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SUN Jianjun “China V Forum #15 Report”

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SGRAかわらばん901号(2021年12月16日)
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◆孫建軍「第15回SGRAチャイナVフォーラム報告」

11月20日の日本時間16時、北京時間15時に第15回SGRAチャイナV(バーチャル)フォーラムが開催された。昨年に引き続き、2度目のオンライン開催だった。今年のテーマは「アジアはいかに作られ、モダンはいかなる変化を生んだのか?―空間アジアの形成と生活世界の近代・現代―」。講演者である京都大学名誉教授山室信一先生の知名度にコメンテーター清華大学教授の王中忱先生と劉暁峰先生、北京第二外国語学院教授の趙京華先生、そして香港城市大学教授の林少陽先生というパワフルな学者群が加わり、600名を超える大勢の参加者とチャイナフォーラム史上最大の盛会となった。

昨年と同様、北京大学では20名近い在籍生を集め小さな分科会場を設けたのに対して、京都の本会場では専門スタジオさながらの、万全の体制の下でフォーラムが始まった。例年通り、主催側の今西常務理事による開会挨拶があり、SGRAと山室先生との学術的なご縁に触れ、テーマの決定に至る経緯が紹介された。続いて、北京日本文化センターの野田昭彦所長のご挨拶は、東京五輪と北京冬季五輪にちなんで「スポーツ」という概念を取り上げ、コロナ禍に置かれた人々がいかに順応し、より豊かな社会生活を作り上げていくことの大切さを訴えた。

山室先生の講演は4つの部分からなる。講演の冒頭で、山室先生は「アジアはいったいどの地域的範囲を指すのか」「モダンとは単なる時間的な区分なのか」という日常的な問題を二つ投げかけた。これらの概念によって生まれた空間認識、時間認識、さらにアイデンティティなどをめぐって参加者に再度思考を巡らすよう促した上で、「なぜアジアやモダンが問題となってきたのか?」、「思想課題としてのアジア――空間論的転回」、「思想課題としてのモダン――時間論的転回とジェンダー論的転回」と論述を進めた。具体的内容はチャイナフォーラムのレポートに譲るが、ジェンダー論に入る直前に時間が来てしまって、端折りながら終了せざるを得なかった。幸いなことに来年のフォーラムで継続するということが決まり、ジェンダー論と最後の「論的転換の三角錐と思詞学」は引き続き堪能できることになった。

コメントの時間で、王中忱先生はアジアを「知の回廊」として捉えることによって、アジアにおける近代的自発性、原動力が解釈できたという山室先生のご見解を称えた上で、「思詞学」への期待を語った。劉暁峰先生はキーワード「アジア」と「モダン」の内在的論理関係を掘り下げる大切さに賛同し、「近代は即ちアジアが命名され、定義される歴史だ」と指摘した。趙京華先生はアジア空間論と言語分析を対象とした思想史研究の斬新な経路に深く触発され、「思想連鎖」よりも「思詞学」の高度な意義を訴えた。林少陽先生は「アジアを見つめる学者と知識人」として、山室先生を高く評価した。緻密で系統的な史料の精読を通じて、複雑に錯綜し、常に暴力に満ちたアジアの近代空間に突入した研究方法は「方法としてのアジア」の研究者と一線を画している。先生のご研究では「アジア」は歴史的なものであり、戦争という重大問題と歴史の中の暴力問題を避けようとしない。アジアは閉鎖的でなく、地球規模の関係性の中に存在している。そういう意味で、アジアの未来を解読できる山室先生の研究の重要性を示唆した。

「知の回廊」「思想連鎖」「思想断鎖」「競争しつつ共存」「論的転回の三角錐」…山室先生がもたらしたブレインストーミングは来年まで続くものと思われる。そして、北京大学日本語学科の学生にとって、もう一つ幸せなことがあった。先生の新著『モダン語の世界へ:流行語で探る近現代』の読書会が行われ、感想文を書いた4名の学生それぞれに先生からの手紙が届いたのだった。学術的交流だけでなく、皆さんを励ます先生の言葉がいつまでたっても頭から離れない。

当日の写真
http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2021/12/J_ChinaForumPhotos.pdf

アンケート集計結果
http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2021/12/ChinaForumSurvey.pdf

<孫建軍(そん・けんぐん)SUN_Jianjun>
1990年北京国際関係学院卒業、1993年北京日本学研究センター修士課程修了、2003年国際基督教大学にてPh.D.取得。北京語言大学講師、国際日本文化研究センター講師を経て、北京大学外国語学院日本言語文化系副教授。専攻は近代日中語彙交流史。著書『近代日本語の起源―幕末明治初期につくられた新漢語』(早稲田大学出版部)。

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