SGRAメールマガジン バックナンバー
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CHEN Xi “Live in Multiple Hometowns”
2023年2月16日 15:19:45
*************************************************************** SGRAかわらばん957号(2023年2月16日) 【1】エッセイ:陳希「複数の故郷で生きる」 【2】第70回SGRAフォーラムへのお誘い(2月18日、オンライン) 「木造建築文化財の修復・保存について考える」(最終案内) *************************************************************** 【1】SGRAエッセイ#731 ◆陳希「複数の故郷で生きる」 日本に留学に来たのは2013年秋のことでした。もともと日本に留学したいと思っていたので、公募を知りすぐに応募したところ、運良く国費留学生として選ばれて都内の大学院で研究生活を始めることになりました。異なる言語に囲まれて生活し、異なる言語で研究を続けるのは決して簡単なことではありません。しかし、私は言葉の面で窮地に立たされた記憶がほとんどありません。理由として考えられるのは次の2つです。 1つは、留学する前に大学で日本語を学び、日本人の先生方や留学生たちとコミュニケーションを取った経験があるからです。おかげで比較的すんなりと日本社会に馴染むことができました。 もう1つは、小さい頃から中国・貴州省の中で学校を転々としていたことが挙げられます。同じ省とはいえ話される言葉はかなり異なっているので、最初に苦労するのは言葉でした。しかも、当時は共通語としての「普通話」(中国における民族共通語)は今ほど普及していなかったため、日常生活はもちろん、教室の使用言語も方言が使われることが普通でした。子供であっても、現地の言葉に順応するのには時間と工夫が必要でした。 何度も転校を繰り返して気づいたのは、話す言葉は場所によって違う、ある場所では常識であることが別の場所に行けば常識ではなくなる、ということです。多くの人々が絶対的だと信じてしまう考え方や価値観は相対的なものでしかない、ということを子供の時になんとなく感じ取っていたようです。 この経験から「異なる道を歩み、異なる地に逃げて、異なる人々を探し出しにいく」(魯迅『吶喊・自序』)かのように、日本留学を選びました。幸いなことに日本で何人かの「異なる人々」と出会いました。この「異なる人々」の協力と支えがあったからこそコロナ禍でも博士論文が書け、無事に学位を取得し、研究者としての第一歩を踏み出すことができました。 限られた時間と能力のなかでの執筆であり、史料の発掘、テキストの分析などに関しては十分であったとは思えませんし、別の観点、別の論点から考察を行うこともできたと思います。これらの反省は今後の課題です。 留学生活のなかで度々実感したのは、もう帰るべき故郷がないということです。幼年期と少年期は貴州で過ごしたので、大雑把に言えば故郷は貴州です。しかし、大学進学のために貴州から離れ、その後は天津で6年ほど、東京で8年ほどと、ずっと遠く離れた所に住み続けてきました。いつのまにか故郷であるはずの貴州は、ほんの一時住んでいた土地の1つ、という程度でしかなくなりました。 しかし、これは不幸なことではないと思います。なぜなら、私は帰るべき故郷を喪失することによって、複数の故郷を手に入れることができたからです。 哲学者のジル・ドゥルーズと精神分析家のフェリックス・ガタリの共著に『千のプラトー』という本があります。この中で2人の思想家は、人間の言語、文化、性、そして人間そのものの歴史といったものは、決してひとつの原理によって成り立っているわけではないと述べています。つまり、人間は、さまざまな言語、文化、性、歴史によって生きている。ドゥルーズとガタリはこのような「多数性」あるいは「複数性」の原理を提唱しています。 「複数性」の原理は、人間には多様性があるといった単純な事実を掲げるだけではなく、世界を変える可能性をもはらんでいる、と私は考えます。今後、私は単に「お客さん」としてではなく、一定の責任を持った立場で「複数の故郷で生きる」ことを実践し続けていきたいと思います。 <陳希(チン・キ)CHEN_Xi> 中国貴州省生まれ。2013年に文部科学省国費留学生として来日。2021年度渥美財団奨学生。中国近現代史を専攻、2022年3月に東京大学大学院地域文化研究専攻にて博士(学術)学位取得。現在、東京大学東アジア藝文書院特任研究員、津田塾大学非常勤講師。2022年度太田勝洪中国学術研究賞を受賞。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】第70回SGRAフォーラム「木造建築文化財の修復・保存について考える」へのお誘い(最終案内) 下記の通り第70回SGRAフォーラム「木造建築文化財の修復・保存について考える」をオンラインで開催いたします。参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。一般聴講者はカメラもマイクもオフのウェビナー形式で開催しますので、お気軽にご参加ください。 テーマ:「木造建築文化財の修復・保存について考える」 日時:2023年2月18 日(土)午後1時~午後4時(日本時間) 方法: オンライン(Zoom ウェビナーによる) 言語:日中韓3言語同時通訳付き ※参加申込(クリックして登録してください) https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_4_Fcwt3uRY2lTujxvUmi_w お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ■フォーラムの趣旨 東アジアの諸国は共通した木造建築文化圏に属しており、西洋と異なる文化遺産の形態を持っています。第70回SGRAフォーラムでは、国宝金峯山寺(きんぷせんじ)二王門の保存修理工事を取り上げ、日本の修理技術者から現在進行中の文化財修理現場をライブ中継で紹介していただきます。続いて韓国・中国・ヨーロッパの専門家と市民の代表からコメントを頂いた上で、視聴者からの質問も取り上げながら、専門家と市民の方々との間に文化財の修復と保存について議論の場を設けます。 今回のフォーラムを通じて、木造建築文化財の修復方法と保存実態をありのままお伝えし、専門家と市民の方々との相互理解を推進したいと考えております。 今回のフォーラムを実現することを可能にしてくださった、金峯山寺と奈良県文化財保存事務所に心からお礼を申し上げます。 ■プログラム 総合司会: 李暉(奈良文化財研究所アソシエイトフェロー/SGRA) 13:00 フォーラムの趣旨、登壇者の紹介 13:10 開会挨拶 五條良知(金峯山寺管長) 13:15 [話題提供] 竹口泰生(奈良県文化財保存事務所金峯山寺出張所主任) [討論] モデレーター: 金ミン淑(京都大学防災研究所民間等共同研究員/SGRA) 14:20 韓国専門家によるコメント ――――― 姜ソン慧(伝統建築修理技術振興財団企画行政チームリーダー) 14:35 中国専門家によるコメント ――――― 永昕群(中国文化遺産研究院研究館員) 14:50 ヨーロッパ専門家によるコメント ――――― アレハンドロ・マルティネス(京都工芸繊維大学助教) 15:05 市民によるコメント ――――― 塩原フローニ・フリデリケ(BMW_GROUP_Japan/SGRA) 15:20 視聴者からの質疑応答(Q&A機能を使って) ※同時通訳: 日本語⇔中国語:丁莉(北京大学)、宋剛(北京外国語大学/SGRA) 日本語⇔韓国語:李ヘリ(韓国外国語大学)、安ヨンヒ(韓国外国語大学) 中国語⇔韓国語:朴賢(京都大学)、金恵蘭(フリーランス) ※プログラムの詳細は、下記リンクをご参照ください。 プロジェクト概要(日本語版) https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2022/12/J_SGRAForum70_Program.pdf ポスター https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2023/01/J_70thSGRAforumLite.jpg 中国語版ウェブサイト https://www.aisf.or.jp/sgra/chinese/2023/01/16/sgraforum70/ 韓国語版ウェブサイト https://www.aisf.or.jp/sgra/korean/2023/01/15/sgraforum70/ ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●留学生の活動を知っていただくためSGRAエッセイは通常、転載自由としていますが、オリガさんは文筆活動もしていますので、今回は転載をご遠慮ください。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ ********************************************* -
WANG Xingfang “Time Flies Like an Arrow”
2023年2月9日 14:32:22
*************************************************************** SGRAかわらばん956号(2023年2月9日) 【1】エッセイ:王杏芳「光陰矢の如し」 【2】国史対話エッセイ紹介:牧原成征「歴史と私 ―なぜ歴史研究者になったか」 【3】第70回SGRAフォーラムへのお誘い(2月18日、オンライン)(再送) 「木造建築文化財の修復・保存について考える」 *************************************************************** 【1】SGRAエッセイ#280 ◆王杏芳「光陰矢の如し」 日本に来て4年半が過ぎた。時間が存在するかどうかはさておき、「ある時刻とある時刻との間の長さ」の意味で時間を理解する。こうした理解では、4年半の期間は決して短くはないが、あっという間である。光陰矢の如し。しかし、振り返ってみると、子供の時代はそうではなかった。時間がより長く感じられた。いや、まるで無限で永遠に終わらないように。しかし、年をとるにつれて、月日の流れの速さをますます強く感じるようになってきた。無論、これは私個人だけの感想ではない。多くの人に共通する感覚であろう。年を重ねるごとに時間が早く感じられるのはなぜか、その原因についてはさまざまな研究と調査があるが、ここでは省く。それより、時間の流れを強く感じている私自身の感想を述べてみたい。 子供の時に覚えた「子在川上曰、『逝者如斯夫、不舎昼夜』」(『論語』子罕第九)という孔子の感慨に、ここ数年、ようやく共感を持てるようになった気がする。孔子が川のほとりに立って言う。「歳月はこの川の流れのように去っていくものだ。昼となく夜となく、休むことはない」。それはいつでも奇麗な現代語に訳することができる。そして、この言葉の意味はよく理解できる、とずっと思っていた。確かに、言葉の表面的な意味はそうだった。しかしここ数年、時間の止まらない、特にその速さに驚き、文字の意味を自身の経験を通して体得するようになった。それと同時に、恐れ及び怖いという感覚も生じてきた。生命が徐々に消えてなくなることに対する恐れ、及び怠けが怖くなる気持ち。人間はなぜ命を失う死を恐れるのか、ここでは議論しない。それより、後者に注目してみたい。つまり、人間が時間を無駄にする怠けが怖くなるのはなぜか。さらに言えば、怠けたらなぜいけないのか、ということに関心を持つようになった。 怠けの話というと、『論語』公冶長篇の孔子が宰予を叱るあの有名な段落がすぐに思い出されるだろう。「宰予昼寢。子曰、『朽木不可雕也、糞土之牆不可朽也。於予與何誅』」と。宰予とは孔子の高弟の一人である。彼が昼寝をしていた。これに対して、孔子は「朽ちた木に彫刻はできない。土がぼろぼろに腐った土塀には上塗りをしてもだめだ。お前のような怠け者を責めても何ともしようがない」と言った。昼寝ぐらいでどうしてこんなに叱られるのだろうか。理由について昔から諸説あったが、それはそれとして、ここでは「怠け」についての理解に留める。 なるほど、孔子は怠けを批判していた。しかし、なぜ批判すべきなのか。前文の「川上之嘆」に、回答が潜んでいる。確かにそれは時の流れを感じる言葉だが、同時に川は休みなく流れ、万物は止まることなく変化するように、人間である我々も日夜努力しなければならないという意味にも読み取れるだろう。また、『周易』にも同じ趣旨の言葉が見られる。例えばあの有名な「天行健。君子以自強不息」。天の運行は現在に至るまで、ずっと休みなく健やかであるように、君子たるものも、この健やかな天の運行を範とし、自ら努め励み、怠けることなく奮励しなければならない、と。 天が健やかで休みなく運行し、万物が止まることなく変化する。自然としての人間である以上、それに従い、永遠に努力しなければならない。これは儒学の人間が怠けてはいけない理由になるだろう。魅力的な答えだと思う。 ちなみに、その答えを探すために、ネットで検索したり、周りの友達にもいろいろ聞いてみたりした。回答は一様ではないが、「怠けるのは別に悪くない」ということは通説である。なぜかというと、怠けるか怠けないかは個人次第でその人の自由であるからだ。 天にその根源があるか自己決定するか、そこにはまた伝統と近代との区別が見られる。 <王杏芳(おう・きょうほう)WANG Xingfang> 2021年度渥美奨学生。中国江西省出身。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程に在学中。日本政治思想史を専攻。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】国史対話エッセイのご紹介 1月25日に配信した国史対話メールマガジン第46号のエッセイをご紹介します。 ◆牧原成征「歴史と私 ―なぜ歴史研究者になったか」 私は愛知県蒲郡市の形原という、三河湾に面した、都市でも農村でもなく、あえて言えば漁師町とよぶべき所の出身である。小学生の頃から、なぜか郷土史的なことには関心があり、3年生か4年生で配られた郷土学習の副教材だけは配られると真っ先に読んでいた。たとえば三河湾に浮かぶ三河大島という無人島がどの村に帰属するか、現在の蒲郡市内(当時も同じ)のいくつかの村が舟を同時に出して競って決めた、というような伝説が記されていた。おそらく江戸時代頃のことを伝えた昔話だったのだろう。 やはり4年生か5年生の頃、学校の大掃除の際に出された廃棄物の中にデスクマット風の年表が捨てられていた。そこには日本史上の重要な事項とその年代の覚え方(いわゆる語呂合わせ)が載っていた。それを見つけた私は密かに、心躍る気持ちでそれを持ち帰り、毎日のように眺めた。主なものだけだったが、時代区分に関する年代などは、その時にすべて覚えた。 続きは下記リンクをご覧ください。 https://www.aisf.or.jp/sgra/kokushi/J_Kokushi2023MakiharaEssay.pdf ※SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。国史メルマガは毎月1回配信しています。SGRAかわらばんとは別にお送りしますので、ご興味のある方は下記より登録してください。3言語対応ですので、中国語、韓国語の方々にもご宣伝いただけますと幸いです。 ◇国史メルマガのバックナンバーおよび購読登録は下記リンクをご覧ください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【3】第70回SGRAフォーラム「木造建築文化財の修復・保存について考える」へのお誘い(再送) 下記の通り第70回SGRAフォーラム「木造建築文化財の修復・保存について考える」をオンラインで開催いたします。参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。一般聴講者はカメラもマイクもオフのウェビナー形式で開催しますので、お気軽にご参加ください。 テーマ:「木造建築文化財の修復・保存について考える」 日時:2023年2月18 日(土)午後1時~午後4時(日本時間) 方法: オンライン(Zoom ウェビナーによる) 言語:日中韓3言語同時通訳付き ※参加申込(クリックして登録してください) https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_4_Fcwt3uRY2lTujxvUmi_w お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ■フォーラムの趣旨 東アジアの諸国は共通した木造建築文化圏に属しており、西洋と異なる文化遺産の形態を持っています。第70回SGRAフォーラムでは、国宝金峯山寺(きんぷせんじ)二王門の保存修理工事を取り上げ、日本の修理技術者から現在進行中の文化財修理現場をライブ中継で紹介していただきます。続いて韓国・中国・ヨーロッパの専門家と市民の代表からコメントを頂いた上で、視聴者からの質問も取り上げながら、専門家と市民の方々との間に文化財の修復と保存について議論の場を設けます。 今回のフォーラムを通じて、木造建築文化財の修復方法と保存実態をありのままお伝えし、専門家と市民の方々との相互理解を推進したいと考えております。 今回のフォーラムを実現することを可能にしてくださった、金峯山寺と奈良県文化財保存事務所に心からお礼を申し上げます。 ■プログラム 総合司会: 李暉(奈良文化財研究所アソシエイトフェロー/SGRA) 13:00 フォーラムの趣旨、登壇者の紹介 13:15 [話題提供] 竹口泰生(奈良県文化財保存事務所金峯山寺出張所主任) [討論] モデレーター: 金ミン淑(京都大学防災研究所民間等共同研究員/SGRA) 14:20 韓国専門家によるコメント ――――― 姜ソン慧(伝統建築修理技術振興財団企画行政チームリーダー) 14:35 中国専門家によるコメント ――――― 永昕群(中国文化遺産研究院研究館員) 14:50 ヨーロッパ専門家によるコメント ――――― アレハンドロ・マルティネス(京都工芸繊維大学助教) 15:05 市民によるコメント ――――― 塩原フローニ・フリデリケ(BMW_GROUP_Japan/SGRA) 15:20 視聴者からの質疑応答(Q&A機能を使って) ※同時通訳: 日本語⇔中国語:丁莉(北京大学)、宋剛(北京外国語大学/SGRA) 日本語⇔韓国語:李ヘリ(韓国外国語大学)、安ヨンヒ(韓国外国語大学) 中国語⇔韓国語:朴賢(京都大学)、金恵蘭(フリーランス) ※プログラムの詳細は、下記リンクをご参照ください。 プロジェクト概要(日本語版) https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2022/12/J_SGRAForum70_Program.pdf ポスター https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2023/01/J_70thSGRAforumLite.jpg 中国語版ウェブサイト https://www.aisf.or.jp/sgra/chinese/2023/01/16/sgraforum70/ 韓国語版ウェブサイト https://www.aisf.or.jp/sgra/korean/2023/01/15/sgraforum70/ 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protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ ********************************************* -
LEE Chung-sun “My ’Power Plant’ that Blossomed in a Foreign Country”
2023年2月2日 22:33:24
*************************************************************** SGRAかわらばん955号(2023年2月2日) 【1】エッセイ:李貞善「異国で花咲いた私の『発電所』」 【2】寄贈書紹介:李來賛『豊かな経済、貧しい幸福』 【3】第70回SGRAフォーラムへのお誘い(2月18日、オンライン)(再送) 「木造建築文化財の修復・保存について考える」 *************************************************************** 【1】SGRAエッセイ#279 ◆李貞善「異国で花咲いた私の『発電所』」 2023年の年明けに韓国のユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領がアラブ首長国連邦(UAE)を訪問した。1980年の国交正常化後、韓国首脳のUAE国賓訪問は今回が初めてで、韓国・UAEの友好増進とともに、さらなる経済協力を図るためである。尹大統領と経済使節団が足を運んだのは、韓国電力公社が率いる共同事業体(以降、KEPCOコンソーシアム)が2009年12月に受注し、建設・運営しているバラカ(Barakah)原子力発電所の現場だった。 私の目を引いたのは、尹大統領がバラカ原発で韓国電力公社の社員たちと一緒に撮影した1枚の写真だ。大統領の後ろには、10年前に私と一緒に勤務した上司が立っていた。その隣にも、私の同僚だった人が特有の表情で誇らしげにほほえんでいる。 韓国電力公社は、2015年に日本に留学する前に11年間勤務した元職場。2003年から2014年まで事務職正規社員として清州(チョンジュ)とソウル本社で働いたが、2009年にUAEのバラカ原発4機を受注する事業の一員になった。約1年間、「War_Room」と呼ばれる本社の地下で、同僚と一致団結してプロジェクトに専念した。少し(大分)誇張すると、映画「パラサイト」の地下室を連想させる極秘の空間で。 忍耐の過程を経てKEPCOコンソーシアムは、日米連合やフランス連合などの有力な競合他社に打ち勝って約400億ドル(約5兆2千億円)規模の受注に成功した。韓国で12月27日が祝日(原子力安全及び振興の日)に制定されたのも、KEPCOコンソーシアムが2009年のこの日にUAEの最終事業者に選定されたことに由来する。これは、韓国史上最大規模の海外受注になっており、今もその記録は越えられていない。 受注に成功した後も、退職する2014年末までこのバラカ原発建設プロジェクトで事務業務を担当した。人事、総務、財務、送金、機密契約書管理など、多岐にわたる業務で、私の30代のバイオグラフィーに達成感と煩悩と、笑いと涙の強烈な痕跡を残した。 遠回りして日本に留学した初期には、自分が研究者としてもう遅いのではないかと不安だった。しかし、博士学位取得を目の前にしている今、導き出した結論は、あの11年間の社会経験が研究にも貴重な資産になり、むしろ今の私を精力的に動かす「発電所(発展所)」にもなり続けているということである。事業報告書の作成、多岐にわたる資料の分析、プレゼンテーションの担当、海外からの重要人物(VIP)リエゾン担当者としての業務連携、約束の順守、異文化理解、業務倫理の厳守、前向きな態度など… 振り返ってみたらこれらの経験は、どんな難関にも常に適応能力(レジリエンス)を持たせて明日に進展させる動力源になったのである。 UAEの発電所は2014年末に私の人生で停止したが、それ以降私は日本で別の形の「発電所」を10年近く稼働してきている。まずは未熟ながら書きたての博士論が、丹精を込めて築き上げた「発電所第一号機」になるだろう。2023年年明けに、砂漠で蒔いた種がバラカ原発に実った様子を遠くから凝視しながら感無量に思うと同時に、今の私の「発電所」を確かめてみる。 原発建設は通常5~10年ほど工期の遅れが発生する。他方で、KEPCOコンソーシアムは数多くの悪条件を乗り越え、約束した期日と予算内で工事を成功裏に終えた。冒頭で述べた尹大統領のUAE訪問を機に、韓国側がUAEから300億ドル(約4兆円)の追加投資の約束を取り付けたのも、KEPCOコンソーシアムのそのような工期厳守と事業への徹底したミッションがUAEに認められた結果である。これから私も、独自の観点とペース、温度、スタイルで、異国で私ならではの「発電所」を稼働していこうと考える。学位取得以降の次のステージに向かって、今後も2、3号機の新たな「発電所」を前向きに受注・建設していきたい。 私にとっては永遠の未完成品として残っているバラカ原発。あの発電所を見事に完成してくれた元職場の同僚たちにも、そして自分の土壌で各自の「発電所」を稼働している世界中のラクーン(渥美奨学生)たちにも、熱い応援の拍手を送る。 <李貞善(イ・ジョンソン)LEE Chung-sun> 東京大学大学院人文社会系研究科博士課程に在学中。2021年度渥美奨学生。高麗大学卒業後、韓国電力公社在職中に労使協力増進優秀社員の社長賞1等級を受賞。2015年来日以来、2017年国際建築家連合等、様々な論文コンクールで受賞。大韓民国国防部・軍史編纂研究所が発刊する『軍史』を始め、国連教育科学文化機関(ユネスコ)関連の国際学術会議で研究成果を発表。2018年日本の世界遺産検定で最高レベルであるマイスターを取得。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】寄贈書紹介 SGRA会員で韓国漢城大学経済学科教授さんより編著書をご寄贈いただきましたのでご紹介します。 ◆李来賛(イ・ネーチャン)『豊かな経済、貧しい幸福』 (原文は韓国語) 経済成長に隠されていたわが国(韓国)の現実を注視しながら、幸福と生活の質、社会資本と文化、不平等、世代間の葛藤、後世代に譲るべき課題としての韓日関係におけるわが国の現状を眺め、個人と社会と国家レベルで国民が幸せになる方法を検討する。経済的豊かさの中で忘れていた幸せな国の条件を考える。 (本文から) 幸福は包括的な概念である。もっと良い家や車を所有しようとする欲望で、渇きやストレス解消のように、普段はありがたく感じなくても足りなかったら不便になって埋めなければならない欠乏欲望、目標と理想に向けて精進して得られる喜びとどれほど貴重な人生を生きてきたかを評価する人生満足感、さらに他人の安寧を尊重する価値・規範の遵守も含む。WEF・IMD・ITU など公信力ある国際機関の指数評価で見ると、韓国の国家競争力はかなり高いのに対して、幸福・不平等および社会資本は最下位圏に属する。 多くの人々が「お金が多ければいい」と思う。お金は人間として上品な生活の質を維持するための重要な手段である。ところが、果たしてお金が増えれば幸せになるだろうか?1974年、経済学者リチャード・イスタリンは、一部の主要国の1960年代のデータを分析した後、「物質的に豊かであるとして必ずしも幸せではない」というイスタリン・パラドックスを発表し、以後幸福経済学が誕生することとなった。 書評等の日本語訳は下記リンクをご覧ください。 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2023/02/LeeNaeChanBookReview.pdf 出版社:イダブックス/発行日:2022年9月7日/ページ:352 価格:17,000ウォン/分野:経済経営/板状:153×224 ISBN:979-11-91625-79-0 03320 韓国語の書評は下記リンクをご覧ください。 http://news.tf.co.kr/read/economy/1964113.htm https://www.fnnews.com/news/202209271734328910 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【3】第70回SGRAフォーラム「木造建築文化財の修復・保存について考える」へのお誘い(再送) 下記の通り第70回SGRAフォーラム「木造建築文化財の修復・保存について考える」をオンラインで開催いたします。参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。一般聴講者はカメラもマイクもオフのウェビナー形式で開催しますので、お気軽にご参加ください。 テーマ:「木造建築文化財の修復・保存について考える」 日時:2023年2月18 日(土)午後1時~午後4時(日本時間) 方法: オンライン(Zoom ウェビナーによる) 言語:日中韓3言語同時通訳付き ※参加申込(クリックして登録してください) https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_4_Fcwt3uRY2lTujxvUmi_w お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ■フォーラムの趣旨 東アジアの諸国は共通した木造建築文化圏に属しており、西洋と異なる文化遺産の形態を持っています。第70回SGRAフォーラムでは、国宝金峯山寺(きんぷせんじ)二王門の保存修理工事を取り上げ、日本の修理技術者から現在進行中の文化財修理現場をライブ中継で紹介していただきます。続いて韓国・中国・ヨーロッパの専門家と市民の代表からコメントを頂いた上で、視聴者からの質問も取り上げながら、専門家と市民の方々との間に文化財の修復と保存について議論の場を設けます。 今回のフォーラムを通じて、木造建築文化財の修復方法と保存実態をありのままお伝えし、専門家と市民の方々との相互理解を推進したいと考えております。 今回のフォーラムを実現することを可能にしてくださった、金峯山寺と奈良県文化財保存事務所に心からお礼を申し上げます。 ■プログラム 総合司会: 李暉(奈良文化財研究所アソシエイトフェロー/SGRA) 13:00 フォーラムの趣旨、登壇者の紹介 13:15 [話題提供] 竹口泰生(奈良県文化財保存事務所金峯山寺出張所主任) [討論] モデレーター: 金ミン淑(京都大学防災研究所民間等共同研究員/SGRA) 14:20 韓国専門家によるコメント ――――― 姜ソン慧(伝統建築修理技術振興財団企画行政チームリーダー) 14:35 中国専門家によるコメント ――――― 永昕群(中国文化遺産研究院研究館員) 14:50 ヨーロッパ専門家によるコメント ――――― アレハンドロ・マルティネス(京都工芸繊維大学助教) 15:05 市民によるコメント ――――― 塩原フローニ・フリデリケ(BMW_GROUP_Japan/SGRA) 15:20 視聴者からの質疑応答(Q&A機能を使って) ※同時通訳: 日本語⇔中国語:丁莉(北京大学)、宋剛(北京外国語大学/SGRA) 日本語⇔韓国語:李ヘリ(韓国外国語大学)、安ヨンヒ(韓国外国語大学) 中国語⇔韓国語:朴賢(京都大学)、金恵蘭(フリーランス) ※プログラムの詳細は、下記リンクをご参照ください。 プロジェクト概要(日本語版) https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2022/12/J_SGRAForum70_Program.pdf ポスター https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2023/01/J_70thSGRAforumLite.jpg 中国語版ウェブサイト https://www.aisf.or.jp/sgra/chinese/2023/01/16/sgraforum70/ 韓国語版ウェブサイト https://www.aisf.or.jp/sgra/korean/2023/01/15/sgraforum70/ ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●留学生の活動を知っていただくためSGRAエッセイは通常、転載自由としていますが、オリガさんは文筆活動もしていますので、今回は転載をご遠慮ください。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ ********************************************* -
Olga KHOMENKO “War and Human Feelings Expressed through Art”
2023年1月26日 16:32:35
*************************************************************** SGRAかわらばん954号(2023年1月26日) 【1】エッセイ:オリガ・ホメンコ「美術で表現する戦争と人の気持ち」 【2】寄贈書紹介:廣田千恵子「中央アジア遊牧民の手仕事 カザフ刺繍」 【3】第70回SGRAフォーラムへのお誘い(2月18日、オンライン)(再送) 「木造建築文化財の修復・保存について考える」 *************************************************************** 【1】SGRAエッセイ#278 ◆オリガ・ホメンコ「美術で表現する戦争と人の気持ち」 ウクライナは昔から美術の強い伝統を持っている。口に出せない時も美術で表現していた時代が少なくない。口に出さなくても美術的な表現で会話できるから。その中でも特に美術が開花していた時代が、例えばロシア革命後から1930年代まで。ミハイロ・ボイチュック(1882-1937)を中心に多くのアーティストが育った。ウクライナの画家はベネチア・ビエンナーレにも参加し、1928年には17枚、1930年には15枚の絵を出展、ソ連の他の共和国よりずっと多かった。だが1930年代のスターリンの圧政で多くのアーティストが亡くなり、出展も止まった。 数年前にキーウのウクライナ国立美術館で、この時代の美術展をやっていたことを思い出す。スターリンは弾圧したアーティストの絵を集めて破棄する予定だったが、誰かが隠して守ってくれた。絵は普通に奇麗だったが、キャンバスの裏にも描かれていたもう一つの絵が印象的だった。ある風景画の裏側には秘密警察などを統括する内務人民委員部(NKVD/KGB)の軍人か公安のブーツだけが描かれており、その時代の怖さを感じた。 2014年にクリミアがロシアに併合され、ウクライナ東部で戦争が始まった時、東部出身のアーティストたちがすぐにそれを表現するようになった。2014年の秋にキーウのピンチック現代美術館で開催されていたジャンナ・カディーロワの作品はとても印象的だった。レンガでできているウクライナの地図があり、クリミアは床に崩れ落ちていた。美術の力はすごいと改めて気づいた。 2014年のマイダン革命からキーウの街にグラフィティが増えた。闘争の場となっていたフルーシェフスキー広場の近くの科学アカデミーの建物に描かれた、ウクライナの19世紀の国民的詩人タラス・シェフチェンコや同時代の詩人イワン・フランコとレーシャ・ウクラインカの肖像画がとても印象的だった。バンダナをつけたり、マスクをかけたり、戦う現在の人として表現されていた。そしてシェフチェンコの絵に彼の言葉「燃えている人に火は危なくない」、フランコの顔には彼の言葉「我々の人生は戦争である」、レーシャ・ウクラインカには彼女の言葉で「自分を自由にさせた人は、いつまでも自由になる」と書いてある。それを見て、やはりウクライナ人にとっては、19世紀にウクライナ語や文化が禁止されていたことがまだまだ生々しく、マイダン革命とリンクされると感じた。革命の後、キーウの建物に壁画(以下、ムラール)が現れ始めた。そしてこの8年間で非常に増えた。ベリーカ・ワシリキフスカ通り29番には、1918年にウクライナが最初に独立した時の大統領で歴史家のミハイロー・フルシェフスキーイ、また最後の軍司令官のパフロー・スコロパロドツキ、その時代の軍事委員長シーモン・ペトリューラなど歴史的な人物や19世紀の女性詩人レーシャ・ウクラインカが描かれている。 文化や昔話をテーマにするムラールも増えた。アンドリーイ坂にはウクライナ人とフランス人のアーティストのコラボによる「復活」というタイトルの作品がある。民族衣装を着て花輪を頭に飾っている少女が華やかで印象的だ。雨に濡れて色が薄くなったら書き直すという。保守的な人たちは「建物をきちんと修理しないで古さを隠してしまう」とムラールアートを結構批判している。だがソフィアでは1000年前から壁画が描かれていたことが知られており、キーウにもこの文化が昔からあって、時代と共に進化して建物壁の全体に広げていったということも考えられる。最近はさらに増え続け、街の名所にもなり、キーウの「顔」を少しずつ変えることになった。 そして、2月24日の前にウクライナのイラストレーターは少しずつ不安を感じるポスターを作り始めていた。今でもよく覚えているのは、リボン付きのチューリップのブーケに手榴弾がぶら下がっていて「占領者を花で迎えるのではない」と書いてあった。 侵攻が始まってしばらくは、アーティストたちも他の市民と同じようにフリーズしていた。皆まさかと思っていたのだろう。少し時間が経つといろいろな人の作品が現れるようになった。侵攻後のイラストアートが非常に盛んになって、人々の勇気を盛り上げた。3月初めの英紙The_Guardianには色使いがとても鮮やかで、海外でも戦前から知られているセルギーイ・マイドゥコフ(インスタグラムで「sergiymaidukov」参照)の戦争関係のイラストが掲載された。オレクサンデール・グレーホフ(同「unicornandwine」参照)は詩人のシェフチェンコのキャラクターを現代風の軍人に書いた。彼のイラストは明るい色使いで独特なユーモアがある。インスタグラムで作品を購入でき、一部が軍隊に寄付される。そして画家のオレーナ・パフロワが作った頭が良くていたずらっ子の猫の「イチジクくん」もウクライナの人々を勇気づけている(同「kit_inzhyr」参照)。 キーウには新しいムラールが増えた。戦争関係のものが多い。2022年5月にアントノワ通り13番に聖ジャウェリーナが描かれたが、教会関係者からクレームがあったのでトライデント(三叉槍)があるニンバズ(競走馬)を消した。爆弾を見つけて有名になったチェルニヒフ非常事態省に勤務している犬のパトロンのムラールも現れた。去年の夏には、伝説的な存在になった軍隊のパイロットで「キーウの幽霊」というニックネームの人のムラールが現れた。そして11月にバンクシーを名乗る英国のストリートアートのグループが、独立広場に瓦礫でシーソー遊びをする「戦争中の子供達」を描いた。イルピーンでは新体操をする女の子の絵だ。 有名なアーティスト同様、市民も最初の数週間は「どうして?なんで襲われたのだろう?」という質問が頭から離れず沈黙していたが、少し気持ちを整えてから落書き程度の絵日記を書く人が増えた。その日記や絵は非常に大事な意味があると思う。なぜなら戦争が終わってもその記録は残って、暗い時代の中でも人々が生き延びていた証拠になるから。私もその一人である。 2022年10月からミサイル攻撃が増えてウクライナで停電の繰り返しになった時、知り合いの子供が黒い紙に白い鉛筆で描きたいと両親に頼んだ。理由を聞くと、やはり今の状況を表現するのに一番いいとの返事だった。8歳のハルキフ市出身のジェーニャはハルキフ州内に避難し、半年以上過ごしていた。都会っ子で田舎生活は初めてだったので動物や植物にたくさん触れて絵を描き続けてきた。停電になると一瞬で絵のスタイルが変わった。風景は一緒だが、電気と一緒に色が絵から消え急に白黒になった。このような表現の仕方もある。 友達の写真家はこの10年近くウクライナの有名アーティストの写真を撮っていた。しかし戦争になってから避難先で避難者の写真を撮り始めた。戦争の大変さは人の顔で表現できるからだ。 今回、西ウクライナにたくさんの人が移動したが、イワノ・フランキフスク州の劇場は1日も活動を中止しなかった。逆に、俳優たちは昼と夜で2倍仕事をすることになった。昼間は支援物資を集めて避難者に配る作業、夜は通常通りの劇場活動。劇場には毎日2回行列ができていた。昼間は支援物資を受け取るために、夜は劇を見るために。上演中に空爆があったので舞台を地下室に移動し、そこで空襲中にも続けていた。戦争中には劇場が自然にシェルターとして使われており、地下室で劇をやっている最中に空爆から避難してくる人もたくさんいた。2022年2月から4月までに500人も入っていたという話もある。戦争になってから1年近くになるが、新しい劇も出している。その中で、ウクライナの19世紀の詩人レーシャ・ウクラインカの「森の歌」を現代風にアレンジしたものが特に評判が良い。 海外でもこの1年間、ウクライナ美術展が増えた。特に印象的だったのが2023年1月にマドリードで開催されたウクライナの1900年から1930年の間のモダニズム美術展だ。今までの美術との連続性が見えるウクライナ美術の社会との関わりや、鮮やかな色を昔から使うのを好んでいたことを知った。そしてスターリン政権に殺された多くのウクライナのアーティストの運命を考えて悲しかった。生きていればどれだけウクライナ美術が開花していたでしょう。 この1年間ウクライナで空爆され、破壊された素朴画で有名なマリア・プリマチェンコの美術館、哲学者のフリホーリーイ・スコヲロダーの博物館、そして10月のミサイル攻撃で被害を受けたキーウのハネンコ美術館のことを考えると、ウクライナ人の自由で豊かな表現の仕方への妬みがあり、1930年代の圧政時代と変な連続性があるように思える。 <オリガ・ホメンコ Olga_KHOMENKO> オックスフォード大学日産研究所所属英国アカデミー研究員。キーウ生まれ。キーウ国立大学文学部卒業。東京大学大学院の地域文化研究科で博士号取得。2004年度渥美奨学生。歴史研究者・作家・コーディネーターやコンサルタントとして活動中。藤井悦子と共訳『現代ウクライナ短編集』(2005)、単著『ウクライナから愛をこめて』(2014)、『国境を超えたウクライナ人』(2022)を群像社から刊行。 ※留学生の活動を知っていただくためSGRAエッセイは通常、転載自由としていますが、オリガさんは日本で文筆活動を目指しておりますので、今回は転載をご遠慮ください。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】寄贈書紹介 SGRA会員で千葉大学大学院博士課程の廣田千恵子さんより編著書をご寄贈いただきましたのでご紹介します。 ◆廣田千恵子、カブディル・アイナグル「中央アジア遊牧民の手仕事 カザフ刺繍」 ウズベクのスザニ、インドのミラー刺繍、トルコのオヤ…アジア各地に受け継がれる伝統の手仕事は、手芸ファンを魅了してやみません。 モンゴル国の西端に位置するバヤン・ウルギーには、「カザフ」といわれる遊牧民族が今も牧畜を営みつつ暮らしています。彼らは、遊牧、鷹匠、音楽、装飾など多くの独自文化を守り、発展させてきました。そんなカザフの人々が愛しい家族のために制作する美しい刺繍。現地では壁掛け布(トゥス・キーズ)として使用されますが、その大胆なデザインと色鮮やかさは圧巻の美しさです。 本書では、そんなカザフ刺繍の世界初の図案付き技法書として、小ぶりでシンプルなモチーフから、複数のモチーフを組み合わせた大ぶりなデザインまで、全て図案付きで紹介。基本的な作り方は、写真と説明でわかりやすく解説しながら、手持ちの服や小物にアレンジする方法まで幅広く網羅しています。 その大胆なデザインは、一見難しく見えるかもしれませんが、技法自体は大変シンプルなもの。刺繍枠は画材用のキャンパス枠、刺繍針はレース編み用のかぎ針と、日本で手に入る手芸材料で作ることができるので、刺繍初心者でも安心して始められます。 現地の美しい写真と文化背景を楽しみながら、実際に作品を作ることができる構成は、世界の手仕事、手芸ファンはもちろん、文化資料としても活用いただける保存版です。 発行:誠文堂新光社 判型:B5変(縦247mm×横185mm) 定価(税込):1,980円 発売日:2019年08月09日 ISBN:978-4-416-51955-4 詳細は下記リンクをご覧ください。 https://www.seibundo-shinkosha.net/book/craft/21009/ -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【3】第70回SGRAフォーラム「木造建築文化財の修復・保存について考える」へのお誘い(再送) 下記の通り第70回SGRAフォーラム「木造建築文化財の修復・保存について考える」をオンラインで開催いたします。参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。一般聴講者はカメラもマイクもオフのウェビナー形式で開催しますので、お気軽にご参加ください。 テーマ:「木造建築文化財の修復・保存について考える」 日時:2023年2月18 日(土)午後1時~午後4時(日本時間) 方法: オンライン(Zoom ウェビナーによる) 言語:日中韓3言語同時通訳付き ※参加申込(クリックして登録してください) https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_4_Fcwt3uRY2lTujxvUmi_w お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ■フォーラムの趣旨 東アジアの諸国は共通した木造建築文化圏に属しており、西洋と異なる文化遺産の形態を持っています。第70回SGRAフォーラムでは、国宝金峯山寺(きんぷせんじ)二王門の保存修理工事を取り上げ、日本の修理技術者から現在進行中の文化財修理現場をライブ中継で紹介していただきます。続いて韓国・中国・ヨーロッパの専門家と市民の代表からコメントを頂いた上で、視聴者からの質問も取り上げながら、専門家と市民の方々との間に文化財の修復と保存について議論の場を設けます。 今回のフォーラムを通じて、木造建築文化財の修復方法と保存実態をありのままお伝えし、専門家と市民の方々との相互理解を推進したいと考えております。 今回のフォーラムを実現することを可能にしてくださった、金峯山寺と奈良県文化財保存事務所に心からお礼を申し上げます。 ■プログラム 総合司会: 李暉(奈良文化財研究所アソシエイトフェロー/SGRA) 13:00 フォーラムの趣旨、登壇者の紹介 13:15 [話題提供] 竹口泰生(奈良県文化財保存事務所金峯山寺出張所主任) [討論] モデレーター: 金ミン淑(京都大学防災研究所民間等共同研究員/SGRA) 14:20 韓国専門家によるコメント ――――― 姜ソン慧(伝統建築修理技術振興財団企画行政チームリーダー) 14:35 中国専門家によるコメント ――――― 永昕群(中国文化遺産研究院研究館員) 14:50 ヨーロッパ専門家によるコメント ――――― アレハンドロ・マルティネス(京都工芸繊維大学助教) 15:05 市民によるコメント ――――― 塩原フローニ・フリデリケ(BMW_GROUP_Japan/SGRA) 15:20 視聴者からの質疑応答(Q&A機能を使って) ※同時通訳: 日本語⇔中国語:丁莉(北京大学)、宋剛(北京外国語大学/SGRA) 日本語⇔韓国語:李ヘリ(韓国外国語大学)、安ヨンヒ(韓国外国語大学) 中国語⇔韓国語:朴賢(京都大学)、金恵蘭(フリーランス) ※プログラムの詳細は、下記リンクをご参照ください。 プロジェクト概要(日本語版) https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2022/12/J_SGRAForum70_Program.pdf ポスター https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2023/01/J_70thSGRAforumLite.jpg 中国語版ウェブサイト https://www.aisf.or.jp/sgra/chinese/2023/01/16/sgraforum70/ 韓国語版ウェブサイト https://www.aisf.or.jp/sgra/korean/2023/01/15/sgraforum70/ ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●留学生の活動を知っていただくためSGRAエッセイは通常、転載自由としていますが、オリガさんは文筆活動もしていますので、今回は転載をご遠慮ください。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ ********************************************* -
Invitation to the 70th SGRA Forum “Restoration and Conservation of Wooden Architectural Cultural Properties”
2023年1月19日 15:46:31
*************************************************************** SGRAかわらばん953号(2023年1月19日) 【1】第70回SGRAフォーラムへのお誘い(2月18日、オンライン) 「木造建築文化財の修復・保存について考える」 【2】寄贈書紹介:林茜茜「谷崎潤一郎と中国」 *************************************************************** 【1】第70回SGRAフォーラム「木造建築文化財の修復・保存について考える」へのお誘い 下記の通り第70回SGRAフォーラム「木造建築文化財の修復・保存について考える」をオンラインで開催いたします。参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。一般聴講者はカメラもマイクもオフのウェビナー形式で開催しますので、お気軽にご参加ください。 テーマ:「木造建築文化財の修復・保存について考える」 日時:2023年2月18 日(土)午後1時~午後4時(日本時間) 方法: オンライン(Zoom ウェビナーによる) 言語:日中韓3言語同時通訳付き ※参加申込(クリックして登録してください) https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_4_Fcwt3uRY2lTujxvUmi_w お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ■フォーラムの趣旨 東アジアの諸国は共通した木造建築文化圏に属しており、西洋と異なる文化遺産の形態を持っています。第70回SGRAフォーラムでは、国宝金峯山寺(きんぷせんじ)二王門の保存修理工事を取り上げ、日本の修理技術者から現在進行中の文化財修理現場をライブ中継で紹介していただきます。続いて韓国・中国・ヨーロッパの専門家と市民の代表からコメントを頂いた上で、視聴者からの質問も取り上げながら、専門家と市民の方々との間に文化財の修復と保存について議論の場を設けます。 今回のフォーラムを通じて、木造建築文化財の修復方法と保存実態をありのままお伝えし、専門家と市民の方々との相互理解を推進したいと考えております。 今回のフォーラムを実現することを可能にしてくださった、金峯山寺と奈良県文化財保存事務所に心からお礼を申し上げます。 ■プログラム 総合司会: 李暉(奈良文化財研究所アソシエイトフェロー/SGRA) 13:00 フォーラムの趣旨、登壇者の紹介 13:15 [話題提供] 竹口泰生(奈良県文化財保存事務所金峯山寺出張所主任) [討論] モデレーター: 金ミン淑(京都大学防災研究所民間等共同研究員/SGRA) 14:20 韓国専門家によるコメント ――――― 姜スン慧(伝統建築修理技術振興財団企画行政チームリーダー) 14:35 中国専門家によるコメント ――――― 永昕群(中国文化遺産研究院研究館員) 14:50 ヨーロッパ専門家によるコメント ――――― アレハンドロ・マルティネス(京都工芸繊維大学助教) 15:05 市民によるコメント ――――― 塩原フローニ・フリデリケ(BMW_GROUP_Japan/SGRA) 15:20 視聴者からの質疑応答(Q&A機能を使って) ※同時通訳: 日本語⇔中国語:丁莉(北京大学)、宋剛(北京外国語大学/SGRA) 日本語⇔韓国語:李ヘリ(韓国外国語大学)、安ヨンヒ(韓国外国語大学) 中国語⇔韓国語:朴賢(京都大学)、金恵蘭(フリーランス) ※プログラムの詳細は、下記リンクをご参照ください。 プロジェクト概要(日本語版) https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2022/12/J_SGRAForum70_Program.pdf ポスター https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2023/01/J_70thSGRAforumLite.jpg 中国語版ウェブサイト https://www.aisf.or.jp/sgra/chinese/2023/01/16/sgraforum70/ 韓国語版ウェブサイト https://www.aisf.or.jp/sgra/korean/2023/01/15/sgraforum70/ -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】寄贈本紹介 SGRA会員で同済大学外国語学院にお勤めの林茜茜さんより、新刊書をいただきましたのでご紹介します。 ◆林茜茜「谷崎潤一郎と中国」 エキゾティシズムからノスタルジアへ! 〈中国〉を題材とした作品についての綿密な調査と精緻な読みによって、谷崎文学に底流する主調音を見事に説き明かした出色の論考。谷崎研究の第一人者千葉俊二早稲田大学名誉教授推薦! 本書では谷崎文学における中国とのかかわりを、<想像の中国>と<現実の中国>との相克という視座から追究してみた。(中略)留学の前に私の中にも<想像の日本>がちゃんとあったはずである。それが長年の留学生活を通して、想像とかけ離れた日本の一面を目撃し、<想像の日本>と<現実の日本>とがぶつかり合って、いつの間にか自分の中に新しい日本像ができあがっていた。自分の抱く日本への思いについて、とうてい一言ではいい表わせないが、正直なところそれには谷崎の作品と付き合った日々が確実に反映しているのは間違いないことである。(「あとがき」より) 発行:田畑書店 四六判 上製 定価:2,000円+税 ISBN:978-4-8038-0406-5 初版年月日:2022年12月20日 詳細は下記リンクをご覧ください。 https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784803804065 ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●留学生の活動を知っていただくためSGRAエッセイは通常、転載自由としていますが、オリガさんは文筆活動もしていますので、今回は転載をご遠慮ください。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ ********************************************* -
SUN Jianjun “SGRA China Forum #16 Report”
2023年1月13日 09:40:02
*************************************************************** SGRAかわらばん952号(2023年1月13日) 【1】孫建軍「第16回SGRAチャイナフォーラム『モダンの衝撃とアジアの百年』報告」 【2】催事紹介:INAF第11回研究会「EU・NATO_VS_ロシアの挾間で引き裂かれるウクライナの民族と地域の問題」(1月14日、オンライン) *************************************************************** 【1】SGRAチャイナフォーラム報告 ◆孫建軍「第16回SGRAチャイナフォーラム『モダンの衝撃とアジアの百年――異中同あり、通底・反転するグローバリゼーション』報告」 2022年11月19日(土)北京時間午後3時(日本時間午後4時)より第16回SGRAチャイナフォーラム「モダンの衝撃とアジアの百年――異中同あり、通底・反転するグローバリゼーション」が開催された。コロナが始まってから3度目のオンライン形式だ。2021年に引き続き、京都大学名誉教授の山室信一先生に2度目の登壇を依頼した。2年連続して同一の先生に講演を依頼するのはフォーラムが始まって以来初めてだった。 例年通り、開催にあたり、主催側の渥美財団今西淳子常務理事、後援の北京日本文化センター野田昭彦所長(公務のため、野口裕子副所長が代読)より冒頭の挨拶があった。前年同様、野田所長の挨拶にテーマに沿った問題提起があり、フォーラムのウォーミングアップともなった。 講演は定刻に始まり、山室先生は主に4部に分けて語った。まず議論の前提として「論的転回」と「2つのモダン」について触れ、本題に移行した。第2部は「時間論的転回――生活時間と時計時間そして国家時間」、第3部は「ジェンダー論的転回――服色と性差・性美そしてモダン美・野蛮美」、そして最後は「アメリカニズムとグローバリゼーション」であった。第2部から第4部までが、それぞれさらに3つの項目に細分されて、アジアにおける時間と空間の近代的成立の特徴と影響について分析が行なわれた。現代人として何とも思わない事物や思考などの裏側を解き明かす80分間はあっという間に終わった。 討論は澳門大学の林少陽先生によって進められた。中国で活躍している若手研究者、北京社会科学院の陳言先生と中国社会科学院外国文学研究所の高華キン先生より講演へのコメントが述べられ、そのコメントや新たな質問に山室先生が答えた。林先生が総括で語られた「アジアの近代化において、空間は時間を変えた」という話は深く考えさせられた。 百年の歴史を80分間で語るのは至難の業。振り返ってみれば、前年のフォーラムが終わった時から準備が始まっていたと言っても過言ではない。より多くの参加者の理解を促すために、中国通の山室先生からは様々な話題提供があった。何回ものメールのやりとり、そしてオンラインでの打ち合わせの結果、今回のタイトルが決まった。先生の知識の幅広さと人間としての謙虚さに心を打たれる連続であった。前年同様、事前に原稿を書き上げ、たくさんの画像を用意してくださった。もし前回は満足のいかない点があったとしても、講演終了時の先生の満面な笑みを見て、今回のフォーラムでやり残されたことはないだろう確信した。宣言通りに時間厳守されたことも心から尊敬してやまない。 厳しいコロナ対策の中でも、前回、前々回と同様、北京大学内で少人数ながら学生を集めた会場を設ける予定だったが、キャンパス内の陽性者発覚に続き、北京市全体の感染拡大を受け一般教員の入校が制限され、北京大側は全員オンライン参加を余儀なくされた。 このリポートを書き始めたころ、中国は「ゼロコロナ」から全面的に「ウィズコロナ」に切り替わった。多くの学生が次々と感染したのを知り、深く心を痛めた。私自身も感染を免れなかった。高熱、咳、全身の痛みとだるさにさいなまれる中、フォーラムのタイトルにある「通底・反転する」の真髄を噛みしめた。 オンラインで参加してくださった370余名の方々にあらためて感謝する。2023年こそ対面で行いたい。 最後に、北京大学の院生から感想文が寄せられたので紹介する。 ◇山室教授は、近代世界史を「近代としてのモダン」と「現代としてのモダン」の2つの段階に創造的に区分し、その過程を時間や空間の感覚、身体の倫理など、私たちに最も関係の深い日常生活の劇的な変化を通して示してくださいました。メディア、アート、服飾などに関する多くの用語を網羅し、山室先生の知識の幅の広さに驚嘆させられました。近代化の過程における「文明国の標準主義」の問題をめぐって、これまでの自分はマクロな視点から理解しようとしていましたが、今回の講演を通じて、身体感覚というミクロの視点から理解することができました。山室教授は日常生活と密接に結びつけながら、欧米に対応する中で東アジア(とりわけ日本と中国)の互いの拮抗や啓発から生じた平準化、同類化、固有化といった壮大な物語をつづりました。その思考の深さには尊敬の念が堪えません。講演の最後に触れた近代化と「アメリカニズム」の問題についても、考え続けていきたいです。(劉釗希、修士課程1年) ◇前回に続き、「近代」(モダン)というキーワードを見つめ直したご意見を伺うことができ、非常に勉強となりました。特にジェンダーの転換という部分で考えさせられました。その中、「モダンガール」や「新しい女」という言葉が示す視覚的表象に関して、洋装や断髪という現象に関する論述が興味深かったです。女性史・ジェンダー史の考察では、上記の現象を課題として取り上げ、近代の商業広告における女性表象を分析する研究が多く見られます。そのうち洋装と断髪といった女性表象は一種の消費者の理想像であり、商業販売のために作られたという論説があります。象徴としての洋装と断髪は「モダンガール」や「新しい女」という新しい語彙と深く絡み合い、商業社会の進展とともに、視覚・言語による女性像が作られたと考えます。こうしてみれば、あらためてジェンダー視点は「近代」を考察するために不可欠であると考えました。これを糧に今後の研究に励みたく存じます。本当にありがとうございました。(羅亭亭、博士課程3年) 当日の写真 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2023/01/China-Forum-16_Photos_light.pdf アンケート集計結果 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2023/01/chinaforum16_feedback_light.pdf <孫建軍(そん・けんぐん)SUN_Jianjun> 1990年北京国際関係学院卒業、1993年北京日本学研究センター修士課程修了、2003年国際基督教大学にてPh.D.取得。北京語言大学講師、国際日本文化研究センター講師を経て、北京大学外国語学院日本言語文化系副教授。専攻は近代日中語彙交流史。著書『近代日本語の起源―幕末明治初期につくられた新漢語』(早稲田大学出版部)。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】催事紹介 SGRA会員で北陸大学教授の李鋼哲さんより、自ら創設された(一社)東北亜未来構想研究所(INAF)の研究会のお知らせをいただきましたのでご紹介します。参加ご希望の方は下記より直接お申し込みください。 ◆INAF第11回研究会 日時:2023年1月14日(金)19:00~21:00 方法:オンライン(ZOOM) テーマ:「EU・NATO_VS_ロシアの挾間で引き裂かれるウクライナの民族と地域の問題」 発表者:羽場久美子(INAS副理事長・神奈川大学教授) 司会:李鋼哲(INAF所長) プログラムの詳細・参加登録は下記リンクをご覧ください。 https://inaf.or.jp/symposium-semina/第11回inaf研究会のご案内/ ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●留学生の活動を知っていただくためSGRAエッセイは通常、転載自由としていますが、オリガさんは文筆活動もしていますので、今回は転載をご遠慮ください。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ ********************************************* -
Olga KHOMENKO “Immigration History, War, Displaced Persons”
2023年1月6日 11:27:46
*************************************************************** SGRAかわらばん951号(2023年1月6日) あけましておめでとうございます。 今年もよろしくお願いします。 【1】エッセイ:オリガ・ホメンコ「移民史、戦争、避難民」 【2】寄贈本紹介:洪ゆんしん「[新装改訂版]沖縄戦場の記憶と『慰安所』」 *************************************************************** 【1】SGRAエッセイ#727 ◆オリガ・ホメンコ「移民史、戦争、避難民」 7、8年前から極東アジアにおけるウクライナ人運動史、移民史を研究している。ウクライナや米国、日本の資料館で調べながら1870年から1945年までウクライナ人がアジアでどのように暮らし、文化活動をしていたかに注目した。特にコロナ禍の間、米国で集めた資料をキーウで改めて読みながら、身分証明書もなく、移民先で色々ひどい目にあった人々の苦しみを感じていた。2022年2月24日のロシアの軍事侵攻後、まさか自分の研究テーマが私自身の現実になるとは夢にも思っていなかった。避難先の警察へ行き、指紋を取られて新しい身分証明書の発行を申し込んだ。研究者としての身分と自尊を取り戻すために必死だった。色々言われたりひどい目にあったりしたこともあった。研究で知ったことを、今度は自分の肌で感じることになった。 1945年の上海で難民が食料券をもらう際には家庭訪問があった。家に猫がいると「お金持ち」とみなされてもらえなかった。今年の春、犬や猫を連れて避難するウクライナ人が多かった。そうすると、住むところがなかなか見つからない。やはり「お金持ち」とみなされたこともあったようだ。この歴史的な関連を不思議に思った。動物は家族の一員で捨てられないというウクライナ人が多いが、周りの圧力に負けて手放した人もいる。 ウクライナから海外への移民の波はこれまで4回あった。目的はさまざまだ。第1波は1870年代半ばから第1次世界大戦まで。西ウクライナからの農民や労働者がカナダ、米国、そしてブラジルへ出稼ぎに出かけた。小作制度が廃止された結果、極東開発のために移動する人も少なくなかった。オーストラリアやニュージランド、ハワイに移動した人もいた。 第2波は第1次世界大戦と第2次世界大戦の間に社会的政治的な理由で人が動いた。ソ連政権の下にいたくない人が移動したと言っても良いかもしれない。ポーランドやチェコ、ルーマニア、フランス、ドイツ、米国、カナダなどに行った。 第3波は第2次世界大戦が終わった時に始まった。難民キャンプの元軍人、ナチスによって無理矢理に肉体労働のためにドイツに連れて行かれた人たち、戦争で難民になった人々など。この人たちは米国やカナダ、ブラジル、アルゼンチン、オーストラリアなどに移動した。この時アジアにいたウクライナ人ディアスポラも米国や南米の国々、オーストラリアへ動いた。 ソ連崩壊の頃には経済的な理由で第4波があった。その時に特に西ウクライナから米国やヨーロッパ(女性はヘルパーやベビーシッターで、男性は建設労働者として、行き先はポーランドやポルトガル、イタリアなど)、ロシアに多くの出稼ぎ労働者が出かけた。2014年にクリミア併合や東部で始まった戦争で、またポーランドや他の国に移民した人も少なくないが、それは特別な「波」とはされていない。 今回の軍事侵攻があってから「5回目の移民の波になった」と研究者が指摘し始めた。統計がまだまだ確実ではないが、2月以来1200万人が国外に出たという。戦争が長引くとこの中のどれくらいの人が帰ってくるか誰にも分からない。いずれにせよ人口4600万人のウクライナにとって大きな人災であることは間違いない。今回海外で避難民になったウクライナ人は、それ以前に移民した人たちと全く同じ経験をしている。持ち物はほとんどなく、身分証明書類もきちんとしてなくて、子供や動物を抱えて新しい住居を必死に探す。言葉の壁もあって新しい社会に溶け込むのに時間がかかるので、取りあえずウクライナ人コミュニティで固まることも多い。交流サイト(SNS)が進んでいる時代なので、新しい町で簡単につながって情報交換し、「歌う会」、「靴下を編む会」、そして「避難民や軍人を支援するボラティアの会」にまとまる。 海外に避難したのはほとんど女性と子供なので「女性の会」が多い。「ウクライナ女性はきれいな身なりをしているので避難民に見えない」という意見も聞いた。イタリアのロケから戻ってきた日本人の友達が、ローマでタクシーの運転手に言われたそうだ。服装や美容に力を入れているので「今まで見てきた避難民には見えない」と。コロナの3年間で皆、運動着姿になってしまっても、化粧もするし服装にもそれなりに注意を払っている。あまり私物が持てなかったソ連時代には、外に出かける時に服装で判断されることが多かったのでドレスアップしていた。 それを聞いた時、別の日本の知り合いから聞いた話を思い出した。キーウに格好良い若い社長が滞在していた。ヘアスタイルや服装を揃えて男性誌に出るモデルのような人だった。聞いてみると、小さい時に経済的にあまり恵まれなかったので「だらしない」と言われないように気をつけるようになったという。人って過去のトラウマから色々な生活習慣が生まれるのだ。ヨーロッパの避難所に所持品はほとんどないのにルイ・ヴィトンの鞄を持っていた女性がいたので受け入れ先の関係者が驚いたという。国によってドレスアップとドレスダウンするところがある。狙われないように南米では逆の見方があるということを、2016年にブラジルに行った時に初めて気づいた。 10年以上前から知っている2人のイギリスの友達の家族が実は避難民だった、と今回初めて知った。1人のお父さんは1950年代にエジプトから避難、もう1人のお爺さんはユダヤ系で20世紀初めに移ってきた。それまで一度もそのような話をすることがなかったが、今回の軍事侵攻でその記憶が戻ってきたようだ。「知らない人が私達を助けてくれた。そのお返しをしたいのでウクライナの家族を受け入れた」とも言っている。受け入れたウクライナ人は全く知らない人だったが、数カ月間で仕事も見つけて無事に自分の家も借りられたので、そのイギリス人の「ウクライナ株」も上がった。ありがたい話です。 しかしながら、外国の生活や他人の家に慣れることができず、なかなか新しい言葉を学べず、社会的地位が変わったので自分のアイデンティティーに危機を迎え、ウクライナに戻る人も少なくない。旦那がウクライナに残ったので家族で合流したいという理由も大きい。そんな時に子供の意見もよく聞く。母親だとやはりどうしても子供を守りたくて、子供を優先する。ドイツに避難した子供から話を聞いたことがある。「ハルキフに帰りたいが、攻撃が怖いから帰りたくない」「パパを大好きだがママは離れてほしくない」「ドイツの学校で友達もできた」「ママやおばあちゃんもやはり残るって」。複雑だがなんとなく分かる。この人たちが以前の移民たちと同じように自分のウクライナ人としてのアイデンティティーを少なくとも生活習慣や文化活動で守り続けるか、受け入れ国の社会に溶け込んでしまうかはまだ分からない。 友達のお母さんがドイツで泊まっているアパートの住人は掲示板にメッセージを貼ってくれた。「ドイツ語を話せないフラウ(夫人)がいるので、困った時には助けてあげてください」と。それで皆親切にしてあげる気になったようだ。避難民と受け入れる人々のこのような小さな交流が、受け入れてくれた社会になじんでいくきっかけとなるのだろう。 この1年でさまざまな人に会った。パレスティナの避難民にも会ったことがある。避難生活7年目と15年目の家族だった。7年目の人たちは子供がたくさんの言葉を話すことができ、人に優しくていろいろ手伝おうとしていた。15年目の人は子供の避難経験を思い出すと泣き出してしまうが、それ以外は特別に陽気だった。共通の友達に「避難してきた家族の経験は皆同じように過酷なものですが、きっと人に落ち込んだ気持ちを見せたらいけないと考えているのでしょう」と言われた。どうでしょうね。でもそうなのかもしれない。最初は落ち込んでいる人を助けようとするけど、それが続くと支援する側もマイナイス思考に疲れて離れるかもしれない。海外に避難したウクライナ人が強気で陽気で行くか、戦争から受けたトラウマでしばらくマイナス思考になるか分からないけど、受け入れてくれることを祈る。 <オリガ・ホメンコ Olga_KHOMENKO> オックスフォード大学日産研究所所属英国アカデミー研究員。キーウ生まれ。キーウ国立大学文学部卒業。東京大学大学院の地域文化研究科で博士号取得。2004年度渥美奨学生。歴史研究者・作家・コーディネーターやコンサルタントとして活動中。藤井悦子と共訳『現代ウクライナ短編集』(2005)、単著『ウクライナから愛をこめて』(2014)、『国境を超えたウクライナ人』(2022)を群像社から刊行。 ※留学生の活動を知っていただくためSGRAエッセイは通常、転載自由としていますが、オリガさんは文筆活動もしていますので、今回は転載をご遠慮ください。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】寄贈本紹介 SGRA会員の洪ゆんしんさんからご著書の深層改訂版をご寄贈いただきましたのでご紹介します。 ◆洪ゆんしん「[新装改訂版]沖縄戦場の記憶と『慰安所』」 沖縄に146カ所の日本軍「慰安所」が作られ、軍によって運営されていたことを、膨大な陣中日誌や聞き取り調査などから歴史的に明らかにした大著。2017年沖縄タイムス出版文化賞正賞、2020年オランダの国際的な出版社Brillより英語版が刊行されている。2016年初版を大幅に改訂し、並製本から上製本に変更した新装改訂版。 ISBN:978-4-7554-0323-1 2022年10月5日発行 詳細は下記リンクをご覧ください。 http://impact-shuppankai.com/products/detail/249 ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●留学生の活動を知っていただくためSGRAエッセイは通常、転載自由としていますが、オリガさんは文筆活動もしていますので、今回は転載をご遠慮ください。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ ********************************************* -
YANG Yu Gloria “SGRA Cafe Report”
2022年12月22日 16:43:43
*************************************************************** SGRAかわらばん950号(2022年12月22日) 【1】ヤン・ユー グロリア「第18回SGRAカフェ報告」 「韓日米の美術史を繋ぐ金秉騏画伯」 【2】SGRAレポート第100号(第20回日韓アジア未来フォーラム講演録)紹介 「進撃のKカルチャー ―新韓流現象とその影響力」 ◆◇◆◇◆ 今年もSGRAかわらばんをお読みいただき、ありがとうございました。 新年は1月5日から始めます。 皆さまにとって、世界にとって、平和な年になることを心底から願います。 *************************************************************** 【1】第18回SGRAカフェ報告 ◆ヤン・ユー グロリア「第18回SGRAカフェ報告」 1916年平壌に生まれ、2022年3月1日に105歳で亡くなった金秉騏(キム・ビョンギ)という画家がいる。若い頃を東京で過ごし、1947年以降はソウルで教育者・評論家として活躍、1965年に米国に渡り、そして100歳(2016年)の時に韓国に戻り、絵を描き続けた。 人生とキャリアを、国境を超えて紡いだ異色な作家を美術史ではどのように語ることができるか。2022年10月29日(土)にオンラインで開かれた第18回SGRAカフェ「韓日米の美術史を繋ぐ金秉騏画伯」は、その試みの場だった。問題提起・討論・質疑応答の3部から構成された本カフェは、世界各地から76人が視聴し非常に充実した内容となった。 まず問題提起として、コウオジェイ・マグダレナ氏(東洋英和女学院大学国際社会学部国際コミュニケーション学科講師)が金画伯に出会った記憶と彼への取材、作品の受容と評価などを、朝鮮半島・日本・アメリカで過ごした金画伯の人生のエピソードとともに生き生きと紹介した。金画伯の力強く抽象的な絵を満喫した後、発表の後半では、コウオジェイ氏は画伯の生涯と芸術創作がいかに「国史としての美術史(national_art_history)」の枠組みに挑戦をもたらしたかを指摘し、その枠組みでは見落としてしまう難点と限界、そして新たな可能性について、次に登壇する韓国・日本・米国で活躍している3人の美術史学者に投げかけた。 コウオジェイ氏の問いを受け、討論者として朴慧聖氏(韓国国立現代美術館学芸員)、五十殿利治氏(筑波大学名誉教授)、山村みどり氏(ニューヨーク市立大学キングスボロー校准教授)が登壇した。 朴氏は金画伯の回顧展「金秉騏:感覚の分割」(韓国国立現代美術館、2014-2015)を始め、20世紀のダイナミックな韓国美術史を紹介し、その中で様々な証言と口述を提供した金画伯の重要な位置を示した。彼の生涯と芸術創作は、様々な境界の間に位置し、またその境界を超えようと努力したと分析した。 続いて五十殿氏は、金画伯も言及した日本「アヴァン・ガルド洋画研究所」を手かかりに、そのメンバーや機関誌、展覧会などを探り出し、金画伯の東京時代と同時代の日本のモダン美術の動向、そして上野の美術館や銀座・新宿の小画廊が対抗しながらそうした動向の舞台となっていたと紹介した。 最後に山村氏は、米国での出版物や展覧会を通し、米国におけるアジア系アメリカ人の美術史の全貌を説明した。具体的に数名のアーティストとその作品を取り上げ、「アジア系アメリカ人」という枠組みでひとからげに解釈することの制限、「アジア系アメリカ人」の多様性、民族性とアイデンティティーの複雑な絡みを示した。 質疑応答では、あらためて金画伯と韓国・日本・アメリカ美術史の交差点を討論し、「国史」の枠組みを超越する美術史の書き方、東アジア美術史における共通の議論、そして美術史研究の倫理などについて討論を深め、国境を越える美術史の新たな可能性を提示した。質疑応答の後、発表者と討論者は「ミニ・オンライン懇親会」を行い、各国の美術史研究の現場の近況報告や、将来の研究コラボなどで話が盛り上がった。 カフェ当日は晴れだった。実はこのカフェを企画し始めた頃はまだ金画伯がご健在で、ご本人にオンラインでご参加いただこうという案もあった。残念ながら叶わなかったが、今回のカフェは金画伯を偲ぶ会にもなったのではないかと思う。日韓同時通訳付きだったため、韓国からの参加者も多く、ご感想・ご意見もたくさんいただき、こうした形で交流が広がっていけばよいと思う。このような交流の「場」を作り、新たな試みをサポートしてくださった渥美国際交流財団の皆様、企画したコウオジェイ氏、積極的に討論を深めた先生方に、心から感謝を申し上げたい。司会として大変有意義な経験だった。今後、「国史」の枠組みを超えたつながりを重視する美術史(connecting_art_histories)」について新たな試みを続けたい。 当日の写真 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2022/12/SGRACafe18Photoslight.pdf アンケート集計 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2022/12/SGRACafe18Feedback.pdf <ヤン・ユー グロリア YANG_Yu_Gloria) 2015年度渥美奨学生。2006年北京大学卒業。2018年コロンビア大学美術史博士号取得。東京大学東洋文化研究所訪問研究員を経て、九州大学人文科学研究院広人文学コース講師。近現代日本建築史・美術史を専攻。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】SGRAレポート紹介 SGRAレポート第100号のデジタル版をSGRAホームページに掲載しましたのでご紹介します。下記リンクよりどなたでも無料でダウンロードしていただけます。SGRA賛助会員と特別会員の皆様は冊子本をお送りしました。会員以外でご希望の方はSGRA事務局へご連絡ください。 SGRAレポート第100号(第20回日韓アジア未来フォーラム講演録) ◆「進撃のKカルチャー ―新韓流現象とその影響力」 2022年11月16日発行 https://www.aisf.or.jp/sgrareport/Report100.pdf <フォーラムの趣旨> BTSは国籍や人種を超え、一種の地球市民を一つにしたコンテンツとして、グローバルファンダムを形成し、BTS現象として世界的な注目を集めている。一体BTSの文化力の源泉をなすものは何か。BTS現象は日韓関係、地域協力、そしてグローバル化にどのようなインプリケーションをもつものなのか。 本フォーラムでは日韓、アジアの関連専門家を招き、これらの問題について幅広い観点から議論するため、日韓の基調報告をベースに討論と質疑応答を行った。 <もくじ> 【開会の辞】今西淳子(渥美国際交流財団常務理事・SGRA代表) 【第1部】 [報告1]小針進(静岡県立大学教授) 「文化と政治・外交をめぐるモヤモヤする『眺め』」 [報告2]韓準(延世大学教授) 「BTSのグローバルな魅力 ―外的、環境条件と内的、力量の要因―」 【第2部】 [ミニ報告]チュ・スワン・ザオ(ベトナム社会科学院文化研究所上席研究員) 「ベトナムにおけるKポップ・Jポップ」 [講演者と討論者の自由討論] 討論者:金賢旭(国民大学教授)、平田由紀江(日本女子大学教授) 【第3 部】 [質疑応答] 進行:金崇培(釜慶大学日語日文学部准教授)、金銀恵(釜山大学社会学科准教授) 回答者:小針進(静岡県立大学教授)、韓準(延世大学教授)、平田由紀江(日本女子大学教授) 【閉会の辞】徐載鎭(ソ・ゼジン:未来人力研究院院長) ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ ********************************************* -
BORJIGIN Husel “Ulaanbaatar Report 2022 Autumn”
2022年12月16日 12:20:00
*************************************************************** SGRAかわらばん949号(2022年12月16日) 【1】SGRAエッセイ:ボルジギン・フスレ「ウランバートル・レポート2022年秋」 【2】SGRAレポート第99号(第68回SGRAフォーラム講演録)紹介 「夢・希望・嘘 -メディアとジェンダー・セクシュアリティの関係性を探る-」 *************************************************************** 【1】SGRAエッセイ#726 ◆ボルジギン・フスレ「ウランバートル・レポート2022年秋」 2022年は日本・モンゴル外交関係樹立50周年だった。半世紀の日モ交流の成果を振り返り、同時に北東アジア各国の国際関係の現状や課題を総括し、ユーラシアの眼差しから日モ両国の関係がどのようなプロセスをへて構築されたか、どのように構築していくべきかなどをめぐって議論を展開することは、大きな意義を持つ。第15回ウランバートル国際シンポジウムはこの課題に応えるものであった。 9月3~4日、日本・モンゴル外交関係樹立50周年記念事業である第15回ウランバートル国際シンポジウム「日本・モンゴル ―ユーラシアからの眼差し」がモンゴル国立大学2号館203室で開催され、160名ほど研究者、学生等が参加した。昭和女子大学国際文化研究所と渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA)、モンゴル国立大学科学カレッジ人文科学系アジア研究学科の共同主催で、渥美国際交流財団、昭和女子大学、モンゴルの歴史と文化研究会、「バルガの遺産」協会から後援を、麒麟山酒造株式会社、ユジ・エネルジ有限会社から協賛を頂いた。 モンゴル国立大学科学カレッジ人文科学系アジア研究学科長Sh.エグシグ(Sh.Egshig)氏が開会の辞を述べ、モンゴル国駐箚日本国特命全権大使小林弘之氏(在モンゴル日本国公使参事官菊池稔氏代読)、モンゴル国立大学学長B.オチルホヤグ(B.Ochirkhuyag)氏、渥美国際交流財団事務局長角田英一氏、モンゴル国立大学科学カレッジ副学院長N.アルタントグス(N.Altantugs)氏が祝辞を述べた。その後、2日間にわたり、前在モンゴル日本大使清水武則氏、モンゴル科学アカデミー会員・前在キューバモンゴル大使Ts.バトバヤル(Ts.Batbayar)氏、一橋大学名誉教授田中克彦氏、ウランバートル大学教授D.ツェデブ(D.Tsedev)氏、東京外国語大学名誉教授二木博史氏、大谷大学教授松川節氏、モンゴル国立大学教授J.オランゴア(J.Urangua)氏などをはじめ、日本、モンゴルの研究者32名(共同発表も含む)により、21本の報告をおこなった。ウランバートル国際シンポジウムに初参加の角田氏はたいへん注目され、歓迎された。 シンポジウムはモンゴルの『ソヨンボ』『オラーン・オドホン』などの新聞により報道された。日本では『日本モンゴル学会紀要』第53号などが紹介する予定である。シンポジウムを終えて、9月5日午後から24日にかけて、私は「“チンギス・ハーンの長城”に関する国際共同研究基盤の創成」と「匈奴帝国の単于庭と龍城に関する国際共同研究」の研究プロジェクトでボルガン県、アルハンガイ県、ウムヌゴビ県、ヘンティ県などに行き、現地調査を実施した。その詳細も別稿にゆずり、ここでは番外編エピソードを紹介したい。 9月4日午後のエクスカーションで、海外からの参加者はトゥブ県のチンギス・ハーン騎馬像テーマパークを見学した。そこで予想もつかぬ「出来事」が起きた。ウランバートルから1時間半ほどの旅を経て、私たちのバスは目的地のテーマパークに着いた。88歳のK先生がバスを降りたとたん、ズボンのベルトをはずし、急いで近くの木に歩いていき、小便をしようとした。 「先生、白昼堂々とこんなところで…やめたほうがいい。罰金取られるよ。(テーマパークの)中にはお手洗いがあるから」と私は阻止しようとした。 しかし、K先生は「モンゴルでは大丈夫。もう我慢できない」と言いながら、木の下で用を足した。するとすぐ管理人らしい中年の男が走って来て、怒って止めようとした。 その後、みんなで記念写真を撮ってから、巨大なチンギス・ハーン騎馬像(建物)に入った。約1時間の見学を終えて、私たちが騎馬像から出ると、中年の女性 ―テーマパークの支配人が待っていた。「あなたたちの代表は誰ですか」と聞かれたので、「何かありましたか」と尋ねた。 「あなたたちのなかの1人がこのテーマパークの芝生で小便をした。罰金です。防犯カメラにちゃんと写っている」と支配人は言う。 「いくらですか」と聞いた。 「10万トゥグリグ(約4000円)」。 私はK先生に「どうしよう。やはり罰金です。10万トゥグリグ」と言った。 「10万トゥグリグ?高いね。ね、あの人に、“僕はそこで半分しかおしっこしなかった。だって、あのおじさんに阻止されたから。だから、半額にしてくれないか”と交渉してみて」と頼まれた。 言われた通り、女性支配人に説明した。 「半額?無理。半分したにしろ、全部したにしろ、おしっこしたことは事実でしょう。どれほどしたかとは関係ない。割引はできないよ」と、戸惑った支配人は厳しく言った。 K先生は「おかしいな。半分しかしなかったのに、なぜ全額を支払うか。納得できないね。半分したから、支払うのも半分にするのは妥当だろう」と、再び私に交渉させた。実はK先生、モンゴル語がうまい。しかし、なぜかずっと私に交渉させる。 支配人は突然何かを理解したようで、「そんなことってあるの。もういいわ。分かった。半額の5万トゥグリグをください」と笑いながら言った。 K先生は、まわりに悠然と歩いている牛や馬、羊などの家畜を指しながら、「彼女(支配人)に聞いて。牛とか、馬、羊とかさ、毎日自由にここでおしっこをしたり、うんこをしたりしている。これってどうやって罰金取るのか。誰が支払うのか。誰に支払うのか。ほら、あの犬おしっこしているよ」と。 支配人は一瞬言葉を失ったようだが、少し考えて、「これ…、これは罰金取らないよ。だって、これは自然のことで大自然には何の悪いことにもならないし、自分の家畜だから」と言いながら、笑いが止まらなかった。 「おかしいよね。だって、僕のも自然なことじゃないか。僕のおしっこで大自然に貢献したじゃないか。僕にお金を支払うべきじゃないか」とK先生も笑いながら5万トゥグリグを払った上で、今度は「ね、領収書をくれないかと聞いて」と私に言った。 「領収書?面白い人ね。ここには領収書はないよ。今日、ウランバートルの本社は休みなので、明日電話して。そこからちゃんともらえる」と支配人は笑いをこらえられず、電話番号まで教えてくれた。 結果を聞いたK先生は、こんな話をし始めた。 「モンゴルは本当に変わったね。昔はどこに小便しても大丈夫だった。今はダメになったか。不思議。領収書ももらえるのか。モンゴルはしっかりしているね」 「あの支配人も、なぜ僕に“おしっこを半分しかしなかったということをどのように証明するか”と聞かなかったのか。人間って、おしっこを半分で止めるのはけっこう難しいよ。ほとんど人はできない。それをどうやって証明し、どうやって検証するのだろう」 「でも僕は嘘ついていないよ。僕はできる。さっき、本当に半分しかしなかった」 「明日、ちゃんと領収書をもらってね。彼らはそこに何を書くかが興味深い。“罰金10万トゥグリグのところ、おしっこは半分しかしなかったため、その半額の5万トゥグリグ”と書くか。想像もつかない。その領収書をちゃんともらってくださいよ。日本に帰ったら、新聞にこのことを書くよ。面白いね…」 帰りのバスの中では、この出来事が延々と話題になった。 その夜、スフバートル広場近くの日本レストラン「ナゴミ」で懇親会が開かれた。最後に私がK先生に中締めのご挨拶をお願いした。K先生はいくつかのことを振り返ったが、やはりこの出来事が話の中心になり、大いに盛り上がった。 第15回ウランバートル国際シンポジウムの写真は下記リンクよりご覧いただけます。 https://www.aisf.or.jp/sgra/plan/photo-gallery/2022/18011/ <ボルジギン・フスレ BORJIGIN_Husel> 昭和女子大学国際学部教授。北京大学哲学部卒。1998年来日。2006年東京外国語大学大学院地域文化研究科博士後期課程修了、博士(学術)。東京大学大学院総合文化研究科・日本学術振興会外国人特別研究員、ケンブリッジ大学モンゴル・内陸アジア研究所招聘研究者、昭和女子大学人間文化学部准教授、教授などをへて、現職。主な著書に『中国共産党・国民党の対内モンゴル政策(1945~49年)――民族主義運動と国家建設との相克』(風響社、2011年)、『モンゴル・ロシア・中国の新史料から読み解くハルハ河・ノモンハン戦争』(三元社、2020年)、編著『国際的視野のなかのハルハ河・ノモンハン戦争』(三元社、2016年)、『日本人のモンゴル抑留とその背景』(三元社、2017年)、『ユーラシア草原を生きるモンゴル英雄叙事詩』(三元社、2019年)、『国際的視野のなかの溥儀とその時代』(風響社、2021年)、『21世紀のグローバリズムからみたチンギス・ハーン』(風響社、2022年)他。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】SGRAレポート紹介 SGRAレポート第99号のデジタル版をSGRAホームページに掲載しましたのでご紹介します。下記リンクよりどなたでも無料でダウンロードしていただけます。SGRA賛助会員と特別会員の皆様は冊子本をお送りしました。会員以外でご希望の方はSGRA事務局へご連絡ください。 SGRAレポート第99号(第68回SGRAフォーラム講演録) ◆「夢・希望・嘘 -メディアとジェンダー・セクシュアリティの関係性を探る-」 2022年6月9日発行 https://www.aisf.or.jp/sgrareport/Report99light.pdf <フォーラムの趣旨> 現代社会に生きる者がメディアの影響からのがれることは難しい。服から食べ物まで、私たちの日常的なあらゆるものの選択はメディアに左右されている。 同様に、子供のころからジェンダーやセクシュアリティに関わる情報にさらされ、女性は、男性は、いかに行動すべきなのか、どのようなジェンダーやセクシュアリティが存在するのか、恋愛とは何なのかというイメージもメディアにより作られている。メディアは意見を作るための貴重なツールであるだけでなく、意見を変えるためのツールでもある。 本フォーラムではメディアはどのように恋愛、ジェンダーやセクシュアリティの理解に影響を与えているのか?視聴者やファンはどのようにメディアと接触しているのか?社会的な変化のために、メディアをどのように利用することができるのか? など、現代におけるメディアとジェンダーおよびセクシュアリティの関係性のさまざまな様相を皆さんと共に掘り下げ、探ってゆくことを目指した。 <もくじ> [基調講演]ハンブルトン・アレクサンドラ(津田塾大学) 今の時代、白馬に乗った王子様って必要? ―リアリティーテレビの「バチェラー・ジャパン」と「バチェロレッテ・ジャパン」から見たジェンダー表象― [発表1]バラニャク平田ズザンナ(お茶の水女子大学) 夢を売り、夢を描く ―ジェンダー視点からみる宝塚歌劇団の経営戦略と関西圏のファン文化― [発表2]于 寧(国際基督教大学) 中国本土のクィア運動におけるメディア利用 ―北京紀安徳咨詢センターによるメディア・アクティビズムを中心に― [発表3]洪ユン伸(一橋大学) #MeTooからデンジャンニョ(味噌女)まで ―韓国のメディアにおける「フェミ/嫌フェミ」をめぐって― [ディスカッション] ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ ********************************************* -
LI Kotetsu “Poultry Golden Eggs and Poultry-Taken Eggs”
2022年12月8日 13:22:51
*************************************************************** SGRAかわらばん948号(2022年12月8日) 【1】SGRAエッセイ:李鋼哲「養鶏金卵と殺鶏取卵」 【2】催事紹介:展覧会およびシンポジウム 「ガエ・アウレンティ 日本そして世界へ向けた、そのまなざし」 *************************************************************** 【1】SGRAエッセイ#725 ◆李鋼哲「養鶏金卵と殺鶏取卵」 11月3日のSGRAかわらばん943号に、筆者のエッセイ『台湾をもっと知ろう』を題とする第6回アジア未来会議の東北亜未来構想研究所(INAF)セッションに関するレポートが掲載された。 筆者もそのセッションで「半導体産業におけるグローバル・サプライ・チェーン再編―米中覇権争いと台湾―」をテーマに発表した。米中貿易摩擦および覇権争いが激しさを増す中、「半導体を制する者は21世紀を制する」と言われるので、それに関する資料を収集・分析して、半導体の開発・生産・販売を巡る米中台3者の関係を明らかにしようとした。 このテーマと関連して11月に注目すべきニュースが流れた。「(バンコク中央社)アジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議が19日、タイ・バンコクで閉幕した。蔡英文総統の代理として出席した張忠謀(モリス・チャン)氏(91歳)は、会議初日の18日に中国の習近平国家主席と非公式に会話したことを19日夜に開いた記者会見で述べた。張氏によると、2人は18日午前、休憩室であいさつを交わした。張氏は昨年股関節の手術をしたと話すと、習氏は「今は元気そうで何よりです」と応じたという。また、19日にハリス米副大統領と会談したことについては、副大統領は半導体大手の台湾積体電路製造(TSMC)によるアリゾナ州での工場建設を歓迎する他、台湾を支援する米国の決意を改めて示したとした。張氏はTSMCの創業者で、APEC台湾代表に選ばれるのは2006年以来6回目で、蔡政権が発足した16年以降では5回目」、という内容だった。 TSMCは世界屈指の半導体製造企業。台湾経済部(日本の経済産業省に相当)によると、2020年時点で台湾のファウンドリー(半導体の受託生産)は世界シェアの7割を占め、世界1位のTSMCだけでシェア50%を超えるという。特に先端ロジック半導体で世界をリードしており、米国半導体工業会(SIA)によると、線幅10ナノ・メートル(nm、1nm=10億分の1メートル)以下の製造工場の92%が台湾、8%が韓国に立地。特に台湾のファウンドリーは携帯電話から戦闘機まで、すべてのハイテク機器に内蔵される世界最先端のコンピューターチップを製造している。 米中両大国は台湾製半導体に大きく依存している。日経の記事によると、TSMCは、F-35ジェット戦闘機に使用されるXilinx(ザイリンクス)などの米国の兵器サプライヤー向けの高性能チップや、米国防総省承認の軍用チップなども製造。米軍が台湾製チップにどの程度依存しているのかは不明だが、米政府がTSMCに対して米軍用チップの製造工場を米本土に移転するよう圧力をかけていることからも、その重要さがうかがえる。また、米産業界も台湾製半導体に依存している。iPhone_12、MacBook_Air、MacBook_Proといった各種製品で使用されているAppleの5ナノ・プロセッサ・チップを提供しているのはTSMC1社のみだと考えられている。iPhone_13やiPad_miniなどAppleの最新ガジェット内蔵のA15_BionicチップもTSMC製。顧客はAppleだけではない。Qualcomm、NVIDIA、AMD、Intelといった米大手企業もTSMCの顧客だという。 中国も2020年時点で約3000億ドル(約45兆円)相当の半導体チップを大量に輸入しており、言うまでもなく台湾は最大の輸入元である。中国は外国製チップへの依存度を縮小すべく、「中国製造2025」という計画で数千億ドルを投資しているが、その需要を国内のみで賄えるようになるのはまだ先の話である。中国の最先端半導体メーカのSMIC製造プロセスは、TSMCより数世代遅れている。SMICは現在7nm製造のテスト段階に入ったところだが、TSMCはすでに3nm、2nm製造プロセスまで進んでいる。そのため、中国企業は台湾製チップに頼らざるを得ない。中国のハイテク企業Huaweiも20年時点、TSMCの2番目の大手顧客で、5nmと7nmのプロセッサーの大半をTSMCに依存している。HuaweiはTSMCの2021年総収益の12%を占めていると言われている。 このような話が、本エッセイのテーマ「養鶏金卵と殺鶏取卵」とどのような関係があるのか。2つの4文字熟語は中国の諺である。鶏を育てて金の卵を産み続けてもらうのか、鶏を殺して卵を取り出して肉と一緒に食べてしまうのか、という話である。賢いものは前者を選択し、愚かなものは後者を選択するという意味である。 米政府は今年7月から8月にかけて、中国の最大手ファウンドリー、SMIC向けの14nmから先の微細化世代に対応する半導体製造装置の輸出を許可制とし、事実上の禁輸とした。また中国向けの高性能AIチップの輸出を許可制として、軍事目的が疑われる場合の輸出を禁じ、対中国半導体規制は一段と強化された。また、8月9日には米国でCHIPS法が成立、今後5年間で527億ドルの米半導体産業に対する補助金や税額控除により、生産能力、研究開発や供給網(サプライ・チェーン)を強化するとしている。台湾の半導体技術だけではなく人材も米国にとって宝物(金卵)だとわかっているからである。もし、その台湾が中国に飲み込まれてしまうと、「半導体を制する者は世界を制する」ということで、中国が世界を制することになるが、覇権国の米国としては絶対に譲れない。しかし、台湾を巡る米中戦争はどうしても避けたいところだ。 中国の対応はどうなのか。8月2日にペロシ米下院議長が台湾を訪問したが、「中国の核心的利益(レッド・ライン)を犯す」と、複数の機関が声明を一斉に発表して猛反発した。外務省はバーンズ米大使を夜中に呼びつけるという異例の対応で「ペロシ議長は意図的に挑発を行い、台湾海峡の平和と安定を破壊した。その結果は極めて重大で決して見過ごすことはできない。米国は自らの過ちの代償を支払わなければならない」と厳しく非難した。さらにペロシ議長が台湾から帰国後の4日午後、台湾を取り囲むように6か所の海域と空域で11発のミサイル射撃を行い「重要軍事演習」を行うと発表、地域の緊張が高まったことは生々しく覚えているだろう。 10月の第20回共産党大会の報告で、習近平主席は台湾問題に関して、「武力行使を放棄するとは決して約束しない」、「我が国の完全な統一は実現しなければならず、それを実現する」と述べている。習氏が掲げる「中華民族の偉大な復興」の重要な内容は「祖国統一」である。米国をはじめとする西側諸国は、習氏が任期中に台湾統一を目指していると分析している。現状では台湾との平和統一は望めない(民進党は統一反対を表明)と判断した場合、武力を使うことも「なきしもあらず」だと思う。 また、中国国際経済交流センターのエコノミスト陳文玲氏(政策決定に影響力が大きいと言われる)は、5月30日に中国人民大学が主催した講演会で、「米国と西側諸国がロシアに向けたような破壊的な制裁を中国に科すならば、供給網を再構築するという意味で、台湾を取り戻さなければならない。もともと中国のものであったTSMCを中国の手中に収めなければならない」と発言した、とネット・メディア「観察者網」が6月7日に伝えた。 もし当局がこの発言通りに意思決定し実行するとすれば、「台湾解放」の戦争になりかねないし、そうなれば、金卵を産んでいる台湾が中国のものになるという考え方であろうが、結果的には「殺鶏取卵」になるのではないか。中国のリーダーはそんな愚か者ではないことを祈る。「養鶏金卵」という賢者の道を選択すべきだと思うし、それこそ平和への道である。その意味で今回のAPECでのTSMC創業者である張忠謀氏の米中両国首脳との柔軟な外交は重要な意味を持つのだ。 <李鋼哲(り・こうてつ)LI_Kotetsu> 1985年北京の中央民族大学業後、大学院を経て北京の大学で教鞭を執る。91年来日、立教大学大学院経済学研究科博士課程単位修得済み中退後、2001年より東京財団、名古屋大学国際経済動態研究所、内閣府傘下総合研究開発機構(NIRA)を経て、06年11月より北陸大学で教鞭を執る。2020年10月1日に一般社団法人・東北亜未来構想研究所(INAF)を有志たちと共に創設し所長を務め、日中韓+朝露蒙など多言語能力を生かして、東北アジア地域に関する研究・交流活動に情熱を燃やしている。SGRA研究員および「構想アジア」チームの代表。近著に『アジア共同体の創成プロセス』、その他書籍・論文や新聞コラム・エッセイ多数。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】催事紹介 SGRA会員でイタリア文化会館館長のシルバーナ・デマイオさんから展覧会とシンポジウムのご案内をいただきましたのでご紹介します。 ◆「ガエ・アウレンティ 日本そして世界へ向けた、そのまなざし」 イタリア文化会館のグランドデザインを手がけた建築家・デザイナーのガエ・アウレンティ(1927-2012)が亡くなって今年で10年になります。アウレンティはポンピドゥー・センター(パリ)国立近代美術館プロジェクトや、オルセー美術館(パリ)やパラッツォ・グラッシ(ヴェネツィア)の改修、アジア美術館(サンフランシスコ)など美術館建築の分野で世界的に活躍した建築家です。しかしその業績は建築だけではなく、インテリアや舞台美術、都市計画まで多岐にわたります。日本での作品はイタリア文化会館とイタリア大使館事務棟で、1991年には高松宮殿下記念世界文化賞を受賞しました。本展ではアウレンティの作品の一部のオリジナルドローイング、写真、模型、建築素材、パネルなど100点以上を展示し、その足跡を辿ります。 【展覧会】 会期:2022年12月11日(日)~2023年3月12日(日)11:00~17:00(入場無料) 休室日:月曜日、2022年12月24日(土)~2023年1月3日(火)、1月31日(火)~2月2日(木)、2月28日(火)~3月2日(木) 会場:イタリア文化会館エキジビションホール 【シンポジウム】 日時:2022年12月11日(日)15:00~17:00(入場無料) 会場:イタリア文化会館ホール お申込み:https://iictokyobooking.net/rsv/6111/ お問い合せ:[email protected] プログラム(日伊同時通訳付): ◇第1部:講演 ニーナ・アルティオーリ(ガエ・アウレンティ・アーカイブ所長) ニーナ・バッソリ(ミラノ・トリエンナーレ キュレーター) 德家統(建築家・合同会社team_AeO一級建築士事務所主宰) 横手義洋(東京電機大学未来科学部建築学科教授) ◇第2部:ディスカッション モデレーター:陣内秀信(法政大学名誉教授) 登壇者:ニーナ・アルティオーリ、ニーナ・バッソリ、德家統、横手義洋 質疑応答 詳細は下記リンクをご覧ください。 https://iictokyo.esteri.it/iic_tokyo/ja/gli_eventi/calendario/2022/12/mostra-aulenti.html ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 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