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Isabel Fassbender “SGRA Cafe #10 Report”
2017年9月7日 15:07:39
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SGRAかわらばん689号(2017年9月7日)
SGRAかわらばん689号(2017年9月7日)
【1】イザベル・ファスベンダー:第10回SGRAカフェ報告
「産まれる前から死んだ後まで頑張らないと?」
「産まれる前から死んだ後まで頑張らないと?」
【2】インタビュー記事紹介:「『日韓断交』経済学者が語る巨大なデメリット」
【3】第4回アジア未来会議:たくさんの投稿をありがとうございます!
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【1】 イザベル・ファスベンダー:第10回SGRAカフェ報告
◆「産まれる前から死んだ後まで頑張らないと?『妊活』と『終活』の流行があらわすもの」
◆「産まれる前から死んだ後まで頑張らないと?『妊活』と『終活』の流行があらわすもの」
去る7月29日(土)「産まれる前から死んだ後まで頑張らないと?「妊活」と「終活」の流行があらわすもの」というテーマで第10回SGRAカフェが開催されました。年齢、性別、肩書を越えて、幅広く、60名を超える方々にお越し頂き、プレゼンターの一人としてとても嬉しかったです。「妊活」と「終活」についての30分ずつの発表の後、参加者全員を巻き込んでのディスカッションとグループワークがありました。とても活発な議論となり、大事な意見を一杯いただくことができました。参加者の皆さま、積極的に議論に貢献してくださいまして本当にありがとうございました。そして、今回のイベントに向けて様々な形で支えていただいた渥美財団の皆さま、心より感謝申し上げます。とりわけ太田美行さんからは企画当初から運営の柱として大きなご助力を賜り、ここに特別に感謝の気持ちをお伝えさせていただきたく存じます。
今回のテーマは、講師を務めた私たち2人(ライプチッヒ大学東アジア研究所日本学科のドロテア・ムラデノヴァさんと私)の研究と直接の関連をもつものでした。私たちはこれまで会う度に議論し、意見交換をしてきましたが、その内容を広く、この社会に生きる人々とシェアし、話し合いたいという想いを強く持ち続けてきました。それを今回SGRAカフェにて実現させていただけて、共々本当に嬉しく思っております。「妊活」という生に関わる活動、「終活」という死に関わる活動、その扱うところのものは正反対であるにもかかわらず、私たちの思考・分析方法は驚くほど重なっています。ただそれは偶然ではなく、必然的なもののように思われます。人生を国家や社会が管理・活性化しようとするメカニズムにおいて、「妊活」と「終活」は鏡合わせのようなものです。
私たちは、人生の節目において追い立ててくるこれらの「活動」に関わる言説を、人の生を社会的なある思惑へ従わせるための「運営」手段として批判的に考察することを試みています。今や生涯(とそれ以前・以後)のあらゆる「節目」にこうした「活」が浸透し、その都度人生を活発にデザインするように呼び掛けられています。こうした「活」が「自分なりに生きられる人生のあり方」、「自己決定する権利」や「ある問題を抱えている人へのエンパワーメント」を唱導するものとして捉えることも不可能ではなく、このような言説の潜在的な力を否定できないかもしれないのです。一方でそれは、人生の選択肢を上手く扱えずに失敗した場合、個人の責任であるという「自己責任論」につながりやすい考え方であるということも大いにあります。ある社会の中で活動している限り、自分の人生を自らの意志に沿って挑戦的に生きることなどそもそも可能なのだろうか、という根本的な問いにもつながります。
今回の私たちの報告、そしてその後の各議論において、中心的な問いになったのは、「社会から要請された『がんばれ』を、各個人がどのように受け止め、いかに人生における選択を主体的なものとするか?」でした。「頑張れ、頑張れと社会に言われるのが腹立つ」という方もいれば、逆に「私も終活のこと考えた方がいいね」、「今日の話を聞いて、私も妊活の準備をした方がいいと思った」という意見を会後にいただくこともありました。勿論、[正しい]答えはありませんし、実際、参加した皆さんからは本当に多様なお考えを聴かせていただきました。私たちのいつもの考え方とは別な価値観に基づいてお話しくださった方もいらっしゃいまして、視野が広がり新たな社会の側面を覗き込むことができた思いでした。
ある社会において盛んに流通する言葉の背景に何があるのか、そこにどういったアクターが関わっているのか、それが誰のどういった利益につながっているのか。こうしたことを考えることによって、自分をある種の社会的なプレッシャーから開放する手がかりを探ることが今回の企画の目的でした。ドロテアさんの「終活」のお話を伺い、「自分らしさ」というキーワードが、私たちの研究において、共通して頻繁に出て来ることを発見しました。「自分らしく生きる」という言葉は、多くの方にとって、理想的な生を思わせる響きをもつことと思います。しかし、その「自分らしさ」がどこまで本当に自分に属するものなのか、批判的に問い直されなければならないでしょう。
「妊活」も「終活」も、その目的とやり方は大方社会によって決められていますし、政治的にも利用されます(例えば「妊活」の場合、少子化対策の文脈で)。その上、莫大な利益が生まれるビジネス領域であり、日々発展するテクノロジーによる社会変化とも大いに関係があります。自分らしさというのは真に自発的なものではなく、社会的なものです。誰かにとって都合のいい枠組みのうちにつくられた「自分らしさ」に過ぎないかもしれないということに、注意を払う必要があると思います。「自分らしさ」は時に、社会的に「都合の悪い」とされている生き方を選ぶ・選ばざるをえないということに基づいています。そうした時の「自分らしさ」は認められるのか?認められないなら、それは差別や不平等の対象になってはしまわないか(例えば、子どもを産まないことを選択すること等において)?「自分らしさ」をこのような問いから捉え直すことはとても大切です。
ある社会の中で、そこで生産され流通する言説から「逃げる」ことは大変に難しいです。流布する[言葉]の背景にある権力関係、利益、関係者のつながりを明らかにし、自らの立場を相対化して考えた上で、主体的な選択をいかにとりうるのか逡巡すること、その重要性を今回の議論を通じて改めて強く感じることとなりました。私自身の「妊活」をめぐる研究においては、フェミニズムの視点が中心にあります。「早く産みなさい、産む前にこうしなさい、産んでからはこうしなさい、子育てはこうしなさい」という社会からの命令が、主に男性中心主義的な立場から為されることがとても根強いと、研究の場面でも、日本におけるプライベートな生活領域でも、思わされることが非常に多いです。
私も子育てをしながら研究している立場にあり、日常的な女性に対するプレッシャーと不平等を身近なところで感じています。完璧なお母さんとして全てを子どもに捧げることが社会的に求められており、しかも同時に、格好いい女性(=仕事を頑張っている、自立している)であることも求められている時代状況にあって、その葛藤に引き裂かれる辛く深刻な状況は多くの母親に共有されていることと思います。今回のディスカッションに参加された若い女性の方々のコメントにおいて、同様の葛藤で悩んでいる方が多いことも確認されました。
カフェの最後に、コメンテーターのシム・チュンキャットさんが投げかけてくださった言葉が、状況に対するひとつの態度表明として、決然として喚起的であり、大いに参照されるべきものと思いますので、この報告文の最後に引用します。すなわち「無活に生活をする」こと。私の勝手な解釈ですが、「妊活」や「終活」においてみられるような、社会的に生産される[自分らしさ]を消費するのではなく、そうした言説の網の目から自らを外してやることを、このスローガンは意図しているのではないでしょうか。私たちが住み、共有していると思い込んでいるひとつの言説空間としての社会は、ある部分、つくられた幻想でしかなく、その外部もしっかりと存在していることを知った上で、その社会とは異なるところに「自分」を見つけ直すこと。こうした態度はとても大事だと思います。ただそれを求めることは決して易しいものではなく、一生の課題ともいえる闘いになると思いますが、それでも大事だと思います。
当日の写真は下記リンクよりご覧いただけます。
http://www.aisf.or.jp/sgra/active/photo-gallery/2017/9300/
http://www.aisf.or.jp/sgra/active/photo-gallery/2017/9300/
<イザベル・ファスベンダー☆Fassbender,Isabel>
渥美国際交流財団2017年度奨学生。ランツフート(ドイツ)出身。2011年チューリッヒ大学(スイス)日本研究科卒業。2014年東京外国語大学大学院総合国際学研究科地域国際専攻にて修士号取得。現在、東京外国語大学大学院総合国際学研究科博士後期課程国際社会専攻に在籍、博士論文を執筆中。専門は家族社会学、ジェンダー論。
渥美国際交流財団2017年度奨学生。ランツフート(ドイツ)出身。2011年チューリッヒ大学(スイス)日本研究科卒業。2014年東京外国語大学大学院総合国際学研究科地域国際専攻にて修士号取得。現在、東京外国語大学大学院総合国際学研究科博士後期課程国際社会専攻に在籍、博士論文を執筆中。専門は家族社会学、ジェンダー論。
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【2】 インタビュー記事紹介
渥美財団理事で国士館大学21世紀アジア学部教授の平川均氏へのインタビュー記事をご紹介します。「一般論として、ネット右翼は常識外れの過激な主張をするので、それに対する反論として出されたもの」ということです。
◆岡田光雄「『日韓断交』経済学者が語る巨大なデメリット」
(ダイヤモンド・オンラインより)
(ダイヤモンド・オンラインより)
今や日本人の間では“嫌韓”を語ること自体が珍しいことではなくなりつつあり、インターネット上には、「韓国と国交を断絶するべき」「韓国人を入国させるな」など“日韓断交”論を賛美するコメントが目につくようになっている。だが、こうした主張に対して「合理性がまったく見当たらない」と警鐘を鳴らすのは国士舘大学21世紀アジア学部教授で経済学者の平川均氏だ。
続きは下記リンクよりお読みください。
https://goo.gl/NGTXvW
https://goo.gl/NGTXvW
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【3】 第4回アジア未来会議(2018年8月24日~28日、ソウル市)
「平和、繁栄、そしてダイナミックな未来」
「平和、繁栄、そしてダイナミックな未来」
たくさんの投稿をありがとうございます!
奨学金と優秀論文賞の対象となる論文の発表要旨の募集は、2017年8月31日をもちまして締め切りました。
奨学金と優秀論文賞の対象となる論文の発表要旨の募集は、2017年8月31日をもちまして締め切りました。
【総投稿数】685
【発表言語】英語 655、日本語 30、韓国語 0
【発表形態】フルペーパー643、小論文38、ポスターと展示4
【セッション】一般セッション460、グループセッション87、学生セッション126、ポスターと展示4、論文提出のみ8
【居住国】インドネシア563、フィリピン54、日本23、台湾19、オーストラリア6、中国3、ドイツ2、イタリア2、韓国2、ベトナム2、タイ2、香港1、インド1、オランダ1、スイス1、英国1、米国1
【発表言語】英語 655、日本語 30、韓国語 0
【発表形態】フルペーパー643、小論文38、ポスターと展示4
【セッション】一般セッション460、グループセッション87、学生セッション126、ポスターと展示4、論文提出のみ8
【居住国】インドネシア563、フィリピン54、日本23、台湾19、オーストラリア6、中国3、ドイツ2、イタリア2、韓国2、ベトナム2、タイ2、香港1、インド1、オランダ1、スイス1、英国1、米国1
発表要旨の選考結果は、2017年10月31日までに投稿者にお知らせします。合格通知には、AFC奨学金の申込み案内が含まれていますのでご注意ください。一般論文の発表要旨の投稿は、2018年2月28日まで受け付けます。皆様のご参加をお待ちしています。
☆アジア未来会議は、日本で学んだ人や日本に関心のある人が集い、アジアの未来について語り合う<場>を提供します。
http://www.aisf.or.jp/AFC/2018/
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★☆★SGRAカレンダー
◇第6回SGRAふくしまスタディツアーへのお誘い(9月15~17日福島飯舘村)
「『帰還』-新しい村づくりが始まる」<参加者決定しました>
★☆★SGRAカレンダー
◇第6回SGRAふくしまスタディツアーへのお誘い(9月15~17日福島飯舘村)
「『帰還』-新しい村づくりが始まる」<参加者決定しました>
◇第24回日比持続可能共有型成長セミナ<参加者募集中>(9月23日シドニー市)
「人や自然界を貧しくさせない進歩:地価税や経済地代の役割」
http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/network/2017/9137
◇第8回日台アジア未来フォーラム(2018年5月26日、台北市)
「グローバルなマンガ・アニメ研究のダイナミズムと新たな可能性」
<論文募集中(締め切りは9月4日)>
◇第8回日台アジア未来フォーラム(2018年5月26日、台北市)
「グローバルなマンガ・アニメ研究のダイナミズムと新たな可能性」
<論文募集中(締め切りは9月4日)>
◇第4回アジア未来会議「平和、繁栄、そしてダイナミックな未来」
(2018年8月24日~8月28日、ソウル市)
<論文募集中(締め切りは2018年2月28日)>
http://www.aisf.or.jp/AFC/2018/
☆アジア未来会議は、日本で学んだ人や日本に関心がある人が集い、アジアの未来について語り合う<場>を提供します。
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〒112-0014
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渥美国際交流財団事務局内
電話:03-3943-7612
FAX:03-3943-1512
Email:[email protected]
Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/
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