SGRAメールマガジン バックナンバー
-
Guo Lifu ”The 73rd SGRA Forum ’Palestine and the Wall between Us’ Report”
2024年8月30日 11:50:58
********************************************** SGRAかわらばん1028号(2024年8月30日) 【1】郭立夫「第73回SGRAフォーラム「パレスチナの壁:『わたし』との関係とは?」報告」 【2】催事紹介:東北亞未来構想研究所(INAF)研究会のお知らせ 「欧州における移民問題および東アジアに対するインプリケーション」 ********************************************** 【1】郭立夫「第73回SGRAフォーラム「パレスチナの壁:『わたし』との関係とは?」報告」 2024年6月25日、第73回SGRAフォーラム「パレスチナの壁:『わたし』との関係とは?」が昭和女子大学で対面とオンラインのハイブリッド方式で開催されました。1月9日に開催されたSGRAカフェに続き、パレスチナ問題を取り上げたイベントは2回目です。ロシアによるウクライナ侵攻に続いて、イスラエルとパレスチナの衝突は長年保たれてきた世界平和を破壊する重大な出来事と見なされがちですが、私は「第二次世界大戦後の世界は平和である」というイメージ自体が誤りだと思います。パレスチナの住民を含む多くの人々が、常に戦争のリスクを抱えて不安の中で生活しています。 東アジアでも、冷戦によって台湾海峡や38度線を境とした緊張が消えることは一度もありませんでした。それにもかかわらず、第二次世界大戦や冷戦後、衝突の可能性が無視されるほど世界が平和であるというイメージは皮肉なほど強く存在します。「世界平和」というイメージが作り上げられてきたことを示しているのでしょう。このイメージは「衝突」や「戦争」を特定の地域や民族に結びつけ、「文明的かつ先進的で、民主的な」社会とは無縁なものとして描かれることで作られています。今回のフォーラムはまさにこのような文脈の中で、パレスチナで起きている問題は、「わたし」たちから遠く離れた「平和な民主世界」の外部にあるのではなく、常に「わたし」たちと関連していると訴えました。 フォーラムは、3つの報告と質疑応答で構成されました。明治大学特任講師のハディ・ハーニ氏が、パレスチナ問題を理解するための基礎知識を紹介。特にパレスチナ問題を取り上げる際には「誰がテロリストか」という問いかけがしばしば提起されるが、これがパレスチナで実際に起きている人権侵害や戦争暴力から議論の焦点をずらしてしまい、効果的でないと主張しました。 東京工業大学大学院生のウィアム・ヌマン氏は、ヨルダン川西岸やガザの植民地建築を事例に挙げ、建築がいかに政治的道具として抑圧や排除を強化するものになるかを論じました。公共空間は決して政治から離れたものではなく、排除や抑圧を強化する危険を常に抱えています。「わたし」たちと関連している例として、2021年の東京オリンピックを契機に渋谷区などで起きた街の高級化(gentrification)が、それまでの住人を排除することになり、ガザでの都市構造と同じ効果をもたらしていると解説しました。 最後に早稲田大学学部生の溝川貴己氏が、東京におけるパレスチナ解放運動の当事者として、東京での活動がどんなグループや運動と交差しているかを紹介しました。東京での活動が現地の多くの団体と実際に交差している様子は、フォーラムのテーマである「『わたし』との関係とは」を実例で示してくれました。 質疑応答では、発表者の3人が現場とオンラインからの質問に答えました。具体的には「パレスチナ(テロリスト)VSイスラエル(民主社会)」という二項対立の取り扱いや、日本人(特に大学生)がどのようにこれらの活動に関わるべきかというテーマが取り上げられました。 「テロリストVS民主社会」という二項対立について、発表者たちはパレスチナで起きている戦争暴力は単なる政治問題ではなく、正義の問題であるとの合意に達しました。特にヌマン氏は、正義の問題を政治問題として討論のテーマとすることに注意を喚起し、人権などの基本的な倫理的問題は、議論の余地がないものであるべきだと主張しました。 次に、日本の人々、特に大学生が政治的関心を失いつつある現状において、いかに多くの人々に運動に参加してもらうかという問題について、溝川氏は自身の経験を踏まえて、諦めずに活動を続けることの重要性を強調しました。政治的活動に頻繁に参加すると、「意識が高い」といったスティグマ(偏見や差別)を受ける危険があるものの、周囲に「意識が高い」人がいないと問題提起が困難になるため、継続的な参加が重要であると主張しました。 フォーラム後、パレスチナ活動家のアイダさんが手作りのパレスチナ料理を提供し、皆で一緒に食事しながら、さらに交流を深めました。 私は性的マイノリティを対象としたフェミニズム・クィア研究を専攻しており、フォーラムでも多くの感銘を受けました。この研究では「わたし(主体・主語)」というものがその理論を支える重要なツールです。この報告でもあえて自分の存在を消すことなく、「私は」から始まる文を書きました。その意味で、今回のテーマ「『わたし』との関係」も自明なものです。実際、クィア研究者のジュディス・バトラーも『戦争の枠組み』という本の中で、メディアがいかに「戦争/衝突」を文明社会の外部にあるものとして構築しながらも、テレビ画面を通してそれを視聴している人々に無限に近づけているかについて論じています。 さらに、イスラーム文化が同性愛を嫌悪するホモフォビックであるため、LGBTの権利を支持する民主国家がそれらの国に対して戦争を起こしても「正義」の一種であるという政治に対する批判もクィア・スタディーズの重要な柱の一つです。その意味で、溝川氏が報告したパレスチナ解放運動とクィア運動の連帯も不思議なものではありません。クィア運動は長年「人権」などの名義で行われてきましたが、それは近年強い揺り戻しを受けています。というのも、LGBTの人権を保護することが生まれ持った性別と性の認識が一致するシスジェンダー・異性愛者の人権を侵害するという議論が多く提起されるようになったからです。しかし、それは実際にはパレスチナ問題のように討論のテーマに扱われるべき「政治問題」ではなく、議論の余地がない「正義(Justice)」の問題であるという姿勢が重要なのではないかと思いました。 最後に、「壁」というメタファーについてお話しします。フォーラムではパレスチナ問題を議論する「壁」を、タブーと言論の自由への抑圧および物理的な分離の壁の象徴として扱っていますが、私はそれが実はさらに豊富な意味と政治性を秘めていると思います。「壁」の辺境という意味と「皮膚」との類似性を強調したいです。「壁」も「皮膚」も外部と内部を分離する機能および、外部から内部を守る機能の両方を備えています。そして両方ともある「主体(身体)」の辺境を示すものです。それはもちろん拒否や保護の姿勢を含みますが、接触、とりわけ接触することによる快楽(性的なものも含む)、あるいは包まれる安心感が存在する場所にもなります。壁/皮膚が存在することとは、痛みと快楽が同時に存在することを意味しています。これまでパレスチナ問題に対して議論できない、わからない「壁」を感じているということは、心の中のその壁に向き合えば、まさにその壁から接触/連帯が生じうる可能性があることを意味しています。 当日の写真 https://www.aisf.or.jp/sgra/plan/photo-gallery/2024/19575/ アンケート集計 https://00m.in/xmMzr <郭立夫(グオ・リフ)Guo Lifu> 2012年から北京LGBTセンターや北京クィア映画祭などの活動に参加し、2024年東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻で博士号を取得し、現在筑波大学ヒューマンエンパワーメント推進局助教。専門領域はフェミニズム・クィアスタディーズ、地域研究。 研究論文に、「中国における包括的性教育の推進と反動:『珍愛生命:小学生性健康教育読本』を事例に」小浜正子、板橋暁子編『東アジアの家族とセクシュアリティ:規範と逸脱』(2022年)や「終わるエイズ、健康な中国:China_AIDS_Walkを事例に中国におけるゲイ・エイズ運動を再考する」『女性学』vol.28,12-33(2020年)など。 ---------------------------------------------------------------- 【2】催事紹介:東北亞未来構想研究所(INAF)研究会のお知らせ SGRA会員で一般社団法人東北亞未来構想研究所(INAF)所長の李鋼哲さんから研究会のお知らせをいただきましたのでご紹介します。興味のある方は直接お申込みください。 ◆INAF研究会 [テーマ]欧州における移民問題および東アジアに対するインプリケーション [日 時]2024年9月8日(日)17:00~20:00時(オンライン、zoom) 日本や韓国、中国や台湾の少子高齢化問題が深刻になりつつある状況の中で、この問題への対応策そして移民問題が重要な課題としてクローズアップして来ております。 そこで、今度の研究会ではお二人の専門家先生をお招きして、欧州における移民問題を議論しながら、東アジアではその経験と教訓を如何に活かすべきか、という問題意識で研究会を開催したいと思います。奮ってご参加するようお願いします。 [プログラム] 講演1:楠根重和・石川EU協会会長・金沢大学名誉教授(30分) テーマ:移民、難民、少子化は人類の問題 講演2:羽場久美子・INAF副理事長・青山学院大学名誉教授(30分) テーマ:移民・難民問題―欧州ポピュリズムの根源と日本への教訓 講演3:李 鋼哲・INAF所長(20分) テーマ:日中韓台の移民政策の比較:現状と課題 *休憩を挟んで質疑応答と自由討論 司会:陳 柏宇・INAF常任理事・新潟県立大学准教授 詳細・参加方法はホームページをご覧ください。 https://inaf.or.jp/ ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方はSGRA事務局にご連絡ください。 https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ ********************************************* -
The Seventh Asia Future Conference Report
2024年8月22日 23:14:50
********************************************** SGRAかわらばん1027号(2024年8月22日) ********************************************** 第7回アジア未来会議報告 2024年8月9日(金)~13日(火)、バンコク市の中心に位置するチュラーロンコーン大学にて、21ヵ国から346名の登録参加者を得て、第7回アジア未来会議が開催されました。総合テーマは「再生と再会(Revitalization_and_Reconnection)」。「100年に一度とも言われるパンデミック後のアジア、地球社会は変化の時代に入った。社会、経済、文化、教育など多方面における大きな変化に対して私たちはどのように向き合い、乗り越えて行けばよいのだろうか。国際的・学際的な若い研究者たちが集い、共に語る、この「再会」の場が新しいアジア、地球社会の未来を「再生」させる源ともなることを期待しつつ、課題解決の糸口を模索すること」を目標に、基調講演とオープンフォーラム、円卓会議、そして数多くの研究論文発表が行われ、広範な領域における課題に取り組む国際的かつ学際的な議論が繰り広げられました。 10日(土)午前9時、同大学文学部の教室で、渥美フェローが企画実施を担当する8つの円卓会議が始まりました。 1)日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性「東アジアの『国史』と東南アジア」(日中韓同時通訳) 2)チュラーロンコーン大学日本語講座セッション「タイにおける日本研究の現状と展望」(日本語) 3)Exploring_the_Impact_of_Generative_AI_on_Education_and_Research(英語) 4)Asian_Cultural_Dialogues “The_Limits_and_Possibilities_of_Freedom” (英語) 5)Animal_Release_Problems_in_Asia: Harm_caused_by_introduction_of_animals_into_natural_environments, with_special_reference_to_fish(英語) 6)ASEAN_Centrality_in_Turbulent_East_Asia(英語) 7)INAFセッション「東アジア地域協力における朝鮮半島の統一と開発協力」(日本語) 8)モンゴルと中央アジアにおける文化と資源の越境(日本語) 午後3時30分からクラウンプラザホテルで開会式が行われました。最初に明石康大会会長の開会宣言があり、同大学文学部スラディート・チョティウドムパン学部長から歓迎挨拶、在タイ日本大使の大鷹正人様と在タイ韓国大使の朴容民様からご祝辞をいただきました。引き続き、渥美直紀・渥美国際交流財団理事長より共催、協賛、参会のお礼と基調講演の講師紹介がありました。 基調講演では、社会起業家でありバンコクで最年少の副知事であるサノン・ワンスランブーン氏が多くのスライドを使って「バンコクと私たちの未来」について熱く語ってくださいました。官僚組織の簡素化、デジタル化を推進しながらも「人々が中心」「動脈から毛細血管へ」と次々に魅力的な改革を紹介して400人の聴衆を魅了しました。 引き続き開催されたオープンフォーラム「アジアの巨大都市と未来への挑戦」では、建築・都市開発の専門家によって、巨大都市(メガシティー)の全体像とバンコク、マニラ、そしてインドネシアの都市マカッサルの現状と未来への挑戦についての報告がありました。 その後、会場でウェルカムパーティーが開催され、参加者はタイ料理と民族音楽、人形劇を楽しみました。 第7回アジア未来会議のプログラムは下記リンクよりご覧いただけます。 https://www.aisf.or.jp/AFC/2024/conference-program/ 11日(日)午前9時から、同大学の会場で53セッションの分科会が行われ、198本の論文発表が行われました。アジア未来会議は国際的かつ学際的なアプローチを目指しており、各セッションは発表者が投稿時に選んだ「平和」「環境」「イノベーション」などのトピックに基づいてグループ化され、学術学会とは趣を異にした多角的で活発な議論が展開されました。 セッションごとに2名の座長の推薦により優秀発表賞が選ばれました。優秀発表賞の受賞者リストは下記リンクよりご覧いただけます。 https://www.aisf.or.jp/AFC/2024/files/2024/08/AFC7BestPresentations.pdf 優秀論文は学術委員会によって事前に選考されました。2023年9月20日までに発表要旨、3月31日までにフルペーパーがオンライン投稿された94本の論文を10グループに分け、延べ42名の審査員が査読しました。ひとつのグループを6名の審査員が、 (1)論文が会議のテーマ「再生と再会」と適合しているか、(2)分かりやすく構成され、理解しやすいか、(3)論点が明確に提示され説得力があるか、(4)課題への取り組み方に創造性があるか、(5)国際性があるか、(6)学際性があるか、という指針に基づいて審査し、各審査員は、各グループ9~10本の論文から2本を推薦し、集計の結果、上位21本を優秀論文と決定しました。優秀論文リストは下記リンクからご覧いただけます。 https://www.aisf.or.jp/AFC/2024/files/2024/06/AFC7-BP.pdf クロージングパーティーは、午後6時30分からマンダリンホテルで開催されました。2013年にバンコクで開かれた第1回アジア未来会議のクロージングパーティーでも司会を務めた渥美フェロー2名の司会で進められ、優秀賞の授賞式が行われました。今回の受賞者21名だけでなく、コロナ禍のために対面で開催できなかった第6回の受賞者も含めて優秀論文の著者40名が登壇し、明石大会会長から賞状が手渡されました。続いて、優秀発表賞52名が表彰されました。 最後に第8回アジア未来会議の開催場所が発表され、ホストである東北学院大学(仙台市)の大西晴樹学長による招待のスピーチとビデオによる大学案内がありました。 12日(月)、参加者はそれぞれ、アユタヤ観光ツアー、寺院と王宮ツアー、水上マーケットそしてタイ料理教室等に参加しました。 第7回アジア未来会議「再生と再会」は、(公財)渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA)主催、チュラーロンコーン大学文学部東洋言語学科日本語講座の共催、在タイ日本大使館、国際交流基金の後援、(公財)高橋産業経済研究財団と(一社)東京倶楽部からの助成、日本と在タイ日系企業からのご協賛をいただきました。同大学日本語講座では実行委員会を組織し、当日はたくさんの学生さんにお手伝いいただきました。また、タイ鹿島の皆さんにはタイ日系企業への募金とVIPサポートをしていただきました。 主催・協力・賛助者リストは下記リンクからご覧いただけます。 https://www.aisf.or.jp/AFC/2024/ 運営にあたっては、渥美フェローを中心に実行委員会、学術委員会が組織され、フォーラムの企画からホームページの維持管理、優秀賞の選考、撮影まであらゆる業務を担当しました。特にタイ出身の渥美フェローが企画の最初から最後まで大活躍でした。 400名の参加者の皆さん、開催のためにご支援くださった皆さん、さまざまな面でボランティアとしてご協力くださった皆さんのおかげで、第7回アジア未来会議を和やかかつ賑やかに、成功裡に実施することができましたことを、心より感謝申し上げます。 アジア未来会議は国際的かつ学際的なアプローチを基本として、グローバル化に伴う様々な問題を科学技術の開発や経営分析だけでなく、環境、政治、教育、芸術、文化など、社会のあらゆる次元において多面的に検討する場を提供することを目指しています。SGRA会員だけでなく、日本に留学し現在世界各地の大学等で教鞭をとっている研究者、その学生、そして日本に興味のある若手・中堅の研究者が一堂に集まり、知識・情報・意見・文化等の交流・発表の場を提供するために、趣旨に賛同してくださる諸機関のご支援とご協力を得て開催するものです。 第8回アジア未来会議「空間と距離:こえる、縮める、つくる」は、2026年8月25日(火)から29日(土)まで、東北学院大学と共催で仙台市で開催します。皆様のご支援、ご協力、そして何よりもご参加をお待ちしています。 第7回アジア未来会議の写真(ハイライト) https://www.aisf.or.jp/AFC/2024/afc7-highlight-photos/ 第7回アジア未来会議のフィードバック集計 https://www.aisf.or.jp/AFC/2024/files/2024/08/AFC7FeedbackReportV3.pdf 第7回アジア未来会議報告(写真入り)日本語 https://www.aisf.or.jp/AFC/2024/files/2024/08/JAFC7Report.pdf The_7th_Asia_Future_Conference_Report (English) https://www.aisf.or.jp/AFC/2024/files/2024/08/EAFC7Report.pdf 第8回アジア未来会議(日本、仙台市)案内 https://www.aisf.or.jp/AFC/2024/files/2024/08/AFC8ChirashiLite.pdf (文責:SGRA代表・アジア未来会議実行委員長 今西淳子) ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方はSGRA事務局にご連絡ください。 https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ ********************************************* -
JIA Haitao “Dramatization of the Novel ‘Blossoms Shanghai’”
2024年8月2日 23:15:30
********************************************** SGRAかわらばん1026号(2024年8月2日) 【1】賈海涛「小説『繁花』のドラマ化:虚無から主旋律の「大きな物語」へ」 【2】催事紹介:2025年第14回村上春樹国際シンポジウム発表者募集のお知らせ 【3】第9回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性「東アジアの『国史』と東南アジア」へのお誘い(最終案内) ********************************************** 【1】SGRAエッセイ#772 ◆賈海涛「小説『繁花』のドラマ化:虚無から主旋律の「大きな物語」へ」 金宇澄の長編小説『繁花』は学部4年生の頃から研究対象としてきたもので、昨年提出した博士論文の中でも一章を割いてこの作品を論じた。ここ数年の中で上海語の方言語彙を取り入れた有数の小説であるだけでなく、戯曲・舞台劇・ラジオやテレビドラマなど様々な様式に改編され、広く注目されている文学作品でもある。金宇澄自身は絵を描くことが好きで、小説の中に多くの手描きのイラストを取り入れ、近年は各地で個展を開き、画集を出版するなど、すでに画家と言えるほどになっている。 2024年1月、ウォン・カーウァイ監督のドラマ『繁花』が中国大手の動画共有プラットフォームであるテンセントビデオで配信され、大きな反響を呼んだ。近年中国本土で高品質のドラマが非常に少ない現状で、その質と影響力は否定できない。ただし、『繁花』の「素晴らしさ」は、監督の一貫した高水準の撮影によるものであり、原作の物語を上手く翻案した「素晴らしさ」ではなかった。ドラマが配信された後、原作の研究者としてレビュー記事を執筆しようと考えたが、ドラマの内容は原作の物語をほとんど踏まえず、人物設定や背景の一部を借りただけで、全く新しい物語とも言えるので見送った。 原作の『繁花』は、1960年代から70年代の文化大革命期、そして80年代以降の経済成長の時代という二重のタイムラインで交互に語られる。特に文化大革命期の物語が高く評価された。上海で育った主人公のひとりである少年時代の阿宝はブルジョア階級家族の出身で、旧フランス租界にあった西洋風の家屋に住んでいた。文革の階級批判によって家財が没収され、幼なじみの女友達も家政婦も姿を消した。家族は上海近郊の労働者階級向けの団地に強制的に引っ越しさせられ、プライバシーのない生活を余儀なくされた。その経験は後に貿易に携わる阿宝の虚無的な恋愛観や人生観に大きな影響を与え、80年代の物語における彼の言動を理解する上で不可欠な背景といえるだろう。 しかし、ドラマ『繁花』は文革期のタイムラインがほぼ削除され、阿宝は単に経済成長期の発展を追い風に対外貿易で最初の資金を稼ぎ、成功して株式投資に進出する商人というルーツがない人物像として描かれている。この人物像の背後には、中国の改革開放政策や90年代の上海浦東開発政策により、中国社会全体が急速な発展を迎えようとした物語が含まれている。このような「大きな物語」へ賛歌を捧げる傾向を強く感じてしまう。これは90年代というタイムラインが具体的な歴史事件や背景を意図的に隠しながら、登場人物たちが食事会をする場面を次々と描き、物語の筋が不明瞭なまま虚無的な終わりを迎える原作の流れとは大きく異なっている。 小説のドラマ化では、必ずしも原作の物語を忠実に再現するわけではない。しかし、原作で最も評価の高い部分が削除され、核心となる虚無感が国家発展を背景にした物語に変えられてしまうと、そのドラマは「全く新しい作品」として認識されていると言ってもよい。ドラマ『繁花』のような高品質な作品は稀にしか見られないが、中国経済の発展と社会の進歩を伝えようとする公式の「主旋律」を謳うものは、決して稀なものではない。 <賈海涛(か・かいとう)JIA Haitao> 一橋大学言語社会研究科博士課程修了。博士(学術)。神奈川大学外国語学部中国語学科外国人特任助教、東京工業大学非常勤講師、上海大学(東京校)非常勤講師、2023年度渥美奨学生。人文系ポッドキャストの運営者。研究分野は中国現代文学、文学言語で、主な論文に「方言文学における「叙言分離体」――五四時期の文学言語の変容に関する議論を中心に」『中国:社会と文化』(37)などがある。 ---------------------------------------------------------------- 【2】催事紹介:2025年第14回村上春樹国際シンポジウム発表者募集のお知らせ 台湾淡江大学の曽秋桂先生から、2025年7月に京都大学で開催する第14回村上春樹国際シンポジウムの発表者募集のお知らせをいただきましたのでご紹介します。 主題:村上春樹文学における「パートナーシップ」(PARTNERSHIP) 募集内容:各自の専門領域の角度から上述の主題あるいは相関主題の未発表の①学術論文②教育・研究報告。発表は一人一篇とします。二重投稿や既発表の再投稿はご遠慮ください。 会場:京都大学・稲盛財団記念館 *予定* 日時:2025年7月5日(土)・7月6日(日)*予定* 使用語言:中国語、英語、日本語の使用可能(基本的には日本語を共通語とする。) 応募締め切り:2024年9月15日(日) 論文締め切り:2025年6月8日(日) 詳細は下記リンクをご覧ください。 https://00m.in/kyrJe ---------------------------------------------------------------- 【3】第9回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性へのお誘い(最終案内) 下記の通り第9回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性を開催いたします。参加ご希望の方は、必ず事前に参加登録をお願いします。オンラインで参加の場合は、一般聴講者はカメラもマイクもオフのウェビナー形式で開催しますので、お気軽にご参加ください。 テーマ:「東アジアの『国史』と東南アジア」 日時: 2024年8月10日(土)9:00~12:30(タイ時間)11:00~14:30(日本時間) 2024年8月11日(日)9:00~15:30(タイ時間)11:00~17:30(日本時間) 会場:チュラーロンコーン大学(タイ国バンコク市)及びオンライン(Zoomウェビナー) 言語:日中韓3言語同時通訳付き 主催:日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性実行委員会 共催:渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA) 助成:東京倶楽部 ※参加申込(会場参加の方もオンライン参加の方も参加登録をお願いします) https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_8k7udrxcSU2qA4VWEuR0Sw#/registration (注)会場参加の方は第7回アジア未来会議へも参加していただくことになります。 https://www.aisf.or.jp/AFC/2024/ お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) 開催趣旨 「国史たちの対話」企画は、日中韓「国史」研究者の交流を深めることによって、知のプラットフォームを構築し、三国間に存在する歴史認識問題の克服に知恵を提供することを目的に対話を重ねてきた。第1回で日中韓各国の国史研究と歴史教育の状況を確認することからスタートし、その後13世紀から時代を下りながらテーマを設け、対話を深めてきた。新型コロナ下でもオンラインでの対話を実施し、その特性を考慮して、歴史学を取り巻くタイムリーなテーマを取り上げてきた。 昨年は対面型での再開が可能となったことを受け、「国史たちの対話」企画当時から構想されていた、20世紀の戦争と植民地支配をめぐる国民の歴史認識をテーマに掲げた。多様な切り口から豊かな対話がなされ、「国史たちの対話」企画の目標の一つが達成された。今後はこれまでの対話で培った日中韓の国史研究者のネットワークをいかに発展させていくか、またそのためにどのような方針で対話を継続していくかが課題となるだろう。 こうした新たな段階を迎えて、第9回となる今回は、開催地にちなみ、「東南アジア」と各国の国史の関係をテーマとして掲げた。日本・中国・韓国における国史研究は、過去から現在に至るまで、なぜ、どのように、東南アジアに注目してきたのだろうか。過去の様々な段階で、様々な政治、経済、文化における交流や「進出」があった。それらは政府間の関係であったり、それにとどまらない人やモノの移動であったりもした。こうした諸関係や、それらへの関心のあり方は、各国ではかなり事情が異なってきた。こうした直接・間接の関係の解明に加え、比較的条件の近い事例として、自国の歩みとの比較も行われてきた。そもそも「東南アジア」という枠組み自体も、国民国家や「東アジア」といった枠組みと同様、世界の激動のなかで生み出されたものであり、歴史学の考察対象となってきた。 本シンポジウムでは、各国の気鋭の論者により、過去の研究動向と最先端の成果が紹介される。これらの研究は、どのような社会的・歴史的な背景のもとで進められてきたのか。こうした手法・視座を用いることで、自国史にいかなる影響があり、また今後はどのような展望が描かれるのか。議論と対話を通じて3カ国の国史の対話を、より多元的な文脈のうちに位置づけ、さらに開いたものとし、発展の方向性をも考える機会としたい。 ■プログラム 8月10日(土)9:00~12:30(タイ時間)、11:00~14:30(日本時間) 【第1セッション(9:00-10:30) 司会:劉傑(早稲田大学)】 開会挨拶:三谷博(東京大学名誉教授)、趙珖(高麗大学名誉教授) 基調講演:楊奎松(北京大学・華東師範大学) 「ポストコロニアル時代の『ナショナリズム』衝突の原因をめぐる考察―毛沢東時代の領土紛争に関する戦略の変化を手掛かりに」 【第2セッション(11:00-12:30) 司会:南基正(ソウル大学)】 発表: タンシンマンコン・パッタジット(東京大学)「『竹の外交論』における大国関係と小国意識」 吉田ますみ(三井文庫)「日本近代史と東南アジア―1930年代の評価をめぐって―」 尹大栄(ソウル大学)「韓国における東南アジア史研究」 高艷傑(厦門大学)「華僑問題と外交:1959年のインドネシア華人排斥に対する中国政府の対応」 8月11日(日)9:00~15:30(タイ時間)、11:00~17:30(日本時間) 【第3セッション(9:00-10:30) 司会:彭浩(大阪公立大学)】 指定討論と自由討論 討論者: 【韓国】鄭栽賢(木浦大学)、韓成敏(高麗大学) 【日本】佐藤雄基(立教大学)、平山昇(神奈川大学) 【中国】鄭潔西(温州大学)、鄭成(兵庫県立大学) 【第4セッション(11:00-12:30) 司会:鄭淳一(高麗大学)】 自由討論 討論まとめ:劉傑(早稲田大学) 【第5セッション(14:00-15:30) 司会:塩出浩之(京都大学)】 国史対話のこれから 閉会挨拶:宋志勇 ※同時通訳 日本語⇔中国語:丁莉(北京大学)、宋剛(北京外国語大学) 日本語⇔韓国語:李ヘリ(韓国外国語大学)、安 ヨンヒ(韓国外国語大学) 中国語⇔韓国語:金丹実(フリーランス)、朴賢(京都大学) ※詳細は下記リンクをご参照ください。 ・プロジェクト概要 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/03/J_Kokushi9_ProjectPlan.pdf ・ポスター https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/06/J_SGRAForum74LITE.png ・中国語版ウェブサイト https://www.aisf.or.jp/sgra/chinese/2024/06/11/kokushi9/ ・韓国語版ウェブサイト https://www.aisf.or.jp/sgra/korean/2024/06/11/kokushi9/ ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方はSGRA事務局にご連絡ください。 https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ ********************************************* -
SIM Minseop “A Letter Reflecting on My Service and Dedicated to All Who have Supported Me”
2024年7月25日 21:43:39
※上手く配信できなかったため7月18日号を再配信します。 ********************************************** SGRAかわらばん1025号(2024年7月18日) 【1】シム・ミンソプ「私の奉仕活動を振り返り、私を支えてくれた皆様へ捧げる書簡」 【2】第9回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性「東アジアの『国史』と東南アジア」へのお誘い(再送) ********************************************** 【1】シム・ミンソプ「私の奉仕活動を振り返り、私を支えてくれた皆様へ捧げる書簡」 窓を通り抜ける風の音が聞こえるほど静かな夜明け。日本では渥美国際交流財団の30周年イベントがこの時間帯に行われているだろう。私は小さな照明と温かいお茶を親しみながら、英国で、この1年間を振り返ろうとこの文を書いている。最大のイベントに参加できず残念でならないが... 2023年3月の真夜中過ぎ、眠りにつこうとしたその時、メール通知音で目が覚めた。 「トルコ地震の被災地にスタッフとして参加できれば連絡ください」 2023年の新年、始まりのドキドキ感に満ちていた2月、トルコとシリアは大地震に襲われた。 世界中から救援活動と支援の手がトルコに向かっていた。少しずつ温かい春の気配が冬の名残を追い払いつつある時期、家族を残し英国へ向かった。いつも憂鬱だと感じる英国の天候は、銀色の海に静かに浮かぶ街のように深い霧に覆われていた。私を待つチームは紅潮した顔で、突然の準備に緊張感が漂っていたが、久しぶりの再会を喜んでいる様子だった。長い移動の疲れを癒す余裕もなく我々はトルコに向かった。 “惨状だった。これまでの救援活動の現場とは比べものにならないほど惨かった” 現場を確認し、本格的な活動に備えて救援物資の調整のため少し離れた補給所で活動を始めた。本当に何も考えられないほど忙しい日々が続いた。ほんの少し目をつぶって仮眠だけでも取ろうとしたその時、周りで騒々しい声や悲鳴が聞こえ、血を流しながら倒れる仲間の姿が見えた。救援物資を強奪する現地の人々で大混乱になり、私たちは呆然とただ見守ることしかできなかった。 “私たちの奉仕活動はこのような人々のためだったのか。私たちの活動の意味は一体どこにあるのか” 答えを見出せないまま活動を終えようとしていた頃、団体からまた別の連絡があり、団体の配慮と支援のお陰でガーナに向かった。私と妻によく懐いていた子どもが、私と妻に会いたがっているという。事故で、もう少しでこの世を去らねばならないかもしれないという悲しい知らせだった...私は疲れ切った体で飛行機に乗り、何も考えずガーナに向かった。残念ながら体と心は疲労の極みにあった。しかし到着して、私の心はすぐに罪悪感に襲われ、涙が溢れとまらなかった。その小さな手には、私たちの団体の名前が書かれた読めない手紙と、私と撮った写真が握りしめられていたからだ。 “この小さな子供にとって、私は親友であり、生きる希望だったのではないか” 「悪かった、遅くなって。もしかしたら私は君にとって人生の全てだったかもしれないのに、ただすれ違う一時の出会いだと思ってしまい、自分の疲れた心を優先した。本当にごめんなさい」ただただ涙を流した。数日後、その子はこの世を去った。私は一緒に掘った井戸のそばに佇んで、私の真心が届くようにと祈った。 日常に戻った私は、他の皆と同じように論文執筆に集中し、日々を過ごしている。日常の流れに身を任せ、無気力になっていた私にとって、財団への参加は単なる義務だったかもしれない。しかし、参加のための準備をしている最中、鏡を見ると、いつの間にか参加への期待感で顔がほころんでいた。久しぶりの笑顔だ。1度、2度、参加が重なることで、徐々に前向きに変わっていく自分が新鮮に感じられ、活動中の日々での仲間が、私にとって次第に大切な人々と感じられるようになっていった。 私の心の変化を、財団でもすぐに分かったようだ。 「顔が随分明るくなりましたね」と、常務理事の今西さんが気づいてくださった。 空虚だった心と疲れた心を黙々と支えてくれたのが、今年の私にとっての大きな変化だった財団の存在だと思う。私の姿をただ応援し励ましてくれ、私の帰るべき場所となってくれた財団があったからこそ、自分の道を歩むことができた。 世の中が変わっていく時、共に自分自身もそのような社会と似て変わってきたのではないか。今の自分に失望し、言い訳ばかりしていた。今までは過ぎ去る時の中で、この世に生を受けた意味への答えは見出せなかったが、やっとそれを見つけた気がする。 「現場で私を必要とする人と共に生きていこう」 「国境なき医師団」での活動をより躊躇なく遂行できるようしっかりと支えてくれる渥美財団があることで、私は自分の人生の方向を決めることができた。人生への答えを見出すべく、ずっと1人で歩んできたと思っていたが、結局、だれかと共に歩むことでこそ真の意味を見出せることが、今やっと分かった。この発見が遅くなったことについての後悔よりも、感謝の気持ちが大きくなっている。 これから英国に戻り、研究員としての計画に取り組み、それが終わり次第また現場に戻ろうと思う。これが私の道だと信じて、いつか過ぎ去った時の中で答えを見出せなかったとき、誰かが「正しい道を1人で歩んできたか」と訊ねれば、答えられるだろう。「共に歩み、私を支えてくれた人がいる」と。そして、今までの過去に後悔はないと。 歩んできた道が善き道であるよう、そしてまたいつか善き影響力を及ぼすことができたらと願う。皆とこれから別の道を歩んでいくことになるかもしれないし、アカデミズムから遠のくこともあるかもしれない。それでも、皆の活動を遠くからでも聞き、知ることができれば、再び立ち上がる力を得られるだろう。 どんな私であっても財団を訪ねると、喜んで迎えてくれるという確信ができた。そしてこの確信は財団が私にくれたものだ。これからの私の進む道が財団への恩返しとなっていればと願う。 用意しておいたお茶が冷めていく今、この手紙を締めくくろうとしている。書き始めた時は名残惜しい気持ちでいっぱいだったが、30周年イベントでの同期の写真が送られてきて、皆の心が私に届いた今、再び明るい笑顔を浮かべてこの手紙を締めくくることができる。 静かでいつもより冷たい空気が漂っていた銀色の街ロンドンは、徐々に昇る陽ざしと共に金色に染まっていく。 「後輩たちに、私たちが過ごした暖かさに満ちたこの場所を譲る時が来た。皆に今のこの金色の光のように明るい未来が共にあることを願って...」 <シム・ミンソプ SIM_Minseop> ロンドン大学衛生熱帯医学大学院熱帯疾病研究所特別訪問研究員。一橋大学大学院社会研究科歴史専攻博士課程満期退学。東京大学論文博士修了予定。韓国国家記録院海外史料調査委員、韓国空軍士官学校特性化専門研究室?軍事人文研究室郊外研究室研究員、朝鮮史研究会幹事、日本歴史学協会若手研究者問題特別委員。国境なき医師団ヘルスプロモーターとして、現在ウガンダで活動中。 ---------------------------------------------------------------- 【2】第9回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性へのお誘い(再送) 下記の通り第9回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性を開催いたします。参加ご希望の方は、必ず事前に参加登録をお願いします。オンラインで参加の場合は、一般聴講者はカメラもマイクもオフのウェビナー形式で開催しますので、お気軽にご参加ください。 テーマ:「東アジアの『国史』と東南アジア」 日時: 2024年8月10日(土)9:00~12:30(タイ時間)11:00~14:30(日本時間) 2024年8月11日(日)9:00~15:30(タイ時間)11:00~17:30(日本時間) 会場:チュラーロンコーン大学(タイ国バンコク市)及びオンライン(Zoomウェビナー) 言語:日中韓3言語同時通訳付き 主催:日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性実行委員会 共催:渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA) 助成:東京倶楽部 ※参加申込(会場参加の方もオンライン参加の方も参加登録をお願いします) https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_8k7udrxcSU2qA4VWEuR0Sw#/registration (注)会場参加の方は第7回アジア未来会議へも参加していただくことになります。 https://www.aisf.or.jp/AFC/2024/ お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) 開催趣旨 「国史たちの対話」企画は、日中韓「国史」研究者の交流を深めることによって、知のプラットフォームを構築し、三国間に存在する歴史認識問題の克服に知恵を提供することを目的に対話を重ねてきた。第1回で日中韓各国の国史研究と歴史教育の状況を確認することからスタートし、その後13世紀から時代を下りながらテーマを設け、対話を深めてきた。新型コロナ下でもオンラインでの対話を実施し、その特性を考慮して、歴史学を取り巻くタイムリーなテーマを取り上げてきた。 昨年は対面型での再開が可能となったことを受け、「国史たちの対話」企画当時から構想されていた、20世紀の戦争と植民地支配をめぐる国民の歴史認識をテーマに掲げた。多様な切り口から豊かな対話がなされ、「国史たちの対話」企画の目標の一つが達成された。今後はこれまでの対話で培った日中韓の国史研究者のネットワークをいかに発展させていくか、またそのためにどのような方針で対話を継続していくかが課題となるだろう。 こうした新たな段階を迎えて、第9回となる今回は、開催地にちなみ、「東南アジア」と各国の国史の関係をテーマとして掲げた。日本・中国・韓国における国史研究は、過去から現在に至るまで、なぜ、どのように、東南アジアに注目してきたのだろうか。過去の様々な段階で、様々な政治、経済、文化における交流や「進出」があった。それらは政府間の関係であったり、それにとどまらない人やモノの移動であったりもした。こうした諸関係や、それらへの関心のあり方は、各国ではかなり事情が異なってきた。こうした直接・間接の関係の解明に加え、比較的条件の近い事例として、自国の歩みとの比較も行われてきた。そもそも「東南アジア」という枠組み自体も、国民国家や「東アジア」といった枠組みと同様、世界の激動のなかで生み出されたものであり、歴史学の考察対象となってきた。 本シンポジウムでは、各国の気鋭の論者により、過去の研究動向と最先端の成果が紹介される。これらの研究は、どのような社会的・歴史的な背景のもとで進められてきたのか。こうした手法・視座を用いることで、自国史にいかなる影響があり、また今後はどのような展望が描かれるのか。議論と対話を通じて3カ国の国史の対話を、より多元的な文脈のうちに位置づけ、さらに開いたものとし、発展の方向性をも考える機会としたい。 ■プログラム 8月10日(土)9:00~12:30(タイ時間)、11:00~14:30(日本時間) 【第1セッション(9:00-10:30) 司会:劉傑(早稲田大学)】 開会挨拶:三谷博(東京大学名誉教授)、趙珖(高麗大学名誉教授) 基調講演:楊奎松(北京大学・華東師範大学) 「ポストコロニアル時代の『ナショナリズム』衝突の原因をめぐる考察―毛沢東時代の領土紛争に関する戦略の変化を手掛かりに」 【第2セッション(11:00-12:30) 司会:南基正(ソウル大学)】 発表: タンシンマンコン・パッタジット(東京大学)「『竹の外交論』における大国関係と小国意識」 吉田ますみ(三井文庫)「日本近代史と東南アジア―1930年代の評価をめぐって―」 尹大栄(ソウル大学)「韓国における東南アジア史研究」 高艷傑(厦門大学)「華僑問題と外交:1959年のインドネシア華人排斥に対する中国政府の対応」 8月11日(日)9:00~15:30(タイ時間)、11:00~17:30(日本時間) 【第3セッション(9:00-10:30) 司会:彭浩(大阪公立大学)】 指定討論と自由討論 討論者: 【韓国】鄭栽賢(木浦大学)、韓成敏(高麗大学) 【日本】佐藤雄基(立教大学)、平山昇(神奈川大学) 【中国】鄭潔西(温州大学)、鄭成(兵庫県立大学) 【第4セッション(11:00-12:30) 司会:鄭淳一(高麗大学)】 自由討論 討論まとめ:劉傑(早稲田大学) 【第5セッション(14:00-15:30) 司会:塩出浩之(京都大学)】 国史対話のこれから 閉会挨拶:宋志勇 ※同時通訳 日本語⇔中国語:丁莉(北京大学)、宋剛(北京外国語大学) 日本語⇔韓国語:李ヘリ(韓国外国語大学)、安 ヨンヒ(韓国外国語大学) 中国語⇔韓国語:金丹実(フリーランス)、朴賢(京都大学) ※詳細は下記リンクをご参照ください。 ・プロジェクト概要 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/03/J_Kokushi9_ProjectPlan.pdf ・ポスター https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/06/J_SGRAForum74LITE.png ・中国語版ウェブサイト https://www.aisf.or.jp/sgra/chinese/2024/06/11/kokushi9/ ・韓国語版ウェブサイト https://www.aisf.or.jp/sgra/korean/2024/06/11/kokushi9/ ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方はSGRA事務局にご連絡ください。 https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ ********************************************* -
SIM Minseop “A Letter Reflecting on My Service and Dedicated to All Who have Supported Me”
2024年7月18日 21:24:50
********************************************** SGRAかわらばん1025号(2024年7月18 日) 【1】シム・ミンソプ「私の奉仕活動を振り返り、私を支えてくれた皆様へ捧げる書簡」 【2】第9回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性「東アジアの『国史』と東南アジア」へのお誘い(再送) ********************************************** 【1】シム・ミンソプ「私の奉仕活動を振り返り、私を支えてくれた皆様へ捧げる書簡」 窓を通り抜ける風の音が聞こえるほど静かな夜明け。日本では渥美国際交流財団の30周年イベントがこの時間帯に行われているだろう。私は小さな照明と温かいお茶を親しみながら、英国で、この1年間を振り返ろうとこの文を書いている。最大のイベントに参加できず残念でならないが... 2023年3月の真夜中過ぎ、眠りにつこうとしたその時、メール通知音で目が覚めた。 「トルコ地震の被災地にスタッフとして参加できれば連絡ください」 2023年の新年、始まりのドキドキ感に満ちていた2月、トルコとシリアは大地震に襲われた。 世界中から救援活動と支援の手がトルコに向かっていた。少しずつ温かい春の気配が冬の名残を追い払いつつある時期、家族を残し英国へ向かった。いつも憂鬱だと感じる英国の天候は、銀色の海に静かに浮かぶ街のように深い霧に覆われていた。私を待つチームは紅潮した顔で、突然の準備に緊張感が漂っていたが、久しぶりの再会を喜んでいる様子だった。長い移動の疲れを癒す余裕もなく我々はトルコに向かった。 “惨状だった。これまでの救援活動の現場とは比べものにならないほど惨かった” 現場を確認し、本格的な活動に備えて救援物資の調整のため少し離れた補給所で活動を始めた。本当に何も考えられないほど忙しい日々が続いた。ほんの少し目をつぶって仮眠だけでも取ろうとしたその時、周りで騒々しい声や悲鳴が聞こえ、血を流しながら倒れる仲間の姿が見えた。救援物資を強奪する現地の人々で大混乱になり、私たちは呆然とただ見守ることしかできなかった。 “私たちの奉仕活動はこのような人々のためだったのか。私たちの活動の意味は一体どこにあるのか” 答えを見出せないまま活動を終えようとしていた頃、団体からまた別の連絡があり、団体の配慮と支援のお陰でガーナに向かった。私と妻によく懐いていた子どもが、私と妻に会いたがっているという。事故で、もう少しでこの世を去らねばならないかもしれないという悲しい知らせだった...私は疲れ切った体で飛行機に乗り、何も考えずガーナに向かった。残念ながら体と心は疲労の極みにあった。しかし到着して、私の心はすぐに罪悪感に襲われ、涙が溢れとまらなかった。その小さな手には、私たちの団体の名前が書かれた読めない手紙と、私と撮った写真が握りしめられていたからだ。 “この小さな子供にとって、私は親友であり、生きる希望だったのではないか” 「悪かった、遅くなって。もしかしたら私は君にとって人生の全てだったかもしれないのに、ただすれ違う一時の出会いだと思ってしまい、自分の疲れた心を優先した。本当にごめんなさい」ただただ涙を流した。数日後、その子はこの世を去った。私は一緒に掘った井戸のそばに佇んで、私の真心が届くようにと祈った。 日常に戻った私は、他の皆と同じように論文執筆に集中し、日々を過ごしている。日常の流れに身を任せ、無気力になっていた私にとって、財団への参加は単なる義務だったかもしれない。しかし、参加のための準備をしている最中、鏡を見ると、いつの間にか参加への期待感で顔がほころんでいた。久しぶりの笑顔だ。1度、2度、参加が重なることで、徐々に前向きに変わっていく自分が新鮮に感じられ、活動中の日々での仲間が、私にとって次第に大切な人々と感じられるようになっていった。 私の心の変化を、財団でもすぐに分かったようだ。 「顔が随分明るくなりましたね」と、常務理事の今西さんが気づいてくださった。 空虚だった心と疲れた心を黙々と支えてくれたのが、今年の私にとっての大きな変化だった財団の存在だと思う。私の姿をただ応援し励ましてくれ、私の帰るべき場所となってくれた財団があったからこそ、自分の道を歩むことができた。 世の中が変わっていく時、共に自分自身もそのような社会と似て変わってきたのではないか。今の自分に失望し、言い訳ばかりしていた。今までは過ぎ去る時の中で、この世に生を受けた意味への答えは見出せなかったが、やっとそれを見つけた気がする。 「現場で私を必要とする人と共に生きていこう」 「国境なき医師団」での活動をより躊躇なく遂行できるようしっかりと支えてくれる渥美財団があることで、私は自分の人生の方向を決めることができた。人生への答えを見出すべく、ずっと1人で歩んできたと思っていたが、結局、だれかと共に歩むことでこそ真の意味を見出せることが、今やっと分かった。この発見が遅くなったことについての後悔よりも、感謝の気持ちが大きくなっている。 これから英国に戻り、研究員としての計画に取り組み、それが終わり次第また現場に戻ろうと思う。これが私の道だと信じて、いつか過ぎ去った時の中で答えを見出せなかったとき、誰かが「正しい道を1人で歩んできたか」と訊ねれば、答えられるだろう。「共に歩み、私を支えてくれた人がいる」と。そして、今までの過去に後悔はないと。 歩んできた道が善き道であるよう、そしてまたいつか善き影響力を及ぼすことができたらと願う。皆とこれから別の道を歩んでいくことになるかもしれないし、アカデミズムから遠のくこともあるかもしれない。それでも、皆の活動を遠くからでも聞き、知ることができれば、再び立ち上がる力を得られるだろう。 どんな私であっても財団を訪ねると、喜んで迎えてくれるという確信ができた。そしてこの確信は財団が私にくれたものだ。これからの私の進む道が財団への恩返しとなっていればと願う。 用意しておいたお茶が冷めていく今、この手紙を締めくくろうとしている。書き始めた時は名残惜しい気持ちでいっぱいだったが、30周年イベントでの同期の写真が送られてきて、皆の心が私に届いた今、再び明るい笑顔を浮かべてこの手紙を締めくくることができる。 静かでいつもより冷たい空気が漂っていた銀色の街ロンドンは、徐々に昇る陽ざしと共に金色に染まっていく。 「後輩たちに、私たちが過ごした暖かさに満ちたこの場所を譲る時が来た。皆に今のこの金色の光のように明るい未来が共にあることを願って...」 <シム・ミンソプ SIM_Minseop> ロンドン大学衛生熱帯医学大学院熱帯疾病研究所特別訪問研究員。一橋大学大学院社会研究科歴史専攻博士課程満期退学。東京大学論文博士修了予定。韓国国家記録院海外史料調査委員、韓国空軍士官学校特性化専門研究室?軍事人文研究室郊外研究室研究員、朝鮮史研究会幹事、日本歴史学協会若手研究者問題特別委員。国境なき医師団ヘルスプロモーターとして、現在ウガンダで活動中。 ---------------------------------------------------------------- 【2】第9回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性へのお誘い(再送) 下記の通り第9回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性を開催いたします。参加ご希望の方は、必ず事前に参加登録をお願いします。オンラインで参加の場合は、一般聴講者はカメラもマイクもオフのウェビナー形式で開催しますので、お気軽にご参加ください。 テーマ:「東アジアの『国史』と東南アジア」 日時: 2024年8月10日(土)9:00~12:30(タイ時間)11:00~14:30(日本時間) 2024年8月11日(日)9:00~15:30(タイ時間)11:00~17:30(日本時間) 会場:チュラーロンコーン大学(タイ国バンコク市)及びオンライン(Zoomウェビナー) 言語:日中韓3言語同時通訳付き 主催:日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性実行委員会 共催:渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA) 助成:東京倶楽部 ※参加申込(会場参加の方もオンライン参加の方も参加登録をお願いします) https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_8k7udrxcSU2qA4VWEuR0Sw#/registration (注)会場参加の方は第7回アジア未来会議へも参加していただくことになります。 https://www.aisf.or.jp/AFC/2024/ お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) 開催趣旨 「国史たちの対話」企画は、日中韓「国史」研究者の交流を深めることによって、知のプラットフォームを構築し、三国間に存在する歴史認識問題の克服に知恵を提供することを目的に対話を重ねてきた。第1回で日中韓各国の国史研究と歴史教育の状況を確認することからスタートし、その後13世紀から時代を下りながらテーマを設け、対話を深めてきた。新型コロナ下でもオンラインでの対話を実施し、その特性を考慮して、歴史学を取り巻くタイムリーなテーマを取り上げてきた。 昨年は対面型での再開が可能となったことを受け、「国史たちの対話」企画当時から構想されていた、20世紀の戦争と植民地支配をめぐる国民の歴史認識をテーマに掲げた。多様な切り口から豊かな対話がなされ、「国史たちの対話」企画の目標の一つが達成された。今後はこれまでの対話で培った日中韓の国史研究者のネットワークをいかに発展させていくか、またそのためにどのような方針で対話を継続していくかが課題となるだろう。 こうした新たな段階を迎えて、第9回となる今回は、開催地にちなみ、「東南アジア」と各国の国史の関係をテーマとして掲げた。日本・中国・韓国における国史研究は、過去から現在に至るまで、なぜ、どのように、東南アジアに注目してきたのだろうか。過去の様々な段階で、様々な政治、経済、文化における交流や「進出」があった。それらは政府間の関係であったり、それにとどまらない人やモノの移動であったりもした。こうした諸関係や、それらへの関心のあり方は、各国ではかなり事情が異なってきた。こうした直接・間接の関係の解明に加え、比較的条件の近い事例として、自国の歩みとの比較も行われてきた。そもそも「東南アジア」という枠組み自体も、国民国家や「東アジア」といった枠組みと同様、世界の激動のなかで生み出されたものであり、歴史学の考察対象となってきた。 本シンポジウムでは、各国の気鋭の論者により、過去の研究動向と最先端の成果が紹介される。これらの研究は、どのような社会的・歴史的な背景のもとで進められてきたのか。こうした手法・視座を用いることで、自国史にいかなる影響があり、また今後はどのような展望が描かれるのか。議論と対話を通じて3カ国の国史の対話を、より多元的な文脈のうちに位置づけ、さらに開いたものとし、発展の方向性をも考える機会としたい。 ■プログラム 8月10日(土)9:00~12:30(タイ時間)、11:00~14:30(日本時間) 【第1セッション(9:00-10:30) 司会:劉傑(早稲田大学)】 開会挨拶:三谷博(東京大学名誉教授)、趙珖(高麗大学名誉教授) 基調講演:楊奎松(北京大学・華東師範大学) 「ポストコロニアル時代の『ナショナリズム』衝突の原因をめぐる考察―毛沢東時代の領土紛争に関する戦略の変化を手掛かりに」 【第2セッション(11:00-12:30) 司会:南基正(ソウル大学)】 発表: タンシンマンコン・パッタジット(東京大学)「『竹の外交論』における大国関係と小国意識」 吉田ますみ(三井文庫)「日本近代史と東南アジア―1930年代の評価をめぐって―」 尹大栄(ソウル大学)「韓国における東南アジア史研究」 高艷傑(厦門大学)「華僑問題と外交:1959年のインドネシア華人排斥に対する中国政府の対応」 8月11日(日)9:00~15:30(タイ時間)、11:00~17:30(日本時間) 【第3セッション(9:00-10:30) 司会:彭浩(大阪公立大学)】 指定討論と自由討論 討論者: 【韓国】鄭栽賢(木浦大学)、韓成敏(高麗大学) 【日本】佐藤雄基(立教大学)、平山昇(神奈川大学) 【中国】鄭潔西(温州大学)、鄭成(兵庫県立大学) 【第4セッション(11:00-12:30) 司会:鄭淳一(高麗大学)】 自由討論 討論まとめ:劉傑(早稲田大学) 【第5セッション(14:00-15:30) 司会:塩出浩之(京都大学)】 国史対話のこれから 閉会挨拶:宋志勇 ※同時通訳 日本語⇔中国語:丁莉(北京大学)、宋剛(北京外国語大学) 日本語⇔韓国語:李ヘリ(韓国外国語大学)、安 ヨンヒ(韓国外国語大学) 中国語⇔韓国語:金丹実(フリーランス)、朴賢(京都大学) ※詳細は下記リンクをご参照ください。 ・プロジェクト概要 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/03/J_Kokushi9_ProjectPlan.pdf ・ポスター https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/06/J_SGRAForum74LITE.png ・中国語版ウェブサイト https://www.aisf.or.jp/sgra/chinese/2024/06/11/kokushi9/ ・韓国語版ウェブサイト https://www.aisf.or.jp/sgra/korean/2024/06/11/kokushi9/ ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方はSGRA事務局にご連絡ください。 https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ ********************************************* -
Invitation to the 9th Forum for the Kokushi Dialogue
2024年7月11日 12:59:09
********************************************** SGRAかわらばん1024号(2024年7月11 日) ********************************************** ◆第74回SGRAフォーラム第9回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性「東アジアの『国史』と東南アジア」へのお誘い 下記の通り第9回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性を開催いたします。参加ご希望の方は、必ず事前に参加登録をお願いします。オンラインで参加の場合は、一般聴講者はカメラもマイクもオフのウェビナー形式で開催しますので、お気軽にご参加ください。 テーマ:「東アジアの『国史』と東南アジア」 日時: 2023年8月10日(土)9:00~12:30(タイ時間)11:00~14:30(日本時間) 2023年8月11日(日)9:00~15:30(タイ時間)11:00~17:30(日本時間) 会場:チュラーロンコーン大学(タイ国バンコク市)及びオンライン(Zoomウェビナー) 言語:日中韓3言語同時通訳付き 主催:日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性実行委員会 共催:渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA) 助成:東京倶楽部 ※参加申込(会場参加の方もオンライン参加の方も参加登録をお願いします) https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_8k7udrxcSU2qA4VWEuR0Sw#/registration (注)会場参加の方は第7回アジア未来会議へも参加していただくことになります。 https://www.aisf.or.jp/AFC/2024/ お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) 開催趣旨 「国史たちの対話」企画は、日中韓「国史」研究者の交流を深めることによって、知のプラットフォームを構築し、三国間に存在する歴史認識問題の克服に知恵を提供することを目的に対話を重ねてきた。第1回で日中韓各国の国史研究と歴史教育の状況を確認することからスタートし、その後13世紀から時代を下りながらテーマを設け、対話を深めてきた。新型コロナ下でもオンラインでの対話を実施し、その特性を考慮して、歴史学を取り巻くタイムリーなテーマを取り上げてきた。 昨年は対面型での再開が可能となったことを受け、「国史たちの対話」企画当時から構想されていた、20世紀の戦争と植民地支配をめぐる国民の歴史認識をテーマに掲げた。多様な切り口から豊かな対話がなされ、「国史たちの対話」企画の目標の一つが達成された。今後はこれまでの対話で培った日中韓の国史研究者のネットワークをいかに発展させていくか、またそのためにどのような方針で対話を継続していくかが課題となるだろう。 こうした新たな段階を迎えて、第9回となる今回は、開催地にちなみ、「東南アジア」と各国の国史の関係をテーマとして掲げた。日本・中国・韓国における国史研究は、過去から現在に至るまで、なぜ、どのように、東南アジアに注目してきたのだろうか。過去の様々な段階で、様々な政治、経済、文化における交流や「進出」があった。それらは政府間の関係であったり、それにとどまらない人やモノの移動であったりもした。こうした諸関係や、それらへの関心のあり方は、各国ではかなり事情が異なってきた。こうした直接・間接の関係の解明に加え、比較的条件の近い事例として、自国の歩みとの比較も行われてきた。そもそも「東南アジア」という枠組み自体も、国民国家や「東アジア」といった枠組みと同様、世界の激動のなかで生み出されたものであり、歴史学の考察対象となってきた。 本シンポジウムでは、各国の気鋭の論者により、過去の研究動向と最先端の成果が紹介される。これらの研究は、どのような社会的・歴史的な背景のもとで進められてきたのか。こうした手法・視座を用いることで、自国史にいかなる影響があり、また今後はどのような展望が描かれるのか。議論と対話を通じて3カ国の国史の対話を、より多元的な文脈のうちに位置づけ、さらに開いたものとし、発展の方向性をも考える機会としたい。 ■プログラム 8月10日(土)9:00~12:30(タイ時間)、11:00~14:30(日本時間) 【第1セッション(9:00-10:30) 司会:劉傑(早稲田大学)】 開会挨拶:三谷博(東京大学名誉教授)、趙珖(高麗大学名誉教授) 基調講演:楊奎松(北京大学・華東師範大学) 「ポストコロニアル時代の『ナショナリズム』衝突の原因をめぐる考察―毛沢東時代の領土紛争に関する戦略の変化を手掛かりに」 【第2セッション(11:00-12:30) 司会:南基正(ソウル大学)】 発表: タンシンマンコン・パッタジット(東京大学)「『竹の外交論』における大国関係と小国意識」 吉田ますみ(三井文庫)「日本近代史と東南アジア―1930年代の評価をめぐって―」 尹大栄(ソウル大学)「韓国における東南アジア史研究」 高艷傑(厦門大学)「華僑問題と外交:1959年のインドネシア華人排斥に対する中国政府の対応」 8月11日(日)9:00~15:30(タイ時間)、11:00~17:30(日本時間) 【第3セッション(9:00-10:30) 司会:彭浩(大阪公立大学)】 指定討論と自由討論 討論者: 【韓国】鄭栽賢(木浦大学)、韓成敏(高麗大学) 【日本】佐藤雄基(立教大学)、平山昇(神奈川大学) 【中国】鄭潔西(温州大学)、鄭成(兵庫県立大学) 【第4セッション(11:00-12:30) 司会:鄭淳一(高麗大学)】 自由討論 討論まとめ:劉傑(早稲田大学) 【第5セッション(14:00-15:30) 司会:塩出浩之(京都大学)】 国史対話のこれから 閉会挨拶:宋志勇 ※同時通訳 日本語⇔中国語:丁莉(北京大学)、宋剛(北京外国語大学) 日本語⇔韓国語:李ヘリ(韓国外国語大学)、安 ヨンヒ(韓国外国語大学) 中国語⇔韓国語:金丹実(フリーランス)、朴賢(京都大学) ※詳細は下記リンクをご参照ください。 ・プロジェクト概要 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/03/J_Kokushi9_ProjectPlan.pdf ・ポスター https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/06/J_SGRAForum74LITE.png ・中国語版ウェブサイト https://www.aisf.or.jp/sgra/chinese/2024/06/11/kokushi9/ ・韓国語版ウェブサイト https://www.aisf.or.jp/sgra/korean/2024/06/11/kokushi9/ ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方はSGRA事務局にご連絡ください。 https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ ********************************************* -
LI Kotetsu “Will the Tumen River Golden Delta Development be in the spotlight anew?”
2024年7月4日 14:49:37
********************************************** SGRAかわらばん1023号(2024年7月4日) 【1】エッセイ:李鋼哲「図們江ゴールデン・デルタ開発は新たに脚光を浴びるのか」 【2】国史対話エッセイ紹介:福間良明「歴史学と社会学のはざまで」 ********************************************** 【1】SGRAエッセイ#770 ◆李鋼哲「図們江ゴールデン・デルタ開発は新たに脚光を浴びるのか」 2024年6月19日、朝鮮民主主義人民共和国(略称「朝鮮」、日本では「北朝鮮」と呼ぶ)を訪問していたロシアのプーチン大統領と金正恩(キム・ジョンウン)委員長との間で『包括的戦略パートナーシップ条約』が締結された。軍事同盟に近い「互いの国が第三国から攻撃された場合には互いに支援する」という項目が盛り込まれた。合意文書には「図們江※に架かる国境道路橋の建設に関する」両国政府間の合意も含まれたという。5月16~17日に国賓として訪中したプーチン大統領は習近平国家主席と会談し、共同声明を発表した。その中で、プーチン大統領は「(中露)両国は図們江下流域を航行する中国船舶の問題について朝鮮民主主義人民共和国と建設的な対話を行う」と約束した。 私の専門である図們江ゴールデン・デルタの国際開発が、朝露関係の変化で転機になる可能性が出てきた。33年前の1991年9月に中国・長春で開催された「東北アジア経済フォーラム」には、東北アジア6カ国から代表や専門家たちが参加したが、中国・吉林省代表が「図們江ゴールデン・デルタの国際開発」構想を提案し注目を集めた。94年には国連開発計画(UNDP)が現地調査をしてリポートを提出し、開発計画を多国間協力プロジェクトとして進めることが決まった。1995年、このプロジェクトを実行するためにニューヨークに図們江事務局(Tumen_Secretariat)を設置し、関係5カ国(中国、ロシア、朝鮮、韓国、モンゴル。=日本はメンバーになることを断った)からスタッフを派遣し運営していたが、翌96年には北京に事務局を移転し現在に至る。 私は1991年に来日し94年に大学院に入学した頃、この情報に接した。そして、図們江開発プロジェクトを研究テーマとして決めた。このテーマは私にとっては特別な意味があると思い、私の生涯の課題、歴史的な使命として受け取り、30年間研究してきた。というのもこの開発計画の中国側の延辺は私の故郷であり、朝鮮半島は祖先の国であり、2つの言語に恵まれているだけではなく、北京の大学院ではロシア語を独学していたので、3か国語が分かる自分にとっては二度とない貴重なチャンスだったと思ったからである。 アルバイトで生計を立てる状況にもかかわらず、95年夏休みには現地を訪問。コロナ禍前までほぼ毎年現地調査をした。延辺は故郷であり、延吉市から120キロ先に琿春市があり、そこから30~40キロ先の防川村まで足を運ぶ。その先はロシアと北朝鮮の領土で、展望台からロシアのポシェト港、図們江の対岸は北朝鮮、15キロ先は日本海が肉眼で見える。現在では有数な観光地になり、近くには国連公園までできている。防川から図們江に架けられた約500メートルの橋を渡って、北朝鮮の羅津・先鋒に3回も調査訪問し、バスで陸路からロシアのウラジオストックにも2回訪ねた。 2002年に中国政府が「東北大振興政策」を打ち出したが、図們江から日本海への出口が確保されたら、プロジェクトに新しい機運が生まれるだろう。23年9月7日に習近平主席が黒竜江省ハルビン市で「新時代の東北全面振興を推進する」という座談会を開いた。すると、それに呼応するように9月11~13日にウラジオストクで開催した「東方経済フォーラム」で、プーチン大統領は「ロシアは極東の重点開発戦略に着手する」と宣言した。 ただし、ロシアがどこまで本気なのか疑問もある。ロシアはなぜ米国の同盟外交に対抗して中国との同盟関係を進めないのか。報道によるとロシアの国会議長は、米国との協力関係ができるのであればロシアは中国の台頭を抑えたい、と発言しているという。中露関係はとても親密のよう見えるのに、米国中心の西側同盟に対して、こちらは同盟を作らないのはなぜだろう。両国の心底に不信感があるからだろう。 かつてプーチン大統領と胡錦濤国家主席両首脳による政治決着で、2004年10月14日に最終的な中露国境協定が締結されたが、それ以前に中国側は図們江の防川から日本海までの15キロの領土を譲ってもらい、その代わりに新疆の領土の相当な部分をロシア側に譲渡すると提案したと言われている。ロシア側がその提案を受け入れなかったことから推理すると、両国首脳は「中露関係は『上限なき協力関係』である」と言いながらも、お互いに相手を牽制していることが窺える。 中国のロシアに対する不信感は歴史が長い。1689年清国はロシアとの間で「ネルチンスク条約」を締結し、シベリア東部と極東地域は中国の領土だと決めた。しかし、1840年アヘン戦争に始まる西欧列強の中国侵略と勢力圏分割の流れに乗ったロシア帝国は、強い軍事力を後ろ盾に1860年に清朝との間で「愛琿条約」と「北京条約」を締結し、清国から約160万平方キロメートルの領土を奪ったと中国の歴史教科書で教えている。2008年に国境画定協定が結ばれ、約4,300キロの国境が最終的に確定した際は、中国のネット世論は失った領土を認めたのは「売国行為」だと政府を批判した。 今年5月の習近平主席とプーチン大統領との会談で、「図們江から日本海への出口を確保したい」という中国側の提案に対して、プーチンは「金正恩さんと相談して解決したい」と応答した。それが今回の朝露首脳会談と「共同宣言」の中に盛り込まれ、図們江に鉄道橋に加え新しい道路橋を建設することが決まったという。防川から船で日本海に出るという中国側の念願は達成できるのか、ロシアと中国、ロシアと北朝鮮の間で詳細に関してどう話し合っているのか、今のところ分からない。ただし、中国側の日本海へ自由に出入りしたい30数年来の念願に対してプーチン氏は満足できる回答を出していないのは事実である。朝露間の准同盟条約の締結を含め諸合意に対して、中国側がどう思っているのか推移を見守るしかない。 朝露間の同盟が中朝同盟にどのような影響を及ぼすのか、5月の訪中でプーチン大統領は習近平主席と事前に協議して了解を得ていたのか、それとも中国を蚊帳の外に置いているのか、今までの情報では知るすべがない。中朝露の三角関係が微妙に変化していることが東北アジア地域の地政学をどう変えていくのか、さらなる観察と分析が必要であろう。 ※図們江:国連の公式名称はTumen_River、日本語では「とまんこう」、中国語ではTumen-jiang、朝鮮語では豆満江 <李鋼哲(り・こうてつ)LI Kotetsu> 1985年北京の中央民族大学業後、大学院を経て北京の大学で教鞭を執る。91年来日、立教大学大学院経済学研究科博士課程単位修得済み中退後、2001年より東京財団、名古屋大学国際経済動態研究所、内閣府傘下総合研究開発機構(NIRA)を経て、06年11月より北陸大学で教鞭を執る。2020年10月1日に一般社団法人・東北亜未来構想研究所(INAF)を有志たちと共に創設し所長を務め、日中韓+朝露蒙など多言語能力を生かして、東北アジア地域に関する研究・交流活動を幅広く展開している。SGRA研究員および「構想アジア」チームの代表。近著に『アジア共同体の創成プロセス』、その他書籍・論文や新聞コラム・エッセイ多数。 ---------------------------------------------------------------- 【2】国史対話エッセイ紹介 4月27日に配信した国史対話メールマガジン第56号のエッセイをご紹介します。 ◆福間良明「歴史学と社会学のはざまで」 大学で専任職に就いて20年、大学院に入ってからでも四半世紀あまりが過ぎた。その間、「戦争の記憶」や「格差と教養」の戦後史、知とナショナリズムの近現代史を主たる研究テーマにしてきた。とはいえ、自分の専門を「歴史学」と名乗ることはなく、あくまで「歴史社会学」としている。 歴史学であれば、手垢のつかない文書を掘り起こし、限られた対象や時期に特化しながら、精緻に「史実」を突き詰めることに重きが置かれるように思う。こうした学問的な営みには惹かれるし、「憧れ」もあるのが正直なところである。だが、自分自身の研究を振り返ると、そのような意味での「歴史学」からはやや離れていることも自覚している。自著では半世紀以上の長いスパンを扱うことも少なくない。これまで誰も手を付けなかった史資料を探すのは好きだが、そればかりではなく、比較的入手しやすい当時のメディア言説を扱うこともある。 かといって、社会学に思い入れがあるというわけでもない。何らかの社会学理論を援用して説明するよりは、史料に浮かび上がる時代や社会の様相を実証的・帰納的に読み解くことのほうに、興味関心がある。「歴史社会学」のなかでも、理論志向がつよい研究者は少なくないが、私自身は理論化よりは史資料的な裏付けを重視したいと考えている。端から見ればどうかわからないが、自分自身の位置づけとしては、「歴史学寄りの歴史社会学」あるいは「歴史学と歴史社会学のあいだ」といったところである。このような興味関心に至ったのも、これまで社会学・メディア研究と歴史学・思想史のあいだで揺れ動いた経歴が関わっているように思う。 全文は下記リンクよりお読みください。 https://www.aisf.or.jp/sgra/kokushi/J_Kokushi2024FukumaEssay.pdf ※SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。国史メルマガは毎月1回配信しています。SGRAかわらばんとは別にお送りしますので、ご興味のある方はSGRA事務局にご連絡ください。3言語対応ですので、中国語、韓国語の方々にもご宣伝いただけますと幸いです。 ◇国史メルマガのバックナンバー https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ◇購読登録ご希望の方はSGRA事務局([email protected])へご連絡ください。 ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方はSGRA事務局にご連絡ください。 https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ ********************************************* -
OMINO Akira “The Direction You Came and the Direction You’re Going”
2024年6月27日 20:45:14
********************************************** SGRAかわらばん1022号(2024年6月27日) 【1】エッセイ:小美濃彰「来し方行く末」 【2】寄贈本紹介:『中国民族誌学:100年の軌跡と展望』 ********************************************** 【1】SGRAエッセイ#769 ◆小美濃彰「来し方行く末」 かつては大学院生としての生活すら想像していなかったにもかかわらず、どうしたことか現在も研究を続けることができている。それは偶然でないにしても、すべてが決然とした判断と行動の積み重ねであったわけでもなく、ありがたい縁に導かれてたどりついたというほかない。 大学院博士後期課程への進学後、郵便局でのゆうパック配達と大学での教務補佐とのかけもちで得た収入から研究費用をわずかに捻出していた私にとって、渥美奨学生として研究活動に没頭することのできた1年はきわめて貴重なものとなった。奨学金に支えられながらゆっくりと思考を広げることができたひとまとまりの時間は、それ以前のような生活のなかで断片になっていた時間をいくらかき集めたとしても、代えることはできない。学部生の頃から積み重なっている日本学生支援機構からの借金をさらに膨らませるわけにもいかず、あれやこれやに追われていた生活も、また別の固有な時間であったとはいえど。 釜ヶ崎(大阪)や山谷(東京)における日雇労働運動史に大きな影響を与えた船本洲治という革命家・思想家がいる。船本洲治は1975年6月に沖縄米軍嘉手納基地第2ゲート前での焼身決起をもって、当時の皇太子訪沖に抵抗した。半世紀近くの指名手配生活を経たのち、今年1月に名乗りをあげた桐島聡が加わっていた東アジア反日武装戦線「さそり」のなかでも、帝国主義や植民地主義に対する船本の思想は共有されている。 その船本が猛烈な批判を突きけていた人物である梶大介の思想と活動を、私は研究対象にしている。船本洲治の思想が『新版 黙って野たれ死ぬな』(共和国、2018年)を通じて新しい読者を獲得していることを思えば、私の研究テーマは的を外してしまっているような気がしている。船本による梶大介批判があまりに激烈なために、一体どんな人物なのかという素朴な疑問から史料探索を始めて抜け出せなくなってしまったのだ。かといって、なにかを後悔しているわけでもない。 梶大介には『山谷戦後史を生きて』上・下(績文堂、1977年)という、山谷に関心を寄せたことのある人々のなかでそれなりに知られた著作がある。それを手がかりに何か関連史料を見つけて読んでいけば、この人物がいつどこで何をしていたのかを知るのは、とりたてて難しいことではない。しかしながら、山谷における地域社会と日雇労働運動の歴史という枠組みのなかで何かを考えようとすると、それだけでは梶大介をうまく位置づけることができない気もしていた。 もともと梶大介は『バタヤ物語』(第二書房、1957年)を書いたバタヤ作家として知られていた人物で、その活動と存在は何らかのルートでインドにまで伝わっていたらしい。梶大介を中心とするバタヤ=屑拾いのグループがインドの思想家・社会運動家、ビノーバ・バーベから招待を受け、2名の仲間が渡航予定ということを『読売新聞』(1960年7月29日付夕刊)は報じていた。さらに、梶大介はミサイル試射場建設の是非が激しく争われていた伊豆諸島の新島にも足を運んでいる。思いつくだけでも切りがなく、山谷における運動の前史として時系列に記述を整えただけでは何の意味もつかめないような事実がいくつも連なる。 1993年11月14日に死去した梶大介が同年7月3日に遺した自筆には、釋襤褸という法名と共に「親鸞さま ありがとうございました。/山谷さま ありがとうございました。/和田先生さま ありがとうございました。/すべてのみなさま ありがとうございました。/南無阿弥陀仏」と記されている。「和田先生」とは非戦平和を訴え、かつ「闇の土蜘蛛」による東本願寺大師堂爆破事件(1977年)が意味することの追究にも努めた真宗僧侶・和田稠である。『実践・歎異抄:浄土真実身読記』(いし・かわら・つぶて舎基金/伊豆歎異抄に聞いていく会、1994年)という講述を遺した梶大介は、念仏者としても知られていた。 梶大介の人物の活動と思想を山谷だけで見ることはできないし、また山谷という限られた地域が一体どのような広がりを持つのかということも、丁寧に考える必要があった。そのような意味で、この1年間の研究生活は博士論文を仕上げていく段階でもう一度これまでの作業を見直す、絶対に不可欠な時間であったように思う。その成果として(いまだに...)執筆中の博士論文では、日本における社会運動の高揚期でもあった1960年代に、山谷という場所において無数に折り重なっていた思想の平面を一端でも叙述できるよう試みている。 悠長に構えている場合ではないという叱咤を各方面から受けているところだが、この1年ほど自分自身の研究活動のなかで多くの知的刺激にあふれた密度の高い時間はなかった。一刻も早く博士論文を書き上げなければならない立場ながら、いまに至る道のりを振り返っては感謝の念に堪えない。 <小美濃彰(おみの・あきら)OMINO Akira> 東京都生まれ。東京外国語大学大学院総合国際学研究科博士後期課程単位修得満期退学。東京都公文書館専門員(史料編さん担当)、2023年度渥美奨学生。専門は日本近現代史・都市社会史。 ---------------------------------------------------------------- 【2】寄贈本紹介 SGRA会員で日本学術振興会PD(東京都立大学)の陳昭さんから共著書をご寄贈いただきましたので紹介します。 ◆河合洋尚、奈良雅史、韓敏 編『中国民族誌学:100年の軌跡と展望』 中国を対象とした人類学的研究は膨大だ。本書はそれらを系統的に整理し、ワールドワイドな中国研究・人類学の視点から特色を検討、さらにその営為を「中国民族誌学」と名付けた。地域社会や国家、民族に着目しつつ、その壁を乗り越えることが人類学の第一歩とすれば、その「方法序説」を目指すものである。 発行所 風響社 出版年月日 2024/03/20 ISBN 9784894893597 判型・ページ数 A5・432ページ 詳細は下記リンクをご覧ください。 http://www.fukyo.co.jp/book/b642901.html ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方はSGRA事務局にご連絡ください。 https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ ********************************************* -
KIM Heecheol “AI and Robot Revolution”
2024年6月20日 16:51:38
********************************************** SGRAかわらばん1021号(2024年6月20日) 【1】エッセイ:金希哲「AIとロボット革命」 【2】第73回SGRAフォーラムへのお誘い(最終案内) 「パレスチナの壁:『わたし』との関係は?」(6月25日、東京+オンライン) ********************************************** 【1】SGRAエッセイ#768 ◆金希哲「AIとロボット革命」 ここ数年間で人工知能(Artificial_Intelligence=AI)とロボット工学は目覚ましい発展を遂げました。特にチャットボットのような対話型AIや画像、動画生成AIは日常生活の中でもその影響力を確実に感じることができます。 過去、AI技術の活用性に様々な疑問が寄せられてきましたが、今ではそのような懐疑の声は聞かなくなりました。この数年、AIは囲碁で人間を打ち負かすなど新技術として評価される一方、実用的なアプリケーションとしては性能の問題があったため、実用化には悲観的な専門家も多くいました。しかし、多くの研究者が様々な分野からの研究を行い、その問題を解決できるようになりました。 この変化の中心には、過去の研究方法論を超える新しいアプローチがあります。これまではそれぞれの小さなタスクに焦点を当てていましたが、最近ではより汎用的に活用しようとする努力がなされています。最近のAIは「Transformer」という単一のニューラルネットワーク構造を基盤に発展しており、以前に提案された「画像生成専用構造」、「対話型AI専用構造」などは全てこのTransformer基盤の構造に統一されています。AI研究におけるこのような統一は、学習に必要なノウハウの公開につながり、結果的に誰でもAIを学習させることができるようになり、AI研究を爆発的に加速させました。この汎用的なデータを学習できるTransformer構造の発見により、あらゆる状況に一般的に適用できる「一般人工知能」(Artificial_General_Intelligence=AGI)誕生の可能性まで提起されています。 ロボット工学における革命も始まったばかりです。もともとAIとロボットは同じ研究分野の両輪でした。人間に似た創造物を作る目標は、実体的な面(ハードウェア)と精神的な面(ソフトウェア)の融合があってこそ可能になるはずでした。ロボットという実体とAIという人工的な精神は、そもそも互いに分離しては存在できないものです。しかし、その二つを同時に人間のレベルに引き上げる神話のようなことは起きませんでした。ロボットはAIを搭載しないまま、工場などでのごく単純な反復作業で価値を証明してきました。一方、AIはウェブとビッグデータの成長、そしてコンピュータの発展に支えられ、実体を持たずにウェブ上の無限のデータを基盤に成長してきました。それが今ではAIが現実世界を理解できるようになり、AIとロボットが統合されています。これはロボットがAI技術を活用して、より複雑で多様な作業を遂行できるようになったことを意味します。 私が修士・博士課程の間に進めた研究は、精密な操作をする能力にAIを適用することでした。例えばロボットによる「針に糸を通す」、「バナナの皮むき」というテーマも挑戦的でしたが、研究室の優秀で精密なロボットシステムと計算資源を使って、他の研究室では得られない精度の成果を出すことができました。さらに研究室の環境支援のおかげで、一連の面白くて挑戦的な課題を遂行することができたのは非常に貴重な経験であり、今後の研究と開発に大いに役立つと思います。 私は卒業後、Tefa_Robotics(本社ソウル)というスタートアップ企業で、現実世界で実際に役立つロボットを制御できるAIを開発することに専念する予定です。近い将来、少子高齢化の影響で日本および韓国社会は労働力不足に直面しますが、私はAIとロボットの結合を通じて、この問題の解決に取り組んでいきます。 <金希哲 KIM_Heecheol> 東京大学工学部機械情報工学科卒業、同大学院情報理工学系研究科知能機械情報学専攻修士、博士。TEFA_Robotics_Inc.に在職中。2022年度渥美奨学生。 ---------------------------------------------------------------- 【2】第73回SGRAフォーラム「パレスチナの壁:『わたし』との関係は?」へのお誘い(最終案内) 下記の通り第73回SGRAフォーラムを昭和女子大学の会場及びオンラインのハイブリット方式開催いたします。参加をご希望の方は、会場、オンラインの参加方法に関わらず事前に参加登録をお願いします。 テーマ:「パレスチナの壁:『わたし』との関係は?」 日 時:2024年6月25日(火)17:30~19:00(終了後に懇親会*) 方 法:会場及びZoomウェビナー 会 場:昭和女子大学学園本部館3F中会議室 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/05/SGRAForum73Map.pdf アクセス https://office.swu.ac.jp/other/campusmap.html 言 語:日本語・英語(同時通訳**) 申 込:下記リンクからお申し込みください https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_UH6bfz9cTO6OsLWIzMi8Hw#/registration *フォーラム終了後、パレスチナ料理の懇親会にもぜひご参加ください!(参加費無料) **同時通訳はZoomで行うため、会場にて同時通訳を利用する方は、端末(スマートフォン、ノートパソコン等)およびイヤホンをご持参ください。 お問い合わせ:SGRA事務局([email protected]) ■ フォーラムの趣旨 パレスチナ問題は「複雑すぎる」と言われます。しかし、客観的な事実や人道的な観点から考えると、この問題はすべての人に関わっています。フォーラムでは専門家、パレスチナ出身者、パレスチナ支持の活動を行っている学生の声を取り上げ、なぜこの問題が全ての人にとって重要なのか、そしてその問題を取り上げようとするときに直面する壁について話し合います。 「壁」という言葉には複数の意味が込められています。一つは、パレスチナ問題について公然と話すことを阻む見えない壁であり、タブーと言論の自由への抑圧を象徴しています。もう一つは、パレスチナ領土での継続的なアパルトヘイト(人種隔離)と植民地化の結果として存在する物理的な分離の壁です。世界中での学生の抗議活動は、これらの見えない壁を取り壊す試みであり、パレスチナ問題に対する公開討論を促進する力となっています。これはパレスチナ問題に対する新たな視点を提供すると同時に、世代間の意識の違いとその変化を示唆しています。 フォーラムを通じて、参加者がパレスチナ問題に対する多面的な理解を深め、グローバルおよびローカル、マクロとミクロな視点からのアプローチを考察する機会になると期待しています。 ■プログラム 17:30開始 司会(シェッダーディ・アキル、慶応大学訪問講師) 挨拶(今西淳子、渥美財団SGRA代表) 17:35発表1 ハディ・ハーニ(明治大学特任講師) 「パレスチナ問題の基礎知識:改めて、歴史と政治的構図の要点を抑える」(日本語) 18:05発表2 ウィアム・ヌマン(東京工業大学大学院生) 「建築の支配:植民地主義の武器としての建築環境」(英語) 18:20発表3 溝川貴己(早稲田大学学部生) 「立ち上がる学生、クィア、環境活動家たち:2023年10月以降の東京のパレスチナ解放運動」(日本語) 18:35質疑応答・ディスカッション(日本語・英語) モデレーター:徳永佳晃(日本学術振興会特別研究員PD 日本大学) オンラインQ&A担当:郭立夫(筑波大学助教) 19:00閉会・懇親会開始 【発表概要】 発表1「パレスチナ問題の基礎知識:改めて、歴史と政治的構図の要点を抑える」 (ハディ・ハーニ、明治大学特任講師) 現在、世界中でパレスチナ人と連帯する運動が巻き起こっており、日本社会にも多くの参加者がいます。ただし「停戦」のみならず、その先に正義を実現するためには、構造的かつ本質的な変化へとつながる長期的な視野を持つことも重要です。そのために第一に重要なことは、シンパシーだけではなく、知識と論理に裏打ちされた正しさに則って行動することだと考えられます。このため今回のイベントでは、最新情勢や新事実の解説というよりは、パレスチナ問題の長く複雑な歴史や、現状の政治的構図を理解するうえで重要かつ基本的なポイントを解説し、全ての人が共有すべき基礎を確認することを目的としています。 発表2「建築の支配:植民地主義の武器としての建造環境」 (ウィアム・ヌマン、東京工業大学大学院生) 建築は政治を具現している。設計者の世界観を表すものであると同時に、政治的コントロールのための装置として使われることもある。このことは、ヨルダン川西岸やガザの植民地建築にはっきりと表れているが、東京や世界中のパレスチナ支持デモの場所として選ばれている公共空間にも、目に見えない形で表れている。本発表では、パレスチナ人に対する日常的な抑圧と統制に寄与している建築装置と、世界中の公共空間におけるそれに匹敵する、しかし控えめな建築的統制装置との類似性を描き出そうと試みる。 発表3「立ち上がる学生、クィア、環境活動家たち:2023年10月以降の東京のパレスチナ解放運動」 (溝川貴己、早稲田大学学部生) 2023年10月以降、在日パレスチナ人だけでなく、学生、クィアコミュニティ、環境活動家といった様々な人々のコミュニティが、即時停戦とパレスチナ解放を訴えて、デモやイベントを行っていた。ここでは、この人々がパレスチナ/イスラエルにどのように向き合い、この7か月間どのような試みを行ってきたか、東京での事例を紹介する。 ※プログラムの詳細は、下記リンクからご参照ください。 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/05/SGRAForum73Program.pdf ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方はSGRA事務局にご連絡ください。 https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ ********************************************* -
TOKUNAGA Yoshiaki “First Iran Survey in Four Years”
2024年6月14日 15:41:26
********************************************** SGRAかわらばん1020号(2024年6月14日) 【1】エッセイ:徳永佳晃「4年ぶりのイラン調査」 【2】催事紹介:第13回村上春樹国際シンポジウム(7月13~14日、東京) 「村上春樹文学における『ウェイ・オブ・ライフ』」 【3】催事紹介:東北亞未来構想研究所(INAF)研究会のお知らせ 【4】第73回SGRAフォーラムへのお誘い(再送) 「パレスチナの壁:『わたし』との関係は?」(6月25日、東京+オンライン) ********************************************** 【1】SGRAエッセイ#767 ◆徳永佳晃「4年ぶりのイラン調査」 2024年2月23日から3月7日にかけて、イラン・イスラーム共和国の首都テヘランに赴き、史料調査を行った。イラン立憲制史を研究対象として同地に2年間留学していた筆者にとって、ある程度勝手の知った場所である。しかしながら、コロナ禍後4年ぶりに訪れ、少なからず時の変化も感じられた。このエッセイでは、自分が外国人の研究者として体験した出来事を紹介し、そこから浮かびあがるイランの大学、学界の現状について簡単な展望を示したい。 まず史料調査の環境に関して、結論を先取りして述べれば、4年前と同様かむしろ改善の傾向が見られた。この結果は意外であった。イランの現状として欧米諸国との関係改善が絶望的になり、外国人への管理を強化する傾向が強まっていると聞いていたからである。もちろん、歴史史料の複写・閲覧はおろか外国人の立ち入り自体を禁止している文書館があるほか、調査可能ではあるものの担当者によって閲覧ルールが異なるなど、利用者を当惑させる状況は続いている。しかしながら、文書の閲覧申請を許可するまで数週間待たせることや、文書館に持参する紹介状の文言に細かな注文を付けるなど、文書を出し渋るような対応は見られなかった。 文書館が幾分ながら協力的となった背景には、いくつかの理由が推測できる。一つ目は文書を含めた歴史史料のデジタル化・公開の促進である。これは欧米諸国をはじめ世界的な潮流を踏まえた動きであり、非常にゆっくりとした歩み(かつしばしば逆行する)ではあるものの、イランにおいても確実に進展している。少し前までは刊行史料のみに依拠したイラン近代史の学術書、論文が多く出版されていたが、現在少なくとも同国内においては、文書その他の未刊行史料を一切用いない研究を見つけることのほうが難しい。 二つ目の理由としては、訪問する海外研究者が急減したことが考えられる。欧米諸国との関係改善が絶望的な現状において、国内の大学その他の機関で活動できる研究者はトルコ、イラク、シリアなどの近隣諸国、そして中国、韓国、日本といった東アジア地域の出身者に事実上限定されている。そのなかで曲りなりにも「先進国」であり、政治、経済的にもイランとの大きな軋轢がない日本は、学術交流の相手として概ね歓迎されている。さらに、日本人は研究もしくは学問目的で現地に渡航する割合が他国と比べて大きめであり、少人数ながら政治、経済状況に比較的影響を受けず、継続的な往来がある点も特徴である。このように地味ながら着実に積み重ねてきた交流の実績に、K-POPや日本のアニメ・漫画の流行による東アジア全体の文化イメージ向上が加わり、日本人研究者への好感が官民ともに維持されている。 日本人研究者に対する(あくまで他国との比較の上ではあるが)好意的な対応は、文書館だけではなく現地の大学においても確認できた。研究ビザの取得においては窓口となる現地の大学の国際局が迅速に対応してくれたことにより、想定より大幅に短い3週間ほどで終えることができた。また、今回の調査では何名かの現地の研究者や教授の方々と面会したが、皆好意的に応対してくださったことに加え、国際会議の開催や更なる日本人留学生の受け入れを繰返し打診されたことが印象的であった。筆者が一介の博士課程学生に過ぎず、そのような学術交流を行う予算も権限もないことは、先生方も十分に分かっている。それでも、敢えて何度もこれらの話題が出たことに、日本との交流に積極的な現地の先生方の姿勢を窺い知ることができた。 コロナ禍後の国際情勢緊迫化、それに伴う外国人への管理強化といったイラン政治の現状にもかかわらず、日本人研究者の調査環境は、好転とまでは言えないまでも従来通り維持されている。この4年間の環境変化は、現地大学への留学や調査が事実上不可能になりつつある欧米諸国の研究者のそれとは、対照的である。このような日本人研究者への「好待遇」から、欧米諸国と早期の関係改善が絶望的になった今、その他の国々との関係性を維持、強化することで生き残りを図るイランの戦術を読み解くことができる。日本に対する「好待遇」は、政治、経済面、さらには大学や学界をも含めイランが置かれている厳しい現状を反映した現象であると言えるかもしれない。 <徳永佳晃(とくなが・よしあき)TOKUNAGA_Yoshiaki> 東京都生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。日本学術振興会特別研究員PD(日本大学)、2023年度渥美奨学生。専門はイラン地域研究・近代政治史で、主な論文に「「不法な影響力の排除」を目指して:パフラヴィー朝成立期のイランにおける1304年選挙法改正(1925)」『歴史学研究』(1044)などがある。 ---------------------------------------------------------------- 【2】催事紹介 台湾淡江大学の曽秋桂先生から村上春樹国際シンポジウムの案内をいただきましたのでご紹介します。参加ご希望の方は直接お申込みください。 2024年第13回村上春樹国際シンポジウム ◆「村上春樹文学における『ウェイ・オブ・ライフ(way_of_life)』 進行形式:対面式のみといたします。オンライン参加は現在のところ予定しておりません。 会 場:早稲田大学早稲田キャンパス(東京都新宿区西早稲田1-6-1) 開催期日:2024年7月13日(土)・7月14日(日) 参加申込サイト:https://forms.gle/CrZMwPEPAJfWpPrP9 参加申込締切:2024年6月30日(日)23:59まで 会議プログラムは下記リンクよりご覧ください。 https://tku365-my.sharepoint.com/:f:/g/personal/152790_o365_tku_edu_tw/EnICO_FVoqhDix_RFrjofkAB5JpnBEtxJlUjNYWaUr-Slg?e=ble7mm ---------------------------------------------------------------- 【3】INAF研究会のお知らせ SGRA会員で(一社)東北亞未来構想研究所(INAF)所長の李鋼哲さんから研究会のお知らせをいただきましたのでご紹介します。興味のある方は直接お申込みください。 (1)INAF第24回研究会は6月15日午前中にアジア政経学会の自由論題特別セッションとして開催されます。報告者と討論者は中国研究(台湾研究も含む)の一流の専門家たちですので、是非ともご参加を検討してください。神奈川大学みらいみなとキャンパスで開催されますが、zoomでも参加できるようにいたします。 (2)INAF第25回研究会は6月29日夕方19:00~21時までにオンライン(zoom)で開催されます。INAFメンバーの中で博士学位を取得した李娜先生と松本理可子先生の博論発表会です。 (3)INAF第26回研究会を7月29日午後16:30~18:00、新潟県立大学と共催で開催します。この研究会はINAF常任理事の陳先生と共同企画し、大学での特別講演会と合わせて開催するものです。テーマは国際気候変動に関するCOP28に関するもので、INAFのエンクバヤル副理事長と台湾の簡赫琳教授が講演し、二人の討論者が討論します。司会はINAF羽場久美子副理事長で、言語は全部英語で行います。オンライン参加も可能です。 詳細はホームページをご覧ください。 https://inaf.or.jp/ ---------------------------------------------------------------- 【4】第73回SGRAフォーラム「パレスチナの壁:『わたし』との関係は?」へのお誘い(再送) 下記の通り第73回SGRAフォーラムを昭和女子大学の会場及びオンラインのハイブリット方式開催いたします。参加をご希望の方は、会場、オンラインの参加方法に関わらず事前に参加登録をお願いします。 テーマ:「パレスチナの壁:『わたし』との関係は?」 日 時:2024年6月25日(火)17:30~19:00(終了後に懇親会*) 方 法:会場及びZoomウェビナー 会 場:昭和女子大学学園本部館3F中会議室 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/05/SGRAForum73Map.pdf アクセス https://office.swu.ac.jp/other/campusmap.html 言 語:日本語・英語(同時通訳**) 申 込:下記リンクからお申し込みください https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_UH6bfz9cTO6OsLWIzMi8Hw#/registration *フォーラム終了後、パレスチナ料理の懇親会にもぜひご参加ください!(参加費無料) **同時通訳はZoomで行うため、会場にて同時通訳を利用する方は、端末(スマートフォン、ノートパソコン等)およびイヤホンをご持参ください。 お問い合わせ:SGRA事務局([email protected]) ■ フォーラムの趣旨 パレスチナ問題は「複雑すぎる」と言われます。しかし、客観的な事実や人道的な観点から考えると、この問題はすべての人に関わっています。フォーラムでは専門家、パレスチナ出身者、パレスチナ支持の活動を行っている学生の声を取り上げ、なぜこの問題が全ての人にとって重要なのか、そしてその問題を取り上げようとするときに直面する壁について話し合います。 「壁」という言葉には複数の意味が込められています。一つは、パレスチナ問題について公然と話すことを阻む見えない壁であり、タブーと言論の自由への抑圧を象徴しています。もう一つは、パレスチナ領土での継続的なアパルトヘイト(人種隔離)と植民地化の結果として存在する物理的な分離の壁です。世界中での学生の抗議活動は、これらの見えない壁を取り壊す試みであり、パレスチナ問題に対する公開討論を促進する力となっています。これはパレスチナ問題に対する新たな視点を提供すると同時に、世代間の意識の違いとその変化を示唆しています。 フォーラムを通じて、参加者がパレスチナ問題に対する多面的な理解を深め、グローバルおよびローカル、マクロとミクロな視点からのアプローチを考察する機会になると期待しています。 ■プログラム 17:30開始 司会(シェッダーディ・アキル、慶応大学訪問講師) 挨拶(今西淳子、渥美財団SGRA代表) 17:35発表1 ハディ ハーニ(明治大学特任講師) 「パレスチナ問題の基礎知識:改めて、歴史と政治的構図の要点を抑える」(日本語) 18:05発表2 ウィアム・ヌマン(東京工業大学大学院生) 「建築の支配:植民地主義の武器としての建築環境」(英語) 18:20発表3 溝川貴己(早稲田大学学部生) 「立ち上がる学生、クィア、環境活動家たち:2023年10月以降の東京のパレスチナ解放運動」(日本語) 18:35質疑応答・ディスカッション(日本語・英語) モデレーター:徳永佳晃(日本学術振興会特別研究員PD 日本大学) オンラインQ&A担当:郭立夫(筑波大学助教) 19:00閉会・懇親会開始 【発表概要】 発表1「パレスチナ問題の基礎知識:改めて、歴史と政治的構図の要点を抑える」 (ハディ ハーニ、明治大学特任講師) 現在、世界中でパレスチナ人と連帯する運動が巻き起こっており、日本社会にも多くの参加者がいます。ただし「停戦」のみならず、その先に正義を実現するためには、構造的かつ本質的な変化へとつながる長期的な視野を持つことも重要です。そのために第一に重要なことは、シンパシーだけではなく、知識と論理に裏打ちされた正しさに則って行動することだと考えられます。このため今回のイベントでは、最新情勢や新事実の解説というよりは、パレスチナ問題の長く複雑な歴史や、現状の政治的構図を理解するうえで重要かつ基本的なポイントを解説し、全ての人が共有すべき基礎を確認することを目的としています。 発表2「建築の支配:植民地主義の武器としての建造環境」 (ウィアム・ヌマン、東京工業大学大学院生) 建築は政治を具現している。設計者の世界観を表すものであると同時に、政治的コントロールのための装置として使われることもある。このことは、ヨルダン川西岸やガザの植民地建築にはっきりと表れているが、東京や世界中のパレスチナ支持デモの場所として選ばれている公共空間にも、目に見えない形で表れている。本発表では、パレスチナ人に対する日常的な抑圧と統制に寄与している建築装置と、世界中の公共空間におけるそれに匹敵する、しかし控えめな建築的統制装置との類似性を描き出そうと試みる。 発表3「立ち上がる学生、クィア、環境活動家たち:2023年10月以降の東京のパレスチナ解放運動」 (溝川貴己、早稲田大学学部生) 2023年10月以降、在日パレスチナ人だけでなく、学生、クィアコミュニティ、環境活動家といった様々な人々のコミュニティが、即時停戦とパレスチナ解放を訴えて、デモやイベントを行っていた。ここでは、この人々がパレスチナ/イスラエルにどのように向き合い、この7か月間どのような試みを行ってきたか、東京での事例を紹介する。 ※プログラムの詳細は、下記リンクからご参照ください。 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/05/SGRAForum73Program.pdf ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方はSGRA事務局にご連絡ください。 https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************