SGRAメールマガジン バックナンバー

[SGRA_Kawaraban] M. Aikawa “Some Recent Thoughts of A Common Person”

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SGRAかわらばん510号(2014年3月12日)

【1】エッセイ:相川雅弘「一庶民として最近思っていること」

【2】第13回日韓アジア未来フォーラム報告
  「ポスト成長時代における日韓の課題と東アジア協力」
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☆★☆日中韓の政治状況、最近は社会状況までとても厳しく、時には暴力的でさえあ
ります。ここで語り合う<場>を作るのが、良き地球市民の実現をめざすSGRAの役割
りであると考え、SGRAかわらばんでは読者の皆様のエッセイを募集します。皆様の自
由闊達なご意見をお待ちしております。
・2000字程度(短くてもかまいません)
・匿名希望の方はその旨お書きください。
・送付先:[email protected]
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【1】SGRAエッセイ#402

■ 相川雅弘「一庶民として最近思っていること」

私は知識層でも富裕層でもない、どこにでもいるごく普通の日本人、男性、60歳で
す。ちょっとだけ「ごく普通」でないとすれば、少し英語をしゃべること、学生時代
にフィリピンに1年間だけ留学していたこと、仕事で外国、特に中国に行くことが多
かったことぐらいでしょう。それとノンキャリア公務員の父の転勤で日本国内いろい
ろなところで育ったせいで「ふるさと」意識がどこにもない、つまり何かに帰属して
いるという意識がきわめて低いこともそのひとつかもしれません。

初めての海外経験は1973年の夏、インターナショナル・ワークキャンプで韓国のウォ
ンジュからバスで入った山村で過ごしたひと月でした。貧乏学生だったのでアルバイ
トで貯めたお金で関釜フェリーに乗って玄界灘を渡り鉄道でソウルに移動、そして
キャンプ地にたどり着きました。(滞韓中に所謂「金大中事件」が起こりました)釜
山に着いて町に出た時、深い考えがあったわけではないまま、自分が日本人であるこ
とを恥じるような気持ちで、うつ向きに歩いたことをはっきり憶えています。幸いそ
の後韓国人をはじめとする外国の友人にも恵まれ、そういう思考停止状態から解放さ
れて今に至ります。

冒頭で申しましたように中国での仕事が多かったものですから、そこに登場した「な
んだか行儀の悪い中国人」に会う機会も多くありました。日本でよく言われる「けた
たましく喋る」「自分のことばかり主張する」「ルールを平気で破る」という印象を
中国人に持っているということも正直に申し上げておいた方が良いでしょう。この点
においても私は「ごく普通」の日本人です。

しかし最近メディアがこれでもかというほど嫌中、嫌韓をたれ流していることには途
轍もない恐ろしさを感じています。明らかに意図的に世論を煽っているとしか思えな
いのです。(中国、韓国から話は逸れますが、北朝鮮に関する報道で流される悪意に
満ちた日本語訳などそのわかりやすい例かもしれません)一昨年入院した時、平生は
見ることのないワイドショーで「政治問題」が井戸端会議のように語られているのに
は唖然としました。ワイドショーでは有名人の「不倫問題(?)」と同列に「政治問
題」が伝えられるのですね。

そういう世間の空気を背景に(その「背景」が先なのか、先に意図的に「背景」が作
られたのかはこの際おいておきますが)日本の政治家たちの発言、行動も日に日に好
戦的になってきているのを実感しています。「話せば真意はわかってもらえる」と最
近首相、政治家のみならず各方面の公人たちが口にするようになりました。彼らがわ
かってもらえると思っている「真意」とはいったい何なのでしょうか。もしも「真
意」があるのなら問題となって初めてそれを口にするのではなく、最初から「正確な
言葉」で「真意」を伝えるのが基本であって、その能力がないのなら「公人失格」と
言わざるを得ません。(「あくまで個人の感想です」とエクスキューズするサプリメ
ントのコマーシャルみたいですよね)

国際問題に限らず「個人」が背負っている背景もひとりひとり異なります。「正確な
言葉」を使うことがコミュニケーションには不可欠だと思います。そのたいせつさを
今こそ再認識する必要があると痛感しています。「異なる」ことを理解するには「正
確な言葉」で自分=「個人」の感じ方(気分)を検証することから始めなくてはなら
ないと思います。その「気分」は自分が実際に感じたことなのか?たれ流されている
ものに「つられて」はいないか?と。

話はあちこちに飛びますが、テレビのバラエティ番組では笑い声がやたらに強調され
ています。さほど面白くない出演者のジョークに視聴者が「つられて」笑うのを期待
してでしょう。確かに効果はあるようです。この「つられて」は世間に蔓延してい
て、例えば居酒屋などで「つられて」嬌声を上げているグループをよく見かけます。
「つられて」をしないと親しく話せないのかなと思いながら、ひたすらそのグループ
が店を去るのを待つか、こちらが店を出るかでその場をしのぎます。これがビジネス
接待や合コンの場面なら、今までもどこでも見られた、自分も混じっていたかもしれ
ない光景だと理解できますが、政治、国際問題となると話はちがいます。「つられ
て」中国が嫌い、韓国が嫌い。もっと言えば「つられて」「戦争準備態勢をとるのは
当然だ」という世論の流れが出来つつあるのだとしたら本当に恐ろしい。

だからこそ感覚的、抽象的、文学的で“わかりやすい”政治的な、あるいは公的な発
言は警戒すべきだと思いますし、それが「正確な言葉」かどうか、「真意」はどこに
あるのかを嗅ぎ分ける力が「ごく普通」の人間にも求められているのだと強く思いま
す。さきほど「その背景が先か、先に意図的に作られたものか」と申しました。世間
の空気の一部は「自分」が担っているという自覚がなければ、嫌中、嫌韓がなだれ込
んでしまうかもしれない深刻な事態に対して、あまりにも無責任だと考えます。現在
の国際関係はどういう経緯をもとに成立しているのか、その基本的な歴史認識は「そ
れがルール」と知っておくべきでしょう。「あの時は相手だって悪かった」では通用
しないという「ルール」であるということを。60歳の私はその「ルール」を元に豊か
になっていった日本で育ち60年間暮らしているのですから。

先述しましたように、引越し族の子供だったせいか、私には「ふるさと」帰属意識が
希薄です。日本は生まれて以来ほとんどの期間を暮らしている場所ですし、外国語も
そんなに得意ではないので海外から帰ってきた時など日本語が通じることにほっとし
ます。それに当然のことですが、友人、たいせつな人たちに占める日本人比率は圧倒
的に高い。しかしこれは「日本人が好き」とか「日本が好き」というのとはちょっと
ちがいます。私にとっての「ふるさと」はたいせつな人のいる心地よいところ、とい
うほどの意味しか持ちません。そして、そんなにたくさんではないけれど、たいせつ
な友人には韓国人、フィリピン人、アメリカ人、ボリビア人、タイ人、ヴェトナム
人、ラオス人などが含まれています。(親しい中国人は今のところまだいませんが、
そのうち出会うでしょう)

日本の文化はその中で育ったので概ね心地よく、大げさな言い方をすれば「愛して」
いますが、ことさら強調されて使われる「愛国心」は私の中には見あたりません。そ
ういう「愛国心」に基づいて、たいせつな人たちがいる国と嫌い合う、その先に戦争
になってしまう、もっとはっきり言ってしまえば、殺し合うのは絶対に嫌です。私に
とって「国家」より「個人」の方がずっとリアリティのある対象だから当然です。そ
ういうたいせつな「個人」を、そんなに多くではないけれど、外国人にも持っている
「個人」として、“「つられて」嫌中、嫌韓”が招いている(あるいはそれを利用し
ている)戦争準備状態的な時代気分に飲み込まれるつもりはありません。思考停止し
ないよう自分を見張って、できるだけ「正確な言葉」で「異なる」もの、人、文化と
鷹揚にお付き合いしていきたいと思う所以です。新しいともだちを得るのはとても楽
しいことですしね。

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<相川雅弘(あいかわ・まさひろ)☆ Masahiro Aikawa>
1953年生まれ。小学生で3回転校し、17歳の時ミュージシャン活動を開始。その後国
際基督教大学入学。大学3年時にフィリピン、アテネオ・デ・マニラ大学に1年留学。
大学院修士過程(比較文化研究科)を中退して再び音楽の世界に戻る。10年前レコー
ド会社を退職した後は細々とプロデュース、作詞、作曲、ピアノ弾き、雑務、家事を
しています。
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【2】第13回日韓アジア未来フォーラム報告

■ 金 雄熙「第13回日韓アジア未来フォーラム『ポスト成長時代における日韓の課題
と東アジア協力』報告」

2014年2月15日(土)、高麗大学の現代自動車経営館で第13回日韓アジア未来フォーラ
ムが開催された。今回は「ポスト成長時代における日韓の課題と東アジア協力」とい
うテーマで行われたが、今後5年間のプロジェクトの初年度として、いくつかのテー
マを総合的に検討した。

日本は、地震をはじめ自然災害への対策、鉄道システム、経済発展と環境負荷軽減及
び省エネルギーの両立、少子高齢化への対処など、多くの分野において関連する経験
や技術の蓄積、優位性を有している。一方、いまや日本以上に課題先進国といわれる
ようになった韓国の経験や悩みもまた、東アジア地域における将来の発展や地域協力
の在り方に貴重な手掛かりを提供する。今回のフォーラムは、日本と韓国の経験やノ
ウハウを生かした社会インフラシステムを、東アジア地域及び他国へ展開する場合、
何をどのように展開できるか、そして東アジアにおける地域協力、平和と繁栄におい
てもつ意義は何なのかについて探ってみる場となった。

フォーラムでは、未来人力研究院理事長の李鎮奎教授による開会の挨拶と、今西淳子
SGRA代表の挨拶に続き、4人の研究者による発表が行われた。基調講演で東京財団の
染野憲治氏は、北東アジアの気候変動対策と大気汚染防止に向けて、今後のエネル
ギー計画の明確な将来像を描きにくい状況下において、日中韓の専門家、市民運動家
は比較検討を通じて相互に客観的な理解を深め、適切な対応策を探ることが求められ
ていると提言した。次に韓国国防大学校安全保障大学院の朴栄濬教授が、北極海をめ
ぐって新しい協力の可能性が芽生えていることに注目し、北極海をめぐる関連諸国の
政策を検討した上で、日中韓相互協力の可能性を検討した。そして北陸大学未来創造
学部の李鋼哲教授は、北東アジアの多国間地域開発と物流拠点としての図們江地域開
発が、近年どのように変貌しているのかについて報告を行った。最後の国民大学の李
元徳教授は、日韓が協力して東アジア地域及び他国へ展開する場合、何をどのように
展開できるか、そして新時代における日韓両国の協力が東アジアの平和と繁栄にもつ
意義について持論を展開した。

コーヒー・ブレークを挟んで東京大学の木宮正史教授、韓国交通研究院北韓・東北亜
交通研究室の安秉民室長、内山清行日本経済新聞ソウル支局長、李奇泰延世大学研究
教授、李恩民桜美林大学リベラルアーツ学群教授らによる活発な討論が続いた。課題
先進国日本、そして日本以上に課題や悩みを抱えている韓国が課題と悩みを共有しな
がら、これからいかにアジアへ国際公共財を提供していくか、これこそが課題ではな
いかとの意見が多かったように思われる。

特筆すべきは、2年前の第11回フォーラムも高麗大学LGポスコ経営館で行われたが、
今回も同大学の現代自動車経営館で開催されたことである。高麗大学の経営学部だけ
で2つの立派な独立した建物をもっているわけであるが、とりわけ現代自動車経営館
は李鎮奎理事長が学部長(兼経営専門大学院長)在任中に現代自動車からの寄付金で
建てられたそうである。この点は、李先生が繰り返し強調されたことなので、この場
を借りて改めて取り上げておく。「首都圏地方大学」(首都圏に所在しながらも地方
大学のように経営環境がよくない大学のこと?)の教員の私からすると、うらやまし
いどころか唖然とするぐらいの施設である。「富める者は益々富み、貧しい者は益々
貧しくなる」という「富益富、貧益貧」が大学社会でも当てはまることを実感した。

私が学生の頃から、いや大昔から、高麗大学は民族精神に徹した大学というイメージ
が強かった。その「民族高大」で日本語のみでの学術会議が開催されたことも特筆す
べきであろう。「民族高大」で日本語のみでのフォーラムを行っても全く違和感がな
い理由はいくつかあるように思われる。一つは今は高麗大学が「グローバル高大」を
目指しているからであり、もう一つはもっぱらフォーラム運営上の予算節約のためと
の説である。さらに主催側の戦略的な試みという解釈もできるが、この点については
更なる検討が必要であろう。いずれにしても、私は高麗大学出身ではないので、高麗
大学の宣伝になることはこのぐらいにしておこう。

この他にも今回のフォーラムは、いくつかの点で印象に残る会議であった。フォーラ
ムに大学や研究機関の研究者のみならず、現場で日韓両国の課題や悩みを肌で感じる
マスコミや政府関係者も加わり、多様な立場から立体的に検討することの持つ意義に
ついて実感できたことも評価すべき点ではないかと思われる。また、今回のフォーラ
ムが非公開で行われたにもかかわらず、3名の方から問い合わせがあり、参加に至っ
たことは、これからのフォーラム運営に活力を与えると思われる。なお、今回は渥美
理事長にもご参加いただき、フォーラム終了後懇親会が終わるまで長時間にわたって
お付き合いいただいたことも力強い励ましとなった。公式乾杯酒の「春鹿」の「任務
完了」、そして入り混じったラブショットも楽しいものであった。

これから「ポスト成長時代における日韓の課題と東アジア協力」について、実りのあ
る日韓アジア未来フォーラムを進めていくためには、総論的な検討にとどまらず、各
論において掘り下げた検討を重ねていかなければならない。次回のフォーラムの開催
に当たっては、このような点に重きを置きつつ、研究者でもある自分の責務として重
く受け止めつつ、着実に進めていきたい。最後に日韓アジア未来フォーラムがガバナ
ンスの安定性、そして懇親会での乱れという本来の姿を取り戻したことを自ら祝いな
がら、第13回目のフォーラムが成功裏に終わるよう支援を惜しまなかった李先生と今
西代表に改めて感謝の意を表したい。

当日の写真を下記リンクよりご覧ください。
http://www.aisf.or.jp/sgra/photos/

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<金雄煕(キム・ウンヒ)☆ Kim Woonghee>
89年ソウル大学外交学科卒業。94年筑波大学大学院国際政治経済学研究科修士、98年
博士。博士論文「同意調達の浸透性ネットワークとしての政府諮問機関に関する研
究」。99年より韓国電子通信研究員専任研究員。00年より韓国仁荷大学国際通商学部
専任講師、06年より副教授、11年より教授。SGRA研究員。代表著作に、『東アジ
アにおける政策の移転と拡散』共著、社会評論、2012;『現代日本政治の理解』共
著、韓国放送通信大学出版部、2013;「新しい東アジア物流ルート開発のための日本
の国家戦略」『日本研究論叢』第34号、2011。最近は国際開発協力に興味をもってお
り、東アジアにおいて日韓が協力していかに国際公共財を提供するかについて研究を
進めている。

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● SGRAカレンダー
【1】第47回SGRAフォーラム(2014年5月31日東京)<ご予定ください>
「科学技術とリスク社会:福島原発事故から考える科学技術と倫理」
【2】第4回日台アジア未来フォーラム(2014年6月13日台北)
 <論文募集中: 2014年2月28日締切>
「トランスナショナルな文化の伝播・交流:思想・文学・言語」
http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/4_1.php
【3】第2回アジア未来会議
「多様性と調和」(2014年8月22日インドネシアバリ島)
http://www.aisf.or.jp/AFC/2014/
★オブザーバー参加者募集中(4月30日まで参加費早期割引)★

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ださい。
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● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務
局より著者へ転送いたします。
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けます。
http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2013/

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