SGRAメールマガジン バックナンバー

GRIB Dina “The Choice of Studying in Japan”

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SGRAかわらばん629号(2016年7月21日)

【1】エッセイ:グリブ ディーナ「日本留学という選択肢」

【2】第21回日比持続可能な共有型成長セミナーへのお誘い(8月26日、フィリピン)
  「開発研究・指導の進歩と効果を持続させるために」
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【1】SGRAエッセイ#498(『私の日本留学』シリーズ#2)

◆グリブ ディーナ「日本留学という選択肢」
         
「へえ、本当?2年間も留学するつもりなの?いい歳して、何のため?」と、日本へ来る前に知り合いに聞かれたことを7年後の今でも覚えております。当時は、日本語を勉強しているから、日本への留学を望むことが当然だと考えており、質問の意図さえよく解りませんでした。正直なところ、留学を望まない人のことを視野が狭いと内心でせめていました。しかし、今は留学を望まない人の気持ちが解らなかった私の方こそが視野が狭かったのだと思っています。それに気がつくまでには、だいぶ時間がかかりましたが、気づかせてくれたのは小さな出来事でした。

修士のとき、日本の大学に在学中の留学生が受けている英語クラスを履修しました。そのクラスで「日本語の勉強をすべきかすべきでないか」というテーマで議論したことがあります。議論のテーマを聞いたとき、「それは全員の意見が一致し、議論にならないでしょ。だって、全員が日本の大学で勉強しているから日本語を習いたいに決まっている。」と思いました。しかし、私の予想は外れ、日本語の勉強が必要だと考える留学生が少数派になりました。日本語を勉強しなくても日本での生活・勉強ができるため、語学の勉強をする時間が惜しいという意見が多数派で、私には刺激的でした。言われてみれば、留学するからにはその国の言語の学習が必須、ということでもないでしょう。さらに外国語を勉強しなくても、留学しなくても幸せに暮らす人が大勢いて、その方がむしろ一般的で、まともな生き方なのかもしれません。

そこで、日本語の勉強に全力を当てた自分の選んだ道、それまで当然の選択肢だった日本留学も疑問に思えてきました。留学生の友達は皆将来に対する不安があるそうで、どことなく躊躇しているようにみえます。2年間の留学のつもりで来日してから、既に7年も経ったのに留学がまだ終わらない今になっても、その疑問が残っています。こんなにも長く留学する意味を人にどう教えればいいか、どうすれば理解・納得していただけるのでしょうか。

留学の利点としてよく挙げられるのは、語学力向上、異文化体験、新しい友達などです。それは全て尤もだと思います。留学経験によって独立性が高まり、異文化との接触によって視野や許容範囲が広がるのも本当のことだと思います。しかし、それらの利点は短期の留学経験によってもクリアでき、長期留学の決定要因になるのでしょうか。

もともと、日本史の研究を深めることと日本語力を磨くことが留学の目的でした。しかし、胸に手を当てると、非日常的な経験を求めていたところもあります。留学前のロシアでの生活も仕事も楽しかったけれど、少しマンネリを感じていました。そこで、留学がきっと刺激になると思い、日常から逃げようと考えた訳です。その願望は、留学の初めの頃は達成できていました。確かに一年目は思いきって日本国内を旅行したり、お祭りや博物館の見学に行ったりしました。勉強の傍ら、旅行・お祭り・見学・交流会等で大変充実していました。富士山やお花見はもちろんのこと、一般参賀や靖国神社の奉納相撲の見学まで行きました。

しかし、少しずつ留学に対する意識が変わっていき、留学が遊びではなく、私の新しい「日常」になりました。見物や見学よりは自分の研究の方が大事になってきて、図書館に閉じこもる日が増えました。博士課程に進んでからは、見学に行く時間が惜しくて、旅行といっても殆ど学会か勉強合宿です。人から見れば、つまらない日々になってきたのかもしれませんが、私にとってはとても楽しくて、それはそれで充実していると感じております。

時々、留学せずにロシアで生活していたら、今どうなっていただろうかと考えることがあります。もっと落ち着いて、将来のことを心配せずに生きていたでしょうけど、どれだけ多くの出会いを見逃し、どれだけ貴重な経験や知識を得損ねたでしょうか。

結局、普遍的に留学をすべきかすべきでないか、外国語を勉強すべきかすべきでないかという質問にどう答えれば良いかはさっぱり解りません。おそらく、人にも場合にもよると思います。ただ、私の場合は、7年前に戻れたとしても、迷わずに再び日本留学を選びます。この選択を人に説明するために必要な説得力はありませんが、全ての不安や悩みをひっくるめて、日本留学が私にとって一番の選択肢だったと確信しております。

<グリブ ディーナ GRIB Dina>
2015年度渥美奨学生。ロシア出身。2007年ロシア、ウラジオストク市にある極東連邦大学を卒業。2012年明治大学大学院文学研究科にて修士号(史学)取得。現在首都大学東京大学院人文科学研究科の博士後期課程に在籍中。専門は日本語教育、研究分野は非漢字圏日本語学習者を対象とする日本漢文・漢文訓読の教育。

【2】第21回日比持続可能な共有型成長セミナーへのお誘い

下記の通り第21回日比共有型成長セミナーをフィリピンのベンゲット州で開催します。参加ご希望の方は、SGRAフィリピンに英語でご連絡ください。

◆第21回日比持続可能な共有型成長セミナー
テーマ:「開発研究・指導の進歩と効果を持続させるために」
“Sustaining_the_Growth_and_Gains_of_Development_Research_and_Extension”

日時:2016年8月26日(金)~27日(土)
場所:ベンゲット州コルディリェラ行政地域
    1日目:ベンゲット国立大学農業研修所にて円卓会議
    2日目:農場の現場視察
言語:英語
申込み・問合せ:SGRAフィリピン ( [email protected] )

〇セミナーの概要

SGRAフィリピンが開催する21回目の持続可能な共有型成長セミナー。今回は、アジア未来会議から習った新しい形式で開催する。SGRAフィリピンの運営委員でもある、フィリピン政府農業省のJane_Toribio博士の研究調査の現場である、ベンゲット州(マニラ市から北へ車で約6時間の山岳地帯)を会場とし、1日目は関係者の円卓会議を、2日目は現場視察を予定している。

これからのマニラ・セミナーは、今まで続けてきた「持続可能な共有型成長」というテーマにさらに集中し、効率・公平・環境の3側面(3K)を重視している委員たちの研究・アドボカシーのみを扱いたい。従来は絨毯爆撃(carpet_bombing)方式の「なんでもあり」というやり方で、課題に命中しないことが多かったが、今後は精密打撃(surgical_strike)方式で展開する。今回は、持続可能な農業という3Kの研究・アドボカシーである。お時間のある方、ぜひご参加ください。

〇プログラム

1日目:8月26日(金)
発表1(09:45~10:15)「ベンゲット州における有機農業の実践と経験」
発表者:Jeffrey_Sotero
発表2(10:15~10:45)「ベンゲット州における苺農業」
発表者:Felicitas_Dosdos
発表3(10:45~11:15)「ベンゲット州における被災のリスク低減や管理」
発表者:Atty._Roberto_Canuto、Winston_Palaez、Erick_Abangley
発表4(11:15~11:45)未定
質疑応答
円卓会議(13:30~17:00)
モデレーター:Dr. Max Maquito
討論者:午前の発表者

2日目:8月27日(土)
08:00:バギオ市のR. Salda市長へ挨拶
08:30:Bahongの花畑と農園の視察
10:00:苺農園の視察
12:00:有機農業の食事
13:30: マニラへ向かいながら観光

英文の案内は下記リンクよりご覧ください。
http://www.aisf.or.jp/sgra/english/2016/07/19/sustainable-shared-growth-seminar-21/

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★☆★SGRAカレンダー
◇第21回日比持続可能な共有型成長セミナー
(2016年8月26日~27日、フィリピン・ベンゲット州)
http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/network/2016/6991/
◇第3回アジア未来会議「環境と共生」
(2016年9月29日~10月3日、北九州市)
http://www.aisf.or.jp/AFC/2016/
<参加申込みは締め切りました>
☆アジア未来会議は、日本で学んだ人や日本に関心がある人が集い、アジアの未来について語る<場>を提供します。

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