SGRAメールマガジン バックナンバー

  • KIM Soongbae “Japan-Korea Relationship and International Politics”

    ********************************************* SGRAかわらばん788号(2019年9月12日) ********************************************* ◆金崇培「戦後と解放の日韓関係、そして国際政治学」 1945年を普遍的基準として、「戦後日韓関係」とする見解がある。人類史において、常に戦争は大きな問題であった。しかし、一方で植民地問題を平和の反対概念として捉える者もいる。過去、数回にわたって衝突したドイツ‐フランス間の集団的武力戦争とその戦後は、日韓とは違う。アジア太平洋戦争によって敗戦した日本の戦後と、1950年に勃発した朝鮮戦争による韓国の戦後は違う。何よりも日本と韓国の間には、1945年まで続いたアジア太平洋戦争の渦中において、植民地問題があり、それに対する認識と経験が違う。日本と韓国の歴史には「戦後」だけでは説明できない「種差」が存在している。 「戦後」という用語は、日本の時代区分と観念の変換点として大きな意味がある。たとえ、日本国憲法が公布された1946年11月3日が、明治天皇の誕生日であり、当時の政治指導者たちがそれを意識して公布日を決定したとしても、そして朝鮮戦争において日本が基地国家として重要な役割を行ったとしても、戦後日本が直接的に戦争に関与しなかったことは、「平和国家」を自称することができるであろう。それでも21世紀における「戦後レジーム」の提唱が「憲法を頂点とした、行政システム、教育、経済、雇用、国と地方の関係、外交・安全保障などの基本的枠組み」から「二十一世紀となった今、時代の変化に伴い、そぐわなくなった部分については、自分たちの力で二十一世紀の現在にふさわしい新たな仕組みに変えていくべき」ならば、日本において1945年直後の歴史は、今現在と直結するものである。 1945年11月、首相であった幣原喜重郎を中心に戦争調査会が発足した。自律的に戦争の原因と実情を調査することは「平和的なる、幸福なる文化の高い新日本の建設」に必要であった。そのため調査会は日中戦争および太平洋戦争だけでなく、第一次世界大戦、日露戦争、明治維新などの時代まで遡ったが、そこに朝鮮半島に対する認識はなかった。このような認識は、日本特有のものでもない。1946年から始まった東京裁判は、1928年から45年までの日本人指導者による不法行為を審理した。周知のように、この裁判では、植民地問題が欠落したため、リベラルな日本人研究者はこの点を指摘してきた。しかし判決文をよく見ると、欠落というより、連合国は1928年以前に日本が取得した権利として、1910年の「韓国併合(Annexation_of_Korea)」を認定していた。 一方、韓国で使用される「解放」とは「戦後」と同じ時間軸を有している。1945年7月26日、連合国はポツダム宣言を提示した。日本が受諾しないなかで、米国は広島、長崎に原爆を投下した。歴史上、日本は原子爆弾による唯一の被害国であるが、唯一の民族ではなかった。朝鮮半島や台湾、そして中国本土にルーツがある民族もやはり原爆の被害者であった。 8月14日午後11時に日本はポツダム宣言を受諾した。翌日15日、玉音放送によって「大東亜戦争」の終結が宣言されたが、この詔書にある日付は8月14日だった。15日以降も、日本軍とソ連軍の戦闘は続き、9月2日に日本が降伏文書を調印することで、戦争は終結した。多くの国が9月2日を対日戦勝記念日とするが、日本にとって8月15日の意味合いは終戦であり戦後の始まりでもあった。一方の朝鮮半島でも、昭和天皇の声明は「解放」と無関係ではなかった。そして3年後の1948年8月15日、韓国は独立を宣言し、12月12日の国連総会における決議第195号(Ⅲ)にて、国際的承認を得た。 当時の韓国では、早い時期から日本に対する賠償請求が論議されており、1919年のドイツに対する過酷なヴェルサイユ条約もまた法的根拠として参照された。ただし、日本に対する韓国の賠償要求とは「懲罰」や「報復」でなく、「暴力」と「貪欲」に対する「被害回復」であった。1949年、韓国の「対日賠償要求調書」では、「1910年から1945年8月15日までの日本の韓国支配」とあることから、植民地時期を述べている。また、「日中戦争ならびに太平洋戦争に起因した人的被害」が述べられていることから、戦争による被害性も含まれていた。つまりその要求には、「植民地責任」と「戦争責任」が含まれていた。 しかし1951年、連合国と日本間の「戦争状態」を正式に終結させ、日本の主権を回復させたサンフランシスコ平和条約において、韓国は署名国の資格を与えられなかった。サンフランシスコ平和条約は冷戦と朝鮮戦争という「熱戦」の中で、アジア太平洋戦争後の「戦後秩序」を形成したが、植民地解放後の秩序形成に関しては特別な規定がなかった。 そのような点からサンフランシスコ平和条約を批判することはできるが、歴史的に多くの平和条約は「戦争とその後」に主眼を置いたものであり、敗戦国が保有していた植民地の分離条項があったとしても、「植民地問題とその後」を考慮するものではなかった。それでも1965年の日韓基本条約前文にあるように、1948年に国連によって主権が認定された韓国と、1951年にサンフランシスコ市で署名された平和条約によって主権を回復した日本は、国交を結んだ。以降、両国は過去に対する認識の乖離を少しずつ狭めながらここまで歩んできた。「河野談話」、「村山談話」、そして1998年の「日韓共同宣言」は代表的である。しかし最近の日韓関係の様相は、過去の問題が依然として大きいことを痛感させる。それは両国が相互補完性を有していた経済・安保領域まで波及した。 人間の本質と同様に、国家もやはり名声や願望の総体である威信(prestige)を追求する。そのような現在の日韓関係の危機をどのように克服すべきか、その「実践論」を導き出すことは容易ではない。それでも政治指導者間の信頼構築、安保も含めた戦略性の確認、問題に対する解決優先順位の確立、民間団体交流の継続性などがすでに提議されているように、相互理解と自己省察は必要である。その上で、解決法でなくとも「国際政治学」では、包括的に次のような点を述べることができる。 第1に、ラテン語起源を成句とする「合意は守られなければならない(pacta_sunt_servanda)」という警句は、現代において主権国家間の約束が私人間の約束以上に意味があり、国際法によっても効力があるとされる。これは「条約法に関するウィーン条約」の前文でも規定されている。 第2に、ローマ帝国から独立したスイスの法学者であり外交官であったヴァッテル(Emer_de_Vattel、1714-1767)は、著名な『国際法(Le_Droit_des_Gens)』にて、平和を回復するためには、厳格な正義の原則よりも、譲歩や妥協によって、主張間の整合性を見つけることであるとした。 第3に、国際政治学における「和解(reconciliation)」の理論は、和解方式に対する考察から体系化されてきた。条約などによる制度的和解、賠償による物理的和解、そして追悼や記念式典などを通じた観念的和解による三重構造は、国家間に安定性をもたらす。 1から3の国際政治学的視点は、主に「戦争と平和」のテーゼから生まれたものである。よって「植民地と平和」の観点が要求される日韓の関係性は、国際政治学の発展性を必要とする。遠くない未来において主権国家による戦争が行われた場合、平和条約によって戦争を正式に終結させることはあるであろう。しかし現代世界において、これから「植民地支配」が成立することはまずない。戦争と植民地はともに残酷であるが、これからも起こりうる戦争への危機感にくらべ、植民地問題は起こりえない過去の問題として残存する。日本と韓国の認識の差異は過去に対する解釈と認識から派生するが、「日韓関係の国際政治学」があるならば、「戦争と平和、そして植民地」というテーゼを両国史だけでなく、世界史に提起させるものである。 <金崇培(キム・スウンベ)KIM_Soongbae> 政治学専攻。関西学院大学法学部法律学科卒。韓国の延世大学政治学科にて修士号、博士号を取得。現在、忠南大学人文学部招聘教授。研究分野は東アジア国際政治史。在日韓国人三世。著書に『歴史認識から見た戦後日韓関係「1965年体制」の歴史学・政治学的考察』(共著、社会評論社、2019年)、『韓日関係の緊張と和解』(共著、韓国語、ポゴサ、2019年)、論文に「反ヴェルサイユ‐国際的民族自決論と韓国的分化」(韓国語、国際政治論叢、2019年)など。 ********************************************* ★☆★SGRAカレンダー ◇第8回SGRAふくしまスタディツアー 「『ふるさと』の再生」(2019年9月21日~23日、福島県飯舘村) http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/2019/13510/ ※定員に達したので募集を締切りました。 ◇第5回アジア未来会議(2020年1月9日~13日、マニラ近郊) 「持続的な共有型成長:みんなの故郷みんなの幸福」 ※参加申し込み受け付け中。論文募集は締切りました。 http://www.aisf.or.jp/AFC/2020/ アジア未来会議は、日本で学んだ人や日本に関心がある人が集い、アジアの未来について語る<場>を提供します。 ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応)を開始! SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別にお送りしますので、ご興味のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************
  • Jin Hongyuan “SGRA Cafe #12 Report”

    ********************************************* SGRAかわらばん787号(2019年9月5日) ********************************************* ◆金弘渊「第12回SGRAカフェ『「混血」と「日本人」:ハーフ・ダブル・ミックスの社会史』報告」 2019年7月27日、第12回SGRAカフェが開催された。午後の蒸し暑い坂道を登り、たどり着いた鹿島新館には、予想以上に多くの人が集まっていた。今回のテーマは『「混血」と「日本人」:ハーフ・ダブル・ミックスの社会史』であり、発表者は上智大学の下地ローレンス吉孝先生だ。私は大学時代からずっと生物についてばかり勉強してきたので、文系世界は門外漢であり、こんな真面目な社会学セミナーの参加は初めてで正直なところ最初は不安だった。 でもその不安はすぐに解けた。皆さん普通に私服でお越しになっていたし(日本で参加した生物学会ではスーツがメジャーな格好だ)、私が着いた頃にはまだ時間に余裕があったため、多くの人たちはコーヒーを飲みながら談笑していて、そんなリラックスな雰囲気がよかった。 講演は午後2時からスタートした。はじめに司会の立命館大学言語教育センターのファスベンダー・イザベル先生より、パネリストの紹介と今回のSGRAカフェのテーマについて説明があった。その後、下地先生の発表が始まり、最初はご自分の家族について語られ、続いて「混血」の歴史についての発表があった。日本の戦後から今までの数十年の期間に着目し、日本人と外国人の間で生まれたいわゆる「混血」の人々が、日本社会においてどのように位置付けされてきたかを歴史的、政治的、文化的な角度から分析された。後半は、「混血」の生活史について掘り下げた内容で、その中で下地先生が6年をかけて、日本国内の50人以上の「ハーフ」の方々にインタビューされた調査結果が報告された。 私が一番好きだったトピックは、この実際に聞き取りした一人一人の物語だ。私は理工学出身のため、物事を観察する時、他人の気持ちを考えず論理的な視点からしか見ないことがよくある。しかし今回の発表では「ハーフ」の方々から直接聴取されたごく日常的な差別の経験が紹介され、その内容に思いのほか心を動かされた。自分は外国人として日本留学しており、中国人のため外見だけでは「外国人」とは判断されないけれど、自分のボロボロな日本語を日本人に聞かせると、大体初対面の方から「日本語お上手ね」のように褒められるケースが多い。自分の日本語があまり上手じゃないのを知っているから、そうは言われても相手に悪意があるのではないかと思ってしまう。どうしてこのような反応が返ってくるのか、ずっと考えてきたが、それはおそらく相手が私に対して抱く予測(顔からの判断して日本人だろうと思うこと)が外れ、実は外国人だと分かった時のごく一般的な反応だと自分に説得してきた。 でも、一時的な留学生の身分とは異なり、数十年にわたる人生の中で、毎日そのような定番の質問と返事が繰り返されるとしたら、日本人としての「ハーフ」の方々には相当なストレスが溜まるだろう。 私は比喩が好きではないけれど、「ハーフ」の生活史に関することは生物の免疫になんとなく相似すると感じた。人間は生まれた時点では免疫システムがか弱い。その理由は、免疫システムが、自分自身の認識がまだできていないからだ。子どもから大人になる時期に、免疫システムは自分自身の細胞を認識できるようになり、病気との戦いを経験することで鍛えられ、病原体に対するバリアを作るための境界線も自ら引けるようになる。要は、生物の成長にとって大事なことは、免疫システムの成長の過程における自分自身の「アイデンティティ」の確立なのである。 しかし、いったん確立した「アイデンティティ」が何らかの要因(例えば薬やアレルギーなど)でバランスを失ったり、本来の自分とミスマッチを繰り返したりするようになると、免疫システムは自分自身の細胞まで攻撃してしまうようになる。難病として多く認識されている自己免疫疾患はその例だ。似たような感じで、同じ日本人の母集団にいるのに、「ハーフ」の人たちが日本人としての所属意識を失ったり、幼少期から人格の確立に悩んだり、大人になっても「アイデンティティ」を他人から疑われ続けたりすると、いくら精神力があってもとても深く傷付けられることは容易に想像できた。 もちろん、ここでは誰かが病気になっているというわけではない。「ハーフ」たちが経験した差別は、アイデンティティを認識するときに生じる「情報不均衡」に加え、ほぼ単一民族から構成される日本の社会の中でさらに拡大されると考える。私は生物をやっているので、様々な可能性を生む「多様性」という言葉が好きだ。熱帯雨林のような著しい多様性が存在する生態システムには、さまざまな珍奇な生物が見られ、その包容力があるからこそ熱帯雨林は成り立っている。だが、人間社会はやはり自然より複雑だ。仮に国家の歴史と地理的な条件から独自の民族的性格が捉えられたとしても、その唯一の標準だけをもってその民族全体を測ることはできない。元々多民族の国、または複数の移民から構成される国では、「ハーフ」たちへの差別はどうなのだろうと考えると、結構興味深くなるテーマだった。 下地先生の素晴らしい講演は来場者からの拍手の中、終了した。その後、今回のセミナーにいらっしゃった「ハーフ」の方々も自分の経験談を皆さんにシェアし、貴重なご意見と有意義なコメントが集まった。とても勉強になった2時間だった。 SGRAカフェの後は、渥美国際財団が主催した真夏のBBQ。今回も神奈川県・小田原からの新鮮な「海の幸」がメインディッシュになり、ラクーン会の先輩たちによる美味しい料理もいただいた。ご来場の方々も増え、2時間ほど歓談とご馳走を楽しんだ。 当日の写真は下記よりご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/cafe/2019/13835/ <金弘渊(キン・コウエン)Jin_Hongyuan> 渥美国際財団2019年度奨学生。中国杭州生まれ杭州育ち。中国浙江大学応用生物科学卒業、東京大学大学院新領域創成科学研究科先端生命科学専攻博士(生命科学)修了。現在、東京大学先端生命科学専攻特任研究員。専門は進化発生学、進化ゲノム学、遺伝学。特に、「昆虫の擬態現象」を着目し、アゲハチョウの色素合成と紋様形成の分子機構及び進化過程を中心に研究中。 ********************************************* ★☆★SGRAカレンダー ◇第8回SGRAふくしまスタディツアー 「『ふるさと』の再生」(2019年9月21日~23日、福島県飯舘村) http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/2019/13510/ ※定員に達したので募集を締切りました。 ◇第5回アジア未来会議(2020年1月9日~13日、マニラ近郊) 「持続的な共有型成長:みんなの故郷みんなの幸福」 ※参加申し込み受け付け中。論文募集は締切りました。 http://www.aisf.or.jp/AFC/2020/ アジア未来会議は、日本で学んだ人や日本に関心がある人が集い、アジアの未来について語る<場>を提供します。 ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応)を開始! SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別にお送りしますので、ご興味のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************
  • Liang Yihua “Some Thoughts about Cross-Cultural Experience”

    ********************************************* SGRAかわらばん786号(2019年8月29日) 【1】エッセイ:梁奕華「異文化体験についての雑感」 【2】「国史対話」メルマガを配信:徐静波「日本史との出会い」 ********************************************* 【1】SGRAエッセイ#608(私の日本体験シリーズ#35) ◆梁奕華「異文化体験についての雑感」 今年は私が日本に来て5年目である。博士課程まで進学するたくさんの留学生の中で、決して長くはないが、来日前に日本のことを中国の大学で4年間、大学院で3年間勉強してきたためか、いわゆる「カルチャーショック」というようなものはさして感じたことがない。一般的に中国人が驚くべきと思われることに遇っても、以前に習った知識で、その現象を――完全に解釈できなくても――歴史的面やら文化的な面やらからある程度理解することができる。だから、異文化を見たり触れたりした際に生じる大きな心理的ショックを受けたり戸惑ったりすることがない。 強いて言えば、正座という習慣の根強さにビックリしたということがある。私の理解では、本来、畳の上で、あるいは低い家具のある部屋の中で正座するのが一般的であろう。しかし、図書館で、ちゃんとした木製の高い椅子の上に正座して本を読んだり、パソコンで文章を書いたりする人をよく見かける。特に女子が多い。多分、日本の女性は小柄だから、そういうふうに座ったほうが楽なのであろう。ところが、図書館の椅子のみならず、パソコン室のオフィスチェアの上にも正座する。オフィスチェアは高さが調節できるのに、それでもその上に正座するの?キャスターがあるので、不安定ではないの?それで座り心地がいいの?もっと集中できるの?と、とても不思議に思える。多分、毎日長時間座って作業をする私にとっては、論文を速く書くために如何にして座り心地がよくなるかというところに興味を惹かれたのであろう。以前から日本人が正座の習慣を持っていると知っていても、日本人が背の高い椅子の上にも正座するということは、私にとっては割と強いカルチャーショックであった。 中国では、「万巻の書を読むは万里の路を行くに如かず」という言い習わしがあるが、理論より実際のほうが大事という趣旨である。私にとって、正座の件はまさしくその通りである。異文化体験の意義もそこにあるのだと考えている。外国のことをどれほど本で習っても、実際に体験しないと、到底完全に理解できないのであろう。 異文化体験は、一般的に次のようないくつかの段階があると考えられている。新鮮で楽しく感じる段階、戸惑ったり焦ったりする段階、不満や怒りが生じる段階、その不満や怒りが弱くなって沈静化する段階、ようやく全てを受け止めて消化していく段階、などがある。むろん、個人差があり、また誰でも同じ順序で全ての段階を経験するわけでもない。現に、不満や怒りが生じる段階にとどまり、異文化を受け入れて消化できない実例もたくさん見てきた。恐らく、私はどんな段階においてもあまり強烈ではないほうに属しているのであろう。しかしながら、さして「カルチャーショック」を受けていないとは言え、やはり異文化接触の利点をしみじみと感じた。 言うまでもなく、その利点の1つ目は、視野が広がること。自分が慣れ親しんでいる環境を離れて、外国に行ってみたら、必ず今まで自分が「常識」だと思っていた考えが覆される。そして、今までの常識が通じないことにあったら、別の角度から物事を考えるようになる。 以前、学部の時に、私たちを教えていた日本人の先生が帰国する前に、自分の異文化体験を話してくれたことがある。「世の中には違う文化があるのだと実感しました。そして、違いは単に違いだけで、違いはあるけど、決して「上下」がない、と初めて分かりました」、と。この話は今でも覚えている。異文化と接しはじめた時、どちらかが「正しく」「優れている」、どちらかが「間違っている」「劣っている」と判断しがちだが、しかし、異文化の中で長くいると、そのような上下関係で文化間の違いを考えるのではなく、単に違うのだ、と素直に受け入れるようになる。それは、他の文化を長く実感してきたから、別の角度から物事を考えることができるようになるからだと考えられる。そうすると、異文化、さらに他人に対する態度がより寛容的になり、より柔軟な思考もできるようになる。 また、異文化体験による2つ目のメリットは、自文化に対する認識がより深まる。自分を育ててきた文化や環境を今までずっと当たり前だと思っていたが、他の文化との比較によって、その良さや奥の深さを見直す。特に「逆カルチャーショック」を受けた時に、今まで見えなかった嫌な部分や、不可解なところにも気付くが、それもまた勉強の機会になる。 私は現在、平安朝の漢文学を中心とする和漢比較文学を専門としているが、本来は中国文学を専攻にしたかった。大学の入学試験がうまくできなかったため、中国言語文学科に入れずに日本言語文学科に入った。振り返ってみると、日本文学を勉強して本当によかったと思う。日本文学との比較を通して、中国文学の性格をより鮮明に理解することができたと感じる。例えば、中国文学の政治性が強いことと、日本文学の脱政治性が強いことがよく言われている。最初、日本文学に接した時、中国文学を比較の基準として日本のほうを眺めていたが、政治との関連を当たり前の前提と見なして、日本文学の脱政治性を不思議に思った。しかし、現在はむしろ、中国における文学と政治との関係の緊密さが異常に思え、その辺りに不可解な点が色々とあると考えるようになった。同時に、中国では文学はいつも政治の付属でありながら政治から脱出しようともしつつあるが、そのダイナミックな関係で生まれた緊張感こそ、中国文学の魅力だと感じる。日本文学に接触したからこそ、このような認識を持つことができるようになった。 大学院に入った当初から、私は人文系の研究者を目指しているが、同時に人文系の研究者はその殆どが教育者でもあるので、将来教育者として学生に何を教えればよいのだろうという問題もよく考えている。私が最も学生に伝えたい、しかも、伝えるべきことは、誰がどんな作品を著したというような知識ではなく、問題を取り扱う際に持つべき、より柔軟かつ包容的な思考の方式であると思う。これは私が日本に留学してから体得した最も重要なことであり、一生の宝物にしたいものでもある。 <梁奕華(りょう・えきか)Liang Yihua> 渥美国際財団2018年度奨学生。中国出身。2010年(中国)厦門大学卒業、2013年同大学修士学位(文学)を取得。2014年在中国日本語国大使館の推薦によって国費留学生として、東京外国語大学で博士後期課程を修業し、2019年3月満期退学、9月博士学位(学術)を取得予定。現在、同大学の国際日本学研究院の特別研究員。専門は、奈良平安時代の漢文学、和漢比較文学。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】「国史対話」メールマガジン第7号を配信しました ◆徐静波「日本史との出会い」 https://us20.campaign-archive.com/?u=8a804637298104d9c09f6d173&id=cf0ef242d5 SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。国史メルマガは毎月1回、月末に配信しています。SGRAかわらばんとは別にお送りしますので、ご興味のある方は下記より登録してください。また、3言語対応ですので、中国語話者、韓国語話者の方々にもご宣伝いただきますようお願いいたします。 ◇国史メルマガのバックナンバーおよび購読登録は下記リンクをご覧ください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ********************************************* ★☆★SGRAカレンダー ◇第8回SGRAふくしまスタディツアー 「『ふるさと』の再生」(2019年9月21日~23日、福島県飯舘村) http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/2019/13510/ ※定員に達したので募集を締切りました。 ◇第5回アジア未来会議(2020年1月9日~13日、マニラ近郊) 「持続的な共有型成長:みんなの故郷みんなの幸福」 ※参加申し込み受け付け中。論文募集は締切りました。 http://www.aisf.or.jp/AFC/2020/ アジア未来会議は、日本で学んだ人や日本に関心がある人が集い、アジアの未来について語る<場>を提供します。 ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応)を開始! SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別にお送りしますので、ご興味のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************
  • Min Dongyup “Encounter with ‘Historical Thinking'”

    ********************************************* SGRAかわらばん785号(2019年8月22日) ********************************************* SGRAエッセイ#607(私の日本留学シリーズ#34) ◆閔東曄「『歴史的な思考』との出会い」 ふと気づくと、日本での留学生活も10年をすぎている。今では大学院で歴史の研究をしているが、10年前には想像もできなかったことだ。しかしよく考えてみれば、これまでの経験が積み重なって今の研究の原動力となっている。どうして私はここにいるのか。その発端は留学の2文字にはあまりにもふさわしくない出来事だった。 韓国で大学に入学し、経済学を専攻しようと思っていた私は、どこにでもいるような、海外とは縁のない普通の大学生だった。兵役のために大学を休学し、その後復学を望んでいた私は、韓国社会に敷かれているレールに乗ってそのままその後の人生を進めようとしていた。大学を卒業すれば安定した職場に就職し、結婚をして家庭を築き、幸せな生活を送る。それとは違う人生を思い描く余裕も、能力も、その頃の私にはなかった。しかしそれと同時に、なぜか漠然とした不安を覚えていた。このままでいいのだろうか。私はいったい何がしたいのだろうか。新しい刺激を求めて旅行に出ることを決心したのは、こうした不安に自分なりに答えようとしたからである。そして行くからには、韓国国内ではなく、まったく違う世界を経験してみたいと思った。中学生の時からJ-popやアニメ、漫画に接していて日本に関心を持っていた私が、はじめての海外旅行先として日本を選んだことはもしかすると自然なことだったのかもしれない。 こうして10日間のバックパック旅行がはじまった。関東地方と関西地方を夜行バスに乗って回った。はじめて訪れた「海外」は何もかもが新鮮で驚きの連続だった。しかし私が旅行中に感じたことは、「カルチャー・ショック」という言葉で簡単に片付けてしまうことのできないものだった。韓国で生まれ育った私にとって、日本で経験するすべてのことが、韓国人としての「自己」とは異なる「他者」を経験し、「自己」について省みるきっかけとなったのだ。またそれは、はじめて私に「国」というものを意識させてくれた。旅行から帰ってきた私は、日本での経験を忘れられず、再び日本行きを準備した。そして3ヶ月後、大きなスーツケースを持って、私は新宿駅西口に降り立った。 日本語学校で日本語を一から学びなおす、という生活がはじまった。今振り返ると、日本語の勉強だけが目的だったわけではない。旅行中に受けた衝撃を、それを経験させてくれた日本という国にしばらく滞在しながら自分なりに消化しようともがいていた。それまでの「私」を成り立たせてきた「韓国」から解き放たれた瞬間、「韓国」も相対化でき、「日本」について勉強することによって「国」とは何かについて真摯に向き合えるような気がしたのだ。そしてそうしているうちに、それまで自明だと思ってきたことが、自明ではなくなった。人は、「常識」を疑い、それがなぜ「常識」となったのかについて思考をめぐらす時、自然と歴史的な思考につながっていく。 韓国と日本の間には、長らく解決困難な歴史認識の溝が存在する。「国」を相対化しはじめた私は、それらを解決するためにはどのようなことが必要なのかを考えるようになった。大学でより専門的な勉強がしたいと思うようになり、そのためには大学の専攻を変える必要があった。日本でもう一度大学受験をし、日本の大学で様々な学問に触れることになった。大学では、リベラル・アーツを重視する風土のなかで、様々なディシプリンから韓国と日本の歴史問題についてアプローチすることができた。さらにそれだけでは満足できず、今度は歴史認識問題の解決のために必要な思考を、研究を通して自ら創り出したいと思い、卒業後に大学院の道を選んだ。そして現在、近現代朝鮮史と日朝関係、特に思想・文化を中心に研究を進めている。 歴史認識問題そのものは、どこにでもある普遍的な問題である。そうした問題を生み出す思考の構造について、そしてそれを乗り越える思考のあり方について、日韓の近現代史という具体的なフィールドを通して考えていくことがこれからの私の課題である。私が日本留学を通して勉強できたことは、私たちの思考の前提となるものを見つめなおすことであり、自明なものを相対化し、「常識」の背後にある構造を見抜く歴史的思考力にほかならない。 <閔東曄(ミン・ドンヨプ)Min Dongyup> 渥美国際財団2018年度奨学生。韓国ソウル生まれ。横浜国立大学教育人間科学部卒業。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士後期課程単位取得後退学。現在、東京大学大学院総合文化研究科研究生、横浜国立大学・武蔵大学・フェリス女学院大学・日本健康医療専門学校等非常勤講師。専門は、歴史学、近現代日朝思想史、日韓(朝)地域研究。特に、「近代の超克」をめぐる帝国/植民地の思想空間に関心を持って勉強中。 ********************************************* ★☆★SGRAカレンダー ◇第8回SGRAふくしまスタディツアー 「『ふるさと』の再生」(2019年9月21日~23日、福島県飯舘村) http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/2019/13510/ ※定員に達したので募集を締切りました。 ◇第5回アジア未来会議(2020年1月9日~13日、マニラ近郊) 「持続的な共有型成長:みんなの故郷みんなの幸福」 ※参加申し込み受け付け中。論文募集は締切りました。 http://www.aisf.or.jp/AFC/2020/ アジア未来会議は、日本で学んだ人や日本に関心がある人が集い、アジアの未来について語る<場>を提供します。 ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応)を開始! SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別にお送りしますので、ご興味のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************
  • La Insook “My Hope for Japan-Korea Goodwill”

    ********************************************* SGRAかわらばん784号(2019年8月15日) 【1】エッセイ:羅仁淑「昨今の日韓関係と日韓親善活動への思い」 【2】第8回SGRAふくしまスタディツアーへのお誘い(再送) ~行って、見て、感じて、考える~(9月21日~23日、飯舘村) ********************************************* 【1】SGRAエッセイ#606 ◆羅仁淑「昨今の日韓関係と日韓親善活動への思い」 先ず活動をする私たちが楽しく、結果として日韓友好・親善に役立つ活動をする、文化交流と知的交流の中間レベルの活動をする、政治や宗教とは距離を置く、をモットーに2009年12月より日韓友好の思いを抱いている方々と手書きの手紙交流から活動をはじめた「暖流」(2013年4月NPO法人格取得)を紹介させて頂きたい。韓流ブームに後押しされ、仲間も増え、小規模ながらも順調(?)な親善活動が続いている。 日本では、☆古代から現代までの朝鮮半島の歴史を学習する「歴史学習会」の開催。☆韓国に因んだ場所を歩きながら会員同士の親睦を図る「散策会」。☆各分野の韓国専門家による「講演会」の開催(17回)。☆キムチやポジャギーなど「韓国文化の講習会」。☆舞や楽器など民族文化とK-POPなど現代文化の「公演会」などを。韓国では、☆本部と韓国支部の会員の作品を展示する「日韓親善交流展覧会&文化交流会」。☆有田焼の創始者李参平さんの一生を描いた小説の翻訳出版(2015年の優秀図書に選定)。☆ソウル市施設公団との共催で暖流会員がモデルを演じた「和服ファッションショー」。さらに、幸運にも4年前から世田谷区の補助金事業や「せたがや国際メッセ」でも活動するようになった。ささやかな達成感(自己満足?)を感じているところにいきなり暴風が吹き荒れ、韓国離れが激しくなった。「日韓親善」という言葉が顔負けするほどに。 何が原因で、これから暖流はどうすべきか? 可視的な流れは、文在寅政府による慰安婦問題の日韓合意の破棄(2015年12月28日、慰安婦問題の最終的かつ不可逆的な解決を確認した日韓政府間の合意)と韓国最高裁による被徴用者裁判の判決を受け、日本政府が国家間の条約を守らぬ国は信用ならないと韓国をホワイト国家から除外したことである。しかし、この問題は日韓両国間の問題としてアプローチすることは正しくなく、米・中の覇権争いを念頭に置きつつ考えなければならない。しかし、筆者の能力と紙幅上の制約から日韓間に、さらに被徴用者裁判に限定し、日韓問題と今後の暖流のことを考えてみたい。また、日韓問題に関しては主観を挟まず事実のみ整理することに努めたい。 日本は「日韓併合条約」(韓日併合、朝鮮併合とも言う)が締結された1910年8月22日より朝鮮総督府が降伏文書に調印する1945年9月9日まで約35年間朝鮮半島を支配していたが、1965年6月22日、「日本国と大韓民国との間の基本関係に関する条約」(以下基本条約という)とその付随協約として「財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定」(以下請求権協定という)が締結され、両国間の関係が正常化された。 基本条約と請求権協定の骨子は国交樹立と韓国に対する経済協力、そして両国間の請求権に関するものであり、請求権協定の主な内容は、☆朝鮮に投資した日本の資金及び日本人の全ての財産の放棄(当時の総督府や軍の財産を除いた民間の財産は約47億円、韓国の1年間国家予算は約3.5億ドル、日本の外貨準備金は約17億ドル)、☆無償3億ドル(1,080億円)、長期低利の貸付2億ドル(720億円)の供与(第1条)、☆請求権問題は完全かつ最終的な解決の確認(第2条)、☆協定の解釈や実施に関する紛争は先ず外交上の経路を通じて解決し、解決できない場合は両国政府が各1人ずつ任命した仲裁委員と、その2人の仲裁委員の合意あるいは第3国政府の指名する第3の仲裁委員で構成された仲裁委員会の決定に服すこと(第3条)である。 次に被徴用者への韓国政府の対応をみてみよう。朴正煕政府は請求権協定による無償3億ドルを産業の育成やインフラの整備に費やし、9年後の1974年に「対日民間人請求権補償に関する法律」を制定し、1975年から1977年まで被徴用死亡者8,552人に1人当たり30万ウォン、債券など74,963件に66億1,695万ウォン、合わせて91億8,252万ウォンを支給した(これは無償3億ドルの5.4%に該当)。しかし、2012年、盧武鉉政府は朴正煕政府による被害者補償が不十分であったと、再び6,334億ウォンを支給した(その内訳は、死亡者・行方不明者に1人当たり2,000万ウォン、負傷者に2,000万ウォンを上限に障害程度による慰労金、生存者に毎年80万ウォンの医療支援金)。 今度は韓国の「落星台経済研究所」李宇衍氏の研究を引用しながら徴用についてみよう。日本による炭鉱・鉱山・軍需企業勤労など戦時目的の労働動員は1939年9月から1945年2月まで約6年間、殆ど3南地方(慶尚道、全羅道、忠清道)を中心に、「募集」(1939年9月~1942年2月)からはじまり「官斡旋」、「徴用」(1944年9月~1945年3月)の順に為された。2年契約で、延べ72万4,000人が動員された(募集約20万、官斡旋約33万、徴用19万)。 募集は一般就業と同じ性格のもので、責任者は企業の労務管理者であったが、企業任せでは募集された人員が少なかったので、総督府が地域別に募集数を割当て、総督府の行政体系の末端である面(日本の町に相当)の面長を責任者とする官斡旋がはじまった。しかし来日費用がかからず安全に来られる官斡旋で来日した者の約40%が逃亡し一般就業をしてしまうことが発生した。令状を出す徴用は1944年9月から1945年3月まで約6カ月間行われた。拒否が可能だが受容すれば援護対象として優待され月給が募集や官斡旋より高かった。 労働動員が行われた1939年9月から1945年2月までのほぼ同期間の一般就業者数は、官斡旋や徴用からの逃亡者を除いても170万人に上った。このように新文明への憧れや高所得確保への期待で来日に憧れていた若者は多かったにもかかわらず、労働動員が必要であった炭鉱・鉱山・軍需企業では働きたがらなかったからである。 次に、朝鮮人労働者に対する未払い(未集金)について整理することにする。 朝鮮人労働者たちは賃料や公共料金の負担がなく、食事代が安く、韓国人が舎監である寄宿舎で生活し、給料はインフレ抑制のためいつでも使える少額の社内貯蓄を除いて郵逓局に強制貯蓄され、契約満了で帰国する時まで引出ができなかった。また、企業は朝鮮人労働者の人数、貯蓄額、送金額、支給額を毎月行政当局(市、警察など)に報告することになっていた。終戦時、残っていた労働者は32万人(逃亡者を含む)であったが、彼らの7月25日の給料日から8月15日までの給料、退職積立金(労使負担)、そして退職金などを清算しないで帰国した者の未払金(未集金)がある。日本政府は1946年、各企業に朝鮮人に対する未払金を文書に整理させ(項目別総計の資料はあるが、個人別資料は公開されていない)、全額を裁判所に供託させた。 最後に被徴用者裁判についてみよう。被徴用者訴訟に対する2018年10月30日韓国最高裁の判決の始まりは1997年に遡らなければならない。 1997年12月24日、ヨ・ウンテクさんとシン・チョンスさんの2人の原告が新日鉄を被告に強制徴用と奴隷労働に対する賠償請求を大阪地裁に提訴したが、敗訴する(2001年3月27日)。さらに大阪高裁と最高裁でもそれぞれ控訴や上告が棄却された(2002年11月19日、2003年10月9日)。 その後、2005年2月28日にイ・ジュンシクさんとキン・キュウスさんが加わり4人で、今度は韓国ソウル中央地裁に提訴するが、ここでも原告敗訴で終わり(2008年4月3日)、高裁でも控訴棄却になった(2009年7月16日)。しかし、最高裁では逆転して事件を高裁に破棄差戻すことになる(2012年5月24日)。高裁は最初の判決と異なり新日鉄住金に原告一人当たり1億ウォンの賠償を命じ(2013年7月10日)、それが最高裁で最終確定されたのである(2018年10月30日)。 韓国最高裁の判決を受けた日本政府は韓国に対する輸出規制を、さらにそれを受けた韓国は日本製品に対する不買運動を、と両国関係は悪化の度合いを高めている。こういう時こそ民間交流が大切なのではと考えている。曇ったり降ったりの後は必ず晴れると信じつつ日韓親善活動に邁進して行きたい。 <羅仁淑(ら・いんすく)La_Insook> 博士(経済学)。専門分野は社会保障・社会政策・社会福祉。SGRA会員。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】第8回SGRAふくしまスタディツアーへのお誘い(再送) ~行って、見て、感じて、考える~ 関口グローバル研究会(SGRA)では2012年から毎年、福島第一原発事故の被災地である福島県飯舘(いいたて)村でのスタディツアーを行ってきました。そして、スタディツアーでの体験や考察をもとにしてAFCワークショップ、SGRAフォーラム、SGRAカフェなど、さまざまな催しを展開してきました。 2017年に7年間の避難生活が解除され、住民も徐々に「ふるさと」に帰り始めていますが、昔のままの生活を取り戻すことはできません。飯舘村の住民たちは、新しいふるさと作りに向けて進み始めています。今回のツアーでは、新しいふるさとつくりのシンボルとしての「佐須の地域再生可能エネルギー事業」と北川フラム氏を中心に計画されている「飯舘村アートプロジェクト」に焦点を当てて、新しいふるさとつくりのヴィジョンと計画を共に考えます。 テーマ:「ふるさと」の再生 日 程:2019年9月21日(土)、22日(日)、23日(祝) 人 数:10~15人程度 宿 泊:ふくしま再生の会体験宿泊施設「風と土の家」 参加費:一般参加者は12000円+新幹線往復料金 渥美奨学生・元奨学生(ラクーンメンバー)は補助あり 申込み締切り:9月10日(火) 申込み・問合せ:渥美財団SGRA事務局 角田(つのだ) E-mail:[email protected] Tel: 03-3943-7612 詳細は下記リンクよりご覧ください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2019/07/Fukushima8chirashi.pdf ********************************************* ★☆★SGRAカレンダー ◇第8回SGRAふくしまスタディツアー ※申し込みは9月10日まで 「『ふるさと』の再生」(2019年9月21日~23日、福島県飯舘村) http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/2019/13510/ ◇第5回アジア未来会議(2020年1月9日~13日、マニラ近郊) 「持続的な共有型成長:みんなの故郷みんなの幸福」 ※参加申し込み受け付け中。論文募集は締切りました。 http://www.aisf.or.jp/AFC/2020/ アジア未来会議は、日本で学んだ人や日本に関心がある人が集い、アジアの未来について語る<場>を提供します。 ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応)を開始! SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別にお送りしますので、ご興味のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************
  • Xie Zhihai “Rethinking Japan’s Energy Security 8 Years After Fukushima”

    ********************************************* SGRAかわらばん783号(2019年8月8日) 【1】エッセイ:謝志海「福島原発事故から8年、日本のエネルギー保障を再考する」 【2】第8回SGRAふくしまスタディツアーへのお誘い(再送) ~行って、見て、感じて、考える~(9月21日~23日、飯舘村) ********************************************* 【1】SGRAエッセイ#605 ◆謝志海「福島原発事故から8年、日本のエネルギー保障を再考する」 東日本大震災における東京電力福島第一原子力発電所の惨事から、8年の歳月が過ぎた。以来ずっと、日本では原子力の在り方について物議を醸している。なにしろ2011年の震災以前の日本では、電力供給の10%以上を占めていたのは原子力だったからだ。日本のエネルギー保障は、今でも過酷な挑戦を強いられている。 まず、日本国内のほとんどの原発の停止により、国内のエネルギー自給率は2010年の20.2% から、2011年の11.5%に急落した。その後も自給率は10%を下回り続けている。これは他の国と比べると、驚くべき低い数値である。 すなわち、日本は莫大な量のエネルギー源を他国からの輸入に頼っている。これは国家財政を悪化させるだけでなく、政治リスクを伴う。日本の原油輸入の80%以上は中東からであり、政治的に不安定な地域から、まとまった量を確保し続けるのはたやすいことではない。 第2に、日本は他の先進国と比べ、化石エネルギーへの依存がかなり高い。1973年のオイルショック時には、化石エネルギーは日本のエネルギー・ミックスの94%まで占めていた。その後の日本はその偏りを改善すべく多大な努力に重ね、2010年には80%まで下がった。しかし、原発事故を経て2016年には、化石エネルギーへの依存は89%に逆戻りし、オイルショック時の値にかなり近くなってしまった。このリバウンドはひとえに、原子力発電中止の埋め合わせを意味している。原油がエネルギー源の40%以上を占める今の日本は、もし再びオイルショックが起きれば、より深刻なダメージを受けるだろう。 3つ目として、エネルギー費の急上昇により、電気料金の値上がりの激しさがあげられる。2010年と比べ、電気料金のピークだった2014年の電気料金は、家庭でおよそ24%、企業では38%もの上昇となった。近年、電気料金は下がりつつあるが、家庭、企業のどちらにとっても、2010年と比べると、いまでも10%高いままである。 この電気料金の価格上昇は、産業界にとっては、経費の増大を意味し、無論業績に悪影響を及ぼす。一般家庭においても、この価格上昇は生活を脅かし、消費への刺激は抑えられ、生活の質の低下にまでなりかねない。 4つ目に、再生可能エネルギーの発展は日本の次なるエネルギー需要に応え得るかということだが、現在時点では、再生可能エネルギーが原子力と化石エネルギーの代替となるには程遠い。経済産業省資源エネルギー庁のデータによると、再生可能エネルギーの割合は緩やかな上昇傾向にあり、2010年の4.3%から2016年には7%となっている。日本では太陽光パネルは設備費用が高くつくなどの理由によって、再生可能エネルギーの普及は長い時間を要している。 では日本はどのようにエネルギー保障に取り組むべきか? 新しい代替エネルギー源の獲得戦略に向けた舵取りに邁進すべきであろう。2010年のエネルギー自給率を取り戻す、もしくはそれ以上を目指すなら、天然資源の少ない日本では、再生可能エネルギーが唯一の解決策であろう。福島第一原発の廃炉作業は難航の一途から抜け出せず、近隣住民もいまだに震災前の暮らしに戻っていないなか、原発の再開は現実味に乏しい。 2018年7月日本政府は、エネルギー政策の基本的な方向性を示すために「(第5次)エネルギー基本計画」を策定した。この計画で、日本のエネルギー自給率を、2016年の8%から、2030年の年には24%へと上げることを目標として掲げている。一見非現実的だが、日本が再生可能エネルギーを発展させ、広げることに集中すれば、決して不可能なことではないだろう。 しかしながら、このエネルギー基本計画は、日本のエネルギー政策の未来を明確にすべきものであるはずなのに、いくつかの曖昧さが見られる。指摘すべき点の1つとしては、計画の中のエネルギー政策の優先順位が不明確なことである。政府は2030年までに、再生可能エネルギーを主力電源とすることを掲げているが、同時に原子力発電所の修復と、その後の原子力発電の割合を20~30%にあげる試みも計画している。 小泉元総理は東日本大震災後から、「原発ゼロ」提唱者として知られ、原発がなくても日本は生き残れることを繰り返し主張してきた。最近の講演では、日本政府が「原発は安全で環境にも優しくローコスト」と謳うエネルギー政策に疑問を呈している。 テレビに出演するコメンテーターたちは、日本は有事においても必要に応じてものの見方を根本から考え直すことと決断力が乏しいと指摘している。確かに、日本が原子力エネルギーをきっぱりと諦めなければならない時に、政府がしっかりと政治的判断を下せるのか疑問である。福島第一原発事故により、ドイツは原子力エネルギーから離れることを宣言した。しかし原発事故の被害者である日本が原子力発電と縁を切ることができないとは、なんたる皮肉であろう。 日本政府は今も原発ゼロにためらいを見せているが、多数の日本国民はすでに、原子力発電は廃れていくものととらえ、再生可能エネルギーこそが今後の日本のエネルギーを担うと信じている。現に、今では個人が太陽光パネルを設置し、電力を蓄え電力会社に売ることも知れ渡っている。 日本もそろそろ自信を持って再生エネルギーの可能性に賭けてみるべきだろう。例えば、2018年のゴールデンウィーク時、九州では使われた電力の93%が再生エネルギーで賄えたという。過去8年、日本はほぼ原子力発電に頼らずやってこられたのだから、今後も再生エネルギーの使用が拡大されれば、原発を持たない国になれるだろう。 最後に、日本のエネルギー問題の解決にはやはり、技術の革新の大改革が必要だろう。それをすでにやってのけているのが、トヨタであり、次世代の車として水素燃料電池で動く車「ミライ」を発表した。この「ミライ」はゼロ・エミッション(排出物ゼロ)だけでなく、水素で作られたエネルギーを貯めておき、非常時に使うこともできる。「ミライ」は日本のエネルギー政策の未来に一石を投じるかもしれない。同じような技術革新が他の産業界でも起きることを期待する。 ※原文は英語。オーストラリアのオンラインジャーナル『The Diplomat』(2019年3月21日)に掲載 https://thediplomat.com/2019/03/rethinking-japans-energy-security-8-years-after-fukushima/ <謝志海(しゃ・しかい)Xie_Zhihai> 共愛学園前橋国際大学准教授。北京大学と早稲田大学のダブル・ディグリープログラムで2007年10月来日。2010年9月に早稲田大学大学院アジア太平洋研究科博士後期課程単位取得退学、2011年7月に北京大学の博士号(国際関係論)取得。日本国際交流基金研究フェロー、アジア開発銀行研究所リサーチ・アソシエイト、共愛学園前橋国際大学専任講師を経て、2017年4月より現職。ジャパンタイムズ、朝日新聞AJWフォーラムにも論説が掲載されている。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】第8回SGRAふくしまスタディツアーへのお誘い(再送) ~行って、見て、感じて、考える~ 関口グローバル研究会(SGRA)では2012年から毎年、福島第一原発事故の被災地である福島県飯舘(いいたて)村でのスタディツアーを行ってきました。そして、スタディツアーでの体験や考察をもとにしてAFCワークショップ、SGRAフォーラム、SGRAカフェなど、さまざまな催しを展開してきました。 2017年に7年間の避難生活が解除され、住民も徐々に「ふるさと」に帰り始めていますが、昔のままの生活を取り戻すことはできません。飯舘村の住民たちは、新しいふるさと作りに向けて進み始めています。今回のツアーでは、新しいふるさとつくりのシンボルとしての「佐須の地域再生可能エネルギー事業」と北川フラム氏を中心に計画されている「飯舘村アートプロジェクト」に焦点を当てて、新しいふるさとつくりのヴィジョンと計画を共に考えます。 テーマ:「ふるさと」の再生 日 程:2019年9月21日(土)、22日(日)、23日(祝) 人 数:10~15人程度 宿 泊:ふくしま再生の会体験宿泊施設「風と土の家」 参加費:一般参加者は12000円+新幹線往復料金 渥美奨学生・元奨学生(ラクーンメンバー)は補助あり 申込み締切り:9月10日(火) 申込み・問合せ:渥美財団SGRA事務局 角田(つのだ) E-mail:[email protected] Tel: 03-3943-7612 詳細は下記リンクよりご覧ください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2019/07/Fukushima8chirashi.pdf ********************************************* ★☆★SGRAカレンダー ◇第8回SGRAふくしまスタディツアー ※申し込みは9月10日まで 「『ふるさと』の再生」(2019年9月21日~23日、福島県飯舘村) http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/2019/13510/ ◇第5回アジア未来会議(2020年1月9日~13日、マニラ近郊) 「持続的な共有型成長:みんなの故郷みんなの幸福」 ※参加申し込み受け付け中。論文募集は締切りました。 http://www.aisf.or.jp/AFC/2020/ アジア未来会議は、日本で学んだ人や日本に関心がある人が集い、アジアの未来について語る<場>を提供します。 ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応)を開始! SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別にお送りしますので、ご興味のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************
  • Kimiya Tadashi “How can we overcome Japan-Korea crisis?”

    ********************************************* SGRAかわらばん782号(2019年8月1日) 【1】エッセイ:木宮正史「日韓関係の危機をどう克服するのか」 【2】第8回SGRAふくしまスタディツアーへのお誘い(再送) ~行って、見て、感じて、考える~(9月21日~23日、飯舘村) ********************************************* 【1】SGRAエッセイ#604 ◆木宮正史「日韓関係の危機をどう克服するのか」 2019年6月末、G20大阪会議の開催直後、板門店で3回目の米朝首脳会談が行われた直後、その余韻も覚めやらぬ中、7月1日、日本政府は対韓輸出規制措置を発表した。当初は、そのタイミングからして、日本企業に対する元「徴用工」の損害賠償請求を認めた、2018年10月の韓国最高裁の判決に対して、有効な対策を提示できない韓国文在寅政権に対する「対抗措置」であるという見方が支配的であった。今後、日本企業に賠償を行わせるため在韓資産の現金化が強制執行され、日本企業に可視的な被害が及べば、韓国に対する「対抗措置」を日本政府が選択することは十分にありうることだと予想された。 救済を受けられなかった被害者の人権は回復されるべきだが、それは、1965年の日韓請求権協定という「国家間の約束」の枠内で行われるべきだろう。韓国最高裁は、協定の対象範囲を、協定の締結当事者の「立法者意思」よりも非常に狭く解釈することで、協定の「完全かつ最終的に解決」という文言による制約を乗り越えようとした。しかし、それは、韓国国内での支持は得られたかもしれないが、交渉当事者の一方である日本政府、社会の同意を得られたとは言い難かった。換言すれば、外交問題として取り組まざるを得ないものであった。したがって、交渉を通して日本政府や社会の合意を取り付けるのか、それとも、判決と協定の双方に違背しない何らかの妙案を提示するのか、ともかく韓国文在寅政権が取り組まなければならない課題であった。 しかし、判決以後の文在寅政権の対応は鈍かった。大統領自身が類似訴訟の弁護人の経験があり「日本企業が賠償すべき」との信念を持っていたのかもしれない。もしくは、それを大統領周辺が「忖度」したのかもしれない。日本の一部には、この判決の責任を文在寅政権に帰着させようとする見解も存在する。しかし、当該最高裁判決の「原判決」とも言える2012年5月の最高裁小法廷判決は、李明博政権末期に出されたものであった。朴槿恵政権は、その判決が確定することが日韓関係に及ぼす「破壊的影響」を考慮して種々の対応を模索したが、朴槿恵大統領の弾劾・罷免に起因して挫折を余儀なくされた。さらに、そこで試みられた行政と司法との調整が、文在寅政権下において違法な「司法壟断」とみなされ、最高裁長官の逮捕にまで及んだ。 韓国内では判決を日本政府に受け入れさせるように交渉するべきであり、日本政府や企業もそれに従うべきだという見方が強い。日本企業がその判決に従うのかどうかは企業自身の判断に委ねるべきだとは思うが、日本政府としては、やはり請求権協定における「完全かつ最終的に解決」という合意に反すると判断せざるを得ない。したがって、韓国内の司法手続きがこのまま進むと、それに対する何らかの「対抗措置」に踏み切らざるを得なくなる。 ただ、そうした日本企業の可視的な被害が生じる前に、今回、日本政府が「対抗措置」を採ったことはどのように正当化されるか。しかも、日本政府は、「対抗措置」であることを示唆しながらも、それを理由とすることは国際的な支持を得られないと考えたのだろう、表向きは重要な戦略物資やそれに伴う技術などが韓国を通して第三国(おそらく具体的には、北朝鮮や中国ということが念頭に置かれているのだろう)に違法に流出しているかもしれないと、安全保障上の理由を掲げて対韓輸出規制措置に踏み切ったと説明する。 日本政府の説明はともかく、日本企業の在韓資産の現金化に対する「予防的対抗措置」という側面は否定できない。この措置が韓国では「大騒動」を巻き起こしている。しかし、韓国から譲歩を引き出すのに効果的であるどころか、むしろ対日強硬論で韓国を「団結」させる結果をもたらしている。確かに、直後は、保守野党を含めて文在寅政権の対日「無策」が批判されたが、その後の推移を見ると政権批判は対日批判に掻き消された格好である。ある意味では、この一連の「騒動」の原因となった「徴用工」判決の問題がどこかに吹っ飛んでしまい、「日本が意地悪な脅しを加えて韓国を屈伏させようとしている」と韓国社会では受け止められている。韓国における日本製品の「不買・不売運動」の背景には、日韓の歴史的経験に起因する「反日感情」というよりも「弱い者いじめは許さない」という「素朴な正義感」が存在するようだ。 さらに、単なる「便法」ではなく、本気で韓国を安全保障上の「問題国家」とするのであれば、それは日本の外交や安全保障にとって、従来の立場とは異なる相当に大きな転換である。確かに、安倍政権は、「韓国とは市場経済と民主主義という基本的価値観を共有する」という表現を政府文書からわざわざ削除したり、日本外交における韓国の優先順位を下げるような表現を使ったりして、日本の外交や安全保障における韓国の位置づけを再考する、換言すれば「日韓関係の『再定義』」とでも呼ぶべき政策指向を見せてきたことは否定できない。そして、その証左として、韓国が同盟国との関係維持よりも対北朝鮮政策に前のめりになっていること、さらに米中対立の構図の中で曖昧な立場を示していることなどを示唆してきた。しかし、もしそうであれば、韓国に対してはもちろん、日韓が同盟を共有する米国、さらには日本国内にも、そして国際社会に対しても、納得のいく説明が必要だろう。 しかし、現状は、安全保障の問題だから明確にはできないという一点張りで、なぜ、このタイミングで韓国への対応を大きく変更する必要があったのかについて、納得いく説明が聞かれない。今回の「対抗措置」は、その意味で非常に不可解な部分が大きく、とても正当なものだと評価することはできない。ただ、一旦採った措置を何の明確な変更理由がないにもかかわらず撤回することもまた難しいのも事実だ。 まずは、この一連の「騒動」の原因となった「徴用工」判決に関して、韓国政府が当該判決と請求権協定とを両立しうる妙案を日本政府に提示して交渉を始めることが必要だと、私は考える。その際、判決の核心は日本企業が賠償することではなく被害者が救済されるべきだという点を優先したことだと解釈し、韓国政府が主導して、そこに韓国企業と日本企業との「自発的な参加」を呼びかけて補償に取り組むことが基本となるべきである。そして、その交渉と並行して、日本政府は安全保障上の問題に関して韓国政府と協議し、懸念が晴れるのであれば措置を果敢に撤回する姿勢を示すことが必要である。 日韓関係は、それまでの非対称的で相互補完的な関係が、対称的で相互競争的な関係に変容する中、双方ともそれぞれの「正義」を掲げて競争するようになっている。したがって、どちらかが正しいのかというゼロサム的な競争で問題が解決されることは困難な状況である。そうした競争を続ける限りは、相手が譲歩しない限りは「共滅」してもやむを得ないという、まさに「チキンゲーム」の様相を呈するしかない。歴史問題を直接的な契機として始まった対立が、経済領域、さらには安全保障領域にまで戦線を拡大することで、そうした様相を呈するようになりつつある。 では、どうしたらいいのか。日韓両政府は、相互に、相手の意図を読み取り、自らにとってより優先順位の高い重要なものは何なのか、それを獲得するためにはどうしたらいいのか、その代わり何を犠牲にしてもいいのか、こうした戦略的思考に基づいて交渉するという姿勢以外には、対立を緩和し解消するということは難しい。そのうえで、お互いの外交、安全保障、そして社会にとって、相手国はどのように位置付けられるのか、そうした知的な作業を自覚的に進める必要がある。日韓関係はそうした状況になっていることを、日韓両国の政治指導者はもちろん、市民も含めて肝に銘ずるべきだろう。 その意味で、最後に、韓国の民間団体や地方自治体から提起されている日韓交流の中断の動きに対して、韓国文在寅政権は「そうする必要はない」「そうするべきではない」という明確な姿勢を示してもらいたいと考える。 <木宮正史(きみや・ただし)Kimiya Tadashi) 1960年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科教授。東京大学法学部卒、同大学院博士課程単位取得退学。韓国高麗大学大学院博士課程修了、政治学博士。著書に『韓国-民主化と経済発展のダイナミズム』『朴正熙政府の選択:1960年代輸出志向型工業化と冷戦体制(韓国語)』『国際政治のなかの韓国現代史』『ナショナリズムから見た韓国・北朝鮮近現代史』など。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】第8回SGRAふくしまスタディツアーへのお誘い(再送) ~行って、見て、感じて、考える~ 関口グローバル研究会(SGRA)では2012年から毎年、福島第一原発事故の被災地である福島県飯舘(いいたて)村でのスタディツアーを行ってきました。そして、スタディツアーでの体験や考察をもとにしてAFCワークショップ、SGRAフォーラム、SGRAカフェなど、さまざまな催しを展開してきました。 2017年に7年間の避難生活が解除され、住民も徐々に「ふるさと」に帰り始めていますが、昔のままの生活を取り戻すことはできません。飯舘村の住民たちは、新しいふるさと作りに向けて進み始めています。今回のツアーでは、新しいふるさとつくりのシンボルとしての「佐須の地域再生可能エネルギー事業」と北川フラム氏を中心に計画されている「飯舘村アートプロジェクト」に焦点を当てて、新しいふるさとつくりのヴィジョンと計画を共に考えます。 テーマ:「ふるさと」の再生 日 程:2019年9月21日(土)、22日(日)、23日(祝) 人 数:10~15人程度 宿 泊:ふくしま再生の会体験宿泊施設「風と土の家」 参加費:一般参加者は12000円+新幹線往復料金 渥美奨学生・元奨学生(ラクーンメンバー)は補助あり 申込み締切:9月10日(火) 申込み・問合せ:渥美財団SGRA事務局 角田(つのだ) E-mail:[email protected] Tel: 03-3943-7612 詳細は下記リンクよりご覧ください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2019/07/Fukushima8chirashi.pdf ********************************************* ★☆★SGRAカレンダー ◇第8回SGRAふくしまスタディツアー ※申し込みは9月10日まで 「『ふるさと』の再生」(2019年9月21日~23日、福島県飯舘村) http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/2019/13510/ ◇第5回アジア未来会議(2020年1月9日~13日、マニラ近郊) 「持続的な共有型成長:みんなの故郷みんなの幸福」 ※参加申し込み受け付け中(早期割引は7月31日まで) ※論文募集は締切りました。 http://www.aisf.or.jp/AFC/2020/ アジア未来会議は、日本で学んだ人や日本に関心がある人が集い、アジアの未来について語る<場>を提供します。 ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応)を開始! SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別にお送りしますので、ご興味のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************
  • Dariyagul Shorina “Meeting Myself”

    ********************************************* SGRAかわらばん781号(2019年7月25日) 【1】エッセイ:ダリヤグル・ショリナ「自分との出会い」 【2】国史対話メールマガジン第6号を配信しました。 趙 珖「東アジア現代の『歴史化』のために」(韓国国史編纂委員長) 【3】第12回SGRAカフェへのお誘い(7月27日、東京)(最終案内) 「『混血』と『日本人』ハーフ・ダブル・ミックスの社会史」 【4】第8回SGRAふくしまスタディツアーへのお誘い(再送) ~行って、見て、感じて、考える~(9月21日~23日、飯舘村) ********************************************* 【1】SGRAエッセイ#603(私の日本留学シリーズ#33) ◆ダリヤグル・ショリナ「自分との出会い」 日本に来てからの5年間を振り返ってみると、自分の人生において最も重要な経験になっていると思います。様々な刺激を受けて、学んだことが非常に多いです。以下に、私にとって最も重要な変化について紹介します。 来日後新しい生活に慣れるのに少し時間がかかりました。しかし、慣れてきたら、ある日、私の毎日が同じことの繰り返しになっているのではないかと気づきました。それは生活がある程度安定してきたということですが、自分の中で新しいことが何もなくて、人生を十分に味わっていないという非常に強い違和感がありました。 最初は、毎日しなければならない同じことが決まっているので、今は少し我慢するしかないと思っていました。それが終われば、少し時間の余裕ができて新しいことも増えるだろうと理想的な状況を待っていました。しかし、忙しい毎日は続いていましたが、待っていても、変わったのは仕事の内容だけです。いろいろ考えてみた結果、何かをしている時に私が注目するのは「今のこと」ではなく、ほとんどが「これからのこと」に移っており、「今」がただ流れてしまっているためだと気づきました。 このようにして、「今」をよりよく意識するために、自分に「今は何をしているか」という質問をするようになりました。細かいところまで注意を払って、自分の周りを見てみます。例えば、料理を作っているとき、切った野菜の色や形などを見て、楽しむようにします。食べているとき、お皿の色と料理の色を意識して味わいます。外に出るときには、街路樹、花、建物を眺めながら、周りの美しさに感動します。そうすると、毎日通っている同じ道でも、新しい発見がたくさんありました。特に、季節によって変わる自然の美しさを楽しむ趣味ができました。 正直に言うと、このように「今」を生きることが、いつもできているわけではありません。例えば、発表がある時には、どうしても思考は緊張感から「これからのこと」に移ってしまいがちです。しかしながら、それを意識的にするときと、以前のように無意識だったときとは、違いがとても大きいと思います。 できるだけ毎日、どんな小さなことでも何か新しいことをするようにチャレンジしています。いつも研究室にいるのではなく、大学の図書館あるいは都内の図書館に行くなど、日常的にできるちょっとしたこともあれば、思い切って非日常的なこと、たとえば竜安寺に行くなど、計画を立てることもあります。環境を変えることで、当然ながら景色も変わりますが、新たな出会いと発見にも繋がります。自分だけの小さい世界を作るのではなく、周りをよく見れば、目の前にある広い世界に触れることができます。理想的な時間を待たなくても、「今」を生きるという生き方によって、忙しい毎日でも楽しむことができます。 さらに、ちょっと離れて物事を見ることを通して、今まで見えていなかったことがより明確になると思います。今は家族から遠く離れて、日本にひとりで住んでいますが、その距離のおかげで、改めて分かったことが多くあります。その1つが両親に対する気持ちです。自分の両親に対して、考えが時代遅れとか、もっとこうすればいいじゃないか…等々、上から目線で捉えていた時期がありました。しかし、こうして少し距離を置いてみると、自分のそのような態度がとても子供っぽいものだったということが分かりました。 今では、かつてのように父と母を責めるのではなく、大切な命をくれた2人だという強い存在感があります。そして、お父さんとお母さんに対して感謝する気持ちを持つと、自分の両親にはすごいところがたくさんあると初めて気づいて感動しています。それは私の力にもなっており、2つの羽ができたような感じがします。また、そういう自分の気持ちを両親に言葉にして伝えるのがとても大事だと考え、自分の誕生日に感謝の気持ちを必ず伝えるようになりました。あまり話すことがなかった以前に比べて、電話をかけて、両親とおしゃべりすることが増えました。 最後に、人生の見方に関する変化について紹介します。それは、どんな出来事があっても、それを経験として捉えるという見方の変化です。以前は、何かの出来事を「よかった=成功した」あるいは「よくなかった=失敗した」という観点のみで評価していました。このように評価することも重要ですが、感情的側面のみに焦点が当てられて、その出来事から学ぶことがあまりできないと考えました。しかし、観察者として、ひとつの経験として出来事をみてみると、失敗した原因と成功を促した要因も発見することができます。その結果、自分の課題も明確に見えてきます。課題があると分かれば、次はその課題を解決するための具体的な行動を決めて、その行動を実行することが重要です。このように経験として捉えるという見方を通して、多くの新たな発見ができるようになり、それによって人生の質も変わってきたと実感しています。 今まで、日本に来たのは2回になります。最初は、日本の文化や日本語に関わる知識を中心にした「日本との出会い」だったと思います。今回は、日本滞在を通して自分のことをより深く理解する、「自分と出会う」経験となりました。 <ダリヤグル・ショリナ Dariyagul_Shorina> カザフ国立大学東洋学部日本学科学士、政策研究大学院大学政策研究科修士、筑波大学人文社会科学研究科国際日本研究専攻後期過程在籍中。カザフ国立大学東洋学部日本学科専任講師、カザフスタン日本人材開発センター非常勤教師、筑波大学国際室中央アジアオフィス非常勤職員を経て、現在、明渓日本語学校(つくば市)開校準備室専任教師。研究分野は日本語教育。現在の研究テーマは海外の日本語教育における日本語教師のライフストーリー。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】「国史対話」メールマガジン第6号を配信しました。 ◆趙珖「東アジア現代の『歴史化』のために」(韓国国史編纂委員長) http://www.aisf.or.jp/sgra/kokushi/J_Kokushi2019ChoEssay.pdf SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。国史メルマガは毎月1回、月末に配信しています。SGRAかわらばんとは別にお送りしますので、ご興味のある方は下記より登録してください。また、3言語対応ですので、中国語話者、韓国語話者の方々にもご宣伝いただきますようお願いいたします。 ◇国史メルマガのバックナンバーおよび購読登録は下記リンクをご覧ください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【3】第12回SGRAカフェへのお誘い(最終案内) SGRAでは、良き地球市民の実現をめざす(首都圏在住の)みなさんに気軽にお集まりいただき、講師のお話を伺い、議論をする<場>として、SGRAカフェを開催しています。下記の通り第12回SGRAカフェを開催しますので、参加ご希望の方はSGRA事務局へお名前、ご所属と連絡先をご連絡ください。当日飛び込み参加も受け付けます。 ◆「混血」と「日本人」ハーフ・ダブル・ミックスの社会史 日時:2019年7月27日(土)14時~16時、その後懇親会 会場:渥美財団ホール http://www.aisf.or.jp/jp/map.php 会費:無料 参加申込・問合せ:SGRA事務局 <[email protected]> ◇趣旨: 『「混血」と「日本人」―ハーフ・ダブル・ミックスの社会史』の著者、下地ローレンス吉孝さんを招き、いわゆる「ハーフ」と呼ばれてきた人々に注目し、「日本人」という実は曖昧な言葉の境界について参加者とともに考えます。「日本人」の境界線はどのように引かれているのか。その境界に生きる人々は、いかに生きているのか。時に侮蔑的な言葉を浴びせられ、時に差別され、あるいは羨望のまなざしで見つめられながら、「日本人」と「外国人」のはざまを生きてきた人びと。そんな彼らの戦後から現代までの生活史をたどることで、もうひとつの「日本」の輪郭線を浮かび上がらせます。 ◇講師略歴: [発表者]下地ローレンス吉孝 1987年生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。専門は社会学・国際社会学。現在、上智大学、国士舘大学、開智国際大学などで非常勤講師として勤務。著書に『「混血」と「日本人」:ハーフ・ダブル・ミックスの社会史』(青土社、2018年)がある。 [コメンテーター]ソンヤ、デール 社会学者。ウォリック大学哲学部学士、オーフス大学ヨーロッパ・スタディーズ修士を経て上智大学グローバル・スタディーズ研究科にて博士号取得。これまで一橋大学専任講師、上智大学・東海大学等非常勤講師を担当。ジェンダー・セクシュアリティ、クィア理論、社会的なマイノリティおよび社会的な排除のプロセスなどについて研究。2012年度渥美財団奨学生。 [ファシリテーター]ファスベンダー、イザベル 東京外国語大学博士後期課程在籍中(2020年3月修了見込)。専門はジェンダー社会学。立命館大学にてドイツ語講師、同志社大学にて非常勤講師(Japanese_Society_and_Culture,_Ethnicity_in_Japan)を担当。現在の研究テーマは生殖をめぐるポリティクス、妊活言説。2017年度渥美財団奨学生。 第12回SGRAカフェのちらしを下記リンクよりご覧ください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2019/06/Cafe12chirashiL.pdf -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【4】第8回SGRAふくしまスタディツアーへのお誘い(再送) ~行って、見て、感じて、考える~ 関口グローバル研究会(SGRA)では2012年から毎年、福島第一原発事故の被災地である福島県飯舘(いいたて)村でのスタディツアーを行ってきました。そして、スタディツアーでの体験や考察をもとにしてAFCワークショップ、SGRAフォーラム、SGRAカフェなど、さまざまな催しを展開してきました。 2017年に7年間の避難生活が解除され、住民も徐々に「ふるさと」に帰り始めていますが、昔のままの生活を取り戻すことはできません。飯舘村の住民たちは、新しいふるさと作りに向けて進み始めています。今回のツアーでは、新しいふるさとつくりのシンボルとしての「佐須の地域再生可能エネルギー事業」と北川フラム氏を中心に計画されている「飯舘村アートプロジェクト」に焦点を当てて、新しいふるさとつくりのヴィジョンと計画を共に考えます。 テーマ:「ふるさと」の再生 日 程:2019年9月21日(土)、22日(日)、23日(祝) 人 数:10~15人程度 宿 泊:ふくしま再生の会体験宿泊施設「風と土の家」 参加費:一般参加者は12000円+新幹線往復料金 渥美奨学生・元奨学生(ラクーンメンバー)は補助あり 申込み締切:9月10日(火) 申込み・問合せ:渥美財団SGRA事務局 角田(つのだ) E-mail:[email protected] Tel: 03-3943-7612 詳細は下記リンクよりご覧ください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2019/07/Fukushima8chirashi.pdf ********************************************* ★☆★SGRAカレンダー ◇第12回SGRAカフェ(2019年7月27日、東京) 「『混血』と『日本人』ハーフ・ダブル・ミックスの社会史」 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/2019/13448/ ◇第8回SGRAふくしまスタディツアー ※申し込みは9月10日まで 「『ふるさと』の再生」(2019年9月21日~23日、福島県飯舘村) http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/2019/13510/ ◇第5回アジア未来会議(2020年1月9日~13日、マニラ近郊) 「持続的な共有型成長:みんなの故郷みんなの幸福」 ※参加申し込み受け付け中(早期割引は7月31日まで) ※論文募集は締切りました。 http://www.aisf.or.jp/AFC/2020/ アジア未来会議は、日本で学んだ人や日本に関心がある人が集い、アジアの未来について語る<場>を提供します。 ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応)を開始! SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別にお送りしますので、ご興味のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************
  • Invitation to SGRA Fukushima Study Tour #8

    ********************************************* SGRAかわらばん780号(2019年7月18日) 【1】第8回SGRAふくしまスタディツアーへのお誘い ~行って、見て、感じて、考える~ 【2】第12回SGRAカフェへのお誘い(再送) 「『混血』と『日本人』ハーフ・ダブル・ミックスの社会史」 ********************************************* 【1】第8回SGRAふくしまスタディツアーへのお誘い ~行って、見て、感じて、考える~ 関口グローバル研究会(SGRA)では2012年から毎年、福島第一原発事故の被災地である福島県飯舘(いいたて)村でのスタディツアーを行ってきました。そして、スタディツアーでの体験や考察をもとにしてAFCワークショップ、SGRAフォーラム、SGRAカフェなど、さまざまな催しを展開してきました。 2017年に7年間の避難生活が解除され、住民も徐々に「ふるさと」に帰り始めていますが、昔のままの生活を取り戻すことはできません。飯舘村の住民たちは、新しいふるさと作りに向けて進み始めています。今回のツアーでは、新しいふるさとつくりのシンボルとしての「佐須の地域再生可能エネルギー事業」と北川フラム氏を中心に計画されている「飯舘村アートプロジェクト」に焦点を当てて、新しいふるさとつくりのヴィジョンと計画を共に考えます。 テーマ:「ふるさと」の再生 日 程:2019年9月21日(土)、22日(日)、23日(祝) 人 数:10~15人程度 宿 泊:ふくしま再生の会体験宿泊施設「風と土の家」 参加費:一般参加者は12000円+新幹線往復料金 渥美奨学生・元奨学生(ラクーンメンバー)は補助あり 申込み締切:9月10日(火) 申込み・問合せ:渥美財団SGRA事務局 角田(つのだ) E-mail:[email protected] Tel: 03-3943-7612 詳細は下記リンクよりご覧ください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2019/07/Fukushima8chirashi.pdf -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】第12回SGRAカフェへのお誘い(再送) SGRAでは、良き地球市民の実現をめざす(首都圏在住の)みなさんに気軽にお集まりいただき、講師のお話を伺い、議論をする<場>として、SGRAカフェを開催しています。下記の通り第12回SGRAカフェを開催しますので、参加ご希望の方はSGRA事務局へお名前、ご所属と連絡先をご連絡ください。 ◆「混血」と「日本人」ハーフ・ダブル・ミックスの社会史 日時:2019年7月27日(土)14時~16時、その後懇親会 会場:渥美財団ホール http://www.aisf.or.jp/jp/map.php 会費:無料 参加申込・問合せ:SGRA事務局 <[email protected]> ◇趣旨: 『「混血」と「日本人」―ハーフ・ダブル・ミックスの社会史』の著者、下地ローレンス吉孝さんを招き、いわゆる「ハーフ」と呼ばれてきた人々に注目し、「日本人」という実は曖昧な言葉の境界について参加者とともに考えます。「日本人」の境界線はどのように引かれているのか。その境界に生きる人々は、いかに生きているのか。時に侮蔑的な言葉を浴びせられ、時に差別され、あるいは羨望のまなざしで見つめられながら、「日本人」と「外国人」のはざまを生きてきた人びと。そんな彼らの戦後から現代までの生活史をたどることで、もうひとつの「日本」の輪郭線を浮かび上がらせます。 ◇講師略歴: [発表者]下地ローレンス吉孝 1987年生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。専門は社会学・国際社会学。現在、上智大学、国士舘大学、開智国際大学などで非常勤講師として勤務。著書に『「混血」と「日本人」:ハーフ・ダブル・ミックスの社会史』(青土社、2018年)がある。 [コメンテーター]ソンヤ、デール 社会学者。ウォリック大学哲学部学士、オーフス大学ヨーロッパ・スタディーズ修士を経て上智大学グローバル・スタディーズ研究科にて博士号取得。これまで一橋大学専任講師、上智大学・東海大学等非常勤講師を担当。ジェンダー・セクシュアリティ、クィア理論、社会的なマイノリティおよび社会的な排除のプロセスなどについて研究。2012年度渥美財団奨学生。 [ファシリテーター]ファスベンダー、イザベル 東京外国語大学博士後期課程在籍中(2020年3月修了見込)。専門はジェンダー社会学。立命館大学にてドイツ語講師、同志社大学にて非常勤講師(Japanese_Society_and_Culture,_Ethnicity_in_Japan)を担当。現在の研究テーマは生殖をめぐるポリティクス、妊活言説。2017年度渥美財団奨学生。 第12回SGRAカフェのちらしを下記リンクよりご覧ください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2019/06/Cafe12chirashiL.pdf ********************************************* ★☆★SGRAカレンダー ◇第12回SGRAカフェ(2019年7月27日、東京) 「『混血』と『日本人』ハーフ・ダブル・ミックスの社会史」 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/2019/13448/ ◇第8回SGRAふくしまスタディツアー ※申し込みは9月10日まで 「『ふるさと』の再生」(2019年9月21日~23日、福島県飯舘村) http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/2019/13510/ ◇第5回アジア未来会議(2020年1月9日~13日、マニラ近郊) 「持続的な共有型成長:みんなの故郷みんなの幸福」 ※参加申し込み受け付け中(早期割引は7月31日まで) ※論文募集は締切りました。 http://www.aisf.or.jp/AFC/2020/ アジア未来会議は、日本で学んだ人や日本に関心がある人が集い、アジアの未来について語る<場>を提供します。 ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応)を開始! SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別にお送りしますので、ご興味のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************
  • Xie Fang “Me, the Yellow, and Japan”

    ********************************************* SGRAかわらばん779号(2019年7月11日) 【1】エッセイ:解放「黄色い私の日本」 【2】第12回SGRAカフェへのお誘い(再送) 「『混血』と『日本人』ハーフ・ダブル・ミックスの社会史」 ********************************************* 【1】解放「黄色い私の日本」 私は中国の東北部に生まれ、所謂「純粋」な「北方人」である。中国の東北部は、非常に乾燥して、春や秋という「温暖な」季節を持たない特殊な場所である。夏の昼間は30度を超え、逆に夜は冷え込み、温度差が激しいのである。冬はマイナス30度の日々が1ヶ月も続くことがよくあった。赤外線と乾燥の影響で、この大地で生活すること自体が、人間の知恵に挑戦するほど困難であった。こうした環境のお陰で、私は深刻な「東北訛り」に悩みながら、典型的な黄色い皮膚の持ち主となったのである。 しかし、自分の皮膚の色に気づいたのは、ずっと後のことであった。ある日、両親と一緒に首都・北京へ行った。私が小さな売店でスポーツ新聞を買おうとしたら、店員さんに上から目線で「あんた、東北の出身やろ、その皮膚の色で分かるよ」と言われ、私はその場から逃げ出したのだ。またある日、上海の地下鉄で電車を待っている時、駅員さんに「そこの、変な皮膚の色をしている人、そうだ、お前だ、お前東北から来ただろう、上海のような地下鉄は東北にはないだろう。下がれ、下がれ。」と言われた。私はその日、地下鉄に乗らずに、歩いて帰った。それ以降、私はこの2つの都市には、極力行かないようにしている。ただ、なぜ、私の「黄色い皮膚」という記号表現が、必ず「東北」という記号内容に象徴されている被差別部落につながるのか、ずっと理解できなかった。 小学2年生の時、父の仕事の関係で、私は日本で生活することになった。当時通うことになった某小学校の担任の先生は、中年のおじさんで、かなり怖い顔をしていた。私は真っ先に自分の皮膚が黄色であることを先生に言われるのではないかと心配した。しかし、先生は「今日から転校してきた解放くんだ、彼はとっても健康な皮膚の色をしているから、君たちも仲良く外で遊んで同じ色になろうね」と、みんなの前で私を紹介した。もちろん、当時の私は日本語が全く分からなかったので、先生の言うことを理解できたわけではなく、私が段々日本語を話せるようになった時に、同級生から聞かされたのだ。担任の先生には言葉では表せないほどの感謝の気持ちでいっぱいだ。 この事を境に、私は自分の皮膚の色を気にしなくなり、他人と同じであると思うようになった。日本で過ごした数年間は私にとって生涯この上なく幸せな時となった。この日本での楽しい記憶はいつになっても消えることがなかった。大学の専攻を日本語にしたのもこの実体験に影響されていると言ってよい。そして大学卒業後、日本の大学院に進学することを決めた。 大人になってから、黄色い皮膚が何を意味するか十分わかるようになった。黄色い皮膚が「被抑圧者」の表象であることを、この身で実感したことによって、人種差別がどれほど人間を傷付けるかも理解した。幸運なことに、私が在学している東京外国語大学は、海外からの留学生が非常に多く、私の黄色い皮膚は、多様な皮膚の色の中の一種にしか過ぎず、何も気にせずに学校で生活できている。日本に留学しているこの数年間、私は一度も、自分の皮膚のことや、訛りのある発音などを笑われたことはなかった。 もちろん、どこでも差別が存在することは否定できない。ただし、教育水準が高ければ高いほど、差別の発生確率が低いことが既に実証されている。一定の知識が共有されることによって、差別を完全に無くせないにしても、かなり抑制することは可能であると言える。日本が私を魅了したのは、和食でもなく、金閣寺でもなく、もちろんAKBでもない。私は、この教育と未来に投資する姿勢に惹かれたのである。これから、祖国も段々と発展していくと思うが、日本と同じように、未来に投資してほしいと願っている。 <解放(かい・ほう)Xie_Fang> 渥美国際財団2018年度奨学生。中国(大陸)出身。現在東京外国語大学博士後期課程在学中。研究分野は日本近代文学と比較文学。研究対象は引揚げ文学と震災後文学。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】第12回SGRAカフェへのお誘い(再送) SGRAでは、良き地球市民の実現をめざす(首都圏在住の)みなさんに気軽にお集まりいただき、講師のお話を伺い、議論をする<場>として、SGRAカフェを開催しています。下記の通り第12回SGRAカフェを開催しますので、参加ご希望の方はSGRA事務局へお名前、ご所属と連絡先をご連絡ください。 ◆「混血」と「日本人」ハーフ・ダブル・ミックスの社会史 日時:2019年7月27日(土)14時~16時、その後懇親会 会場:渥美財団ホール http://www.aisf.or.jp/jp/map.php 会費:無料 参加申込・問合せ:SGRA事務局 <[email protected]> ◇趣旨: 『「混血」と「日本人」―ハーフ・ダブル・ミックスの社会史』の著者、下地ローレンス吉孝さんを招き、いわゆる「ハーフ」と呼ばれてきた人々に注目し、「日本人」という実は曖昧な言葉の境界について参加者とともに考えます。「日本人」の境界線はどのように引かれているのか。その境界に生きる人々は、いかに生きているのか。時に侮蔑的な言葉を浴びせられ、時に差別され、あるいは羨望のまなざしで見つめられながら、「日本人」と「外国人」のはざまを生きてきた人びと。そんな彼らの戦後から現代までの生活史をたどることで、もうひとつの「日本」の輪郭線を浮かび上がらせます。 ◇講師略歴: [発表者]下地ローレンス吉孝 1987年生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。専門は社会学・国際社会学。現在、上智大学、国士舘大学、開智国際大学などで非常勤講師として勤務。著書に『「混血」と「日本人」:ハーフ・ダブル・ミックスの社会史』(青土社、2018年)がある。 [コメンテーター]ソンヤ、デール 社会学者。ウォリック大学哲学部学士、オーフス大学ヨーロッパ・スタディーズ修士を経て上智大学グローバル・スタディーズ研究科にて博士号取得。これまで一橋大学専任講師、上智大学・東海大学等非常勤講師を担当。ジェンダー・セクシュアリティ、クィア理論、社会的なマイノリティおよび社会的な排除のプロセスなどについて研究。2012年度渥美財団奨学生。 [ファシリテーター]ファスベンダー、イザベル 東京外国語大学博士後期課程在籍中(2020年3月修了見込)。専門はジェンダー社会学。立命館大学にてドイツ語講師、同志社大学にて非常勤講師(Japanese_Society_and_Culture,_Ethnicity_in_Japan)を担当。現在の研究テーマは生殖をめぐるポリティクス、妊活言説。2017年度渥美財団奨学生。 第12回SGRAカフェのちらしを下記リンクよりご覧ください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2019/06/Cafe12chirashiL.pdf ********************************************* ★☆★SGRAカレンダー ◇第12回SGRAカフェ(2019年7月27日、東京) 「『混血』と『日本人』ハーフ・ダブル・ミックスの社会史」 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/2019/13448/ ◇第5回アジア未来会議(2020年1月9日~13日、マニラ近郊) 「持続的な共有型成長:みんなの故郷みんなの幸福」 参加申し込み受け付け中(早期割引は7月31日まで) ※論文募集は締切りました。 http://www.aisf.or.jp/AFC/2020/ アジア未来会議は、日本で学んだ人や日本に関心がある人が集い、アジアの未来について語る<場>を提供します。 ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応)を開始! SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別にお送りしますので、ご興味のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRA の事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************