SGRAメールマガジン バックナンバー

  • Invitation to the Nikkan Asia Future Forum #20 “Progressive K-Culture”

    ********************************************* SGRAかわらばん917号(2022年4月14日) ********************************************* 第20回日韓アジア未来フォーラムへのお誘い 下記の通り日韓アジア未来フォーラムをオンラインにて開催いたします。参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。聴講者はカメラもマイクもオフのZoomウェビナー形式で開催しますので、お気軽にご参加ください。SGRAフォーラムはどなたにでもご覧いただけますので、ご関心をお持ちの方にご宣伝いただけますと幸いです。 ◆テーマ「進撃のKカルチャー:新韓流現象とその影響力」 日時:2022年5月14日(土)15:00~17:00 方法: Zoomウェビナー による 言語:日本語・韓国語(同時通訳付き) 主催:(公財)渥美国際交流財団関口グローバル研究会[SGRA] 共催:(財)未来人力研究院(韓国) 申込:下記リンクよりお申し込みください https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_Gsv7xgH3R-GFJled06s0BA お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ■フォーラムの趣旨 BTSは国籍や人種を超え、一種の地球市民を一つにしたコンテンツとして、グローバルファンダムを形成し、BTS現象として世界的な注目を集めている。一体BTSの文化力の源泉をなすものは何か。BTS現象は日韓関係、地域協力、そしてグローバル化にどのようなインプリケーションをもつものなのか。本フォーラムでは日韓、アジアの関連専門家を招き、これらの問題について幅広い観点から議論してみたい。日韓の基調報告をベースに討論と質疑応答を行う。 ■プログラム 司会:金雄煕(キム・ウンヒ、仁荷大学教授) 【開会挨拶】:今西淳子(いまにし・じゅんこ、SGRA代表) 第1部:講演 【講演1】「文化と政治・外交をめぐるモヤモヤする『眺め』」 小針進(こはり・すすむ、静岡県立大学教授) 【講演2】「BTSのグローバルな魅力」 韓準(ハン・ジュン、延世大学教授) 【休憩】 第2部:討論 【ミニ報告】「ベトナムにおけるKポップ・Jポップ」 チュ・スワン・ザオ(Chu_Xuan_Giao、ベトナム社会科学院文化研究所上席研究員) 【講演者と討論者の自由討論】 金賢旭(キム・ヒョンウク、国民大学教授) 平田由紀江(ひらた・ゆきえ、日本女子大学教授) 第3部:質疑応答 ZoomウェビナーのQ&A機能を使い質問やコメントを視聴者より受け付けます アシスタント: 金崇培(キム・スンベ、釜慶大学日語日文学部准教授) 金銀恵(キム・ウンヘ、釜山大学社会学科准教授) 【閉会挨拶】:徐載鎭(ソ・ゼジン、未来人力研究院院長) プログラムは下記リンクからご覧ください。 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2022/04/J_JKAFF20_program.pdf ポスターは下記リンクからご覧ください。 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2022/04/JKAFF20poster_light.jpg 韓国語版サイトは下記をご覧ください。 https://www.aisf.or.jp/sgra/korean/2022/04/08/jkaff20/ ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************
  • SGRA Cafe #17 “Ukrainians Beyond Borders” Report

    ********************************************* SGRAかわらばん916号(2022年4月7日) 【1】第17回SGRAカフェ「国境を超えたウクライナ人」報告 【2】フスレ編著『21世紀のグローバリズムからみたチンギス・ハーン』 ********************************************* 【1】第17回SGRAカフェ報告 ◆三宅綾「第17回SGRAカフェ『国境を超えたウクライナ人』報告」 2022年3月21日20時から1時間半にわたり、第17回SGRAカフェ「国境を超えたウクライナ人」がZoomウェビナーで開催されました。今回のカフェは、奇しくもロシアによるウクライナ侵攻開始と同じ2月に発行されたばかりの『国境を超えたウクライナ人』(2022年、群像社)の著者であり、2004年度渥美奨学生でもあるオリガ・ホメンコさんを講師にお迎えして、著作からウクライナとウクライナ人の歴史、文化的背景まで幅広くお話しいただきました。オリガさんは風邪で体調がすぐれない状態でしたが、最後まで情熱をもってお話しくださいました。当日は以前からオリガさんと親交の深い群像社編集発行人の島田進矢さんにゲスト、中央大学教授の大川真先生にコーディネーターとして参加いただきました。 最初に司会の今西淳子SGRA代表よりオリガさんの渥美奨学生当時の懐かしい写真、最初の著作『ウクライナから愛をこめて』(2014年、群像社)の元となったメールマガジン「SGRAかわらばん」(毎週木曜日に日本語で配信)への長年にわたるウクライナに関する投稿や最新作の内容とともにオリガさんの紹介がありました。続いてオリガさん、島田さんから短いご挨拶をいただいた後、『国境を超えたウクライナ人』執筆の経緯や「国境」、「超える」がキーワードとなった経緯について対談していただきました。 オリガさんからはウクライナの歴史と文化、ウクライナ人の精神的背景について日本との関わりも交えてお話しいただきました。特にウクライナのたどってきた歴史や置かれてきた状況についての話は、日本ではほとんど知られていない事ばかりで、物事や状況を多方面から見て考えることの大切さと、与えられる情報だけではなく、自ら知ろうとする事の大切さを教えられるものでした。これまでの支配のトラウマを乗り越え、今まさに自分たちの事を語り始めようとしているウクライナの方々の気持ちがオリガさんを通じて切々と伝わってきました。 最後に大川先生が参加者からの質問やコメントを紹介し、オリガさん、島田さん、今西さんの4人でお話しいただきました。ウクライナでは自由な自己表現ができなかった時代から詩人と作家がウクライナの主張を伝える上で大きな役割を果たしてきたという説明がありましたが、その作品は必ずしもウクライナ語で表現されるものだけではないという指摘が印象的でした。 自分たちの言語はもちろん大切にするべきものだが、それがアイデンティティの全てではなく、大切なのは意識であり、文化であるということ、ウクライナのアイデンティティは歌、刺繍、踊り、生活習慣、生活風土などいろいろなものを含むとても豊かなものであることを理解してもらいたいし、それを通じて自己表現していくことが大切であるというオリガさんの一貫した主張が心に響きました。そういう意味でも、オリガさんの著作はウクライナを理解するうえで素晴らしい案内役ではないでしょうか。そして、ただ心を痛めるだけではなく、自ら知ろうとすること、多面的に考えようとすることの大切さが分かっているようで分かっていなかったことに気づかされました。 カフェの参加者からは、ウェビナーを通じてオリガさんにお話しいただいた事への感謝とオリガさんの気持ちに寄り添おうとする温かい応援がたくさん寄せられました。厳しい状況の中、また体調が万全ではない中で、力強いメッセージを伝えてくださったオリガ・ホメンコさんに改めて感謝いたします。 下記リンクより当日の写真とオリガさんの著書の紹介をご覧いただけます。 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2022/04/cafe17photos.pdf 下記リンクよりアンケートの集計をご覧ください。アンケートに書いてくださったオリガさんへのメッセージは直接お渡ししました。 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2022/04/cafe17questionnaire.pdf <三宅綾(みやけ・あや)MIYAKE Aya> 東京都出身。博物館学修士(ジョージワシントン大学)、哲学修士(美術史系)(学習院大学)。独立行政法人科学技術振興機構(JST)(現・国立研究開発法人科学技術振興機構)勤務を経て2020年より渥美国際交流財団に勤務。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】寄贈書紹介 SGRA会員で昭和女子大教授のボルジギン・フスレさんから編著書をご寄贈いただきましたのでご紹介します。 ◆ボルジギン・フスレ編『21世紀のグローバリズムからみたチンギス・ハーン』 日蒙で開かれた国際シンポジウムの成果。歴史・社会・政治・文化など最新の研究からチンギス・ハーンとその時代を再評価。 --------------- チンギス・ハーンとモンゴル帝国について、かつてはさまざまな偏見や誤解がくりかえされ、歪曲、誹謗もされていた。近年、とりわけ1990年代以降、チンギス・ハーンとモンゴル帝国に対する認識は変わりつづけ、研究、論著の面で大きな成果がえられ、画期的な展開をみせてきた。チンギス・ハーンとその騎馬軍団の挑戦は世界を揺るがしたと同時に、アフロ・ユーラシアの交流の道を大きくひらいたことは、今では、国際的に共通の認識になっている。上記シンポジウムはモンゴルという小さな遊牧の民が、いったいどのような熱情にかられてこのような奇跡をなしとげ、はじめて「ユーラシア」とよびうる歴史的空間を創り出すことができたのか、そのなぞに迫ること、そして21世紀のグローバリズムからチンギス・ハーンとモンゴル帝国、およびその遺産を再評価し、創造的な議論を展開することを目的とした。 (フスレ「まえがき」より) 発行所:風響社(アジア研究報告シリーズNo.8) 出版年月日:2022/02/20 ISBN:9784894898080 判型・ページ数:A5・302ページ 定価:本体3、500円+税 詳細は下記リンクをご覧ください。 http://www.fukyo.co.jp/book/b601071.html ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************
  • YUE Qu “Fragmented Memories about My Study in Japan”

    ********************************************* SGRAかわらばん915号(2022年3月31日) 【1】エッセイ:楽曲「日本留学断想」 【2】国史対話エッセイ「趙珖『私の歴史研究』」紹介 ********************************************* SGRAエッセイ#701 ◆楽曲「日本留学断想」 帰国まで1週間しかない。4年余りの留学生活をいかにまとめたらよいのか実に難しい。記憶ほど曖昧なものはない。時の流れにつれて常に変わっていく。過去の真実を求めようとすれば、曖昧な記憶に頼るよりもむしろ当時の記録を振り返った方が確実かもしれない。 日本語の訓練として、来日からずっと随想のようなものを書き続けてきた。4年間の留学生活の縮図として、3つを選んでみる。 ------------------------ ◇2017.09.27(来日から2週間) 雨が降りそう。いや、もう降っているかもしれない。風に揺られて、部屋のガラスが一日中カラカラと響き続けていた。しかしそれでも、空気がなおよどんでいるままで、暑さは少しも減っていない。 加藤周一の本があまりにも分かりにくい。気分転換として、一旦本を置いて魚屋さんに向かった。本当にいい店だ。決して安くはないが、ものは新鮮でしかも種類が豊か。今月はもうお金に余裕がない。残りの数日をうまく過ごすために、あまり贅沢してはいけないはずだが、結局誘惑に負けて、たくさんの食材を買った。後日のために、この初めての「爆買」の内容を書き留めておく。 真鯛の頭、赤エビ、カニコロッケ、大アサリ、白貝、ムール貝、秋鮭、シシャモ、イワシの唐揚げ。 冷蔵庫にはまだ前日に買ったアサリ、手羽先、甘エビ、豚ステーキが残っている。これで楽しい1週間が過ごせそうだ。食生活の豊かさに対し、勉強の方は全く進んでいない。入学試験まで4カ月しかない。早く軌道に乗らないと。 ◇2018.03.02(博士課程入学1カ月前) 本日分の翻訳が終わった(『溝口健二著作集』の翻訳をしていた)。溝口を訳し始めてからもう1カ月以上経ったのに、全然上達していない。このペースでは原稿の締切に間に合わない。明日から翻訳の時間を増やさないと。 『枕草子』の写本を読み終えた。どれだけの時間をかかったのかもう分からない。くずし字とは言え、遅すぎる。「新潮古典」の注釈も届いた。やはりもう1回読み直した方がいい。 ところで、今日は本当に天気がよかった。雲ひとつなく、日差しがぽかぽかでいい気分だった。散歩にうってつけな天気だけど、未完成なことがたくさん残っているので、気楽に出かけるわけにはいかない。すべてが終わったら湖と山に行きたい。 ◇2019.02.12 学問の意味は何だろう。損得を問わずに真理を求めること自体が意味のあることだけど、学者たちの努力によってそれを一般人の生活に役立たせることも重要だろう。人々に影響を及ぼすためには、文章の論理性よりもむしろ感性的な働きかけがより有効だ。そのために、論理性の面では少し弱いかもしれないが、鈴木大拙は日本人の精神や世界を構成する全てのものを「霊性」の一点をもって説明しようとした。さらに彼は「霊性」を「大地性」という感性的な表現と結びつけて、ますますその感化力を上げた。あの時代の論著にはこうしたものが多かったような気がする。実際鈴木氏はこの論を通して仏教、特に禅宗の魅力をとても効果的に欧米に伝えた。目的が達成した以上、正確性や論理性はもう二次的なものでしかない。このようなことは、鈴木氏ほどの学者はもうとっくに分かっていたはずだ。こうして見れば、主観的(感性的)な学問もそれなりの意味があるのだろう。 ------------------------ 買い物、勉強、思考、季節の景物を楽しむ。こうしているうちに4年間はあっと言う間に過ぎ去った。今日になっても、さまざまなことに対する試行錯誤は依然として続いているが、この充実した4年間のおかげで、未来の研究や生活に自信を持つようになった。日本からもうすぐ離れる現時点の願いといえば、ただひとつ。今回の別れは終わりではなく、もうひとつの始まりとなるように。 <楽曲(がく・きょく)YUE Qu> 2021年度渥美奨学生。早稲田大学大学院文学研究科日本語日本文学専攻(博士)、北京師範大学文学研究科比較文学と世界文学専攻(修士)、南京師範大学文学部国家文系センター専攻(学士)。2022年9月より北京師範大学文学院専任講師。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】国史対話エッセイのご紹介 2月26日に配信した国史対話メールマガジン第38号のエッセイをご紹介します。 ◆趙珖「私の歴史研究」 私の正しい誕生日は1945年8月15日だ。しかし、私の出生記録簿には、1945年8月10日と誤って記録されている。この間違いは、私の伯父が私の出生届を出す過程で日付を間違って記録したためだと両親は言った。だから家の中でずっと守ってきた私の誕生日はいつも8月15日だった。東アジアで歴史学を勉強する人は、おそらくこの日の意味をすでに知っているだろう。1945年8月15日は、朝鮮が日帝から解放された日であり、中国は勝利を宣言した。そして、日本が長い戦争を終えた終戦の日だからだ。 その後の私の子供時代は、朝鮮戦争と政治的混乱期だった。私はあの時、戦争による爆撃と死の現場を通り過ぎて、経済的廃墟を直接経験した。そのように戦争の記憶をありありと持っている中学生時代に起きた1960年の4?19革命で、私は自発的にデモ隊に飛び込んだ。私の時代が私に一種の政治訓練をさせてくれたからだった。そして1960年代以降本格的に進められた近代化過程の光と影を観察することもできた。成人後に経験した民主化運動の過程も、直接間接的に関与した経験がある。このような生き方を反芻してみると私は現代史の渦巻きの真ん中に位置していたと言える。 続きは下記リンクからお読みください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kokushi/J_Kokushi2022ChoKwangEssay.pdf ※SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。国史メルマガは毎月1回配信しています。SGRAかわらばんとは別にお送りしますので、ご興味のある方は下記より登録してください。3言語対応ですので、中国語、韓国語の方々にもご宣伝いただけますと幸いです。 ◇国史メルマガのバックナンバーおよび購読登録は下記リンクをご覧ください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ********************************************* ★☆★お知らせ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************
  • Husel “Exploring the Bastion of the Mongol Invasion”

    ********************************************* SGRAかわらばん914号(2022年3月24日) ********************************************* SGRAエッセイ#700 ◆ボルジギン・フスレ「元寇防塁探訪」 私は元寇防塁の調査のため、2021年12月24日から29日にかけて福岡に行ってきた。 モンゴル帝国の第5代ハーン、大元ウルス第1代皇帝フビライ・ハーンが高麗を征服後、日本に「通好」を求めて5回にわたって使者を派遣したが、鎌倉幕府に拒否された。そのため、高麗軍なども含むモンゴル帝国の軍隊が1274(文永11)年と1281(弘安4)年に2度も日本に侵攻した。鎌倉幕府はモンゴル帝国の軍隊の侵攻に備えて、九州各地の御家人に命じ、西の今津から東の香椎まで博多湾の海岸沿い約20キロにわたる石塁を築かせた。遺跡の一部は今もこれらの地域に残されており、いわば「元寇防塁」である。 福岡に着いた翌12月25日、私はまず早良区西新の元寇防塁を調査しに行った。12月25日といえばクリスマス。福岡の街のどこでもクリスマスの雰囲気に包まれている。西新駅を出た際、元寇防塁の場所を確認するため駅員に尋ねた。駅員は元寇防塁についてあまり知らなかったが、非常に熱心な方で、「“ゲンコウボウルイ”って建物ですか、遺跡ですか」と私に聞いた。「遺跡ですよ。“蒙古襲来”の時に造ったもの」。 元寇防塁が分からなかったら、蒙古襲来は分かると思い、日本の教科書に取り上げられている「蒙古襲来」という表現を使った。「あー、そうか」とその方は改札口の駅員室に入って、ほかの2名の駅員にも確認した後、地図を持ってきて「1番出口を出て、サザエさん通りに沿って最初の十字路を左に曲がって…」と行き方を詳しく説明してくれた。どうやら、元寇防塁はあまり知られていないが、「サザエさん通り」といったら誰もが知っているようだ。実は、1番出口の案内板には「西新3、6、7丁目元寇防塁跡」「サザエさん発案の地記念碑(サザエさん通り)」とも書かれている。 西新6、7丁目の元寇防塁の一つは西南学院大学1号館の館内にある。しかし、私がその1号館に着いた時、館内の元寇防塁の見学は月曜日から金曜日までの9:00~17:00に限られていることをはじめて知った。看板に書かれている。この日は土曜日であり、しかも大学は冬休みに入っていたのか、1号館の前でどうにか中に入ろうと数分間ウロウロしても、一人も見かけなかった。1号館を後にして、大学体育館南側の元寇防塁を訪れた。 まず目に入ったのは元寇神社であった。隣に建てられた記念標柱には「史蹟 元寇防塁 昭和6年10月建設」と刻まれている。その横に発掘された防塁が展示されている。南側にはさらに3本の木が植えられ、それぞれに「良子女王殿下御手植公孫樹」、「久邇宮殿下御手植樟」、「開院宮春仁王殿下 梨本宮守正王宮殿下奉臨記念樹」と刻まれている。後で資料を調べて知ったのだが、この元寇神社では毎年10月20日の祭典が慣例行事になっているそうである。 元寇防塁は1931(昭和6)年に日本政府に国の遺跡として指定された。この昭和初期の元寇防塁に対する発掘・復元の運動と次に述べる明治時代の元寇記念碑建設運動は、その時代の日本の大陸進出という政策と密接な関係があったのはまちがいない。 その後、西区にある生の松原(いきのまつばら)の元寇防塁を訪ねた。下山門駅を降りて、駅員に元寇防塁の場所について確認した。駅員は同地域の元寇防塁のことをよく知っており、地図で行き方を詳しく説明してくれた。道中、「生の松原元寇防塁」と書かれている看板(福岡市教育委員会が建てたものも含む)が複数あったので助かった。生の松原の森のなかには、元寇防塁の記念標柱が建てられており、「史蹟 元寇防塁 文部大臣指定 史蹟名勝天然記念物保存法ニ依リ 昭和6年3月建設」と刻まれている。また、海岸沿いには高さ2メートルほどの防塁が積みあげられ、その真ん中の位置、防塁から数メートルほど離れたところには「蒙古襲来絵詞」の一部が複刻された展示板が建てられている。防塁は復元されたものではあるが、迫力があって思いを馳せると興味は尽きない。 12月26日、私は元寇史料館に行った。東公園の一角の2階建ての建物である。1階はラーメン屋と焼鳥屋などになっており、史料館なるものは実際2階のみ。同史料館には専任の職員がおらず、隣の売店の方が兼務されているそうである。史料館を見学するのには、事前に電話で予約しなければならない。実際、私は1カ月前(11月)から何度も電話をかけたが、なかなか繋がらず、2週間前のある日、やっと連絡が取れた。史料館に着いた時、入り口は施錠されており「予約の方は売店へお知らせください」という手書きの紙が貼られている。私は売店に行って説明した。その方が予約者の名簿らしいものを確認して、名前が確かに書かれていると言い、鍵を持って史料館のドアを開けてくれた。「撮影は禁止、見学時間は30分以内」という説明を受けて入館料を支払い、見学した。 元寇史料館の奥の展示室には、モンゴル軍の鎧兜、鐙、壺、弓のほかに、「蒙古襲来絵詞」の一部も展示されている。2階に入ったところの「広い」(奥の展示室よりは広い)フロアも展示室になっている。しかし、ここはなんと日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦、日蓮宗史などのコーナーで構成されている。史料館で購入した本によると、同館は1904(明治37)年に元寇記念館として設立、のちに東公園内の日蓮聖人銅像護持教会の敷地に移築され、1986(昭和61)年に元寇史料館として再オープンしたそうである。 史料館の隣に高さ10.55メートル、重さ74.25トンの日蓮聖人銅像が聳え立っている。1888(明治21)年、日本では元寇記念碑建設運動が起こった。1887(明治20)年に作成された元寇記念碑建立を呼び掛けるポスターによると、当初は、北条時宗の騎馬像をモチーフにした像の建立が計画されていたそうである。結局、17年間かけて1904年に完成したのはこの日蓮聖人銅像である。1904年といえば日露戦争に突入した年である。長い歳月を経て、人びとは百年余り前に日本全国で盛り上げられた元寇記念碑建設運動にはほとんど関心を持っていない。元寇史料館といっても、2階に展示されたものはわずかではあるが非常に貴重な「元寇」の史料と、日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦のものが混じったもので、1階はラーメン屋と焼鳥屋などになっており、いわばどっちつかずのものになっている。なんと皮肉だろう。 福岡にいる間、私は長垂海浜公園、中央区地行の元寇防塁などをも調査した。しかし、鷹島などの史蹟は調査できなかった。次回、鷹島と松浦市の史蹟を調査することを楽しみにしている。 調査した史跡の写真は下記をご覧ください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2022/03/Husel_essay_Mar2022light3.pdf <ボルジギン・フスレ BORJIGIN_Husel> 昭和女子大学国際学部教授。北京大学哲学部卒。1998年来日。2006年東京外国語大学大学院地域文化研究科博士後期課程修了、博士(学術)。東京大学大学院総合文化研究科・日本学術振興会外国人特別研究員、ケンブリッジ大学モンゴル・内陸アジア研究所招聘研究者、昭和女子大学人間文化学部准教授、教授などをへて、現職。主な著書に『中国共産党・国民党の対内モンゴル政策(1945~49年)――民族主義運動と国家建設との相克』(風響社、2011年)、『モンゴル・ロシア・中国の新史料から読み解くハルハ河・ノモンハン戦争』(三元社、2020年)、編著『国際的視野のなかのハルハ河・ノモンハン戦争』(三元社、2016年)、『日本人のモンゴル抑留とその背景』(三元社、2017年)、『ユーラシア草原を生きるモンゴル英雄叙事詩』(三元社、2019年)、『国際的視野のなかの溥儀とその時代』(風響社、2021年)、『21世紀のグローバリズムからみたチンギス・ハーン』(風響社、2022年)他。 ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************
  • SGRA Forum#68 “Dreams, Hopes and Lies” Report

    ********************************************* SGRAかわらばん913号(2022年3月17日) 【1】SGRAフォーラム「夢・希望・嘘―メディアとジェンダー・セクシュアリティの関係性を探る―」報告 【2】SGRA-Vカフェ「国境を超えたウクライナ人」へのお誘い(3月21日20時、オンライン)(最終案内) ********************************************* 【1】デール・ソンヤ「第68回SGRAフォーラム『夢・希望・嘘―メディアとジェンダー・セクシュアリティの関係性を探る―』報告」 2022年2月20日(日)14時~17時、第68回SGRAフォーラムを開催しました。Zoomウェビナーを利用した完全オンライン形式です。コロナ禍の影響で、なかなか実際に会うことができませんが、このような形で皆さんとイベントができることはありがたいです。テーマはデジタルや新メディアの時代にふさわしい「夢・希望・嘘―メディアとジェンダー・セクシュアリティの関係性を探る」です。東アジアを中心に、日本、中国、韓国の事情についての発表とディスカッションがあり113名が登録、参加してくださいました。発表者はハンブルトン・アレクサンドラ先生と元渥美奨学生3名―バラニャク平田ズザンナ先生(2019年度)、于寧先生(2020年度)、洪ユン伸先生(2008年度)。Q&A担当は郭立夫さん(2021年度)、モデレーターはデール・ソンヤ(2012年度)です。開会挨拶は、SGRA代表の今西淳子さんがしてくださいました。このイベントに多くの渥美奨学生に関わってもらい、またジェンダー・セクシュアリティを専門とするメンバーが増えていることに、感謝と喜びを感じています。 基調講演は津田塾大学のハンブルトン・アレクサンドラ先生。「今の時代、白馬に乗った王子様って必要?リアリティテレビの『バチェラージャパン』と『バチェロレッテジャパン』から見たジェンダー表象」というタイトルで、最近流行っている恋愛リアリティ番組から見える社会現象についてです。最初に現代日本の結婚および少子高齢化社会をめぐる言説と婚活事業を紹介してくださいました。結婚や出産に関して政府の視野が狭く、日本に住んでいる人々の現実を十分把握できていないとの指摘です。経済的に苦労している人が多く、与えられた性別によってサバイバルの対策が異なります。日本の「バチェラージャパン」でみられるように、男性と結婚することで経済的な安定を求める女性が多くいます。しかし、同時にこのような恋愛リアリティ番組も固定概念に基づいているラブ・ストーリーしか描こうとしていません。多様性が反映されていないことが問題です。ハンブルトン先生の結論として、白馬に乗った王子様は今の時代に必要です。しかし、その王子様はお金持ちの男性ではありません。必要となっているのは社会福祉の改善と全ての人のための暮らしやすい社会作りです。 講演の後は3名の元渥美奨学生による各20分の発表でした。バラニャク平田ズザンナ先生(お茶の水女子大学)は「日本の宝塚歌劇団とファン文化」、于寧先生(国際基督教大学)は「中国本土のクィア運動とメディア利用」、洪ユン伸先生(一橋大学)は「韓国のフェミニズムと嫌フェミニズム運動」についてです。 バラニャク平田先生は事情によりリアルタイムで参加できず、事前に録画していただいたものを流しました。「夢を売り、夢を描く:ジェンダー視点からみる宝塚歌劇団の経営戦略と関西圏のファン文化」という発表で、宝塚歌劇団の歴史的・社会的な背景を紹介した上でファンからの聞き取り調査から得た情報を共有していただきました。宝塚歌劇団は「夢の世界」として売られているもので、その「夢の世界」を家父長的な経営戦略および都市空間という二つの側面から分析し、女性ファンのエンパワーメントを考察しました。 次は于寧先生による「中国本土のクィア運動におけるメディア利用―北京紀安徳咨詢センターによるメディア・アクティビズムを中心に」という発表です。歴史的な視点から、時代に合わせて活動家が使っているメディア媒体の変化や直面する社会問題などを紹介していただき、中国本土のクィア活動について知る重要な機会となりました。発表で紹介された北京紀安徳咨詢センターの活動は終了したとのことで、マイノリティ団体が活動を長く続けることの難しさを改めて実感しました。しかし、団体そのものがなくなっても成果を残せば、従来から続いている運動に活用できるので、過去にとっても将来にとっても貴重な社会貢献だといえます。 最後の発表は洪ユン伸先生による「MeTooからデンジャンニョ(味噌女)まで:韓国のメディアにおける「フェミ/嫌フェミ」をめぐって」という発表でした。近年、韓国のフェミニズム運動が可視化された一方、フェミニズムバッシングも増えたとのことです。その背景及び現象を紹介し、韓国のMeToo運動が直面する課題などを説明してくださいました。学校などの公的な場所でのMeToo運動がある一方で、バッシングを受ける恐れから実名で自分が受けた経験について語ることができない現状があるそうです。韓国においてフェミニズムはまだ物議を醸す話題です。韓国のMeToo運動に対して、シスジェンダーとヘテロセクシャル、いわばマジョリティの立場にいる女性と男性から視野を広げる必要もあり、これからの課題としてLGBTや障がい者を取り組むことも必要とのことでした。 最後は4名の発表者とのディスカッション・質疑応答です。韓国、中国と日本のメディアとジェンダー・セクシュアリティや社会問題などについて話し合い、時間が足りないほど幅広く様々な話題にふれました。議論された課題の中には検閲の問題、政府の政策と出産・結婚やメディアの関係性、メディアにおける多様性、フェミニズム運動におけるトランスジェンダー女性の位置付けなどがありました。 ジェンダーとセクシュアリティの話になると、現状を把握した結果、絶望的になりやすいですが、最後に皆さんがそれぞれの分野で今期待していることについて話しました。様々な社会問題が残っており、男女平等もまだ果たしていない東アジア(台湾以外)に同性結婚やトランスジェンダーの権利がまだできていないのが現状ですが、少しずつ変化も感じられます。また、皆さまと対談ができることも、とても嬉しいことです。これからも、このような対談が増えていくことを期待しています! 当日の写真は下記リンクからご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2022/03/Forum68Photos.pdf アンケートの集計は下記リンクからご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2022/03/Forum68Survey.pdf <デール・ソンヤ DALE_Sonja> ウォリック大学哲学部学士、オーフス大学ヨーロッパ・スタディーズ修士を経て上智大学グローバル・スタディーズ研究科にて博士号取得。これまで一橋大学専任講師、上智大学・東海大学等非常勤講師を担当。現在、インディペンデントリサーチャー。ジェンダー・セクシュアリティ、クィア理論、社会的なマイノリティおよび社会的な排除のプロセスなどについて研究。2012年度渥美国際交流財団奨学生。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】第17回SGRA-Vカフェ「国境を超えたウクライナ人」へのお誘い(最終案内) 下記の通り第17回SGRA-Vカフェを開催いたします。参加ご希望の方は、下記より参加登録をお願いします。聴講者はカメラもマイクもオフのZoomウェビナー形式で開催しますので、お気軽にご参加ください。SGRAカフェはどなたにも参加していただけますので、関心のある方にご宣伝ください。 ◇テーマ:「国境を超えたウクライナ人」 ◇講 師:オリガ・ホメンコ(キエフ・モヒーラビジネススクール助教授) 日 時:2022年3 月21日(月・休)午後8時~9時30分 方 法:Zoomウェビナーによる 会 費:無料 言 語:日本語 参加申込:下記リンクよりお申込みください https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_tM3lxWHMSTGZZrYwBKl6yg お問い合わせ:SGRA事務局 ([email protected] 03-3943-7612) ◇講師略歴: オリガ・ホメンコ Olga Khomenko キエフ生まれ。キエフ・モヒーラビジネススクール助教授。東京大学大学院の地域文化研究科で博士号取得。フリーのジャーナリスト・作家・通訳として活動中。2004年度渥美奨学生。 著書:藤井悦子と共訳『現代ウクライナ短編集』(2005)、単著『ウクライナから愛をこめて』(2014)、『国境を超えたウクライナ人』(2022)を群像社から刊行。 ◇講師からのメッセージ: 『国境を超えたウクライナ人』・・・今更このタイトルは皮肉に聞こえるかもしれません。ウクライナ史、国境に対するウクライナ人の思いを書きました。歴史的な観点から西と東の国境の存在について、また国境に対するウクライナ人の想いについて、海に囲まれた島国の日本の皆さんに理解を深めていただきたいです。それにしても本の題名がそのまま現実になるとは思いませんでした。正に悪夢です。私は侵略の2日前に今滞在する欧州の都市に着きましたが、私の家族は、空爆が始まった次の日に、苦労の末にキエフを離れることができ、30時間以上ドライブして国境を越えました。まだキエフに居る親戚、友達、教え子、同僚の無事を祈らずにはいられません。 詳細は下記リンクをご覧ください http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/2022/17373/ ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************
  • Invitation to SGRA Cafe#17 “Ukrainians Across the Border”

    ********************************************* SGRAかわらばん912号(2022年3月10日) 【1】第17回SGRA-Vカフェ「国境を超えたウクライナ人」へのお誘い 【2】寄贈書紹介:謝惠貞『横山利一と台湾:東アジアにおける新感覚派(モダニズム)の誕生』 【3】寄贈書紹介:趙秀一『金石範の文学:死者と生者の声を紡ぐ』 ********************************************* 【1】第17回SGRA-Vカフェ「国境を超えたウクライナ人」へのお誘い 下記の通り第17回SGRA-Vカフェを開催いたします。参加ご希望の方は、下記より参加登録をお願いします。聴講者はカメラもマイクもオフのZoomウェビナー形式で開催しますので、お気軽にご参加ください。SGRAカフェはどなたにも参加していただけますので、関心のある方にご宣伝ください。 ◇テーマ:「国境を超えたウクライナ人」 ◇講 師:オリガ・ホメンコ(キエフ・モヒーラビジネススクール助教授) 日 時:2022年3 月21日(月・休)午後8時~9時30分 方 法:Zoomウェビナーによる 会 費:無料 言 語:日本語 参加申込:下記リンクよりお申込みください https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_tM3lxWHMSTGZZrYwBKl6yg お問い合わせ:SGRA事務局 ([email protected] 03-3943-7612) ◇講師略歴: オリガ・ホメンコ Olga Khomenko キエフ生まれ。キエフ・モヒーラビジネススクール助教授。東京大学大学院の地域文化研究科で博士号取得。フリーのジャーナリスト・作家・通訳として活動中。2004年度渥美奨学生。 著書:藤井悦子と共訳『現代ウクライナ短編集』(2005)、単著『ウクライナから愛をこめて』(2014)、『国境を超えたウクライナ人』(2022)を群像社から刊行。 ◇講師からのメッセージ: 『国境を超えたウクライナ人』・・・今更このタイトルは皮肉に聞こえるかもしれません。ウクライナ史、国境に対するウクライナ人の思いを書きました。歴史的な観点から西と東の国境の存在について、また国境に対するウクライナ人の想いについて、海に囲まれた島国の日本の皆さんに理解を深めていただきたいです。それにしても本の題名がそのまま現実になるとは思いませんでした。正に悪夢です。私は侵略の2日前に今滞在する欧州の都市に着きましたが、私の家族は、空爆が始まった次の日に、苦労の末にキエフを離れることができ、30時間以上ドライブして国境を越えました。まだキエフに居る親戚、友達、教え子、同僚の無事を祈らずにはいられません。 詳細は下記リンクをご覧ください http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/2022/17373/ -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】寄贈書紹介 SGRA会員で文藻外語大学日本語学科准教授の謝惠貞さんから新刊書をご寄贈いただきましたのでご紹介します。 ◆謝惠貞著『横山利一と台湾:東アジアにおける新感覚派(モダニズム)の誕生』 日本統治期台湾の文学において、横光利一の「純粋小説論」や作品が与えた影響は大きく、また、その影響は中国や韓国など東アジアに広がる。本書は、日本統治期において台湾人作家がいかに横光を受容したかを解明し、台湾文学史の中にこれまで看過されてきた「台湾新感覚派」の誕生を文学史に正しく位置づける。更に、韓国の李箱や中国に渡った劉吶鴎の横光受容や、新発見された横光の随筆「台湾の記憶」を通して台湾の表象を論じる。 発行所:ひつじ書房(ひつじ研究叢書(文学編)14) 刊行日:2021年12月24日 体裁:A5判上製カバー装 424頁 ISBN:978-4-8234-1109-0 定価:6200円+税 詳細は下記リンクをご覧ください。 https://www.hituzi.co.jp/hituzibooks/ISBN978-4-8234-1109-0.htm -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【3】寄贈書紹介 SGRA会員で東国大学校日本学研究所専任研究員の趙秀一さんから新刊書をご寄贈いただきましたのでご紹介します。 ◆趙秀一『金石範の文学:死者と生者の声を紡ぐ』 「四・三事件」の当事者たちに語り継がれた死者と生者の記憶を、文学的想像力を通して書き続ける在日朝鮮人作家、金石範。気鋭の韓国人研究者が『火山島』に至るテクストを読み解き、越境し交差するその文学世界を捉え直す。「日本語」や「日本文学」を揺さぶり続ける金石範文学の独創性を「世界文学」として位置づける渾身の力作。 発行所:岩波書店 ジャンル:書籍 > 単行本 > 日本文学総記 刊行日:2022/03/08 ISBN:9784000615198 Cコード 3091 体裁:A5 ・ 上製 ・ カバー ・ 426頁 定価:9,900円 詳細は下記リンクをご覧ください。 https://www.iwanami.co.jp/book/b600949.html ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************
  • YUN Jae-un “Six Years of Training and a Second Commitment as a Member of Society”

    ********************************************* SGRAかわらばん911号(2022年3月3日) 【1】エッセイ:尹在彦「修業の6年間、社会人としての2度目の決意」 【2】オリガさんからのメッセージ紹介 ********************************************* 【1】SGRAエッセイ#699 ◆尹在彦「修業の6年間、社会人としての2度目の決意」 私は博士課程の研究において、人と会うことを最小限にするテーマと手法を選んだ。日本に来る前の5年間の仕事で、人と会うことの大変さを実感していたからだ。韓国内外の様々な人からもらった名刺を数えてみたら、平均して1日に一人は会っていた。意味のあった時間もあれば、どんな人だったか思い浮かばない名刺もある。会うまではどんな時間になるか、予想のつかないこともあった。しかも、インタビューの話を検証すること自体が仕事になることもあった。そのため、人の話に基づいた研究はなるべく避けたかった。このような経験を踏まえ、博士課程では文献を中心とした日本研究を行うことに決めた。 その結果なのか、何とか博士論文を書き上げることができた。コロナ禍の中での論文執筆はまさに「自分との闘い」で、悪戦苦闘の連続ではあったが、それでも「必ず提出する」という執念の方が勝ったと思う。2月の口頭試問の際には面接官の先生から散々厳しい指摘をいただいた。認めざるを得ない指摘がほとんどで、現在は博論の修正を考えている。ただし、博論はあくまで出発点であり、完成品ではない。本当の研究生活はこれからだ。 合計6年間、日本で大学院生として過ごした時間は良かったのか、悪かったのか。私は基本的に物事を批判的に捉える人間なので、正直「生の日本を見てしまった」と言わざるを得ない。近年は日韓関係が悪化の一途をたどる中で居心地の悪さも感じ、特にこの1年はコロナ対応における日本社会の強い同調圧力も実感した。コロナ禍により普段は潜んでいる日本社会の様々な側面がさらけ出されたと思う。日本研究者としては課題が一つ増えたような気がする。 韓国社会においては「マジョリティー」でかつそれなりの「メインストリーム」の道を歩んできた私にとって、6年間の「マイノリティー」としての経験は非常に良かった。韓国でも常にマイノリティーの問題に関心を持っていたつもりではあるが、やはり自分が同様の立場に置かれない限り限界がある。特に様々な財団にお世話になったため、同じ立場の外国人同士の交流ができたことはマイノリティーとして色々と考えさせられる契機となった。 「日本とは何か」「日本をどう見るべきか」というのは、私の研究人生を貫く問いである。答えが見えてくるかと思えば、また遠ざかる。この繰り返しではあるが、少なくとも6年前と比べ知識の量だけは増えた気もする。研究生活の中では専ら「学問をやる」ことを意識し、なるべく「ジャーナリズム」的な発信は抑えてきた。これからは「学問とジャーナリストの両立」を真剣に考えていくつもりである。正直、大学院生という身分は息苦しい面が少なからずあり、社会人大学生が少数の日本では特にそう感じた。早く抜け出したいという気持ちは常に強かった。 最後に仕事で痛感したことを一つ言わせてもらいたい。人とはどこで、どのような形でまた会うかわからないということである。当然のことのように聞こえるが、以前会った人に偶然再び会い、それが様々な縁につながったという経験を何度もした。「人に対して悪いことをしてはならない」という教訓でもあるだろうが、刹那の人間関係だとしても、どこかでまた何かの繋がりがあるかもしれない。めぐり合わせというべきだろうか。コロナ禍中の1年間、渥美財団の奨学生の中で一度も対面していない人も少なからずいるが、縁があれば近いうちにどこかで会えると思う。6年間の修行が終わり、再び社会人へ戻ろうとしている今、肝に銘じたいことである。 <尹在彦(ユン・ジェオン)YUN Jae-un> 一橋大学法学研究科特任講師。2020年度渥美国際交流財団奨学生。2021年、同大学院博士後期課程修了(法学博士)。延世大学卒業後、新聞記者(韓国、毎日経済新聞社)を経て2015年以後、一橋大学院へ正規留学。専門は東アジアの政治外交及びメディア・ジャーナリズム。現在、韓国のファクトチェック専門メディア、NEWSTOFの客員ファクトチェッカーとして定期的に解説記事(主に日本について)を投稿中。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】メッセージ紹介 前号で新刊書をご紹介したSGRA会員でキエフ経済大学助教授のオリガ・ホメンコさんからのメッセージをお届けします。 --------------------- 『国境を超えたウクライナ人』・・・今更このタイトルは皮肉的に聞こえるかもしれません。ウクライナ史、国境に対するウクライナ人の思いを書きました。ウクライナ出身の画家、技師、音楽家、作家、歴史家、哲学者などなどの9人、今よりずっと大変な時代を生き抜いて世界文化を豊にした人の物語です。 歴史的な観点から西と東の国境の存在について、また国境に対するウクライナ人の想いについて詳しく書いたこの本の最終章を是非、海に囲まれた島国の日本の皆さんに今読んで理解を深めていただきたいです。 2月27日に被害を受けたロバノフキー通り6Aの建物は、私がキエフで通っていた学校の隣にあります。ソ連時代にそこは軍事基地だったのですが、その後取り壊され、高層マンションがたくさん建てられました。どうして?ロシア軍は古い地図を使っているの?信じられない。ロバノフキー通りはサッカーで有名です。例えば、有名なサッカー選手でコーチのOleg_Blokhinは私の学校を卒業した有名人の一人です。そう、とてもスポーツの盛んな学校です。マンションの住民は大変な目にあいました。一般市民も被害を受けています。ウクライナの人はブラックジョークで、ウクライナがNATOに加盟するのではなく、NATOがウクライナに加盟するべきと言っています。確かに!ただし、させてもらえるかどうか別問題ですけど。 それにしても出版した本の題名がそのまま現実化するとは悪夢にも思いませんでした。空爆が始まった次の日に、私の家族は苦労してキエフを離れることができました。昨日30時間以上ドライブして国境を越えました。難民。信じられない。辛い。でも命が助かって良かったです。キエフの親戚、友達、教え子、同僚のことを祈っています。 --------------------- ※興味のある方はオリガさんのTwitter(@olga_khomenko)をお読みください。 ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************
  • Victor SHISHKIN “What I learned from My Doctoral Program”

    ********************************************* SGRAかわらばん910号(2022年2月24日) 【1】エッセイ:ヴィクター・シーシキン「博士課程から学んだこと」 【2】寄贈書紹介:オリガ・ホメンコ『国境を超えたウクライナ人』 ********************************************* 【1】SGRAエッセイ#698 ◆ヴィクター・シーシキン「博士課程から学んだこと」 私は製品に関する何百ものアイデアとそれらを実現するための大きな情熱、そして「どのアイデアに焦点を当てる価値があるのか?」という問いを持って日本に来ました。博士課程に進学したことで、私は進みたい方向を自由に選択できるし、それが斬新であったり挑戦的であったりすれば、興味のあることを何でも選択できるようになりました。自由は多くの可能な方向性をもたらし、同時に大きな不確実性を与えます。これからの3年間をどのような方向性で過ごせばいいのかと考えました。 博士課程のテーマを見つける最も簡単な方法は、これまでやってきた研究と「新しい研究室」を組み合わせることです。博士課程のテーマが挑戦的で斬新なものになる可能性が最も大きくなるはずです。そこで、最初の1年半はその方向に進みました。 しかし、多くの博士課程の学生が経験する問いに直面しました。それは「これを本当に必要としている人はいるのか?」、「誰のためにやっているのか?」との自問です。結局、自問自答から得た答えは私を満足させませんでした。この技術を知っている人や会社はほとんどなく、実際にその製品を使用したいと思う人は更に少ないことも知っていました。数年前は業界で働いていたのでお客様のニーズに応える仕事に慣れていたため、ニーズがないかもしれない技術開発の仕事を続けることが難しくなりました。 自分がやっていることに疑問を持っていることに気づいたのは、前期学位審査と博士論文が始まるまであと1年半という一番大変な時期でした。自分の研究が役に立つことを本気で信じられないまま残りの時間を送れば、つらい思いをしたり、やる気がなくなったりすることは分かっています。もうこれ以上自分をだますことができませんでした。「自分でさえ自信がないことについて、どうやって博士論文を書くことができるのか。その時にはきっと自分自身にも答えられない質問を審査員や他の人から受けるだろう」と考えました。 長い博士課程を続けていくためにも、困難な時や挫折を乗り越える力を身につけるためにも、自分がやっていることを心から信じていかねばならないと思います。そのため「何=誰のためにこれをやっているのか?本当に役に立つのか?」の問いに対して自分自身に正直な答えを出さねばなりません。 その答えを探し始めているうちに新たな課題に気づきました。ロシアの会社に勤めていたときに聞いた顧客の不満を思い出したのです。東京の工業展示会を訪れ、私の技術の潜在的なユーザーと話をして、彼らの問題を確認することができました。そして、この問題点を明らかにするために、私の研究分野にある会社の最高経営責任者(CEO)と話をしました。その後、ビッグデータ分析ツールを使って自分の研究分野の技術開発動向を把握しました。また、国際会議に参加し、最大の学会のトップや技術スカウトたちと話をして、その技術の未来を理解しました。さらに日本政府がどのような研究分野を支援しているのかを知るため政治的意思決定を研究したり、政策研究大学院大学(GRIPS)で政府のデータを分析したりしました。 そこで得た結論は、お客様にとって一番の問題は製品の価格であるということです。多くのお客様がセンサーの性能ではなく、価格に不満を持っていることが分かりました。このセンシング技術を気に入っているものの、買う余裕がないという潜在的顧客がたくさんいます。そこで、この技術を手頃な価格にすることに力を入れて、特にセンサーシステムにある最も高価な部分をフォトニックチップ上に作るというアイデアを思いつきました。 今、私は光ファイバーセンシング技術をまだ手に入れることができないお客様のために働いているのだと自分を納得させることができます。製品を安くすれば、彼らはそれを手に入れて使ってくれると確信しています。 新しい方向に向いて取り組んだ1年目は失敗ばかりでした。何もうまくいきませんでしたし、チップのデザイン、製造プロセス、テストのセットアップ、どこが間違っているのかも分からなかったのです。しかし、私は落ち込んだことは一度もありませんでした。失敗するたびに次はうまくいくと思っていました。自分の研究が役に立つと心から信じられることは多くのインスピレーションや、やる気とあらゆる失敗に耐える力を与えてくれました。 博士課程から学んだことは長期的なプロジェクトを進めていくために、自分がやっていることを心から信じることが大切だということです。論理的に理解するだけではなく、感情的なつながりも必要です。そうすると元気になったり、励まされたり、人を励ましたりすることに役に立ちます。 この原則は日常生活の多くの状況にも当てはまります。 1)新しい言語を学ぶ時、自分にとっては必要なものだと信じる必要があります。私が英語を話せるようになったのは、ロシア語を理解する人がいない米国に6カ月も滞在していたからです。 2)太ることが怖いという理由で、何年も毎日運動を続けてきました。 3)早起きは効率が良いことは誰でも知っていますが、それを知っているだけでは十分ではありません。やりたい気持ちを心から信じる必要があります。自分の場合は日の出を見るのが好きだということに気づいてから、早起きを始めました。 これからも自分のやっていることに対して「なぜ?」という問いに対する正直な答えを探し続けていくことが、大きな力を与えてくれると思います。 <シーシキン・ヴィクター Victor SHISHKIN> 東京大学大学院新領域創成科学研究科海洋技術環境学専攻特任研究員。2020年度渥美国際交流財団奨学生。2021年東京大学大学院博士後期課程修了。卒業後も洞察力のあるデータ生成のためのセンシングシステムの開発に取り組んでいます。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】寄贈書紹介 SGRA会員でキエフ経済大学助教授のオリガ・ホメンコさんから近刊書をご寄贈いただきましたので紹介いたします。 ◆オリガ・ホメンコ『国境を超えたウクライナ人』 18世紀から20世紀にかけてのウクライナに生まれ、波乱の時代に負けることなく、美術、航空技術、医学、外交などの分野で異郷の地で活躍し大きな実績を残した9人とウクライナ人に同化してソ連政権に殺されたハプスブルグ家出身のひとりを合わせた10人の人生。東西から国境を侵されてきた歴史をもつウクライナ人ならではの柔軟性、コミュニケーション力、他者の文化に対する許容力を発揮した人びとの物語。 発行所:群像社 ISBN:978-4-910100-22-7 C0098 出版年:2022年2月5日 判型:B6 頁数:144ページ 定価:1500円 ウクライナで生まれて国外で活躍した人には作曲家のセルゲイ・プロコフィエフなどたくさんいる。日本では新宿の中村屋と深い関わりがあった詩人のワシーリ・エロシェンコが有名だし、五十代以上ならおそらく知らない人がいない昭和の大横綱、「巨人、大鵬、卵焼き」と並べて愛された大鵬幸喜はカラフトに渡ったウクライナ人を父に持つ。いまはその孫が関取になっている。だがこの本で紹介するのは日本ではそれほど有名ではないかもしれないが、国境を超えたウクライナ人として、どうしても私が日本に伝えたい人たちである。(本書まえがき) 詳細は下記リンクをご覧ください。 http://gunzosha.com/books/ISBN4-910100-22-7.html ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************  
  • LEE Sujin “Challenges as a Researcher and Educator”

    ********************************************* SGRAかわらばん909号(2022年2月17日) 【1】エッセイ:李受眞「研究者と教育者としての課題」 【2】第68回SGRAフォーラムへのお誘い(2月20日、オンライン)(最終案内) 「夢・希望・嘘-メディアとジェンダー・セクシュアリティの関係性を探る-」 ********************************************* 【1】SGRAエッセイ#697 ◆李受眞「研究者と教育者としての課題」 博士課程に在籍していた3年間は、学会活動と論文投稿に力を入れながら「研究者と教育者としての課題」について考えさせられた。特別支援教育に関する領域では研究者としてのみ活躍されている方は少なく、大学教員でありながら研究者として活躍することが多い。その中で、将来教員になることを目指している大学生を対象とした「特別支援教育」に関する科目を非常勤講師として教えることになった。 これまで一度も人に教えたいと思ったことがなく、このような気持ちで臨んでいいのかと葛藤しながら授業を引き受けた。しかし、受講生からの「より良い教員になるためにこの科目を受講する」「様々なニーズのある児童に対応するためにこの科目を受講したい」というコメントなどを読み、新しい知識を得て将来の教育現場においても生かそうとする学生らの姿を見るうちに、「この人たちが現場の先生になってから困らないよう特別支援教育に関する知識を教えたい」という気持ちが芽生えてきた。教育者の立場になってみることで、今後の教育者としてのあり方について探求することができた。これからは教育者として試行錯誤しながらも学生を指導していきたい。 ところで、研究者であり教育者であるという立場は実際に大学の一教員として勤めてみると、どちらかに偏りやすい。教員としての仕事は授業や大学業務に専念しながら、その合間に論文執筆や学会発表などの研究活動もやらなければならない。今は授業準備や会議等に追われる毎日で一体いつ頃研究活動ができるかの目処もつかないため、いつまでもこの状況が続くのではないかふと不安になったりもする。めまぐるしい毎日を過ごす中で、自分が教育者として、そして研究者としての初心を失わないように教育活動も研究活動もしていきたいと思う。 加えて研究者としての課題はフィールドが教育現場となるため、現場で活躍している先生とのコミュニケーションの取り方である。その中で、研究者と教育者としての課題に関するテーマのワークショップを受ける機会があった。ここでは研究者であるのか教育者であるのか、自分の立場について改めて考えさせられる機会が設けられた。参加者には小学校や特別支援学校など様々な教育現場で活躍されている先生方や大学院の学生らがいた。現場にいる教育者の立場では、単なる研究成果を求めるのではなく、現場における子どものニーズと将来を見据えた課題も含めて進んでほしいと望まれていることが分かった。私は知的障害特別支援学校におけるキャリア教育について研究を行いながらも、教育現場と研究者の現況と課題についてはあまり意識していなかったため、話をうかがうことができたのは大きな収穫だった。 教育者としての自分には、将来教員になることを目指している学生にとっての研究者と教育者とのコミュニケーションのギャップを減らすことができるのではないかとも考えた。話を聞いている中で研究する立場においても教育する立場においても、それぞれが児童生徒のことを考えて行動しているということに変わりはないことが伝わってきた。しかし研究者の中には児童生徒をデータとして見てしまう人もいる。倫理教育の重要性について実感した。 特に臨床心理学は人を対象とした研究であるため、人権が何よりも尊重される。常に責任のある研究活動(RCR)教育についての意識があるか自分に問いかけながら、責任のある研究活動のためにできること、良い研究のための到達点を考え直している。現在行っている研究の対象者は軽度知的障害者であり、インフォームド・コンセプトに偏っていた既存の研究倫理に加え、「Well-being(よく生きる)」を意識した研究活動を行う必要性を感じている。その中でも、特に強調されている「Meaningful_life(他者への貢献)」を肝に銘じ、知的障害者とその支援者や保護者がより豊かな生活を送るために貢献できる研究を行いたいと思っている。 <李受眞(イ・スジン)LEE_Sujin> 浜松学院大学現代コミュニケーション学部子どもコミュニケーション学科助教。2020年度渥美国際交流財団奨学生。2021年東京学芸大学大学院博士後期課程修了(教育学博士)。東京学芸大学において非常勤講師、特別支援教育現職研修システムの開発プロジェクトの専門研究員、特別支援教育・教育臨床サポートセンターの特命講師を経て、2021年4月より現職。日本学校心理士・公認心理師。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】第68回SGRAフォーラムへのお誘い(最終案内) 下記の通りSGRAフォーラムをオンラインで開催いたします。参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。聴講者はカメラもマイクもオフのWebinar形式で開催しますので、お気軽にご参加ください。 テーマ:「夢・希望・嘘 -メディアとジェンダー・セクシュアリティの関係性を探る-」 日時:2022年2月20日(日)午後2時~5時 方法:Zoom Webinarによる ※参加申込(下記URLより登録してください) https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_KSs7_UZmR_aDZ3P5lgTUOw お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ■フォーラムの趣旨 現代社会に生きる者がメディアの影響からのがれることは難しい。服から食べ物まで、私たちの日常的なあらゆるものの選択はメディアに左右されている。同様に、子供のころからジェンダーやセクシュアリティに関わる情報にさらされ、女性は、男性はいかに行動すべきなのか、どのようなジェンダーやセクシュアリティが存在するのか、恋愛とは何なのかというイメージもメディアにより作られている。メディアは意見を作るための貴重なツールであるだけでなく、意見を変えるためのツールでもある。 本フォーラムではメディアはどのように恋愛、ジェンダーやセクシュアリティの理解に影響を与えているのか?視聴者やファンはどのようにメディアと接触しているのか?社会的な変化のために、メディアをどのように利用することができるのか?など、現代におけるメディアとジェンダーおよびセクシュアリティの関係性のさまざまな様相を皆さんと共に掘り下げ、探ってゆきたい。 詳細はプログラムをご覧ください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2022/02/SGRAForum68ProjectPlan.pdf ポスターは下記よりご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2022/02/SGRAForum68Poster.pdf ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************
  • YUN Jae-un “Zero COVID Policy is No Longer Sustainable”

    ********************************************* SGRAかわらばん908号(2022年2月10日) 【1】エッセイ:尹在彦「有効期限切れの『ゼロ・コロナ』政策」 【2】催事紹介:INAF研究会「東アジアをめぐる国際情勢:台湾問題、アメリカの東アジア戦略」 【3】第68回SGRAフォーラムへのお誘い(2月20日、オンライン)(再送) 「夢・希望・嘘-メディアとジェンダー・セクシュアリティの関係性を探る-」 ********************************************* 【1】SGRAエッセイ#696 ◆尹在彦「有効期限切れの『ゼロ・コロナ』政策」 コロナ禍の本格的な始まりから2年が経とうとしている。ちょうど2年前のこの時期、筆者は旧正月を迎え、タイと韓国で過ごしていた。タイで中国発のニュース(未確認の感染症が拡散中)に触れつつも、他人事にしか見られなかった。しかし、タイから韓国へ入国してからは潮目がやや変わっていた。武漢から入国した韓国人の感染者が次々と判明される一方で、政府は現地に輸送機を送り込んだ。「おそらくもうすぐ落ち着くだろう」と見て、筆者は同時期に仁川空港から日本へ発った。これが2年も続くとは夢にも思わなかった。 その間、世界は「コロナ前」には戻れずにいる。何年か先と考えられていた技術的かつ文化的な変化は早く訪れた。そこから見えてきた教訓も少なくない。特に国ごとに異なっているコロナ対策は、その国々の特徴を表していると同時に、これからの方向性も示してくれる。こういった状況を踏まえ、本稿ではオミクロン株の流行を受け、「ゼロ・コロナ政策はもはや有効ではない」ということを述べたい。 この2年間、全人類は世界各地で多岐にわたるコロナ対策を目の当たりにしてきた。ロックダウンという移動制限・隔離を中心とした国々もあれば、強制措置よりも市民の自発性に頼った国もある。制限を最小限にしつつもIT技術・個人情報を積極的に活用した国もあった。そうした中で、社会科学においてはコロナ対策をめぐり「民主主義VS権威主義」という図式が議論の対象になった。要するに、「感染症拡大を抑え込めるのは権威主義体制の方」という議論だ。実際に少なからぬ欧米諸国では移動制限という一種の人権侵害が相次ぎ、マスクやワクチンが過度に政治化している。一部では強制接種やマスク義務化のような措置さえ取られている。民主主義の後退ともとられる事象である。 「武漢封鎖」で世界に衝撃を与えた中国がそれ以降、地域的封鎖と大量検査のいわゆる「中国モデル(中国以外では不可能に近いためモデルにはなり得ていないが)」で「普通の生活」に戻ったことも大きい。米中関係の悪化の中であらわになった米国内のコロナ対応の問題点も影響した。米製薬会社(ファイザー社、モデルナ社)が新たな手法でワクチンを開発したとはいえ、国内的には依然として接種率が伸び悩んでいる(2回目が60%台、1月末現在)。米政府の途上国支援もなかなか進んでいない。感染者や死者の数からみると、明らかに欧米諸国は「敗者」に近いだろう。 しかし、こういった状況はオミクロン株の拡散により変わりつつある。これまでの「内向きの閉鎖的な政策」がもはや意味をなさなくなっているのだ。それは、オミクロン株の感染力が類例ないほど高いことと重症化率が低いことに起因している。そのため、オミクロン株の感染拡大を先んじて経験している欧米諸国では生活基盤を支える「エッセンシャルワーカー」に対し最小限の隔離を求め始めている。厳しい水際政策が批判されている日本ですら隔離機関が「7日間」に短縮された(ちなみに、日本ではなぜか感染拡大期なのに今でも入国者に対する施設隔離が続いている。これも日本特有の方向転換の遅さの一面だろう)。コロナを封じ込めることを既に諦めていた韓国でも2月以降、同様に短縮される予定だ。もはや「ゼロ・コロナではオミクロン株に太刀打ちできない」という世界的なコンセンサスが形成されつつある。 全般的に入院患者が増えたとはいえ以前のピーク時のレベルではないという事実も、慎重な中での方針転換の理由とされる。イギリス政府がその先頭に立っており、ワクチン2回接種者に対しては入国時検査を求めないことを始め、感染者・濃厚接触者に対する隔離措置も緩めていく方針だ。新しい変異の可能性も懸念されてはいるが、恐らく方向性としては大方の国がこのようにせざるを得ないだろう。 こうした中で、再び注目されるのが春節(旧正月)と冬季五輪を迎えた中国の対応だ。米有名調査会社、ユーラシア・グループ(Eurasia_Group)は1月、「2022年の世界10大リスク(Top_Risks_2022)」というタイトルのレポートを発表した。同レポートには興味深い内容が含まれている。中国の「ゼロ・コロナ政策」が持続可能でない点(「No_Zero_Corona」)が強調されているのだ。これがグローバル経済に対して最も大きなリスクとして挙げられている。 同社は多くの国でファイザーやモデルナの「mRNAワクチン」が普及しており、それがオミクロン株の危険性を引き下げていると指摘する。一方で、中国では同種のワクチンが使用されておらずゼロ・コロナ政策が続いてきたため、免疫力が低い可能性が高い(ただし、この点に関してはまだ科学的根拠は不十分のようにも考えられる)。 ところが、オミクロン株は、これまでの政策では封じ込めることがほぼ不可能に見える。その結果、同社は中国政府が政策転換を強いられるだろうと見込む。要するに、これまで信じられないほど成功を収めてきた中国だが、オミクロン株が政策の抜け穴をつき、逆説的にも中国現地人の低い免疫力が裏目に出るということだ。また、今後の政治日程を勘案すると、これまでの成功体験が政治指導者の方向転換を阻む足かせになり、ロックダウンの繰り返しにつながる可能性もあるとされる。 こういった状況下では、中国が一翼を担っているグローバル・サプライチェーンの乱れにより生じる悪影響も懸念される。その「前触れ」は実際に中国各地で既に目撃されている。西安では武漢以来最も長い33日間も封鎖が続き、食料品流通や医療体制にも問題が起きた。サムスン電子や米マイクロンの半導体工場も操業中止に追い込まれた。天津でも同様の措置でトヨタ工場が打撃を受けている。北京冬季五輪の開催地である北京市豊台区では感染者が次々と確認されている。オミクロン株を完全に抑え込んでいないにもかかわらず、春節(旧正月)を機に中国内では移動が活発になっている。一部の地方政府からは再び移動自粛が再び求められている状況だ。感染力がより高い「ステルス・オミクロン(PCR検査で他の変異と区別が困難な特徴を持つとされる)」も確認されており、ゼロ・コロナ政策は正念場を迎えている。 コロナ禍以降、様々な「政策モデル」の可能性が試されてきたが、次々と失敗(敗北)してきている。韓国しかり、日本しかり、オーストラリアしかり(ただしこの国々が他国に比べ死者が少ないのは事実である)で、次は中国がそれを経験する可能性が高まっている。結局は「どの形でコロナと共存するか」が課題であり、コロナそのものを封じ込めることは極めて困難になっている。これは人間が依然として自然を前にしては謙虚にならざるを得ないという、「当然の教訓」なのかもしれない。 <尹在彦(ユン・ジェオン)YUN_Jae-un> 一橋大学法学研究科特任講師。2020年度渥美国際交流財団奨学生。2021年、同大学院博士後期課程修了(法学博士)。延世大学卒業後、新聞記者(韓国、毎日経済新聞社)を経て2015年以後、一橋大学院へ正規留学。専門は東アジアの政治外交及びメディア・ジャーナリズム。現在、韓国のファクトチェック専門メディア、NEWSTOFの客員ファクトチェッカーとして定期的に解説記事(主に日本について)を投稿中。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】催事紹介 SGRA会員で北陸大学教授の李鋼哲さんより、自ら創設された(一社)東北亜未来構想研究所(INAF)の研究会のお知らせをいただきましたのでご紹介します。参加ご希望の方は下記より直接お申し込みください。 ◆INAF第4回研究会 「東アジアをめぐる国際情勢:台湾問題、アメリカの東アジア戦略」 日時:2月18日(金)18:00~21:00 方法:オンライン(ZOOM) 第1報告 岡田充・共同通信客員論説委員 テーマ:「台湾有事」は作られた危機 第2報告 羽場久美子・INAF副理事長・青山学院大学名誉教授 テーマ:アメリカの東アジア戦略:バイデンはなぜ日中の協力関係にくさびを打ち込むのか プログラムの詳細・参加登録は下記リンクをご覧ください。 http://inaf.or.jp/symposium-semina/inaf第4回研究会のご案内/ -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【3】第68回SGRAフォーラムへのお誘い(再送) 下記の通りSGRAフォーラムをオンラインで開催いたします。参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。聴講者はカメラもマイクもオフのWebinar形式で開催しますので、お気軽にご参加ください。 テーマ:「夢・希望・嘘 -メディアとジェンダー・セクシュアリティの関係性を探る-」 日時:2022年2月20日(日)午後2時~5時 方法:Zoom Webinarによる ※参加申込(下記URLより登録してください) https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_KSs7_UZmR_aDZ3P5lgTUOw お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ■フォーラムの趣旨 現代社会に生きる者がメディアの影響からのがれることは難しい。服から食べ物まで、私たちの日常的なあらゆるものの選択はメディアに左右されている。同様に、子供のころからジェンダーやセクシュアリティに関わる情報にさらされ、女性は、男性はいかに行動すべきなのか、どのようなジェンダーやセクシュアリティが存在するのか、恋愛とは何なのかというイメージもメディアにより作られている。メディアは意見を作るための貴重なツールであるだけでなく、意見を変えるためのツールでもある。 本フォーラムではメディアはどのように恋愛、ジェンダーやセクシュアリティの理解に影響を与えているのか?視聴者やファンはどのようにメディアと接触しているのか?社会的な変化のために、メディアをどのように利用することができるのか?など、現代におけるメディアとジェンダーおよびセクシュアリティの関係性のさまざまな様相を皆さんと共に掘り下げ、探ってゆきたい。 詳細はプログラムをご覧ください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2022/02/SGRAForum68ProjectPlan.pdf ポスターは下記よりご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2022/02/SGRAForum68Poster.pdf ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ 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