SGRAメールマガジン バックナンバー

[SGRA_Kawaraban] Xie Zhihai “Womanomics: Japanese Women Will Usher in the Future of Japan (Part 2)”

*************************************************************
SGRAかわらばん522号(2014年6月11日)

【1】エッセイ:謝 志海「ウーマノミクス(その2)」

【2】SGRAレポート第67号紹介
  「アジア太平洋時代における東アジア新秩序の模索」

【3】SGRAレポート第68号紹介
  「ボランティア・志願者論」(日中英合冊版)

【4】ワークショップ「人を幸せにする科学とは」へのお誘い(再送)
*************************************************************

【1】SGRAエッセイ#412

■ 謝 志海「ウーマノミクス:日本の女性が日本の未来を導く(その2)」

前回のエッセイでは日本の女性が継続して働き続け、就労人口の底上げを期待されて
いることについて書いたが、同時に少子化問題も日本の切実な悩みであり、こちらに
も女性への期待がかかっている。

5月19日、今後の少子化対策について話し合った内閣府の有識者会議「少子化危機突
破タスクフォース」が提言をまとめた。そこには目標出生率の具体的数値は無かっ
た。「国が女性に出産を押し付けると誤解されかねない」との意見が多かったそう
だ。一人っ子政策をしている中国から来た私が言うのもなんであるが、具体的な目標
出生率を(今は)定めない、という慎重な提言を出したことは画期的であり、女性にプ
レッシャーを与えたくないという気づかいのあらわれと前向きに捉えたい。というの
も、働き手が減るから、年金が足りなくなるから、もっと子供を産もうというので
は、日本の女性にとって子供を産むことが魅力的に感じられるのだろうかと、以前か
ら感じていたからだ。

一方で、将来を予測して具体的な数値を出し対策をとることはとても大事だ。日本の
女性が生涯に産む子供の数が、2.07人に増えて、かつ働き続けたとしても、50年後に
は働く人が1000万人以上減ってしまうと予測されている( 内閣府の将来予測)。2人以
上子供を産んでも将来の就労人口は足りないと試算されているのだ。このとどまると
ころを知らない少子化を食い止めようと、森雅子少子化対策担当大臣は、少子化対策
の3本の矢という、子育て支援、働き方改革、結婚妊娠出産支援を打ち立てている。
子育て支援というと、保育所の新設、政府がよく言う「待機児童ゼロ」。働き方改革
は前回取り上げた、時短勤務など取り入れ、育児と仕事の両立支援。この二つは官民
が策を練り改善が進んでいるように見える。最後の矢、結婚妊娠出産支援、中でも結
婚に関しては具体的に政府がどうからんでいくのか、前出の二つと比べると見えにく
い。まず結婚して、妊娠して、出産してやっと子育て支援と働き方改革の恩恵を受け
られる立場になるのに、結婚する人が増えない。初婚年齢が高くなるだけでなく、生
涯未婚率は増加している。日本の若者にとって、結婚して家族を持つことが素晴らし
いと写らないのだろうか?婚姻率の上昇が出生率上昇の要ではないか?

先日、自民党が配偶者控除の見直しの提言案をまとめた。これも女性の社会進出を促
すのを狙っている。夫婦単位の控除にすることで、共働きと、夫婦どちらかが働く世
帯との間で所得税額の差を出にくくし、専業主婦に与えられる優遇措置と長く言われ
てきた制度の見直しだ。不思議なのが、ここに少子化の事は全く懸念されていない事
である。もちろん、女性の社会進出を促すと言っている手前、子育て世代の女性を支
援するため、ベビーシッターを雇った費用などを所得税額から差し引ける「家事支援
税制」の導入も盛り込んだ(朝日新聞より)とあるが、では例えば、配偶者控除を廃止
したとして、出生率が上がる、もしくは出生率には何も影響は出ないであろうという
未来予測はできているのだろうか?結婚し子育てするメリットが減ってしまわない
か?子供を2人以上持てる家庭は増えるか?そしてベビーシッターを雇った費用は所
得税額から差し引けるというが、安心して子供を預けられるベビーシッターの数は、
それを求める人々の数と合っているのだろうか?

日本のメディアでは日々、働くお母さんが保育園やベビーシッター探しに奔走してい
る様子や、仕事と育児をいかに両立させるかが取り上げられている。仕事をしなが
ら、子供を手元に置き自分で育てていることの大変さは私の想像を越えるだろう。中
国では、保育園や託児所等の施設が充実していないので、子供が小さいうちは実家に
預けっぱなしの親も多い。日々の生活で少しでも子供と過ごす時間を捻出しようとい
う姿勢は、日本の家庭と比べるとはるかに低い。

日本には少子化問題に特化した対策担当大臣もいて、子育て、女性の活用、待機児童
ゼロ、様々な問題を議題に挙げているのだから、個別に対処していくのではなく、総
合的に解決していくことが、女性の社会での活躍と子どもの未来、そして将来の日本
の活性化につながるのではないかと思う。

● 前回のエッセイは下記リンクよりお読みいただけます。
http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2014/post_496.php

—————————
<謝 志海(しゃ しかい)Xie Zhihai>
共愛学園前橋国際大学専任講師。北京大学と早稲田大学のダブル・ディグリープログ
ラムで2007年10月来日。2010年9月に早稲田大学大学院アジア太平洋研究科博士後期
課程単位取得退学、2011年7月に北京大学の博士号(国際関係論)取得。日本国際交
流基金研究フェロー、アジア開発銀行研究所リサーチ・アソシエイトを経て、2013年
4月より現職。ジャパンタイムズ、朝日新聞AJWフォーラムにも論説が掲載されてい
る。
—————————

【2】SGRAレポート紹介(1)

SGRAレポートを発行いたしましたのでご紹介します。PDF版は下記リンクよりご覧い
ただけます。SGRA賛助会員と特別会員のみなさまには冊子をお届けします。冊子の送
付をご希望の方は事務局へご連絡ください。

■ SGRAレポート第67号「アジア太平洋時代における東アジア新秩序の模索」
http://www.aisf.or.jp/sgra/member/KoreaForum/SGRAreport67.pdf

第12回日韓アジア未来フォーラムin キャンベラ
「アジア太平洋時代における東アジア新秩序の模索」講演録
2014年2月25日発行

<もくじ>
【発表1】構造転換の世界経済と東アジア地域統合の課題
平川 均(名古屋大学大学院経済学部教授)

【発表2】中国の海洋戦略と日中関係:新指導部の対外政策の決定構造
加茂具樹(慶応義塾大学総合政策学部准教授)

【発表3】アジア貿易ネットワークの結束と競合:ネットワーク分析技法を用いて
金 雄熙(仁荷大学国際通商学部教授)

【発表4】日韓関係の構造変容、その過渡期としての現状、そして解法の模索
木宮正史(東京大学大学院情報学環(流動)教授)

【発表5】米中両強構図における韓日関係の将来
李 元徳(国民大学国際学部教授)

【発表6】東アジア新秩序と市民社会:脱北者の脱南化現象を中心に
金 敬黙(中京大学国際教養学部教授)
—————————————————————

【3】SGRAレポート紹介(2)

SGRAレポートを発行いたしましたのでご紹介します。PDF版は下記リンクよりご覧い
ただけます。SGRA賛助会員と特別会員のみなさまには冊子をお届けします。冊子の送
付をご希望の方は事務局へご連絡ください。

■ SGRAレポート第68号「ボランティア・志願者論」
http://www.aisf.or.jp/sgra/member/ChinaForum/SGRAreport68.pdf

宮崎幸雄(日本YMCA同盟名誉主事)
「ボランティア・志願者論」講演録
2014年5月15 日発行

○日本語の講演録、中国語訳、英語訳を一冊に纏めてあります。

<講演要旨>

1)私のボランティア原体験 <ベトナム戦争とボランティア>
・自分で手を挙げて(挫折からの逃走) 
・こちらのNeeds (体育) とあちらのInterests(養豚) 
・信頼なくして “いのち” なし(地雷原の村) 
・解放農民の学校(自立・自助) 
・プロ・ボランティアとして国際社会へ 

2)ボランティア元年といわれて
   –神戸・淡路大震災によって広まるボランティア(観)

3)ボランティア活動の社会的効果(地域への愛着・仲間・達成感・充実感・希望)

4)大災害被災地のボランティア活動と援助漬け被災者
  中国人が見た東日本大震災救援活動と日本人が見た四川大震災救援活動

5)3 ・11若者の自意識と価値観の変化
  国際社会の支援と同情・共感・一体感と死生観・共生観と人と人との絆
—————————————————————

【4】第3回SGRAワークショップ「人を幸せにする科学とは」へのお誘い(再送)

SGRAでは会員を対象としたワークショップを下記の通り行います。
参加ご希望の方は、SGRA事務局へご連絡ください。

テーマ: 「人を幸せにする科学とは」
日 時: 2014年7月5日(土)午前9時 〜 6日(日)午後1時
集 合: 現地集合(東京商工会議所 蓼科フォーラムにて受付)
     http://www.tokyo-cci.or.jp/tateshina/access/
参加費: 5000円(食費、宿泊費(相部屋)を含む)
募集人数: 先着20名(渥美奨学生を含む全参加者数は約40名になります)
募集締め切り:2014年6月20日(ただし定員になり次第募集を締め切ります)
申し込み・問い合わせ:SGRA事務局([email protected]

○ワークショップの趣旨:

SGRAでは、福島原発事故を契機にして飯舘村スタディーツアーやSGRAワークショッ
プ、そして5月31日にはSGRAフォーラム「科学技術とリスク社会」を開催してきまし
た。そこから浮かび上がってきたのが「現代の科学技術は、ひとを幸せにしているの
か?」という問いかけでした。今回のSGRAワークショップin蓼科では「ひとを幸せに
する科学技術」をテーマとして、科学技術の発展と人の幸せについて、ひとりひとり
が自分のこととして考える機会をもちたいと思います。プログラムではモンテ・カセ
ム先生の講演に続き、グループゲームなどを行いながら「楽しく、しかし深く」語り
合いたいと思います。

○プログラム

7月5 日(土)(於:東商蓼科フォーラム)
9:30〜12:00 講演+グループ分け
・講演 「次世代のダ・ヴィンチを目指せ」
 −地球規模の諸問題を克服するための科学技術イノベーションに向けてー
 モンテ・カセム先生(立命館大学名誉教授/立命館国際平和ミュージアム館長)
12:00〜13:30 昼食
13:30〜15:00 ビデオ+小グループディスカッション
15:00〜15:30 休憩
15:30〜17:00 小グループディスカッション
7月6日(日)
9:30〜12:00 発表・まとめとふりかえり

《講師紹介》
モンテ・カセム先生(環境科学、イノベーション論)
スリランカ出身、東京大学工学研究科博士課程修了(建築学/都市計画)、国連地域
開発センター等を経て、立命館大学教授、立命館アジア太平洋大学学長、立命館副総
長(国際担当)等を歴任

皆様のご参加をお待ちしています。

**************************************************
● SGRAカレンダー
【1】第4回日台アジア未来フォーラム(2014年6月13日台北)
「トランスナショナルな文化の伝播・交流:思想・文学・言語」<参加者募集中>
http://www.sgra2014jtaff.com/#!home-jp/c1ncc
【2】第3回SGRAワークショップ(2014年7月5日蓼科)
「人を幸せにする科学とは」<会員対象:参加者募集中>
http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/3sgra.php
【3】第7回ウランバートル国際シンポジウム
「総合研究——ハルハ河・ノモンハン戦争」<論文・参加者募集中>
http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/mongol/7_1.php
【4】第2回アジア未来会議
「多様性と調和」(2014年8月22日インドネシアバリ島)
http://www.aisf.or.jp/AFC/2014/
★オブザーバー参加者募集中★

●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員
のエッセイを、毎週水曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読
いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。下記URLより自動登録していた
だくこともできますし、事務局までご連絡いただいても結構です。
http://www.aisf.or.jp/sgra/entry/registration_form/
● アドレス変更、配信解除をご希望の方は、お手数ですがSGRA事務局までご連絡く
ださい。
● エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。
● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務
局より著者へ転送いたします。
● 皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。
● SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただ
けます。
http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2014/

関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局
〒112-0014
東京都文京区関口3−5−8
渥美国際交流財団事務局内
電話:03−3943−7612
FAX:03−3943−1512
Email: [email protected]
Homepage: http://www.aisf.or.jp/sgra/
**************************************************