SGRAメールマガジン バックナンバー
Yuriko Noda “Impression of Iitate Visit”
2018年12月20日 13:55:27
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SGRAかわらばん752号(2018年12月20日)
【1】エッセイ:野田百合子「飯舘村を訪れて」
【2】「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議における発表論文募集
「『東アジア』の誕生-19世紀における国際秩序の転換ー」(2019年1月20日締切)
【3】SGRAフォーラム/APYLPxSGRAジョイント・セッションへのお誘い(再送)
「再生可能エネルギーが世界を変えるとき・・・?」(2019年2月2日、東京)
☆今年もSGRAかわらばんをご愛読いただき、ありがとうございました。
☆新年は1月10日から配信を始めます。
☆みなさま、どうぞ良いお年をお迎えください。
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【1】 SGRAエッセイ#583
◆野田百合子「飯舘村を訪れて」
今までに経験したことのない類の、広くて深い学びだった。
忘れないようにとせっせとメモをとって、でもそれは気軽には読み返せなくて、心の奥の引き出しにそっとしまっておきたくなるような。
私にとってはある意味とても非日常な旅だった。東日本大震災の被災地には何度も足を運んだけれど、原発事故で全村避難していた村に来るのは初めてだ。線量計をつけて歩くのも、原発事故や放射線被害について学者の先生から生で話を聴くのも、村の農家の人の暮らしを見せていただいて本音がポロリとこぼれる瞬間に立ち会うのも初めてで。頭も心もたくさん揺さぶられた3日間だった。
しかし飯舘村に暮らす人々にとってそれは日常だ。変わらない、そして日々変わりゆく日常。福島では今も毎日震災や原発関連のニュースをテレビや新聞で取り扱っているのだろうか。少なくとも2年前はそうで、それは東京に住む私にとって一つの驚きだった。
東京から飯舘村に行くには、福島駅で新幹線を降りて1時間ほど東へ車を走らせる。9月半ば、ちょうど稲穂が黄金色に光ってとても美しい風景だった。いいなぁ、こんな季節に来られて幸せだなぁと思ったのも束の間、境を越えて飯舘村に入った瞬間に景色が一変する。黄金色の稲穂はない。稲を育てるのが禁止されているからだ。そして見えるのは除染されてはげ山のようになった田んぼの跡地と黒と緑の巨大な除染袋の山ばかり。これが飯舘村の現実かとショックを受けた。そして境って何だろうと思った。放射性物質には境はない。村の中と村の外、境界線近くの線量は同じくらいのはずなのに地図上に引いた境が運命を分ける。村の一部は未だ帰還困難区域でバリケードで封鎖されている。その境目も難しい。バリケードの中は人が住めなくて荒れ放題で、でも中に家がある人には補償金がたくさん出るという。どちらがいいのか、いやどちらも嫌だな。村の人はこの美しい村で黄金色の稲や花を育てたり、牛を飼ったりして、昔ながらの暮らしを続けたいだけだっただろうに。
2017年3月31日に村の多くの地域で避難指示が解除になって、元の人口6,000人のうち約400人が帰村した。村に住む人、通う人、家族は別に暮らす人。人によって状況は様々だ。放射性物質は目に見えないし、この先の状況もわからない。だから一つひとつの判断に家族は揺れ、意見が分かれる。「これは放射能の問題というより生活や人間関係の問題、精神の分断だ。夫婦ゲンカ、親子ゲンカ、こういう問題はお金で解決できない。」ふくしま再生の会の田尾さんの言葉が胸に突き刺さった。
村に帰ってきて生活を再建しようとしている人にも何人かお会いした。
高橋日出夫さんは、国に建ててもらったというビニールハウスでアルストロメリア、トルコキキョウやカスミソウを育てて大田市場に出荷している。花について活き活きと語るときの日出夫さんの笑顔と、「生まれ育ったところでは見える景色全部が自分のもの。月も星も、飛行機までもうちのものと思う。避難先では月も星もよそのものって思ってたからなぁ」という一言が印象に残った。今67歳。あと20年は花を育て続けたいそうだ。
大久保金一さんは76歳。小宮地区にほぼ一人で住んでいる花の仙人だ。物心ついたときから花に興味を持っていて、花は食べられないからと親に叱られながらも花を植え育ててきた。震災の前の年に思い切って水を引いて花園を拡大しようとするも原発事故で中断。今も除染作業の最中だが、除染を終えたところには17種類の桜を始めボランティアの力も借りながら様々な花を育てている。金一さんは「原発事故があって涙を流さない日は一日もないといっても過言ではない」と言いながらも、花のことになると活き活きと語ってくれた。毎日一人であれをしよう、これをしよう、こうしたらどうかなとあれこれ考えて身体を動かす。生きる喜びとはこういうことなのかもしれない。事情の違う一人ひとりの生活の再建を支えるというのは気の遠くなるような道のりだと思う一方で、この喜びや尊厳を奪う権利は誰にもないのではと金一さんの姿を見ていて感じたのだった。
今回の旅を案内してくださったふくしま再生の会はシニア世代を中心とするNPO法人で、ほぼ毎週末東京などから飯舘村に通って村の人と一緒に様々な活動をしている。いま村の人は何を求めていてどんなデータや仕組みがあったらいいかを考え試行錯誤をしながら、ボランティアがそれぞれの関心や専門性を活かして活動しているのが特徴的だ。理事長の田尾さんは、「僕らは支援者じゃない。対等に協働している。ありがとうはいらない。村の人のためというよりか自分のためにやっている。」「ここは本物のフロンティア。まだわからないことがたくさんある。役に立てることがたくさんある」という。そして、なぜそこまでするのですかという質問には、「リタイアした人は都会でさみしいんだ。ここに来ると元気になる。人生100年、それをどう過ごすかだ。自分はここではりきっている。課題やわからないこともたくさんある。」と答えてくれた。
今回の旅で一番印象に残ったのは、あれをしよう、これをしようと自分で考えて身体を動かし、自分らしく生きる人の活き活きと輝く姿だった。それは被災した村の人も、再生の会の人も、たぶん私たちも同じ。人生とは、自分らしくクリエイティブに生きること。
では、私らしくクリエイティブに生きるって何だろう。私にとっては通訳の仕事を含めて、人と人との間に橋をかけることなのかなと思う。私はこの旅で村の人や再生の会の方たちにたくさんのものをもらった気がする。だから私らしく橋をかけることで何かお返しできたらと思った。具体的には今後、飯舘村に来たことのない日本の人、外国の人をもっとここに連れてきて橋をかけることで、お互いがもっと豊かになるような体験が提供できたらいいなと考えている。
今回お世話になった一人ひとりに感謝したい。SGRAの皆さんとのおしゃべりもとても楽しかった。
飯舘村、また来ます。
(2017年12月記)
<野田百合子(のだ・ゆりこ)NODA Yuriko>
英語通訳、ファシリテーター、ミディエーター。公益社団法人CISV日本協会理事。国際基督教大学卒業、現在は明治大学専門職大学院ガバナンス研究科に在学中(ミディエーション研究)。人と人との間に橋をかけ、お互いがより深く理解し合えるようにサポートするというのをライフワークに、日々活動している。
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【2】「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議における発表論文の募集
◆「『東アジア』の誕生-19世紀における国際秩序の転換ー」
第4回「国史たちの対話の可能性」円卓会議は、2020年1月8日―12日に、フィリピンのマニラ市近郊で開催する第5回アジア未来会議に重ねて開催することになりました。テーマは「『東アジア』の誕生-19世紀における国際秩序の転換ー」です。
本会議では、下記の要項に従って発表論文を募集しています。対象は、博士号を取得した日中韓3か国の「国史」研究者(日本人の日本史研究者、中国人の中国史研究者、韓国人の韓国史研究者)で、興味のある方は、発表要旨を2019年1月20日までに渥美財団事務局へ直接メールで送ってください。
応募いただいた発表要旨は実行委員会が審査し、「国史たちの対話」円卓会議で発表する9篇の論文のうち約半数と、アジア未来会議の分科会で発表する論文を、最大で、日本語、中国語、韓国語、各3篇ずつ計9篇を選ぶ予定です。
選出された発表要旨の執筆者は、期日までに論文を投稿し、フィリピンの会議に参加して発表していただきます。会議参加のための登録費、滞在費、交通費は渥美財団より全額補助します。
◇投稿方法
下記リンクより募集要項の「趣旨とテーマ」をお読みいただき、このテーマで発表・討論したい方は、およそ2000字で発表要旨をお寄せください。その中から国境を越えた対話にふさわしいものを選びます。ただし、論文の執筆にあたっては、外国の類似分野の研究者、あるいは自国の他分野の専門家に分るようにご配慮ください。同種の問題が隣国にも存在し、それゆえに対話が可能となること、同時に国家間の異同や解釈の相違が浮彫りとされること。それを通じて、参加者の間に知を共有する新たな場が生れ、将来の知的協業が生れることを期待しています。
募集要項(日本語)
http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2018/12/Kokushi2020CallForPapersJapanese.pdf
募集要項(中国語)
http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2018/12/Kokushi2020CallForPapersChinese.pdf
募集要項(韓国語)
http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2018/12/Kokushi2020CallForPapersKorean.pdf
○募集要項に従って下記の情報をメール添付にてお送りください。
・氏名(漢字、ひらがな/ハングル、ローマ字)・所属・連絡先(Eメール)
・2000字の発表要旨
・600字程度の略歴・主要論文リスト
・推薦者氏名・所属・連絡先(Eメール)
送付先・問合せ:[email protected]
締め切り:2019年1月20日(※締切変更しました)
○過去の円卓会議の報告書は下記よりご覧いただけます。
SGRAレポート第79号
「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性(1)」
SGRAレポート第82号
「第2回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性
―蒙古襲来と13世紀モンゴル帝国のグローバル化」
レポート第82号「第2回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性─蒙古襲来と13 世紀モンゴル帝国のグローバル化」
○第5回アジア未来会議については下記リンクよりご覧いただけます。
http://www.aisf.or.jp/AFC/2020/
締切が迫っていますが、SGRAかわらばん読者の皆様には、関係者に周知していただけますと幸いです。
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【3】第62回SGRAフォーラム/APYLPxSGRAジョイント・セッションへのお誘い(再送)
◆「再生可能エネルギーが世界を変えるとき・・・?―不都合な真実を越えて」
SGRAは今年から国際文化会館の主宰するアジア・パシフィック・ヤング・リーダーズ・プログラム(APYLP)に参画していますが、下記の通り、第62回SGRAフォーラム/APYLPxSGRAジョイント・セッションを国際文化会館と共催いたしますので、奮ってご参加ください。
本フォーラムでは「再生可能エネルギー社会実現の可能性」を、国際政治・経済、環境・科学技術(イノベーション)、そして「エネルギーとコミュニティー」の視点から総合的に考察します。SGRAメンバー(元渥美奨学生)に加え、ドイツやオーストラリア、福島県飯舘村からスピーカーが集まり、脱炭素化社会のこれからについて国際的かつ学際的に検討します。ドイツの脱原発政策を牽引してきた緑の党の連邦議員を務め、現在エナジー・ウォッチ・グループ代表のハンス=ヨゼフ・フェル氏や、震災で多大な原発被害を受けた飯舘村でエネルギー問題に取り組む若手リーダーの声を直接聞くまたとない機会です。講演の後には、気軽に意見・情報交換ができるワークショップも予定しております。締め切りは1月25日(金)ですが満席になり次第締め切ります(先着順)ので、お早目に下記よりお申し込みください。
【第62回SGRAフォーラム/APYLPxSGRAジョイント・セッション】
テーマ:「再生可能エネルギーが世界を変えるとき・・・?―不都合な真実を越えて」
日時:2019年2月2日(土)10:30am~5:30pm(開場:10:00am)
会場:国際文化会館岩崎小彌太記念ホール
言語:日本語/英語(基調講演・発表は同時通訳つき)
参加費:無料(要予約:定員120名、各ワークショップは先着20名)
※ご希望の方は昼食(500円)を申し込み時に予約してください。
※国際文化会館イベント案内ページ
https://www.i-house.or.jp/programs/apylp_jointsession20190202/
●一般申し込み
https://www.i-house.or.jp/programs/registration_apylp20181014jp/
●ラクーン会員(渥美奨学生)申し込み
https://www.i-house.or.jp/eng/programs/registration-apylp20190202/
◇プログラムは下記リンクよりご覧ください。
http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2018/12/SGRA-APYLP-program.pdf
◇アジア・パシフィック・ヤング・リーダーズ・プログラム(APYLP)については、下記リンクよりご覧ください。
https://www.i-house.or.jp/programs/activities/apylp/
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★☆★SGRAカレンダー
◇第62回SGRAフォーラム/APYLPxSGRAジョイント・セッション<参加者募集中>
「再生可能エネルギーが世界を変えるとき・・・?―不都合な真実を越えて」
◇第5回アジア未来会議「持続的な共有型成長:みんなの故郷みんなの幸福」
(2020年1月9日~13日、マニラ近郊)<論文(発表要旨)募集中>
☆アジア未来会議は、日本で学んだ人や日本に関心がある人が集い、アジアの未来について語る<場>を提供します。
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