SGRAメールマガジン バックナンバー
SIM Minseop “A Letter Reflecting on My Service and Dedicated to All Who have Supported Me”
2024年7月25日 21:43:39
※上手く配信できなかったため7月18日号を再配信します。
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SGRAかわらばん1025号(2024年7月18日)
【1】シム・ミンソプ「私の奉仕活動を振り返り、私を支えてくれた皆様へ捧げる書簡」
【2】第9回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性「東アジアの『国史』と東南アジア」へのお誘い(再送)
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【1】シム・ミンソプ「私の奉仕活動を振り返り、私を支えてくれた皆様へ捧げる書簡」
窓を通り抜ける風の音が聞こえるほど静かな夜明け。日本では渥美国際交流財団の30周年イベントがこの時間帯に行われているだろう。私は小さな照明と温かいお茶を親しみながら、英国で、この1年間を振り返ろうとこの文を書いている。最大のイベントに参加できず残念でならないが…
2023年3月の真夜中過ぎ、眠りにつこうとしたその時、メール通知音で目が覚めた。
「トルコ地震の被災地にスタッフとして参加できれば連絡ください」
2023年の新年、始まりのドキドキ感に満ちていた2月、トルコとシリアは大地震に襲われた。
世界中から救援活動と支援の手がトルコに向かっていた。少しずつ温かい春の気配が冬の名残を追い払いつつある時期、家族を残し英国へ向かった。いつも憂鬱だと感じる英国の天候は、銀色の海に静かに浮かぶ街のように深い霧に覆われていた。私を待つチームは紅潮した顔で、突然の準備に緊張感が漂っていたが、久しぶりの再会を喜んでいる様子だった。長い移動の疲れを癒す余裕もなく我々はトルコに向かった。
“惨状だった。これまでの救援活動の現場とは比べものにならないほど惨かった”
現場を確認し、本格的な活動に備えて救援物資の調整のため少し離れた補給所で活動を始めた。本当に何も考えられないほど忙しい日々が続いた。ほんの少し目をつぶって仮眠だけでも取ろうとしたその時、周りで騒々しい声や悲鳴が聞こえ、血を流しながら倒れる仲間の姿が見えた。救援物資を強奪する現地の人々で大混乱になり、私たちは呆然とただ見守ることしかできなかった。
“私たちの奉仕活動はこのような人々のためだったのか。私たちの活動の意味は一体どこにあるのか”
答えを見出せないまま活動を終えようとしていた頃、団体からまた別の連絡があり、団体の配慮と支援のお陰でガーナに向かった。私と妻によく懐いていた子どもが、私と妻に会いたがっているという。事故で、もう少しでこの世を去らねばならないかもしれないという悲しい知らせだった…私は疲れ切った体で飛行機に乗り、何も考えずガーナに向かった。残念ながら体と心は疲労の極みにあった。しかし到着して、私の心はすぐに罪悪感に襲われ、涙が溢れとまらなかった。その小さな手には、私たちの団体の名前が書かれた読めない手紙と、私と撮った写真が握りしめられていたからだ。
“この小さな子供にとって、私は親友であり、生きる希望だったのではないか”
「悪かった、遅くなって。もしかしたら私は君にとって人生の全てだったかもしれないのに、ただすれ違う一時の出会いだと思ってしまい、自分の疲れた心を優先した。本当にごめんなさい」ただただ涙を流した。数日後、その子はこの世を去った。私は一緒に掘った井戸のそばに佇んで、私の真心が届くようにと祈った。
日常に戻った私は、他の皆と同じように論文執筆に集中し、日々を過ごしている。日常の流れに身を任せ、無気力になっていた私にとって、財団への参加は単なる義務だったかもしれない。しかし、参加のための準備をしている最中、鏡を見ると、いつの間にか参加への期待感で顔がほころんでいた。久しぶりの笑顔だ。1度、2度、参加が重なることで、徐々に前向きに変わっていく自分が新鮮に感じられ、活動中の日々での仲間が、私にとって次第に大切な人々と感じられるようになっていった。
私の心の変化を、財団でもすぐに分かったようだ。
「顔が随分明るくなりましたね」と、常務理事の今西さんが気づいてくださった。
空虚だった心と疲れた心を黙々と支えてくれたのが、今年の私にとっての大きな変化だった財団の存在だと思う。私の姿をただ応援し励ましてくれ、私の帰るべき場所となってくれた財団があったからこそ、自分の道を歩むことができた。
世の中が変わっていく時、共に自分自身もそのような社会と似て変わってきたのではないか。今の自分に失望し、言い訳ばかりしていた。今までは過ぎ去る時の中で、この世に生を受けた意味への答えは見出せなかったが、やっとそれを見つけた気がする。
「現場で私を必要とする人と共に生きていこう」
「国境なき医師団」での活動をより躊躇なく遂行できるようしっかりと支えてくれる渥美財団があることで、私は自分の人生の方向を決めることができた。人生への答えを見出すべく、ずっと1人で歩んできたと思っていたが、結局、だれかと共に歩むことでこそ真の意味を見出せることが、今やっと分かった。この発見が遅くなったことについての後悔よりも、感謝の気持ちが大きくなっている。
これから英国に戻り、研究員としての計画に取り組み、それが終わり次第また現場に戻ろうと思う。これが私の道だと信じて、いつか過ぎ去った時の中で答えを見出せなかったとき、誰かが「正しい道を1人で歩んできたか」と訊ねれば、答えられるだろう。「共に歩み、私を支えてくれた人がいる」と。そして、今までの過去に後悔はないと。
歩んできた道が善き道であるよう、そしてまたいつか善き影響力を及ぼすことができたらと願う。皆とこれから別の道を歩んでいくことになるかもしれないし、アカデミズムから遠のくこともあるかもしれない。それでも、皆の活動を遠くからでも聞き、知ることができれば、再び立ち上がる力を得られるだろう。
どんな私であっても財団を訪ねると、喜んで迎えてくれるという確信ができた。そしてこの確信は財団が私にくれたものだ。これからの私の進む道が財団への恩返しとなっていればと願う。
用意しておいたお茶が冷めていく今、この手紙を締めくくろうとしている。書き始めた時は名残惜しい気持ちでいっぱいだったが、30周年イベントでの同期の写真が送られてきて、皆の心が私に届いた今、再び明るい笑顔を浮かべてこの手紙を締めくくることができる。
静かでいつもより冷たい空気が漂っていた銀色の街ロンドンは、徐々に昇る陽ざしと共に金色に染まっていく。
「後輩たちに、私たちが過ごした暖かさに満ちたこの場所を譲る時が来た。皆に今のこの金色の光のように明るい未来が共にあることを願って…」
<シム・ミンソプ SIM_Minseop>
ロンドン大学衛生熱帯医学大学院熱帯疾病研究所特別訪問研究員。一橋大学大学院社会研究科歴史専攻博士課程満期退学。東京大学論文博士修了予定。韓国国家記録院海外史料調査委員、韓国空軍士官学校特性化専門研究室?軍事人文研究室郊外研究室研究員、朝鮮史研究会幹事、日本歴史学協会若手研究者問題特別委員。国境なき医師団ヘルスプロモーターとして、現在ウガンダで活動中。
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【2】第9回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性へのお誘い(再送)
下記の通り第9回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性を開催いたします。参加ご希望の方は、必ず事前に参加登録をお願いします。オンラインで参加の場合は、一般聴講者はカメラもマイクもオフのウェビナー形式で開催しますので、お気軽にご参加ください。
テーマ:「東アジアの『国史』と東南アジア」
日時:
2024年8月10日(土)9:00~12:30(タイ時間)11:00~14:30(日本時間)
2024年8月11日(日)9:00~15:30(タイ時間)11:00~17:30(日本時間)
会場:チュラーロンコーン大学(タイ国バンコク市)及びオンライン(Zoomウェビナー)
言語:日中韓3言語同時通訳付き
主催:日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性実行委員会
共催:渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA)
助成:東京倶楽部
※参加申込(会場参加の方もオンライン参加の方も参加登録をお願いします)
https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_8k7udrxcSU2qA4VWEuR0Sw#/registration
(注)会場参加の方は第7回アジア未来会議へも参加していただくことになります。
https://www.aisf.or.jp/AFC/2024/
お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612)
開催趣旨
「国史たちの対話」企画は、日中韓「国史」研究者の交流を深めることによって、知のプラットフォームを構築し、三国間に存在する歴史認識問題の克服に知恵を提供することを目的に対話を重ねてきた。第1回で日中韓各国の国史研究と歴史教育の状況を確認することからスタートし、その後13世紀から時代を下りながらテーマを設け、対話を深めてきた。新型コロナ下でもオンラインでの対話を実施し、その特性を考慮して、歴史学を取り巻くタイムリーなテーマを取り上げてきた。
昨年は対面型での再開が可能となったことを受け、「国史たちの対話」企画当時から構想されていた、20世紀の戦争と植民地支配をめぐる国民の歴史認識をテーマに掲げた。多様な切り口から豊かな対話がなされ、「国史たちの対話」企画の目標の一つが達成された。今後はこれまでの対話で培った日中韓の国史研究者のネットワークをいかに発展させていくか、またそのためにどのような方針で対話を継続していくかが課題となるだろう。
こうした新たな段階を迎えて、第9回となる今回は、開催地にちなみ、「東南アジア」と各国の国史の関係をテーマとして掲げた。日本・中国・韓国における国史研究は、過去から現在に至るまで、なぜ、どのように、東南アジアに注目してきたのだろうか。過去の様々な段階で、様々な政治、経済、文化における交流や「進出」があった。それらは政府間の関係であったり、それにとどまらない人やモノの移動であったりもした。こうした諸関係や、それらへの関心のあり方は、各国ではかなり事情が異なってきた。こうした直接・間接の関係の解明に加え、比較的条件の近い事例として、自国の歩みとの比較も行われてきた。そもそも「東南アジア」という枠組み自体も、国民国家や「東アジア」といった枠組みと同様、世界の激動のなかで生み出されたものであり、歴史学の考察対象となってきた。
本シンポジウムでは、各国の気鋭の論者により、過去の研究動向と最先端の成果が紹介される。これらの研究は、どのような社会的・歴史的な背景のもとで進められてきたのか。こうした手法・視座を用いることで、自国史にいかなる影響があり、また今後はどのような展望が描かれるのか。議論と対話を通じて3カ国の国史の対話を、より多元的な文脈のうちに位置づけ、さらに開いたものとし、発展の方向性をも考える機会としたい。
■プログラム
8月10日(土)9:00~12:30(タイ時間)、11:00~14:30(日本時間)
【第1セッション(9:00-10:30) 司会:劉傑(早稲田大学)】
開会挨拶:三谷博(東京大学名誉教授)、趙珖(高麗大学名誉教授)
基調講演:楊奎松(北京大学・華東師範大学)
「ポストコロニアル時代の『ナショナリズム』衝突の原因をめぐる考察―毛沢東時代の領土紛争に関する戦略の変化を手掛かりに」
【第2セッション(11:00-12:30) 司会:南基正(ソウル大学)】
発表:
タンシンマンコン・パッタジット(東京大学)「『竹の外交論』における大国関係と小国意識」
吉田ますみ(三井文庫)「日本近代史と東南アジア―1930年代の評価をめぐって―」
尹大栄(ソウル大学)「韓国における東南アジア史研究」
高艷傑(厦門大学)「華僑問題と外交:1959年のインドネシア華人排斥に対する中国政府の対応」
8月11日(日)9:00~15:30(タイ時間)、11:00~17:30(日本時間)
【第3セッション(9:00-10:30) 司会:彭浩(大阪公立大学)】
指定討論と自由討論
討論者:
【韓国】鄭栽賢(木浦大学)、韓成敏(高麗大学)
【日本】佐藤雄基(立教大学)、平山昇(神奈川大学)
【中国】鄭潔西(温州大学)、鄭成(兵庫県立大学)
【第4セッション(11:00-12:30) 司会:鄭淳一(高麗大学)】
自由討論
討論まとめ:劉傑(早稲田大学)
【第5セッション(14:00-15:30) 司会:塩出浩之(京都大学)】
国史対話のこれから
閉会挨拶:宋志勇
※同時通訳
日本語⇔中国語:丁莉(北京大学)、宋剛(北京外国語大学)
日本語⇔韓国語:李ヘリ(韓国外国語大学)、安 ヨンヒ(韓国外国語大学)
中国語⇔韓国語:金丹実(フリーランス)、朴賢(京都大学)
※詳細は下記リンクをご参照ください。
・プロジェクト概要
https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/03/J_Kokushi9_ProjectPlan.pdf
・ポスター
https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/06/J_SGRAForum74LITE.png
・中国語版ウェブサイト
・韓国語版ウェブサイト
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★☆★お知らせ
◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応)
SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方はSGRA事務局にご連絡ください。
https://www.aisf.or.jp/kokushi/
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