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HARADA Ken “The 22nd Nikkan Asia Future Forum Report: Japan-Korea Relations on a Roller Coaster”

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SGRAかわらばん1019号(2024年5月30日)

【1】原田健「第22回日韓アジア未来フォーラム報告」
「ジェットコースターの日韓関係-何が正常で何が蜃気楼なのか」

【2】第73回SGRAフォーラムへのお誘い(再送)
「パレスチナの壁:『わたし』との関係は?」
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【1】原田健「第22回日韓アジア未来フォーラム『ジェットコースターの日韓関係-何が正常で何が蜃気楼なのか』報告」

木々の青葉が美しく、吹く風も爽やかな2024年5月18日(土)の午後、ソウル大学国際大学院の会議室に日韓両国の研究者50名以上が集い、オンラインも組み合わせた第22回日韓アジア未来フォーラム「ジェットコースターの日韓関係-何が正常で何が蜃気楼なのか」が開催された。

2023年3月の徴用工問題の第三者支援解決法を契機に、7回にわたる首脳会談を経て日韓関係は一挙に正常化軌道に乗った。この1年間の成果と課題、日韓協力の望ましい方向について、政治・安保、経済・通商、社会・文化の3分野から検討した。

最初に未来人力研究院(未来財団)の李鎮奎(イ・ジンギュ)理事長から「渥美財団と未来財団は日韓両国がジェットコースターのようなアップ・ダウンの関係にある時も、ずっと友好関係を深めており、平坦な道を走るローラースケートのようである。両財団が30周年を迎えるが、この先40周年、50周年と手を携えて共同事業を続けて行けることを祈っている」とあいさつした。

ソウル大学日本研究所の南基正(ナム・キジョン)所長は「長崎県・対馬に行く船に乗った時に『日韓関係』を感じた。外の景色を見たくて窓際に座ったら波が荒くてひどく船酔いをしたが、真ん中で均衡を取りながら座った人は平気な顔をしていた。もうろうとする中で陸地に見えた蜃気楼は高い波だった。その時、早く陸に上がりたいなどと考えず、諦めも大事だと感じた。和解は単独で存在するものではない。日韓関係は複雑で難しく『あなたが思っていることが全てではない』ことを考える機会にしたい」と話した。

第1部「日韓関係の復元、その一年の評価と課題」では、まず、西野純也・慶應義塾大学教授が政治・安保分野の成果として、尹大統領と岸田首相による両国が協力パートナーであることの再確認、指導者間の信頼関係の構築、政府間の対話・協議チャンネルの復元と新設、政治家同士のネットワーク活性化などを挙げ、課題として、協力パートナーとしての国民的理解やコンセンサスの醸成、それに資する制度的措置の実施として欧州連合(EU)の歴史経験、国内政治からの悪影響の管理・低減、相互の政策・戦略への理解などを挙げ、残りの任期3年に尹政権が国民の支持をどう得ることができるかが重要であると述べた。

次に李昌ミン(イ・チャンミン)韓国外国語大学教授が、日本が方針表明後4カ月という短期間で韓国を安全保障上問題がない国として輸出手続きを簡略化する「グループA(旧ホワイト国)」へ再指定したことは、これまでの日本の行政手続きではなかったことと評価。2023年を起点に日韓関係は新たなステージに入った。経済安保は「大きな政府の時代」の到来を意味するが、日韓ともに企業のモチベーションやインセンティブを考慮しないと政策的連帯が滞る可能性があり、総選挙後の韓国の「与小野大」の状況、日本のリーダーシップの状況、米大統領選でのトランプ氏の帰還の可能性などを総合的に考慮した協力のシナリオが必要と展望した。

最後に小針進・静岡県立大学教授が、この5年間の音楽動向をまとめた「オリコンランキング」で韓国のBTSが日本で一番売れたこと、日本の輸入化粧品第1位は韓国であり、日本の女性がファッションの参考にしている国も韓国が1位であると指摘した上で、社会・文化の全ての動向がこの1年間で「復元」した訳ではないが、政治・外交関係の「復元」が日韓間の人の往来を増幅し、人的交流や文化交流にプラスに作用したことは間違いないと評価。良好な関係維持に新しい日韓共同宣言は必要なのか、新しいビジョン(ジェンダー、少子高齢化、環境、災害、国際協力、対北朝鮮・・・)とは何か、そもそも宣言を発出できる政治環境なのかと問いかけた。

3人の発表に対して3人の討論者からのコメントがあった。金崇培(キム・スンべ)釜慶大学准教授は、西野教授の報告(関係修復に向けた動き、1年の成果、課題)に対してひとつひとつ丁寧に論評した。安倍誠・アジア経済研究所上席主任調査研究員は、李教授の「2023年に日韓関係が新たなステージに入る中で、新たに協力と競争の重層的関係を構築する空間が広がるだろうが、日韓協力のあり方を議論する際には政治状況を考慮する必要がある」という主張に同意し、補足的なコメントを行った。鄭美愛(ジョン・ミエ)ソウル大学日本研究所客員研究員は、小針教授の観点については全面的に共感するが、討論を引き受けた立場でと前置きした上、「宣言を発出できる政治環境」について質問した。

休憩の後の第2部「日韓協力の未来ビジョンと協力方向」ではパネル討論が行われた。国民大学の崔喜植(チェ・ヒシク)先生、ソウル大学の李政桓(イ・ジョンファン)先生、ソウル大学日本研究所の鄭知喜(チョン・チヒ)先生、東北アジア歴史財団の趙胤修(チョ・ユンス)先生、西野教授、小針教授、安倍研究員の7名が順次発言した。小針教授の「日韓それぞれが相手国をどう見ているのかという面で不安になった。今後、政権が変わったらどうなるのか?2019年当時、韓国に対する日本の見方は慰安婦、徴用工などを蒸し返す国という認識があった。一方、韓国側の持っている不安も理解できる。日本に対する不満もあると思う。不安と不満はあっても不信を招かないようにするにはどうするかが大事である。メディアには正確な報道をお願いしたい。糾弾する報道は『不信』を招く」とのコメントが印象的だった。

閉会にあたり、渥美国際交流財団の今西淳子常務理事が「今回のフォーラムは未来人力研究院だけでなく、韓国の現代日本学会、ソウル大学日本研究所との共同主催ということで、韓国で開催した日韓アジア未来フォーラムでは最大規模となった。渥美財団は日本の大学院で博士論文を執筆中の若手研究者を支援する奨学財団で、現代日本学会の金雄熙会長、ソウル大学日本研究所の南基正所長は1996年度に支援させていただいたご縁で、その後30年間途切れることなく交流を続けている。こういうことは滅多になく、本日は本当に奨学財団冥利に尽きると感じている」と感謝を述べた。

最後に日韓アジア未来フォーラム存続の立役者の金雄熙仁荷大学教授が「日韓関係は激しく上へ行ったり下へ行ったりジェットコースターのようだ。一定の動力があればジェットコースターは軌道から脱線しない。日韓関係にはその動力が働くだけに『山あり谷あり』を楽しめるようになりたい」と挨拶した。

フォーラム終了後、参加者はソウル大学の近くの学生街でサムギョプサルと「爆弾酒」を楽しんだ。

当日の写真

JKAFF22 Photos of the Day

<原田健(はらだ・けん)HARADA Ken>
渥美国際交流財団事務局長。鹿島建設(株)、(一社)日本建設業連合会を経て、2023年より渥美財団で勤務。

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【2】第73回SGRAフォーラム「パレスチナの壁:『わたし』との関係は?」へのお誘い(再送)

下記の通り第73回SGRAフォーラムを昭和女子大学の会場及びオンラインのハイブリット方式開催いたします。参加をご希望の方は、会場、オンラインの参加方法に関わらず事前に参加登録をお願いします。

テーマ:「パレスチナの壁:『わたし』との関係は?」
日 時:2024年6月25日(火)17:30~19:00(終了後に懇親会*)
方 法:会場及びZoomウェビナー

会 場:昭和女子大学学園本部館3F大会議室
https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/05/SGRAForum73Map.pdf
アクセス
https://office.swu.ac.jp/other/campusmap.html

言 語:日本語・英語(同時通訳**)
申 込:下記リンクからお申し込みください
https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_UH6bfz9cTO6OsLWIzMi8Hw#/registration

*フォーラム終了後、パレスチナ料理の懇親会にもぜひご参加ください!(参加費無料)
**同時通訳はZoomで行うため、会場にて同時通訳を利用する方は、端末(スマートフォン、ノートパソコン等)およびイヤホンをご持参ください。

お問い合わせ:SGRA事務局([email protected]

■ フォーラムの趣旨

パレスチナ問題は「複雑すぎる」と言われます。しかし、客観的な事実や人道的な観点から考えると、この問題はすべての人に関わっています。フォーラムでは専門家、パレスチナ出身者、パレスチナ支持の活動を行っている学生の声を取り上げ、なぜこの問題が全ての人にとって重要なのか、そしてその問題を取り上げようとするときに直面する壁について話し合います。

「壁」という言葉には複数の意味が込められています。一つは、パレスチナ問題について公然と話すことを阻む見えない壁であり、タブーと言論の自由への抑圧を象徴しています。もう一つは、パレスチナ領土での継続的なアパルトヘイト(人種隔離)と植民地化の結果として存在する物理的な分離の壁です。世界中での学生の抗議活動は、これらの見えない壁を取り壊す試みであり、パレスチナ問題に対する公開討論を促進する力となっています。これはパレスチナ問題に対する新たな視点を提供すると同時に、世代間の意識の違いとその変化を示唆しています。

フォーラムを通じて、参加者がパレスチナ問題に対する多面的な理解を深め、グローバルおよびローカル、マクロとミクロな視点からのアプローチを考察する機会になると期待しています。

■プログラム

17:30開始
司会(シェッダーディ・アキル、慶応大学訪問講師)
挨拶(今西淳子、渥美財団SGRA代表)

17:35発表1 ハディ ハーニ(明治大学特任講師)
「パレスチナ問題の基礎知識:改めて、歴史と政治的構図の要点を抑える」(日本語)

18:05発表2 ウィアム・ヌマン(東京工業大学大学院生)
「建築の支配:植民地主義の武器としての建築環境」(英語)

18:20発表3 溝川貴己(早稲田大学学部生)
「立ち上がる学生、クィア、環境活動家たち:2023年10月以降の東京のパレスチナ解放運動」(日本語)

18:35質疑応答・ディスカッション(日本語・英語)
モデレーター:徳永佳晃(日本学術振興会特別研究員PD 日本大学)
オンラインQ&A担当:郭立夫(筑波大学助教)

19:00閉会・懇親会開始

【発表概要】

発表1「パレスチナ問題の基礎知識:改めて、歴史と政治的構図の要点を抑える」
(ハディ ハーニ、明治大学特任講師)

現在、世界中でパレスチナ人と連帯する運動が巻き起こっており、日本社会にも多くの参加者がいます。ただし「停戦」のみならず、その先に正義を実現するためには、構造的かつ本質的な変化へとつながる長期的な視野を持つことも重要です。そのために第一に重要なことは、シンパシーだけではなく、知識と論理に裏打ちされた正しさに則って行動することだと考えられます。このため今回のイベントでは、最新情勢や新事実の解説というよりは、パレスチナ問題の長く複雑な歴史や、現状の政治的構図を理解するうえで重要かつ基本的なポイントを解説し、全ての人が共有すべき基礎を確認することを目的としています。

発表2「建築の支配:植民地主義の武器としての建造環境」
(ウィアム・ヌマン、東京工業大学大学院生)

建築は政治を具現している。設計者の世界観を表すものであると同時に、政治的コントロールのための装置として使われることもある。このことは、ヨルダン川西岸やガザの植民地建築にはっきりと表れているが、東京や世界中のパレスチナ支持デモの場所として選ばれている公共空間にも、目に見えない形で表れている。本発表では、パレスチナ人に対する日常的な抑圧と統制に寄与している建築装置と、世界中の公共空間におけるそれに匹敵する、しかし控えめな建築的統制装置との類似性を描き出そうと試みる。

発表3「立ち上がる学生、クィア、環境活動家たち:2023年10月以降の東京のパレスチナ解放運動」
(溝川貴己、早稲田大学学部生)

2023年10月以降、在日パレスチナ人だけでなく、学生、クィアコミュニティ、環境活動家といった様々な人々のコミュニティが、即時停戦とパレスチナ解放を訴えて、デモやイベントを行っていた。ここでは、この人々がパレスチナ/イスラエルにどのように向き合い、この7か月間どのような試みを行ってきたか、東京での事例を紹介する。

※プログラムの詳細は、下記リンクからご参照ください。
https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/05/SGRAForum73Program.pdf

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