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Invitation to the 18th SGRA China Forum “Reception of the ‘West’ in Asian Modern Art”
2024年11月9日 07:57:58
********************************************** SGRAかわらばん1038号(2024年11月9日) 【1】第18回SGRAチャイナフォーラムへのお誘い(11月23日、北京&オンライン) 「アジア近代美術における〈西洋〉の受容」 【2】銭海英 第22回SGRAカフェ報告 「逆境を超えて:パレスチナの文化的アイデンティティ」 【3】第11回日台アジア未来フォーラムのご案内(11月10日、淡江) 「疫病と東アジアの医学知識――知の連鎖と比較」(最終案内) *********************************************** 【1】第18回SGRAチャイナフォーラム「アジア近代美術における〈西洋〉の受容」へのお誘い 第18回SGRAチャイナフォーラム「アジア近代美術における〈西洋〉の受容」へのお誘い。 下記の通りSGRAチャイナフォーラムをハイブリッド形式で開催いたします。会場でもオンラインでも参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。 テーマ:「アジア近代美術における〈西洋〉の受容」 日 時:2024年11月23日(土)午後3時~5時(北京時間)/午後4時~6時(東京時間) 会 場:北京外国語大学北京日本学研究センター多目的室とオンライン(Zoom) ※北京外国語大学会場で参加する場合は、入校の際に身分証のスキャンが必要となります。 言 語:日中同時通訳 共同主催:渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA) 北京外国語大学北京日本学研究センター 清華東亜文化講座 後 援:国際交流基金北京日本文化センター 協 賛:鹿島建設(中国)有限公司 ※参加申込(リンクをクリックして登録してください) https://forms.office.com/Pages/ResponsePage.aspx?id=DQSIkWdsW0yxEjajBLZtrQAAAAAAAAAAAANAAWXADtRUNlo1VzVNMTBBTUFZQTNIV08yT1lYNk9GQS4u (参加方法に関わらず参加用URLが届きます。会場参加の方は当日会場にお越しください。) お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ■フォーラムの趣旨 昨年開催した「東南アジアにおける近代〈美術〉の誕生」では、日本における東南アジア美術史の第一人者である後小路雅弘先生(北九州市立美術館館長)を講師に迎え、いまだ東北アジア地域では紹介されることが少ない東南アジアにおける近代美術誕生の多様な様相について学んだ。その続編として今回は、初期の東南アジアの美術家にとって重要な存在であったゴーギャンを取り上げ、東南アジア近代美術おいて〈西洋〉がどのように受容され、そこにどのような課題が反映していたのかを考察する。 ■ プログラム 総合司会 孫建軍(北京大学日本言語文化学部/SGRA) 【開会挨拶】今西淳子(渥美国際交流財団/SGRA) 【挨拶】周異夫(北京外国語大学日本語学院長兼日本学研究センター長) 野田昭彦(国際交流基金北京日本研究センター所長) 【講演】後小路雅弘(北九州市立美術館館長) 「東南アジア近代美術における〈西洋〉の受容─東南アジアのゴーギャニズム」 【指定討論】 討論者: 王嘉(北京外国語大学) 二村淳子(関西学院大学) 【自由討論】 モデレーター:林少陽(澳門大学歴史学科/SGRA/清華東亜文化講座) 【閉会挨拶】 王中忱(清華東亜文化講座/清華大学中国文学科) ■講演内容 【講演】後小路雅弘「東南アジア近代美術における〈西洋〉の受容─東南アジアのゴーギャニズム」 前回の本フォーラムでは、「東南アジアにおける近代〈美術〉の誕生」というテーマのもと、欧米列強による植民地統治下の1930年代に見られた近代美術誕生の萌芽的な動きを国ごとに紹介し、その共通性と固有性について考察した。その背景には、19世紀末から盛んになったナショナリズムや民族自決の高まりといった国際的な動向があったが、激動のアジア近代史の奔流の中で、近代美術運動のパイオニアたちは何を目指したのかを読み解いた。 今回は、東南アジアを中心に、他のアジア地域の作例も含め、アジア近代美術の、とりわけ初期の段階において、〈西洋〉の受容がどのようなかたちで行われたのか、またそこにはアジアの近代美術のどのような課題が反映していたのかについて考察する。 アジアの近代美術は、西欧の近代美術の大きな影響を受けながら誕生し、展開していったことは間違いない。しかし、ここでは、その影響を受け容れた側(アジアの近代美術)の主体性、主体的な創造性に注目する。アジアの近代美術のパイオニアたちは、〈西洋〉をどのように「主体的に」受け容れ、そこにどのような問題意識を持ち、どのように内発的な創造性を展開したのだろうか。 東南アジアの美術家たちにとって、とりわけ重要な存在はポスト印象派のポール・ゴーギャンであった。ゴーギャンは、成熟した西欧文明に倦んで、野生の荒々しい生命力を求めて南太平洋へ移住し、そこで新境地を開いた。東南アジアの美術家たちは、ゴーギャンの南太平洋での作品を参照し、自らの作品に取り込みながら、自身の課題に取り組んでいく。そこには、新たな国家建設の夢や、まだ見ぬ〈故郷〉の姿が反映していた。 アジアの初期近代美術家たちはゴーギャンに何を見ていたのか─東南アジアを中心にそれ以外の地域も含め、いくつかの作品を取り上げ、その分析を通して、アジアの近代美術が何を求め、何を生み出したのかについて具体的に考えたい。 ※プログラムの詳細は、下記リンクをご参照ください。 日本語版 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/10/J_SGRAChinaForum18.pdf 中国語版 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/10/C_SGRAChinaForum18.pdf ポスター https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/11/ChinaForu18_poster.jpg ------------------------------------------ 【2】SGRAカフェ報告 ◆銭海英「第22回SGRAカフェ『逆境を超えて:パレスチナの文化的アイデンティティ』報告」 2024年10月5日、第22回SGRAカフェ「逆境を超えて:パレスチナの文化的アイデンティティ」が対面(渥美財団ホール)・オンライン(Zoom)併用方式にて開催されました。1月9日と6月25日に続き、「パレスチナを知ろう」というシリーズの3回目です。 今回は慶應義塾大学総合政策学部の山本薫先生から「パレスチナ文化とは何か?」と題し、長年に渡り混乱する中東情勢の中で形成されたパレスチナ人の多様な文化的アイデンティティをテーマに講演していただきました。 講演では2003年以降、イスラエルにより強制的に立ち退かされたガザの人々が取り組むストリートカルチャーが紹介されました。ガザの若者たちの間では、パルクール競技(街頭運動)、ラップ音楽(街頭音楽)、グラフィティアート(街頭芸術)が盛んに行われているそうです。 講演後、次のような質問が出されました。「戦時下において芸術に時間を割くべきではないという主張が存在するが、パレスチナの若者が創出した芸術作品がいかにしてイスラエルや他のアラブ諸国への抵抗手段として機能してきたのか?」、「政治的アイデンティティが脅かされる構造の中で、芸術を通じてエスニックなアイデンティティを主張することは、芸術作品に政治的メッセージを込めることになると考えるが、イスラエル化を推進するシオニスト政権はパレスチナ人の芸術運動をどの程度規制しているのか?」、「パレスチナ人の芸術はイスラエル国民に受容されているか?」、「日本では、パレスチナの芸術や文化はどのように受容されているのか?」、「日本文化との交流の進展はいかに評価されているか?」。 「芸術作品と政治」について、山本先生は「パレスチナの若者たちがグローバルマーケットに接続する希望はあるが簡単ではない。グローバリゼーションの中で表現の自由を模索しながら、国や資本の論理にとらわれずに自己表現を模索し続けている。国がないからこそ生まれる葛藤や自由が、独自の文化や芸術を形成する原動力となっている」と将来への可能性を指摘しました。 「イスラエルでの受容状況」については、「パレスチナの文化表現はイスラエルだけでなく、一部のアラブ諸国からも危険視され、表現者が命を奪われることも少なくない」と回答。実例として「『太陽の男たち』の著作で知られるパレスチナを代表する小説家G.カナファーニーは強大な影響力を持つがゆえに36歳の若さでイスラエルに暗殺された。風刺漫画家が殺害される事件もあった。一方で、背景にはアラブ側権力者の思惑があるとも言われている」と指摘し、「パレスチナ問題はイスラムとの対立だけでなく、周辺のアラブ諸国も巻き込む中東全体の問題であり、多くの国々はパレスチナ人を警戒している。イスラエル国内でもパレスチナ人の文化表現は否定されがちだが、共生を目指すユダヤ人の支援活動も依然として存在する」と言及しました。 「日本での受容状況」については、「パレスチナの演劇や映画は日本でも高い注目を受けている」と回答。ただ「カンヌ映画祭などでもパレスチナ出身、もしくはイスラエルに在住するパレスチナ人の監督が多数の賞を獲得しているが、製作者がパレスチナ人であることが知られていない場合もある」と指摘しました。 最後に今西淳子SGRA代表から閉会の挨拶がありました。パレスチナに対する日本やアジアの関心を高めるための活動を評価し、小説や文化の力を通じて、わずかながらでもパレスチナの現状を理解できたと述べました。また、SNS時代における、私たち個人からの発信や活動を進める重要性を強調しました。 完全に専門外であった私はフォーラムで多くの感銘を受けました。90分にわたり拝聴していたのですが、山本先生の「パレスチナ文化は、言ってしまえば一つも無いのですよ」という一言には驚きました。確かにイスラエルの主張では、「パレスチナ人は存在しない」のです。パレスチナという国家がそもそも存在しないから、という理屈です。「いや、違う。パレスチナ人は確かにそこにいる。なぜいるのかと言うと、その証明はパレスチナ文化が存在するからである」と山本先生は主張します。こうして、そもそも「パレスチナ文化」とは何かという疑問も自然に浮上してくると思います。 私が敬愛する中国の学者である許紀霖は、かつて「文明」と「文化」という二つの概念について、実に分かりやすい見解をもって両者を区別しました。 「『文明』と『文化』は異なる概念であり、『文明』が関心を寄せる対象は『何が善いか?』であるのに対し、『文化』は単に『何が我々のものか?』に焦点を当てる。『文化』は『我々』と『他者』とを区別し、自己の文化的アイデンティティを確立することを目的とするが、文明はそうではない。文明は、一国や一民族を超えた普遍的な視点から『何が善いか』を問い、その『善い』は我々にとってだけでなく、他者にとっても同様に善いものであり、全人類にとって普遍的な善であることを追求する」(許紀霖『中国時刻?従富強到文明崛起的歴史邏輯』香港城市大学出版社、2019年、7-8頁)。 「パレスチナ文化」とは何かを表現する際に、私は、まず「他者」と区別されるパレスチナ人の「我々」(独自性)とは何かを考えてしまいます。この唯一無二の独自性とは何か、どのように把握するべきかについて、山本先生からは「パレスチナ文化の魅力の一つは、国家の不在ゆえに未来を構築していく過程にある。さらに、その過程がパレスチナ人全体によって今なお作られ続けている点にある。また、パレスチナ文化は多様性に富み、アラブ人に限らず、ユダヤ人をも排除するものではなく、決して排他的なものではない」という説明がありました。 しかし、この説明だけでは、「パレスチナ文化」の独自性そのものを十分に理解するには至りませんでした。この難しさは山本先生も指摘したように、現在のパレスチナにおいては統一された文化が未だ形成されていないという冒頭の説明そのものが一つの答えであり、同時に今まさに現地では悲惨な戦争のさなかにあるという現実が関連していることを強く認識すべきです。すなわち、パレスチナ文化の確立とは、地政学的な条件と過酷な現実が独自性を生み出す条件であり、また人の心に響く力として存在していると考えます。 このような状況において、山本先生がハマスの暴力手段とは一線を画し、非暴力的な手段によるパレスチナ文化の自己表現の重要性を強調した点には深く共感します。壁に囲まれ攻撃の対象とされる人々がいる現実は、極めて残酷ながらもパレスチナ人が確固たる存在として成立していることを証明するものです。「パレスチナ人は存在しない」という発信は詭弁でしかないことは明らかです。パレスチナ人が自己の存在を声高らかに証明し、さらなる独自性を宣伝するためにも、一刻も早い平和の実現を強く望みます。 当日の写真 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/11/cafe22photos.pdf フィードバック集計 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/11/SGRACafe22Feedback.pdf <銭海英(せん・かいえい)QIAN_Haiying> 2022年度渥美奨学生。中国江蘇省出身。明治大学大学院教養デザイン研究科博士後期課程に在学中。近代中国教育思想史を専攻。現在、成城大学及び神奈川大学非常勤講師、有間学堂東洋史学専属講師。 ------------------------------------------ 【3】第11回日台アジア未来フォーラムのご案内(最終案内) 下記の通り第11回日台アジア未来フォーラムを開催いたします。東アジア日本研究者協議会第8回国際学術大会内で開催するため、ご希望の方は同大会への参加申込(会場参加のみ)をお願い致します。 テーマ:「疫病と東アジアの医学知識――知の連鎖と比較」 日 時:2024年11月10日(日)9:00~12:10(台湾時間) 会 場:淡江大学淡水キャンパス驚声大楼 言 語:日本語 主 催:(公財)渥美国際交流財団関口グローバル研究会[SGRA] 共 催:中央研究院史語所世界史研究室 協 力:東アジア日本研究者協議会 賛助:中鹿營造、他 申 込:東アジア日本研究者協議会第8回国際学術大会HPよりお申し込みください https://www.taiwanjapanese.url.tw/eacjs2024/ お問い合わせ:SGRA事務局([email protected]) ■ 開催趣旨 2019年12月、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が中国の武漢市から流行し、多くの死者が出て全世界的なパンデミックを引き起こした。人と物の流れが遮断され、世界経済も甚大な打撃を受けた。この出来事によって、私たちは東アジアの歴史における疫病の流行と対処の仕方、また治療、予防の医学知識はどのように構築されていたか、さらに東アジアという地域の中で、どのように知の連鎖を引き起こして共有されたかということに、大きな関心を持つようになった。会議では中国、台湾、日本、韓国における疫病の歴史とその予防対策、またそれに関わる知識の構築と伝播を巡って議論をする。 ■ プログラム 〔第1部 報告〕 報告1 李尚仁(中央研究院歴史語言研究所)「コロナから疫病史を考え直す――比較史研究はまだ可能であろうか」 報告2 朴漢珉(東北亜歴史財)「清日戦争以前朝鮮開港場の検疫規則」 報告3 松村紀明(帝京平成大学)「幕末から明治初期の種痘について」 報告4 町泉寿郎(二松学舎大学)「感染症と東アジア伝統医学」 〔第2部 指定討論〕 討論1 市川智生(沖縄国際大学) 討論2 祝平一(中央研究院歴史語言研究所) 討論3 巫毓セン(中央研究院歴史語言研究所) 討論4 小曽戸洋(北里大学東洋医学総合研究所) 〔第3部 自由討論〕 ※プログラムの詳細は、下記リンクをご参照ください。 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/10/JTAFF11Program.pdf ※ポスター https://00m.in/xngrW ***************************************** ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方はSGRA事務局にご連絡ください。 https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ ********************************************* -
KIM Kyongtae “The 9th Kokushi Dialogue ‘East Asian Kokushi and Southeast Asia”
2024年10月31日 14:21:08
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その後、三谷博先生(東京大学名誉教授)の開会挨拶があった。三谷先生は、東北アジア3国の関係に影響を与えた現代史の軌跡を互いに理解し共有すれば、歴史対話は確実に安定していくだろうと強調。そして、日中韓の3カ国における東南アジアに関する研究の相違点について歴史学者として疑問を抱いていたが、今回の対話を通してそれを解き明かしながら、この新たな地域で生まれた合意または対立に注目して、私たちの絆をどのように深めていくかを考えてみようと提案した。 楊奎松先生(北京大学・華東師範大学)の基調講演は、「ポストコロニアル時代における『ナショナリズム』衝突の原因―毛沢東時代の領土紛争に関する戦略の変化を手掛かりに」であった。要するに、毛沢東をはじめとする「カリスマ的」な指導者は、自らの裁量で外交関係の葛藤を封じ込める(あるいは無効化する)政治力を発揮したが、彼らとは異なる傾向のその後の指導者たちはそのような方法を使わず(あるいは使えず)、時にはポピュリズムを利用することもあったが、むしろ逆に影響を受ける主客転倒の状況も現れたという。その現状は毛沢東をはじめとする指導者たちが行なった「政策の影」でもあると評価した。最後に、互いの歴史を共感し理解するために歴史研究者が持つべき姿勢について提言した。つまり、どのような民族的、国家的な「歴史認識」であっても限界性を持っていることを認め、人類社会の歴史の中で民族と国家の歴史を位置づけなければならないということであった。 次いで日中韓及びタイ出身の研究者の発表セッションが南基正先生(ソウル大学)の司会で行われた。タンシンマンコン・パッタジット先生(東京大学)の「『竹の外交論』における大国関係と小国意識」は、外交に長けた国として知られ、それを自負する国であるタイの外交の歴史的事実を再検証し、その裏側に隠された「小国意識」が持つ問題点を鋭く指摘した。私にとって「小国意識」は、「小国(観)」、「小中華意識」などの韓国史で使われる用語と似ていて親しみを感じたが、それとは異なる文脈で使われる用語だったのでとても興味深かった。タイの過去と現在を理解するのに役立つ一方で、韓国人が持つ「平和を愛する白衣の民族」という観念との共通点も思い浮かんだ。 続いて、日中韓三カ国の研究者の発表が行われた。吉田ますみ先生(三井文庫)の「日本近代史と東南アジア―1930年代の評価をめぐって」は、戦後の日本近代史研究において日本と東南アジアとの関係がどのように語られてきたかについて、当時の時代背景と学界の潮流を紹介した。 尹大栄先生(ソウル大学)の「韓国における東南アジア史研究」は、朝鮮半島と東南アジアの関係を、慧超(新羅時代)の古代から高麗、朝鮮を経て近代韓国に至るまで歴史の流れに沿って考察した。最後に、韓国の東南アジア史研究の「多少残念な現状」について指摘した。 高艷傑先生(厦門大学)の「華僑問題と外交―1959年のインドネシア華人排斥に対する中国政府の対応」は、1959年から1961年の間にインドネシアで起きた中国系住民に対する排斥とそれに対する中国の外交政策を論じたが、高先生は、中国は強硬な姿勢で対応しながらも、両国の友好関係発展への必要性に応えたと評価した。 今回の「国史たちの対話」では、中国学界の権威者の基調講演とタイ出身の研究者の発表が含まれていたが、これは新しい試みだ。国史学界の権威者から中国の歴史認識や叙述の特徴について聞ける機会であり、私たちにはなじみのないタイの自国史認識についても学べる機会でもあった。 初日の2つのセッションが終わると、屋外に設けられたランチ会場で美味しいタイ料理の昼食を楽しんだ。その後のアジア未来会議の開会式後のウェルカムパーティーでは、前日に引き続き和気あいあいとした会話が交わされた。日程が終わっても自分の家に帰れないということは、ある意味で遠地で行われるイベントの「長所」である。午前の基調講演と発表を聞いた指定討論者たちは、自分の考えをまとめた討論文を夜までに同時通訳者たちに渡したため、翌日の討論セッションのスムーズな進行に役立った。 8月11日、第3セッションは彭浩先生(大阪公立大学)の司会による指定討論であった。韓国からは鄭栽賢先生(木浦大学)と韓成敏先生(高麗大学)が、日本からは佐藤雄基先生(立教大学)と平山昇先生(神奈川大学)が、中国からは鄭潔西先生(温州大学)と鄭成先生(兵庫県立大学)が登壇した。 6人は、それぞれの専門分野に基づき、深い悩みが込められた率直で鋭い質問をした。 第4セッションは鄭淳一先生(高麗大学)の司会による自由討論。まず、指定討論者の質問に対する基調講演者と発表者の簡単な回答から始まり、自由討論の時間を持った。問題意識が質問になり、質問が発展して共感を得る新たな問題意識につながった。質問と回答が頻繁に交錯しながらも対話が自然に進んだのは、長年一緒にやってきた通訳者の方々のおかげであった。長い間一緒に議論を重ねてきた参加者、そして問題意識を共有する新しい参加者が集まったことで、効率的な議論ができた。 皆の熱い議論を踏まえて、劉傑先生が論点を整理してくれた。要約すると、今回のテーマを選定するにあたって新たな発見があったということである。今回のキーワードとして「大国」、「小国」が注目され、時期は戦前から戦後へと自然に移った。戦後の歴史に入ると問題設定が変わってくる。戦前・戦後を連続して語るためには何を問題に設定するかを考えなければならないし、それぞれの異なる空間でどのように「国境を越えよう」としているのか、国境を越えた歴史対話は私たちの仕事であるが、各国の歴史家がそれぞれの国の中で直面している国境の問題も一緒に考えなければならない。そして、歴史認識の問題は自国の問題でもあることを念頭に置かなければならないという話であった。 第5セッションはメインテーマから少し離れて、塩出浩之先生(京都大学)の司会でこれからの「国史たちの対話」の方向性について議論する時間を持った。中国の彭浩先生、韓国の鄭淳一先生、日本の村和明先生(東京大学)が順番に意見を述べた。共通したのは困難があっても継続すべきだというものであった。 「引きこもり型」の国史研究者を一人でも多く連れ出そうとの三谷先生の趣旨を今後とも考えていく必要があるという平山先生の意見と、これまでの形式を変えて、研究者同士が一緒に踏査してそこで互いの距離をさらに縮められるような「スモールトークの場」を作ろうという韓成敏先生の意見も、耳を傾けるべきコメントであった。 最後に宋志勇先生(南開大学)の閉会挨拶で締めくくりを迎えた。第一に、会議の準備と進行は非常に成功したと述べた。渥美国際交流財団の今西淳子常務理事、三谷博先生、劉傑先生、チュラーロンコーン大学に感謝し、同時通訳者とスタッフにも感謝を伝えた。第二に、学術的な成果が豊富であり、そして最後には今後の国史研究の方向性について賢明で建設的な意見を聞いたということである。まとめると、国史研究の深化に示唆があり、会議が終わっても財団と参加者は頭を寄せ合って明るい未来を設計することを確信しているとの話があった。 最後の最後に、「国史たちの対話」の成果を拡散するための新たな取り組みの一つである教材化プロジェクトの現状を報告する場があった。新しいメディアを活用した作業は大きな期待を持たせるものであった。 「国史たちの対話」はコロナ下のオンライン会議を経て9回目を迎えた。個人的には、場所とテーマを大幅に変えた新しい試みを行なった今回の「対話」は特に記憶に残る点が多かった。まず、韓国における東南アジアの研究が非常に不足していることを痛感した。日本や中国に比べ研究者が少ないのは仕方がないかもしれないが、研究テーマが多様でない点については学界レベルでの検討が必要だろう。多様な研究や試みを受け入れる雰囲気が国史の内部から醸成されれば、各国の間の対話もより円滑に行われるのではないか。一人の国史研究者としてそんな思いを抱くようになった。 これまでの「国史たちの対話」でも感じたことであるが、研究者の幅が広がった今回の「対話」でも、多くの研究者が私と同じような悩み(政治と学問、社会が求める学問と自分の研究の間での悩み)を抱えていると実感して、勇気を得ることができた。 一方、華人や華僑排斥事件は東南アジアに限ったことではなく、(華僑社会が東南アジアに非常に大きく形成されているのは事実だが)中国人が多数進出している地域では彼らに対する排斥事件が起きていたことを忘れてはならない。植民地朝鮮でも中国人排斥事件があったし、中国では朝鮮人排斥事件が起こった。このように、各国で移民者コミュニティに対する排斥事件がなぜ発生するのかについて一緒に関心を持ってみるのも意味があると思った。 二日目の夜、「国史たちの対話」の参加者のほとんどが課題を終えた後のほっとした気持ちで、美しい屋外レストランで自由に会話を楽しんだ。学術的な会話だけでなく、顔を合わせて肩の荷物を少し下ろし、互いの本音を交換する私的な会話も重要であることを知った場であった。 (原文は韓国語、翻訳:ノジュウン) 当日の写真 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/10/kokushi9_photos.pdf アンケート集計結果 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/10/kokushi9_feedback.pdf <金キョンテ(キム・キョンテ)KIM_Kyongtae> 韓国浦項市生まれ。韓国史専攻。高麗大学韓国史学科博士課程在籍中に 2010 年~2011 年、東京大学大学院日本文化研究専攻(日本史学)外国人研究生。2014 年高麗大学韓国史学科で博士号取得。韓国学中央研究院研究員、高麗大学人文力量強化事業団研究教授を経て、全南大学校歴史敎育科副教授。戦争の破壊的な本性と戦争が荒らした土地にも必ず生まれ育つ平和の歴史に関心を持っている。主な著作:「壬辰戦争期講和交渉研究(博士論文)」、『虚勢と妥協―壬辰倭乱をめぐる三国の協商』(東北亜歴史財団、2019) ------------------------------------------ 【2】第11回日台アジア未来フォーラムのご案内(再送) 下記の通り第11回日台アジア未来フォーラムを開催いたします。東アジア日本研究者協議会第8回国際学術大会内で開催するため、ご希望の方は同大会への参加申込(会場参加のみ)をお願い致します。 テーマ:「疫病と東アジアの医学知識――知の連鎖と比較」 日 時:2024年11月10日(日)9:00~12:10(台湾時間) 会 場:淡江大学淡水キャンパス驚声大楼 言 語:日本語 主 催:(公財)渥美国際交流財団関口グローバル研究会[SGRA] 共 催:中央研究院史語所世界史研究室 協 力:東アジア日本研究者協議会 賛助:中鹿營造、他 申 込:東アジア日本研究者協議会第8回国際学術大会HPよりお申し込みください https://www.taiwanjapanese.url.tw/eacjs2024/ お問い合わせ:SGRA事務局([email protected]) ■ 開催趣旨 2019年12月、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が中国の武漢市から流行し、多くの死者が出て全世界的なパンデミックを引き起こした。人と物の流れが遮断され、世界経済も甚大な打撃を受けた。この出来事によって、私たちは東アジアの歴史における疫病の流行と対処の仕方、また治療、予防の医学知識はどのように構築されていたか、さらに東アジアという地域の中で、どのように知の連鎖を引き起こして共有されたかということに、大きな関心を持つようになった。会議では中国、台湾、日本、韓国における疫病の歴史とその予防対策、またそれに関わる知識の構築と伝播を巡って議論をする。 ■ プログラム 〔第1部 報告〕 報告1 李尚仁(中央研究院歴史語言研究所)「コロナから疫病史を考え直す――比較史研究はまだ可能であろうか」 報告2 朴漢珉(東北亜歴史財)「清日戦争以前朝鮮開港場の検疫規則」 報告3 松村紀明(帝京平成大学)「幕末から明治初期の種痘について」 報告4 町泉寿郎(二松学舎大学)「感染症と東アジア伝統医学」 〔第2部 指定討論〕 討論1 市川智生(沖縄国際大学) 討論2 祝平一(中央研究院歴史語言研究所) 討論3 巫毓セン(中央研究院歴史語言研究所) 討論4 小曽戸洋(北里大学東洋医学総合研究所) 〔第3部 自由討論〕 ※プログラムの詳細は、下記リンクをご参照ください。 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/10/JTAFF11Program.pdf ※ポスター https://00m.in/xngrW ***************************************** ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方はSGRA事務局にご連絡ください。 https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ ********************************************* -
LEE Chung-sun “You Are Still Here”
2024年10月24日 14:59:20
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70年前に起きた朝鮮戦争のことであるが、朝鮮半島の危機は依然として続いている。最近北朝鮮が韓国内へ飛ばしたゴミ風船は、未完の戦争の生きた証であろう。朝鮮戦争勃発75周年を迎える2025年を控えて、韓国では各分野で戦争の教訓を改めて考察する動きがみられる。特別展示会「あなたはまだここに」も、まさにその一環として行われる活動である。 この展示会の最後のセクション「見知らぬ土地に刻まれた名前」に、私の研究論文が学術資料として引用されている。私が渥美奨学生であった2021年に韓国・釜山広域市の発行したジャーナル『港都釜山』に掲載された拙稿である。タイトルは「1951年国連墓地の戦没将兵献呈式―1950~1951年臨時国連墓地の統合から献呈式に至る過程の考察―」。国連墓地の設立70周年を記念して、博士論文を完成していく中でその一部を投稿したものであった。研究を遂行しながら、求めていた史料をデジタル・アーカイブズから偶然に見つけた瞬間の興奮が今も脳裏に焼き付いている。 私が見つけたのは、国連墓地の設立直後の1951年4月6日に開かれた最初の献呈式(Dedication_Ceremony)の様相を表す史料であった。献呈式の記念式典では、緊迫感溢れる戦争の最中、李承晩(イ・スンマン)大統領を含め、マッカーサー(MacArthur)国連軍司令官の後任となったリッジウェイ(Ridgway)中将、多くの国連軍参戦国の要人が出席した。雨の中、決意に満ちた要人らの様子の厳かな気配にとらわれ、論文を書き終わった後のしばらくの間、私はその余韻に包まれていた。 その資料の一部が、大韓民国歴史博物館の特別展に展示されている。私の研究を直接引用した史料は、国連墓地の象徴区域に表れている国連軍参戦国の配置図である。博物館側は、拙稿の分析内容をほぼそのまま展示物の説明文に採択して掲載した。担当キュレーターによると、拙稿を通して接した史料が今の国連記念公園の象徴区域をよく具現しているため、基礎データのエクセルファイルにて拙稿の内容を記録しておいたという。 論文を基にした形の学術監修ではあっても、自分の論文が国の知られざる歴史を伝える博物館の展示会の参考資料として用いられたことは、研究者として感無量である。他方で、3年前のKBSドキュメンタリー番組の学術監修の経験もあり、今後の使命や責任を考えるとさらに複雑な心境にもなる。結果的に展示物の説明文の下段と、展示場のクレジットタイトル、そして博物館のホームページに、自分の名前が記された。数年前に朝鮮戦争の国連軍戦没者、あの「見知らぬ土地に刻まれた名前」たちを想いながら書いた拙稿と私自身も、大韓民国歴史博物館という地に小さな足跡として刻まれた。 戦争は今なお世界各地で繰り返されている。ロシア・ウクライナ戦争や、イスラエルとヒズボラの紛争など、人間の尊厳を害する悲劇が相次いでいる。地球市民として我々は、苦難の時に人たちを救う英雄のみならず、名も知らなき全ての犠牲者――戦争捕虜、失郷民、拉致被害者、失踪者など――見知らぬ土地に刻まれた名前とともに、争乱の今を生きるあの無数な存在を記憶にとどめるべきであろう。展示会の閉幕を目の前にした今、そのタイトルが心の奥に響き渡り続ける。「あなたはまだここに」。 国連軍参戦の日記念特別展[あなたはまだここに]ホームページ(下段に拙稿表記) https://www.much.go.kr/museum/exhibition/exhibitionViewUser.do?exhCode=EXH_0000000216 SGRAエッセイ#710 李貞善「『あの時・あそこ』から『今・ここ』へ」 https://www.aisf.or.jp/sgra/combination/sgra/2022/17595/ SGRAエッセイ#694 李貞善「記憶の地、国連墓地が遺すもの」 https://www.aisf.or.jp/sgra/combination/sgra/2022/17263/ <李貞善(イ・ジョンソン)LEE Chung-sun> 東京大学大学院人文社会系研究科附属次世代人文学開発センターの特任助教。2021年度渥美奨学生として2023年2月に東京大学で博士号取得。高麗大学卒業後、韓国電力公社在職中に労使協力増進優秀社員の社長賞1等級を受賞。2015年来日以来、2022年国際軍史事学会・新進研究者賞等、様々な研究賞受賞。大韓民国国防部・軍史編纂研究所が発刊する『軍史』を始め、国連教育科学文化機関(ユネスコ)関連の国際学術会議で研究成果を発表。2018年日本の世界遺産検定で最高レベルであるマイスター取得後、公式講師としても活動。 ------------------------------------------ 【2】催事紹介 SGRA会員で一般社団法人東北亞未来構想研究所(INAF)所長の李鋼哲さんから国際フォーラムのお知らせをいただきましたのでご紹介します。興味のある方は直接お申込みください。 ◆第2回東北アジア未来国際フォーラム [テーマ]「激変する国際秩序の中の東北アジア地域協力の可能性と課題」 [日 時]2024年11月16日(土)10:00~18:30 17日(日)エクスカーション [場 所]石川県青少年総合研修センター第1研修室 [形 式]対面+オンライン(ハイブリッド:zoom) 世界情勢は激動の時代を迎えている。欧米中心に形成された世界秩序は、新興国の台頭により、深刻な挑戦を受けている。とりわけ、BRICSを始めとするグローバル・サウスが国際社会での存在感を高め、新しい多極化した世界秩序の模索期に入っている。 他方、コロナ過で深刻な打撃を受けて停滞していた世界経済は徐々に回復に向かっているが、国際社会では戦争と紛争が相次いで起き、また欧米と中ロなどの間には「新冷戦」による分断が進行しつつある。 その中で本年5月には日中韓サミットがソウルで再開され、対立の中での協力関係を模索しているのも事実である。このような情勢の中、INAF研究所は、その趣旨の通り、未来に向けた知的交流を進めるためのプラット・フォームとして、本フォーラムを昨年8月ソウルでの第1回を皮切りに、第2回を地方の中核都市金沢市で開催することになった。本フォーラムは、日中韓朝蒙露等の識者が一堂に集まり、国境を越えた東北アジア地域協力の可能性を探るための議論を交わし、新時代を切り開くための知的創造を目指す。 [プログラム] 第1部 基調講演 金泳鎬・INAF最高顧問・元韓国産業資源部長官 劉傑・早稲田大学教授・東アジア国際関係研究所 第2部 日中関係の歴史的な検証 第1報告:李鋼哲・INAF所長「毛沢東の対日認識と日中関係」 第2報告:兪敏浩・INAF理事・名古屋商科大学教授「鄧小平の対日認識と日中関係」 第3報告:李昊・東京大学大学院法学政治学研究科准教授「習近平の対日認識と日中関係」 第4報告:王培ロ・INAF研究員・早稲田大学大学院社会科学研究科博士課程「文化大革命の中の日本メディアの報道と特派員(仮)」 第3部 「世界の多極化と東アジア国際秩序の変容」 問題提起1:三村光弘・INAF常任理事・新潟県立大学「朝鮮半島の平和と協力(仮)」 問題提起2:石川幸一・元亜細亜大学教授・JETRO研究員「東南アジアのBRICSへの接近と東アジアの新しい秩序」 第4部 「コリアン・ディアスポラー越境アクターとしての朝鮮族の役割―」 基調報告:李鋼哲・INAF所長・朝鮮族研究学会顧問・元会長「朝鮮族のグローバル・ネットワークの構築に向けて」 プログラムの詳細・参加方法についてはINAFホームページをご覧ください。 https://inaf.or.jp/ ------------------------------------------ 【3】第11回日台アジア未来フォーラムのご案内(再送) 下記の通り第11回日台アジア未来フォーラムを開催いたします。東アジア日本研究者協議会第8回国際学術大会内で開催するため、ご希望の方は同大会への参加申込(会場参加のみ)をお願い致します。 テーマ:「疫病と東アジアの医学知識――知の連鎖と比較」 日 時:2024年11月10日(日)9:00~12:10(台湾時間) 会 場:淡江大学淡水キャンパス驚声大楼 言 語:日本語 主 催:(公財)渥美国際交流財団関口グローバル研究会 [SGRA] 共 催:中央研究院史語所世界史研究室 協 力:東アジア日本研究者協議会 賛助:中鹿營造、他 申 込:東アジア日本研究者協議会第8回国際学術大会HPよりお申し込みください https://www.taiwanjapanese.url.tw/eacjs2024/ お問い合わせ:SGRA事務局([email protected]) ■ 開催趣旨 2019年12月、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が中国の武漢市から流行し、多くの死者が出て全世界的なパンデミックを引き起こした。人と物の流れが遮断され、世界経済も甚大な打撃を受けた。この出来事によって、私たちは東アジアの歴史における疫病の流行と対処の仕方、また治療、予防の医学知識はどのように構築されていたか、さらに東アジアという地域の中で、どのように知の連鎖を引き起こして共有されたかということに、大きな関心を持つようになった。会議では中国、台湾、日本、韓国における疫病の歴史とその予防対策、またそれに関わる知識の構築と伝播を巡って議論をする。 ■ プログラム 〔第1部 報告〕 報告1 李尚仁(中央研究院歴史語言研究所)「コロナから疫病史を考え直す――比較史研究はまだ可能であろうか」 報告2 朴漢珉(東北亜歴史財)「清日戦争以前朝鮮開港場の検疫規則」 報告3 松村紀明(帝京平成大学)「幕末から明治初期の種痘について」 報告4 町泉寿郎(二松学舎大学)「感染症と東アジア伝統医学」 〔第2部 指定討論〕 討論1 市川智生(沖縄国際大学) 討論2 祝平一(中央研究院歴史語言研究所) 討論3 巫毓セン(中央研究院歴史語言研究所) 討論4 小曽戸洋(北里大学東洋医学総合研究所) 〔第3部 自由討論〕 ※プログラムの詳細は、下記リンクをご参照ください。 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/10/JTAFF11Program.pdf ※ポスター https://00m.in/xngrW ***************************************** ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方はSGRA事務局にご連絡ください。 https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ ********************************************* -
Invitation to the 11th Nittai Asia Future Forum “Epidemic and East Asian Medical Knowledge”
2024年10月17日 16:03:46
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「コロナから疫病史を考え直す――比較史研究はまだ可能であろうか」 コロナの大流行以降、このパンデミックに対する国々の対応策が異なっていることがメディアの報道とコメントの焦点になっていた。しかし、このような差異は今回のコロナの流行によって初めて発生したことではない。歴史的にみれば、実際たびたび起こっている。歴史学者のPeter_Baldwin は、一連の疫病の歴史を比較する著作において、この問題について、全面的な検討をした。拙稿は彼の著作を回顧しながら、彼の研究の問題意識は実はErwin_Ackerknecht の古典的な論文を誤読したことを指摘する。さらに、両者の比較研究の問題点と制約を検討することによって、英国と台湾のコロナに対する対応の差異を例として、これらの差異の歴史的な淵源を探求し、また疫病の比較史研究を振り返ろうと思う。 9:30~9:50 報告2 朴漢珉(東北亜歴史財) 「清日戦争以前朝鮮開港場の検疫規則」 本稿では、日清戦争勃発以前、朝鮮政府が「朝鮮通商口防備瘟疫暫設章程」を制定した後、開港場で検疫規則を運営する過程で現れた改正問題が何だったかを検討した。開港場は船舶を利用した人と物資の移動を一次的に管理し統制できる関門だった。開港場を中心に感染症予防のための防疫活動をどのように展開し、各国とどのように協力していくかが核心的な問題だった。特に検疫問題に対して利害関係が最も大きくかかっていた当事国は朝鮮と日本だった。両国は臨時検疫規則を制定し運営する過程で、数回にわたって議論しながら立場を調整していった。 日本の元山領事と釜山領事は今後の改善が必要な事項を中心に意見を提示した。朝鮮の海関官員と居留地検疫委員の間の監督管理問題、検疫委員の人数拡大、入港後に船舶から発生した患者を避病院に移して治療する時にかかった経費をどのように処理するかなどがこれに該当する問題だった。仁川領事の林権助は朝鮮政府の検疫規則運営に対して不満と不信感を表わし、日本の利益に合うように検疫規則を新しく制定しなければならないと主張した。日本弁理公社の梶山鼎介は運営上の問題点を改善するために領事たちから意見を取りまとめ、建議事項に基づいて検疫規則改正案を用意した。しかし、検疫規則の改正は朝鮮をはじめ各国の外交官とも協議し、同意を得なければならない問題であった。したがって、朝鮮を相手にする検疫規則改正交渉が日本側の意図通り容易に行われないまま、日清戦争を迎えることになった。 9:50~10:10 報告3 松村紀明(帝京平成大学) 「幕末から明治初期の種痘について」 1874年(明治7年)に発布された「医制」は、日本で初めて医療制度や衛生行政に関する各種規定を定め近代日本の医療制度の方向性を示したとされ、これ以後、「医制」の趣旨を実現する方向で各種法令が制定され医療の近代化が進められて行った。しかしながら明治政府は、江戸時代末期から既に各地で実施されていた天然痘に対する予防接種=種痘に対しては、「医制」に先行する形で、1870年(明治3年)には「大学東校種痘館規則」(種痘館規則)、翌1871年(明治4年)には「東校中ニ種痘局ヲ設ケ規則ヲ定ム」(種痘局規則)などを定め、種痘技術や痘苗、そして施術者である種痘医の管理を試みている。これまでは、日本における医療制度の近代化は、「医制」や上記の種痘法令などによる明治政府の中央集権的な施策を中心に進められてきたと考えられてきた。その内実について、特に明治10年代までの民間主導で種痘が行われた岡山県や種痘医が不足していた千葉県における種痘実施の実情を紹介しながら、再検討する。 10:10~10:30 報告4 町泉寿郎(二松学舎大学) 「感染症と東アジア伝統医学」 中国の医事制度はどちらかと言えば為政者に奉仕することに主眼があるため、発病を回避するための日頃の健康管理や予兆を知る診断が重視された。流行性感染症の治療は、為政者のための医療と言うよりどちらかと言えば民間人のための医療の性格が強い分野であるが、季節性の流行性感染症の実態を政事主体が把握するという発想は中国古代からあった。また、国家が一般人向けの薬剤頒布所を設けることは宋代から行われている。古代に遡る流行性感染症とその治療法としては、後漢の『傷寒論』が先ず想起される。本来『傷寒論』は「傷寒」というある特定の流行性感染症に特化した治療法であったものが、読み継がれていく中で「傷寒」をすべての発熱性の流行病に当てはめるようになった。これは『傷寒論』が東アジア伝統医学に大きな意義を占めたことを意味するものであるが、半面では『傷寒論』の原型をとらえることを困難にしている面がある。「運気論」は宋代以降に流行し、金元医学の理論化にも寄与した。日本では15~16世紀にはよく読まれ、曲直瀬道三もこの理論に通暁し、17世紀を通して浸透した。 18世紀に入ると古学派・古方派の台頭とともに原典回帰傾向や陰陽五行論への不信感が強まり、「運気論」への関心は急速に低下する。そして、18世紀後半からには清国からの温疫学説伝入や新しい伝染病の蔓延によって、再び病気と天地の運行の相関関係への関心が高まり、再び「運気論」に注意する医家もでてきた。伝染病の原因を「天地間一種厲気」とする考えは明治期に及び、細菌学の発達による病原菌発見まで続く。「公衆衛生」という西洋由来の発想を東アジア世界に当てはめると、18世紀ごろまで下り(例えば、清・乾隆14年刊の『医宗金鑑』など)、洋学の影響をより具体的に検討する必要が生じる。一方で、公衆衛生に関する東アジア伝統医学の考え方としては「養生」=セルフケアの考え方が極めて古くから存在する。近代的な「公衆衛生」の考え方と、伝統的な「養生」の考え方をどこでどのように切り分けるのかは、東アジア伝統医学と「公衆衛生」を考えるうえでの論点となると思われる。 〔 第2部 指定討論 〕 10:40~10:50 討論1 市川智生(沖縄国際大学) 10:50~11:00 討論2 祝平一(中央研究院歴史語言研究所) 11:00~11:10 討論3 巫毓セン(中央研究院歴史語言研究所) 11:10~11:20 討論4 小曽戸洋(北里大学東洋医学総合研究所) 〔 第3部 自由討論 〕 11:20~12:00自由討論 12:00閉会挨拶 ※プログラムの詳細は、下記リンクをご参照ください。 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/10/JTAFF11Program.pdf ※ポスター https://00m.in/xngrW ------------------------------------------ 【2】寄贈本紹介 SGRA会員で奈良女子大学協力研究員の李暉さんから新刊書をご寄贈いただいたのでご紹介します。 ◆王南著、李暉監訳、岩谷季久子訳『北京古建築』上、下 万里の長城や北京故宮など、7つもの世界遺産を有する古都・北京の建築を詳説。外観・内観写真、立面・平面図等の建築図面に加え、古地図・古写真、壁画や仏塔、彫像の写真なども収載する圧巻のビジュアル。 【監訳者のことば】 李 暉(奈良女子大学大和・紀伊半島学研究所古代学・聖地学研究センター 協力研究員) 万里の長城・北京故宮・周口店の北京原人遺跡・頤和園・天壇・十三陵・大運河という、七つの世界文化遺産を有し、「都市計画における比類なき傑作」(梁思成)とも称される北京。日本の建築史家・伊東忠太は、北京の紫禁城と西苑を最初に測量した人物で、『中国建築史』などの著作には、北京古建築に関する多くの考察がある。また、常盤大定と関野貞による『中国文化史跡』は、多数の北京古建築を写真で記録するなど、近代以降の日本でも、中国とりわけ北京の建築に対する興味は尽きなかった。 本書は、その北京の建築を網羅的に取り扱った王南著『北京古建築』(中国建築工業出版社、2015年)の日本語版である。原著は全16章からなるが、本書はこのうち序論、紫禁城、壇廟・儒学、宮廷庭園、合院民居、仏教寺院、仏塔、道観とモスクという、とりわけ日本の読者が興味をもつと思われる8章を抜粋して再編集し、日本語へ翻訳したものである。原著者の王南氏は、北京古建築に関する多くの業績を有し、中国の清華大学建築学院において教鞭をとられている。原著が出版に至るまで、十数年にわたる北京古建築の現地調査の蓄積があったからこそ、北京古建築の全貌を読者に魅せることができたと思われる。 北京は、現在も中国の首都であるが、都としての歴史は、遼代(916~1125)の副都(燕京)、金代(1115~1234)の中都、元代(1271~1368)の大都まで遡る。明代(1368~1644)には永楽帝・朱棣が北京への遷都を機に中国江蘇省の大工集団を起用し、大規模な造営をおこなった。続く清代(1644~1912)も、北京を都として引き継ぎ、絶え間ない造営により現代に続く北京を造り上げたのである。紫禁城をはじめ、数々の皇族を象徴する建築が残されており、上記の章立てが古都北京の代表的な建築類型を捉えている。写真や図面を多数収録し、分かりやすく解説した本書によって、少しでも日本の読者が北京の古建築、またその背景にある中国文化を知っていただくことにつながれば、監訳者として嬉しい限りである。 出版社:図書刊行会 発売日:2024/05/31 判型:A4判 上製・カバー装 ISBN:978-4-336-07642-7 / ISBN 978-4-336-07643-4 ページ数:239 頁 Cコード 0052 定価:16,500円 (本体価格15,000円) 詳細は下記リンクをご覧ください。 上巻: https://www.kokusho.co.jp/np/isbn/9784336076427/ 下巻: https://www.kokusho.co.jp/buddhism/isbn/9784336076434/ ***************************************** ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方はSGRA事務局にご連絡ください。 https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 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GIGLIO “‘Ethnocentrism’ and ‘De-ethnocentrism’ in Religion ~On the Conditions of World Religions~”
2024年10月10日 11:38:50
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「自民族中心主義」とは、自分たちの育ってきたエスニック集団(族群)の言語と伝統文化や宗教などは基本的に自分たちのものだとか、自分たちにしか理解できないとか、万が一理解されてしまった場合、逆に嬉しくないとか、悔しいとか、大事なものを関係ない人たちに持っていかれてしまったとか、盗まれてしまったとかいう感覚のことだ。これは体験的な定義だ。文化人類学や社会心理学の世界では他にも定義が存在*している。 宗教の世界では、「自民族中心主義」の典型的な特徴はどのようなものなのか。私が触れた日本仏教の場合は次のような話になる。 特徴その一。世界のどこの人であろうと、日本語でお祈りしなければならない。日本の読み方でお経を唱えなければならない。本尊は仏像であれば、アジア人の顔をしている。文字曼荼羅(まんだら)であれば、漢字で書かれていて、何と書いてあるかすぐには分からない。バイリンガルと認められている私にとって、この点はむしろ好都合だが、そうでない外国人にとっては大変な壁だ。外国語で祈らなければならないことを受け入れられる人間は今の世界でもあまり多くない。 特徴その二。聖典(経典、宗祖の著作、後の歴代法主や学僧たちの注釈書)はすべて外国語に翻訳されているわけではなく、一部だけだ。多くの注釈書は翻訳されていないし、教団自体が翻訳させたくないと言っているケースすらある。理由は様々であろう。私が聞いているのは、「外国人には理解できないから混乱させてしまうかもしれない」というものだ。 特徴その三。海外でも教団のトップにはやはり日本人がいなければならず、外国人はあまりいない。その宗教が生まれ発展した人種の人しかその宗教のトップにはなれない。外国人がなるという可能性すらまだ考えづらい。 現代のキリスト教文化の西洋人には、これらはすべて自民族中心主義の典型的な特徴に思える。 このようなことを言っている者たちがいる(キリスト教文化の西洋人ではない者たちだ)。「自民族中心主義」とは西洋人たちが自己批判で考え出した概念で、西洋人でない者たちとは関係ない、と。西洋的な概念で、例えばアジア人の文化と歴史とは関係のないものだ、と。 私なら本能的にこう答えたくなる。人種の違いを乗り越えるということは、西洋的な概念だけなのだろうか。人種の違いを乗り越えるということは、平和的な人類に進んでいくための当然で自然なステップではないだろうか。 このようなことを言っている者たちもいる。我々の宗教も万人に開かれているよ、と。しかし、上記のような自民族中心主義的な特徴はそのまま残っている(その宗教が生まれ発展した人種の人たちと同じ言語で祈らなければならない、など)。 仏教文学関係の資料を日本人の研究者と同じやり方で日本語で研究してきた私は、日本の仏教者を名乗る一部の者たちに色々言われてきた。まだ仏教関係の難しいテキストを読めていなかった時は「あなたには難しいでしょう」と。読めるようになって研究上成果を出せるようになった時は急に変わって、このようなことを言われた:「日本的なものは日本人にまかせて、あなたは日本人たちがどのように日本的なものを研究しているか、それだけを研究してくれればいいんだ。イタリア語で。イタリアで」とか、「なんでこんなところに来るんだ?!あなたは他のところで違うこともできるはずなのに」とか、「日本的なものを日本人よりも理解できると言おうとしている。あなたはそう思われる」とか(意味について様々な解釈が可能であろう)。 私は博士号を取得するためにやっていただけで、西洋人として日本人の宗教者たちに何かを見せようなど、少しも思っていなかった。「西洋人」「日本人」という区別もしていなかった。区別していたというなら憧れていたからだ。一部の人にそのように思われていたと聞いた時は寝耳に水だった。 東アジアの仏教者たちが昔受けてしまったトラウマのようなものが関係しているかもしれない。19世紀末には、西洋人による現代的な仏教学研究が誕生する。「社会進化論」*と植民地主義の時代だ。この時代の、東アジアの仏教者に対する西洋の多くの学者の態度は次のようなものだったと言われる。仏教はインドで生まれた、と。元々インドヨーロッパ語族の人たちの宗教だ、と。つまり、我々西洋人の先祖たちの宗教だった、と。仏教はその後、インドから東アジアと東南アジアに移動し、これらの地域の異質な文化と混ざってしまい、変質した、と。よって、本当の仏教はインドの仏教だけだし、仏教の本当の本質はインドヨーロッパ語族の正当な継承者である我々西洋人たちにしか理解できないであろう*、と。東アジアの仏教者たちはこのような態度をとられて嫌な思いをされたであろう。ここは、その時代の西洋人たちが悪い。この歴史から考えれば、日本の仏教者を名乗る一部の者たちが私に言っていたことは理解できる。「なるほど、最初はそう思われるだろうな。仕方ないかもしれない」と。 私が日本で最初にお付き合いした方は、ご家族の信仰の関係で仏教者だった。今のキリスト教会は家庭事情があるのであればキリスト教以外の信仰も同時に持っていて良い。キリスト教を否定さえしなければパートナーの信仰も受け入れて、同時にやっていて良いということを許してくれる。他の宗教はどうか。 前ローマ法王ベネディクト16世はこのようなことまでおっしゃっていた。「東洋や、キリスト教以外の偉大な宗教に由来する本物の瞑想法の実践は、混乱している現代人にとって魅力的であり、祈る人が外的なストレスの中にあっても、内的な平安をもって神の前に立つことを助ける適切な手段となりうる」*と。 キリスト教以外にもこのような姿勢はあるのだろうか。東アジアの仏教者たちはキリスト教的な瞑想法の何かを取り入れようと考えたことがあるのだろうか。 キリスト教には他に、「聖霊降臨の神秘」という出来事がある。聖霊は十二人の使徒たちに下り、そうすると使徒たちは突然に世界の言語を色々と話せるようになる。聖霊は、世界の全ての言語で全ての人に福音を伝えてほしいと最初から考えておられるようだ。アラム語だけでなければならないことはない。へブライ語だけでも、ギリシャ語だけでも、ラテン語だけでなければならないこともない。これは最初から霊的な次元で決まっているはずで、使徒たちの言葉にも現れている。異邦人(外国人)とそうでない者とか、奴隷とそうでない者たちとか、もうそのような区別など存在しない*、と。 キリスト教の「脱民族中心主義」は最初から始まっているはずだが、歴史的に本格的に始まるのは、おそらく東西教会の分裂(11世紀)の時であろう。そこから東の教会(正教会)はラテン語と違う言語で色々とやり始める。正統派総主教ももちろん、ローマの人ではない。その次は宗教改革(16世紀)の時であろう。M.ルターは聖書をドイツ語に訳す。プロテスタント教会の誕生だ。ローマ教会では、まだラテン語以外の言語を使ってはだめだという時代だった。最後に、カトリックの世界では第2次バチカン公会議(1962年)の時代がやってくる。その時はカトリックの世界でも次のようになる。世界各国ではその国の言語でお祈りして良い。ラテン語でなくとも良くなる。ごミサや礼拝も、それぞれの国の言語で行ってもいい。聖書はもちろん、教父たちや聖人たちの著作も全て、世界の主な言語に翻訳される。今はアジア人やアフリカ人の枢機卿もいらっしゃるし、みな法王にもなれる。 このようにキリスト教の世界では「脱民族中心主義」は進んでいる。これこそ世界宗教であるための条件ではないか(私の中の「キリスト教文化の西洋人」の生の声だ)。 キリスト教以外の宗教も、世界宗教か海外での人間関係の拡大を目指すのであれば、キリスト教会の歴史上の様々な分裂と争い、自民族中心主義的な過ちの歴史から学び、似たような「脱民族中心主義」を成し遂げるように努力することをお勧めしたい。でないと、家庭事情や人間関係のような理由がなければ、現代のすべてのキリスト文化の西洋人にとって信仰として受け入れることがまだ難しいであろう。せっかく西洋の主な精神性では「脱民族中心主義」が進んでいるのに、再び異国の自民族中心主義的なものに魂のケアーを任せるのか。逆戻りではないか、と。 海外での人間関係の拡大や世界宗教を目指している各教団に告げたい。その目的を実現するということは、西洋も含め海外で何人もの信者を持てば良いだけの話ではない。現代のキリスト教文化の西洋人たちの感覚のことも慎重に考えていただきたい。そして、昔の西洋人たちと同じ過ちをしてほしくない。世界では、すぐには理解できない遠い言語で祈ろうとして、「自分はいったい何をやっているんだろう」と違和感を持ち続ける者たちもいる。「重要なテキストはまだすべて翻訳してくれているわけではないのか」と不信感までいだく者たちもいる。「結局、その教団のトップにはその教団が生まれ発展した人種の人たちしか行けないのか」と差別主義を疑う者たちすらいる。 私は、翻訳の点ではいつでも協力したい。 海外での布教と人間関係の拡大を考えている各教団のお役に立てればと願いつつ Giglio(ジッリォ), Emanuele(エマヌエーレ) Davide(ダヴィデ) 東京、2024年9月28日 *注釈は下記リンクをご覧ください。 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/10/2024-23Giglio_annotations.pdf 注釈付き本文は下記リンクからダウンロードしていただけます。 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/10/2024-23Giglio_essay-with-annotations.pdf <エマヌエーレ・ダヴィデ・ジッリォ Emanuele_Davide_GIGLIO> 渥美国際交流財団2015年度奨学生。2007年にトリノ大学外国語学部・東洋言語学科を首席卒業。外国語学部の最優秀卒業生として産業同盟賞を受賞。2008年4月から2015年3月まで日本文科省の奨学生として東京大学大学院・インド哲学仏教学研究室に在籍。2012年3月に修士号を取得。2014年に日蓮宗外国人留学生奨学金を受給。仏教伝道協会2016年度奨学生。2019年6月に東京大学大学院・インド哲学仏教学研究室の博士課程を修了し、哲学の博士号を取得。日本学術振興会外国人特別研究員。現在、身延山大学・国際日蓮学研究所研究員。医科大学にて哲学講師・倫理学講師・国際コミュニケーション講師。工科大学にて日本語講師。NHKバイリンガルセンター所属。 ------------------------------------------ 【2】寄贈本紹介 SGRA会員で都留文科大学准教授の閔東曄さんから新刊書をご寄贈いただいたのでご紹介します。 ◆閔東曄『植民地朝鮮と〈近代の超克〉:戦時期帝国日本の思想史的一断面』 三木清、高坂正顕、高山岩男、申南澈、金南天、朴致祐などの転換期を生きた知識人たちは、いかに「近代」と向き合い、それを乗り越えようとしたのか。戦時期日本で大きな影響力をもった「近代の超克」をめぐる議論を、同時代の植民地朝鮮との関係に焦点を当てて読み直し、一国史を超えた歴史意識を剔出する。抵抗か協力かという二元論的な枠組みを問いに付し、帝国主義の構造を再考する画期的な試み。 A5判/354ページ/上製 ISBN978-4-588-15139-2 C1022 価格5,500円 (消費税 500円) 発行年月2024年09月 詳細は下記リンクをご覧ください。 https://www.h-up.com/books/isbn978-4-588-15139-2.html ***************************************** ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方はSGRA事務局にご連絡ください。 https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ ********************************************* -
MAQUITO “ASEAN-Centricity in a Turbulent East Asia”
2024年10月3日 13:55:07
********************************************** SGRAかわらばん1033号(2024年10月3日) 【1】フェルディナンド・マキト「激動の東アジアにおけるASEAN中心性」 【2】コラム紹介:岩辺卓浩「『アジアの若者を育てる』渥美国際交流財団」 【3】SGRAカフェへのお誘い(10月5日、東京+オンライン) 「逆境を超えて:パレスチナの文化的アイデンティティ」(最終案内) *********************************************** 【1】第7回アジア未来会議円卓会議報告 ◆フェルディナンド・マキト「激動の東アジアにおけるASEAN中心性」 歴史的、文化的な理由から中国、日本、韓国、あるいは私が「北東アジア」と呼んでいる地域は、SGRAの地域イベントにおいて非常に積極的な役割を果たしてきました。これに触発され、今西さんや角田さんに励まされながら、東南アジアのより積極的な参加を強く進めてきました。2024年8月にバンコクで開催された第7回アジア未来会議では「東南アジアのレンズから世界を考える」シリーズの第2弾となる東南アジア円卓会議を開催。サブテーマは「激動の東アジアにおけるASEAN中心性」。問題提起として私は東南アジアの視点から、平川均先生(名古屋大学名誉教授)は北東アジアの視点から発表しました。 私は東南アジア諸国連合(ASEAN)中心性に関する伝統的な視点と、あまり伝統的でない視点を取り上げました。伝統的な考え方では、ASEANは対立する主要国を交渉のテーブルに集めて冷静に課題を議論させる能力を持っているとみなされます。これに対して私は、地理的なアプローチを採用したあまり伝統的ではない視点から、東南アジアと北東アジアを合わせた「東アジア」諸国の地理的な中心は、まさに南シナ海の荒波に見出すことができると指摘し、二つの概念化を検討しました。一つは小国と大国との間の紛争に焦点を当てた地政学的なもので、事例として西フィリピン海・南シナ海の対立を挙げました。もう一つは東アジアにおける二つの顕著な勢力、国境を越える地域統合と各国国内における地方分権化との間の対立に焦点を当てた「地経学」(ジオエコノミック:地政学的目的のために経済を活用すること)的なものです。 平川先生は東アジアが地域秩序を形成する上で直面している課題は100年前と似ているが、中国が日本に代わって大国になったという発言から始め、米中の覇権争いで経済分断(デカップリング)が進んでいることを指摘しました。ASEAN地域は、双方がお互いを自分たちの陣営に引き込もうとしている競争の場となっています。南シナ海におけるASEANの領有権紛争は中国の「二国間交渉」により、ASEAN加盟国の中心性と結束に深刻な課題を投げかけています。もしASEAN諸国がばらばらに地経学的なアプローチをとると、アジアの地域開発の基盤が損なわれることになります。 平川先生は最後に、ASEAN中心性はASEANだけに任せるべきではなく、東アジアで地域公共財として確立した様々なレベルでの国際協力の枠組みを維持するために、地域メンバー国の努力が必要であると強調しました。これは中国を含む東アジア諸国が平和と繁栄の中で共に生き続けるための前提条件となるでしょう。ウクライナでの戦争が北大西洋条約機構(NATO、ウクライナを支援する米国も含む)とロシアの2つの陣営に分かれる中、東アジアがグローバルサウスへの道を模索するインドと協力することも重要でしょう。ASEAN中心性の枠組みの下で、中国と率直な対話を行うことを忘れてはなりません。中国もルールに基づく国際秩序を守り、ソフトパワーの台頭として世界における威信を高めるように行動すべきでしょう。 続いて行われた討論では、キン・マウン・トウエ氏が、ミャンマーはASEAN中心性にどのように参加できるかという問題を提起しました。私はASEAN中心性の2つの地理的概念化(地政学的および地経学的)が、ミャンマーを含む地域紛争の解決策を示しており、ASEANは依然として中心的な役割を果たすことができると説明しました。フィリピン大学放送大学の講座では、このASEANの中心的な役割を地方自治体や地域コミュニティと他国のカウンターパートとの接続「LLABS*」と名付けました。 *LLABS= Local-to-Local_Across_Border_Scheme モトキ・ラクスミワタナ氏(早稲田大学)は、世界銀行の研究が示すように、タイ政府は確かに地方分権化に慎重な動きをしており、最近はさらに慎重になっていることを確認しました。ジャクファル・イドルス氏(国士舘大学)は東アジアにおける権威主義の縮小を呼びかけ、ASEANにとって機能してきた原則の一つが、加盟国の地域問題への不干渉であることを思い出させました。マンダール・クルカーニ博士(GITAM人文社会大学)は、とても良くまとまった統計資料を共有しながら、インドと東アジアの間の強力な経済関係を確認しました。 ポーランドからの参加者による「なぜこの会議に中国人がいないのか」というコメントに対しては、日本に住んでいる中国人研究者と一緒に開催したセミナーを紹介しました。この第37回SGRA共有型成長セミナー「東アジアダイナミックス」のレポートは下記リンクよりお読みいただけます。 https://www.aisf.or.jp/sgrareport/KKKSeminar37/KKK37Report.pdf 日本にいる中国人は「日本化」されているという私の観察も共有しました。この円卓会議は東南アジアからの観点が中心で、北東アジアの観点は平川先生が十分に触れてくださったと思います。会議が始まった時には参加者がとても少なくて心配しましたが、休憩後には部屋がいっぱいになりました。次回は最初から多くの人に来ていただけるようにしたいと思います。 今回のアジア未来会議の開会宣言で、明石康大会会長は「すべての地政学的な断層線が現在活発化しているように見える」とおっしゃいました。ウクライナ-ロシアと中東の「断層線」が挙げられたので、南シナ海-西フィリピン海の「断層線」についても言及してくださるのを待っていましたが、残念ながら「その他」にグループ化されてしまいました。「ASEAN中心性」を検討する円卓会議の主催者として、次のアジア未来会議ではもっと「東アジアの断層線」について議論できる場を増やせたらと思います。 最終日の夜にはアジア未来会議の成功だけでなく、渥美国際交流財団の30周年も祝うためにラクーン(渥美奨学生のこと)たちの集まりがありました。おそらく日本国外に拠点を置く最年長の私は、中締めを頼まれました。短い挨拶の中で、集まってくれた若い仲間たちに今回のAFC7のテーマ「再生と再会」を思い出してもらい、これは私たちに対しても可能な限りの手段を使ってお互いに「再接続」し「再活性化」するための呼びかけであることを強調しました。 これまでに、ジャクファルさんはフィリピン大学放送大学の講座でインドネシアの農村企業について講義してくれました。ラムサル・ビカスさんは鹿島建設での研究開発活動について講演するためにロスバニョスまで来てくれました。台湾の梁蘊嫻さん(元智大学)には、台湾の国父であり中華人民共和国では革命の父である孫文(1866~1925)の地価税に対する見解について話してくれる人を探していただきました。モトキさんには、次の円卓会議で講演する可能性のあるタイの研究者の推薦をお願いしています。言うまでもなく、皆さんが再びつながることをとても温かく受け入れてくれました。第8回アジア未来会議の仙台での再会を楽しみにしています。 祝賀会はフィリピンを訪れることを楽しみにしてくれている全振煥さん(鹿島建設)に手伝ってもらい盛大な三本締めで終わりました。みなさんと再会できてとても嬉しかったです。 当日の写真は下記リンクをご覧ください。 https://www.aisf.or.jp/sgra/plan/photo-gallery/2024/19654/ <フェルディナンド・マキト Ferdinand_C._MAQUITO> SGRAフィリピン代表。SGRA日比共有型成長セミナー担当研究員。フィリピン大学ロスバニョス校准教授。フィリピン大学放送大学提携教員。フィリピン大学機械工学部学士、Center_for_Research_and_Communication(CRC:現アジア太平洋大学)産業経済学修士、東京大学経済学研究科博士、テンプル大学ジャパン講師、アジア太平洋大学CRC研究顧問を経て現職。 ------------------------------------------ 【2】コラム紹介 SGRA編集委員の岩辺卓浩さんが「経済記者_シニアの眼」に投稿されたコラムをご紹介します。 ◆岩辺卓浩「『アジアの若者を育てる』渥美国際交流財団」 今年8月、東京より涼しいバンコクで開かれたシンポジウム「第7回アジア未来会議」で、高齢の元外交官が大勢の若者に囲まれ、写真撮影をせがまれていた。 明石康氏(93)。国連事務次長やカンボジア暫定統治機構(UNTAC)特別代表として紛争地域を駆け巡った外交官だが、30年も昔の話でメディアに登場する機会は少ない。しかし、緊張感が強まるアジアで、国際関係を学ぶ若者らにとっては「レジェンド」だ。明石氏と3日間も行動を共にする中で、「こんな『温かい地下水の流れ』を大事にしたいね」と深夜まで若者たちと話し込む姿に驚かされた。 【顔の見える奨学支援】 その明石氏が顧問を務め、アジアを中心とした留学生を支援する「公益財団法人渥美国際交流財団」(渥美直紀理事長)は今春、設立30周年を迎えた。 続きは下記リンクをお読みください。 http://blog.livedoor.jp/corporate_pr/archives/61810762.html ------------------------------------------ 【3】SGRAカフェへのお誘い(最終案内) 下記の通り第22回SGRAカフェを会場及びオンラインのハイブリット方式開催いたします。参加をご希望の方は、会場、オンラインの参加方法に関わらず事前に参加登録をお願いします。 テーマ:「逆境を超えて:パレスチナの文化的アイデンティティ」 日 時:2024年10月5日(土)11:00~12:30(その後懇親会) 方 法:会場(渥美財団ホール)及びZoomウェビナー https://www.aisf.or.jp/jp/map.php 言 語:日本語 お問い合わせ:SGRA事務局([email protected]) 申 込:下記URLよりお申し込みください https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_SsqWHHpAQOqxQnvEiOVYAw#/registration ◇開催趣旨 第20回SGRAカフェ「パレスチナについて知ろうー歴史、メディア、現在の問題を理解するために」(2024年2月3日、渥美財団ホール)と第73回SGRAフォーラム「パレスチナの壁:『わたし』との関係は?」(6月25日、昭和女子大学)に続き、「パレスチナを知ろう」シリーズの締めくくりとして、最後のイベントを開催します。これまでは国際政治やパレスチナ問題の現状に焦点を当ててきたことを踏まえ、今回は文化、文学、芸術にスポットライトを当てます。 パレスチナに関するニュースは戦争や紛争に偏りがちですが、パレスチナ人には逆境の中で形成された独自で多様な文化的アイデンティティがあります。パレスチナの文学や芸術は民族が国家を奪われ、自決権を認められず、土地や文化の喪失を経験してきた中で、「故郷」をどのように捉えているかを映し出しています。パレスチナの芸術や文学がいかにして平和的な抵抗の手段となり、抑圧や占領に対抗する一つの形となっているのかについても探求します。メディアでは語られることのないパレスチナの別の側面をご紹介し、このシリーズがポジティブな視点で終わることを目指します。 ◇プログラム 11:00-11:05 開会 進行:シェッダーディ アキル(慶應義塾大学) 11:05-12:05 講演 講師:山本薫(慶應義塾大学) 12:05-12:30 質疑応答・ディスカッション オンラインQ&A担当:銭海英(明治大学) ◇講師紹介 山本薫 Kaoru_YAMAMOTO 慶應義塾大学総合政策学部准教授。東京外国語大学博士(文学)。専門はアラブ文学。パレスチナをはじめとするアラブの文学・映画・音楽などの研究・紹介を行う。近刊に「パレスチナ・ガザに響くラップ」島村一平編著『辺境のラッパーたち―立ち上がる「声の民族誌」』青土社、アダニーヤ・シブリー『とるに足りない細部』(翻訳)河出書房新社。 ◇講師からのメッセージ 2023年10月7日にガザ地区からイスラエル領内への奇襲が行われたことへの報復として、パレスチナ人へのジェノサイドが開始されてからもうすぐ1年になります。しかし、イスラエルによる攻撃はパレスチナ人の生命・財産に対するものにとどまりません。19世紀末に始まるユダヤ人のパレスチナへの組織的入植の目的は、ユダヤ人国家イスラエルを建設してパレスチナのアラブ人を追放するだけでなく、その存在の歴史的記憶を抹消することにもありました。そのためパレスチナ人の闘争は、自分たちの生命・財産を守り、正当な権利を回復するための政治的・軍事的・経済的・法的な闘いであるだけでなく、歴史と記憶をめぐる闘いでもあり、その点において文化はきわめて重要な役割を果たしてきたのです。本イベントでは、パレスチナ人が文化を通じて自分たちの歴史的存在とその人間的価値を証明してきた歩みをご紹介します。 ※プログラムの詳細 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/09/SGRACafe22ProgramV4.pdf ※ポスター https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/09/SGRA22poster-scaled.jpg ***************************************** ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方はSGRA事務局にご連絡ください。 https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ ********************************************* -
YEH Wenchang “Is ‘Walking Smartphone’ Evil?”
2024年9月26日 13:15:55
********************************************** SGRAかわらばん1032号(2024年9月26日) 【1】SGRAエッセイ:葉文昌「『歩きスマホ』は悪か?」 【2】SGRAカフェへのお誘い(10月5日、東京+オンライン) 「逆境を超えて:パレスチナの文化的アイデンティティ」(再送) *********************************************** 【1】SGRAエッセイ#774 ◆葉文昌「『歩きスマホ』は悪か?」 新テクノロジーが出るたびに、世の中では是か非かの論争が起こる。携帯電話が普及した頃は電車内の通話問題、最近では歩きスマホ問題だ。 日本では車内の携帯通話は悪である。会話は良いのに、なぜ携帯はだめなのだろうか?2000年代の新聞で、会話は対話が聞こえるから不快にならないのに対し、通話は片方だけ聞こえるから不快に感じるのが禁ずる根拠という専門家の意見を見たのを覚えている。日本では車掌による懸命な肉声アナウンスによって、日本人の「マナー」は大変良くなった。最近でも私が路線バスで小声で着信通話していたら運転手に「車内での通話はお止めください」とアナウンスされたことからして、車内通話が悪であることは健在のようだ。人は環境に順応して聞きたくない音を無視することができるはずなので、本当にこれで良いのか? 車内通話禁止により生じたおかしな例として、2000年代に東京に行った時のエピソードを紹介する。女性が電車内で通話をしていた。声を抑えていたので気にならなかったが、向かい席のお酒片手の酩酊中年男二人組が通路越しに大声で、「電車の中では通話しちゃだめじゃないのか」と絡む。女性は無視してかたくなに通話し続けていたが、男たちの執拗な絡みにたまりかねて席を移動してしまった。心の中で酔っ払いに屈するなと応援していたので残念である。「あなた達の声と酒の方が迷惑だ」と言いかけたが、車内通話は明らかな悪なのだから女性の分が悪いことになるのだろう。 一方で台湾はどうか?録音による放送だったせいか、誰も気にせずに通話し放題で、マナーの悪さが目立っていた。当時の携帯の音質の悪さが、大声での通話に拍車をかけていた。しかしその後のスマホの飛躍的進化で、今では車内通話で迷惑に感じることはなくなった。普通の会話でも声を大きくすれば不快になる。「車内通話は悪」とまでする必要はあったのだろうか。新技術によって出たマナー問題を、技術やマナーが進化する前に規制すると、その規制は地縛霊のように居付いてしまう。 スマホにまつわるもう一つの困った規制は、シャッター音である。日本ではスマホで撮影する時は、シャッター音を出すよう規定されている。盗撮防止のために、技術の進化に逆らって音を出しているのである。日本と韓国以外では、スマホカメラは音が出ないのが常識。だから海外で静粛が求められる場面で写真を撮ると、「なんでスマホでわざわざ音出すの?」と周りから白目を向けられて恥ずかしい思いをする。さらに犯罪現場で犯人を撮影すれば事件に巻き込まれるリスクもある。アプリを入れたり、海外でスマホを買ったりすれば音は出ないが、生活している日本でシャッター音が出ないスマホを使えばやましいことをしていると思われるのでやりたくない。 ちなみに台湾の通勤電車MRTでは規制がないわけではなく、シンガポールに見習って飲食とガムは厳格に禁止されている。マナーは各人の良識にゆだねるべきなので窮屈に思ったが、90年代に台湾の満員通勤バスでの飲食で他人への迷惑と車内が不潔になっていたことからして、規制はやむを得ないと思う。車内飲食規制は、より普遍的だと思う。 続いて最近の「歩きスマホは悪」とみなされる風潮である。私の所属する組織では、キャンパス内で「歩きスマホ」する学生を見かけたら注意するよう通達がきた。理由は「危ないから」とのことである。「歩きスマホ」とは、歩きながら視覚メディアによる情報摂取である(「歩き情報摂取」と言おう)。「歩き情報摂取」の日本での大先輩は二宮金次郎で、今でも多くの小学校で薪を背負って歩きながら読書に没頭する彼の銅像が勉学のアイコンとして立っている。地図を見ながら歩く観光客も「歩き情報摂取」だ。「歩きスマホはいけない」と言っている人たちは観光地で紙地図は使わないのだろうか?二宮金次郎の銅像を見てクレームしたことがあるのだろうか?紙は良くてスマホはだめというのは、新テクノロジーに対する拒否反応だと思う。 学生の「歩きスマホ」に対する教員の注意の呼びかけには戸惑った。危険性は認識しているので私は「没入型情報摂取」はしないが、スマホで時間は見る、地図は見る、メッセージ着信があれば確認する、だから「歩きスマホは悪」とされては困るのだ。キャンパスで「歩きスマホは悪」になれば、一時期流行ったポケモンGoのような拡張現実もできなくなる。歩いてスマホをすれば年寄りから「いけないよ!」と注意が来るような窮屈なキャンパスに若者は集まるのだろうか?キャンパスでも歩道でも、子供でも障がい者でも安心安全に歩けることを目指すべきなので、「ながらスマホ」で歩行者がとがめられるのは本末転倒であり、「私はこれからも歩きスマホはします」宣言をさせてもらった。 ちなみにここ2-3年は「ながら自転車」も頻繁に見かけるようになった。私は若者の「ながら自転車」を見かければ、「他人にぶつけたら将来が大変だぞ」と注意している。他人に危害を加える可能性があるので、「歩きスマホ」とは次元が違う。これこそに注意を促すべきだろう。歩行者は他人に危害は加えないので、自己責任であるはずだ。 <葉文昌(よう・ぶんしょう)YEH Wenchang> SGRA「環境とエネルギー」研究チーム研究員。2001年に東京工業大学を卒業後、台湾へ帰国。2001年国立雲林科技大学助理教授、2002年台湾科技大学助理教授、2008年同副教授。2010年4月より島根大学総合理工学研究科物理工学科准教授、2022年より教授。 ------------------------------------------ 【2】SGRAカフェへのお誘い(再送) 下記の通り第22回SGRAカフェを会場及びオンラインのハイブリット方式開催いたします。参加をご希望の方は、会場、オンラインの参加方法に関わらず事前に参加登録をお願いします。 テーマ:「逆境を超えて:パレスチナの文化的アイデンティティ」 日 時:2024年10月5日(土)11:00~12:30(その後懇親会) 方 法:会場(渥美財団ホール)及びZoomウェビナー https://www.aisf.or.jp/jp/map.php 言 語:日本語 お問い合わせ:SGRA事務局([email protected]) 申 込:下記URLよりお申し込みください https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_SsqWHHpAQOqxQnvEiOVYAw#/registration ◇開催趣旨 第20回SGRAカフェ「パレスチナについて知ろうー歴史、メディア、現在の問題を理解するために」(2024年2月3日、渥美財団ホール)と第73回SGRAフォーラム「パレスチナの壁:『わたし』との関係は?」(6月25日、昭和女子大学)に続き、「パレスチナを知ろう」シリーズの締めくくりとして、最後のイベントを開催します。これまでは国際政治やパレスチナ問題の現状に焦点を当ててきたことを踏まえ、今回は文化、文学、芸術にスポットライトを当てます。 パレスチナに関するニュースは戦争や紛争に偏りがちですが、パレスチナ人には逆境の中で形成された独自で多様な文化的アイデンティティがあります。パレスチナの文学や芸術は民族が国家を奪われ、自決権を認められず、土地や文化の喪失を経験してきた中で、「故郷」をどのように捉えているかを映し出しています。パレスチナの芸術や文学がいかにして平和的な抵抗の手段となり、抑圧や占領に対抗する一つの形となっているのかについても探求します。メディアでは語られることのないパレスチナの別の側面をご紹介し、このシリーズがポジティブな視点で終わることを目指します。 ◇プログラム 11:00-11:05 開会 進行:シェッダーディ アキル(慶應義塾大学) 11:05-12:05 講演 講師:山本薫(慶應義塾大学) 12:05-12:30 質疑応答・ディスカッション オンラインQ&A担当:銭海英(明治大学) ◇講師紹介 山本薫 Kaoru_YAMAMOTO 慶應義塾大学総合政策学部准教授。東京外国語大学博士(文学)。専門はアラブ文学。パレスチナをはじめとするアラブの文学・映画・音楽などの研究・紹介を行う。近刊に「パレスチナ・ガザに響くラップ」島村一平編著『辺境のラッパーたち―立ち上がる「声の民族誌」』青土社、アダニーヤ・シブリー『とるに足りない細部』(翻訳)河出書房新社。 ◇講師からのメッセージ 2023年10月7日にガザ地区からイスラエル領内への奇襲が行われたことへの報復として、パレスチナ人へのジェノサイドが開始されてからもうすぐ1年になります。しかし、イスラエルによる攻撃はパレスチナ人の生命・財産に対するものにとどまりません。19世紀末に始まるユダヤ人のパレスチナへの組織的入植の目的は、ユダヤ人国家イスラエルを建設してパレスチナのアラブ人を追放するだけでなく、その存在の歴史的記憶を抹消することにもありました。そのためパレスチナ人の闘争は、自分たちの生命・財産を守り、正当な権利を回復するための政治的・軍事的・経済的・法的な闘いであるだけでなく、歴史と記憶をめぐる闘いでもあり、その点において文化はきわめて重要な役割を果たしてきたのです。本イベントでは、パレスチナ人が文化を通じて自分たちの歴史的存在とその人間的価値を証明してきた歩みをご紹介します。 ※プログラムの詳細 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/09/SGRACafe22ProgramV4.pdf ※ポスター https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/09/SGRA22poster-scaled.jpg ***************************************** ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方はSGRA事務局にご連絡ください。 https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ ********************************************* -
Invitation to the 22nd SGRA Cafe “Beyond Adversity: Palestinian Cultural Identity”
2024年9月19日 17:49:14
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パレスチナに関するニュースは戦争や紛争に偏りがちですが、パレスチナ人には逆境の中で形成された独自で多様な文化的アイデンティティがあります。パレスチナの文学や芸術は民族が国家を奪われ、自決権を認められず、土地や文化の喪失を経験してきた中で、「故郷」をどのように捉えているかを映し出しています。パレスチナの芸術や文学がいかにして平和的な抵抗の手段となり、抑圧や占領に対抗する一つの形となっているのかについても探求します。メディアでは語られることのないパレスチナの別の側面をご紹介し、このシリーズがポジティブな視点で終わることを目指します。 ◇プログラム 11:00-11:05 開会 進行:シェッダーディ アキル(慶應義塾大学) 11:05-12:05 講演 講師:山本薫(慶應義塾大学) 12:05-12:30 質疑応答・ディスカッション オンラインQ&A担当:銭海英(明治大学) ◇講師紹介 山本薫 Kaoru_YAMAMOTO 慶應義塾大学総合政策学部准教授。東京外国語大学博士(文学)。専門はアラブ文学。パレスチナをはじめとするアラブの文学・映画・音楽などの研究・紹介を行う。近刊に「パレスチナ・ガザに響くラップ」島村一平編著『辺境のラッパーたち―立ち上がる「声の民族誌」』青土社、アダニーヤ・シブリー『とるに足りない細部』(翻訳)河出書房新社。 ◇講師からのメッセージ 2023年10月7日にガザ地区からイスラエル領内への奇襲が行われたことへの報復として、パレスチナ人へのジェノサイドが開始されてからもうすぐ1年になります。しかし、イスラエルによる攻撃はパレスチナ人の生命・財産に対するものにとどまりません。19世紀末に始まるユダヤ人のパレスチナへの組織的入植の目的は、ユダヤ人国家イスラエルを建設してパレスチナのアラブ人を追放するだけでなく、その存在の歴史的記憶を抹消することにもありました。そのためパレスチナ人の闘争は、自分たちの生命・財産を守り、正当な権利を回復するための政治的・軍事的・経済的・法的な闘いであるだけでなく、歴史と記憶をめぐる闘いでもあり、その点において文化はきわめて重要な役割を果たしてきたのです。本イベントでは、パレスチナ人が文化を通じて自分たちの歴史的存在とその人間的価値を証明してきた歩みをご紹介します。 ※プログラムの詳細 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/09/SGRACafe22ProgramV4.pdf ※ポスター https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/09/SGRA22poster-scaled.jpg ---------------------------------------------------------------- 【2】 第7回アジア未来会議INAF円卓会議報告 ◆齋藤光位「円卓会議『東アジア地域協力における朝鮮半島の統一と開発協力』報告」 2024年8月10日(土)にバンコクのチュラーロンコーン大学で開催され、11名の専門家が登壇した。朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)は東アジア経済協力の枠組みに入っていない状況だが、今後は東アジア地域協力の枠組に参加して総合的な経済開発を推進できるかという問題意識の下、現状認識と課題の整理を行い、実現性について議論した。 第1セッション「北朝鮮経済の現状と開発戦略および政策」は東北亜未来構想研究所(INAF)所長の李鋼哲氏が司会を務めた。 最初に韓国輸出入銀行・北韓開発センター研究員の姜宇哲氏が「北朝鮮経済に関する多面的分析」という問題提起を行った。北朝鮮の現状を把握するためには、韓国の推定資料、国際機関の調査資料、脱北者のインタビューなど様々な資料を多面的に分析する必要があるとして、経済成長、貿易、食料生産、分野データなどを分析。今後の開発協力の可能性を示唆し、北朝鮮に対する制裁は国民の人道的状況を悪化させるので国際社会は再考すべきと主張した。 新潟県立大学北東アジア研究所教授の三村光弘氏(INAF常任理事)は「朝鮮民主主義人民共和国の統一、対外政策の変化と今後の開発見通し」という問題提起を行った。大韓民国(韓国)との関係に対する認識が敵対国へと変化する一方で、北朝鮮がロシアとの「包括的戦略パートナーシップ条約」に署名したことなど、ここ1年間の対外関係の変化に着目。北朝鮮は世界の多極化の進行を西側諸国とそれ以外の国々の対立の深化と捉えて「新冷戦」と表現しているが、この表現は、北朝鮮が膠着する米朝関係改善にすべての力量を投入するのではなく、新興国グループBRICSや国連加盟の発展途上国からなる「77ヶ国グループ」(G77、現在の加盟国は134)など、米国をメンバーとしない国際協力の枠組みを重要な協力対象としているようにみえる。北朝鮮メディアで使用される表現の分析から、北朝鮮はこの多極化について肯定的な立場であると述べた。今後、部分的な対外開放を行う可能性があるが、その際には海外直接投資の受け入れ制度の大枠については変更せず、対象を絞りながら進めていくのではないかと述べた。 指定討論では齋藤光位と柳学洙・九州市立大学准教授、川口智彦・日本大学准教授(INAF副理事長)、伊集院敦・日本経済研究センター首席研究員が発言した。 齋藤は北朝鮮が発表し国営企業の国家予算に動員する資金の増加率の推移に注目しながら、対朝制裁とコロナによる影響によって企業の生産活動が萎縮するなかで、平壌と地方の開発を進める資金の見通しを立てた要因の一つとしてロシアとの関係強化が考えられると述べた。柳氏は北朝鮮の経済開発戦略は一貫して「自力更生」の理念に基づいており、これを具現化するために「均等原則」、「近接原則」を推進してきたと述べ、北朝鮮の経済開発方式は、ほかの国が経験してきたパターンとは異なっている点を強調した。川口氏は一次資料を使用して、生産されている武器を挙げながら、経済開発の源泉として朝ロ関係の強化に伴い、対露ミサイル輸出が近年では活発化していると指摘した。伊集院氏が各発表者に対してそれぞれ質問した後、会場との質疑応答で活発な議論が展開された 第2セッション「周辺諸国と北朝鮮の経済関係と開発協力の可能性」は川口氏が司会を務めた。 李鋼哲氏は「北朝鮮の開発と日本・中国の経済支援と投資の可能性」という発表で、朝鮮半島の安定のカギは北朝鮮の国際社会への復帰とともに経済開発であり、北アジア地域諸国にとって非常に重要な課題であると強調。北朝鮮の経済開発において日本と中国は最も重要な役割を担っているとして、日本は2002年の日朝壌宣言過去の朝鮮半島に対する植民地支配の反省と経済的支援を取り上げた。また、中国は朝鮮戦争以来、現在も対北朝鮮経済協力の最大のプレーヤで、北朝鮮が本格的に改革・開放政策を進める場合にはアジア投資インフラ銀行(AIIB)からと中国企業からの投資がパイオニア的な役割を果たすことになると述べた。 伊集院氏は「東アジア地域協力における朝鮮半島の統一と開発協力」という発表で、東北アジアにリスクを軽減しながら経済関係を維持するという「デリスキング」の波が広がっており、その背景は米中の戦略競争の激化で同盟国との連携を軸に経済的強靭性の強化に注力し、先端技術管理などの経済安保政策やサプライチェーン協力などが柱になると分析。この地域は米中を軸とした経済安保の最前線に位置するため分断が深まるリスクが大きく、経済面のリスク・コミュニケーションや適切な競争管理も必要になると主張した。 指定討論では、エンクバヤル新潟県立大学教授(INAF副理事長)、朱永浩福島大学教授(INAF理事)、金崇培釜慶大学助教授、林泉忠東京大学特任研究員の4名が発言した。 エンクバヤル氏は、モンゴル経済はコロナ禍でもV字回復しているが、対外貿易の相手は中国とロシアで鉱業輸出に依存しているため、外的ショックに極めて脆弱であると指摘。朱氏は、国連の対北朝鮮制裁が継続し、コロナによって中朝経済関係は「停滞」しているが、中国にとって中・蒙・ロの経済回廊に朝鮮半島が加わることは東北アジア地域協力の推進に重要であり、そのためには中国東北部と北朝鮮の間の陸上輸送と日本海経由の海上輸送を結び付けるために日韓両国の関わりが不可欠であると強調した。 金氏は、日本は北朝鮮の核・ミサイル問題に対して唯一の被爆国家として核問題政策が必要であり、さらに日朝平壌宣言への回帰を行い、日米関係において同盟国家として米国を誘導し、米朝関係の改善に向けて動く必要があると述べた。林氏は、本円卓会議のキーワードの一つである「朝鮮半島の統一」問題に着目し、台湾海峡を挟んだ両岸の統一問題との比較を試みた。まず、南北朝鮮は長い間、互いに「民族の統一」を掲げてきたが、金正恩総書記は2023年12月に韓国を敵対国視し、南北統一を否定した。一方、方法こそ異なるが、両岸も同じく「国家統一」を1990年代初めまで互いに掲げていたにも関わらず、民主化と本土化の波を受け、台湾は次第に統一に対して否定的な立場に変わってきた。朝鮮半島も両岸も民族や国家の統一は、近い将来において望めないばかりか緊張関係が続いていくだろう、と述べた。会場との質疑応答では、自由闊達な議論が展開された。 最後に李所長が閉会の挨拶で、北朝鮮の経済開発および東北アジア地域協力問題に関して関係諸国の専門家たちが、様々な角度から議論できたことは、とても有意義な時間であったとし、東北アジア地域の平和と繁栄に向けて今後とも多面的に議論しよう締めくくった。 <齋藤光位(さいとう・みつえ)SAITO_Mitsue> 2021年3月福島大学経済経営学類経済学研究科(修士)卒業。2022年2月東北亜未来構想研究所(INAF)研究員。2023年3月に韓国の北韓大学院大学博士課程に入学。学会発表は「朝鮮民主主義人民共和国における「市場化」の概念の再考(韓国語)」(2023年9月、北東アジア学会第29回学術大会)、「金正恩時期における軽工業政策-食料品工業を中心に―」(2024年5月、北東アジア学会拡大関東地域研究会)他。 ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方はSGRA事務局にご連絡ください。 https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ ********************************************* -
YUN Jaeun “Songs Echo across the Sea”
2024年9月12日 12:31:42
********************************************** SGRAかわらばん1030号(2024年9月12日) 【1】SGRAエッセイ:尹在彦「海を越え歌は響き渡る」 【2】国史対話エッセイ紹介:唐小兵「まぐれ当たりの歴史学習の道」 ********************************************** 【1】SGRAエッセイ#773 ◆尹在彦「海を越え歌は響き渡る」 YouTubeのアルゴリズムは、個々人を特定の情報空間に閉じ込めるという問題点(いわゆる「フィルターバブル」)があるが、個人的にはそれほど抵抗はない。その閉じられた空間が「意外と広い」ということもあるからだ。YouTubeの「おすすめ」に表示されるものは「再生回数稼ぎ」のための低レベルの動画ばかりではなく、知識の面で有益な情報も少なくない。最近は有名YouTuberではない人の動画も表示されたりする。アルゴリズムも批判を意識し、それなりに進化しているのだ。 2024年6月26、27日、日韓の交流サイト(SNS)で同時に話題になる出来事があった。K-POP女子アイドル「NewJeans(ニュージーンズ)」が日本で初めての公式イベントを東京ドームで開催し、そこで披露した一曲が大きな関心を集めた。1980年代に一世を風靡した松田聖子が歌った「青い珊瑚礁」(1980年)だ。44年前の名曲が、K-POPアイドルによりカバーされたことで、日韓両国のファンたちが熱く反応した。数多くの動画が既にYouTubeにアップロードされていた。 NewJeansは2022年7月にデビューした女子5人のアイドルグループ。韓国だけでなく多国籍メンバーで構成されており、「青い珊瑚礁」で注目されたのはベトナム系オーストラリア人のメンバー(ハニ)だった。男子アイドルBTSと同じ事務所(「HYBE」)の傘下に属しているが、「レトロ」「イージーリスニング」を標榜した点から若年層だけでなく、やや上の年代までファン層を広げている。 NewJeansの日本上陸を受け、YouTubeで関連する動画や反応を調べてみた。ファンたちがアップしたとみられる「直撮」(韓国アイドル界隈で使われる用語で、「ファンが現場で撮った動画」)の動画が多数見られた。そこでYouTubeのアルゴリズムが新たな動画の存在を教えてくれた。日本人女性たちが韓国のテレビ番組で「青い珊瑚礁」を歌う動画だ。再生回数は既に100万回に迫っており、かなり注目されていることが分かるが、私にはなじみのない番組だった。 タイトルは「韓日歌王戦」(日本版は「日韓歌王戦」)。日韓それぞれのオーディションを勝ち抜いた14人が両国の「古き良き時代の歌」を披露し、競い合う番組だ。審査員として松崎しげるなど両国の大物歌手が出演していた。 YouTubeには「韓日歌王戦」で歌われた多くの名曲がアップロードされていた。最初は意識していなかったが、段々とある変化もしくは事実に気付かされた。これまで韓国のテレビ番組で「日本の歌」が「日本語」で堂々と歌われたことがなかったということだ。MBNは「総合編成チャンネル」で、ケーブルチャンネルだが地上波テレビ局と編成の面で大差はない(ニュースやバラエティー番組が放映できる)。放送に関係する法律などで日本の歌が禁止されているわけではないが、これまでは「暗黙のルール」がそれを阻んできた。今回、その見えないタブーの一部が崩れた。私はかつて同テレビ局の系列会社(新聞社)で働いていたので内部を取材したことがあるが、政府の(暗黙の)了解は必要だった。 一説によると「韓日歌王戦」で歌われた「青い珊瑚礁」は、NewJeansのプロデューサー(もしくは所属事務所の代表)の選曲の参考になったという。原曲になかった振り付けがそのままNewJeansのコンサートで取り入れられたのが根拠だ。「韓日歌王戦」動画のコメント欄も興味深い。歌を純粋に楽しむコメントが多く、そこに国境は見られない。この番組は放送時間帯視聴率1位を記録した。単純に日本の歌が韓国のテレビ局で歌われた以上に有意義な結果を残したのだ。日本側の出演者の一人は歌唱力が韓国で大きな話題になり、長きにわたった無名歌手としての人生が報われたということで、日本のフジテレビで取り上げられた。 同番組の人気を受け、続編「韓日トップテンショー」も放映中だ。最近は日本での「韓流の先駆け」とも呼ばれた桂銀淑が舞台に立ちヒット曲を日本語で歌った。コメント欄には昔の彼女の歌声を覚えている日本のファンたちの反応も少なくない。韓国では近年、日本のいわゆる「シティ・ポップ」が再発見され「はまった」という人も増えている。 コロナ禍が立ちはだかった両国間の文化交流は再び活発化している。メディア界では合作プロジェクトが続々とスタートした。少なくとも文化では「タブーなき享受」が長らく続くことを願う。 <尹在彦(ユン・ジェオン)YUN_Jaeun> 立教大学平和・コミュニティ研究機構特別任用研究員、慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所非常勤講師。2020年度渥美財団奨学生。新聞記者(韓国)を経て、2021年一橋大学法学研究科で博士号(法学)を取得。国際関係論及びメディア・ジャーナリズム研究を専門とし、最近はファクトチェック報道や、国際人権規範と制度化などに関心を持っている。 ---------------------------------------------------------------- 【2】国史対話エッセイ紹介 9月2日に配信した国史対話メールマガジン第57号のエッセイをご紹介します。 ◆唐小兵「まぐれ当たりの歴史学習の道―私は如何に新聞学から歴史研究へ切り替えたか」 私はずっと自分は史学界のマージナル・マンだと思っている。私の研究分野である現代中国思想文化史よび知識人史も、歴史研究に身を投じた過程も、主流あるいは一般的な正規教育・訓練によるものではかった。このようなマージナル・マン的なアイデンティティは、多少の焦慮と緊張をもたらすとは言、私に他者として二つあるいはそれ以上の学科の間を行き来し、互いに参照する可能性を広げてくれた。 私は2001年に理工学科を中心とする大学である湖南大学の人文社会学科系新聞専攻を卒業した。卒業後、私は当時大多数のクラスメートのように人気のある新聞メディア業界に就職せず、地方にある師範学院の新聞学科で教鞭を執り、中国新聞事業史および新聞取材学などの専門的な授業を担当していた。当時の私は、教鞭を執り、恋をしながら著名な大学の新聞学科の入学試験を受けるつもりであった。しかし、とある文章が私の運命を変えた。 大学卒業後、私はたびたび衡陽から長沙まで行って大学のクラスメートの会合に参加し、大学に残って行政の仕事をしている大学のクラスメート葉鉄橋氏が住んでいた大学の安アパートに遊びに行った。岳麓山に登ったり、夜食を楽しんだり、トランプ遊びをしたりするほか、よく長沙の定王台にある様々な本屋を巡った。ある日、私は湖南図書城(訳者註:本屋名)で偶然一冊の黒書(黒を基調としたカバーの書籍)『別の啓蒙』と出会った。著者は中国思想史と知識人史研究で著名な学者の許紀霖教授である。当時、私は許教授の学問と人生を理解できなかった。大学の4年間、私は文芸創作に熱中する典型的な文芸青年であり、先生の指導を受けなかったので、思想文化史や現代の知識人に対する関心はなかった。しかし、私はこの本の主題や品格に心惹かれた。 全文は下記リンクよりお読みください。 https://www.aisf.or.jp/sgra/kokushi/J_Kokushi2024TangXiaobingEssay.pdf ※SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。国史メルマガは毎月1回配信しています。SGRAかわらばんとは別にお送りしますので、ご興味のある方はSGRA事務局にご連絡ください。3言語対応ですので、中国語、韓国語の方々にもご宣伝いただけますと幸いです。 ◇国史メルマガのバックナンバー https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ◇購読登録ご希望の方はSGRA事務局へご連絡ください。 [email protected] ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方はSGRA事務局にご連絡ください。 https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ ********************************************* -
KOYAMA Koki “Current Status and Prospects of Japanese Studies in Thailand”
2024年9月5日 17:09:33
********************************************** SGRAかわらばん1029号(2024年9月5日) 【1】AFC7円卓会議報告:香山恆毅「タイにおける日本研究の現状と展望」 【2】国史対話エッセイ紹介:安岡健一「歴史と私」 ********************************************** 【1】第7回アジア未来会議円卓会議報告 ◆香山恆毅「タイにおける日本研究の現状と展望」 2024年8月10日(土)午前9時から、チュラーロンコーン大学文学部にて開催された円卓会議では、タイにおける「日本語、日本語教育、日本文学、日本文化」に関する研究の特徴が報告された。タイで発表された学術論文のデータベースを基にしたものである。その後、これらの研究を後押しする二つの学術協会の役割、活動内容、研究の特徴の紹介があった。 まず、「日本語・日本語教育・日本文学」に関する研究の全体傾向について、チュラーロンコーン大学文学部教授のカノックワン先生から報告があった。(1)過去11年間(2012-2022年)にタイで発表された外国語・外国文学に関する論文の中で、日本語に関するものは350本あり、英語1077本、中国語682本に次いで、3番目に多い。(2)日本語教育分野の論文が多いこと、タイ語で書かれた論文が多いことなどが特徴。(3)2018-2019年は論文数が特に多い。この時期は国による大学教員昇進基準の改定時期と重なる。(4)2015年以降、日本語で書かれた論文が減少した。 「日本語および日本語教育」研究の現状については、タマサート大学教養学部教授のソムキアット先生から報告があった。(1)過去29年間(1994-2022年)にタイで発表されたこの分野の学術論文数は528本。(2)日本語教育に関する研究(教室活動、実践研究など)の割合は2012年頃までは増えていたが、その後は減る傾向にある。翻訳の研究は2008年頃から始まっている。(3)研究方法は、アンケートが最も多く、5年毎の平均で24-39%だが、客観的な方法(テスト、コーパスの利用)や、インタビューなども取り入れられるようになっており、今後も研究の質の向上が期待できる。 「日本文学」研究については、タマサート大学教養学部准教授のピヤヌット先生から報告があった。(1)過去29年間(同上)にタイで発表されたこの分野の論文および図書は152件。最も多いのは作品分析で、約9割を占めている。(2)対象作品の時代区分は、現代(関東大震災以降)が約4割、中世(鎌倉時代から安土桃山時代)が約2割を占めている。(3)現代文学研究が多い理由は日本語で比較的容易に読めることや、タイ語翻訳版が多いことなどが考えられる。中世文学研究が多いのは「仏教」に関係したテーマがあり、タイに仏教徒が多いことが考えられる。 学術協会の紹介では、最初にタイ国日本研究協会(JSAT)会長であるチュラーロンコーン大学文学部准教授のチョムナード先生から、「タイにおける日本の社会と文化研究の現状と課題―JSATの視点から」と題して報告があった。(1)タイの日本研究者の集まりは1980年代後半から始まり2006年に組織化、2011年に学会誌『jsn』を発刊、2013年に協会名をJSATに改名し、現在に至っている。(2)活動の目的は日本研究者同士の意見交換や研究成果の共有など。(3)活動内容は年次学術大会、ワークショップ、オンラインセミナーの開催や、年2回の学会誌刊行など。(4)日本の社会・文化研究の特徴は、現代に関する文献・資料研究が多いことや、フィールドワーク調査が少ないことなどである。 二つ目の学術協会の紹介では、タイ国日本語日本文化教師協会(JTAT)アドバイザーであり、元カセサート大学人文学部准教授のソイスダー先生から報告があった。(1)タイの日本語教師会は2003年に設立され、2009年にタイ国日本語日本文化教師協会となった。(2)活動目的は学術的な意見、教授資料、教授法や経験の共有など。(3)活動内容は、教師向けに年3回のセミナーや年2回の短期訪日研修などがある。学生向けには、ドラマコンテストや輪読会(ビブリオバトル)などを開催。(4)2024年には「第1回タイ国日本語教育国際シンポジウム」を開催し、基調講演で生成(ジェネラティブ)AI時代の言語教育を取り上げ、質的な教師の育成を支援している。 最後の質疑応答では、初めてタイを訪れた方が、バンコクの町中に日本語の看板があることを取り上げ、日本語教育の状況や教科書について質問。登壇者からは、大学では中上級レベルの市販教科書と自作教材を併用している、との回答があった。また、日本語学科がある高校もあり、国際交流基金バンコク日本文化センターが開発した教科書が主に使われ、高校卒業時に同基金などが運営する日本語能力試験(JLPT) N4レベル(基本的な日本語を理解できる)相当の内容を学んでいるとの説明があった。他にも日本の環境への取り組みに対する関心や、タイ国内外の学術協会との交流などについて質問があり、学際的、国際的な話題について活発に議論された。 当日の写真は下記リンクをご覧ください。 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/09/AFC7RTReport-Japan-Studies-in-Thailand-LITE.pdf <香山恆毅(こうやま・こうき)KOYAMA_Koki> チェンマイ大学人文学部日本語講師。東京都立大学工学部建築工学科卒業。日本およびタイにて建築施工管理(1995-2011年)。チュラーロンコーン大学文学部修士課程外国語としての日本語コース修了(2015年)。 ---------------------------------------------------------------- 【2】国史対話エッセイ紹介 5月31日に配信した国史対話メールマガジン第57号のエッセイをご紹介します。 ◆安岡健一「歴史と私」 研究に関連する場での自己紹介に、いつもひと手間かかるのは、私の学位が農学博士だからだ。これは私が農学部の農業経済を学ぶコースに含まれている、農業史を研究する研究室の出身であることによる。日本に農学部はたくさんあるが、農業史を掲げた研究室は片手で数えられるほどしかない。そういう少し変わった経歴である。 文学部を卒業して大学院で農業史の研究室に来る人も中にはいるが、私の場合は学部時代から農学部に所属している。つまり、高校では理系を選択していたのだ。当時の日本で理系を選択すると、ほとんどの場合、中学校の社会科を終えた後は、高校一年生で世界史を学ぶのが生徒として歴史を学んだ最後となることを意味する。それ以外に歴史的なものへの関心といえば、中学生になったころに漫画の影響で明治維新に関心を持ち司馬遼太郎の作品を読んでいたくらいだった。それは歴史への関心というより、人間の生き方への関心に近いものだっただろう。また、私が生まれた場所は市街地で、新たな住民が多く住む場所だったので、昔ながらの共同性を通じて地域史に触れるといったこともほぼなかった。 近現代の文学を読むのは好きだったから文系に転換しようと思ったこともあったものの、物理や化学が面白かったのと、入試科目としての歴史の問題に目を通して、これはかなわないと思ってギブアップしたというのが実情だ。そんな自分が高校歴史教科書の一部を執筆することになり、人生はわからないものだなと思っている。 全文は下記リンクよりお読みください。 https://www.aisf.or.jp/sgra/kokushi/J_Kokushi2024YasuokaEssay.pdf ※SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。国史メルマガは毎月1回配信しています。SGRAかわらばんとは別にお送りしますので、ご興味のある方はSGRA事務局にご連絡ください。3言語対応ですので、中国語、韓国語の方々にもご宣伝いただけますと幸いです。 ◇国史メルマガのバックナンバー https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ◇購読登録ご希望の方はSGRA事務局( [email protected] )へご連絡ください。 ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方はSGRA事務局にご連絡ください。 https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************