SGRAメールマガジン バックナンバー
CHEN Yijie “Significance of ‘Original Work’ in the Appreciation of Paintings”
2022年7月28日 17:27:03
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SGRAかわらばん932号(2022年7月28日)
【1】エッセイ:陳イジェ「絵画鑑賞における『原作』の意義」
【2】第7回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性へのお誘い(再送)
「『歴史大衆化』と東アジアの歴史学」(8月6日、オンライン)
【3】第6回アジア未来会議へのお誘い(8月27日~29日、ハイブリッド)(再送)
「アジアを創る、未来へ繋ぐ-みんなの問題、みんなで解決」
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【1】SGRAエッセイ#713
◆陳イジェ「絵画鑑賞における『原作』の意義」
「絵画鑑賞において、最も大事なのは原作を見ることである」美術史専攻の課程の中で、先生たちはこういう言葉を繰り返し強調していた。学部に入ったばかりの頃、私は疑問を抱いた。真贋の鑑定なら紙、絵の具、表装といった要素もあわせて参考となるため、実物を調査するのは必要なことである。しかし、単に絵画を楽しみたい時に、複製品と原作の違いがそこまで重要だろうか?
技術の発展によって、高精度のプリント複製品や画像データでの保存が可能になった。中国美術史の専門家が日本のホテルで南宋時代の名作を見て、とても驚いたという逸話がある。後にこれは日本の東洋美術専門の出版社である二玄社による複製品だということが分かった。専門家も騙されるほどの複製品は、「下真跡一等」と評価される。「この複製品は原作とほぼ同じものであるが、原作ではないという点で一つレベルを下げたもの」ということである。一方、高精度の画像データは拡大が自由で、細部まで詳しく確認できる。それに対して美術館で原作を見る時、常に照明が暗くて、距離も遠く、データのようにはっきりと弁別することができない。図像分析などの研究をする際、原作より画像データの方が使いやすいのではないか?
こうした「原作」の意義に対する疑問は、日本留学中の経験で答を得ることになった。以下では日本絵画を例に感想を述べたい。
まず寸法に違いがある。日本絵画の中で屏風・襖絵は相当の割合を占めている。しかしカタログの印刷図版やパソコンで見る画像データはサイズに制限があり、原作よりかなり小さくなる。サイズの変化によって、鑑賞者に与える迫力も変わる。画集の図版を見る感覚は、二条城の大広間で襖絵を仰ぎ見る時に受ける衝撃とは比べものにならない。また、人物画の場合も同様である。等身大の画像は、鑑賞者と画中人物の心理的な距離を縮め、実在の人間としての印象を残す。それに対して宗教的な壁画にある巨大な仏像・神像は、非人間性の一面を強調し、観者に崇高な敬意を喚起させる。複製によってサイズが変われば、制作者の意図は汲み取ることが難しくなる。
次に素材に独特の魅力がある。日本画には、一般に鉱物の絵の具や金銀箔などの素材が利用される。鉱物で作られた絵の具は、光線の変化によって反射する。このピカピカする微光は、画面に透明感や活気をもたらす。写真、プリンター、画像データは、いずれもそうした素材の魅力を伝えることが出来ない。金銀色は絵画を写真に撮る際、最も再現が困難な部分であり、印刷を経ると一層見劣りがする。東山魁夷(1908年―1999年)の作品は一つの好例であると思っている。昔、私は画集や講座のパワーポイントなどで彼の絵を何度も確認したものの、その良さをあまり感じることができなかった。2018年、京都国立近代美術館の「生誕110年 東山魁夷展」で原作を見たことを契機に、初めてその美を知った。絵画の前に立つ時、寒い夜に光の冷たく冴えわたった森に浸みこんだ感じを覚えた。
最後に、一部の絵画において制作者が構図に注いだ奇想は、特定の展示方法でしか見ることができない。寺院の法堂の天井画と言えば、「八方睨みの龍」がよく見られるテーマである。即ち、頭をあげて天井を見ると、法堂のどこに立っても龍が自分をじっと見ている感覚がする。京都の相国寺、建仁寺、南禅寺、天龍寺、いずれもこのような龍図が採用されている。一部の屏風は、展開する際の凹凸を利用して立体感を示している。円山応挙(1733年―1795年)の≪雲龍図屏風≫(1773年、重要文化財、個人蔵)や木島桜谷(1877年―1938年)の≪寒月≫(1912年、京都京セラ美術館蔵)は、共にこのような作品だ。
日本留学の数年間で、私は多くの絵画の原作を実際に見て、大いに見識を広げた。美術鑑賞に対する「原作」の重要な意義を深く認識した。このほんのわずかな心得を多くの人々にシェアしたい。
<陳藝ジェ(チン・イジェ)CHEN_Yijie>
2021年度渥美奨学生。総合研究大学院大学国際日本研究専攻博士、中国北京大学美術史専攻修士、中国中央美術学院美術史専攻学士。専門は日中近代美術交流史、日本美術史。国際美術史学会(CIHA)、アジア研究協会(AAS)、ヨーロッパ日本研究協会(EAJS)などの国際学術会議で研究成果を発表。 著作に『黄秋園 巨擘伝世・近現代中国画大家』(中国北京 高等教育出版社、2018年)、「高島北海『写山要訣』の中国受容:傅抱石の翻訳・紹介を中心に」『日本研究』64集(2022年3月)他。
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【2】第7回日本・中国・韓国における国史たちの対話へのお誘い(再送)
下記の通り第7回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性をオンラインで開催いたします。参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。一般聴講者はカメラもマイクもオフのウェビナー形式で開催しますので、お気軽にご参加ください。
テーマ:「『歴史大衆化』と東アジアの歴史学」
日 時:2022年8月6 日(土)午後2時~午後5時(日本時間)
方 法: オンライン(Zoomウェビナーによる)
言 語:日中韓3言語同時通訳付き
主 催:渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA)
※参加申込(クリックして登録してください)
https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_7JhkfOH7SqyyUfLl4oCRdw
お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612)
■開催趣旨
新型コロナ感染症蔓延が続くなか、「国史たちの対話」ではオンラインでのシンポジウムを開催し、一定の成功を収めてきたと考える。イベントを開催する環境にはなお大きな改善が期待しづらいことを踏まえ、引き続き従来参加してきた人々のなかでの対話を深めることを重視した企画を立てた。
大きな狙いは、各国の歴史学の現状をめぐって国史研究者たちが抱えている悩みを語り合い、各国の現状についての理解を共有し、今後の対話に活かしてゆきたい、ということである。こうした悩みは多岐にわたる。今回はその中から、各国の社会情勢の変貌、さまざまなメディア、特にインターネットの急速な発達のもとで、新たな需要に応えて歴史に関係する語りが多様な形で増殖しているが、国史の専門家たちの声が歴史に関心を持つ多くの人々に届いておらず、かつ既存の歴史学がそれに対応し切れていない、という危機意識を、具体的な論題として設定したい。
共通の背景はありつつも、各国における社会の変貌のあり方により、具体的な事情は多種多様であると考えられるので、ひとまずこうした現状認識を「歴史大衆化」という言葉でくくってみた上で、各国の現状を報告して頂き、それぞれの研究者が抱えている悩みや打開策を率直に語り合う場としたい。
なお、円滑な対話を進めるため、日本語⇔中国語、日本語⇔韓国語、中国語⇔韓国語の同時通訳をつける。フォーラム終了後は講演録(SGRAレポート)を作成し、参加者によるエッセイ等をメールマガジン等で広く社会に発信する。
■プログラム
第1セッション(14:00-15:20)総合司会:李恩民(桜美林大学)
【開会の趣旨】彭浩(大阪公立大学)
【問題提起】韓成敏(世宗大学)「『歴史大衆化』について話しましょう」
https://www.aisf.or.jp/sgra/kokushi/J_Kokushi2022HanSungminEssay.pdf
【指定討論】
中国:鄭潔西(温州大学)
日本:村和明(東京大学)
韓国:沈哲基(延世大学)
第2セッション(15:30-16:45)司会:南基正(ソウル大学)
【論点整理】劉傑(早稲田大学)
【自由討論】パネリスト(国史対話プロジェクト参加者)
第3セッション(16:45-17:00)総合司会:李恩民(桜美林大学)
【総括】三谷博(東京大学名誉教授)
【閉会挨拶】趙珖(高麗大学名誉教授)
※日中韓同時通訳つき
※プログラム・会議資料の詳細は、下記リンクをご参照ください。
https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2022/05/J_Kokushi7_ProjectPlan.pdf
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【3】第6回アジア未来会議へのお誘い
本年8月末に台北市の中国文化大学で開催予定であった第6回アジア未来会議は、新型コロナウイルス感染の収束が見通せず、海外からの台湾入境が厳しく制限される状況が続いているため、ハイブリッド方式で実施いたします。台湾在住の方は、中国文化大学の会場で開催する開会式、基調講演、シンポジウム、懇親会に是非ご参加ください。その他の方はオンラインでご参加ください。日本語への同時通訳もあり、また、カメラもマイクもオフのウェビナー形式ですから、どなたでもお気軽にお聞きいただけます。
円卓会議と200本の論文発表が行われる分科会もオンラインで行われます。優秀論文賞の表彰式、優秀発表賞の選考も行います。円卓会議と論文発表のセッションはどなたでも聴講していただけます。皆様のご参加をお待ちしています。
《概要》
名称:第6回アジア未来会議
テーマ:「アジアを創る、未来へ繋ぐ-みんなの問題、みんなで解決」
会期:2022年8月27日(土)~ 29日(月)
開催方法:中国文化大学(台北市)会場及びオンラインによるハイブリッド方式
プログラムは下記リンクをご覧ください。
【開会式、基調講演、シンポジウム】
2022年8月27日(土)午後3時~6時30分(日本時間)
※言語:中英・中日同時通訳
1.開会式
開会宣言:明石康(アジア未来会議大会会長)
主催者挨拶:渥美直紀(渥美国際交流財団理事長)
共催者挨拶:王淑音(中国文化大学学長)
来賓祝辞:泉裕泰(日本台湾交流協会台北事務所代表)、黄良華(冠華実業株式会社社長)
2.基調講演「国際感染症と台湾―新型コロナウイルスとの共存か戦いか」
講師:陳建仁(前中華民国副総統)
https://www.aisf.or.jp/AFC/2021/files/2022/06/J_AFC6Keynote-LectureF.pdf
3.シンポジウム「パンデミックを乗り越える国際協力―新たな国際協力モデルの提言」
(台湾)孫效智(国立台湾大学学長特別補佐:生命教育学)
(韓国)金湘培(ソウル大学教授:国際政治学)
(台湾)黄勝堅(台北市立聯合病院前総院長:医学)
(日本)大曲貴夫(国立国際医療研究センター国立感染症センター長:公衆衛生学)
(台湾)陳維斌(中国文化大学国際部部長:都市工学)
https://www.aisf.or.jp/AFC/2021/files/2022/07/J_AFC6SymposiumF.pdf
4.優秀論文賞授賞式
5.懇親会(会場参加者のみ)
◇基調講演・シンポジウム参加申込
会場参加ご希望の方は下記リンクをご覧ください。
https://forms.gle/28g7Sp444ETZT1ma7
オンライン参加ご希望の方は下記リンクをご覧ください。
https://onl.bz/xekywMA
【円卓会議・セッション・分科会(論文発表)】
2022年8月27日(土)10:00~13:30(日本時間)
2022年8月28日(日)10:00~18:30(日本時間)
2022年8月29日(月)10:00~18:30(日本時間)
※言語:英語、日本語、または中国語
※オンライン(Zoom会議Breakout_Room機能利用)
1.円卓会議I:アジアにおけるメンタルヘルス、トラウマと疲労
「Are you okay? ―Discussion on mental health, trauma, and fatigue in Asia」
2022年8月28日(日)10:00~13:30(日本時間)
※言語:英語
https://www.aisf.or.jp/AFC/2021/files/2022/06/AFC6RoundTableI_Memtal_Health_chirashi.pdf
2.円卓会議II:世界を東南アジアのレンズを通して観る
「Community and Global Capitalism ―It’s a Small World After All」
2022年8月29日(月)10:00~13:30(日本時間)
※言語:英語
https://www.aisf.or.jp/AFC/2021/files/2022/06/AFC6RoundTableIIchirashi.pdf
3.INAFセッション
「台湾と東北アジア諸国との関係」
2022年8月28日(日)15:00~18:30(日本時間)
※言語:日本語
https://www.aisf.or.jp/AFC/2021/files/2022/06/AFC6GroupSession%EF%BC%88INAF%EF%BC%89F.pdf
4.分科会/セッション(テーマ別論文発表と討論)
アジア未来会議は、学際性を核としており、グローバル化に伴う様々な課題を、科学技術の開発や経営分析だけでなく、環境、政治、教育、芸術、文化の課題も視野にいれた多面的な取り組みを奨励しています。200本の論文を言語とテーマによって46セッションに分け、ZoomのBreakout_Room機能を用いて分科会が行われます。
※言語:英語、日本語、または中国語
◇円卓会議・分科会聴講申込
円卓会議・分科会の聴講をご希望の方は、下記よりアジア未来会議オンラインシステムにてユーザー登録と参加登録をお願いします。発表要旨、論文、及びZoomのリンク情報はAFCオンラインシステムにて閲覧・ご確認いただけます。(登録・参加無料)
<お問い合わせ> アジア未来会議事務局 [email protected]
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★☆★お知らせ
◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応)
SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。
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