SGRAメールマガジン バックナンバー

SGRA Cafe #17 “Ukrainians Beyond Borders” Report

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SGRAかわらばん916号(2022年4月7日)

【1】第17回SGRAカフェ「国境を超えたウクライナ人」報告

【2】フスレ編著『21世紀のグローバリズムからみたチンギス・ハーン』
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【1】第17回SGRAカフェ報告

◆三宅綾「第17回SGRAカフェ『国境を超えたウクライナ人』報告」

2022年3月21日20時から1時間半にわたり、第17回SGRAカフェ「国境を超えたウクライナ人」がZoomウェビナーで開催されました。今回のカフェは、奇しくもロシアによるウクライナ侵攻開始と同じ2月に発行されたばかりの『国境を超えたウクライナ人』(2022年、群像社)の著者であり、2004年度渥美奨学生でもあるオリガ・ホメンコさんを講師にお迎えして、著作からウクライナとウクライナ人の歴史、文化的背景まで幅広くお話しいただきました。オリガさんは風邪で体調がすぐれない状態でしたが、最後まで情熱をもってお話しくださいました。当日は以前からオリガさんと親交の深い群像社編集発行人の島田進矢さんにゲスト、中央大学教授の大川真先生にコーディネーターとして参加いただきました。

最初に司会の今西淳子SGRA代表よりオリガさんの渥美奨学生当時の懐かしい写真、最初の著作『ウクライナから愛をこめて』(2014年、群像社)の元となったメールマガジン「SGRAかわらばん」(毎週木曜日に日本語で配信)への長年にわたるウクライナに関する投稿や最新作の内容とともにオリガさんの紹介がありました。続いてオリガさん、島田さんから短いご挨拶をいただいた後、『国境を超えたウクライナ人』執筆の経緯や「国境」、「超える」がキーワードとなった経緯について対談していただきました。

オリガさんからはウクライナの歴史と文化、ウクライナ人の精神的背景について日本との関わりも交えてお話しいただきました。特にウクライナのたどってきた歴史や置かれてきた状況についての話は、日本ではほとんど知られていない事ばかりで、物事や状況を多方面から見て考えることの大切さと、与えられる情報だけではなく、自ら知ろうとする事の大切さを教えられるものでした。これまでの支配のトラウマを乗り越え、今まさに自分たちの事を語り始めようとしているウクライナの方々の気持ちがオリガさんを通じて切々と伝わってきました。

最後に大川先生が参加者からの質問やコメントを紹介し、オリガさん、島田さん、今西さんの4人でお話しいただきました。ウクライナでは自由な自己表現ができなかった時代から詩人と作家がウクライナの主張を伝える上で大きな役割を果たしてきたという説明がありましたが、その作品は必ずしもウクライナ語で表現されるものだけではないという指摘が印象的でした。

自分たちの言語はもちろん大切にするべきものだが、それがアイデンティティの全てではなく、大切なのは意識であり、文化であるということ、ウクライナのアイデンティティは歌、刺繍、踊り、生活習慣、生活風土などいろいろなものを含むとても豊かなものであることを理解してもらいたいし、それを通じて自己表現していくことが大切であるというオリガさんの一貫した主張が心に響きました。そういう意味でも、オリガさんの著作はウクライナを理解するうえで素晴らしい案内役ではないでしょうか。そして、ただ心を痛めるだけではなく、自ら知ろうとすること、多面的に考えようとすることの大切さが分かっているようで分かっていなかったことに気づかされました。

カフェの参加者からは、ウェビナーを通じてオリガさんにお話しいただいた事への感謝とオリガさんの気持ちに寄り添おうとする温かい応援がたくさん寄せられました。厳しい状況の中、また体調が万全ではない中で、力強いメッセージを伝えてくださったオリガ・ホメンコさんに改めて感謝いたします。

下記リンクより当日の写真とオリガさんの著書の紹介をご覧いただけます。
https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2022/04/cafe17photos.pdf

下記リンクよりアンケートの集計をご覧ください。アンケートに書いてくださったオリガさんへのメッセージは直接お渡ししました。
https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2022/04/cafe17questionnaire.pdf

<三宅綾(みやけ・あや)MIYAKE Aya>
東京都出身。博物館学修士(ジョージワシントン大学)、哲学修士(美術史系)(学習院大学)。独立行政法人科学技術振興機構(JST)(現・国立研究開発法人科学技術振興機構)勤務を経て2020年より渥美国際交流財団に勤務。

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【2】寄贈書紹介

SGRA会員で昭和女子大教授のボルジギン・フスレさんから編著書をご寄贈いただきましたのでご紹介します。

◆ボルジギン・フスレ編『21世紀のグローバリズムからみたチンギス・ハーン』

日蒙で開かれた国際シンポジウムの成果。歴史・社会・政治・文化など最新の研究からチンギス・ハーンとその時代を再評価。
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チンギス・ハーンとモンゴル帝国について、かつてはさまざまな偏見や誤解がくりかえされ、歪曲、誹謗もされていた。近年、とりわけ1990年代以降、チンギス・ハーンとモンゴル帝国に対する認識は変わりつづけ、研究、論著の面で大きな成果がえられ、画期的な展開をみせてきた。チンギス・ハーンとその騎馬軍団の挑戦は世界を揺るがしたと同時に、アフロ・ユーラシアの交流の道を大きくひらいたことは、今では、国際的に共通の認識になっている。上記シンポジウムはモンゴルという小さな遊牧の民が、いったいどのような熱情にかられてこのような奇跡をなしとげ、はじめて「ユーラシア」とよびうる歴史的空間を創り出すことができたのか、そのなぞに迫ること、そして21世紀のグローバリズムからチンギス・ハーンとモンゴル帝国、およびその遺産を再評価し、創造的な議論を展開することを目的とした。
(フスレ「まえがき」より)

発行所:風響社(アジア研究報告シリーズNo.8)
出版年月日:2022/02/20
ISBN:9784894898080
判型・ページ数:A5・302ページ
定価:本体3、500円+税

詳細は下記リンクをご覧ください。
http://www.fukyo.co.jp/book/b601071.html

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