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JIA Haitao “Dramatization of the Novel ‘Blossoms Shanghai’”
2024年8月2日 23:15:30
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SGRAかわらばん1026号(2024年8月2日)
【1】賈海涛「小説『繁花』のドラマ化:虚無から主旋律の「大きな物語」へ」
【2】催事紹介:2025年第14回村上春樹国際シンポジウム発表者募集のお知らせ
【3】第9回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性「東アジアの『国史』と東南アジア」へのお誘い(最終案内)
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【1】SGRAエッセイ#772
◆賈海涛「小説『繁花』のドラマ化:虚無から主旋律の「大きな物語」へ」
金宇澄の長編小説『繁花』は学部4年生の頃から研究対象としてきたもので、昨年提出した博士論文の中でも一章を割いてこの作品を論じた。ここ数年の中で上海語の方言語彙を取り入れた有数の小説であるだけでなく、戯曲・舞台劇・ラジオやテレビドラマなど様々な様式に改編され、広く注目されている文学作品でもある。金宇澄自身は絵を描くことが好きで、小説の中に多くの手描きのイラストを取り入れ、近年は各地で個展を開き、画集を出版するなど、すでに画家と言えるほどになっている。
2024年1月、ウォン・カーウァイ監督のドラマ『繁花』が中国大手の動画共有プラットフォームであるテンセントビデオで配信され、大きな反響を呼んだ。近年中国本土で高品質のドラマが非常に少ない現状で、その質と影響力は否定できない。ただし、『繁花』の「素晴らしさ」は、監督の一貫した高水準の撮影によるものであり、原作の物語を上手く翻案した「素晴らしさ」ではなかった。ドラマが配信された後、原作の研究者としてレビュー記事を執筆しようと考えたが、ドラマの内容は原作の物語をほとんど踏まえず、人物設定や背景の一部を借りただけで、全く新しい物語とも言えるので見送った。
原作の『繁花』は、1960年代から70年代の文化大革命期、そして80年代以降の経済成長の時代という二重のタイムラインで交互に語られる。特に文化大革命期の物語が高く評価された。上海で育った主人公のひとりである少年時代の阿宝はブルジョア階級家族の出身で、旧フランス租界にあった西洋風の家屋に住んでいた。文革の階級批判によって家財が没収され、幼なじみの女友達も家政婦も姿を消した。家族は上海近郊の労働者階級向けの団地に強制的に引っ越しさせられ、プライバシーのない生活を余儀なくされた。その経験は後に貿易に携わる阿宝の虚無的な恋愛観や人生観に大きな影響を与え、80年代の物語における彼の言動を理解する上で不可欠な背景といえるだろう。
しかし、ドラマ『繁花』は文革期のタイムラインがほぼ削除され、阿宝は単に経済成長期の発展を追い風に対外貿易で最初の資金を稼ぎ、成功して株式投資に進出する商人というルーツがない人物像として描かれている。この人物像の背後には、中国の改革開放政策や90年代の上海浦東開発政策により、中国社会全体が急速な発展を迎えようとした物語が含まれている。このような「大きな物語」へ賛歌を捧げる傾向を強く感じてしまう。これは90年代というタイムラインが具体的な歴史事件や背景を意図的に隠しながら、登場人物たちが食事会をする場面を次々と描き、物語の筋が不明瞭なまま虚無的な終わりを迎える原作の流れとは大きく異なっている。
小説のドラマ化では、必ずしも原作の物語を忠実に再現するわけではない。しかし、原作で最も評価の高い部分が削除され、核心となる虚無感が国家発展を背景にした物語に変えられてしまうと、そのドラマは「全く新しい作品」として認識されていると言ってもよい。ドラマ『繁花』のような高品質な作品は稀にしか見られないが、中国経済の発展と社会の進歩を伝えようとする公式の「主旋律」を謳うものは、決して稀なものではない。
<賈海涛(か・かいとう)JIA Haitao>
一橋大学言語社会研究科博士課程修了。博士(学術)。神奈川大学外国語学部中国語学科外国人特任助教、東京工業大学非常勤講師、上海大学(東京校)非常勤講師、2023年度渥美奨学生。人文系ポッドキャストの運営者。研究分野は中国現代文学、文学言語で、主な論文に「方言文学における「叙言分離体」――五四時期の文学言語の変容に関する議論を中心に」『中国:社会と文化』(37)などがある。
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【2】催事紹介:2025年第14回村上春樹国際シンポジウム発表者募集のお知らせ
台湾淡江大学の曽秋桂先生から、2025年7月に京都大学で開催する第14回村上春樹国際シンポジウムの発表者募集のお知らせをいただきましたのでご紹介します。
主題:村上春樹文学における「パートナーシップ」(PARTNERSHIP)
募集内容:各自の専門領域の角度から上述の主題あるいは相関主題の未発表の①学術論文②教育・研究報告。発表は一人一篇とします。二重投稿や既発表の再投稿はご遠慮ください。
会場:京都大学・稲盛財団記念館 *予定*
日時:2025年7月5日(土)・7月6日(日)*予定*
使用語言:中国語、英語、日本語の使用可能(基本的には日本語を共通語とする。)
応募締め切り:2024年9月15日(日)
論文締め切り:2025年6月8日(日)
詳細は下記リンクをご覧ください。
https://00m.in/kyrJe
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【3】第9回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性へのお誘い(最終案内)
下記の通り第9回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性を開催いたします。参加ご希望の方は、必ず事前に参加登録をお願いします。オンラインで参加の場合は、一般聴講者はカメラもマイクもオフのウェビナー形式で開催しますので、お気軽にご参加ください。
テーマ:「東アジアの『国史』と東南アジア」
日時:
2024年8月10日(土)9:00~12:30(タイ時間)11:00~14:30(日本時間)
2024年8月11日(日)9:00~15:30(タイ時間)11:00~17:30(日本時間)
会場:チュラーロンコーン大学(タイ国バンコク市)及びオンライン(Zoomウェビナー)
言語:日中韓3言語同時通訳付き
主催:日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性実行委員会
共催:渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA)
助成:東京倶楽部
※参加申込(会場参加の方もオンライン参加の方も参加登録をお願いします)
https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_8k7udrxcSU2qA4VWEuR0Sw#/registration
(注)会場参加の方は第7回アジア未来会議へも参加していただくことになります。
https://www.aisf.or.jp/AFC/2024/
お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612)
開催趣旨
「国史たちの対話」企画は、日中韓「国史」研究者の交流を深めることによって、知のプラットフォームを構築し、三国間に存在する歴史認識問題の克服に知恵を提供することを目的に対話を重ねてきた。第1回で日中韓各国の国史研究と歴史教育の状況を確認することからスタートし、その後13世紀から時代を下りながらテーマを設け、対話を深めてきた。新型コロナ下でもオンラインでの対話を実施し、その特性を考慮して、歴史学を取り巻くタイムリーなテーマを取り上げてきた。
昨年は対面型での再開が可能となったことを受け、「国史たちの対話」企画当時から構想されていた、20世紀の戦争と植民地支配をめぐる国民の歴史認識をテーマに掲げた。多様な切り口から豊かな対話がなされ、「国史たちの対話」企画の目標の一つが達成された。今後はこれまでの対話で培った日中韓の国史研究者のネットワークをいかに発展させていくか、またそのためにどのような方針で対話を継続していくかが課題となるだろう。
こうした新たな段階を迎えて、第9回となる今回は、開催地にちなみ、「東南アジア」と各国の国史の関係をテーマとして掲げた。日本・中国・韓国における国史研究は、過去から現在に至るまで、なぜ、どのように、東南アジアに注目してきたのだろうか。過去の様々な段階で、様々な政治、経済、文化における交流や「進出」があった。それらは政府間の関係であったり、それにとどまらない人やモノの移動であったりもした。こうした諸関係や、それらへの関心のあり方は、各国ではかなり事情が異なってきた。こうした直接・間接の関係の解明に加え、比較的条件の近い事例として、自国の歩みとの比較も行われてきた。そもそも「東南アジア」という枠組み自体も、国民国家や「東アジア」といった枠組みと同様、世界の激動のなかで生み出されたものであり、歴史学の考察対象となってきた。
本シンポジウムでは、各国の気鋭の論者により、過去の研究動向と最先端の成果が紹介される。これらの研究は、どのような社会的・歴史的な背景のもとで進められてきたのか。こうした手法・視座を用いることで、自国史にいかなる影響があり、また今後はどのような展望が描かれるのか。議論と対話を通じて3カ国の国史の対話を、より多元的な文脈のうちに位置づけ、さらに開いたものとし、発展の方向性をも考える機会としたい。
■プログラム
8月10日(土)9:00~12:30(タイ時間)、11:00~14:30(日本時間)
【第1セッション(9:00-10:30) 司会:劉傑(早稲田大学)】
開会挨拶:三谷博(東京大学名誉教授)、趙珖(高麗大学名誉教授)
基調講演:楊奎松(北京大学・華東師範大学)
「ポストコロニアル時代の『ナショナリズム』衝突の原因をめぐる考察―毛沢東時代の領土紛争に関する戦略の変化を手掛かりに」
【第2セッション(11:00-12:30) 司会:南基正(ソウル大学)】
発表:
タンシンマンコン・パッタジット(東京大学)「『竹の外交論』における大国関係と小国意識」
吉田ますみ(三井文庫)「日本近代史と東南アジア―1930年代の評価をめぐって―」
尹大栄(ソウル大学)「韓国における東南アジア史研究」
高艷傑(厦門大学)「華僑問題と外交:1959年のインドネシア華人排斥に対する中国政府の対応」
8月11日(日)9:00~15:30(タイ時間)、11:00~17:30(日本時間)
【第3セッション(9:00-10:30) 司会:彭浩(大阪公立大学)】
指定討論と自由討論
討論者:
【韓国】鄭栽賢(木浦大学)、韓成敏(高麗大学)
【日本】佐藤雄基(立教大学)、平山昇(神奈川大学)
【中国】鄭潔西(温州大学)、鄭成(兵庫県立大学)
【第4セッション(11:00-12:30) 司会:鄭淳一(高麗大学)】
自由討論
討論まとめ:劉傑(早稲田大学)
【第5セッション(14:00-15:30) 司会:塩出浩之(京都大学)】
国史対話のこれから
閉会挨拶:宋志勇
※同時通訳
日本語⇔中国語:丁莉(北京大学)、宋剛(北京外国語大学)
日本語⇔韓国語:李ヘリ(韓国外国語大学)、安 ヨンヒ(韓国外国語大学)
中国語⇔韓国語:金丹実(フリーランス)、朴賢(京都大学)
※詳細は下記リンクをご参照ください。
・プロジェクト概要
https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/03/J_Kokushi9_ProjectPlan.pdf
・ポスター
https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/06/J_SGRAForum74LITE.png
・中国語版ウェブサイト
・韓国語版ウェブサイト
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★☆★お知らせ
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SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方はSGRA事務局にご連絡ください。
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