SGRAメールマガジン バックナンバー

[SGRA_Kawaraban] Liang Zhang “My Study in Japan”

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SGRAかわらばん519号(2014年5月21日)

【1】エッセイ:張 亮「私の日本留学」

【2】フォーラム「科学技術とリスク社会」へのお誘い(5/31東京)

【3】新刊紹介:方美麗「表現教授法 実践的な会話力を育てる」

【4】新刊紹介:小林良彰他「代議制民主主義の比較研究」
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【1】SGRAエッセイ#410

■ 張 亮「私の日本留学」

私は大学の時、中国リハビリ研究センターでの臨床実習をきっかけに、リハビリテー
ション医学に接した。リハビリテーション医学は、病気を狙った臨床治療医学ではな
く、患者が病気、事故などにより失った機能をできる限り再生し、患者の残された能
力を生かすための医学分野である。脳卒中などの後遺障害が起こる病気でも、歩けな
い患者さんが、だんだん自分で歩けるようになったり、手を使えない患者さんが、だ
んだん自分で服を着たり、トイレも使えるようになるときは、患者さんだけではな
く、家族と周りの人々にとっても幸せである。ある意味で、病気で失った機能を再生
し、患者さんの生活の質を向上させることが、患者の治り難い病気を完治するより、
もっと大事だと考えている。この新しい医学体系といわれるリハビリテーション医学
は、私にとって大変魅力的だった。

学生の時から、リハビリ医師になる道を目指した。卒業してから、リハビリセンター
の整形外科に入局し研修医として勤務した。3年間のリハビリセンターでの実習を合
わせた勉強により、リハビリの重要性は私の心に深く入り込んだ。しかし、現在中国
ではリハビリというものはまだ人々に理解されていないと実感した。たとえば、多く
の脳卒中の患者は、神経内科の治療が終わってから、家に戻らせてそのまま寝たきり
の状態で、ハリ、マッサージなどの治療を続けるケースが多い。リハビリを行ってい
る病院はとても限られているのが中国のリハビリの現状である。せっかくリハビリ医
師になる道を選んだので、この領域のもっと先進的なものを知りたいと思ったが、周
りの環境も整っていないので海外に留学することにした。中国のリハビリ研究セン
ターは、もともとJICAの計画により、日本の技術支援を受けて建てられたもので、中
国のリハビリのシンボルといわれている。したがって、日本のリハビリ医学は進んで
いると考え、日本に留学することにした。

日本へ来て、訪問研究員として大学に入って、臨床のリハビリを勉強した。日本の大
学病院では、見たことも聞いたこともないものがたくさんあり、日本のリハビリ医学
は中国より遥かに進んでいると実感した。早く日本の医療技術を身に着けようと思っ
たが、目の前には、全くわからないことが想像以上に多く、なかなか覚えられなかっ
た。しかし運が良いことに、日本の先生方はとても親切で、丁寧に教えてくださっ
た。特に筋電図は、リハビリ分野の医師にとって、とても重要な技術だとよく言われ
ているので、それを中心に勉強した。1年間の臨床での勉強で、中国ではほとんど勉
強できないものをたくさん学んだ。

さらに難病のメカニズムの解明と治療法の開発のために、私は博士課程に進学した。
臨床から基礎研究に移ることは私にとって新しい経験だった。基礎研究は臨床とは全
然違い、研究の手法をはじめ、考え方もなかなか慣れることができなかった。ラボの
先生方が丁寧に教えてくださったので、研究の基本的な技術を身に付け、研究に徐々
に慣れてきた。私のラボは脊髄損傷を研究している。脊髄損傷は難治性の疾患で、い
まだ治療法がないのが実状である。脊髄損傷した人は、重い後遺症になり、生涯に
渡って障害が残る。リハビリはこのような患者さんにとってとても重要な手段と考え
ているが、特に完全脊髄損傷の運動機能回復に有効とされているリハビリ方法はなか
なかない。博士課程の私の研究で、ラット脊髄完全損傷モデルのリハビリ治療法を開
発し、明らかな機能回復効果を示した。さらに、脊髄損傷患者の臨床治療に向けて、
軸索を再生させる新しい薬との併用治療の研究に従事し、その効果を明らかにし、メ
カニズムも検討できて、海外学術雑誌に論文を載せることができた。

日本へ来てからの数年間は、研究面だけではなく、生活面でも良い経験をした。博士
課程の間は日本の民間財団から奨学金をいただき、研究に専念でき、いい成果を挙げ
ることができたことを感謝している。これから私は、まず日本で今の研究を終わら
せ、その後アメリカへ留学し、リハビリ医学をさらに勉強したい。リハビリ医学は、
世界にとっても新しい分野なので、まだわからないところがたくさんある。この分野
の発展に自分の力を尽くしたいと考えている。

<張 亮(ちょう りょう) Liang Zhang>
2005年中国首都医科大学医学部臨床医学専攻を卒業。中国リハビリテーション研究セ
ンターと中国北京軍区総病院勤務医として働き、その後退職。2006年来日、慶應義塾
大学リハビリテーション医学科で訪問研究員を経て、博士課程に入学し、脊髄損傷の
基礎研究に従事、2015年博士課程修了見込み。現在、慶應義塾大学整形外科学教室研
究員として、脊髄損傷の再生医学の研究に従事。

【2】第47回SGRAフォーラム「科学技術とリスク社会」へのお誘い

3・11/福島原発事故以降、「科学技術の限界」あるいは「専門家への信頼の危機」が
語られてきました。今回のSGRAフォーラムでは、島薗進先生(上智大学神学部教授−
宗教学/応用倫理)、平川秀幸先生(大阪大学コミュニケーションデザインセンター
教授−科学技術社会論)をお招きして、福島第一原発事故を事例として「科学技術と
倫理」、「科学技術とリスク社会」、「科学なしでは答えられないが、科学だけでは
答えられない問題群」などをテーマとしてオープンディスカッションを行います。参
加ご希望の方は、SGRA事務局宛に事前にお名前、ご所属、連絡先をご記入の上、お申
し込みください。

■テーマ:「科学技術とリスク社会:福島第一原発事故から考える科学技術と倫理」

■日 時:2014年5月31日(土)午後1時30分〜4時30分

■会 場:東京国際フォーラム ガラス棟 G610会議室
     https://www.t-i-forum.co.jp/general/access/

参加費:フォーラム/無料 懇親会/正会員1000円、メール会員・一般2000円

参加申込み・お問い合わせ:

SGRA事務局([email protected] Tel: 03-3943-7612 )

◇プログラムの詳細は、下記リンクをご参照ください。
http://www.aisf.or.jp/sgra/schedule/SGRAForum47Program(revised).pdf

【3】新刊紹介

SGRA会員の方美麗さんより、新刊書をご寄贈いただきましたのでご紹介します。

■書名:表現教授法 実践的な会話力を育てる
■著者:方 美麗

▼「表現教授法」は、第二言語教育教授法と「第二言語習得研究」のような、実践と
理論が分離されたままの研究とは違って、実践的な経験をベースに、理論的に開発し
たものである。その点で、実践と理論の両面が揃った外国語教授法と言える。その効
果は、本文でも紹介したように、短期間で外国語が上手に話せるようになる外国語速
習法である。この本が今後の外国語教育に関わる教師・学習者に役立てば幸いであ
る。(あとがきより)

発行所:(株)好文出版
ISBN:978-4-87220-174-1
体裁:A5版 並製 カバー付
初版年月日:2014/03/31
本体価格:4000円
http://www.kohbun.co.jp/

【4】新刊紹介

SGRA会員の金兌希さんより、共著書をご寄贈いただきましたのでご紹介します。

■書名:代議制民主主義の比較研究
    日米韓3ケ国における民主主義の実証分析

■著者:小林良彰、岡田陽介、鷲田任邦、金兌希

▼いま民主主義の「質」を問う
どのような民主主義が望ましいのか? 民主主義の「擬制」が機能しているかどうか
を実証的に明らかにしながら、従来の外形的な民主主義指標にかわり、その「機能」
という点から新たな指標を構築する。選挙公約、政治意識、議会を融合して分析し、
日米韓の政治過程の比較政治研究を行う珠玉の研究!

発行所:慶応義塾大学出版会(株)
A5判/上製/336頁
初版年月日:2014/03/31
ISBN:978-4-7664-2127-9(4-7664-2127-2)
Cコード:C3031
定価 3,888円(本体 3,600円)
http://www.keio-up.co.jp/np/isbn/9784766421279/

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● SGRAカレンダー
【1】第47回SGRAフォーラム(2014年5月31日東京)<参加者募集中>
「科学技術とリスク社会:福島原発事故から考える科学技術と倫理」
http://www.aisf.or.jp/sgra/schedule/SGRAForum47Program.pdf
【2】第4回日台アジア未来フォーラム(2014年6月13日台北)
「トランスナショナルな文化の伝播・交流:思想・文学・言語」<参加者募集中>
http://www.sgra2014jtaff.com/
【3】第2回アジア未来会議
「多様性と調和」(2014年8月22日インドネシアバリ島)
http://www.aisf.or.jp/AFC/2014/
★オブザーバー参加者募集中★

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