SGRAメールマガジン バックナンバー

LI Hui “The 70th SGRA Forum Report: Considering the Conservation of Wooden Architectural Cultural Properties”

**********************************************
SGRAかわらばん966号(2023年4月20日)

【1】李暉「第70回SGRAフォーラム『木造建築文化財の修復・保存について考える』報告」

【2】第21回日韓アジア未来フォーラムへのお誘い(4月22日、ハイブリッド)
「新たな脅威・新たな安全保障―これからの政策への挑戦―」(最終案内)

【3】寄贈書紹介:兪敏浩 編著『中国のリアル』

【4】寄贈書紹介:包聯群 編著『現代中国における言語政策と言語継承』
**********************************************

【1】SGRAフォーラム報告

◆李暉「第70回SGRAフォーラム『木造建築文化財の修復・保存について考える』報告」

2023年2月18日(土)午後1時より第70回SGRAフォーラム「木造建築文化財の修復・保存について考える」を奈良県吉野郡吉野町の金峯山寺(きんぷせんじ)で開催した。国宝・金峯山寺二王門の保存修理工事現場をライブ中継で発信し、世界中のSGRA会員を始め市民も含めて議論の場を設けるというプロジェクトだ。SGRAと日本学術振興会科学研究費基盤研究(C)J190107009「日本と中国における大工道具の比較による東アジア木造建築技術史の基盤構築」(研究代表者:李暉、2014年渥美奨学生)の共催で、ライブ中継はSGRAでは初の試みだった。

金峰山修験本宗総本山金峯山寺の五條良知管長猊下のご挨拶でフォーラムの幕が開けた。小雨の中だったが、寺の沿革の説明や聖地でのフォーラム開催の意義を愛情込めて伝えていただいた。その後、奈良県文化財保存事務所の竹口泰生先生が二王門の保存修理現場を案内しながら、フォーラム後半で各国の先生方が討論するための話題を提供された。

ライブ中継は奈良県文化財保存事務所・金峯山寺出張所の方々にご協力いただき、二王門北の辻から始まった。外観を見た後で中へ入るというルートを取り、できる限り視聴者が臨場感を味わえるよう工夫した。竹口先生は事業全体の説明から始まり、解体修理に至った原因である地盤沈下の現状を紹介。保存修理にあたっての調査については、特に大工道具による加工痕跡について、初重の軒下にある組物を用いて詳細に説明された。中継の最後は素屋根の3階まで巡り、伐採した木材をいかだ穴付きのままで利用した部材を披露し、往時の建築造営と製材の関係を示す興味深い内容だった。1時間の現場案内は、あっという間に終わったが、普段にない近距離での観察で、多くの視聴者の好奇心を刺激したことだろう。貴重な現場の情報についてメモを取られた方々もたくさんいらしたようだ。

後半の討論は京都大学防災研究所の金ミン淑氏(2007年渥美奨学生)の司会で進行した。韓国伝統建築修理技術振興財団の姜ソン慧先生、中国文化遺産研究院の永昕群先生、京都工芸繊維大学のアレハンドロ・マルティネス先生が研究成果や経験に基づき、各国の伝統建築の保存修理事情を紹介し、二王門の保存修理を始めとする日本との相異についてコメントを頂いた。また、塩原フローニ・フリデリケ氏(BMW_Japan、2008年渥美奨学生)からは市民を代表して文化財保存への理解を述べていただき、保存修理に携わっている専門家も多くのことを考えさせられた。

最後に視聴者の皆さんからの質問も受け、先生方にご回答いただいた。時間が限られており、すべてに回答することはできなかったが、視聴者と交流を図ることができたと思う。

3時間という長時間のフォーラムであったが、先生方は木造建築文化財保存への情熱があふれており、スクリーンを通して誠実で熱い討論が交わされた。その心は視聴者へも伝わったであろう。

常に工程に追われる保存修理現場にもかかわらず、多くの要望に応えていただいた竹口先生を始め、研究や調査業務で多忙な先生方へ心より感謝を申し上げたい。最後まで支援していただいたSGRAの存在の意義を改めて実感した。フォーラムには250余名が参加してくださった。皆さまに感謝するとともに少しでもお役立つことができたらと願うばかりである。木造建築文化財の修復・保存に限らず、専門家と市民のギャップはどの業界にもある。今回の試みを機に、多くの方がそのギャップを理解し、少しでも埋めていく意識を高めることができれば幸いである。

当日の写真
https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2023/04/forum70_photos.pdf

アンケート集計
https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2023/04/forum70_feedback.pdf

<李暉(り・ほい)LI_Hui>
2014年度渥美奨学生。2015年東京大学大学院博士(工学)取得。2014~2018年、奈良県文化財保存事務所仕様調査員として、薬師寺東塔(国宝・奈良県)の保存修理事業に携わった。2018年、奈良文化財研究所アソシエイトフェローとして、平城宮第一次大極殿院復原研究に従事。2023年、奈良女子大学 大和・紀伊半島学研究所古代学・聖地学研究センター協力研究員。専門は中国建築史。著書に、『建築の歴史・様式・社会』(共著、中央公論美術出版、2018)、『中国の建築装飾』(共訳、科学出版社東京、2021)、『中国古典庭園 園冶図解』(監訳、科学出版社東京、2023)など。

-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-

【2】第21回日韓アジア未来フォーラム「新たな脅威・新たな安全保障」へのお誘い(最終案内)

下記の通り第21回日韓アジア未来フォーラムをオンラインで開催いたします。参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。一般聴講者はカメラもマイクもオフのウェビナー形式で開催しますので、お気軽にご参加ください。

テーマ:「新たな脅威(エマージングリスク)・新たな安全保障(エマージングセキュリティ)―これからの政策への挑戦―」
日 時:2023年4月22日(土)14:00~17:00
方 法:渥美財団ホールおよびZoomウェビナー
言 語:日本語・韓国語(同時通訳)
参加費:無料
問合せ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612)
参加登録:下記よりお申し込みください
https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_JD7WveroRJKymQHj9K-CIA

主催:第21回日韓アジア未来フォーラム実行委員会
共催:公益財団法人渥美国際交流財団関口グローバル研究会/財団法人未来人力研究院(韓国)

◇趣旨
冷戦後の国際関係において非軍事的要素の重要性を背景にグローバルな経済対立、貧富格差の拡大、そして気候変動、先端技術の侵害、サイバー攻撃、パンデミックなどが新しい安全保障の範疇に含まれるようになってきた。伝統的な安全保障問題が地理的に近接した国家間で発生する事案抑止を前提とするのに対して、新たな安全保障上のリスクは突発的に発生し、急速に拡大し、さらにグローバルネットワークを通じて国境を超える。多岐にわたり複雑に絡み合う新しい安全保障のパラダイムを的確に捉えるためには、より精緻で包括的な分析やアプローチが必要なのではないだろうか。
フォーラムでは、韓国における「エマージング・セキュリティー(新たな安全保障)」研究と日本における「経済安全保障」研究を事例として取り上げ、今日の安全保障論と政策開発の新たな争点と課題について考察する。

◇プログラム
【第1部】基調講演(14:00~15:05)

◆講演1 金湘培(ソウル大学政治外交学部教授)
「エマージング・セキュリティー、新たな安全保障パラダイムの浮上」

◆講演2 鈴木一人(東京大学公共政策大学院教授)
「日本における経済安全保障をめぐる議論」

【第2部】コメント(15:15~15:55)
・李元徳(国民大学校社会科学大学教授)
・西野純也(慶應義塾大学法学部政治学科教授・オンライン)
・林恩廷(公州大学国際学部副教授)
・金崇培(国立釜慶大学人文社会科学部助教授)

【第3部】自由討論/質疑応答(15:55~16:45)
モデレータ 金雄熙(韓国仁荷大学教授)

【総括・閉会挨拶】(16:45~17:00)
・平川均(名古屋大学名誉教授/渥美国際交流財団理事)

※プログラムの詳細は、下記リンクをご参照ください。
プロジェクト概要
https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2023/03/JKAFF21ProgramJ.pdf
ポスター
https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2023/03/JKAFF21JF_LITE.jpg
韓国語版ウェブサイト

새로운 위협(이머징 리스크)·새로운 안전보장(이머징 시큐리티)-향후 정책에 대한 도전-

-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-

【3】寄贈書紹介

SGRA会員で東京大学教養学部特任講師の李彦銘さんより共著書をご寄贈いただきましたので紹介します。

◆兪敏浩編著『中国のリアル:人々は何を悩み、何を追い求めているのか』

国家権力、政治体制など構造的な問題にも目を配りつつ、女性、LGBTQ+、クリスチャン、少数民族、外国人居住者、留守児童、大学生、ボランティア、中小企業主、退役軍人など、現代中国を生きる「人々」の物語に注目した、斬新な入門書。客観的なデータと丁寧なフィールドワークに基づいて、葛藤と模索、苦悩と希望が交差する現代中国の実像を浮き彫りにする

発行所:晃洋書房
著者:兪敏浩 編著
出版年月日:2023/04/20
ISBN:9784771037298
判型・ページ数:A5・216ページ
定価:3,300円

詳細は下記リンクをご覧ください。
http://www.koyoshobo.co.jp/book/b623971.html

-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-

【4】寄贈書紹介

SGRA会員で大分大学教授の包聯群さんより共著書をご寄贈いただきましたので紹介します。

◆包聯群 編著『現代中国における言語政策と言語継承』第七巻

2022年5月28日に大分大学にて実施された「第11回日中国際ワークショップ 現代中国における言語政策と言語継承―言語継承における言語景観の役割」での口頭発表に基づいた研究が中心となる論文集。主に言語(文字)継承、文化資本、言語景観/音声景観(サウンドスケープ)、少数(危機)言語/方言、電話番号景観などである。(まえがきより)

発行所:三元社
編著者:包聯群
出版年月日:2023/01/10
ISBN:9784883035465

*********************************************
★☆★お知らせ
◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応)
SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。
https://kokushinewsletter.tumblr.com/

●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。
●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。

無料メール会員登録


●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。
●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。
●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。
http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/
●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。

寄付について

関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局
〒112-0014
東京都文京区関口3-5-8
(公財)渥美国際交流財団事務局内
電話:03-3943-7612
FAX:03-3943-1512
Email:[email protected]
Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/
*********************************************