2012・2015年ミニ・ラクーン会 in 新宿



渥美財団に勤務した年の最初のイベントが4月の食事会で、席の向こう側にいたのがアーロン・リオさん(2012年狸)だった。何を話したのか今となっては忘れてしまったが、とにかく盛り上がってアーロンさんが顔を真っ赤にして笑っていたことはよく覚えている。あれから5年、アーロンさんは博士号を取得してアメリカのミネアポリス美術館で学芸員をしている。来日に際してミニラクーン会をしようと4月20日新宿の「随園別館」に集合した。メンバーは以下の通り。

ソンヤ・デールさん(2012年狸)、ユー・グロリア・ヤンさん、フランク・フェルテンズさん(共に2015年狸)、アーロンさんとソンヤさん二人の友人のあやさん、そして財団からは今西さん、石井さん、本多さん、私の8人が集まり、何の偶然からかアーロンさんは今度も向かい側に座っている。前回と違うのはお互い話す人が増えたのでアーロンさんと直接話す機会があまりなかったことだが、話す相手が増えたことはむしろ喜ぶべきことだろう。そして話す内容も、社交的な「最近どうしてますか?」といったものではなく、第3回アジア未来会議で使用する画像について日本美術史専門家のアーロンさんにアドバイスを求めるという、もっと具体的で活動的なものになっている。アーロンさんと所属が同じコロンビア大学のグロリアさんとフランクさん、そしてやはり日本美術史を専門とする本多さんも意見を出してくれる。渥美財団という一つの拠点をもつ人たちの活動の広がり、そしてそれが財団の活動の実りとして返ってくることを感じる嬉しい瞬間。

一昨年の第2回アジア未来会議のフォーラムでも同様のことをもたらしてくれたのは、やはりアーロンさんだった。自身が企画したフォーラム「アジアを繋ぐアート」で使って欲しいと、チラシを送ってくれたのだ。獅子舞の獅子とインドネシアのバロン(獅子)が描かれたそのチラシがきっかけで他のフォーラムもチラシを作ることになり、美しい獅子の絵は第2回会議全体のバナーとしても使用された。こうした提案のおかげでSGRAの様々な活動が豊かなものになっている。ソンヤさんや(北海道に居を移したため今回は欠席の)朴ヒョンジョンさんらと企画開催した自主セッション「SGRAふくしまレポート」も同様で、多分野の研究者がSGRAを軸に新たな活動をしている。

こうした活動が他の年度にももっと広がって欲しいと願っているが、ラクーンの一人が指摘するように若い世代は個々で動くことが多いらしく残念に思うこともある。拠点としてのSGRAのあり方とは、そもそも必要とされているのか。ラクーンの自主性を待っているだけでいいのか。財団のスタッフとして最近はよくこうした考えに耽っている。

名前を呼ばれて顔を上げれば、何やら向かいの席から秘密めいた調子で「お話しすることが」との声が。何のことはない、テレビドラマの話だった。真面目な話、他愛ない話も含めておいしい中華料理を食べながら5年前と同じように話し、笑い、前よりももっと賑やかな、「ミニではないミニ・ラクーン会」の夜はこうして更けていく。


(文責:太田美行)