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Guarini and Fassbender “SGRA Session @EACJS Report (1)”

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SGRAかわらばん754号(2019年1月17日)

【1】第3回東アジア日本研究者協議会パネル報告(1)
「現代日本社会の『生殖』における男性の役割――妊娠・出産・育児をめぐるナラティブから」

【2】SGRAフォーラム/APYLPxSGRAジョイント・セッションへのお誘い(再送)
「再生可能エネルギーが世界を変えるとき・・・?」(2019年2月2日、東京)

【3】アジア未来会議優秀論文賞およびAFC奨学金の対象となる発表論文募集(再送)
「持続可能な共有型成長-みんなの故郷、みんなの幸福」(2019年1月20日締切)

【4】「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議における発表論文募集(再送)
「『東アジア』の誕生-19世紀における国際秩序の転換-」(2019年1月20日締切)
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【1】第3回東アジア日本研究者協議会パネル報告(1)

◆グアリーニ・レティツィア、イサベル・ファスベンダー
「現代日本社会の『生殖』における男性の役割――妊娠・出産・育児をめぐるナラティブから」

2018年10月27日(土)に国際日本文化研究センター(日文研)と京都リサーチパークにおいて、第3回東アジア日本研究者協議会国際学術大会が開催されました。私たちは、SGRAから参加したパネルの1つとして「現代日本社会の『生殖』における男性の役割――妊娠・出産・育児をめぐるナラティブから」という発表をしました。本パネルは、2人の発表者のほか、司会者のコーベル・アメリ(パリ政治学院)、討論者のデール・ソンヤ(一橋大学)とモリソン・リンジー(武蔵大学)の5人のメンバーで構成されました。当日、約15人の参加者を迎え、討論者や参加者から刺激的な質問やコメントをいただき、熱心な議論が交わされました。

本パネルは、現代日本において、妊娠・出産・育児における男性の役割がどのように語られているかを考察することを目的としました。日本の最重要な社会的課題として「少子化」が議論されているなかで、個人の妊娠・出産・育児には、国家や企業、マスメディアからの介入がみられますが、その言説では、若い女性が子供を産み育てるために身体・キャリア・恋愛などの人生のあらゆる側面をプランニングし、管理する必要性が説かれています。そうした「妊活」(妊娠活動)や育児に関わる言説には、今も尚、母性神話が強く根付いています。一方、そこに男性の存在感は稀薄であり、家庭内における「父親の不在」がしばしば指摘されています。たとえ「イクメン」という言葉が流行し、子育てに参加したい気持ちはあっても、長時間労働や日本企業独特の評価制度などに縛られ、それを許されない男性は多いのです。

上記の背景を踏まえた上で、本パネルでは、社会学と文学のそれぞれの視点から、妊娠・出産・育児における男性の役割の考察を試みました。

最初の発表は、イサベル・ファスベンダー(東京外国語大学)による「『妊活』言説における男らしさ―現代日本社会における『産ませる性』としての男性に関する言説分析」でした。ファスベンダーは、これまで「妊活」言説が、国家・医療企業・マスメディアの利害関係のもとにいかに形成されてきたか、そしてその言説がいかに個人、とりわけ女性の生き方を規定するかを分析してきました。
しかし今回は、その言説における男性の役割に焦点をあてました。「妊娠」すること、「産む」ことは、個人的な領域に属していると思われがちですが、不断に政治的なものとして公の介入を受けてきました。特に問題視されてきたのは「妊孕性」と「年齢」の関係性です。これまで「妊活」言説の主人公が主に女性に限定されてきましたが、最近になって、男性の身体、妊孕性をめぐる言説も注目されてきています。生殖テクノロジーの発展に伴う生殖プロセスの、生殖細胞レベルでの可視化が、さらに徹底して利用されていることが背景にあります。
この発表は、新聞記事、専門家へのインタビュー、男性向けの「妊活」情報、そして男性自身の語る「妊活」体験談などの分析に基づいて、男性の生殖における役割が現在の日本社会においてどのように位置づけられているのかを探りました。

2番目の発表は、レティツィア・グアリーニ(お茶の水女子大学)による、「妊娠・出産・育児がつくりあげる男性の身体-川端裕人『ふにゅう』と『デリパニ』を手がかりに-」でした。この発表では、川端裕人の『おとうさんといっしょ』(2004年)を中心に日本現代文学における父親像の表象について考察を試みました。
現代日本における出産・育児の語り方は、常に女性に焦点を当て、母親がいかにして子どもを産み育てるための身体を作るべきかが論じられています。一方、そこに男性の存在は稀薄であり、家庭内における「父親の不在」がしばしば指摘されています。このような社会事情を反映する現代文学においても出産・育児の体験はしばしば女性を中心に語られており、男性が物語の舞台に登場することは少ない上、育児に「協力する」副次的な人物として描かれることが多いのです。
グアリーニは、川端裕人の『おとうさんといっしょ』から出産に立ち会う男性を主人公にする「デリパニ」と授乳しようと試みる父親を描く「ふにゅう」、この2つの短編小説を取り上げ、川端裕人の作品分析によって、男性の身体に焦点を絞りながら父親の表象について論じ、新たな観点から出産・育児の体験を考察しました。

今回、渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA)のパネルの発表者として参加できたおかげで、貴重なコメントをくださった討論者の方はもちろん、さまざまな研究者と意見交換ができました。自分たちの研究について改めて考える機会を与えていただき、ありがとうございました。
(文中敬称略)

当日の写真は下記リンクよりご覧いただけます。

EACJS #3 Session B1 (Letizia) Photos

<グアリーニ・レティツィア GUARINI Letizia>
2017年度渥美奨学生。イタリア出身。ナポリ東洋大学東洋言語文化科(修士)、お茶の水女子大学人間文化創成科学研究科(修士)修了。現在お茶の水女子大学人間文化創成科学研究科に在学し、「日本現代文学における父娘関係」をテーマに博士論文を執筆中。主な研究領域は戦後女性文学。

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【2】第62回SGRAフォーラム/APYLPxSGRAジョイント・セッションへのお誘い(再送)

◆「再生可能エネルギーが世界を変えるとき・・・?-不都合な真実を越えて」

SGRAは今年から国際文化会館の主宰するアジア・パシフィック・ヤング・リーダーズ・プログラム(APYLP)に参画していますが、下記の通り、第62回SGRAフォーラム/APYLPxSGRAジョイント・セッションを国際文化会館と共催いたしますので、奮ってご参加ください。

本フォーラムでは「再生可能エネルギー社会実現の可能性」を、国際政治・経済、環境・科学技術(イノベーション)、そして「エネルギーとコミュニティー」の視点から総合的に考察します。SGRAメンバー(元渥美奨学生)に加え、ドイツやオーストラリア、福島県飯舘村からスピーカーが集まり、脱炭素化社会のこれからについて国際的かつ学際的に検討します。ドイツの脱原発政策を牽引してきた緑の党の連邦議員を務め、現在エナジー・ウォッチ・グループ代表のハンス=ヨゼフ・フェル氏や、震災で多大な原発被害を受けた飯舘村でエネルギー問題に取り組む若手リーダーの声を直接聞くまたとない機会です。講演の後には、気軽に意見・情報交換ができるワークショップも予定しております。締め切りは1月25日(金)ですが満席になり次第締め切ります(先着順)ので、お早目に下記よりお申し込みください。

【第62回SGRAフォーラム/APYLPxSGRAジョイント・セッション】

テーマ:「再生可能エネルギーが世界を変えるとき・・・?-不都合な真実を越えて」
日時:2019年2月2日(土)10:30am~5:30pm(開場:10:00am)
会場:国際文化会館岩崎小彌太記念ホール
言語:日本語/英語(基調講演・発表は同時通訳つき)

参加費:無料(要予約:定員120名、各ワークショップは先着20名)
※ご希望の方は昼食(500円)を申し込み時に予約してください。
※国際文化会館イベント案内ページ
https://www.i-house.or.jp/programs/apylp_jointsession20190202/

●一般申し込み
https://www.i-house.or.jp/programs/registration_apylp20181014jp/

●ラクーン会員(渥美奨学生)申し込み
https://www.i-house.or.jp/eng/programs/registration-apylp20190202/

◇詳細は下記リンクよりご覧ください。

第62回SGRAフォーラム / APYLP x SGRAジョイント・セッションへのお誘い

◇アジア・パシフィック・ヤング・リーダーズ・プログラム(APYLP)については、下記リンクよりご覧ください。
https://www.i-house.or.jp/programs/activities/apylp/

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【3】第5回アジア未来会議優秀論文賞およびAFC奨学金の対象となる発表論文募集
◆「持続可能な共有型成長―みんなの故郷、みんなの幸福」(2019年1月20日締切)

第5回アジア未来会議では、AFC奨学金・AFC特別補助金・優秀論文賞の対象となる論文の発表要旨の受付を延長しました。新しい締切は2019年1月20日深夜24時(日本時間)です。皆様からのさらなる応募をお待ちしています。尚、1月1日までに投稿された発表要旨は、選考において20%加点されます。

詳細は下記リンクをご参照ください(タブで日本語か英語を選べます)

Call for Papers

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【4】「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議における発表論文の募集
◆「『東アジア』の誕生-19世紀における国際秩序の転換ー」(2019年1月20日締切)

第4回「国史たちの対話の可能性」円卓会議は、2020年1月8日―12日に、フィリピンのマニラ市近郊で開催する第5回アジア未来会議に重ねて開催することになりました。テーマは「『東アジア』の誕生-19世紀における国際秩序の転換ー」です。

本会議では、下記の要項に従って発表論文を募集しています。対象は、博士号を取得した日中韓3か国の「国史」研究者(日本人の日本史研究者、中国人の中国史研究者、韓国人の韓国史研究者)で、興味のある方は、発表要旨を2019年1月20日までに渥美財団事務局へ直接メールで送ってください。
応募いただいた発表要旨は実行委員会が審査し、「国史たちの対話」円卓会議で発表する9篇の論文のうち約半数と、アジア未来会議の分科会で発表する論文を、最大で、日本語、中国語、韓国語、各3篇ずつ計9篇を選ぶ予定です。
選出された発表要旨の執筆者は、期日までに論文を投稿し、フィリピンの会議に参加して発表していただきます。会議参加のための登録費、滞在費、交通費は渥美財団より全額補助します。

詳細は下記リンクをご参照ください。
日本語、中国語、韓国語の募集要項をダウンロードしていただけます。

第4回「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議における発表論文の募集

締切が迫っていますが、SGRAかわらばん読者の皆様には、関係者に周知していただけますと幸いです。

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★☆★SGRAカレンダー
◇第62回SGRAフォーラム/APYLPxSGRAジョイント・セッション<参加者募集中>
「再生可能エネルギーが世界を変えるとき・・・?―不都合な真実を越えて」

第62回SGRAフォーラム / APYLP x SGRAジョイント・セッションへのお誘い


◇第4回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性
「『東アジア』の誕生-19世紀における国際秩序の転換ー」
(2020年1月8日~12日、マニラ近郊)<論文(発表要旨)募集中>(1月20日締切)

第4回「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議における発表論文の募集


◇第5回アジア未来会議「持続的な共有型成長:みんなの故郷みんなの幸福」
(2020年1月9日~13日、マニラ近郊)<論文(発表要旨)募集中>(1月20日締切)

Call for Papers


☆アジア未来会議は、日本で学んだ人や日本に関心がある人が集い、アジアの未来について語る<場>を提供します。

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