SGRAメールマガジン バックナンバー
[SGRA_Kawaraban] Virag Viktor ”What do young generations make of
2014年10月1日 14:44:11
*****************************************************
SGRAかわらばん537号(2014年10月1日)
【1】エッセイ:ヴィラーグ・ヴィクトル
「福島の人災からの教訓を若い世代はどう活かしていくか」
−第2回アジア未来会議:ふくしまセッションから−
【2】第3回ふくしまスタディツアー参加者募集
「飯舘村、あれから3年」10月17日(金)〜19日(日)
*****************************************************
【1】SGRAエッセイ#424
■ ヴィラーグ・ヴィクトル「福島の人災からの教訓を若い世代はどのように活かし
ていくのか」
−第2回アジア未来会議:ふくしまセッションから−
第2回アジア未来会議の2日目に、福島原発事故に関する展示とトーク・セッション開
催されました。このセッションでは「Fukushima and its Aftermath: Lessons from
a Man-made Disaster」
(フクシマとその後:人災からの教訓)というテーマを設けて、一方的な発表よりも
参加型のディスカッションを重視しました。
開催のきっかけは、放射能汚染の影響を強く受け避難区域に指定されている福島県飯
舘村への2回の訪問です。SGRAが2012年と2013年に主催したスタディツアーで「知っ
た・感じた・考えた」ことを基にした様々な思いについて、インドネシアをはじめと
した海外の皆さんとシェアしたくて、本企画の実施に至りました。
会場は一日中オープンの展示場のように設置しました。具体的な内容は、スタディツ
アーを題材にしたショート・ドキュメンタリー映像や、参加者が撮った写真をプロ
ジェクターで映す、もしくは展示するというものでした。本展示を観た参加者も巻き
込んで、午後からトーク・セッションを設けました。
飯舘村、とりわけ村民が直面しているあらゆる困難、また村へのSGRAの訪問活動につ
いて簡単に報告してから、SGRAメンバーの震災時の個人的な経験や日常生活の中で
とっている放射能対策を紹介しました。この中から「人災」、「原発事故」、「放射
能被害」、「強制避難」、「除染」などのキーワードが挙がり、これらを軸にフリー
トークが進みました。
フロアからの多数の質問に答えながら、各参加者の国では原発事故を契機に日本のイ
メージがどのように変わったか、放射能問題及び日本政府の対応をどのように考えて
いるのか、等々について発言してもらいました。日本人参加者の中には、被災地の親
戚や知り合いの体験や苦労を話してくださった方もいました。本来は、電力不足問
題、原子力の今後の可能性とそのリスクを巡る議論と意見の共有まで発展する予定で
したが、今回のセッションでは時間の制約があり、議論が及ばなかったことが残念で
した。
主催側として最も嬉しかったのは今回の会議の会場である、インドネシアバリ島のウ
ダヤナ大学の学生の積極的な参加です。トークに参加した学生が非常に高い関心を
もって、是非まわりの人にも展示をみせたいという気持ちから、休憩中に友人を連れ
てきました。筆者はこの2人と長く話を交わす機会がありましたが、なぜ原発問題を
重要な課題として捉えているかという問いに対する答えを聞いて、なるほどと思いま
した。
この2人は、大学院で電子工学と都市計画を学んでいるそうです。まさしく放射能の
リスクと防災及び災害復興をこれから真剣に考えなければならない立場です。しか
も、インドネシアは日本と違って、人口構成的にも経済的な活力の面からみてもまだ
若い社会で、若者は「自分たちが国の将来を担っていくんだ。自分たちが今後のイン
ドネシアを作っていくんだ」という意識が日本の若者と比べて顕著です。できるだけ
「良い国」を作りたいという思いが強いのです。
2人の大学院生によれば、今後グローバル経済の中で急速な発展が期待される新興国
インドネシアは、産業や生産量の拡大と生活水準の向上によって徐々に電力不足に直
面し始めており、原子力発電所の建設も実際に検討されています。関連する政策に今
後直接的に関わっていく可能性が充分ある若い知識層は、日本で発生した原発事故を
どのように考え、そこから何を学べるのでしょうか。
地球規模の極めて重要な問いですから、無論、答えが簡単に出るはずがありません。
しかし、本セッションの題名が示すように「人災からの教訓」という観点から日本の
経験を紹介し、それについて考える機会を提供したことで、今後の議論の継続に多少
の貢献はできたと考えています。「映像」という媒体には言葉をはるかに越えた迫力
があり、参加した若者に強い印象を与えたと思います。近年のインドネシアにおいて
話題性、そして緊急の課題性のある原子力問題について、彼らが真剣に考え続け、意
見を形成していくプロセスを歩んでいくことは間違いありません。それによってイン
ドネシア国内の議論が少しでも活発になるとを望みます。
日本国内でも原子力発電所の再稼働がずっと話題として残されたままです。一方、脱
原発を主張する動きも続いています。しかし、建設的な議論を進められるような形で
両サイドの間に対話が成り立ちにくい印象もしばしば受けます。非常に重要な問題で
あるが故に、感情的になりやすい面もあります。例えば、最近は脱原発の意見を表明
しただけで、一部の利害関係者から「反日」のレッテルを貼られてしまうことすら起
きています。同じく、原発反対を訴える多くの人々が、数字で示せる現実的な代替案
を提示することに失敗しています。筆者はこのようなレッテル貼りや感情論に偏った
議論の流れに危機感を覚えざるを得ません。現在の対立が今後は事実と客観的なデー
タに基づいた冷静な議論に発展していくことを期待します。また、その議論に若い世
代にもどんどん関わって欲しいと思います。
ほぼ一年前のSGRAかわらばんで配信した第2回SGRAふくしまスタディツアーの報告の
際にも触れたので、最後に今回も母国ハンガリーにおける原子炉増設計画の進行状況
について追記したいと思います。現在、全国電力需要のおよそ4割を供給している4基
の原発に加え、2基の新設が決まりました。福島の事故の数カ月後に不謹慎という評
価も受けながら、安倍首相自身もハンガリー訪問の際にセールスをしましたが、見積
り案と現行技術との整合性が検討され、結局はロシアとの契約が成立しました。そも
そも交渉相手として「フクシマの日本」と「チェルノブイリのロシア」しか考慮され
なかったことに疑問を抱かざるを得ません。
第2回アジア未来会議のふくしまセッションの企画に関わったSGRAメンバーは、映像
と展示を担当した朴ヒョンジョン、司会進行のデール・ソンヤ、そしてスピーカーの
シッケタンツ・エリックと私でした。また、実現に向けて、角田英一理事には、当日
の説得力のある豊富なご発言も含めて、様々な形で大変お世話になりました。
なお、今年もSGRAでは飯舘村へのスタディツアーが開催されますので、この問題に興
味のある方には是非お薦めします!
当日の写真は下記リンクよりご覧いただけます。
http://www.aisf.or.jp/sgra/info/Essay424Photos.pdf
第2回SGRAふくしまスタディツアーの報告は下記リンクよりお読みいただけます。
http://www.aisf.or.jp/sgra/active/news/2sgra_1.php
————————–
<ヴィラーグ・ヴィクトル Virag Viktor >
2003年文部科学省学部留学生として来日。東京外国語大学にて日本語学習を経て、
2008年東京大学(文科三類)卒業、文学学士(社会学)。2010年日本社会事業大学大
学院社会福祉学研究科博士前期課程卒業(社会福祉学修士)、博士後期課程進学。在
学中に、日本社会事業大学社会事業研究所研究員、東京外国語大学多言語・多文化教
育研究センター・フェローを経験。2011/12年度日本学術振興会特別研究員。2013年
度渥美奨学生。専門分野は現代日本社会における文化等の多様性に対応したソーシャ
ルワーク実践のための理論及びその教育。昭和女子大学・上智福祉専門学校非常勤講
師。日本社会福祉教育学校連盟事務局国際担当。
————————–
【2】第3回ふくしまスタディツアー「飯舘村、あれから3年」参加者募集
渥美国際交流財団/SGRAでは2012年から毎年、福島第一原発事故の被災地である福島
県飯舘(いいたて)村でのスタディツアーを行ってきました。そのスタディツアーで
の体験や考察をもとにしてSGRAワークショップ、SGRAフォーラム、SGRAカフェ、そし
てバリ島で開催された「アジア未来会議」でのExhibition & Talk Session
「Fukushima and its aftermath-Lesson from Man-made Disaster」などを開催して
きました。今年も10月に3回目の「SGRAふくしまスタディツアー」を行います。お友
達を誘って、ご参加ください。
日程:2014年10月17日(金)、18日(土)、19日(日)2泊3日
参加メンバー:SGRA/ラクーンメンバー、その他
人数: 10〜15人程度
宿泊: ふくしま再生の会-霊山(りょうぜん)センター
参加費: 15,000円(ラクーンメンバーには補助金が出ます)
申込み締切:10月10日(金)
申込み・問合せ: 渥美国際交流財団 角田(つのだ)
Email:[email protected]
Tel: 03-3943-7612
◇参加募集チラシ
http://www.aisf.or.jp/sgra/info/fukushima2014.pdf
**************************************************
● SGRAカレンダー
【1】第3回SGRAふくしまスタディツアー<参加者募集中>
「飯舘村、あれから3年」(2014年10月17日〜19日)
http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/33.php
【2】第8回SGRAチャイナフォーラム<ご予定ください>
「近代日本美術史と近代中国」
(2014年11月22日北京)
【3】第6回SGRAカフェ<ご予定ください>
「シリアとイスラーム国について」(仮題)
(2014年12月13日東京)
【4】第14回日韓アジア未来フォーラム・第48回SGRAフォーラム
「ダイナミックなアジア経済—物流を中心に」
(2015年2月7日東京)<ご予定ください>
●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員
のエッセイを、毎週水曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読
いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。下記URLより自動登録していた
だくこともできますし、事務局までご連絡いただいても結構です。
http://www.aisf.or.jp/sgra/entry/registration_form/
● アドレス変更、配信解除をご希望の方は、お手数ですがSGRA事務局までご連絡く
ださい。
● エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。
● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務
局より著者へ転送いたします。
● 皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。
● SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただ
けます。
http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2014/
関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局
〒112-0014
東京都文京区関口3−5−8
渥美国際交流財団事務局内
電話:03−3943−7612
FAX:03−3943−1512
Email: [email protected]
Homepage: http://www.aisf.or.jp/sgra/
**************************************************