた10年」を経験した。徴用工問題に対する第三者支援解決法を契機に、2023年の7回にわたる首脳会談を経て日韓関係は一挙に正常化軌道に乗った。一体、日韓関係において何が正常で、何が蜃気楼なのか?徴用工問題解決の1年後の成果と課題、そして日韓協力の望ましい方向について考える。日韓同時通訳付き。 ◆プログラム 《開会》午後2時 司会:嚴泰奉(オム・テボン:現代日本学会総務理事) 【開会の辞】 李鎮奎(イ・ジンギュ:未来人力研究院理事長) 南基正(ナム・キジョン:ソウル大学日本研究所長) ◇第1部 報告と指定討論:日韓関係の復元、その一年の評価と課題100分 司会:李元徳(イ・ウォンドク:国民大学教授) 【報告1】西野純也(にしの・じゅんや:慶応大学教授) 「日韓関係の復元、その一年の評価と課題:政治安保」15分 【報告2】李昌ミン(イ・チャンミン:韓国外国語大学教授) 「日韓関係の復元、その一年の評価と課題:経済通商」15分 【報告3】小針進(こはり・すすむ:静岡県立大学教授) 「日韓関係の復元、その一年の評価と課題:社会文化」15分 【討論1】金崇培(キム・スンベ:釜慶大学日語日文学部准教授)7分 【討論2】安部誠(あべ・まこと:アジア経済研究所上席主任調査研究員)7分 【討論3】鄭美愛(ジョン・ミエ:ソウル大学日本研究所客員研究員)7分 ◇第2部 パネル討論:日韓協力の未来ビジョンと協力方向80分 司会:南基正(ナム・キジョン:ソウル大学日本研究所長) 【パネリスト】 西野純也(にしの・じゅんや:慶応大学) 小針進(こはり・すすむ:静岡県立大学) 安部誠(あべ・まこと:アジア経済研究所) 崔喜植(チェ・ヒシク:国民大学) 李政桓(イ・ジョンファン:ソウル大学) 鄭知喜(チョン・チヒ:ソウル大学日本研究所)A 趙胤修(チョ・ユンス:東北アジア歴史財団) 【閉会の辞】 今西淳子(いまにし・じゅんこ:渥美国際交流財団常務理事・SGRA代表) 金雄煕(キム・ウンヒ:韓国現代日本学会長) 《閉会》午後5時40分 プログラム(日本語) https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/04/J_JKAFF22_Program.pdf ポスター(日本語) https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/04/Poster_20240412_J1-scaled.jpg ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方はSGRA事務局にご連絡ください。 https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ ********************************************* -
XIE Zhihai “Considering the History of International Relations in East Asia in Busan”
2024年5月2日 12:27:10
********************************************** SGRAかわらばん1014号(2024年5月2日) 【1】謝志海「釜山で東アジアの国際関係の歴史を考える」 【2】寄贈本紹介:ボルジギン・フスレ『日本人のモンゴル抑留の新研究』 【3】第22回日韓アジア未来フォーラムへのお誘い(再送) 「ジェットコースターの日韓関係-何が正常で何が蜃気楼なのか」 ********************************************** 【1】SGRAエッセイ#763 ◆謝志海「釜山で東アジアの国際関係の歴史を考える」 春休みに同僚の先生方と韓国・釜山へフィールド調査に行った。専門分野が違う5人がそれぞれの視点から釜山の町を観察して歩いたが、私にとっては自分の専門である国際関係の歴史について深く考える機会となった。 調査に行く前に、「国際市場で逢いましょう」という映画を観た。ほぼ実話に基づいた内容だという。朝鮮戦争で父親と妹と別れた主人公が、長男として母親を支え、兄弟の面倒を見ながら別れた家族を探し続ける話だった。おじいさんになっても、頑固に釜山の国際市場にある古い店を守り続けたのは、父親と別れた際にその店で再会しようと約束したからだ。 この家族に限らず、朝鮮戦争で離散を余儀なくされた人々は国際市場にある「40階段」というところで待ち合わせることを約束したという。今回はその映画の舞台となった釜山の国際市場を訪れ、実際その階段にも登ってみた。階段には家族を座って待つ銅像があった。 戦争によって家族が引き離されてしまうことが、歴史ではなく、現在も起きていることは非常に残念だ。先日テレビ番組で見たある家族の今を思い出す。ウクライナ人の女の子はロシアの侵攻の後、母親と一緒に来日し、日本の高校に通い、都内の大学に合格した。父親は祖国に残り戦争支援のために働いている。戦争により、家族にとっての日常が一瞬にして非日常的になるのは昔も今も同じだ。 釜山にある国連墓地も訪問した。朝鮮戦争に参戦した米軍をはじめとする国連軍の犠牲者を慰霊する場所だ。現地のパンフレットには、朝鮮半島の平和と自由を守るために戦ったと書いてあるが、中国と北朝鮮側から見たら、自分たちのほうが正義だと考えるだろう。実際、北朝鮮には中国志願軍の墓地もあり、昨年7月には朝鮮戦争休戦70周年を記念するため、金正恩総書記が訪問した。ロシアと中国の代表団も記念行事に参加。戦争の記憶は第二次世界大戦だけでなく、その後の朝鮮戦争をめぐっても参戦国の認識がかなり違うことを実感した。 近現代史博物館には日本植民地支配時代の韓国の歴史が紹介されていた。釜山は最初に支配された都市だった。中でも釜山の鉄道はなかなか興味深く、1900年代、日本の実業家で新一万円札の「顔」にもなる渋沢栄一らがソウルから釜山までの京釜鉄道を建設した。今回の調査とは関係なくたまたま読んでいた「鉄道と愛国」(吉岡桂子著、岩波書店、2023年7月)という本にも、まさに京釜鉄道はかつての植民地支配の道具でもあったと記されていたが、釜山の博物館でその歴史の痕跡を確かめることができた。 先述の映画では、韓国がベトナム戦争に巻き込まれていたことも描かれた。主人公は父親と約束した待ち合わせ場所の店を守るためのお金を稼ぐべく、ベトナム戦争の機械兵を志願して、現地で片足をけがしてしまった。韓国はベトナム戦争で米国に協力した。一方、北朝鮮は、北ベトナムを支援した。 ロシア研究の専門家によると、今回のロシア対ウクライナ戦争では、武器提供において北朝鮮V.S.韓国の構図が見えている。北朝鮮はロシアに武器支援をし、韓国が北大西洋条約機構(NATO)に輸出している武器は、ウクライナ支援に充てられている。戦争をめぐって、北と南の対立の構図は冷戦時代から変わっていない。 一緒に釜山へ行った日本人の先生が言うように、日本では戦争とは1945年で終わったものというイメージが強いが、実際には第二次世界大戦から時をあけずに朝鮮戦争が始まり、さらにベトナム戦争、そして今に至るまで、戦争は世界でひっきりなしに続いている。このことをもっとたくさんの人々に認識してもらいたい。幸いにも、今の東アジアは時に緊張はあれど戦争はなく、平和な状態が続いている。東アジアの平和を願いながら、ロシアとウクライナの戦争もガザでの中東戦争も一日も早く終わるように祈る。 <謝志海(しゃ・しかい)XIE_Zhihai> 共愛学園前橋国際大学教授。北京大学と早稲田大学のダブル・ディグリープログラムで2007年10月来日。2010年9月に早稲田大学大学院アジア太平洋研究科博士後期課程単位取得退学、2011年7月に北京大学の博士号(国際関係論)取得。日本国際交流基金研究フェロー、アジア開発銀行研究所リサーチ・アソシエイト、共愛学園前橋国際大学専任講師、准教授を経て、2023年4月より現職。ジャパンタイムズ、朝日新聞AJWフォーラムにも論説が掲載されている。 ---------------------------------------------------------------- 【2】寄贈本紹介 SGRA会員で昭和女子大学教授のフスレさんより新刊書をご寄贈いただきましたのでご紹介します。 ◆ボルジギン・フスレ『日本人のモンゴル抑留の新研究』 ~移送・抑留・引き揚げまで~ ソ連は対日戦で60万人の日本軍捕虜を獲得し、その中から1万2000人がモンゴルに送られ、苛酷な抑留生活を強いられた。極寒や飢餓、病、苛酷な労働の実態と、日本への引き揚げまでの経過をモンゴルの各文書館に秘蔵されている資料と証言をもとに明らかにする。 発行所:三元社 定価=本体 4,800円+税 2024年2月28日/A5判上製/296頁/ISBN978-4-88303-585-4 詳細は下記リンクをご覧ください。 http://sangensha.co.jp/allbooks/index/585.htm ---------------------------------------------------------------- 【3】第22回日韓アジア未来フォーラムへのお誘い(再送) 下記の通り第22回日韓アジア未来フォーラムをソウル大学国際大学院会議室とZoomのハイブリッド形式で開催しますので奮ってご参加ください。 テーマ:「ジェットコースターの日韓関係-何が正常で何が蜃気楼なのか」 日 時:2024年5月18日(土)14:00~17:40 共同主催:(財)未来人力研究院(韓国)、ソウル大学日本研究所、(社)韓国現代日本学会、(公財)渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA) 方 法:ソウル大学国際大学院140-2棟4階国際会議室およびZoom 言 語:日本語・韓国語(同時通訳) 参加費:無料 お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) 参加方法: ◇会場参加ご希望の方は、直接会場へお越しください。 ◇オンライン参加ご希望の方は、下記リンクより聴講していただけます。 -ZOOM_ID:583_289_8745 -ZOOMリンク:https://snu-ac-kr.zoom.us/j/5832898745 ◆フォーラムの趣旨 21世紀の新しい日韓パートナーシップ共同宣言後、雪解け期を迎えた日韓関係は、その後浮き沈みを繰り返しながら最悪の日韓関係と言われる「失われた10年」を経験した。徴用工問題に対する第三者支援解決法を契機に、2023年の7回にわたる首脳会談を経て日韓関係は一挙に正常化軌道に乗った。一体、日韓関係において何が正常で、何が蜃気楼なのか?徴用工問題解決の1年後の成果と課題、そして日韓協力の望ましい方向について考える。日韓同時通訳付き。 ◆プログラム 《開会》午後2時 司会:嚴泰奉(オム・テボン:現代日本学会総務理事) 【開会の辞】 李鎮奎(イ・ジンギュ:未来人力研究院理事長) 南基正(ナム・キジョン:ソウル大学日本研究所長) ◇第1部 報告と指定討論:日韓関係の復元、その一年の評価と課題100分 司会:李元徳(イ・ウォンドク:国民大学教授) 【報告1】西野純也(にしの・じゅんや:慶応大学教授) 「日韓関係の復元、その一年の評価と課題:政治安保」15分 【報告2】李昌ミン(イ・チャンミン:韓国外国語大学教授) 「日韓関係の復元、その一年の評価と課題:経済通商」15分 【報告3】小針進(こはり・すすむ:静岡県立大学教授) 「日韓関係の復元、その一年の評価と課題:社会文化」15分 【討論1】金崇培(キム・スンベ:釜慶大学日語日文学部准教授)7分 【討論2】安部誠(あべ・まこと:アジア経済研究所上席主任調査研究員)7分 【討論3】鄭美愛(ジョン・ミエ:ソウル大学日本研究所客員研究員)7分 ◇第2部 パネル討論:日韓協力の未来ビジョンと協力方向80分 司会:南基正(ナム・キジョン:ソウル大学日本研究所長) 【パネリスト】 西野純也(にしの・じゅんや:慶応大学) 小針進(こはり・すすむ:静岡県立大学) 安部誠(あべ・まこと:アジア経済研究所) 崔喜植(チェ・ヒシク:国民大学) 李政桓(イ・ジョンファン:ソウル大学) 鄭知喜(チョン・チヒ:ソウル大学日本研究所)A 趙胤修(チョ・ユンス:東北アジア歴史財団) 【閉会の辞】 今西淳子(いまにし・じゅんこ:渥美国際交流財団常務理事・SGRA代表) 金雄煕(キム・ウンヒ:韓国現代日本学会長) 《閉会》午後5時40分 プログラム(日本語) https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/04/J_JKAFF22_Program.pdf ポスター(日本語) https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/04/Poster_20240412_J1-scaled.jpg ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方はSGRA事務局にご連絡ください。 https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 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SUN Jianjun “The 17th SGRA China Forum ‘The Birth of Modern Art in Southeast Asia’ Report”
2024年4月25日 20:44:20
********************************************** SGRAかわらばん1013号(2024年4月25日) 【1】孫健軍「第17回SGRAチャイナフォーラム報告」 「東南アジアにおける近代〈美術〉の誕生」 【2】第22回日韓アジア未来フォーラムへのお誘い(再送) 「ジェットコースターの日韓関係-何が正常で何が蜃気楼なのか」 ********************************************** 【1】孫健軍「第17回SGRAチャイナフォーラム『東南アジアにおける近代〈美術〉の誕生』報告」 2023年11月25日(土)北京時間午後3時(日本時間午後4時)より第17回SGRAチャイナフォーラム「東南アジアにおける近代〈美術〉の誕生」が開催された。コロナが収束して4年ぶりに対面形式で行う予定だったが、スケジュールを決める9月の時点で2012年秋の事態を思わせる空気が漂い始め、オンライン方式を続けることに決めた。 テーマの通り、今回は美術史の返り咲きとなった。しかもこれまで焦点が置かれていた「東アジア」から初めて「東南アジア」に視点を向けたため、事前の準備はこれまでと異なり、チャイナフォーラムの歴史の中でかつてない国際的な展開となっていた。講師は北九州市立美術館館長の後小路雅弘先生、指定討論者は北京大学東南アジア学科准教授の熊燃先生、ナショナル・ギャラリー・シンガポール学芸員でコレクション部門ディレクターの堀川理沙先生のお二方をお迎えした。東京、北九州、北京、シンガポール、マカオと事前準備の連絡は広範囲にわたった。日本語だけでなく、英語によるメールの連絡もこれまでにないレベルで、渥美財団のスタッフ一同の国際色の高さに脱帽した。 例年通り、開催にあたり、主催者側から今西淳子・渥美財団常務理事、後援の野田昭彦・北京日本文化センター所長より冒頭の挨拶があった。野田所長の挨拶は前年同様にテーマに沿った問題提起があり、フォーラムのウォーミングアップともなった。 日本における東南アジア美術史の第一人者である後小路雅弘先生の講演は、ご自身の東南アジアの実体験から始まった。東南アジアにおける近代美術の萌芽的な動きは1930年代に見られると指摘した。地域や国同士の相互の連動は見られなかったが、植民地において19世紀末から盛んになったナショナリズムや民族自決の高まりといった国際的な共通性から、ほぼ同じ時期に見られるようになったと、数多くの絵画の紹介を通じて語った。そして19世紀末から20世紀前半にわたって、東南アジアの近代美術運動を担うパイオニアたちが直面する課題、目指す目標、各国における共通性や相違を読み解いた。 自由討論はモデレーターの名手、澳門大学の林少陽先生によって進められた。美術作品を通して、その背後にあるより微妙で生き生きとした植民地支配に対する抵抗や民族解放を求める東南アジアの歴史の詳細を見ることができるという熊燃先生のご見解や、後小路先生のご研究の原点は東南アジアだけでなく、東アジア全体にあるのではないかという堀川理沙先生のご指摘が印象的だった。その後、会場およびオンライン参加者の質問に対し、後小路先生が丁寧に回答した。 最後に清華東亜文化講座を代表して、北京第二外国語大学趙京華先生より閉会の挨拶があった。趙先生は後小路先生のご講演により、美術史を専門としない人も美術界の新たな風潮を通じて、東南アジアの20世紀の複雑な歴史的プロセス、そして民族、言語、宗教、文化の多様性について初歩的な理解を得ることができたと指摘した上で、「どのような覇権も、世界を統一することも、差異を排除することもできない。私たちは各民族国家の多様性を尊重することでしか、文明の相互理解と平和共存の理想を実現することができない」と強く訴えた。 東京会場、北京会場、そしてオンライン参加を含め、合わせて150名の参加を得た。参加者からは「東南アジアにおける近代美術が生まれた背景や、その代表的な人物に関する基本知識を得ることができた。今後もこの研究領域に関するフォーラムを開催してほしい」などの感想が寄せられた。 フォーラム開催当日は趙先生の誕生日で、北京会場でささやかなお祝いをした。4年ぶりの会食も実現した。そして次回の第18回も引き続き後小路先生に依頼し、対面形式で北京で行うことが早々に決まった。 かつてのおなじみのチャイナフォーラムが確実に戻ってくる。 当日の写真 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/02/Chinaforum17_Photos.pdf アンケート集計結果 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/02/Chinaforum17_Feedback.pdf <孫建軍(そん・けんぐん)SUN Jianjun> 1990年北京国際関係学院卒業、1993年北京日本学研究センター修士課程修了、2003年国際基督教大学にてPh.D.取得。北京語言大学講師、国際日本文化研究センター講師を経て、北京大学外国語学院日本言語文化系副教授。専攻は近代日中語彙交流史。著書『近代日本語の起源―幕末明治初期につくられた新漢語』(早稲田大学出版部)。 ---------------------------------------------------------------- 【2】第22回日韓アジア未来フォーラムへのお誘い(再送) 下記の通り第22回日韓アジア未来フォーラムをソウル大学国際大学院会議室とZoomのハイブリッド形式で開催しますので奮ってご参加ください。 テーマ:「ジェットコースターの日韓関係-何が正常で何が蜃気楼なのか」 日 時:2024年5月18日(土)14:00~17:40 共同主催:(財)未来人力研究院(韓国)、ソウル大学日本研究所、(社)韓国現代日本学会、(公財)渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA) 方 法:ソウル大学国際大学院140-2棟4階国際会議室およびZoom 言 語:日本語・韓国語(同時通訳) 参加費:無料 お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) 参加方法: ◇会場参加ご希望の方は、直接会場へお越しください。 ◇オンライン参加ご希望の方は、下記リンクより聴講していただけます。 -ZOOM_ID:583_289_8745 -ZOOMリンク:https://snu-ac-kr.zoom.us/j/5832898745 ◆フォーラムの趣旨 21世紀の新しい日韓パートナーシップ共同宣言後、雪解け期を迎えた日韓関係は、その後浮き沈みを繰り返しながら最悪の日韓関係と言われる「失われた10年」を経験した。徴用工問題に対する第三者支援解決法を契機に、2023年の7回にわたる首脳会談を経て日韓関係は一挙に正常化軌道に乗った。一体、日韓関係において何が正常で、何が蜃気楼なのか?徴用工問題解決の1年後の成果と課題、そして日韓協力の望ましい方向について考える。日韓同時通訳付き。 ◆プログラム 《開会》午後2時 司会:嚴泰奉(オム・テボン:現代日本学会総務理事) 【開会の辞】 李鎮奎(イ・ジンギュ:未来人力研究院理事長) 南基正(ナム・キジョン:ソウル大学日本研究所長) ◇第1部 報告と指定討論:日韓関係の復元、その一年の評価と課題100分 司会:李元徳(イ・ウォンドク:国民大学教授) 【報告1】西野純也(にしの・じゅんや:慶応大学教授) 「日韓関係の復元、その一年の評価と課題:政治安保」15分 【報告2】李昌ミン(イ・チャンミン:韓国外国語大学教授) 「日韓関係の復元、その一年の評価と課題:経済通商」15分 【報告3】小針進(こはり・すすむ:静岡県立大学教授) 「日韓関係の復元、その一年の評価と課題:社会文化」15分 【討論1】金崇培(キム・スンベ:釜慶大学日語日文学部准教授)7分 【討論2】安部誠(あべ・まこと:アジア経済研究所上席主任調査研究員)7分 【討論3】鄭美愛(ジョン・ミエ:ソウル大学日本研究所客員研究員)7分 ◇第2部 パネル討論:日韓協力の未来ビジョンと協力方向80分 司会:南基正(ナム・キジョン:ソウル大学日本研究所長) 【パネリスト】 西野純也(にしの・じゅんや:慶応大学) 小針進(こはり・すすむ:静岡県立大学) 安部誠(あべ・まこと:アジア経済研究所) 崔喜植(チェ・ヒシク:国民大学) 李政桓(イ・ジョンファン:ソウル大学) 鄭知喜(チョン・チヒ:ソウル大学日本研究所)A 趙胤修(チョ・ユンス:東北アジア歴史財団) 【閉会の辞】 今西淳子(いまにし・じゅんこ:渥美国際交流財団常務理事・SGRA代表) 金雄煕(キム・ウンヒ:韓国現代日本学会長) 《閉会》午後5時40分 プログラム(日本語) https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/04/J_JKAFF22_Program.pdf ポスター(日本語) https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/04/Poster_20240412_J1-scaled.jpg ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方はSGRA事務局にご連絡ください。 https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ ********************************************* -
Invitation to the 22nd Japan-Korea Asia Future Forum “Japan-Korea Relations on a Roller Coaster: What is Normal and What is a Mirage?”
2024年4月18日 17:05:24
********************************************** SGRAかわらばん1012号(2024年4月18日) ********************************************** ◆第22回日韓アジア未来フォーラム「ジェットコースターの日韓関係-何が正常で何が蜃気楼なのか」へのお誘い 下記の通り第22回日韓アジア未来フォーラムをソウル大学国際大学院会議室とZoomのハイブリッド形式で開催しますので奮ってご参加ください。 テーマ:「ジェットコースターの日韓関係-何が正常で何が蜃気楼なのか」 日 時:2024年5月18日(土)14:00~17:40 共同主催:(財)未来人力研究院(韓国)、ソウル大学日本研究所、(社)韓国現代日本学会、(公財)渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA) 方 法:ソウル大学国際大学院140-2棟4階国際会議室およびZoom 言 語:日本語・韓国語(同時通訳) 参加費:無料 お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) 参加方法: ◇会場参加ご希望の方は、直接会場へお越しください。 ◇オンライン参加ご希望の方は、下記リンクより聴講していただけます。 -ZOOM_ID:583_289_8745 -ZOOMリンク:https://snu-ac-kr.zoom.us/j/5832898745 ◆フォーラムの趣旨 21世紀の新しい日韓パートナーシップ共同宣言後、雪解け期を迎えた日韓関係は、その後浮き沈みを繰り返しながら最悪の日韓関係と言われる「失われた10年」を経験した。徴用工問題に対する第三者支援解決法を契機に、2023年の7回にわたる首脳会談を経て日韓関係は一挙に正常化軌道に乗った。一体、日韓関係において何が正常で、何が蜃気楼なのか?徴用工問題解決の1年後の成果と課題、そして日韓協力の望ましい方向について考える。日韓同時通訳付き。 ◆プログラム 《開会》午後2時 司会:嚴泰奉(オム・テボン:現代日本学会総務理事) 【開会の辞】 李鎮奎(イ・ジンギュ:未来人力研究院理事長) 南基正(ナム・キジョン:ソウル大学日本研究所長) ◇第1部 報告と指定討論:日韓関係の復元、その一年の評価と課題100分 司会:李元徳(イ・ウォンドク:国民大学教授) 【報告1】西野純也(にしの・じゅんや:慶応大学教授) 「日韓関係の復元、その一年の評価と課題:政治安保」15分 【報告2】李昌ミン(イ・チャンミン:韓国外国語大学教授) 「日韓関係の復元、その一年の評価と課題:経済通商」15分 【報告3】小針進(こはり・すすむ:静岡県立大学教授) 「日韓関係の復元、その一年の評価と課題:社会文化」15分 【討論1】金崇培(キム・スンベ:釜慶大学日語日文学部准教授)7分 【討論2】安部誠(あべ・まこと:アジア経済研究所上席主任調査研究員)7分 【討論3】鄭美愛(ジョン・ミエ:ソウル大学日本研究所客員研究員)7分 ◇第2部 パネル討論:日韓協力の未来ビジョンと協力方向80分 司会:南基正(ナム・キジョン:ソウル大学日本研究所長) 【パネリスト】 西野純也(にしの・じゅんや:慶応大学) 小針進(こはり・すすむ:静岡県立大学) 安部誠(あべ・まこと:アジア経済研究所) 崔喜植(チェ・ヒシク:国民大学) 李政桓(イ・ジョンファン:ソウル大学) 鄭知喜(チョン・チヒ:ソウル大学日本研究所)A 趙胤修(チョ・ユンス:東北アジア歴史財団) 【閉会の辞】 今西淳子(いまにし・じゅんこ:渥美国際交流財団常務理事・SGRA代表) 金雄煕(キム・ウンヒ:韓国現代日本学会長) 《閉会》午後5時40分 プログラム(日本語) https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/04/J_JKAFF22_Program.pdf ポスター(日本語) https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/04/Poster_20240412_J1-scaled.jpg ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方はSGRA事務局にご連絡ください。 https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ ********************************************* -
MORI Takato “Quest for Truth”
2024年4月11日 21:02:36
********************************************** SGRAかわらばん1011号(2024年4月11日) 【1】SGRAエッセイ:森崇人「真理の探究」 【2】国史対話エッセイ紹介:キム・ホ「歴史と私」 ********************************************** 【1】SGRAエッセイ#762 ◆森崇人「真理の探究」 私の研究は高エネルギー理論物理学、物性理論、量子情報理論の境界領域である。在学中は興味本位でこれら様々な分野から「量子もつれ」と呼ばれるミクロ特有の相関を調べていたため、博士論文の研究を一つの大きなストーリーにまとめるのが難しかった。そこで研究の原点に立ち戻る必要があった。このような振り返りは研究中にはあまりしないので、何を行ってきて、何を目指していたのか、そしてどこまで進んだのか再確認するには非常に有用であった。エッセイでは、私が何を目指して博士課程の間に研究をしたのか、そして在学中に感じたことを書き連ねたい。 研究目標は量子重力理論の解明である。量子重力というのは非常に微視的(量子的)なスケールで顕著になる重力の揺らぎや重ね合わせなどの量子効果を調べる分野で、その理論的枠組みを明らかにすることがゴールである。それにより、宇宙の誕生やブラックホール等に存在する時空の特異点(=これまでの理論が破綻する領域)を説明する理論構築につながると考えられている。このように重力が強く、その量子効果が無視できない領域では、我々が今持っている物理的理解・数学的手法が及ばないため、何か間接的な理解の仕方が必要となる。 そこで、近年はホログラフィー原理という対応を用いて、量子重力を、重力を含まない多自由度の量子系(例えば電子など)から理解する試みがなされている。私の研究ではその立場から、量子系の量子もつれなどの情報を調べることで、量子重力を理解しようとした。解析手法には、場の理論[高エネルギー理論物理]、テンソルネットワーク[物性理論]、一般相対性理論[重力理論]などの様々な分野の手法を援用した。このように分野を俯瞰しながら、ゆくゆくは情報理論の立場から量子重力を理解したいと考えている。 宇宙の誕生や時空の構成単位に迫る研究は理論物理の興味のみならず、哲学的にも意味があると信じている。古来より、人類は自身や宇宙の起源、存在に疑問を投げかけてきた。私の研究は、これらの問いに対して一つの答えを与えるものだと考えている。これまでの研究からの私の理解は以下である。 私たちが見ている世界、実存とは、実際のところ情報の集合体である。また、私たちが認識できるような世界というのは微視的情報が粗視化されたような解像度の低い世界(この構造を階層性と呼ぶ)で、理論的には一次元低い世界の情報の束として表現できる。従って、我々の世界や我々が行う観測という行為は一次元低いハードディスクのような記憶媒体、つまり情報源から、ホログラムのように情報を読み出す再生装置のようなものだと思われる。 では、私たちの上位存在である記憶媒体のことを我々は知り得るのだろうか。これは近年の量子コンピュータの発展とも無関係ではない。量子コンピュータ―は古典コンピュータ―より速いかもしれないと言われているが、果たして演算される入力と出力自体は量子性を認識できるのだろうか。我々が処理される情報のようなものであるなら、このような具体化はあながち間違いではないかもしれない。このように、理論物理は哲学とも深く結びついていて、自分とは何者か問いかけられる良い手法だと思う。 私が続けてきた学際的な研究は近年、急速に進んでいる。特に理論物理と情報理論の親和性は高く、これまでにない速度とレベルで研究交流がなされている。例えば、量子重力と量子情報や、物性理論と量子情報、非平衡熱力学と情報幾何学などがある。しかし、その一方で、どちらにも精通して分野を俯瞰しながら、新しい研究分野を創成することができるような成果はまだ少なく思える。もちろん一つの分野を極めて、そこからじわじわ境界領域を攻めていく方法は間違いではないし、むしろ強みがあった方が良い(自分はおろそかにしがちなので、この文章を書きながら自らに言い聞かせている)。 しかし、様々な分野を平等に攻めたからこそ、より根幹をなす普遍的な問題に気づけるのではないだろうか。そのような問題意識で量子重力・量子情報・物性理論・高エネルギー理論物理学の幅広い分野で研究を推し進めてきた。特に私の主な分野である量子重力分野に顕著だが、曖昧で弱い根拠の上に様々な論を組み立てるものがある。これ自体はインスピレーションの源泉にもなりうるし、実際多くの研究がなされた結果、元のアイデアがより厳密に示されたりするので、良い側面はある。 しかし、実際は驚くほど地に足をつけて議論できていないこともある。例えば、ある分野の研究対象Aと別の分野の研究対象Bの間に類似性がある。「A=B」とすればAかBのいずれかを調べることで両分野の進展につながる。しかし、「A=B」というのは仮定であり、それは検証されるべき前提条件である。残念ながらその緻密な検証作業がおろそかになっている側面は否めない。これは近年の競争原理の高まりによる論文至上主義(はやりの分野で、たくさん論文を書けば良い)の弊害だろうか。私もそのあおりを受けざるを得ないのだが、それでも地に足をつけながらバイアスを排除して真実を見落とさないように注意深く、じっくり研究していきたいと思っている。 これからは京都大学、そしてカナダのペリメータ理論物理学研究所で研究員として研究を続けていくことになるが、より一層様々な分野の人々と協力しながら真理の探究をしていきたい。 <森崇人(もり・たかと)MORI Takato> 2024年10月~:京都大学特定研究員(学振PD)、2024年6月~:ペリメータ理論物理学研究所研究員、2024年4月~9月:日本学術振興会特別研究員PD(京都大学基礎物理学研究所)、2023月3月:総合研究大学院大学高エネルギー加速器科学研究科素粒子原子核専攻5年一貫博士課程修了、2022年度渥美奨学生。 ---------------------------------------------------------------- 【2】国史対話エッセイ紹介 3月28日に配信した国史対話メールマガジン第55号のエッセイをご紹介します。 ◆キム・ホ「歴史と私」 昨年の秋に、日本の「国史たちの対話」事務局から原稿の依頼をいただいた。「賎学非才」な私なのに、研究を振り返ってくれという注文だった。これまで何を研究し、なぜそのテーマに関心を傾けたのか、久しぶりに振り返ってみた。中途半端ではなかったと思えて安心した半面、学部や大学院生時代から就職後においても、精神的彷徨は多かったことを告白せざるを得なかった。研究履歴は一人だけの研究結果というより、研究者のもう一つの顔であり子供のようなものなので、この文章を書いている最中はずっと恥ずかしく顔がほてっている。それでも、これまでの研究履歴を少しでも整理する機会にしてみようという気持ちから勇気を出した。 1980年代に韓国で大学に通った方々ははっきり覚えていると思うが、当時のキャンパスは毎日石と火炎瓶が飛び交い、煙たい空気で息をすることさえ難しかった。中学、高校時代ずっと歴史学に憧れていた私は、大学に入学さえすれば韓国史の勉強に専念できると思っていた。しかし連日のデモと休講が相次ぐ大学生活はいわゆる「勉強」とは程遠い状況だった。また、歴史を少しずつ知っていけばいくほど、私が知っていた歴史は歴史ではなかった。 「民衆」が強調された1980年代の韓国の雰囲気のせいか、私は支配階級である王や両班の歴史ではなく一般民衆の日常の方により関心を持つようになり、民衆の歴史を復元しようと決心した。幼い頃からなぜか強者より弱者の文化に関心があったという背景もある。ところが、100年前に遡ってみると、残っている史料や記録はすべて漢字だらけだった。 全文は下記リンクよりお読みください。 https://www.aisf.or.jp/sgra/kokushi/J_Kokushi2024KimHoEssay.pdf ※SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。国史メルマガは毎月1回配信しています。SGRAかわらばんとは別にお送りしますので、ご興味のある方はSGRA事務局にご連絡ください。3言語対応ですので、中国語、韓国語の方々にもご宣伝いただけますと幸いです。 ◇国史メルマガのバックナンバー https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ◇購読登録ご希望の方はSGRA事務局へご連絡ください。 ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方はSGRA事務局にご連絡ください。 https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************