SGRAメールマガジン バックナンバー
YANG Yu Gloria “SGRA Cafe Report”
2022年12月22日 16:43:43
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SGRAかわらばん950号(2022年12月22日)
【1】ヤン・ユー グロリア「第18回SGRAカフェ報告」
「韓日米の美術史を繋ぐ金秉騏画伯」
【2】SGRAレポート第100号(第20回日韓アジア未来フォーラム講演録)紹介
「進撃のKカルチャー ―新韓流現象とその影響力」
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今年もSGRAかわらばんをお読みいただき、ありがとうございました。
新年は1月5日から始めます。
皆さまにとって、世界にとって、平和な年になることを心底から願います。
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【1】第18回SGRAカフェ報告
◆ヤン・ユー グロリア「第18回SGRAカフェ報告」
1916年平壌に生まれ、2022年3月1日に105歳で亡くなった金秉騏(キム・ビョンギ)という画家がいる。若い頃を東京で過ごし、1947年以降はソウルで教育者・評論家として活躍、1965年に米国に渡り、そして100歳(2016年)の時に韓国に戻り、絵を描き続けた。
人生とキャリアを、国境を超えて紡いだ異色な作家を美術史ではどのように語ることができるか。2022年10月29日(土)にオンラインで開かれた第18回SGRAカフェ「韓日米の美術史を繋ぐ金秉騏画伯」は、その試みの場だった。問題提起・討論・質疑応答の3部から構成された本カフェは、世界各地から76人が視聴し非常に充実した内容となった。
まず問題提起として、コウオジェイ・マグダレナ氏(東洋英和女学院大学国際社会学部国際コミュニケーション学科講師)が金画伯に出会った記憶と彼への取材、作品の受容と評価などを、朝鮮半島・日本・アメリカで過ごした金画伯の人生のエピソードとともに生き生きと紹介した。金画伯の力強く抽象的な絵を満喫した後、発表の後半では、コウオジェイ氏は画伯の生涯と芸術創作がいかに「国史としての美術史(national_art_history)」の枠組みに挑戦をもたらしたかを指摘し、その枠組みでは見落としてしまう難点と限界、そして新たな可能性について、次に登壇する韓国・日本・米国で活躍している3人の美術史学者に投げかけた。
コウオジェイ氏の問いを受け、討論者として朴慧聖氏(韓国国立現代美術館学芸員)、五十殿利治氏(筑波大学名誉教授)、山村みどり氏(ニューヨーク市立大学キングスボロー校准教授)が登壇した。
朴氏は金画伯の回顧展「金秉騏:感覚の分割」(韓国国立現代美術館、2014-2015)を始め、20世紀のダイナミックな韓国美術史を紹介し、その中で様々な証言と口述を提供した金画伯の重要な位置を示した。彼の生涯と芸術創作は、様々な境界の間に位置し、またその境界を超えようと努力したと分析した。
続いて五十殿氏は、金画伯も言及した日本「アヴァン・ガルド洋画研究所」を手かかりに、そのメンバーや機関誌、展覧会などを探り出し、金画伯の東京時代と同時代の日本のモダン美術の動向、そして上野の美術館や銀座・新宿の小画廊が対抗しながらそうした動向の舞台となっていたと紹介した。
最後に山村氏は、米国での出版物や展覧会を通し、米国におけるアジア系アメリカ人の美術史の全貌を説明した。具体的に数名のアーティストとその作品を取り上げ、「アジア系アメリカ人」という枠組みでひとからげに解釈することの制限、「アジア系アメリカ人」の多様性、民族性とアイデンティティーの複雑な絡みを示した。
質疑応答では、あらためて金画伯と韓国・日本・アメリカ美術史の交差点を討論し、「国史」の枠組みを超越する美術史の書き方、東アジア美術史における共通の議論、そして美術史研究の倫理などについて討論を深め、国境を越える美術史の新たな可能性を提示した。質疑応答の後、発表者と討論者は「ミニ・オンライン懇親会」を行い、各国の美術史研究の現場の近況報告や、将来の研究コラボなどで話が盛り上がった。
カフェ当日は晴れだった。実はこのカフェを企画し始めた頃はまだ金画伯がご健在で、ご本人にオンラインでご参加いただこうという案もあった。残念ながら叶わなかったが、今回のカフェは金画伯を偲ぶ会にもなったのではないかと思う。日韓同時通訳付きだったため、韓国からの参加者も多く、ご感想・ご意見もたくさんいただき、こうした形で交流が広がっていけばよいと思う。このような交流の「場」を作り、新たな試みをサポートしてくださった渥美国際交流財団の皆様、企画したコウオジェイ氏、積極的に討論を深めた先生方に、心から感謝を申し上げたい。司会として大変有意義な経験だった。今後、「国史」の枠組みを超えたつながりを重視する美術史(connecting_art_histories)」について新たな試みを続けたい。
当日の写真
https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2022/12/SGRACafe18Photoslight.pdf
アンケート集計
https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2022/12/SGRACafe18Feedback.pdf
<ヤン・ユー グロリア YANG_Yu_Gloria)
2015年度渥美奨学生。2006年北京大学卒業。2018年コロンビア大学美術史博士号取得。東京大学東洋文化研究所訪問研究員を経て、九州大学人文科学研究院広人文学コース講師。近現代日本建築史・美術史を専攻。
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【2】SGRAレポート紹介
SGRAレポート第100号のデジタル版をSGRAホームページに掲載しましたのでご紹介します。下記リンクよりどなたでも無料でダウンロードしていただけます。SGRA賛助会員と特別会員の皆様は冊子本をお送りしました。会員以外でご希望の方はSGRA事務局へご連絡ください。
SGRAレポート第100号(第20回日韓アジア未来フォーラム講演録)
◆「進撃のKカルチャー ―新韓流現象とその影響力」
2022年11月16日発行
https://www.aisf.or.jp/sgrareport/Report100.pdf
<フォーラムの趣旨>
BTSは国籍や人種を超え、一種の地球市民を一つにしたコンテンツとして、グローバルファンダムを形成し、BTS現象として世界的な注目を集めている。一体BTSの文化力の源泉をなすものは何か。BTS現象は日韓関係、地域協力、そしてグローバル化にどのようなインプリケーションをもつものなのか。
本フォーラムでは日韓、アジアの関連専門家を招き、これらの問題について幅広い観点から議論するため、日韓の基調報告をベースに討論と質疑応答を行った。
<もくじ>
【開会の辞】今西淳子(渥美国際交流財団常務理事・SGRA代表)
【第1部】
[報告1]小針進(静岡県立大学教授)
「文化と政治・外交をめぐるモヤモヤする『眺め』」
[報告2]韓準(延世大学教授)
「BTSのグローバルな魅力 ―外的、環境条件と内的、力量の要因―」
【第2部】
[ミニ報告]チュ・スワン・ザオ(ベトナム社会科学院文化研究所上席研究員)
「ベトナムにおけるKポップ・Jポップ」
[講演者と討論者の自由討論]
討論者:金賢旭(国民大学教授)、平田由紀江(日本女子大学教授)
【第3 部】
[質疑応答]
進行:金崇培(釜慶大学日語日文学部准教授)、金銀恵(釜山大学社会学科准教授)
回答者:小針進(静岡県立大学教授)、韓準(延世大学教授)、平田由紀江(日本女子大学教授)
【閉会の辞】徐載鎭(ソ・ゼジン:未来人力研究院院長)
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