SGRAメールマガジン バックナンバー
Baraniak-Hirata “Culture Shock from Gender Division of Roles in Japan”
2020年9月24日 13:41:57
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SGRAかわらばん838号(2020年9月24日)
【1】エッセイ:バラニャク平田・ズザンナ「カルチャーショックを招いた日本のジェンダー役割分担と私の留学経験」
【2】国史対話メルマガ#22を配信:秦方「個人的な経験から学問へ」
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【1】SGRAエッセイ#646
◆バラニャク平田・ズザンナ「カルチャーショックを招いた日本のジェンダー役割分担と私の留学経験」
初めて来日してからいつの間にか10年も経った。2010年に子どもの頃から遠い夢のように思っていた日本にやっと足を運ぶ機会を得たのだ。当初、1年間の交換留学が終わった後、ヨーロッパに帰る予定だったが、まさかその後ずっと日本で生活することになるとは予想さえしていなかった。気がつけば、大人になってからほとんどの人生を日本で過ごし、いつの間にか日本で家族を持つようになって、日本は私の「home」になった。
振り返ってみると、この最初の1年間が私のその後の人生の選択に大きな影響を及ぼした。日本学科が専攻だったイギリスの大学生の時に女性文化とジェンダーに興味を持ち始めたため、交換留学先として、日本の大学で初めてジェンダー研究を目的とする施設を設立したお茶の水女子大学を選んだのだ。正直、お茶大が女子大であることについてあまり深く考えず、他の大学と何も変わらないだろうと思っていた。しかし、この女性だけの環境で、本当にあらゆる人間の経験にはジェンダーが関連していると初めて感じた。その考えのきっかけとなったのは、私のカルチャーショックだった。
この1年間の中で最も強いカルチャーショックは意外なものだった。来日後の最初の数ヶ月の間にたくさんのものにびっくりして、確かに毎日のように新しいことを発見していた。しかし、来日前から長年日本について学んでいたからか、普段、外国人が衝撃を受けているもののほとんどにはすでに馴染んでおり、案外びっくりするものではなかった。だが、私のカルチャーショックの体験は思いがけない方向からやってきて、ジェンダーと日本の女性文化への関心をより強化して、大学院の進学先の選択肢に大きく影響した。
そのカルチャーショックは他の学生との会話だった。ある日、留学生と日本人の学部生が一緒に受講している一つの授業の中で、「将来何になりたいですか?」という問いについてディスカッションをした。「将来何になりたい?」の質問と言えば、どんな国でも子どもの頃から何回も聞かれるだろう。人気の答えがある一方、個人差が出てくる大人になると十人十色の場合が多いだろう。しかし、この授業に参加していた日本人の女子学生の圧倒的な人数は「専業主婦」と答えた。主婦や主夫になりたい人にこれまで1人も会ったことがなかったので、その答えにはピンとこなかった。なぜ日本人の女子学生は主婦を目指すのか?しかも、主婦を目指すのであれば、なぜ彼女らは大学に入学したんだろうと疑問に思ったからだ。気になりすぎて、授業後に日本人の友達に聞いてみた。すると、あまりにも冷静で論理的な回答にまたショックを受けた。
日本では、専業主婦になりたくても高等教育が不可欠だそうだ。「大学を卒業すれば、良い職場に就職できて、そこで高年収の夫と出会えるから」と説明されたのだ。今振り返ると、日本ではこの論理は当たり前のものだと思っている人は多いんじゃないかと思うが、当時、21歳だったヨーロッパ文化の価値観で育った私にこの考え方は大きな衝撃を与えた。
まず、20代にもまだなっていない学生が自分の教育の選択肢を将来の結婚のことを予想して選んでいることに驚いた。だが、この考え方に関して教育の非重要性よりも衝撃的だったのは、このような女子学生が抱く冷静な恋愛関係の戦略が広く普及していることだった。結婚や結婚相手のことをこれまで一切気にしていなくて、日本の現状を知らずにナイーヴだった私には、まだ出会いもしていない男性との結婚を予期して自分の将来の日常生活と仕事を決め、そのために紙切れ扱いにしかならない高等教育の卒業証明書を得ることに納得がいかなかったのだ。
日本人女性が憧れている将来の「仕事」の選択肢に大きな文化の違いを感じた。なぜ私と同じ大学で、同じ教育を受けている女子学生は女性として目指しているものがそこまで違うのだろう?そして、なぜ(旧共産主義の国で育った私に)時代遅れのようにしか聞こえない「仕事」が日本でそんなに憧れられているのだろう?なぜ女性の夢はそんなに違うのだろう?と、あの授業が終わった後、長い間に頭の奥にずっと残っていた。
来日してから10年が経って、日本でパートナーと出会い、結婚して、子どもができ、日本の女性の状況とジェンダーについてたくさん学んだが、今でも日本とヨーロッパのジェンダー格差について同じようなことを考えるときがある。結局、今の日本では、「女性が輝く社会」などと女性の社会進出が幅広く叫ばれているが、このような「専業主婦願望」の学生の意識改革を起こさなければ、日本社会は変わらないんじゃないかと考える。
<バラニャク平田(ひらた)・ズザンナ Zuzanna_Baraniak-Hirata>
渥美国際交流財団2019年度奨学生。ポーランド出身。2012年マンチェスター大学人文科学学部日本研究学科を卒業してから来日。2016年お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科ジェンダー社会科学専攻・開発・ジェンダー論コースにて修士号取得。現在同学のジェンダー学際研究専攻・博士後期課程在籍中。埼玉大学経済学部・埼玉大学大学院人文社会科学研究科非常勤講師。専門分野は文化人類学、ジェンダー論。
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【2】「国史対話」メールマガジン第22号を配信しました。
◆秦方「個人的な経験から学問へ」
1998年の蒸し暑い夏のこと、今も鮮明に覚えています。当時、私と家族は4つの荷物を持って、江蘇省の小さな市から汽車に乗って天津の南開大学に勉学の機会を求めてやってきました。当時の交通状況からすると、この旅はおよそ12時間かかります。汽車に乗るのは初めてではありませんでしたが、汽車という現代的交通手段が私をより広い、憧れの世界に導いたことに初めて気がついたのはあの時でした。
天津という北方の大都市は私にとってどのような意味を持っていたのでしょうか。私が大学生になって学部に入ったばかりの1998年に、天津が私に非常に生き生きとした印象を与えてくれたのは、その輝かしい歴史ではなく、また全国上位のランキングにある南開大学の名誉でもありませんでした。それは初めてマクドナルドが食べられたこと、都市の地下鉄に乗れたこと、初めて他の省から集まってきた大学のルームメートと知り合って、それぞれ違う方言や生活方式を持っていることに気づいたことです。天津という都市は、私が大学で受けた教育により深い印象を与えてくれたと言っても過言ではありません。
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