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[SGRA_Kawaraban] Han-Hsiu Hsu ”Becoming a Scientist in Japan”

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SGRAかわらばん518号(2014年5月14日)

【1】エッセイ:許 漢修「日本で科学者になること」

【2】フォーラム「科学技術とリスク社会」へのお誘い
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【1】SGRAエッセイ#409

■ 許 漢修「日本で科学者になること」

科学を学んで14年目の私は、今年初めて社会人として自分が習得した技術を活用で
き、しかも、アジアの中の科学強国の日本で就職することができた。しかし、今、
日本では小保方捏造疑惑が報道され、日本における科学者への信頼が揺らいでい
る。このような状況の中で日本の科学者の一員になった私は、いかなる態度をとる
べきかを考えなければならない。

科学者は「真実」を実証し、社会に伝える義務を持ち、国民の税金や企業の予算で
新しい技術を開発し、社会的に応用することにより、キャリアを形成する。このよ
うな科学者の育成は技術と基本知識以外に、観察力と社会への関心を育てなければ
ならず、非常に難しい。

私は日本と台湾で、生物科学者としてのトレーニングを受け、その違いを感じた。
2014年度の日本の科学研究予算は、台湾の12倍である。このため、台湾の生物科学
者には短期で実用的な研究が多く、日本では基礎理論と実用両方の総合的な研究が
進んでいる。台湾での生物研究は即時実用化の目的で食品、漢方、医療機器、美容
整形などに応用され、日本では基礎研究の幹細胞、再生医療、組織培養や生物素材
など、相当時間と研究費がかかる領域の開発が行われている。日本人は職人の文化
を持ち、近年素晴らしい研究、論文が生まれている。一方、台湾人は模倣が得意
で、商業化に敏感であり、新たな技術を実用化し、収益を上げた。以前はオリジナ
ル性が注目される社会だったが、今の世界では、理論と実用の両方が大事であるこ
とを、私は博士課程の4年間で理解できた。

その中で、私は基礎理論の研究を選んで来日し、筑波大学の博士課程で腎臓の発生
期におけるV型コラーゲン線維の役割について研究した。コラーゲンの様々な特
性、理論を習得、現在は産業技術総合研究所で、コラーゲン線維素材でiPS細胞の
培養法を改善する研究を行っている。

iPS細胞はノーベル賞を受賞したのに、なぜ改善研究が続いているかというと、
「死の谷」を乗り越えなければならないからである。死の谷とは、1998年に米国連
邦議会下院科学委員会副委員長であったバーノン・エーラーズが命名したもので、
全ての科学研究にある、発見/発明から商品化/市場化までの、必ず乗越えなければ
ならない谷間の期間である。科学の発見から商品化までは非常にたくさんの時間、
金、労力がかかるわけであり、iPSも例外ではない。風邪薬、内視鏡、X線などの歴
史は、最初から人々に注目されたわけではなく、一生懸命研究や改善に努め、最後
に市場化されることにより「夢が叶う」ことを示している。iPSは今ちょうど死の
谷に入ったばかり、臓器再生の夢まではまだ何十年もかかるわけである。実は、私
は大学2年生の時(2002年)、台湾の陽明大学で山中伸弥先生の幹細胞の講演を聞い
たことがある。あの時から10年の努力で2012年にノーベル賞を受賞した研究である
が、その実用化には、これから何十年、何億円かかるか分からない。このように考
えると、私は、こんな大時代に研究ができることにわくわくする。

来日から5年、一人での海外生活の寂しさはあるものの、まだまだ頑張らないとい
けないと考えている。SGRAが開催しているフォーラムやアジア未来会議などの会合
は、世界中の様々な人に非常に良い交流の機会を提供している。仲間が見つけられ
ることは何より幸せなことである。今の世界はグループ行動の社会で、様々な領域
の人材が集まると、今まで見られなかった風景を一緒に見ることができる。私はあ
と数年は日本に滞在する予定なので、このチャンスを活用したい。

尚、日本だけではなく、世界のどこにあっても、科学者は自分の力を信じることが
重要であると考えている。たとえ他人から疑われることがあっても、自分の力を信
じることができれば充分である。自信を持ち、能力を高め、社会からいただいた力
(財団の支援、大学と国の研究環境など)を使って、十倍、百倍の恩返しをした
い。

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<許 漢修(きょ・かんしゅう) Han-Hsiu Hsu>
1996年イギリスオックスフォード大学英文課程修了。2008年台湾中原大学生物科技
専攻修士号取得、2010年中華民国陸軍關渡指揮部本部退役。2010年来日、2014年筑
波大学生命環境科学研究科生命産業科学専攻博士後期課程修了。現在、産業技術総
合研究所ナノシステム研究部門特別研究員。iPS幹細胞、人間間葉系幹細胞の骨と
軟骨誘導について研究中。専門分野:組織工学、再生医療、遺伝子工学、細胞外マ
トリックス(コラーゲン)、泌尿器発生。
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【2】第47回SGRAフォーラム「科学技術とリスク社会」へのお誘い

下記の通りフォーラムを開催しますので、奮ってご参加ください。

■テーマ:「科学技術とリスク社会:福島第一原発事故から考える科学技術と倫
理」

■日 時:2014年5月31日(土)午後1時30分〜4時30分

■会 場:東京国際フォーラム ガラス棟 G610会議室
     https://www.t-i-forum.co.jp/general/access/

参加費:フォーラム/無料 懇親会/正会員1000円、メール会員・一般2000円

お問い合わせ・参加申込み:SGRA事務局宛に事前にお名前、ご所属、連絡先をご記
入の上、参加申し込みをしてください。よろしければ下記の申込み欄をご利用くだ
さい。
SGRA事務局([email protected] Tel: 03-3943-7612 )

◇プログラムの詳細は、下記リンクをご参照ください。
http://www.aisf.or.jp/sgra/schedule/SGRAForum47Program.pdf

■フォーラムの概要:

3・11/福島原発事故以降、「科学技術の限界」あるいは「専門家への信頼の危機」
が語られてきました。今回のSGRAフォーラムでは、島薗進先生(上智大学神学部教
授−宗教学/応用倫理)、平川秀幸先生(大阪大学コミュニケーションデザインセ
ンター教授−科学技術社会論)をお招きして、福島第一原発事故を事例として「科
学技術と倫理」、「科学技術とリスク社会」、「科学なしでは答えられないが、科
学だけでは答えられない問題群」などをテーマとしてオープンディスカッションを
行います。

1)理工系科学者のみならず社会系科学者、人文系科学者の役割と倫理
2)科学者と市民を結ぶ科学技術コミュニケーションの可能性

〔トピック〕
・福島第一原発事故から考える「科学技術の限界」、「専門家への信頼の危機」
・巨大科学、先端科学が生み出す「リスク社会」の様相
・「科学技術と倫理」の課題及び社会系科学者、人文系科学者の役割
・科学者と市民を結ぶ科学技術コミュニケーションの可能性

■プログラム:

1)問題提起:(5〜10分)
チェ・スンウォン(韓国)理化学研究所研究員/生物学

2)対談:(約40分)

◇島薗進先生「人間が科学技術を統御するために」
  上智大学神学部教授(宗教学/応用倫理)

◇平川秀幸先生「科学の「外」の問いをいかに問うか」
  大阪大学コミュニケーションデザインセンター教授(科学技術社会論)

モデレータ:エリック・シッケタンツ(ドイツ)
  東京大学大学院人文社会系研究科特別研究員/宗教史

3)オープンディスカッション:(約90分)
ファシリテータ:デール・ソンヤ(ノルウェー)
  上智大学大学院グローバルスタディーズ研究科特別研究員/グローバル社会

——-参加申込み用——–

送信先:[email protected]

第47回SGRAフォーラム「科学技術とリスク社会」に参加します。

懇親会は(  )参加(   )不参加

お名前:
ご所属:
連絡先:

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● SGRAカレンダー
【1】第47回SGRAフォーラム(2014年5月31日東京)<参加者募集中>
「科学技術とリスク社会:福島原発事故から考える科学技術と倫理」
http://www.aisf.or.jp/sgra/schedule/SGRAForum47Program.pdf
【2】第4回日台アジア未来フォーラム(2014年6月13日台北)
「トランスナショナルな文化の伝播・交流:思想・文学・言語」
http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/4_1.php
【3】第2回アジア未来会議
「多様性と調和」(2014年8月22日インドネシアバリ島)
http://www.aisf.or.jp/AFC/2014/
★オブザーバー参加者募集中★

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