SGRAメールマガジン バックナンバー

WANG Xingfang “Time Flies Like an Arrow”

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SGRAかわらばん956号(2023年2月9日)

【1】エッセイ:王杏芳「光陰矢の如し」

【2】国史対話エッセイ紹介:牧原成征「歴史と私 ―なぜ歴史研究者になったか」

【3】第70回SGRAフォーラムへのお誘い(2月18日、オンライン)(再送)
「木造建築文化財の修復・保存について考える」
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【1】SGRAエッセイ#280

◆王杏芳「光陰矢の如し」

日本に来て4年半が過ぎた。時間が存在するかどうかはさておき、「ある時刻とある時刻との間の長さ」の意味で時間を理解する。こうした理解では、4年半の期間は決して短くはないが、あっという間である。光陰矢の如し。しかし、振り返ってみると、子供の時代はそうではなかった。時間がより長く感じられた。いや、まるで無限で永遠に終わらないように。しかし、年をとるにつれて、月日の流れの速さをますます強く感じるようになってきた。無論、これは私個人だけの感想ではない。多くの人に共通する感覚であろう。年を重ねるごとに時間が早く感じられるのはなぜか、その原因についてはさまざまな研究と調査があるが、ここでは省く。それより、時間の流れを強く感じている私自身の感想を述べてみたい。

子供の時に覚えた「子在川上曰、『逝者如斯夫、不舎昼夜』」(『論語』子罕第九)という孔子の感慨に、ここ数年、ようやく共感を持てるようになった気がする。孔子が川のほとりに立って言う。「歳月はこの川の流れのように去っていくものだ。昼となく夜となく、休むことはない」。それはいつでも奇麗な現代語に訳することができる。そして、この言葉の意味はよく理解できる、とずっと思っていた。確かに、言葉の表面的な意味はそうだった。しかしここ数年、時間の止まらない、特にその速さに驚き、文字の意味を自身の経験を通して体得するようになった。それと同時に、恐れ及び怖いという感覚も生じてきた。生命が徐々に消えてなくなることに対する恐れ、及び怠けが怖くなる気持ち。人間はなぜ命を失う死を恐れるのか、ここでは議論しない。それより、後者に注目してみたい。つまり、人間が時間を無駄にする怠けが怖くなるのはなぜか。さらに言えば、怠けたらなぜいけないのか、ということに関心を持つようになった。

怠けの話というと、『論語』公冶長篇の孔子が宰予を叱るあの有名な段落がすぐに思い出されるだろう。「宰予昼寢。子曰、『朽木不可雕也、糞土之牆不可朽也。於予與何誅』」と。宰予とは孔子の高弟の一人である。彼が昼寝をしていた。これに対して、孔子は「朽ちた木に彫刻はできない。土がぼろぼろに腐った土塀には上塗りをしてもだめだ。お前のような怠け者を責めても何ともしようがない」と言った。昼寝ぐらいでどうしてこんなに叱られるのだろうか。理由について昔から諸説あったが、それはそれとして、ここでは「怠け」についての理解に留める。

なるほど、孔子は怠けを批判していた。しかし、なぜ批判すべきなのか。前文の「川上之嘆」に、回答が潜んでいる。確かにそれは時の流れを感じる言葉だが、同時に川は休みなく流れ、万物は止まることなく変化するように、人間である我々も日夜努力しなければならないという意味にも読み取れるだろう。また、『周易』にも同じ趣旨の言葉が見られる。例えばあの有名な「天行健。君子以自強不息」。天の運行は現在に至るまで、ずっと休みなく健やかであるように、君子たるものも、この健やかな天の運行を範とし、自ら努め励み、怠けることなく奮励しなければならない、と。

天が健やかで休みなく運行し、万物が止まることなく変化する。自然としての人間である以上、それに従い、永遠に努力しなければならない。これは儒学の人間が怠けてはいけない理由になるだろう。魅力的な答えだと思う。

ちなみに、その答えを探すために、ネットで検索したり、周りの友達にもいろいろ聞いてみたりした。回答は一様ではないが、「怠けるのは別に悪くない」ということは通説である。なぜかというと、怠けるか怠けないかは個人次第でその人の自由であるからだ。

天にその根源があるか自己決定するか、そこにはまた伝統と近代との区別が見られる。

<王杏芳(おう・きょうほう)WANG Xingfang>
2021年度渥美奨学生。中国江西省出身。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程に在学中。日本政治思想史を専攻。

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【2】国史対話エッセイのご紹介

1月25日に配信した国史対話メールマガジン第46号のエッセイをご紹介します。

◆牧原成征「歴史と私 ―なぜ歴史研究者になったか」

私は愛知県蒲郡市の形原という、三河湾に面した、都市でも農村でもなく、あえて言えば漁師町とよぶべき所の出身である。小学生の頃から、なぜか郷土史的なことには関心があり、3年生か4年生で配られた郷土学習の副教材だけは配られると真っ先に読んでいた。たとえば三河湾に浮かぶ三河大島という無人島がどの村に帰属するか、現在の蒲郡市内(当時も同じ)のいくつかの村が舟を同時に出して競って決めた、というような伝説が記されていた。おそらく江戸時代頃のことを伝えた昔話だったのだろう。

やはり4年生か5年生の頃、学校の大掃除の際に出された廃棄物の中にデスクマット風の年表が捨てられていた。そこには日本史上の重要な事項とその年代の覚え方(いわゆる語呂合わせ)が載っていた。それを見つけた私は密かに、心躍る気持ちでそれを持ち帰り、毎日のように眺めた。主なものだけだったが、時代区分に関する年代などは、その時にすべて覚えた。

続きは下記リンクをご覧ください。
https://www.aisf.or.jp/sgra/kokushi/J_Kokushi2023MakiharaEssay.pdf

※SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。国史メルマガは毎月1回配信しています。SGRAかわらばんとは別にお送りしますので、ご興味のある方は下記より登録してください。3言語対応ですので、中国語、韓国語の方々にもご宣伝いただけますと幸いです。

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【3】第70回SGRAフォーラム「木造建築文化財の修復・保存について考える」へのお誘い(再送)

下記の通り第70回SGRAフォーラム「木造建築文化財の修復・保存について考える」をオンラインで開催いたします。参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。一般聴講者はカメラもマイクもオフのウェビナー形式で開催しますので、お気軽にご参加ください。

テーマ:「木造建築文化財の修復・保存について考える」
日時:2023年2月18 日(土)午後1時~午後4時(日本時間)
方法: オンライン(Zoom ウェビナーによる)
言語:日中韓3言語同時通訳付き

※参加申込(クリックして登録してください)
https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_4_Fcwt3uRY2lTujxvUmi_w

お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612)

■フォーラムの趣旨

東アジアの諸国は共通した木造建築文化圏に属しており、西洋と異なる文化遺産の形態を持っています。第70回SGRAフォーラムでは、国宝金峯山寺(きんぷせんじ)二王門の保存修理工事を取り上げ、日本の修理技術者から現在進行中の文化財修理現場をライブ中継で紹介していただきます。続いて韓国・中国・ヨーロッパの専門家と市民の代表からコメントを頂いた上で、視聴者からの質問も取り上げながら、専門家と市民の方々との間に文化財の修復と保存について議論の場を設けます。
今回のフォーラムを通じて、木造建築文化財の修復方法と保存実態をありのままお伝えし、専門家と市民の方々との相互理解を推進したいと考えております。
今回のフォーラムを実現することを可能にしてくださった、金峯山寺と奈良県文化財保存事務所に心からお礼を申し上げます。

■プログラム
総合司会: 李暉(奈良文化財研究所アソシエイトフェロー/SGRA)

13:00 フォーラムの趣旨、登壇者の紹介
13:15 [話題提供] 竹口泰生(奈良県文化財保存事務所金峯山寺出張所主任)

[討論]
モデレーター: 金ミン淑(京都大学防災研究所民間等共同研究員/SGRA)
14:20 韓国専門家によるコメント
――――― 姜ソン慧(伝統建築修理技術振興財団企画行政チームリーダー)
14:35 中国専門家によるコメント
――――― 永昕群(中国文化遺産研究院研究館員)
14:50 ヨーロッパ専門家によるコメント
――――― アレハンドロ・マルティネス(京都工芸繊維大学助教)
15:05 市民によるコメント
――――― 塩原フローニ・フリデリケ(BMW_GROUP_Japan/SGRA)
15:20 視聴者からの質疑応答(Q&A機能を使って)

※同時通訳:

日本語⇔中国語:丁莉(北京大学)、宋剛(北京外国語大学/SGRA)
日本語⇔韓国語:李ヘリ(韓国外国語大学)、安ヨンヒ(韓国外国語大学)
中国語⇔韓国語:朴賢(京都大学)、金恵蘭(フリーランス)

※プログラムの詳細は、下記リンクをご参照ください。

プロジェクト概要(日本語版)
https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2022/12/J_SGRAForum70_Program.pdf

ポスター
https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2023/01/J_70thSGRAforumLite.jpg

中国語版ウェブサイト

欢迎参加第70届SGRA论坛「共议木结构古建筑的修复与保护」

韓国語版ウェブサイト

제70회 SGRA 포럼 「목조 건축문화재의 수리∙보존에 대한 논의」

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★☆★お知らせ
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