SGRAメールマガジン バックナンバー

John Chuan-Tiong LIM “Some Thoughts after the SGRA V-Cafe”

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SGRAかわらばん834号(2020年8月27日)

【1】エッセイ:林泉忠「第13回SGRA-Vカフェを終えて」
『ポストコロナ時代の東アジア』

【2】第14回SGRAカフェへのお誘い(9月19日)(再送)
『国際的観点から見た日本の新型コロナウイルス対策』
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【1】SGRAエッセイ#643

◆林泉忠「第13回SGRA-Vカフェ『ポストコロナ時代の東アジア』を終えて」

2020年7月18日の第13回SGRA-Vカフェ「ポストコロナ時代の東アジア」は定員の100名を超える申し込みがあり、予想以上に多くの第一線で活躍されている大物の学者や各新聞社の編集・論説委員などが参加してくださった。そして活発な議論が行われ、大盛況で無事に終わった。終了後、主催側の今西さんから「大成功でしたね」というコメントを頂き、ホッとした。皆様のご厚情に心より感謝を申し上げたい。

今回のSGRAカフェは自分にとって3回目ではあったが、今までと比べて二つの特徴が挙げられる。

その一つは、やはり初めてのバーチャル講演という試みだった。そのため、今回はこれまでの12回と異なり、「カフェ」の前に初めて「V」が付けられていた。コロナ禍の影響で、実際に人が集まる講演が難しい中のやむを得ない選択であった。私は今までに各地で100回以上の講演を行ってきたが、目の前に実在の聴衆がいない「講演」は初めての経験だった。

パンデミックの中、国境を越える人と人の交流が激減し、国内で内向きの生活に集中する現象や、自国の利益を優先する傾向が見られることから、自国第一主義やナショナリズムの温床になることも懸念せざるを得ない、と講演の中でも語った。しかし一方、Vカフェのおかげで国境を越えて遠方の方も参加できるし、普段は多忙な方々も比較的参加しやすくなるため、V活動はコロナ時代に限らず、ポストコロナ時代にも多く見られる人類が経験する新たな交流手段になることも想像し難くない。

今回のカフェの経験から感じたもう一つの特徴は、タイムリーで進行中のテーマということに原因があるが、準備の段階からカフェの日まで予想外に世界情勢が激変し、カフェ参加者の注目点が少々ズレたことが挙げられる。

今回のカフェは3か月前から準備し始め、コロナ禍による東アジアへの影響を分析しポストコロナ時代を展望することだった。しかし、途中、筆者が現在居住している香港において、5月下旬に中国が導入した「国家安全法」が香港に限らず世界を震撼させた。米中対立を加速させ、日本の対中政策も大きく変化させた出来事が起こったのだ。講演の内容は、それによる影響を配慮しながらも本来のテーマに沿って東アジア全体をカバーするようバランスの維持に必死だった。

だが、講演者が住んでいる香港は急速に「米中新冷戦」の最前線になる気配が濃厚になったため、やはり、こちらが参加者の関心の焦点になった。しかし考えてみれば、国際政治の研究は本来、動く世界に注目し進行中の国際社会が注目する問題を取り上げ分析する作業なので、むしろ自然なことであり、国際関係を研究する最大の意義が含まれるイベントだったと思う。

「カフェ」という設定は本来、小規模でリラックスした講演会という位置付けだったが、Vの特徴が働き、予定していたコメンテータの下荒地修二先生(元外交官)や南基正先生(ソウル大学)をはじめ、特にV「懇親会」のコーナーにおいて高原明生先生(東京大学)、松田康博先生(東京大学)、菱田雅晴先生(法政大学)、小笠原欣幸先生(東京外国語大学)など活躍中の諸先生が次々と登場し、示唆に富むコメントをたくさんいただいた。これからのコロナによる世界への更なる影響や、米中新冷戦による東アジアへの波及現象の探究を深めていくには、まさに貴重な交流の機会だったことをあらためて感じている。

最後に、今回の素晴らしい企画において終始、周到にアレンジして下さった渥美財団関口グローバル研究会の今西淳子代表や辰馬夏実さんに深い感謝の意を表させていただきたい。

<林泉忠(りん・せんちゅう)LIM, John Chuan-Tiong>
国際政治学専攻。2002年東京大学より博士号を取得(法学博士)。同年より琉球大学法文学部准教授。2008年よりハーバード大学リサーチ・アソシエイト、2012年より台湾中央研究院近代史研究所副研究員、国立台湾大学兼任副教授、2018年より台湾日本総合研究所研究員、香港アジア太平洋研究センター研究員、中国武漢大学日本研究センター長、香港「明報」(筆陣)主筆、を歴任。
著書に『「辺境東アジア」のアイデンティティ・ポリティクス:沖縄・台湾・香港』(明石書店、2005年)、『日中国力消長と東アジア秩序の再構築』(台湾五南図書、2020年)など。

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【2】第14回SGRAカフェへのお誘い(再送)

SGRAでは、良き地球市民の実現をめざす皆さまに気軽にお集まりいただき、講師のお話を伺い議論をする<場>として、SGRAカフェを開催しています。今回はオンラインZoomと渥美財団の会場とを繋ぎ、バーチャルとリアルを組み合わせて開催します。皆さまのご参加をお待ちしています。

◆第14回SGRAカフェ「国際的観点から見た日本の新型コロナウイルス対策」

日時:2020年9月19日(土)(日本時間)15時00分~17時00分
参加方法:オンライン(Zoom)または渥美財団へご来訪かを参加登録時にお選びいただけます。
言語:日本語
会費:無料
定員:オンライン100名/渥美財団ホールでの参加15名
(人数に達した時点で申込を締め切らせていただきます)
参加申込(下記リンクから):
https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_73VDxBKBTBWzXdhjhSh3ow

問い合せ:SGRA事務局 [email protected]

◇プログラム
14:45 Zoom接続開始
15:00 開会
15:10 講演:大曲貴夫「国際的観点から見た日本の新型コロナウイルス対策」
15:40 各国リポート5ヵ国(1人5分程度)
16:20 質疑応答(会場+オンライン)
17:00 終了
17:00~ご希望の方々によるZoom懇親会(18:00頃終了予定)

◇趣旨
世界を席巻する新型コロナウイルス(COVID-19)。各国は感染拡大防止と社会経済活動の両立を目指して試行錯誤を繰り返しています。
今回のSGRAカフェでは、国立国際医療研究センター国際感染症センター長の大曲貴夫先生をお招きしてお話を伺うと共にアジア各国からのリポートを交えて、今世界で何がおこっているのか、どのように向き合うべきかを考えます。
更に「感染症とリスクコミュニケーション」、「防疫の国際協力」等の議論も行いたいと思います。

◆講演「国際的観点から見る日本の新型コロナウイルス対策」
大曲貴夫(おおまがり・のりお)国立国際医療研究センター国際感染症センター長
新型コロナウイルス感染症の診断、治療、感染防止対策が医療上の大きな課題となっている。この感染症が社会全般特に経済に及ぼす影響は極めて大きく、その影響が今後数年以上継続すると予想されているなかで、今後この感染症にどのように向き合っていくべきかについて、私の意見をお伝えしたい。

◇司会
尹在彦(ユン・ジェオン):一橋大学大学院国際関係論専攻/元新聞記者(2020渥美奨学生)

◇各国リポーター
【韓国】金雄熙(キム・ウンヒ):仁荷大学国際通商学科教授(1996渥美奨学生)
【台湾】陳姿菁(チェン・ツチン):開南大学副教授(2002渥美奨学生)
【ベトナム】チュ・スワン・ザオ:ベトナム社会科学院文化研究所上席研究員(2006渥美奨学生)
【フィリピン】ブレンダ・テネグラ:アクセンチュアコンサルタント(2005渥美奨学生)
【インド】ランジャナ・ムコパディヤヤ:デリー大学准教授(2002渥美奨学生)

詳細は下記リンクをご覧ください。

第14回SGRAカフェ「国際的観点から見た日本の新型コロナウイルス対策」

【事前接続テスト】2020年9月7日(月)15:00~16:00にZoomの事前接続テストを実施いたします。テストをご希望の方は、SGRA事務局へ参加申込メールアドレスをお知らせください。担当者より折り返しご連絡を差し上げます。接続方法、ミュート機能のON/OFFの切り替え、チャットの見方などについてご不安な方はどうぞお気軽にこの機会をご活用ください。テスト時間内であればいつでも接続、参加可能、出入り自由です。

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