SGRAメールマガジン バックナンバー

YEH Wenchang “About Sake and Shaoxingjiu”

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SGRAかわらばん979号(2023年7月27日)

【1】エッセイ:葉文昌「日本酒と紹興酒について」

【2】第10回日台アジア未来フォーラムへのお誘い(再送)
「日台の酒造りと文化:日本酒と紹興酒」(10月21日、島根県松江市)

【3】第8回国史たちの対話へのお誘い(8月8~9日、東京・ハイブリッド)(再送)
「20世紀の戦争・植民地支配と和解はどのように語られてきたのか――教育・メディア・研究」
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【1】SGRAエッセイ#743

◆葉文昌「日本酒と紹興酒について」

2018年ごろだろうか、渥美財団関口グローバル研究会からこれまで台湾でやっていた日台フォーラムを島根でやってくれないかという打診が来た。自分の分野ならフォーラムをやっても良いかと思ったが、文系メンバーが圧倒的に多い関口グローバル研究会(SGRA)である。「文系にも分かるテーマで」という難題を突き付けられた。「文理融合」「文理相互理解」の印籠だ。でも思うのだが、理系人間は教養という名のもとに文系の言葉を理解することが求められるのに対して、多くの文系人間は理系の言葉を理解しようとしないし、しなくても許されているのはおかしくないか?

愚痴っても仕方がないので、どういうテーマなら私も参加者も楽しめるかを考えた。キーワードは「島根」と「台湾」、そしてSGRAからの注文として「文理融合」、さらに私も楽しめるテーマということで「ものづくり」とした。古代からのものづくりで島根県が誇るものとして「たたら製鉄」と「日本酒」がある。着任早々に地元のものづくりに敬意を表して司馬遼太郎の「砂鉄の道」を読んだことがあった。「日本酒」も親身に理解しようとしていた。この中で「酒」ならそれだけで文理融合できそうというわけで「酒」にした。では「台湾」の要素はどうするか?実は日本酒の近年の風潮に古酒がある。本来は鮮度が特徴の日本酒を数年間熟成させるのである。飲んでみたら紹興酒に似た要素があった。紹興酒を調べたら、紹興酒ももち米を主原料としていることがわかった。これでテーマを「日本酒と台湾紹興酒」とした。

かつて中国の文豪である李白や杜甫も、酒によって知的創造が盛んになったらしい。そして松江も江戸時代から漢詩創作が盛んだった。酒を多次元に捉えるため、さらに皆様の知的創造が盛んになることも願って、江戸時代から明治時代にかけての松江での漢詩創作についてお話できる講師もお招きした。

酒の成分はアルコールである。アルコールを作り出すには糖分を酵母で発酵させる必要がある。ワインの場合は、葡萄の糖分が酵母によってアルコールに変換される。一方で米は澱粉であって糖分は含まないので、酵母でアルコールを作り出すことはできない。そこで澱粉を糖分に変える方法が必要になる。唾液の酵素で糖化するのが昔から世界各地にあった口噛み酒である。もう一つの方法として麹菌で糖化する方式である。この方式が今の日本酒や紹興酒で使われている。澱粉と麹と酵母を混ぜて、糖化と発酵を平行に進行させるので、平行複発酵という。なぜ「複発酵」なのか?糖化も微生物の力を借りているので広義の発酵だからであろう。要するに日本酒も紹興酒も、米を平行複発酵で酒にしているのである。

日本酒の酒蔵はいくつか見学したことがあった。酒蔵のかなめは麹室である。それは檜部屋だった。なぜステンレスではなく木造なのか?木に生える常在菌をうまく生かして麹を作るそうだ。台湾の滷肉飯や日本の鰻屋の秘伝のたれと同じ思想だ。100年間洗ったことがない鍋。私は30歳までに「百年洗わない鍋はすごい、きっと美味しい」から目覚めた。一流のシェフが、神のサイコロに味をゆだねて良いはずがない。最先端の半導体工場でも、神が宿っているからと成膜室を洗わずに使い続けて良い半導体が作れるものか。これを酒飲みに披露すると大抵非難される。私は檜部屋や秘伝のたれを批判している訳ではない。伝統は大事だし、それで美味しいものを採算合って作れていれば変える必要はない。でもものづくりなら、神のサイコロにゆだねずに、1+2=3という風に、この菌とこの菌を混ぜてこう作ればこういう味になる、と神に頼らないで作ることを目指すのがロマンだろう。実は日本酒も、何人かの伝説的な先人によって、江戸時代の「きもと」から明治時代の「速醸」へ、それと戦後から泡なし酵母など幾度の革新があり、まさに合理化効率化の道を辿っていたのである。

一方で紹興酒はどうだろうか?フォーラム準備にあたって、台湾紹興酒を作っている台湾煙酒公司(元台湾煙酒公売局)の埔里酒廠で打ち合わせと見学をしてきた。日本酒の工程と非常に似ていた。同じ平行複発酵だから無理もない。しかし現代工場の麹室も檜部屋だったのは意外だった。「きもと」「酒母」「もろみ」、使う言葉は違うかもしれないが、説明すれば通じるものは多くあった。では日本酒と紹興酒の違いは何か?そして台湾紹興酒と中国紹興酒の違いは何か?特に台湾紹興酒は日本統治時代の日本酒を作っていた酒蔵を、戦後に中国から渡ってきた紹興酒職人によって紹興酒酒蔵に転換されたが、中国紹興酒との違いは何か?ここでは種明かしはせず、ぜひ会場に足を運んでいただき、味の違いを五感で感じながら、講師のお話を聞いて解き明かしていただきたい。

<葉文昌(よう・ぶんしょう)YEH_Wenchang>
SGRA「環境とエネルギー」研究チーム研究員。2001年に東京工業大学を卒業後、台湾へ帰国。2001年、国立雲林科技大学助理教授、2002年、台湾科技大学助理教授、2008年同副教授。2010年4月より島根大学総合理工学研究科物理工学科准教授、2022年より教授。

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【2】第10回日台アジア未来フォーラム@島根へのお誘い(再送)

日台アジア未来フォーラムは、台湾出身のSGRAメンバーが中心となって企画し、2011年より毎年1回台湾の大学と共同で実施しています。コロナ禍で3年の空白期間がありましたが、今年は例外的に日本の島根県で開催することになりました。皆さんのご参加をお待ちしています。諸準備のため参加ご希望の方は早めにお申し込みいただけますと幸いです。

テーマ:「日台の酒造りと文化:日本酒と紹興酒」
日 時:2023年10月21日(土)14時~17時10分
会 場:JR松江駅前ビル・テルサ4階大会議室(島根県松江市朝日町478―18)
https://goo.gl/maps/2GB6p1bUwVAAkaiG8
言 語:日本語・中国語(同時通訳)

※参加申込(クリックして登録してください)
http://bit.ly/JTAFF10

お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612)

◆開催趣旨

東アジアの主食である米を発酵させた醸造酒は、各地でそれぞれ歴史を経て洗練されたが、原料が同じなだけに共通点も多い。代表的な醸造酒に日本では清酒(日本酒)、中国では黄酒(紹興酒)がある。島根は日本酒発祥の地とされ、日本最古の歴史書『古事記』にも登場する。一方、台湾では第二次世界大戦後に中国から来た紹興酒職人が、それまで清酒が作られていた埔里酒廠で紹興酒を開発し量産に成功した。台湾で酒の輸入が自由化されるまでは、国内でもっとも飲まれる醸造酒であった。中国の諺に「異中求同」(異なるものに共通点を見出す)があるが、今回は醸造酒をテーマに相互理解を深めたい。フォーラムでは島根の酒にまつわる漢詩を紹介していただいた後、日本と台湾の専門家からそれぞれの醸造技術と酒文化について、分かりやすく解説していただく。日中同時通訳付き。

◆プログラム

講演1:「近代山陰の酒と漢詩」要木純一(島根大学法文学部教授)
講演2:「島根県の日本酒について」土佐典照(島根県産業技術センター)
講演3:「台湾紹興酒のお話」江銘峻(台湾煙酒株式会社)
全体質疑応答

※詳細は下記リンクをご覧ください。

第10回日台アジア未来フォーラム「日台の酒造りと文化:日本酒と紹興酒」へのお誘い

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【3】第8回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性へのお誘い(再送)

下記の通り第8回国史たちの対話を会場参加とオンライン参加のハイブリッド方式で開催します。参加ご希望の方は必ず事前に参加登録をお願いします。

テーマ:「20世紀の戦争・植民地支配と和解はどのように語られてきたのか――教育・メディア・研究」
日 時:2023年8月8日(火)9:00~17:50、9日(水)9:00~12:50(日本時間)
会 場:早稲田大学14号館8階及びオンライン(Zoomウェビナー)
言 語:日中韓3言語同時通訳付き

主 催:日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性実行委員会
共 催:渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA)
共 催:早稲田大学先端社会科学研究所・東アジア国際関係研究所
助 成:高橋産業経済研究財団

※参加申込(参加費:無料)
https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_Mc7ctZdQTRG2eCGPU7PFbA#/registration

お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612)

◆開催趣旨

2016年から始まった「国史たちの対話」の目的は、日中韓「国史」研究者の交流を深めることによって、知のプラットフォームを構築し、三国間に横たわっている歴史認識問題の克服に知恵を提供することである。

戦後の東アジアは冷戦、和解、日本主導の経済協力、中国の台頭など複数の局面と複雑な変動を経験した。各国は各自の政治、社会的環境のなかで、自国史のコンテクストに基づいて歴史観を形成し、国民に広げてきた。戦後各国の歴史観はなかば閉鎖的な歴史環境のなかで形成されたものである。各国の歴史認識の形成過程、内在する論理、政治との関係、国民に広がるプロセスなどについての情報は、東アジアの歴史家に共有されていない。歴史認識をめぐる対立は、このような情報の欠如と深く関わっているのである。

歴史認識をめぐる国家間の対立が発生すると、相手の歴史解釈と歴史認識の問題点を指摘することが多い。しかし、自国内に発生した政治、社会変動に誘発される歴史認識の対立の方がむしろ多い。相手の歴史認識を認識する過程は、自分の歴史認識を問い直す機会でもあろう。このような観点から、第8回の国史対話は、今までの対話をさらに深めることが期待される。

◆プログラム
8月8日(火)
【第1セッション 司会:村和明】
・開会挨拶:劉傑(早稲田大学)
・趣旨説明:三谷博(東京大学名誉教授)

【第2セッション サブテーマ:教育 司会:南基正】
・金泰雄(ソウル大学)「解放後における韓国人知識人層の脱植民地への議論と歴史叙述の構成の変化」
・唐小兵(華東師範大学)「歴史をめぐる記憶の戦争と著述の倫理―20世紀半ばの中国に関する『歴史の戦い』」
・塩出浩之(京都大学)「日本の歴史教育は戦争と植民地支配をどう伝えてきたか―教科書と教育現場から考える??」

【第3セッション サブテーマ:メディア 司会:李恩民】
・江沛(南開大学)「保身、愛国と屈服:ある偽満州国の『協力者』の心理状態に対する考察」
・福間良明(立命館大学)「戦後日本のメディア文化と『戦争の語り』の変容」
・李基勳(延世大学)「現代韓国メディアの植民地、戦争経験の形象化とその影響-映画、ドラマを中心に」

【第4セッションン サブテーマ:研究 司会:宋志勇】
・安岡健一(大阪大学)「『わたし』の歴史、『わたしたち』の歴史―色川大吉の『自分史』論を手がかりに」
・梁知恵(東北亜歴史財団)「『発展』を越える、新しい歴史叙述の可能性:韓国における植民地期経済史研究の行方」
・陳紅民(浙江大学)「民国期の中国人は『日本軍閥』という概念をどのように認識したか」
・論点整理:劉傑(早稲田大学)

8月9日(水)
【第5、6セッション:全体討議(指定討論)司会:彭浩、鄭淳一】
・議論を始めるに当たって:三谷博(東京大学名誉教授)
・全体討議:指定討論者(アルファベット順)
平山昇(神奈川大学、日本)、金ホ(ソウル大学、韓国)、金憲柱(国立ハンバット大学、韓国)、史博公(中国伝媒大学、中国)、吉井文美(国立歴史民俗博物館、日本)、袁慶豊(中国伝媒大学、中国)、張暁剛(長春師範大学、中国)
・閉会挨拶:趙珖(高麗大学名誉教授)

※詳細は下記リンクをご覧ください。

日本語ホームページ

第72回SGRAフォーラム 第8回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性 「20世紀の戦争・植民地支配と和解はどのように語られてきたのか ――教育・メディア・研究」へのお誘い

中国語ホームページ

第 72 届 SGRA 论坛第 8 届日本・中国・韩国国史对话的可能性「20 世纪的战争・殖民统治与和解的历史叙述―教育・媒介・研究」

韓国語ホームページ

제72회 SGRA 포럼/제8회 한국・일본・중국 간 국사들의 대화 가능성 「20 세기의 전쟁·식민지 지배와 화해는 어떻게 이야기되어 왔는가: 교육·미디어·연구」

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