SGRAメールマガジン バックナンバー

Maquito “Is it not delightful to have a friend come from afar?”

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SGRAかわらばん598号(2015年12月10日)

(1)エッセイ:マキト「朋あり遠方より来る、また楽しからずや」

(2)寄贈本紹介:包聯群「現代中国における言語政策と言語継承」
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(1)SGRAエッセイ#478

◆マックス・マキト「朋あり遠方より来る、また楽しからずや」

ハロウィーンの夜、コスチュームなしの普通の格好で、今西さんを囲んで渥美財団一期生4人(Jin、Shi、Yaku、Max)が新宿の中華料理店に集まった。3人は悠久の歴史をもつ中国大陸から、1人は東アジアの若き島国のフィリピンから来て、20年前に渥美財団で出会った。今回は北京に住むJinさんが来日していることがわかって、今西さんが東京に住む同期生に呼びかけてくれた。

混雑する店内に4時間も居座り、健康や子どもの教育など話題は尽きなかった。集まりに行く前に僕の頭に浮かんだことは、言うまでもなく現在進行中の南シナ海の領土問題である。中国やベトナムやフィリピンなどが南沙諸島(Spratly_Islands)の領有権を巡って争っている。実効支配を図るためにどの国も島々に建設を進めてきた。ただ、この数年間に中国は軍事基地としても利用できる埋め立て建設を急ピッチで進めており、地域外の先進国まで巻き込まれて、緊張感が高まっている。

ビールと紹興酒が少し進んだところで、この話題が取り上げられた。12.5%中国系である僕は今のフィリピン政府の強硬姿勢を批判し、中国がいかに好きかについて話した。中国人と結婚している親戚もいる。この夏、フェイスブック上でこの問題について熱い議論をしたことがあった。僕は一所懸命理性的な議論を促したが、フィリピン人の大半は、やはり凄く中国に脅威を感じ、アメリカや日本などの域外先進国の支援を大喜びしている。

実は、僕は、以前、米国などの軍事存在がなくても東アジア地域が繁栄できると信じていたときがあった。フィリピンの反共政策に影響を受けた中国脅威論の中でずっと育てられた僕にとっては、自分でも意外なことであった。

しかしながら、ハロウィーンの夜に中国の友達にも話したように、中国は最近、南沙諸島を両手で掴みとろうとしているが、その砂は指の間から溢れでてしまっている。昨年バリ島で開催した第2回アジア未来会議での基調講演に対して、僕は、「中国は可愛いパンダから凶暴な龍に変身した」とコメントした。つまり、東アジアの団結は僕も心から望んでいるが、それは互いに尊重する友好関係に基づかないと成り立たないと思うのだ。数学が好きなShiさんもこの中国の行動について疑問を述べていた。

20年前と一番変わっていないYakuさんが、SGRAの「良き地球市民の実現」に言及し、最近、地球市民の理念が弱くなってきているのではないかという心配を分かち合ってくれた。僕はすぐに反応して、こんな時代だからこそ、この理念をもっと大事にして発揮しなければならないと言った。通じたかどうか、わからないが、本当に僕はそう思っている。僕らに続く渥美奨学生たちが、このことをどのぐらい意識しているのか、ちょっと心配である。

来年の2月10日、SGRAフィリピンが、マニラのアテネオ大学で企画している第20回共有型成長セミナー(テーマ:Human_Ecology_and_Sustainable_Shared_Growth人間生態学と持続可能共有型成長)を開催すると今西さんが告知すると、お酒が一番強いJinさんが「行こう!行こう!」とみんなを誘ってくれた。その半分は10杯を超えるビールの勢いだったと思うが、とても嬉しく思っている。たとえ実現しなくてもこうやってみなさんと話せれば幸いである。

夜が更けてお別れの時間がきた。僕の頭によく残っている20年前からのイメージと変わらない、陽気で酔っ払いの同期の仲間のJinさんを、仮装した人々で溢れている東京の街で、その賑やかな人込みで迷わないように地下鉄に乗せるまで見送った。

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<マックス・マキト ☆ Max Maquito>
SGRA日比共有型成長セミナー担当研究員。SGRAフィリピン代表。フィリピン大学機械工学部学士、Center_for_Research_and_Communication(CRC:現アジア太平洋大学)産業経済学修士、東京大学経済学研究科博士、アジア太平洋大学にあるCRCの研究顧問。テンプル大学ジャパン講師。
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(2)寄贈本紹介
SGRA会員で大分大学経済学部准教授の包聯群さんから編著書をご寄贈いただきましたのでご紹介します。

◆包聯群_編著「現代中国における言語政策と言語継承」第二巻

本書は、2013年12月9日に首都大学東京において実施された第三回日中ワークショップ(「現代中国における言語政策と言語継承」)で行われた口頭発表の内容を論文集としてまとめたものである。主に中国国内における満州ツングース系言語を中心としているが、モンゴル系言語その他の言語も含まれている。

発行日:2015年3月25日
編著者:包聯群
発行所:三元社
ISBN: 978-4-88303-382-9

<目次>
第一部:言語政策と言語継承
1.母語の継承について 田中克彦(タナカ・カツヒコ)
2.母語の平等化政策の政治的経済的効果 徐大明(シュー・ダーミン)
3.現代中国における少数民族の言語政策についての分析 黄行(ファン・シン)

第二部:満州ツングース系言語及び関係諸語
1.エウェンキー語オルグヤ方言の母音体系について 哈斯巴特爾(ハスバートル)
2.十八世紀満漢課本から見る満州語学習 落合守和(オチアイ・モリカズ)
3.ダグル民族における満州の影響及び言語使用の実態 呉人徳司(クレビト・トクス)
4.消滅の危機に瀕する満州語の社会言語学的研究 包聯群(ボウ・レンチュン)
  ―中国黒龍江省を事例として―

第三部:モンゴル系言語
1.内モンゴル自治区におけるモンゴル語研究の現状 白音門徳(バイルモンド)
  ―実験音声学研究の成果を主なデータとして―
2.モンゴル国におけるモンゴル語と方言 E.プレブジャブ

第四部:言語規範
1.中国におけるチベット語文近代化の現状と発展 黄行(ファン・シン)
2.モンゴル国におけるモンゴル語の近代言語規範 E.プレブジャブ

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★☆★SGRAカレンダー
◇第20回共有型成長セミナー(2016年2月10日マニラ)
「人間生態学と持続可能共有型成長」<ご予定ください>
◇第15回日韓アジア未来フォーラム(2016年2月13日東京)
「これからの日韓の国際協力-ODAを中心に」<ご予定ください>
◇第6回日台アジア未来フォーラム(2016年5月21日高雄)
「東アジアにおける知の交流―越境・記憶・共生―」
http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/taiwan/2015/4439/
発表論文の投稿は締め切りました。
◇第3回アジア未来会議「環境と共生」<発表要旨募集中>
(2016年9月29日~10月3日、北九州市)
http://www.aisf.or.jp/AFC/2016/
論文・小論文・ポスター(要旨)の投稿締め切りは2016年2月28日です。
☆アジア未来会議は、日本で学んだ人や日本に関心がある人が集い、アジアの未来について語る<場>を提供します。

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