SGRAメールマガジン バックナンバー

KIM Sinhye ” Exchange Activities in Social Welfare”

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SGRAかわらばん847号(2020年11月26日)

【1】エッセイ:金信慧「社会福祉における交流活動」

【2】国史対話メルマガ#24を配信:彭浩「ヘルス・パスの誕生」
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【1】SGRAエッセイ#654

◆金信慧「社会福祉における交流活動―山形県高畠町での経験を通して」

私が所属している立教大学コミュニティ福祉学部(コミュニティ福祉学研究科)と山形県高畠町では、2001年4月から地域連携プログラムのひとつである「高畠プロジェクト」を始めた。2010年11月には相互友好協定を結び、さまざまな形での連携交流を続けている。具体的には実習や演習、農業体験や調査研究など、毎年双方からの提案による活動が繰り広げられている。

高畠町は山形県の南東にある人口約2万3千人の町で、ぶどう「デラウエア生産量日本一」など、農業の盛んな町として知られる。この町は「まほろばの里」と呼ばれている。「まほろば」とは、「周囲を山々で囲まれた、実り豊かな土地で美しく住みよいところ」という意味の古語である。山形新幹線高畠駅を降りると、南に飯豊連山、西に朝日連峰、東を蔵王山に囲まれ、米、野菜、果物の豊かな土地を目にすることができる。

立教大学と高畠高校の高大連携交流事業として11年目を迎えた2019年6月19、20日の2日間、私は立教大学の大学院生講師として派遣され、福祉を選択している生徒を対象にした講義とディスカッション形式の特別授業を行った。このプロジェクトは高等教育を受講させることで高校生の知的欲求を開発し、山形県内各市町村の未来の地域コミュニティを担う人材を育てることを目的としている。

1日目の「社会福祉基礎」では、4月から初めて社会福祉を学ぶ2・3年次生徒約50名を対象に社会福祉を学ぶ面白さを中心に、私が社会福祉の道に進んだきっかけや、韓国と日本の社会状況、両国における福祉の今後の課題などについて講義をした。

2日目は、1年間を通して自ら設定した課題を研究する「社会福祉研究」のクラスで、私が大学院で行っている研究の内容について講義をした後、3年生6名が課題研究の発表を行った。生徒がそれぞれ取り組んでいる課題研究のテーマは、孤独死や無理心中、高齢者の介護問題、高畠町の観光案内、地域再生の方法など多様で興味深く、議論を深めることができた。

生徒からは、私が講義の中で取り上げた少子高齢化、人口減少社会、消滅可能性都市の事例について「今までは少子高齢化という問題について深く考えたことがなかったけど、他人事ではなく、私達1人1人がこれらの課題について考えて行かなければならないと思いました。今の世代からできることを少しずつ積み重ねていこうと思います。この問題をより多くの人に知ってもらい、危機感を感じてもらうことが大きな第一歩だと思いました。」などの感想が寄せられ、私が高校生に一番伝えたかったこと―「社会福祉」は単なる高齢者やしょうがい者の介護問題ではなく、われわれの生活と密接に関連した「自分事」として捉えること―をしっかりと受け止めてくれたことに感動した。

また、「金さんは現在韓国と日本をまたにかけて自殺の問題の解決法を研究していて、現在の問題に背を向けないで、まっすぐに向き合って生きている金さんがとてもかっこよく感じました。私も社会問題に背を向けないで、社会のために貢献できる人間になりたいです。」というある生徒の感想文は特に胸に響いた。自分が取り組んでいる研究―韓国と日本の自殺問題と予防対策―の意義を改めて考えるよい機会となった。

高畠高校での特別講義だけでなく、1泊2日の間、高畠高校の評議員(元高畠町役場の職員)の方のお宅にホームステイをして得たこともたくさんある。たとえば、日本の茶道や着物の体験、ぶどう農園の作業など、普段はできない大変貴重な経験が出来た。また、奈良県桜井市の安倍文殊院、京都府宮津市の智恩寺(切戸の文殊)とともに、日本三文殊の一つに数えられる亀岡文殊(大聖寺)をはじめとして、高畠ワイナリー、瓜割石庭公園、安久津八幡神社など、高畠町の観光スポットを案内していただいたこともとても楽しかった。

これからも私の研究領域である「社会福祉」を媒介として、日本と韓国さらには世界における交流活動を続けていきたいと強く思っている。

<金信慧(キム・シンヘ)KIM Sinhye>
渥美国際交流財団2019年度奨学生。東洋大学大学院福祉社会デザイン研究科修士課程修了(社会福祉学の学位授与)。立教大学大学院コミュニティ福祉学博士課程修了(単位取得満期退学)。韓国社会福祉士(国家資格取得)。日本社会福祉士(国家資格取得)。

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【2】国史対話」メールマガジン第24号を配信しました。

◆彭浩「ヘルス・パスの誕生」

コロナの話が毎日、脳神経を刺激し続け、ストレスがたまりやすい状況。現実から目をそらして一休みしたい時もある。人はそれぞれリラックスの方法があるが、昔話を聞くのも癒しになる。歴史にはロマンがあるのだから。最近、人の移動をコントロールするためのパス、いわば通行証に関心を持つようになってきた。その歴史は、現在の問題、つまりウイルスの感染防止と接点があることに気づいた。これをみんなと共有したいと思い筆を執った。みなさんの気分転換の一助になれば幸いである。

人類史上、大規模な疫病の流行は何度もあった。たとえば、14世紀中ごろの数年間、ペストによりヨーロッパの人口の3分の1が失われ、ペストはその後も長きにわたって断続的に発生した。「黒死病」(Black_Death)という名が歴史書に残っていること自体が、当時の人びとにいかに大きな恐怖を与えたか語ってくれる。しかし、疫病対策と公衆衛生の観点から見れば、画期的な新たな制度を生み出した時代でもあった。

今の新型コロナ感染症と同じで、「黒死病」の時代も、パンデミックが起こると、村落や都市は、ウイルスから地域の安全を守るため、さまざまなレベルの移動制限を敷いた。中世ヨーロッパの経済基盤は自給自足の荘園経済であったため、広範囲の移動がなくてもなんとかなる状況だったが、ヒト・モノの行き来に頼る商業の町の状況は異なった。移動制限は商人そして雇用労働者などにとって、生計を直撃する問題である一方、食品の供給難を伴うことで都市の存立危機をもたらした。それらの商業都市では、いちはやく経済の再開に取り組む必要性が生まれ、感染のリスクを最大限に抑える上で、人の移動を認めるための対策づくりに必死だった。

続きは下記リンクからお読みください。
http://www.aisf.or.jp/sgra/kokushi/J_Kokushi2020PengHaoEssay.pdf

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