SGRAメールマガジン バックナンバー

LEE Chung-sun “My ’Power Plant’ that Blossomed in a Foreign Country”

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SGRAかわらばん955号(2023年2月2日)

【1】エッセイ:李貞善「異国で花咲いた私の『発電所』」

【2】寄贈書紹介:李來賛『豊かな経済、貧しい幸福』

【3】第70回SGRAフォーラムへのお誘い(2月18日、オンライン)(再送)
「木造建築文化財の修復・保存について考える」
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【1】SGRAエッセイ#279

◆李貞善「異国で花咲いた私の『発電所』」

2023年の年明けに韓国のユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領がアラブ首長国連邦(UAE)を訪問した。1980年の国交正常化後、韓国首脳のUAE国賓訪問は今回が初めてで、韓国・UAEの友好増進とともに、さらなる経済協力を図るためである。尹大統領と経済使節団が足を運んだのは、韓国電力公社が率いる共同事業体(以降、KEPCOコンソーシアム)が2009年12月に受注し、建設・運営しているバラカ(Barakah)原子力発電所の現場だった。

私の目を引いたのは、尹大統領がバラカ原発で韓国電力公社の社員たちと一緒に撮影した1枚の写真だ。大統領の後ろには、10年前に私と一緒に勤務した上司が立っていた。その隣にも、私の同僚だった人が特有の表情で誇らしげにほほえんでいる。

韓国電力公社は、2015年に日本に留学する前に11年間勤務した元職場。2003年から2014年まで事務職正規社員として清州(チョンジュ)とソウル本社で働いたが、2009年にUAEのバラカ原発4機を受注する事業の一員になった。約1年間、「War_Room」と呼ばれる本社の地下で、同僚と一致団結してプロジェクトに専念した。少し(大分)誇張すると、映画「パラサイト」の地下室を連想させる極秘の空間で。

忍耐の過程を経てKEPCOコンソーシアムは、日米連合やフランス連合などの有力な競合他社に打ち勝って約400億ドル(約5兆2千億円)規模の受注に成功した。韓国で12月27日が祝日(原子力安全及び振興の日)に制定されたのも、KEPCOコンソーシアムが2009年のこの日にUAEの最終事業者に選定されたことに由来する。これは、韓国史上最大規模の海外受注になっており、今もその記録は越えられていない。

受注に成功した後も、退職する2014年末までこのバラカ原発建設プロジェクトで事務業務を担当した。人事、総務、財務、送金、機密契約書管理など、多岐にわたる業務で、私の30代のバイオグラフィーに達成感と煩悩と、笑いと涙の強烈な痕跡を残した。

遠回りして日本に留学した初期には、自分が研究者としてもう遅いのではないかと不安だった。しかし、博士学位取得を目の前にしている今、導き出した結論は、あの11年間の社会経験が研究にも貴重な資産になり、むしろ今の私を精力的に動かす「発電所(発展所)」にもなり続けているということである。事業報告書の作成、多岐にわたる資料の分析、プレゼンテーションの担当、海外からの重要人物(VIP)リエゾン担当者としての業務連携、約束の順守、異文化理解、業務倫理の厳守、前向きな態度など… 振り返ってみたらこれらの経験は、どんな難関にも常に適応能力(レジリエンス)を持たせて明日に進展させる動力源になったのである。

UAEの発電所は2014年末に私の人生で停止したが、それ以降私は日本で別の形の「発電所」を10年近く稼働してきている。まずは未熟ながら書きたての博士論が、丹精を込めて築き上げた「発電所第一号機」になるだろう。2023年年明けに、砂漠で蒔いた種がバラカ原発に実った様子を遠くから凝視しながら感無量に思うと同時に、今の私の「発電所」を確かめてみる。

原発建設は通常5~10年ほど工期の遅れが発生する。他方で、KEPCOコンソーシアムは数多くの悪条件を乗り越え、約束した期日と予算内で工事を成功裏に終えた。冒頭で述べた尹大統領のUAE訪問を機に、韓国側がUAEから300億ドル(約4兆円)の追加投資の約束を取り付けたのも、KEPCOコンソーシアムのそのような工期厳守と事業への徹底したミッションがUAEに認められた結果である。これから私も、独自の観点とペース、温度、スタイルで、異国で私ならではの「発電所」を稼働していこうと考える。学位取得以降の次のステージに向かって、今後も2、3号機の新たな「発電所」を前向きに受注・建設していきたい。

私にとっては永遠の未完成品として残っているバラカ原発。あの発電所を見事に完成してくれた元職場の同僚たちにも、そして自分の土壌で各自の「発電所」を稼働している世界中のラクーン(渥美奨学生)たちにも、熱い応援の拍手を送る。

<李貞善(イ・ジョンソン)LEE Chung-sun>
東京大学大学院人文社会系研究科博士課程に在学中。2021年度渥美奨学生。高麗大学卒業後、韓国電力公社在職中に労使協力増進優秀社員の社長賞1等級を受賞。2015年来日以来、2017年国際建築家連合等、様々な論文コンクールで受賞。大韓民国国防部・軍史編纂研究所が発刊する『軍史』を始め、国連教育科学文化機関(ユネスコ)関連の国際学術会議で研究成果を発表。2018年日本の世界遺産検定で最高レベルであるマイスターを取得。

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【2】寄贈書紹介

SGRA会員で韓国漢城大学経済学科教授さんより編著書をご寄贈いただきましたのでご紹介します。

◆李来賛(イ・ネーチャン)『豊かな経済、貧しい幸福』

(原文は韓国語)
経済成長に隠されていたわが国(韓国)の現実を注視しながら、幸福と生活の質、社会資本と文化、不平等、世代間の葛藤、後世代に譲るべき課題としての韓日関係におけるわが国の現状を眺め、個人と社会と国家レベルで国民が幸せになる方法を検討する。経済的豊かさの中で忘れていた幸せな国の条件を考える。

(本文から)
幸福は包括的な概念である。もっと良い家や車を所有しようとする欲望で、渇きやストレス解消のように、普段はありがたく感じなくても足りなかったら不便になって埋めなければならない欠乏欲望、目標と理想に向けて精進して得られる喜びとどれほど貴重な人生を生きてきたかを評価する人生満足感、さらに他人の安寧を尊重する価値・規範の遵守も含む。WEF・IMD・ITU など公信力ある国際機関の指数評価で見ると、韓国の国家競争力はかなり高いのに対して、幸福・不平等および社会資本は最下位圏に属する。

多くの人々が「お金が多ければいい」と思う。お金は人間として上品な生活の質を維持するための重要な手段である。ところが、果たしてお金が増えれば幸せになるだろうか?1974年、経済学者リチャード・イスタリンは、一部の主要国の1960年代のデータを分析した後、「物質的に豊かであるとして必ずしも幸せではない」というイスタリン・パラドックスを発表し、以後幸福経済学が誕生することとなった。

書評等の日本語訳は下記リンクをご覧ください。
https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2023/02/LeeNaeChanBookReview.pdf

出版社:イダブックス/発行日:2022年9月7日/ページ:352
価格:17,000ウォン/分野:経済経営/板状:153×224
ISBN:979-11-91625-79-0 03320

韓国語の書評は下記リンクをご覧ください。
http://news.tf.co.kr/read/economy/1964113.htm
https://www.fnnews.com/news/202209271734328910

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【3】第70回SGRAフォーラム「木造建築文化財の修復・保存について考える」へのお誘い(再送)

下記の通り第70回SGRAフォーラム「木造建築文化財の修復・保存について考える」をオンラインで開催いたします。参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。一般聴講者はカメラもマイクもオフのウェビナー形式で開催しますので、お気軽にご参加ください。

テーマ:「木造建築文化財の修復・保存について考える」
日時:2023年2月18 日(土)午後1時~午後4時(日本時間)
方法: オンライン(Zoom ウェビナーによる)
言語:日中韓3言語同時通訳付き

※参加申込(クリックして登録してください)
https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_4_Fcwt3uRY2lTujxvUmi_w

お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612)

■フォーラムの趣旨

東アジアの諸国は共通した木造建築文化圏に属しており、西洋と異なる文化遺産の形態を持っています。第70回SGRAフォーラムでは、国宝金峯山寺(きんぷせんじ)二王門の保存修理工事を取り上げ、日本の修理技術者から現在進行中の文化財修理現場をライブ中継で紹介していただきます。続いて韓国・中国・ヨーロッパの専門家と市民の代表からコメントを頂いた上で、視聴者からの質問も取り上げながら、専門家と市民の方々との間に文化財の修復と保存について議論の場を設けます。
今回のフォーラムを通じて、木造建築文化財の修復方法と保存実態をありのままお伝えし、専門家と市民の方々との相互理解を推進したいと考えております。
今回のフォーラムを実現することを可能にしてくださった、金峯山寺と奈良県文化財保存事務所に心からお礼を申し上げます。

■プログラム
総合司会: 李暉(奈良文化財研究所アソシエイトフェロー/SGRA)

13:00 フォーラムの趣旨、登壇者の紹介
13:15 [話題提供] 竹口泰生(奈良県文化財保存事務所金峯山寺出張所主任)

[討論]
モデレーター: 金ミン淑(京都大学防災研究所民間等共同研究員/SGRA)
14:20 韓国専門家によるコメント
――――― 姜ソン慧(伝統建築修理技術振興財団企画行政チームリーダー)
14:35 中国専門家によるコメント
――――― 永昕群(中国文化遺産研究院研究館員)
14:50 ヨーロッパ専門家によるコメント
――――― アレハンドロ・マルティネス(京都工芸繊維大学助教)
15:05 市民によるコメント
――――― 塩原フローニ・フリデリケ(BMW_GROUP_Japan/SGRA)
15:20 視聴者からの質疑応答(Q&A機能を使って)

※同時通訳:

日本語⇔中国語:丁莉(北京大学)、宋剛(北京外国語大学/SGRA)
日本語⇔韓国語:李ヘリ(韓国外国語大学)、安ヨンヒ(韓国外国語大学)
中国語⇔韓国語:朴賢(京都大学)、金恵蘭(フリーランス)

※プログラムの詳細は、下記リンクをご参照ください。

プロジェクト概要(日本語版)
https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2022/12/J_SGRAForum70_Program.pdf

ポスター
https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2023/01/J_70thSGRAforumLite.jpg

中国語版ウェブサイト

欢迎参加第70届SGRA论坛「共议木结构古建筑的修复与保护」

韓国語版ウェブサイト

제70회 SGRA 포럼 「목조 건축문화재의 수리∙보존에 대한 논의」

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★☆★お知らせ
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