SGRAメールマガジン バックナンバー
CHO Guk “Between Prejudice, Actual Feeling, and Generalization”
2017年2月9日 11:57:09
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SGRAかわらばん659号(2017年2月9日)
【1】エッセイ:趙国「先入観、実感、一般化の間に」
【2】SGRAフォーラム「人を幸せにするロボット」へのお誘い(2月11日東京)(最終案内)
※当日参加も歓迎ですが、準備の都合上できるだけ事前にご連絡ください。
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【1】SGRAエッセイ#521(『私の日本留学』シリーズ#5)
◆趙国「先入観、実感、一般化の間に」
まだ留学生活が終わったわけではありませんが、約4年間の留学生活について、反省を込めて顧みたいと思います。私は2012年度に早稲田大学の日本史学コース博士課程に入って留学生活を始めました。日本に来る前に、先輩留学生からいろいろな話を聞き、私は日本(人)に関するある種の先入観を持つようになりました。たとえば、学校生活と日本人学生についてです。同じゼミ所属の日本人学生でも仲良くなるまで非常に時間がかかるということです。日本人は他人への配慮心が高すぎる、また人間関係に用心深いという側面があり、特に外国人(留学生)については親切とはいえ、このような側面がもっと強く反映されているようです。自分が積極的に日本人学生たちの中に溶け込もうとしないかぎり、いくら時間が経っても決して仲良くできないという先輩留学生のアドバイスでした。
私はもともとそれほど社交的な性格ではありませんので、以上のような話を聞いて、ある程度の覚悟を持ってゼミに参加することになりましたが、想像した「日本人イメージ」とは相当違う学生たちと出会って半分驚き、半分安心しました。先に声をかけてくれたり、食事に誘ってくれたりする学生がたくさんいたのです。もちろん、中には予想通り(?)、非常に用心深く、私から声をかけることすら難しそうな人もいましたが、それは韓国でも同じでしょう。
またゼミは、韓国で経験したことよりむしろ自由な雰囲気でした。歴史という多少堅い学問的な雰囲気はあるものの、先生と学生、学生同士の活発な議論が行われ、あるゼミでは史料の選定からゼミのやり方まで、すべてを学生自らが決めるほどの自由度がありました。教室外での雰囲気も、私としては馴染みな風景でした。学校周辺の戸山公園では、酔っ払って乱暴ともいえるくらいの学生たちがたまには目にとまり、韓国での大学の風景とさほど違いはありませんでした。
このような経験から、私は、「いつも遠慮がちで、静かな日本人」という先入観を改めることができました。ただし、私の経験は、主に学校の生活、しかも「学問の独立」を学風とする自由な雰囲気の早稲田大学であるからこそ得たものかもしれません。つまり、私の限られた経験を一般化して、ほとんどの日本人がそうであるとは決して言えないのです。
当然ですが、社会の中には様々な人々がいます。私の限られた経験の中でも、憲法修正の反対集会や慰安婦問題に関するシンポジウムで大勢の人々を目の前にした一方で、長い行列の右翼宣伝車やヘイトスピーチをも目撃しました。ただし、その多様性をあまり強調すると、確かに存在する日韓の相違が逆に見えなくなると思います。その相違を理解するためにも、いわゆる「国民性」を定義・解明する、一般化の過程が不可欠でしょう。
日本にも早くから紹介されている、韓国の学者、李御寧氏の『「縮み」志向の日本人』という本もこの試みの一つだと言えます。盆栽からウォークマンまで、説得力をもって分析がなされた本ですが、他方では、世界最大級といえる日本の古墳や、東大寺のような巨大な建築物はどう説明するのかという疑問も残ります。つまり、一般化の作業には、再び先入観を作り出してしまう恐れもあります。
これは非常に難しい問題で、私も常に悩んでいるところです。たとえば、韓国には日本に対する先入観を持っている人がいますが、これらの人々に私は自らの経験に基づいて「実はそうではないこともある」と語る一方で、「一般化はできないけれど」という条件を付けないといけないのです。しかし同時に、社会全般における日韓の相違を理解するための、一般化した説明もまた必要であると思います。先入観、実感、そして一般化の間にバランスをとっていくことが重要です。歴史に限っても、日韓の間には、相手を理解しながら解決すべき問題が依然として残っています。互いの理解を高めるためには、なにより相手国へ関心を持つことが重要ですが、それと同時に、自分が得た知識、体験と距離を置き、相対化する必要もある、というのが私の留学生活を通じて得た貴重な教訓です。
<趙 国(チョ・グック)CHO_Guk>
歴史学専攻。早稲田大学大学院文学研究科博士課程在学中。研究分野は日本近現代史で、現在は日本の居留地における清国人管理問題について博士論文を執筆している。
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【2】第56回SGRAフォーラム「人を幸せにするロボット」へのお誘い(最終案内)
下記の通りSGRAフォーラムを開催いたします。参加ご希望の方は、事前にお名前・ご所属・緊急連絡先をSGRA事務局宛ご連絡ください。当日参加も歓迎ですが、準備の都合上、できるだけ事前にご連絡くださいますようお願いします。
◆テーマ:「人を幸せにするロボット(人とロボットの共生社会をめざして第2回)」
日 時:2017年2月11日(土・休)午後1時30分~4時30分
会 場:東京国際フォーラムガラス棟 G501号室
参加費:フォーラムは無料 懇親会は賛助会員・学生1000円、メール会員・一般2000円
お問い合わせ・参加申込み:SGRA事務局([email protected], 03-3943-7612)
〇フォーラムの趣旨
近年、ニュースや様々なイベントなどで人型ロボットを見かける機会も多くなってきました。今、私たちの日々の生活をサポートしてくれる「より人間らしいロボット ヒューマノイド」の開発が急ピッチに進んでいます。
一方で、私たちの日常生活の中では、既に多種多様なロボットが入り込んでいる、といわれています。例えば「お掃除ロボット」、「全自動洗濯機」、「自動運転自動車」などなど。ロボット研究者によれば、これらもロボットなのだそうです。では、ロボットとは何なのでしょうか?
そして、未来に向けて「こころを持ったロボット」の開発がA.I.(Artificial_Intelligence)の研究をベースに進められています。「こころを持ったロボット」は可能なのでしょうか?「ロボットのこころ」とは何なのでしょうか?この問題を突き詰めて行くと、「こころ」とは何か?という哲学の永遠の命題に行きあたります。
今回のフォーラムでは、第一線で活躍中のロボット研究者と気鋭の哲学者が、人を幸せにするロボットとは何か?人とロボットが共生する社会とは?など、皆さまの興味や疑問にわかり易くお答えします。
〇プログラム
【基調講演】「夢を目指す若者が集う大学とロボット研究開発の取り組み」
稲葉雅幸(Masayuki_Inaba)東京大学大学院情報理工学系研究科創造情報学専攻教授
ロボットの研究開発は数十年の歴史があり、工場内から社会生活のさまざまな分野への活躍が期待されています。ロボットで社会貢献の夢を抱く若者が集い、社会へ飛び立ってゆく大学におけるロボット研究開発の取り組みについてご紹介します。
【プレゼンテーション1】「ロボットが描く未来」
李周浩(Joo-Ho_Lee)立命館大学情報理工学部情報コミュニケーション学科教授
SF映画、SF小説、SF漫画、未来の社会を描く物語には必ずと言っても過言ではないくらいロボットが出てきます。本講演では予測可能な未来を実現させる技術としてのロボットについて、また、そのロボットが現在の社会に与える影響に関する内容を中心に話題を提供します。
【プレゼンテーション2】「ロボットの心、人間の心」
文景楠(Kyungnam_Moon)東京大学教養学部助教(哲学)
ロボットは人間のような心をもつことができるのでしょうか。それ以前に、心を「もつ」や「もたない」といったことはそもそも何を意味しているのでしょうか。私のプレゼンテーションでは、こういった問題を哲学的な観点から一緒に考えます。
【プレゼンテーション3】「(絵でわかる)ロボットのしくみ」
瀬戸文美(Fumi_Seto)物書きエンジニア
「絵でわかるロボットのしくみ」はロボット工学へのはじめの一歩を踏み出すためのガイドブックとして、数式や専門用語を用いずに分野全体の俯瞰を行うことを目的とした書籍です。この本ができるまでの紆余曲折をお話しし、ロボットや科学技術を身近なものとするにはどうしたらよいか、皆さんと考えたいと思います。
【フリーディスカッション】-フロアとの質疑応答-
〇プログラムは下記リンクをご覧ください。
http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2016/12/SGRA_Forum_56_Program_rev2.pdf
〇ポスターは下記リンクよりダウンロードしていただけます。
http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2016/12/59thSGRAforumposterlight.pdf
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★☆★SGRAカレンダー
◇第56回SGRAフォーラム(2月11日東京)
「人を幸せにするロボット」<参加者募集中>
◇第22回日比共有型成長セミナー(2月13日フィリピン・ロスバニョス)
「地方分権と持続可能な共有型成長」(言語は英語)<参加者募集中>
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