SGRAメールマガジン バックナンバー
KIM Woonghee “Nikkan Asia Future Forum #20 ‘Progressive K-Culture’ Report”
2022年6月9日 15:55:43
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SGRAかわらばん925号(2022年6月9日)
【1】金雄煕「第20回日韓アジア未来フォーラム『進撃のKカルチャー』報告」
【2】寄贈書紹介:李暁東/李正吉編著『北東アジアにおける近代的空間:その形成と影響』
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【1】SGRA催事報告
◆金雄煕「第20回日韓アジア未来フォーラム『進撃のKカルチャー:新韓流現象とその影響力』報告」
2022年5月14日(土)、新型コロナウイルスが「終盤」の猛威を振るう中、第20回日韓アジア未来フォーラムが前回同様Zoomウェビナー方式で開催された。これまで2回続けて日韓関係の「暗い」部分を扱ってきたが、今回は今西さんのご提案で「明るい」部分について議論することにし、「防弾少年団(BTS)」の文化力に焦点を当て「進撃のKカルチャー:新韓流現象とその影響力」について議論を交わした。日韓、そしてベトナムから専門家を招き、BTSの文化力の源泉をなすものは何か、BTS現象は日韓関係、地域協力、そしてグローバル化にどのようなインプリケーションをもつものなのかなどについて幅広い観点から検討した。
フォーラムでは、渥美国際交流財団SGRAの今西淳子(いまにし・じゅんこ)代表による開会の挨拶に続き、日本と韓国から2名の専門家による基調報告が行われた。まず、小針進(こはり・すすむ)静岡県立大学教授は「文化と政治・外交をめぐるモヤモヤする『眺め』」という題で、政治と文化を切り離せない葛藤、政治ニュースの韓国とInstagramの韓国のギャップへの葛藤、文化消費と政治的価値観・世代間の差への葛藤、魅了する文化と不安定な大統領の国に対する葛藤、反日・親日騒動と嫌韓助長への葛藤、政治的表明とその反発への葛藤、政治の文化への介入と「推し」の反日疑惑への葛藤、熱心なファン集団「ファンダム」のSNS投稿を素直に楽しめない葛藤、アーティスト批判の嫌韓論への葛藤、以前は日本が韓国の手本だったことに対する葛藤など、日本の大学生が経験している文化と政治をめぐる葛藤とモヤモヤする「眺め」の実体を様々な側面から生々しく描いた。
韓準(ハン・ジュン)延世大学教授は、「BTSのグローバルな魅力」について、外的環境的な要因と内的力量的な要因に分けて考察した研究結果を報告した。まず、外的、環境的な要因として、グローバル文化における中心―周辺関係の弱化又は解体、文化的趣向におけるヒエラルキーの弱化とオムニボア(雑食性)の登場、文化的価値としてのハイブリッドと真正性の結合、個人化したデジタル媒体によるマスメディアの代替を挙げた。そして内的、力量的な要因として音楽スタイルやパフォーマンス能力の卓越性、真正性とアイデンティティの結合を通じた共感の拡大、グローバルファンダムである「アーミー(BTS公式ファンクラブ)」の強力なサポートを指摘した。
第2部に入り、ミニ報告では、チュ・スワン・ザオ(Chu_Xuan_Giao)ベトナム社会科学院文化研究所上席研究員が、ベトナムにおけるKポップ・Jポップ、ベトナムからのKポップ・Jポップの現状を紹介し、文化資源としてのVポップの可能性について若干の考察を加えた。自由討論では、金賢旭(キム・ヒョンウク)国民大学教授が日本の伝統芸能の一分野である能との比較から、平田由紀江(ひらた・ゆきえ)日本女子大学教授がメディア・文化研究の観点からそれぞれコメントした。
第3部では、金崇培(キム・スンベ)国立釜慶大学助教授と金銀恵(キム・ウンヘ)釜山大学社会学科助教授のアシストでウェビナー画面の「Q&A機能」を使って一般参加者との質疑応答が行われた。最後は、徐載鎭(ソ・ゼジン)未来人力研究院院長により、日韓アジア未来フォーラムの経緯や役割についての熱いコメントと閉会の辞で締めくくられた。今回は250を超える一般からの参加申し込みがあり、最多時の参加者が170人を上回った。静岡県立大学、仁荷大学から若い学生の参加も多かった。十分な質疑応答が行われたとは言い切れない部分もあるが、アンケートを通じて多くの参加者からフォーラムの感想などが寄せられた。「フォーラムは期待通りであった」(「大いに期待通り」56.6%、「だいたい期待通り」38.4%)と答えた人の割合が95%を占めており、「新韓流現象やモヤモヤの正体が分かった」との感想もあった。
今回は第20回という節目だったにもかかわらず、惜しくもコロナ禍で記念行事や日韓アジア未来フォーラムならではの「番外」はなかった。次回は20年を振り返りつつ、ぜひ「春鹿」と「爆弾酒」を飲みながらの会にしたいと思う。最後に第20回目のフォーラムが成功裏に終わるよう支援を惜しまなかった今西SGRA代表と李鎮奎未来人力研究院前理事長(咸鏡道知事)、そして前回同様ウェビナーの準備に万全を期し、完璧なフォーラムに仕上げてくれたスタッフの皆さんのご尽力に感謝の意を表したい。
当日の写真
https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2022/06/JKAFF20Photos.pdf
アンケート集計
https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2022/06/JKAFF20survey.pdf
韓国語版報告
<金雄煕(キム・ウンヒ)KIM_Woonghee>
89年ソウル大学外交学科卒業。94年筑波大学大学院国際政治経済学研究科修士、98年博士。博士論文「同意調達の浸透性ネットワークとしての政府諮問機関に関する研究」。99年より韓国電子通信研究員専任研究員。00年より韓国仁荷大学国際通商学部専任講師、06年より副教授、11年より教授。SGRA研究員。代表著作に、『東アジアにおける政策の移転と拡散』共著、社会評論、2012年;『現代日本政治の理解』共著、韓国放送通信大学出版部、2013年;「新しい東アジア物流ルート開発のための日本の国家戦略」『日本研究論叢』第34号、2011年。最近は国際開発協力に興味をもっており、東アジアにおいて日韓が協力していかに国際公共財を提供するかについて研究を進めている。
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【2】寄贈書紹介
島根県立大学北東アジア地域研究センター長の李暁東先生より新刊書をご寄贈いただきましたので紹介いたします。
◆李暁東/李正吉編著『北東アジアにおける近代的空間:その形成と影響』
本書は2016年度に始まった共同研究プロジェクト「北東アジアにおける近代的空間の形成とその影響」の最終成果論集です。このプロジェクトは島根県立大学北東アジア地域研究(NEAR)センターの北東アジア研究事業の重要な一環です。今回、北東アジア諸地域の各分野の第一線で活躍している内外の研究者からの助力を得て、24名の研究者からなる執筆陣が、「北東アジアの近代」というテーマと、この空間における「コンタクト」に焦点を当てる視点とを共有しつつ、北東アジアの「近代」像を描きだすのに努めました。本書は以下の三点に心がけながら北東アジアの「近代」にアプローチしました。(1)「北東アジアの『近代』を中心に据えたうえで、とくに歴史や、思想、文化の視点からアプローチすること、(2)研究対象として、モンゴルとロシア(ソ連)のシベリア地域を重視すること、そして(3)「北東アジア」の境界性を意識する代わりに、それを一つのネットワークとして捉えて、とくに様々な「コンタクト・ゾーン」におけるコンタクトと変化に注目すること、の三つです。
発行所:明石書店
ISBN:9784750353296
判型・ページ数:A5・674ページ
出版年月日:2022/03/31
詳細は下記リンクをご覧ください。
https://www.akashi.co.jp/book/b605024.html
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