SGRAメールマガジン バックナンバー
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CHEN Zhao “Incomplete Enumeration of 2020”
2021年3月18日 11:44:23
*********************************************** SGRAかわらばん862号(2021年3月18日) 【1】陳昭「2020年の不完全的羅列」 【2】第15回SGRA-Vカフェへのお誘い(最終案内) 「『鬼滅の刃』からみた日本アニメの文化力」(3月20日、オンライン) *********************************************** 【1】SGRAエッセイ#663 ◆陳昭「2020年の不完全的羅列」 このエッセイは去年(2020年)3月に書くべきものであった。 延滞したのは不測の事態が次々と起こり、その対応に追われ、書く余裕がなかったからだと、自分にはそう言い聞かせていた。しかし本当は「振り返るのが辛くて逃げていたから何も書けなかったのかもしれない」という気持ちも心のどこかにある。 目の前に起こっている予想外の現実には「臨機応変でいなければならない」と理性では分かっているつもりだった。しかし、そこにある現実があまりに予想外なゆえに、たとえ対処するために行動したとしても、リアリティとして受けとめるところまでは心が付いていけなかった。「嘘だろう」と思いつつも、拒絶不可能な実態に振り回されてばっかりだった。 こうした、現状への対応と現実の消化との間に乖離が生じてしまう1年であった。いまだに収束が見えない新コロナウイルス感染症の拡大において、こういう気持ちになるのは、決して私一人ではないだろう。 この1年の出来事を鳥瞰的通時的に記録できるなら、どんなに壮大なフィルムになるだろう。また、異なる国の政治体制と予防対策の関係、人種や社会慣習が持つ影響力など、このフィルムを見るフィルターも様々。しかし、コロナ禍の真ん中に生きる一人として、なにか書こうとすれば、やはり身を以て経験していた虫観的な世界になる。 2020年2月、中国は全面封鎖。予定していた中国への一時帰国の中止を余儀なくされた。3月には住んでいた寮の入居期間が切れ、残りの留学ビザは5月まで。もともとは帰国してしばらく中国で就活でもするつもりだったので、日本ではすぐに新しい住まいを構えなくてもいいと思っていた。そこから慌てて部屋探しを始めた。学校の近く、外国人可の物件に絞って探していたが、2ヶ月しかないビザが問題となった。更新予定と説明しても難色を示す大家さんが多い。 その中、今になっても思い出すと引っかかることがある。築40年も超えた物件だが、間取りはよくて広めだったのでさっそく申し込もうとした。申請して2日目になってから、仲介さんからの電話があって、大家さんは外国人がやはりだめだと断られてしまった。いろいろと聞いているうちに、大家さんはご高齢で、どうもコロナで中国人に貸すのは不安があるらしい。渡航歴がないとはいえ、付き合いも中国人が多いだろうから不安だそうだ。仕方がないと諦めたその夜、寮に帰ったら、事務室の方から武漢差別やコロナ差別について寮生を対象に調査依頼が都から来たと話を聞いた。幸い日本ではヨーロッパほど差別が深刻にならなかった。また、面白いことに「東大生はだめ」と電話で断わられた物件もあった。お爺さんぽい声だった。どうも駒場近辺の高齢の大家さんたちは「コロナ」と「東大生」が苦手だそうだ。 2020月3月、駆け足で引っ越しを終えた。疲労の重なりと季節の変わり目で体調を崩してしまった。風邪症状に半端ない倦怠感が伴った。手先が腫れているような、感覚が鈍くなる感じ。下痢と咳は症状発覚から3日目で出て、軽い症状が続いたが一週間以内には消えていた。38度超える熱は一晩だけで、ほとんど37.0度~37.3度の間であった。当時PCR検査は37.5度以上の熱で3日続くのが条件であったため、検査を受けることができず、自宅で外出を自粛していた。当初日本ではコロナ感染に対してまだ意識が低かったが、渥美財団の方々と相談の上、奨学金を受けた年度末に行われる研究報告会は資料提出のみとなった。発症から10日目ぐらいでほとんどの症状は消えた。倦怠感が繰り返し出てはいたけど、2週間目になるとそれも治った。 2020月4月、自分の体調はよくなったが、日本の感染状況は悪化する一方だ。さらに、浴室で転んでしまった。後頭部を床にぶつけないようにバランスを取ろうとして足を極度に伸ばした際、膝の軟骨を傷つけてしまった。受診したところまず静養だと言われたが、1ヶ月経っても回復せず、足を伸ばすこともできなくなった。外出どころか、トイレへ行くのにも苦労する日々だ。今まで味わったことのない無力感。家族がそばにいない孤独感。「どこにも行けない、ここに閉じ込められているのだ」と、トイレの回数を減らすために水すら飲むのを控えてしまうたびにそう思う。支えになってくれたのは近所に住む研究室の仲間や友人だ。食材の調達やごみ出し、体調不良の時は中国の家族から送ってきた漢方の薬を玄関の前に届けてくれるなど、お世話になってばかりだった。 予定していた就活が頓挫し、「悪年」とでも言いたくなる不運が続き、収入がないのにアルバイト再開の目途も立たないままの日々。引っ越しの出費、オ-バードクターの学費免除が困難、予想外の治療費など、諸々の事情で経済的に非常に困難な状況に陥っていた。その中、渥美財団から届いた新型コロナ緊急支援金の連絡は本当に「雪中送炭(雪中に炭を送る)」だった。生活基盤を整えるのに大変ありがたい支援金だった。そして、大変な時期に温かいメールや電話で見守ってくださった事務局の方々、本当にありがとうございます! 2020年5月、別の病院で膝を再び検査した。静養中は足をぜんぜん伸ばしていないので、筋肉が著しく弱ってしまっていた。MRI検査で膝軟骨の損傷は手術なしの治療方針が決められ、6月からはリハビリが開始。キーボードで「リハビリ」を打つだけで、当時の激痛の記憶が蘇り「痛い」と感じるほど、痛かった。痛くて出た涙は「滴」ではなく、滴が繋がる「線」でもない。「面」なのだ。中国語では「涙流満面(顔じゅう涙まみれ)」と「汗流満面(顔じゅう汗まみれ)」という言葉がそれぞれあるが、リハビリはその合体だ。涙か汗か分からない、顔中が万遍なく塩味のある液体で濡れているから。 夏になると、リハビリもだいぶ楽になり、ようやく研究にも少しずつ復帰できるようになった。2020年1月、フィリピンで開催された第5回アジア未来会議で発表した時に平山昇先生からいただいたコメントに触発され、投稿する論文のアイデアが生まれた。2020年の後半は延滞してきた仕事をこなしながら充実した日々を過ごせた。足も普段歩く分には問題ないまでに回復して、気分転換のためによく散歩をしている。電線や線路、それに坂と低い住宅地。すべてが日本の日常風景を象徴する要素だ。会えない日はもうすこし続くと思うが、せめて身近にあるささやかな美しさを楽しみたい。 最後に、もし去年の経験から何かを教わったかと聞かれれば、それは「泣くは恥だが役に立つ」ということ。今まではどこか強がって何ができるかに拘っていたのかもしれないと気づかされた1年であった。できない事やできない時は当然ある。その「リアリティ」を受けとめるのも大事だと思うようになった。それこそ「リアル」の人生だ。今まであたりまえのように分かっていたつもりだったこの道理は、あたりまえでない個々の経験があるからだと、少し分かるようになったかもしれない。 あっ、言い忘れたことがある。「泣くは恥だが役に立つ」は確かだが、そのときは、柔らかめのティッシュの方がいい。あと、ティッシュは甘いのは知っている?満面の涙を拭いた時にたまたま口に入ったことで知った。個人的な経験だと、保湿ローション入りのタイプが最も甘い。これを読んでティッシュを舐めたくなる方は、どうぞご遠慮なく。 <陳昭(ちん・しょう)CHEN_Zhao> 渥美国際交流財団2019年度奨学生。東京大学大学院総合文化研究科文化人類学コース博士課程。2014年同コース修士卒業。都市環境デザイン、景観生成、テクノロジーと社会について研究中。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】第15回SGRA-Vカフェ「『鬼滅の刃』からみた日本アニメの文化力」へのお誘い(最終案内) 下記の通り第15回SGRA-Vカフェをオンラインで開催いたします。参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。聴講者はカメラもマイクもオフのZoomウェビナー形式で開催しますので、お気軽にご参加ください。今回は日本語⇒中国語、日本語⇒韓国語への同時通訳がありますので、中国語、韓国語話者の方々にもご宣伝いただけますと幸いです。 テーマ:「『鬼滅の刃』からみた日本アニメの文化力」 日 時:2021年3月20 日(土)午後3時~4時30分(日本時間) 方 法: Zoomウェビナーによる 言 語: 日中韓3言語同時通訳付き 主 催:渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA) 申 込:下記リンクよりお申し込みください https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_zvTNvUl4T1CsaZmXgj6CSA お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ■ 趣旨 昨年の長編アニメ『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』の大ヒットは、日本の現代文化におけるアニメの強さをあらためて印象づけた。一方でアニメは大衆文化の中でも日陰の存在だった時期は長く、決して順調に発展してきたわけではない。そんなアニメが現在に至る歴史、世界的視野からみた独自性の確立、これまでにヒット・注目された作品の特徴、そしてアニメがこれからも発展し、日本を代表する大衆文化としての力を持続するための課題、展望について解説する。 ■ プログラム 司会:陳えん(京都精華大学マンガ学部専任講師) 【第1部】 講演「『鬼滅の刃』からみた日本アニメの文化力」 津堅信之(アニメーション研究家、日本大学藝術学部映画学科講師) 【第2部】 対談/インタビュー:津堅信之×陳えん 【第3部】 質疑応答(会場+オンライン) ■登壇者略歴 講演者:津堅信之(Tsugata_Nobuyuki) アニメーション研究家/日本大学藝術学部映画学科講師。1968年生まれ。近畿大学農学部卒業。専門はアニメーション史だが、近年は映画史、大衆文化など、アニメーションを広い領域で研究する。 主な著書: 『日本アニメーションの力』(NTT出版/中国・韓国語でも出版) 『日本のアニメは何がすごいのか』(祥伝社新書/韓国語でも出版) 『ディズニーを目指した男 大川博』(日本評論社) 『新版アニメーション学入門』『京アニ事件』(ともに平凡社新書)など 司会者:陳えん(Chen_Yan/ちん・えん) 京都精華大学マンガ学部専任講師/2017年度渥美奨学生。北京大学学士、東京大学大学院総合文化研究科修士・博士課程単位取得満期退学。 研究領域:アニメーション史/日中アニメ・マンガ交流史/「動漫」「IP」の概念史など。研究以外、マルチクリエイター・プロデューサーとして日中コンテンツ業界にて活躍中。 ◇プログラムの詳細は下記リンクをご覧ください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2021/02/J_SGRA-VCafe15_Program.pdf ◇中国語(簡体字)ウェブページ http://www.aisf.or.jp/sgra/chinese/2021/02/12/sgra_cafe_15/ ◇中国語(繁体字)ウェブページ http://www.aisf.or.jp/sgra/chinese/2021/02/16/sgra_cafe_15_t/ ◇韓国語ウェブページ http://www.aisf.or.jp/sgra/korean/2021/02/11/sgra_cafe_15/ ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ ********************************************* -
LI Kotetsu “Honor Student in the Pandemic (Part 2)”
2021年3月11日 14:18:19
*********************************************** SGRAかわらばん861号(2021年3月11日) 【1】李鋼哲「台湾、コロナ禍の中の優等生(その2)」 【2】催事紹介:日中韓三国協力事務局創設10周年記念シンポジウムシリーズ <対談>道上尚史(TCS事務局長)×張濟国(東西大学総長)(3月17日、オンライン) 【3】第15回SGRA-Vカフェへのお誘い(再送) 「『鬼滅の刃』からみた日本アニメの文化力」(3月20日、オンライン) *********************************************** 【1】SGRAエッセイ#662 ◆李鋼哲「台湾、新型コロナ禍の中の優等生(その2)」 その台湾は一体どのような「国」なのか?その歴史から見てみよう。 台湾は台湾本島とその周辺諸島により構成され、面積は約3.6万平方キロメートル、日本九州地方の面積(約4.4万平方キロメートル)より小さい島で、人口約2360万人(2019年)。亜熱帯や熱帯地域であるため、年中気温は高く、熱帯植物や果物など物産が豊富な「宝島」である。 そもそも台湾という「国」は歴史的にも現在も存在しない。現在の正式名称は「中華民国」(Republic_of_China=ROC)であり、1912年に中国で発生した辛亥革命により建国、アジア最初の共和国である。1949年に国共内戦で共産党軍に敗れた政府軍の国民党は、台湾に逃げて現政権を続けており、その為、実際に中国は「2つの国」が併存することになった。 歴史的に、中国の『三国志・呉志』、『隋書・流求伝』などに台湾を記録したことがあり、元代(モンゴル帝国時代)に台湾・澎湖諸島に巡検司が設置され福建省泉州府に隷属されたという。その後16世紀にポルトガル航海士が台湾島を発見し、「フォルモサ」(ポルトガル語:Formosa、福爾摩沙「美しい島」)と呼んでいたという。17世紀における大航海時代にはオランダ(1624-62)の植民地となっていたが、中国では東北(旧満州)の満州族が大清国を建国、後ほど明朝を破って政権を取ると、それに抵抗して戦っていた明朝の鄭成功将軍とその軍隊が清朝軍に追われ1661年に台湾に渡り、オランダ軍と戦い追放し、同島初の政治的実体の「東寧王国」を設立、統治していた。 しかし、清は1683年に鄭王国を破り台湾島を併合し、約210年間統治していたが、1895年に日清戦争に勝った日本が清朝との間に「下関条約」を締結、台湾を日本領に編入の上、台湾総督府を設置し50年間統治。清朝統治期間には大陸福建省中心に漢人が大量に流入し、原住民は徐々に漢人と同化し、現在の「台湾人」になったので、中台は同文同種同民族と言ってもいいだろう。 第二次世界大戦が終わる頃、中華民国(総統は蒋介石)は1945年8月に日本の敗戦で同盟国の合意のもと台湾を接収し、台湾省として自国領に編入した(「台湾光復」)。中華民国は戦勝国であったため国連創設時に常任理事国になり、1949年に台湾に移転してもその地位は維持していたが、1971年に大陸中華人民共和国が中華民国に取って代わり国連入りし常任理事国になると、台湾は国連を脱退し、国際社会では台湾を中国の一部として認め国交を断絶し、中国との国交正常化が進めてられてきた。因みに日本は1972年9月に中国と国交を樹立、中華民国との国交を断絶したたが、「財団法人交流協会(現公益財団法人日本台湾交流協会)」を設立して台湾との交流を維持している。2020年10月現在、中華民国と国交を維持している国はわずか15カ国で、いずれも中南米など小国、欧州はバチカンのみ。 1975年に蒋介石総統が死去すると息子蒋経国が政権を引き継ぎ、1987年に戒厳令を解禁(大陸と準戦争状態の終結)したが、1988年に蒋経国が死去すると、李登輝副大統領(本省人)が後を継ぎ大統領に。1990年代に民主化運動のうねりのなか、李総統は民主化を進め、1996年に初めての民主選挙を行い、民選大統領となった。2000年には「民主進歩党(本省人中心)」が初めて国民党を破り政権交代が行われ、その後2008年に国民党が再び選挙に勝ち与党になっていたが、2016年の選挙では民進党の蔡英文氏が初の女性大統領となり、昨年1月には第2期大統領に再選され現在に至っている。 台湾では民主化とともに、民衆のアイデンティティが徐々に「中国人」から「台湾人」に変わりつつある。1992年の国立政治大学の世論調査では、自分は「台湾人」と答えた人は住民の17.6%、「中国人」との答えは25.5%、「台湾人かつ中国人」との答えは46.4%だったが、2020年の同調査では、その答えはそれぞれ67%、2.4%、27.5%に大きく変わった。大陸出身者中心の国民党はその数や影響力が徐々に低下し、本省人の意識や勢力が急上昇している。 民進党は独立志向が強く、「独立」と「統一」問題を巡って、大陸と確執が続いている。国民党政権の時は「ひとつの中国」政策を重視するが、民進党政権の時はそれを認めない政策、または曖昧な政策を取っている。それに対して中国政府は、2005年に「反国家分裂法」を成立させ、台湾が「独立」を宣言したら武力行使を辞さないと、政治的・軍事的脅威を与えており、「独立」を強く牽制している。このような状況の中で、台湾では「現状維持」政策を貫いている。 一方、1990年代に台湾が大陸と交流を再開してから、両岸関係は急速に接近している。2008年12月には中台間の定期直航便が就航し、中国大陸住民の台湾観光や三通が解禁。2010年の中台トップ会談では、「両岸経済協力枠組協議」(ECFA)を締結、実質的にはFTAが結ばれている。いまや台湾の輸出額の約4割が中国大陸向けで、進出台湾企業は約10万社(2020年1-11月までの台湾対外投資の47.6%は大陸)、大陸在住の台湾人は約100万人、年間往来者数は約500万人(2019年)を超え、台湾の国際結婚の配偶者も40万人のうち26万人が大陸妹だという。 台湾経済の過度な大陸依存は「大陸に飲み込まれる」リスクを高めるだけではなく、大陸政府当局により政治的に利用される危険性も高めている。中国は台湾に対する「統一戦線」工作にこのような状況を利用するだけではなく、台湾に対する圧力にも活用している。例えば、2019年7月31日に中国文化観光省は8月から中国国内47都市から台湾への個人旅行を一時的に停止すると発表、台湾側から見れば明らかに圧力である。 また今年2月26日に、中国政府は台湾からのパイナップルの輸入を3月1日から停止すると発表、検疫で有害生物を何度も検出したためと説明。台湾ではメディアで大騒ぎになり、当局は政治的な圧力と反発している。台湾のパイナップル年間生産量の約1割が輸出、大陸向けがその95%のため、実際台湾農家への影響は必ずしも決定的とは言えない。台湾ではパイナップルの国内市場での販売拡大や他の海外市場を模索しているという。しかし台湾では、このように大陸からの圧力がある度に大陸政権への不満と「台湾人意識」の高揚が繰り返され、大陸への遠心力が働くのではなかろうか。台湾にとっては、如何に大陸への過度な経済依存度を低下させるのかが大きな課題である。 近年は米中関係の悪化に伴い、両岸関係は常に緊張状態が続いている。米国は大陸中国が台湾を「飲み込む」ことを許さず、「台湾関係法」をもとに、毎年台湾に大量の武器を提供(販売)しているが、最近では防衛的な武器から攻撃的な武器までも大量に売っているという(2020年度の武器販売は345億ドル)。トランプ政権以来米国は台湾との関係を急速に強化しているが、バイデン民主党政権になってもその政策基調は変わらない。 中国人の大量流入と国民党が中国の文化(大量の文物等)を台湾に持ち込み、中国の正当政府としての統治基盤を造ったため、台湾には中国の伝統文化が根深く浸透し、中国式建築や中華料理、服装などが普及し、「本場の中国伝統文化を体験したかったら台湾に行った方が」とまで言われている。 台湾人は日本に親近感を持つ人が多く、台湾では「哈日族」と言われる。ある台湾出身の学者の話を借りると、その理由は「台湾人からすれば、長い間外部勢力に侵略や支配されてきた経験から、大陸から来た支配者よりは、日本統治時代がましだった」という認識がその根底にあるようだ。近年、台湾から日本への旅行客は大幅増加し、2019年度の訪日客は489万人、中国と韓国に次いで3番目であり、台湾の5人にひとりが毎年日本旅行を楽しんでいることになる。私が住んでいる石川県も親台湾的な雰囲気が強く、小松空港から台北までは毎日直行便が運行しているが、それも不足して毎日2便に増やすという話が出ているほどである。 <李鋼哲(り・こうてつ)LI Kotetsu> 中国延辺朝鮮族自治州生まれの朝鮮族。1985年中央民族大学(中国)哲学科卒業後、中共北京市委党校大学院で共産党研究、その後中華全国総工会傘下の中国労働関係大学で専任講師。1991年来日、立教大学大学院経済学研究科博士課程単位修得済み中退後、2001年より東京財団研究員、名古屋大学研究員、総合研究開発機構(NIRA)主任研究員を経て、2006年より北陸大学教授。2020年10月、一般社団法人東北亜未来構想研究所を有志たちと創設、所長に就任。日中韓+朝露蒙など東北アジアを檜舞台に研究・交流活動を行う。SGRA研究員および「構想アジア」チーム代表。近著に『アジア共同体の創成プロセス』(編著、2015年、日本僑報社)、その他論文やコラム多数。 ※前編(李鋼哲「台湾、コロナ禍の中の優等生(その1)」)は下記リンクよりお読みいただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/2021/16381/ -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】催事紹介: SGRA会員の道上尚史様からオンラインイベントのご案内をいただきましたのでご紹介します。参加ご希望の方は下記より直接お申込みください。 ◆日中韓三国協力事務局創設10周年記念シンポジウムシリーズ <対談>道上尚史(TCS事務局長)×張濟国(東西大学総長) 日中韓3国の協力促進を目的として、2011年に3か国の政府により設立された日中韓三国協力事務局(TCS)は本年で設立10周年を迎えました。この節目の年を記念して、TCS創設10周年記念シンポジウムシリーズを実施する運びとなりました。その第一弾として、道上尚史TCS事務局長と張濟国(チャン・ジェグク)韓国・東西大学総長との対談イベントをオンラインにて実施いたします。本対談では「CAMPUS_Asia(注)」「コロナと学生」「日中韓三国協力事務局(TCS)10周年」にフォーカスを当て、コロナの状況下における学生と大学側の苦労、TCSの10年間の足跡等について紹介します。中国の学生も現地から参加し、日韓の学生との交流や、学んだ点を共有します。 今年1年間展開される各種記念行事の本格的なスタートとなるイベントです。どうぞふるってご参加ください。 【日時】3月17日(水)14:00―15:30(日本時間) 【形式】オンライン(Zoom使用) 【言語】日中韓の同時通訳あり 【参加費】無料 【出席者】 道上尚史 日中韓三国協力事務局(TCS)事務局長 張濟国 韓国・東西大学総長 【事前登録】https://bit.ly/3br9fW0 事前登録していただいたメールアドレスに後日Zoom参加リンクをお送りします。 事前登録の際に頂いた発表者への質問はQ&A セッションにて優先的に取り上げられます。 (注)「CAMPUS_Asia」は政府間合意にもとづき、日中韓の大学間で2011年から実施している大規模留学プログラム。3国17組の大学コンソーシアムが組まれ、数千人もの学生が3国でのキャンパスライフを経験している。東西大学は参加大学のひとつ。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【3】第15回SGRA-Vカフェ「『鬼滅の刃』からみた日本アニメの文化力」へのお誘い(再送) 下記の通り第15回SGRA-Vカフェをオンラインで開催いたします。参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。聴講者はカメラもマイクもオフのZoomウェビナー形式で開催しますので、お気軽にご参加ください。今回は日本語⇒中国語、日本語⇒韓国語への同時通訳がありますので、中国語、韓国語話者の方々にもご宣伝いただけますと幸いです。 テーマ:「『鬼滅の刃』からみた日本アニメの文化力」 日 時:2021年3月20 日(土)午後3時~4時30分(日本時間) 方 法: Zoomウェビナーによる 言 語: 日中韓3言語同時通訳付き 主 催:渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA) 申 込:下記リンクよりお申し込みください https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_zvTNvUl4T1CsaZmXgj6CSA お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ■ 趣旨 昨年の長編アニメ『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』の大ヒットは、日本の現代文化におけるアニメの強さをあらためて印象づけた。一方でアニメは大衆文化の中でも日陰の存在だった時期は長く、決して順調に発展してきたわけではない。そんなアニメが現在に至る歴史、世界的視野からみた独自性の確立、これまでにヒット・注目された作品の特徴、そしてアニメがこれからも発展し、日本を代表する大衆文化としての力を持続するための課題、展望について解説する。 ■ プログラム 司会:陳えん(京都精華大学マンガ学部専任講師) 【第1部】 講演「『鬼滅の刃』からみた日本アニメの文化力」 津堅信之(アニメーション研究家、日本大学藝術学部映画学科講師) 【第2部】 対談/インタビュー:津堅信之×陳えん 【第3部】 質疑応答(会場+オンライン) ■登壇者略歴 講演者:津堅信之(Tsugata_Nobuyuki) アニメーション研究家/日本大学藝術学部映画学科講師。1968年生まれ。近畿大学農学部卒業。専門はアニメーション史だが、近年は映画史、大衆文化など、アニメーションを広い領域で研究する。 主な著書: 『日本アニメーションの力』(NTT出版/中国・韓国語でも出版) 『日本のアニメは何がすごいのか』(祥伝社新書/韓国語でも出版) 『ディズニーを目指した男 大川博』(日本評論社) 『新版アニメーション学入門』『京アニ事件』(ともに平凡社新書)など 司会者:陳えん(Chen_Yan/ちん・えん) 京都精華大学マンガ学部専任講師/2017年度渥美奨学生。北京大学学士、東京大学大学院総合文化研究科修士・博士課程単位取得満期退学。 研究領域:アニメーション史/日中アニメ・マンガ交流史/「動漫」「IP」の概念史など。研究以外、マルチクリエイター・プロデューサーとして日中コンテンツ業界にて活躍中。 ◇プログラムの詳細は下記リンクをご覧ください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2021/02/J_SGRA-VCafe15_Program.pdf ◇中国語(簡体字)ウェブページ http://www.aisf.or.jp/sgra/chinese/2021/02/12/sgra_cafe_15/ ◇中国語(繁体字)ウェブページ http://www.aisf.or.jp/sgra/chinese/2021/02/16/sgra_cafe_15_t/ ◇韓国語ウェブページ http://www.aisf.or.jp/sgra/korean/2021/02/11/sgra_cafe_15/ ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ ********************************************* -
LI Kotetsu “Honor Student in the Pandemic (Part 1)”
2021年3月4日 13:42:08
*********************************************** SGRAかわらばん860号(2021年3月4日) 【1】李鋼哲「台湾、コロナ禍の中の優等生(その1)」 【2】第15回SGRA-Vカフェへのお誘い(再送) 「『鬼滅の刃』からみた日本アニメの文化力」(3月20日オンライン) *********************************************** 【1】SGRAエッセイ#661 ◆李鋼哲「台湾、コロナ禍の中の優等生(その1)」 新型コロナ禍のため、今年8月に開催を予定していたアジア未来会議(AFC)は次年度に延期せざるをえなくなった。ところで、台湾の新型コロナ感染の状況はどうなのか?台湾は一体どんなところなのか?知りたい方が大勢いると思って、このエッセイを執筆することにした。 筆者は台湾に2回訪れたことがある。1回目は2000年8月、東アジア総合研究所が主催する国際シンポジウムを台北で開催。筆者はアルバイトで事務局長を務めていた。当時は中国籍だったので、台湾に行くには厳しい制限があり、1ヶ月前に申請したビザが下りるか下りないのか全く見当がつかずに待っていたが、幸い出発3日前に下りた。国際会議は無事に終了、翌日は新竹工業都市に見学に行ったが、強い台風にあってほとんど見学できずに戻ってきた。3日目は日本からの参加者(故金森久雄・日本経済研究センター顧問をはじめ著名な先生ら)一行約30名は李登輝元総統のオフィスを訪れ、2時間くらい歓談したのが一番印象に残る。 その後、2016年3月に、高雄市にある文藻外語大学に招待されてワンアジア財団の講義を行った。この時は日本国籍になっていたので、ビザも要らず、小松空港から台北の桃園国際空港までの直行便を利用。家族同伴の5日間の日程で、高雄と台北をゆっくり見学できた。高雄港を見学した時「高雄」という地名の由来を教えてもらった。日本統治時代には「打狗」(タコウ、犬を打つ)という町だったが、その読み方が日本人には「たかお」と聞こえたので、「高雄」に変更したという。台北では国父記念館を訪れ、「中華民国」の歴史と国父孫文についていろいろ勉強になった。 話を本題に戻して、台湾のコロナ禍事情はどうなんだろう?コロナ禍対策で世界一番優等生だということはニュースなどでも知られているが、その実態はどうなのか? 台湾の感染者は累計でわずか909人、死者は8人だという。 1月30日の日本経済新聞によると、台湾の衛生福利部(厚生省に相当)中央感染症指揮センターは、30日の発表で新型コロナウイルスに感染して80代の女性が29日に死亡したことを明らかにしたが、死者が出るのは2020年5月以来、約8カ月ぶりという。 台湾は、新型コロナの感染拡大を長く抑えていたが、2021年1月に入って台湾北部の桃園市の病院で院内感染によるクラスター(感染者集団)が発生した。新型コロナの治療を担当した医師や看護師、その家族が次々と感染し、これまでに19人の感染が確認されている。死亡した80代の女性もこのうちのひとりだった。台湾では、2月10日から16日まで春節の大型連休で帰省など人の往来が増える時期と重なっていたため当局の警戒感は一段と強まった。 台湾では如何にしてコロナ禍に対応したのかについては、エッセイの字数の制限で紹介できないので、台湾の方に続編をお願いしたい。 ところで、コロナ禍の中で台湾経済はどうなっているのか? 最近筆者はYouTubeを通じて、台湾の諸事情および台湾から見た国際関係、とりわけ米中両大国に挟まれた台湾の対外関係について猛勉強した。もちろん、「東アジア経済論」講義でも台湾と中国大陸との関係について講義するために資料をたくさん調べている。 まず、台湾経済はコロナ禍の中で世界での優等生ということを特筆すべき。日本のメディアでは、世界のほとんどの国でマイナス成長というコロナ禍の中、中国の2020年の経済成長率は前年比2.3%(この数字は本当なのか?と疑うが)であると大々的に報道されてはいるが、その他の国に関する報道は少ない。 実は、台湾のGDP成長率は2.98%であり、台湾では30年ぶりに大陸の成長率を上回ったという。ちなみにベトナムのGDP成長率は2.91%で2位、「4匹の小龍」と言われるシンガポール、韓国、香港などがマイナス成長の中で独り勝ちである。株価は急上昇し歴史的な記録を更新、台湾ドルも急上昇し、経済は30年ぶりの活気を取り戻したという。 その要因は、米中貿易摩擦により多くの台湾企業が大陸から戻ってきて、米国や東南アジアに投資が大幅に増えたこと、華為技術(ファーウェイ)に対する経済制裁のなかで、台湾の電子機器や部品への世界からの注文が増えていること、海外旅行していた台湾人が国内旅行に切り替えたので、海外に流れていたお金が台湾内部で流通したこと、などがある。 台湾からの海外旅行者(アウト・バンド)は2019年に1,800万人、人口わずか2,360万人の8割に達し、世界で最高のレベルだろう。そして従来約8,000億台湾ドル(約2.5兆日本円)に上った年間外貨流出が、昨年は国内旅行者延べ約2.1億人の資金が国内で回り、経済成長に貢献したという。2021年の経済成長が今の勢いで伸びれば、1人当たりGDPは初めて3万ドル台(2011年に2万ドル台突破?)に乗るだろうと予測され、先進国に並ぶ。 台湾は新型コロナ禍の対応により世界で立派な「優等生」になり、経済成長でも模範を示している。本来ならば世界保健機関(WHO)などでその経験を世界に活用すべきであると思うが、複雑で不条理な国際政治に振り回され、国連や国際社会から十分注目されないのは誠に残念なことである。(続く) <李鋼哲(り・こうてつ)LI Kotetsu> 中国延辺朝鮮族自治州生まれの朝鮮族。1985年中央民族大学(中国)哲学科卒業後、中共北京市委党校大学院で共産党研究、その後中華全国総工会傘下の中国労働関係大学で専任講師。91年来日、立教大学大学院経済学研究科博士課程単位修得済み中退後、2001年より東京財団研究員、名古屋大学研究員、総合研究開発機構(NIRA)主任研究員を経て、06年より北陸大学教授。2020年10月、一般社団法人東北亜未来構想研究所を有志たちと創設、所長に就任。日中韓+朝露蒙など東北アジアを檜の舞台に研究・交流活動を行う。SGRA研究員および「構想アジア」チーム代表。近著に『アジア共同体の創成プロセス』(編著、2015年、日本僑報社)、その他論文やコラム多数。 ※本エッセイは、東アジア共同体評議会のe-論壇_百家争鳴に投稿されたものを、著者の許可を得て再掲します。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】第15回SGRA-Vカフェ「『鬼滅の刃』からみた日本アニメの文化力」へのお誘い(再送) 下記の通り第15回SGRA-Vカフェをオンラインで開催いたします。参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。聴講者はカメラもマイクもオフのZoomウェビナー形式で開催しますので、お気軽にご参加ください。今回は日本語⇒中国語、日本語⇒韓国語への同時通訳がありますので、中国語、韓国語話者の方々にもご宣伝いただけますと幸いです。 テーマ:「『鬼滅の刃』からみた日本アニメの文化力」 日 時:2021年3月20 日(土)午後3時~4時30分(日本時間) 方 法: Zoomウェビナーによる 言 語: 日中韓3言語同時通訳付き 主 催:渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA) 申 込:下記リンクよりお申し込みください https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_zvTNvUl4T1CsaZmXgj6CSA お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ■ 趣旨 昨年の長編アニメ『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』の大ヒットは、日本の現代文化におけるアニメの強さをあらためて印象づけた。一方でアニメは大衆文化の中でも日陰の存在だった時期は長く、決して順調に発展してきたわけではない。そんなアニメが現在に至る歴史、世界的視野からみた独自性の確立、これまでにヒット・注目された作品の特徴、そしてアニメがこれからも発展し、日本を代表する大衆文化としての力を持続するための課題、展望について解説する。 ■ プログラム 司会:陳えん(京都精華大学マンガ学部専任講師) 【第1部】 講演「『鬼滅の刃』からみた日本アニメの文化力」 津堅信之(アニメーション研究家、日本大学藝術学部映画学科講師) 【第2部】 対談/インタビュー:津堅信之×陳えん 【第3部】 質疑応答(会場+オンライン) ■登壇者略歴 講演者:津堅信之(Tsugata_Nobuyuki) アニメーション研究家/日本大学藝術学部映画学科講師。1968年生まれ。近畿大学農学部卒業。専門はアニメーション史だが、近年は映画史、大衆文化など、アニメーションを広い領域で研究する。 主な著書: 『日本アニメーションの力』(NTT出版/中国・韓国語でも出版) 『日本のアニメは何がすごいのか』(祥伝社新書/韓国語でも出版) 『ディズニーを目指した男 大川博』(日本評論社) 『新版アニメーション学入門』『京アニ事件』(ともに平凡社新書)など 司会者:陳えん(Chen_Yan/ちん・えん) 京都精華大学マンガ学部専任講師/2017年度渥美奨学生。北京大学学士、東京大学大学院総合文化研究科修士・博士課程単位取得満期退学。 研究領域:アニメーション史/日中アニメ・マンガ交流史/「動漫」「IP」の概念史など。研究以外、マルチクリエイター・プロデューサーとして日中コンテンツ業界にて活躍中。 ◇プログラムの詳細は下記リンクをご覧ください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2021/02/J_SGRA-VCafe15_Program.pdf ◇中国語(簡体字)ウェブページ http://www.aisf.or.jp/sgra/chinese/2021/02/12/sgra_cafe_15/ ◇中国語(繁体字)ウェブページ http://www.aisf.or.jp/sgra/chinese/2021/02/16/sgra_cafe_15_t/ ◇韓国語ウェブページ http://www.aisf.or.jp/sgra/korean/2021/02/11/sgra_cafe_15/ ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ ********************************************* -
KIM Kyongtae “Report of the Fifth Dialogue of National Histories”
2021年2月25日 14:51:52
*********************************************** SGRAかわらばん859号(2021年2月19日) 【1】金キョンテ「感染症時代に感染症の歴史を振り返る―第5回国史たちの対話報告」 【2】第15回SGRA-Vカフェへのお誘い(再送) 「『鬼滅の刃』からみた日本アニメの文化力」(3月20日オンライン) *********************************************** 【1】金キョンテ「感染症時代に感染症の歴史を振り返る―第5回国史たちの対話報告」 2021年1月9日、「第5回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」が開催された。今回のテーマは「19世紀東アジアにおける感染症の流行と社会的対応」だった。前年2020年1月にフィリピンで開かれた「第4回国史たちの対話」の際に、いやCOVID-19の感染が広がってからでも、この危機が今年まで続くとは予想できなかった。第4回の対話で三谷先生が、19世紀の東アジアの感染症に関するテーマに言及されたが、先見の明を示されたと思う。この時代にふさわしい議論のテーマだった。 対話はオンラインで行われた。技術の発展によって私たちは今のような危機の中でも対話できる方法を見出したのだ。しかし、この便利さの裏には、新しい方法を皆が円滑に使えるように準備した事務局方々がいたことを忘れてはならないだろう。事前に数多くのリハーサルがあり、当日も午前から準備が行われていた。 これまでは、多くの発表者と討論者を招待して、2日から3日間の会議の形で対話を実施してきた。しかし今回は、各国から招く発表者と討論者を1人ずつにすることで、効率的に参加者が集中できる環境を作り出すことができた。時間により変化したが、参加者は発表者・討論者(パネリスト)が38名、一般参加者が93名、同時通訳を含むサポートが20名で計151名だった。 対話は2つのセッションに分けて行われた。第1セッションでは村和明先生の司会で3つの発表と指定討論があり、第2セッションでは南基正先生の司会で自由討論が行われた。すべてのセッションの後に、発表者やパネリストが自由に会話できる懇親会も行われた。 第1セッションでは今西淳子渥美財団常務理事の歓迎挨拶と、趙珖韓国国史編纂委員会委員長の開会挨拶があった。趙珖委員長は、19世紀的なパンデミックに関する問題の研究は21世紀の今日、Post-COVID19で展開されている新しい「インターナショナル」な問題解決の一つの規範を与えるとして、国史たちの対話の意義が継続されることを望むと述べた。 最初の発表は朴漢珉先生(東北亜歴史財団)の「開港期朝鮮におけるコレラ流行と開港場検疫」だった。朝鮮初期の開港地である釜山、仁川、元山では典型的な感染症であるコレラの流行で検疫問題に悩まされた。3ヵ所の港では、いずれも各国の自国民保護と経済的な利害関係が相反する様相を見せた。朝鮮政府は経験を蓄積し、1887年に朝鮮政府検疫章を制定し、それは1893年まで続いた。 2番目の市川智生先生(沖縄国際大学)の発表は「19世紀後半日本における感染症対策と開港場」だった。市川先生は、朴先生の発表と似た主題および問題意識を持って研究を進めていたことに驚いたと述べ、互いに研究に役立てることに期待を表明した。今回の発表では、日本の開港場である横浜、長崎、神戸を対象とし、日本人社会と外国人社会の関係に注目した。混乱した時代を経て、1890年代以降日本政府の感染症対策の一元化が行われていった。 3番目は余新忠先生(南開大学)の「中国衛生防疫メカニズムの近代的発展と性格」だった。前二者と異なり、中国で衛生が持つ意味と実態、そして近代以降の変化を巨視的な眼目から見た研究だった。また、現在の状況との比較を通じて、国や地域、個人の役割についても共に考えるテーマを提示した。 続いて、3つの発表に対する指定討論が行われた。指定討論者も3国の研究者で構成された。(金賢善先生:明知大学、塩出浩之先生:京都大学、秦方先生:首都師範大学)。指定討論では討論の対象となる発表を「指定」せず、全テーマを対象にする討論を要請、より幅広い議論が展開された。伝統的な衛生防疫の意味、近代以降の国家が防疫を主導するようになる過程、感染症がもたらした近代化に伴って出現した「区分」の無形化とともに、衛生と防疫をどの国家が主導するかをめぐる競争もあったことが指摘された。一方、植民地での衛生や防疫問題、国家より下位の単位、国家と底辺をつなぐ共同体への関心も必要だという提言もあった。 第2セッションは自由討論だった。自由討論に先立ち、劉傑先生(早稲田大学)による論点整理があった。発表の内容とともに、事前に提出されたパネリストからの質問で共通に提起された問題についても整理をした。国境を越える人々によって広がる感染症に対応するための優先的な方法は国家の国境封鎖であり、これは主権の問題であったこと、しかし、情報の共有と国境を越えた対応が重要な課題として浮上したこと、予防と治療には国家-地域-個人ネットワーク、コミュニティの役割が重要であること、それに内包される共存性と対立性をどのように理解するかについて、アプローチする余地があるだろうなどと指摘された。 続いてパネリストによるコメントと質問。直接発言だけでなく、チャット機能を利用して質問してくださった方もいた。感染症は昔から権力者に対する不信感を呼び起こし、したがって近代以降も感染症は国民の政治意識およびその変化と密接な関連を持つようになったこと、主権と感染症の間の力関係、各国の民衆意識および民族主義の高揚との関係、感染症流行時の3国の情報共有と共同対応の様相などについての質問が寄せられた。これに対しては、発表者から丁寧な回答があり、指定討論者とパネリストの補足コメントが相次ぎ、時間が足りないほどであった。 自由討論の名残惜しさを残し、宋志勇先生(南開大学)の総括、明石康先生のコメントが続いた。歴史の1ページに残すに値する時期に適切なテーマの「対話」であり、グローバル化の中での各国の社会的責任、発信すべき社会的メッセージを考えさせる時間であった。各国がより自由に互いに学ぶ立場でグローバルな解決策を模索することができるので、互いの視点を比較して分析することがこの集まりの問題意識であるということは、未来的かつ地球的に重要だと思う、という言葉を残した。 三谷博先生(跡見学園女子大学)は閉会挨拶で、(1)パンデミックという事態によって再び分断が生じたり拡大したりしてはいけないという事実が明らかになった(2)この会議が国家-民衆-学者間の協力関係を開いていく重要な契機になると期待する(3)「国史たちの対話」の趣旨は国家間の葛藤をどのように克服するかにあり、オンラインの限界にかかわらず、重要なことを成し遂げた(4)歴史学が持つ限界を乗り越えるのに今回の対話が出発点になれば嬉しい、と語った。最後に翻訳と同時通訳をしてくれた方々、そして渥美財団の元奨学生たちに感謝の言葉を述べた。また、今日集まった方々が個人的にもこれからもずっと交流してほしいという希望を述べた。 会議が終了してから、非公式の、自由な「対話」が懇親会という形で行われた。フィリピンで開催された「第4回国史たちの対話」で会った方々は、1年ぶりの「再会」で和気あいあいと会話を交わした。「第5回対話」に初めて参加した方々もすぐに親しくなった。たまに硬くない共通テーマで、飲み物とおつまみを用意してこんな風にオンラインで会うのも良いのではないかと思う。紙幅の制限により参加された方々の発言内容を十分に紹介できなかったことを残念に思う。 当日の写真 http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2021/02/J-Kokushi5_photos.pdf アンケート結果 http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2021/02/Kokushi5-Questuinaire-Report.pdf ■ 金キョンテ KIM_Kyongtae 韓国浦項市生まれ。韓国史専攻。高麗大学韓国史学科博士課程中の2010年~2011年、東京大学大学院日本文化研究専攻(日本史学)外国人研究生。2014年高麗大学韓国史学科で博士号取得。韓国学中央研究院研究員、高麗大学人文力量強化事業団研究教授を経て、全南大学歴史敎育科助教授。戦争の破壊的な本性と戦争が荒らした土地にも必ず生まれ育つ平和の歴史に関心を持っている。主な著作:壬辰戦争期講和交渉研究(博士論文) ※本エッセイは「国史たちの対話の可能性」メールマガジン第27号で配信したものを、より多くの方に読んでいただくために再送します。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】第15回SGRA-Vカフェ「『鬼滅の刃』からみた日本アニメの文化力」へのお誘い(再送) 下記の通り第15回SGRA-Vカフェをオンラインで開催いたします。参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。聴講者はカメラもマイクもオフのZoomウェビナー形式で開催しますので、お気軽にご参加ください。今回は日本語⇒中国語、日本語⇒韓国語への同時通訳がありますので、中国語、韓国語話者の方々にもご宣伝いただけますと幸いです。 テーマ:「『鬼滅の刃』からみた日本アニメの文化力」 日 時:2021年3月20 日(土)午後3時~4時30分(日本時間) 方 法: Zoomウェビナーによる 言 語: 日中韓3言語同時通訳付き 主 催:渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA) 申 込:下記リンクよりお申し込みください https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_zvTNvUl4T1CsaZmXgj6CSA お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ■ 趣旨 昨年の長編アニメ『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』の大ヒットは、日本の現代文化におけるアニメの強さをあらためて印象づけた。一方でアニメは大衆文化の中でも日陰の存在だった時期は長く、決して順調に発展してきたわけではない。そんなアニメが現在に至る歴史、世界的視野からみた独自性の確立、これまでにヒット・注目された作品の特徴、そしてアニメがこれからも発展し、日本を代表する大衆文化としての力を持続するための課題、展望について解説する。 ■ プログラム 司会:陳えん(京都精華大学マンガ学部専任講師) 【第1部】 講演「『鬼滅の刃』からみた日本アニメの文化力」 津堅信之(アニメーション研究家、日本大学藝術学部映画学科講師) 【第2部】 対談/インタビュー:津堅信之×陳えん 【第3部】 質疑応答(会場+オンライン) ■登壇者略歴 講演者:津堅信之(Tsugata_Nobuyuki) アニメーション研究家/日本大学藝術学部映画学科講師。1968年生まれ。近畿大学農学部卒業。専門はアニメーション史だが、近年は映画史、大衆文化など、アニメーションを広い領域で研究する。 主な著書: 『日本アニメーションの力』(NTT出版/中国・韓国語でも出版) 『日本のアニメは何がすごいのか』(祥伝社新書/韓国語でも出版) 『ディズニーを目指した男 大川博』(日本評論社) 『新版アニメーション学入門』『京アニ事件』(ともに平凡社新書)など 司会者:陳えん(Chen_Yan/ちん・えん) 京都精華大学マンガ学部専任講師/2017年度渥美奨学生。北京大学学士、東京大学大学院総合文化研究科修士・博士課程単位取得満期退学。 研究領域:アニメーション史/日中アニメ・マンガ交流史/「動漫」「IP」の概念史など。研究以外、マルチクリエイター・プロデューサーとして日中コンテンツ業界にて活躍中。 ◇プログラムの詳細は下記リンクをご覧ください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2021/02/J_SGRA-VCafe15_Program.pdf ◇中国語ウェブページ http://www.aisf.or.jp/sgra/chinese/2021/02/12/sgra_cafe_15/ ◇韓国語ウェブページ http://www.aisf.or.jp/sgra/korean/2021/02/11/sgra_cafe_15/ ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ ********************************************* -
Invitation to SGRA Virtual Cafe #15
2021年2月18日 13:18:38
*********************************************** SGRAかわらばん858号(2021年2月18日) *********************************************** ◆第15回SGRA-Vカフェ「『鬼滅の刃』からみた日本アニメの文化力」へのお誘い 下記の通り第15回SGRA-Vカフェをオンラインで開催いたします。参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。聴講者はカメラもマイクもオフのZoomウェビナー形式で開催しますので、お気軽にご参加ください。今回は日本語⇒中国語、日本語⇒韓国語への同時通訳がありますので、中国語、韓国語話者の方々にもご宣伝いただけますと幸いです。 テーマ:「『鬼滅の刃』からみた日本アニメの文化力」 日 時:2021年3月20 日(土)午後3時~4時30分(日本時間) 方 法: Zoomウェビナーによる 言 語: 日中韓3言語同時通訳付き 主 催:渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA) 申 込:下記リンクよりお申し込みください https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_zvTNvUl4T1CsaZmXgj6CSA お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ■ 趣旨 昨年の長編アニメ『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』の大ヒットは、日本の現代文化におけるアニメの強さをあらためて印象づけた。一方でアニメは大衆文化の中でも日陰の存在だった時期は長く、決して順調に発展してきたわけではない。そんなアニメが現在に至る歴史、世界的視野からみた独自性の確立、これまでにヒット・注目された作品の特徴、そしてアニメがこれからも発展し、日本を代表する大衆文化としての力を持続するための課題、展望について解説する。 ■ プログラム 司会:陳えん(京都精華大学マンガ学部専任講師) 【第1部】 講演「『鬼滅の刃』からみた日本アニメの文化力」 津堅信之(アニメーション研究家、日本大学藝術学部映画学科講師) 【第2部】 対談/インタビュー:津堅信之×陳えん 【第3部】 質疑応答(会場+オンライン) ■登壇者略歴 講演者:津堅信之(Tsugata_Nobuyuki) アニメーション研究家/日本大学藝術学部映画学科講師。1968年生まれ。近畿大学農学部卒業。専門はアニメーション史だが、近年は映画史、大衆文化など、アニメーションを広い領域で研究する。 主な著書: 『日本アニメーションの力』(NTT出版/中国・韓国語でも出版) 『日本のアニメは何がすごいのか』(祥伝社新書/韓国語でも出版) 『ディズニーを目指した男 大川博』(日本評論社) 『新版アニメーション学入門』『京アニ事件』(ともに平凡社新書)など 司会者:陳えん(Chen_Yan/ちん・えん) 京都精華大学マンガ学部専任講師/2017年度渥美奨学生。北京大学学士、東京大学大学院総合文化研究科修士・博士課程単位取得満期退学。 研究領域:アニメーション史/日中アニメ・マンガ交流史/「動漫」「IP」の概念史など。研究以外、マルチクリエイター・プロデューサーとして日中コンテンツ業界にて活躍中。 ◇プログラムの詳細は下記リンクをご覧ください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2021/02/J_SGRA-VCafe15_Program.pdf ◇中国語ウェブページ http://www.aisf.or.jp/sgra/chinese/2021/02/12/sgra_cafe_15/ ◇韓国語ウェブページ http://www.aisf.or.jp/sgra/korean/2021/02/11/sgra_cafe_15/ ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ ********************************************* -
TANG Rui “My Job Hunting Experience”
2021年2月11日 17:38:46
*********************************************** SGRAかわらばん857号(2021年2月11日) 【1】エッセイ:唐睿「私の就職活動」 【2】催事紹介(参加者募集):シンポジウム「女性は世界を変える」(2月20日、オンライン) 【3】催事紹介(論文募集):「ガバナンスと開発」国際会議(論文募集締切2月26日) *********************************************** 【1】SGRAエッセイ#660 ◆唐睿「私の就職活動」 2019年4月、私は博士課程の最後の1年を迎えました。博士論文の審査に向けて準備を始めるとともに、卒業後のことも考えなければならなくなりました。それまではまじめに勉強と研究をすれば良かったのですが、今後のことについて考えたことが少なく、明確な目標も持っていなかったため、迷っていました。博士を取得した学生にとっては卒業後大学で「ポスドク」をやって、数年後助教か講師になって、一生懸命研究成果を上げて教授への昇進に向けて頑張るというシナリオが一番有り得そうな道です。20年間頑張れば、私もいつか教授になれるかもしれません。 しかし、現実問題として、今の中国も日本も大学教員採用の競争は非常に激しくなっています。特に中国の大学で理工学系の教員職に応募する場合『Nature』『Science』系の論文を持っていないと、良い大学で助教以上の職に採用されるのはとても難しいです。研究は非常に面白いことですが、科研費が足りないことと、テニュア(終身雇用)取得まで定期的に論文を出さないと首になることを常に心配しながら研究するのは好きではないため、民間企業に就職することを決めました。 しかし、どの国で就職するか、どのような企業に応募するかについて新たな悩みが出てきました。国に関して特にこだわりはありませんが、どの国の企業に応募してもそれぞれの問題があります。日本では、私の研究テーマ「光集積回路」に関連する業務がある企業は非常に少ないです。そして、多くの日本企業はエントリーの締め切りが3月中で、2019年3月末に米国留学を終えて日本に帰ってきた私は、すでに日本での就職活動のタイミングを逃していました。残る選択肢は博士課程の学生を通年採用しているわずか一部の企業だけでした。 米国では研究テーマと関連性の高い企業が多いですが、私は米国の大学の学位を持っていないため、卒業後すぐには米国で勤務できません。就労ビザを取れない可能性も高いし、取れたとしても勤務が始まるまで時間がかかるため、面接のチャンスももらえない可能性が高いです。 中国に帰る選択肢もありますが、正直近年の中国の通信とIT企業にはあまり就職したくないです。中国の通信とIT業界にはブラック企業が非常に多く、社会問題になっているからです。2019年に中国のIT企業の社員から「996,ICU」という有名な言葉が作られました。朝9時から夜9時まで週6日の労働を続けていくと、いつか病院の集中治療室(ICU)に運ばれるという意味です。ほとんどの中国IT企業では、こういった996労働が暗黙のルールになっています。明らかに中国の労働法に違反するものですが、政府が積極的に企業の違法行為を取り締まる気配は見られません。その理由は、中国の経済成長はITと通信企業に大きく依存し、残業を制限すると中国の経済成長に大きく影響するからだと思っています。 さまざまな問題があると言っても行動しなければならないので、とりあえず米国と中国、日本の企業にたくさん応募しました。最初に応募したのはたまたま見つけたAIチップを開発している日本のベンチャー企業です。やっていることが面白く、持っている技術も凄そうなので、ホームページに新卒の募集が出されていないにも関わらず、むりやりに応募して数回の面接を受けてから内定をもらいました。中国の企業には5社応募し、3社から内定をもらいました。一番驚いたのは、博士過程の研究と関連性の高い米国企業に10社以上応募しましたが、ほとんど電話面接の機会も与えてくれなかったことです。唯一面接のチャンスと内定をくれたのは、米国留学時にお世話になった先生がコンサルタントとして勤めているベンチャー企業でした。米国の学位を持っていない人にとって、就職活動をする際にコネクションがどれほど大事かを実感しました。 内定の中には、大手企業とベンチャー企業が両方ありました。大手企業に入れば安定した生活が過ごせるかもしれませんが、私は安定した生活よりも仕事のやりがいと面白さを重視しています。給料なども総合的に考えた結果、やはり量子コンピュータを開発している米国のベンチャー企業が一番魅力的だと思い、その企業の内定を受諾しました。 私の就職活動は終わりましたが、人生についていろいろ考えさせられました。もちろん不安はありますが、今後は新しい目標を立てて頑張っていきたいと思います。 追記: 残念ながら米国就労ビザの抽選に落ちました。2020年に米国に行くのは無理なので、とりあえず中国に帰って就職しました。深せんにあるディスプレイメーカーです。6月末に中国に帰る予定でしたが、コロナウイルス感染症の防疫のため予約した便が2回キャンセルされて、8月9日にやっと帰国できました。専用ホテルで2週間の隔離と帰省を経て、9月から深せんで仕事を始めました。ちょうど今「996」の部署で研修しているので、その大変さを痛感しています。サステナブルな働き方ではないので、この部署は毎年仕事を辞める人がたくさんいます。中国でも働き方改革がいつか必須となると考えています。 <唐睿(たん・るい)TANG Rui> 渥美国際交流財団2019年度奨学生。中国安徽省出身。2013年南京航空航天大学情報工学専攻学士課程卒業、2015年(日本)東北大学通信工学専攻修士課程修了、2020年東京大学電気系工学専攻博士課程修了。現在中国深せん市の企業でディスプレイの開発に携わる。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】催事紹介(参加者募集):第4回シンポジウム「女性は世界を変える」 SGRA会員で昭和女子大学准教授のシム・チュンキャットさんから、非常にタイムリーなシンポジウムの案内をいただきましたのでご紹介します。シムさんが司会を務めるそうです。参加ご希望の方は直接お申込みください。 第4回シンポジウム「女性は世界を変える」 ◆テーマ:「女性の高等教育と女子大学の将来」 開催日時:2月20日(土)16:00~17:30 開催方法:オンライン 言語:英語 共催:昭和女子大学:女性文化研究所、国際交流センター、現代ビジネス研究所 申込:https://forms.gle/hbmNSvxPzaarMeqM9 プログラム: ・ファシリテーター 昭和女子大学 坂東眞理子理事長・総長 ・パネリスト ケンブリッジ大学ニューナムカレッジ アリソン・ローズ学長 誠信女子大学校 楊普景総長 駐日ラトビア大使館 ダツェ・トレイヤ=マスィ特命全権大使 詳細は下記リンクをご覧ください。 https://univ.swu.ac.jp/news/プレスリリース/2021/02/08/41780/ -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【3】催事紹介(論文募集):第2回「ガバナンスと開発」国際会議 SGRA会員でフィリピン大学ロスバニョス校准教授のフェルディナンド・マキトさんより、シンポジウムの論文・パネル提案の募集のお知らせがありましたのでご紹介します。ご興味のある方は直接応募してください。 第2回「ガバナンスと開発」国際会議 ◆テーマ:「パンデミック後の共同社会におけるガバナンスと開発」 開催日時:2021年3月23日(火)~25日(木) 開催方法:オンライン 言語:英語 主催:フィリピン大学ロスバニョス校公共政策・開発大学院 ※論文・パネルの提案を募集中。締め切りは2月26日(金)です。 https://www.facebook.com/uplb.cpaf/posts/3119307274962900 国際会議の詳細は下記リンクをご覧ください。 http://bit.ly/icgd2poster ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ ********************************************* -
JIN Hongyuan “From Academia to Industry”
2021年2月4日 20:16:40
*********************************************** SGRAかわらばん856号(2021年2月4日) 【1】エッセイ:金弘渊「アカデミアからインダストリーへ」 【2】国史対話メルマガ#26を配信:塩出浩之「国籍はいかに人の国際移動を左右するか」 *********************************************** 【1】SGRAエッセイ#659 ◆金弘渊「アカデミアからインダストリーへ」 私は博士課程で基礎生物学の研究をしていた。主にチョウの色素の合成と紋様形成のメカニズムについて、研究生から修士、さらに博士まで6年間研究してきた。博士2年生の頃、将来の進路を真剣に考えはじめた。単純に研究室の先輩たちの進路を参考にしてみると、自分の業績で大学に残れるものであるかを懸念し始めた。研究室で1日を過ごして疲れてようやく家についてから、もし、自分がこのまま社会に出て仕事に就くと、何かできるだろうかと自分に聞いてみた。 答えはすぐには出てこなかった。そもそも社会経験が少ない院生の自分に対し、社会はどのような人材を求めているかがわからなかった。製造販売業のような自分の日常生活に近い業界は、実際に商品を使用したり、売買をしたりするので、製品を設計、製造、販売する人が必要であることをイメージしやすいが、モノを作らない業界(例えばIT、保険、コンサルティングなど)についてはよく知らなかった。 自己勉強のつもりもあるので、「業界地図」などの就職ガイドを購読し、ネットで新卒向けの業界説明サイトから、まず各業界に関わる基礎知識と特徴及び規模などを調査した。その結果、自分の専門にぴったり合う業界はないけれど、逆に色々試すことができると考えた。 2ヶ月後、当時の考えは甘かったと振り返った。その2ヶ月間、新卒で就職する学部生たちと一緒にリクルートスーツを着て、企業の説明会に参加するために東京に行って、履歴書の提出とウェブテストを受けて面接まで行った。一般的な企業においては、博士の学生は必要とされていないと感じた。自分が考えた理由として、その1つは新卒の博士は年齢的に30歳に近く、かつ現場の実務経験がないから、実務的に働けるまでトレーニングに必要なコストが高いということ。 例えば、商品の研究開発職に応募した同じ30代の候補者が3人いたとして、Aさんは大卒で8年の業界経験と現場での開発経験があり、課長代理と同等の管理能力が認められる;Bさんは修士卒で社会人歴6年、その内4年は日本の本社で勤務した後、2年間ドイツの支社に出向し、ビジネスレベルの英語力がある;Cさんは博士の新卒で、在学期間の成績が優秀で、良い論文も数本発表した。もし自分が人事担当だったら、短期間で商品の研究開発をするため、候補者が会社に入ってから、会社に価値が提供できるようになるまでの時間を計算し、又その期間内に生じる全ての人件費(給料、トレーニング費)を合算し、即戦力があるAかBのどちらかを選ぶと思う。社会に出たら、仕事の経験が学歴より重要だと認識した。 もちろん大卒の学生と一緒に入社し同じ仕事をすることは、自分にとっても会社にとってももったいないと考えて、新卒博士向けの職務にもたくさん応募した。そもそも博士向けのポジションは少なかったから、自分の研究から離れる業界にも応募してみた。企業は応募者の過去の研究業績より研究分野を重視すると感じた。特に自分の研究は生物の基礎研究で、医学的若しくは薬学的な研究ではなく、会社にとって最優先の人選ではないと言われた。 自分では、生物研究と医学的な基礎研究は、研究対象の違いに過ぎないと認識しており、数ヶ月の勉強さえあれば、同様の仕事ができない訳がないと考えていた。でもそれは違うらしくて、面接がうまくいったにもかかわらず、最終面接に落ちたケースは少なくなかった。その理由はいまだにわかってない。就活は面接が終わった時点で会社との連絡が不可能になり、フィードバックなどがほとんどもらえない状態だ。自分が後から考えた理由の1つは、日本の企業は、例えば海外の市場の進出のためというような特別な戦略上の必要がなければ、外国人の社員は特に必要ないということだ。それ以外は多分、「ご縁」しか考えられない。 1年間で2回も就職活動を経験し疲れた。最後の結論としては、特に国全体の経済が厳しい時には、求職者が受動的に会社側の要望に応じることが多いということだった。去年の年末(編者注:2019年末)に新しい仕事に就くことできた。それはコロナ禍で就職が大変になる前の不幸中の幸いだった。 <金弘渊(きん・こうえん)JIN_Hongyuan> 渥美国際財団2019年度奨学生。中国杭州出身。2019年東京大学大学院新領域創成科学研究科で先端生命科学を専攻し博士号(生命科学)を取得。専門は進化発生学、遺伝学。現在大阪で医薬品の臨床開発に携わる。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】「国史対話」メールマガジン第26号を配信 ◆塩出 浩之「国籍はいかに人の国際移動を左右するか」 私は学生時代から最近まで、近代のアジア太平洋地域における日本人移民の歴史について研究してきた。その私にとって、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが人の国際移動に全世界的な遮断をもたらしたことは、虚を衝かれたような衝撃であった。 確かに第二次世界大戦直後のように、人の国際移動が極度に制限された時期はある。日本の敗北に伴い、旧植民地にいた日本人は日本に強制送還され、日本からの出国は主権回復まで不可能となった。しかし、そのように人の移動が制限される事態は、このグローバル化の時代には起こらないと思い込んでいたのである。 私は時間が経つにつれて、今日の事態は、第二次世界大戦後の状況と同じように、近代世界におけるグローバルな人の移動の歴史の一部として説明されるべきだと考えるようになった。しかし、人の国際移動こそがコロナ・パンデミックをもたらした要因であり、それゆえに全世界で遮断されたことについては、いまさら論ずる必要はない。 ここで考えたいのは、人の国際移動において国籍がもつ意味である。コロナ・パンデミックのもと、世界各国は国境管理を著しく厳格化したが、共通して顕著にみられたのは、自国民と外国人との処遇の違いであった。自国民に関しては帰国を原則的に認めた上で、帰国後の防疫策が課題となった一方、外国人に関しては逆に入国の禁止・制限が基本とされ、事情に応じて入国を許可するという方針が採られたのである。 続きは下記リンクからお読みください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kokushi/J_Kokushi2021ShiodeHiroyukiEssay.pdf ※SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。国史メルマガは毎月1回配信しています。SGRAかわらばんとは別にお送りしますので、ご興味のある方は下記より登録してください。3言語対応ですので、中国語、韓国語の方々にもご宣伝いただけますと幸いです。 ◇国史メルマガのバックナンバーおよび購読登録は下記リンクをご覧ください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ ********************************************* -
LI Kotetsu “Freedom of Speech and Control, Self-restraint, Sontaku of Media”
2021年1月28日 15:43:14
*********************************************** SGRAかわらばん855号(2021年1月28日) *********************************************** SGRAエッセイ#658 ◆李鋼哲「言論の自由とマスコミ統制・自粛・忖度」 最近、新型コロナ禍の中で言論の自由とマスコミ統制問題がクローズアップされている。 共同通信によると、国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」(RSF、本部パリ)は2020年4月21日、2020年の世界各国の報道自由度ランキングを発表した。対象の180カ国・地域のうち、日本は前年から1つ順位を上げ66位となったが、メディアの編集方針が経済的利益に左右されると改めて指摘された、と報道された。新型コロナウイルスの大流行に絡み、オルバン政権が強権的な姿勢を強めるハンガリーは順位を2つ下げ89位。情報統制を敷く中国は177位のままだった。感染者はいないと主張する北朝鮮は179位から再び最下位へ1つ落ちた。1位は4年連続ノルウェーで、フィンランド、デンマークがそれに続く。米国の順位は48位から45位に上がったという。 以上のランキングと関連して言論の自由が各国でどのように保証されているのか、または統制されているのか、筆者の関心はそこにある。 そもそも、現代のほとんどの国家では憲法により「言論の自由」が保証されている。自由度が一番低い共産党の独裁国家である北朝鮮や中国でも憲法では「言論の自由」や「出版の自由」、「集会の自由」などが保証されているはずだが、実態は甚だ「違憲」状態ではないだろうか?しかし、権力が憲法を踏みにじることができる権力構造の国であるため、「違憲状態」をチェックできるはずがない。 だからといって民主主義諸国ではどうであろうか?日本は先進国であり民主主義国とは言え「言論の自由」が保証されているとは言い切れない。筆者はゼミ生に課題を出して日本の「報道の自由度」を調べさせた結果、66番目であることが分かった。ただし、調べる前に何人かの学生からは「先生、ランキングは後ろから数えた方が早いんじゃないですか?」と冗談めいて言ってきたので、ちょっとびっくりした。普段は新聞をあまり読んでいない若い学生でさえそう感じるのだから。 最近、コロナ禍に関する情報に対しても民衆からの疑心暗鬼の声が聞こえる。ある事件をきっかけに筆者はそのような不信感には裏付けがあると確信した。 先月、北陸大学の隣の金沢大学(国立大学)の准教授がコロナ禍で死亡したと、本大学の職員から立ち話で聞いた。「えー、そんなこともあるの?」とびっくりし、すぐインターネットで調べてみたら、このような記事が見つかった。42歳の若い教員で、11月中旬ころに体調を崩し病院でインフルエンザと診断され、薬をもらって自宅療養していた。熱は多少下がったが治らなかったので、保健所に2回電話をしてPCR検査を希望したが、医師の診断なしでは検査を受けられないと、同じ回答を得たという。単身赴任だったので、奥さんがSNSで連絡しても返事がなく、大学の職員に連絡して確認を依頼したところ、死亡していることが見つかった。もともと喘息があったが、死亡後のPCR検査で新型コロナと判定されたという。 このような事件は重要な報道の種になるはずだ。ところが、新聞にもテレビにもほとんど報道されず、事件発生10日後に北陸中日新聞に次のような短い記事が載っただけであった。 ---------- 【2020年12月5日:北陸中日新聞】 インフルエンザとの同時流行に備え、石川県内では先月、新型コロナウイルスと双方の検査に対応できる指定医療機関が180カ所まで拡充されていた。先月26日の死亡確認後に新型コロナ感染が分かった金沢大准教授の高橋広夫さん=享年42=は、整備されたはずの新たな体制の中で、検査を受けられなかった。 ---------- 全国的には同じ系列の東京新聞に掲載されているものの、これだけでは、地元の多くの人にさえ知らされていない。大きく報道されなかったのは大学側の隠蔽なのか、行政側の忖度なのか、その裏のことは知るすべがない。このような事件はマスコミが取り上げ、行政側に対して責任を追及するのが民主主義国家のメディアではなかろうか?同じような隠し事や過小報告が他の地域にもあるのではないか?知り合いの有識者たちの話を聞くと、政府が意図的に隠しているのではないかと疑心暗鬼だ。報道の自由が制限されているのか、あるいはメディア側が自粛や忖度をしているのか、それとも両方なのか?報道の自由度ランキングが66番目の実態が実証できる一つの事例である。 では、報道の自由度が45番目のアメリカはどうだろうか?今度の大統領選挙を通じて、筆者の民主主義に対する信奉は完全に崩れてしまった。筆者は多言語の優位を生かして、今度の選挙戦に深い関心を持ってYouTubeなどに頼り、台湾のメディア、韓国のメディア、アメリカの華人系メディアなどを通じて、一般の主流メディアでは取り上げていない「裏の情報」を毎日のように目の当たりにして、選挙過程の実態が客観的に報道されていないことにがっかりした。 結論的に言うとアメリカの民主主義はもう崩壊している。なぜなら主流メディアは真実の一面しか報道しないからだ。「不正選挙」で「権力がもぎ取られている」ことには目をつむっており、エスタブリッシュメント勢力がアメリカ憲法や民主主義を踏みにじっていることについては、ほとんど報道されていない。SNSやネットメディアは政治的に主張が違う人々のメディアへのアクセスを封殺、ツイッターがトランプ大統領を封殺したのが典型的で、世界最大の民主主義国家の大統領がメディアの自主判断によって発言が封印されるという前代未聞の事態が発生しているのだ。ツイッターだけではない、FACEBOOKなど他の主流ソーシャルメディアは、自分たちの判断基準(ファクトチェック)に則って国民の声を封殺しており、これは国家権力ではないメディアの言語道断であろう。メディアが偏向の報道しかしないとき、国民は政治判断の材料としての真実を手にすることができず、そうなったら民主主義の実行手段である選挙の公正性・公平性はゆがんでしまい、民主主義はもはや崩壊したと言っても過言ではないだろう。 公正、公平に真実を国民に知らせる使命を背負っているはずのメディア(筆者の価値判断基準で)が中立性を失い、政治に介入する時、公正、公平、自由な報道はもはや望めないのではないか?筆者が信奉し追求してきた民主主義の価値観、哲学や理念はもはや心の中で崩れていくような気がしてたまらない。筆者は今後独裁政権を批判する根拠を失いかねない。 独裁政権でメディアが厳しくコントロールされていることは誰もがわかっている事実だ。しかし、民主主義国家では言論統制は「論外」だと思われる民衆が多いのではないか?いずれも国民が真実を知る権利を奪われている点では「五十歩百歩」ではなかろうか?独裁国家の「リーダー」や「知性人」は今度のアメリカ選挙戦を見て、民主主義総本山の米国をあざ笑っている。「ほら、やはり民主主義も偽善ではないか?言論の自由も嘘ではないか?」、「やはり我々の体制が優越だ」と。かれらは新型コロナ禍への対応についても「制度的優越性」を強調する。 だからと言って、言論の自由を無慈悲に弾圧する独裁政権が自分たちを正当化できるとは到底思えない。いつかは国民から見捨てられるに違いない。かの国は主権在民の「人民共和国」であり、封建王朝ではないのだから。かつて「無産階級(プロレタリア)の独裁」を掲げて百姓のために造った政権は、今や「有産階級(ブルジョア)とエリート階級の独裁」に変質したように思われてならない。 どこの国でも、いつの時代でも、国民の民意をくみ取り真に国民のための政治を行わない政権は、安定して長続きすることができないと筆者は考えている。中国の古典にも「水能載舟、亦能覆舟」《荀子哀公》という名言がある。その意味は、為政者は船の如く、民は水の如し;水は船を乗せて安全に航行することもできるが、船を倒して沈没させることもできる。為政者に対する戒めの諺である。 <李鋼哲(り・こうてつ)LI_Kotetsu> 中国延辺朝鮮族自治州生まれの朝鮮族。1985年中央民族大学(中国)哲学科卒業後、中共北京市委党校大学院で共産党研究、その後中華全国総工会傘下の中国労働関係大学で専任講師。91年来日、立教大学大学院経済学研究科博士課程単位修得済み中退後、2001年より東京財団研究員、名古屋大学研究員、総合研究開発機構(NIRA)主任研究員を経て、06年より北陸大学教授。2020年10月、一般社団法人東北亜未来構想研究所を有志たちと創設、所長に就任。日中韓+朝露蒙など東北アジアを檜の舞台に研究・交流活動を行う。SGRA研究員および「構想アジア」チーム代表。近著に『アジア共同体の創成プロセス』(編著、2015年、日本僑報社)、その他論文やコラム多数。 ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ ********************************************* -
XIE Zhihai “What We Find from the Delayed Vaccine Development in Japan”
2021年1月21日 15:49:37
*********************************************** SGRAかわらばん854号(2021年1月21日) *********************************************** SGRAエッセイ#657 ◆謝志海「遅れる日本のワクチン開発から見えてくるもの」 新型コロナウイルスという世界的大案件を持ち越したまま2021年を迎えてしまった地球。年末年始に「コロナ疲れ」を癒すどころか、日本では特に東京の感染者が急増したことが目立ち、気をつけながらのお正月を過ごした方が多かったことだろう。年末年始の感染者増加に、二度目の緊急事態宣言、コロナ関連においては相変わらず話題に事欠かない。医療従事者は慢性のコロナ疲れであることは間違いない。彼らの精神面はコロナと同様に心配である。最近では、欧州やアメリカで増えつつあるワクチン接種のニュースよりも、日々の感染者数の話が目立つ。 しかし、もし世界に先駆けてコロナワクチンを開発したのが日本の製薬会社だったら、きっともっと話題になっていただろうし、日本人はすでにワクチン接種をしていたかもしれない。なぜこんなことを思ったのかと言うと、昨年12月に米ファイザー製薬が開発したワクチンがロンドンで解禁になり、大きな話題を呼んだ。ドイツの製薬会社もほぼ同時にワクチン開発を発表した。その時私は、日本もすぐに大手製薬会社がワクチンを開発したと発表するのだろうと漠然と思っていた。日本が、米国のワクチンを取り入れるのか、ドイツのワクチンを取り入れるのか、そんなことより、日本は日本ですぐに製品化までするのだろうと思っていた。しかし年が明けてもそのような話は一向に聞かない。 ものづくりの国、技術先進国、おまけに世界に名の知れる大手製薬会社がいくつもある日本、何かがおかしい。どうした日本?そう考えると、最近の日本のプレゼンスが低くなっていることに気がついた。新進気鋭のスタートアップもさほど目立たなければ、世界的に有名な若きカリスマ社長などもいない。(個人的には気になる起業家は何人かいるが)業界問わず、そういうカリスマ的存在というものが、国をも引っ張り、国民の士気も上がるのでは?と思いはじめた。 もちろん日本にも起業し、現在も国際的に活躍する社長はいる。例えばソフトバンク・グループ孫正義、楽天を立ち上げた三木谷浩史など。しかし起業家の国際的知名度がぐっと上がるのは、海外に多い。中国ならアリババを作ったジャック・マー。イギリスならヴァージン・グループのリチャード・ブランソン。アメリカなら故人になってもスティーブ・ジョブスと、彼の遺したアップルは今でも存在感を放つ。同じくアメリカで今、一番目立つ社長といえば、テスラ・モーターズのイーロン・マスクだろう。このテスラで2年近く働いたという元パナソニックの副社長、山田善彦氏は、東洋経済の「テスラvs.トヨタ」特集で日本人にはちょっと耳の痛い指摘をした。「パナソニックに限らず、今の日本の企業はこのテスラのスピード感についていけない。よほどのカリスマ経営者がいるか、創業者が経営に関わっていない限り無理だ」そう、スピード感だ!今の日本に足りないものは。 日本に足りないものについて話す前に、日本の素晴らしいところも伝えておきたい。まずはなにより、マスク・手洗いをちゃんとする国。公共の場所がとても綺麗なところも日本の魅力だ。現に世界に比べたら、日本のコロナ感染者数は騒ぐほど多くはないのではないか。だからなおさら思う。今の日本には全体的にスピード感がないと。コロナで様々なことが停滞するのはわかる。感染者をたくさん出すが、ワクチン開発はものすごいスピードのアメリカとヨーロッパ諸国。中国は徹底した感染対策に加えて、いち早くワクチンを開発した。ここに日本が入れていないのが非常に残念なのだ。 製薬業界に全く詳しくない私が検索で見つけた、日本のワクチン開発が遅れている理由の一つとして「大規模な臨床試験をできない日本の弱点が新型コロナで明らかになった」と日経・FT感染症会議(主催・日本経済新聞社、共催・英フィナンシャル・タイムズ)で医薬品医療機器総合機構理事長の藤原康弘氏が言っている。どうやら制度の問題が大きいようだ。確かに日本の新薬の認証は元来とても慎重で時間がかかるとされている。しかし、コロナは未曾有のパンデミックで、従来どおりの慣習にのっとって開発していたら、間に合わないのは当然だ。コロナに対しては、特例を設け、迅速に優先的に感染者の情報を手に入れたりする方法を見つけたりして、なんとか国内での開発をあきらめたり、スピードを緩めたりはしないでほしい。 日本がポストコロナで輝くために必要なのは、危機管理をしながらの新しいことへの挑戦精神をあきらめないことだろうか。最後に、元駐中国大使、元伊藤忠商事株式会社会長を務めた丹羽宇一郎氏の著書からの言葉を引用したいと思う。「いままでの日本ではあり得なかったことが、これからは当たり前のように起こります。だからこそ、何歳になっても努力を怠ってはいけないのです。」当然至極のことを言っているようだが、これはコロナ前の2019年に出版された「仕事と心の流儀」という本の「「ドングリの背比べ」を続けていたら仕事を奪われる」の項からの一節である。今とても心に沁みる言葉ではないか。世界が混沌としたまま年を越したが、努力の先に明るい未来が待っているかもしれない。 <謝志海(しゃ・しかい)XIE Zhihai> 共愛学園前橋国際大学准教授。北京大学と早稲田大学のダブル・ディグリープログラムで2007年10月来日。2010年9月に早稲田大学大学院アジア太平洋研究科博士後期課程単位取得退学、2011年7月に北京大学の博士号(国際関係論)取得。日本国際交流基金研究フェロー、アジア開発銀行研究所リサーチ・アソシエイト、共愛学園前橋国際大学専任講師を経て、2017年4月より現職。ジャパンタイムズ、朝日新聞AJWフォーラムにも論説が掲載されている。 ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ ********************************************* -
WANG Wenlu “Minority in Time of Emergency”
2021年1月14日 16:36:41
*********************************************** SGRAかわらばん853号(2021年1月14日) *********************************************** SGRAエッセイ#656 ◆王ブンロ「有事のマイノリティー」 早いもので、新型コロナウイルスが猛威を振るい始めて一年が経ち、人々の日常生活を完全に変えた。寒い季節に入って、再び世界中で感染者数が急増している。最近、我々日本在住の外国人の多くが、ある一つのニュースに心を痛めたのではないだろうか。日本政府は、新型コロナウイルスの変異種が確認されたことを受けて、全世界からの外国人の新規入国を停止した。2020年8月中旬以降、外国人の入国が緩和されて、職場では新しい外国人研究者を受け入れてきたので、私も近いうちに、実家に帰ったり、海外調査に出かけたりすることができると期待していたさなかのことであった。 2020年3月初旬に私は研究調査と学会参加のため、アメリカへ渡航した。すでに中国をはじめとするアジア地域(そしてイタリア)で感染が拡大していた頃であったが、アメリカではまだ特に入国禁止措置が取られている状態ではなく、学会も中止されていなかったため、渡航を決行した。アメリカに着いた一週間目は図書館などに問題なくアクセスできたが、3月15日頃から各大学が閉鎖となり、外出自粛の要請も出された。その後、私は毎日、日本の外務省のホームページで入国制限の最新情報を注視しつつ、航空会社に予定より早い便に変更してもらえないか、連絡し続けていた。幸か不幸か、入国制限がかけられるまでには帰れたが、公共交通の利用禁止や14日間の自宅隔離が求められ始めた当日に日本に着いた。帰国前の不安や焦りに満ちた日々をいまだに鮮明に覚えている。日本に自宅があるのに、外国人だから家に帰れない、家族と会えないということが、自分の友人に大きく影響を与えたためである。 「何かある時、日本で一番早く見捨てられるのは外国人だよね」 「それはどこの国でもそうでしょう」 最近のニュースを見て家族に愚痴を言った時に、このように返された。確かに、現代社会は国民国家の枠によって形成されて、その中の一人ひとりは基本的には特定の集団に属して、その所属によって色々と規定されてしまうのだ。もちろん、どの国にも所属しない難民や複数の集団に所属する多国籍者も存在して、実像はさらに複雑だ。多くの人にとっては、自国を離れ他国に行くと、通常は人口的なマイノリティーとならざるを得ない。肌の色や話す言葉などでマジョリティーとの明確な違いがある場合、さらに目立つこととなる。これによって、誤解されたり、差別を受けたりすることがありがちだ。特に、昨今のコロナ禍のような有事の際は、マイノリティーが置かれる厳しい環境がさらに浮き彫りになる。 3月にアメリカにいた際、私は感染拡大していることが分かっていても、外出時にマスクを付けなかった。現地でのトラブルを回避するためだった。その頃、世界中でアジア系の人がマスクを付けていることで、ウイルスだと言われたり、時に暴力を振われたりしたことが、しばしばニュースで報じられた。 カリフォルニアの民間団体や大学関係者が立ち上げた、アジア系アメリカ人や太平洋諸島出身の人々に対する暴力事件を申告するプラットフォームSTOP_AAPI_HATEには、3月中旬のオープンから8週間で1843件ものコロナ関係の差別事件の申告が寄せられた。中には身体的暴力が8.1%を占めている。差別の理由として、17.5%の回答者はマスクまたは服装と述べている。このような世界中のアジア系に対する差別を情報収集、分析、発信しているプラットフォームとして、他に、海外在住の中国系研究者が運営するSinophonia_Trackerやオーストラリアの民間団体が進めるI_Am_Not_a_Virusキャンペーン等々がある。SNS上でもJeNeSuisPasUnVirusのハッシュタグに注目が集まっている。 ◇STOP_AAPI_HATE https://stopaapihate.org/about/ ◇Sinophonia_Tracker https://sites.google.com/view/sinophobia-tracker/home ◇I_Am_Not_a_Virus http://diversityarts.org.au/not-virus-report-story/ これらは全て中国系をはじめとするアジア系の人々の処遇に目を配るものである。一方、同時期に、中国の広東省に居住するアフリカ系移民が大家に強制的に退居され、感染してないのに隔離されたことが報道された。もう少し調べたところ、インドでも例えば北東部出身で肌の色が中国人に近いモンゴロイド系の人、そして社会的に少数派であるムスリムへ差別や暴力が向けられている。いずれも社会のマイノリティーである。しかし、差別は感染症によって作り出されたものではなく、既存の差別問題が感染症によってさらに露呈されたのだ。危機時に自分の集団に所属しないと思われる人々を排除し攻撃することは、歴史的によくあることである。関東大震災後の朝鮮人殺傷事件や、9.11アメリカ同時多発テロ事件後の非イスラム教国での人口的少数であるイスラム教徒に向けられた敵意が想起される。 しかし、マジョリティーやマイノリティーとは、実は非常に流動的で、時間や空間が変わると入れ替わるものだと思う。日本社会に暮らしている自分は外国人として確かにマイノリティーだが、日本在住の外国人のなかでは中国人はマジョリティーである。日本人とは外見のみではほぼ見分けられないため、日本語を上手に話せば、うまくマジョリティーである日本人にカモフラージュすることもできる。もしかすると、日本国籍を持っているハーフの日本人よりも日本人と思われやすく、疎外感を感じにくいかもしれない。そう考えると、国籍や肌色といった一見明確そうなカテゴリー付けも実は非常に恣意的なものだと感じる。 新型コロナが世界中で広がっている中、最近ではあまり特定グループを敵視することが報道されなくなった。しかし程度の差はあれ、どの国や地域でも起こっていた他人化(othering)の現実を簡単に忘れてはならない。世界規模のパンデミックはいずれまた発生するかもしれないし、人類は色々な災害に直面するだろう。その時、今回のコロナの経験を振り返った上で、人々がより寛容でいられるようになればと願う。 <王ブンロ WANG_Wenlu> 渥美国際交流財団2019年度奨学生。東京大学国際高等研究所東京カレッジ特任研究員。2011年北京外国語大学中国語言文学学科卒業。2014年同大学大学院比較文学専攻修了、修士号取得。2020年3月東京大学人文社会系研究科博士課程単位取得満期退学。専門分野は東アジアとヨーロッパの交渉史、東アジアにおけるキリスト教の布教史。 ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************