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SGRA China Forum #14 Report

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SGRAかわらばん848号(2020年12月3日)

【1】チャイナフォーラム「東西思想の接触圏としての日本近代美術史再考」報告

【2】寄贈本紹介:ナーヘド・アルメリ『金子みすゞの童謡を読む』
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【1】孫建軍「第14回SGRAチャイナフォーラム『東西思想の接触圏としての日本近代美術史再考』報告」

2020年11月1日午後、第14回SGRAチャイナフォーラム『東西思想の接触圏としての日本近代美術史再考』がオンラインのウェビナー形式で開催された。北京大学民主楼(燕京大学の教会だった場所)の講堂には大学院生30名近くが集まり、ささやかな会場が設けられていた。

日本時間の午後4時、北京時間の午後3時の定刻より、フォーラムが始まった。今西淳子常務理事に続き、国際交流基金北京日本文化センターの高橋耕一郎所長が開会の挨拶をして、滑り出しは順調だった。

国際日本文化研究センター稲賀繁美教授の講演テーマは「中国古典と西欧絵画との理論的邂合―東西思想の接触圏としての日本近代美術史再考」。近代にさしかかった時代から、時には新型コロナウイルスのように恐れられていた西洋文明が東アジアに影響を及ぼすようになった。絵画の世界においても、日本、中国、ヨーロッパといった3者の往来、交錯が顕著に見られた。稲賀先生は美しい絵を見せながら、「気韻生動」、「感情移入」等の美学の概念、そしてそれらを一身に背負う画家にスポットを当て、解説を行った。ところが、大変残念なことに、機械の音声トラブルが生じ、先生の声が途切れたりした。

講演に続き、清華大学歴史系の劉暁峰先生、東京大学東洋文化研究所の塚本麿充先生、清華大学中文系の王中忱先生(公務のため当日は参加できず、中国社会科学院文学研究所の高華シン先生が代読)、香港城市大学中文及び歴史学科の林少陽先生よりそれぞれの専門的知見に基づいたコメントが述べられた。

その後の質疑応答の時間も音声トラブルで稲賀先生とのやりとりに困難が続いたが、先生ご自身をはじめ、通訳者、渥美財団のスタッフの懸命なご尽力がスクリーンを通して目に焼き付いた。

2020年はコロナへの恐怖から始まったといっても過言ではない。今年のチャイナフォーラムの開催は難しいと半分諦めていたが、8月頃から急ピッチで準備が進められた。形式、日時、テーマ、講演者、コメンテーター、ポスターなど、多くの方々に支えられながら開催に至った。参加者の理解を促すために、講演内容に関連する数々の論文が事前に紹介されたのも印象的だった。300名近い当日の参加者数もチャイナフォーラム開催以来、最大の数字を誇る。深く御礼を申し上げたい。

どんなに素晴らしい美術品にも欠点が存在するように、今回のフォーラムでは音声トラブルにより講演内容を十分堪能できなかったとのご指摘を真摯に受け止めたい。フォーラムの全容は、日本語版と中国語版の合冊レポートにまとめ、2021年春に冊子とPDFで発行する予定である。改めて当日の機械の不具合についてお詫びし、お聞き苦しかった点はレポートで補っていただきたい。

当日の写真
http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2020/12/14thChinaForum_Photos.pdf

アンケート集計
http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2020/12/14thChinaForum_Survey.pdf

<孫建軍(そん・けんぐん)SUN Jianjun>
1990年北京国際関係学院卒業、1993年北京日本学研究センター修士課程修了、2003年国際基督教大学にてPh.D.取得。北京語言大学講師、国際日本文化研究センター講師を経て、北京大学外国語学院日本言語文化系副教授。専攻は近代日中語彙交流史。著書『近代日本語の起源―幕末明治初期につくられた新漢語』(早稲田大学出版部)。

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【2】寄贈本紹介

SGRA会員のナーヘド・アルメリさんよりご著書をご寄贈いただきましたので紹介します。

◆ナーヘド・アルメリ『金子みすゞの童謡を読む:西條八十と北原白秋の受容と展開』

シリア人の日本文学研究者が、日本語と格闘しながら、独創的な金子みすゞ童謡論を完成させた。
「みんなちがって、みんないい」というフレーズで有名な金子みすゞの童謡のイメージは、〈やさしさ〉が強調されてきた。はたしてみすゞの童謡の本質は〈やさしさ〉だけなのだろうか。本書の著者、シリア人の日本文学研究者は、この〈やさしさ〉という童謡の本質に疑問符を突きつけ、〈やさしさ〉を超えた、みすゞ童謡の実像に迫り、画期的なみすゞ童謡論を生み出した。従来の研究では、みすゞ童謡に影響を与えた存在として西條八十が挙げられ、北原白秋については言及されてこなかった。著者は、八十と白秋の詩や童謡、両者が発表した翻訳詩などの緻密な分析を通して、みすゞが八十と白秋の両者からそれぞれに作品の特長や創作上の方法論を吸収しつつ、一生懸命にオリジナルの作品世界に昇華させたことを解明した。
巻末の「金子みすゞと私」は、日本語を学び、みすゞの魅力を発見した著者が、みすゞ童謡の普遍性について述べる。

発行:港の人
四六判/並製本/本文240頁
2000円(本体価格・税別)
2020年11月6日
ISBN978-4-89629-381-4

詳細は下記リンクご参照ください。
https://www.minatonohito.jp/book/381/

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