SGRAメールマガジン バックナンバー

PARK Joon-hee “New Research & Challenges”

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SGRAかわらばん1004号(2024年2月23日)

【1】エッセイ:朴峻喜「新しい研究と挑戦」

【2】国史対話エッセイ紹介:彭浩「『バター臭い』と『ぬかみそ臭い』:異文化の接触と対話に絡む連想」

【3】催事紹介:第21回INAF研究会「新しい時代の日韓関係のあり方と展望」(2月26日、オンライン)
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【1】SGRAエッセイ#757

◆朴峻喜「新しい研究と挑戦」

日本に留学するとは夢にも思っていなかった。釜山国立大学博士課程の学生で、2018年春に埼玉大学に交換留学に来たことがきっかけとなった。 日本に来てからは、自分の世界がひどく狭かったことに気づいて衝撃を受け、心身ともに不調な日が続き、腸炎にも苦しめられ、痩せてしまった。当初私の日本語は初歩的な水準で、解釈するのが毎日大変だった。日本で生活するのがとてもストレスだった。

幸いだったのは、留学先である埼玉大学が私にはとてもよい環境だったことだ。日本語が得意でなくても配慮してくれる研究会の雰囲気があり、私の専攻である労使関係で、日本国内で一番の専門家の先生方や多様な分野で活動している大学院生の同僚たちが私を支えてくれた。日本語ができないことが苦しかったりもしたが、一方では温かい雰囲気で研究でき、新しい未来も夢見ることができた。当時の夢は日本語が少しでもうまくできるようになること、労働と関連した博士論文を完成させること、その過程で査読付き論文を3本書くこと、そして、できれば就職もしてみることだった。

まだ信じられないが、この4年間は本当に耐えながら博士論文を書いた。大変だったが、3本の査読論文も掲載できた。運良くアカデミアに就職することもできた。努力した以上の良い結果が出て過分な状態で、これ以上望むことはないと思ったし、こうなればもう大変なことはないだろうと思っていた。

ところが博士論文を書き終えた後、目の前が閉ざされたように感じた。これから何を研究すればいいのか、どんな先生になればいいのか、元々のテーマを発展させていくべきなのか、それとも全く新しいテーマを探すべきなのか、学生たちと楽しく交流する先生になるべきなのか、それとも自分の研究に集中して著名な研究を行う先生になるべきなのか、悩ましい問題が出てきた。日本語は以前よりも上手になったとはいえ、相変らず満足できない。ミスをするとさらに恥ずかしく感じられた。

いつか人生で悩みがなくなる時があると思ったが、それは幻想だったようだ。仕方なくもう一度夢を考えざるを得なくなった。今は博士課程のような5~7年間やりたい研究ではなく、人生全体にわたる研究について考える時であると思った。どんな研究者になりたいのか、どんな人間になりたいのか、どんな言葉をどんな言い方で話す人になりたいのか、そしてそのためにはどのような計画と努力が必要なのか、長期的に考える必要性を感じるようになった。

今はまだ、何か社会に役立つ研究をしたい、そして労働研究において不平等問題を解決できる何らかの研究をしたい、という漠然とした考えしかない。もう一度、このような漠然とした考えを基に、博士課程の時のように研究体系全体を具体的に描いていかなければならないだろう。こういうことをやり直さなければならないと思うと、時に力が抜ける時もあるが、それでもやり遂げた時間を振り返ってみれば良い結論にたどり着くはずだと、少しの希望を持っている。そして、いつかこのような悩みを、同期奨学生だったラクーン同志たちと共に分かち合いたいと思っている。

<朴峻喜(パク・ジュンヒ)PARK Joon-hee>
2022年度渥美奨学生。2023年3月埼玉大学人文社会科学研究科で経済学博士号取得。現在、立教大学経済学部助教。労働経済や労使関係を研究。

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【2】国史対話エッセイのご紹介

1月31日に配信した国史対話メールマガジン第53号のエッセイをご紹介します。

◆彭浩「『バター臭い』と『ぬかみそ臭い』:異文化の接触と対話に絡む連想」

日本に来てから何度も転居し、数年前大阪に引っ越してきた。家の近くには有名な四天王寺があり、近所の読書愛好家が楽しむ一大イベントである古本市が毎年春と秋に開催される。小生も常連客の一人で、昨秋もよき出会いがあった。さっそく読み始めたのは、『東京に暮す1928~1936』という題名の岩波文庫本。昭和初期に英国外交官の妻として来日したキャサリン・サンソムが著した日本印象記のようなものである。対象となった時代を考えると、明治の「文明開化」から半世紀以上も経ち、洋服が普通に着られ、洋食屋もあちこち見られる都市の光景ではなかろうか。しかし、サンソム夫人の体験には、文化の違いによる戸惑いがやはり少なくなかった。
(中略)
そこまで連想を広げると、昨夏の「国史たちの対話」の様子が頭に浮かんできた。渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA)が主催したこの円卓会議は昨年で8回目を迎え、今回のテーマは「20世紀の戦争・植民地支配と和解はどのように語られてきたのか」だった。小生は実行委員の一人としてテーマの設定などに関わったが、当初は三カ国間の長きにわたる歴史認識の問題や政治文化の違いに加えてロシアのウクライナ侵攻をめぐる立場の相違もあるため、言い争いになるのではないかとやや懸念した。しかし、実際の「対話」は驚くほど相互の議論が噛み合っていた。一般的に考えると敏感な話題なのに、なぜ参加者の認識に懸隔がなく、平和的な「対話」が可能になったのだろうか。様々な要因が考えられるが、もしかしたらこうした国際的感覚もある程度働いたのかもしれない。

全文は下記リンクよりお読みください。
https://www.aisf.or.jp/sgra/kokushi/J_Kokushi2024PengHao2Essay.pdf

※SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。国史メルマガは毎月1回配信しています。SGRAかわらばんとは別にお送りしますので、ご興味のある方はSGRA事務局にご連絡ください。3言語対応ですので、中国語、韓国語の方々にもご宣伝いただけますと幸いです。

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【3】催事紹介

SGRA会員で北陸大学教授の李鋼哲さんより、自ら創設された(一社)東北亜未来構想研究所(INAF)の研究会のお知らせをいただきましたのでご紹介します。参加ご希望の方は直接お申し込みください。

◆第21回INAF研究会「新しい時代の日韓関係のあり方と展望」

日時:2024年2月26月18:00~21:00(オンライン、Zoom)

ファシリテーター:佐渡友哲 INAF常任理事
問題提起:三村光弘 INAF常任理事・新潟県立大学北東アジア研究所
パネリスト:
鄭美愛(ジョン・ミエ)INAF理事、韓国世宗研究所
川口智彦 INAF常任理事、日本大学国際関係学部
高永喆(コ・ヨンチョル)INAF理事、元韓国国防省分析官、拓殖大学
河信基(ハ・シンギ)INAF顧問、作家・評論家
菊池嘉晃 金沢星稜大学人文学部
E.パストリッチ INAF理事、アジア・インスティチュート理事長
堤一直 INAF理事、慶熙大学校アジア太平洋研究センター日本学研究所

プログラムの詳細、参加申し込みについては下記リンクをご覧ください。
https://inaf.or.jp/

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★☆★お知らせ
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